説明

多重セキュリティシステム

【課題】居住者及び来訪者双方へのストレスを軽減し、従来からの運用形態を踏襲しつつ多重セキュリティの利便性を維持する。
【解決手段】多重セキュリティシステム1は、共用エントランスの内側のフロアに設置され、共用エントランスを通過した訪問者が所持する記憶媒体8との間の通信により記憶媒体8から固有情報を取得する一時登録専用装置3と、セキュリティ設備に対応して設けられ、記憶媒体8との間の通信により記憶媒体8から固有情報を取得する情報取得装置4と、一時登録専用装置3が取得した記憶媒体8の固有情報を記憶して一時的に登録し、情報取得装置4が取得した固有情報が一時的に登録された固有情報と一致したときに、該当するセキュリティ設備のセキュリティを解除する制御装置7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマンションや商業ビルなどの建造物において、共用エントランスから各部屋や目的階までの間に複数のセキュリティ設備を備えてセキュリティの多重化が図られた多重セキュリティシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、最新のマンションや商業ビルなどの建造物においては、エントランスや通用口のみならず、エレベータ箱内や各階エレベータホールにも情報取得装置(リーダ)を施設し、住人及び来訪者の入館を複数のセキュリティ設備により2重、3重に制限するセキュリティの多重化が増えつつある。この種の複数のセキュリティ設備を備えた従来の多重セキュリティシステムとして、下記特許文献1には、共用エントランスの電気錠を解錠するID照合制御システムと、エレベータ昇降制御装置とを組み合わせたシステムが開示されている。
【0003】
ところで、この種の複数のセキュリティ設備を備えた多重セキュリティシステムにおいて、例えば知人、友人、ケータリング(出前)などの来訪者が入館する場合には、例えば(1)共用エントランスのインターホン機器で訪問先の部屋の居住者を呼び出し、居住者の認証による共用エントランスの自動ドアの開錠、(2)居住者の認証から所定時間経過後にエレベータホールのエレベータが自動降下及び開錠、又はエレベータホールで再度訪問先の部屋の居住者を呼び出し、居住者の認証によるエレベータの呼び出し及び開錠、(3)訪問先部屋のフロアで再々度訪問先部屋の居住者を呼び出し、居住者の認証による訪問先部屋のフロアの自動ドアの開錠といったように、セキュリティがかかっている場所毎に居住者の呼び出しや認証を行い、その度に居住者にセキュリティを解除してもらっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002ー129793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の多重セキュリティシステムでは、セキュリティがかかっている場所毎に居住者の呼び出しや認証を行い、その度に居住者にセキュリティを解除してもらう必要があるため、居住者及び来訪者双方へのストレスがかかるという課題があった。
【0006】
しかも、この種の複数のセキュリティ設備を備えた多重セキュリティシステムにおいて、コンシェルジュや管理者が常駐していない物件では、尚更対応が複雑化するという課題があった。
【0007】
このように、従来の多重セキュリティシステムでは、マンションや商業ビルなどの建造物におけるセキュリティを高めた結果、居住者以外の入館が幾重にも規制されることによるストレスが増し、利便性が犠牲になるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、居住者及び来訪者双方へのストレスを軽減し、従来からの運用形態を踏襲しつつ多重セキュリティの利便性を維持することができる多重セキュリティシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された多重セキュリティシステムは、建造物の共用エントランスの外側に設置され、訪問者が訪問先部屋の居住者を呼び出して通話するための呼出操作機を有し、該呼出操作機による前記訪問先部屋の居住者の承認により前記共用エントランスを通過した以降の前記訪問先部屋又は目的階までの間に少なくとも1つのセキュリティ設備を備えた多重セキュリティシステムにおいて、
前記共用エントランスの内側のフロアに設置され、前記共用エントランスを通過した訪問者が所持する記憶媒体との間の通信により該記憶媒体から固有情報を取得する一時登録専用装置と、
前記セキュリティ設備に対応して設けられ、前記記憶媒体との間の通信により該記憶媒体から固有情報を取得する情報取得装置と、
前記一時登録専用装置が取得した前記記憶媒体の固有情報を記憶して一時的に登録し、前記情報取得装置が取得した固有情報が前記一時的に登録された固有情報と一致したときに、該当するセキュリティ設備のセキュリティを解除する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載された多重セキュリティシステムは、請求項1のセキュリティシステムにおいて、
前記制御装置は、前記セキュリティ設備の解除を許可する記憶媒体の固有情報を予め記憶しており、この記憶された固有情報と前記一時登録専用装置が取得した固有情報とが一致したときに、前記一時登録専用装置から取得した固有情報を記憶して一時的に登録することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載された多重セキュリティシステムは、請求項1又は2のセキュリティシステムにおいて、
前記制御装置は、前記記憶媒体が一時的に登録されてから設定時間が経過したときに、前記一時的に登録された前記記憶媒体の固有情報を抹消して無効化処理することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載された多重セキュリティシステムは、請求項1又は2のセキュリティシステムにおいて、
前記制御装置は、来訪者が訪問先部屋又は目的階に辿り着くまでの全てのセキュリティ設備が解除されたときに、前記一時的に登録された前記記憶媒体の固有情報を抹消して無効化処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る多重セキュリティシステムによれば、記憶媒体をセキュリティ解除のための一時的な鍵として用い、記憶媒体の固有情報を情報取得装置に取得させるだけの単純な操作により、共用エントランスを通過した以降のセキュリティ設備のセキュリティを順次解除することができる。これにより、従来に比べて居住者及び来訪者双方へのストレスが軽減され、多重セキュリティの利便性を維持することができる。
【0014】
記憶媒体を一時登録する場合、専用のサーバーやデータベース等が必要なく、既存のシステムに依存しない独立したシステムを後付けで構築でき、他社機器との運用連携も不要であり、設備投資を抑えることができる。
【0015】
記憶媒体を一時登録するにあたって、来訪者であることの承認行為を共用エントランスにて居住者が行い、来訪者が共用エントランスから入館後に改めて訪問者自身が一時登録専用装置を用いて自身が所持する記憶媒体の一時登録を行うので、来訪者認証行為と登録状態移行が同時に行え、管理者、コンシェルジュの負担が無くなり、24時間新規の来訪者の一時登録が可能になる。
【0016】
セキュリティはそのままに目的階の居住者部屋まで友人や知人をストレスなく招き入れたり、生活に必要なサービス(宅配、郵便、ケータリング)を享受できる。
【0017】
一時登録された記憶媒体の固有情報(許可情報やパスワードを含む場合もある)を設定時間経過後に抹消して無効化処理すれば、記憶媒体をセキュリティ解除のための一時的な鍵として用いることができ、不用意なセキュリティ解除を防ぎ、セキュリティを保つことができる。
【0018】
訪問者が訪問先部屋又は目的階に辿り着くまでの全てのセキュリティ設備のセキュリティが解除されたときに、一時登録された記憶媒体の固有情報(許可情報やパスワードを含む場合もある)を抹消して無効化処理すれば、記憶媒体をセキュリティ解除のための一時的な鍵として用いることができ、不必要なセキュリティ解除を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る多重セキュリティシステムの一例を示す全体構成のブロック図である。
【図2】図1の制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれる。
【0021】
図1は本発明に係る多重セキュリティシステムの一例を示す全体構成のブロック図、図2は図1の制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【0022】
本発明に係る多重化セキュリティシステムは、マンションや商業ビルなどの建造物において、訪問先部屋の居住者の承認により集合玄関である共用エントランスを通過した以降の訪問先部屋又は目的階までの間に少なくとも1つのセキュリティ設備を備えてセキュリティの多重化が図られたものである。ここでは、共用エントランスから各部屋までの間に3つのセキュリティ設備を設け、セキュリティの3重化が図られた場合を例にとって説明する。なお、セキュリティ設備として、共用エントランスのセキュリティ解除に関しては、後述する記憶媒体8が用いられないものとしている。
【0023】
本例の多重セキュリティシステム1は、図1に示すように、呼出操作機2、一時登録専用装置3、情報取得装置4(4A,4B)、インターホン子機5、インターホン親機6、制御装置7を備えて構築される。
【0024】
本例の多重セキリティシステム1では、訪問者が建造物内の所望の訪問先部屋を訪れる際に、訪問者自身が所持する携帯型の記憶媒体8を用い、共用エントランス通過後の2つのセキュリティ設備(共用エントランスは含まない)のセキュリティ解除が行われる。携帯型の記憶媒体8は、例えば、おサイフケータイ(登録商標)、SUICA(登録商標)カード、WAON(登録商標)カード、EDYカード、JAL(登録商標)カード、ANA(登録商標)カード等からなる。
【0025】
呼出操作機2は、共用エントランスの外側で自動ドアの出入口近傍に設置され、共用エントランスのセキュリティ設備(自動ドア)のセキュリティ解除(自動ドアの開錠:1次セキュリティの解除)を行うための構成として、訪問先部屋の部屋番号を入力して指示するテンキーなどの入力機器と、入力機器により指示された訪問先部屋の居住者を呼び出して居住者との間で通話するインターホン機器とを備えている。
【0026】
一時登録専用装置3は、リーダ・ライタで構成され、共用エントランスの内側のフロアに設置されており、共用エントランス通過後のセキュリティ設備(共用エントランスは含まない)のセキュリティ解除に用いる記憶媒体8の一時登録を行っている。一時登録専用装置3は、通信可能領域内で記憶媒体8がかざされると、制御装置7の制御により、その記憶媒体8にキャリアを送信して電磁誘導により記憶媒体8に電力を供給し、キャリアの変調により記憶媒体8との間で通信を行い、記憶媒体8からの固有情報(記憶媒体8を特定する情報:シリアル番号、IDなど)を取得している。
【0027】
なお、一時登録専用装置3は、訪問者が所持する記憶媒体8を一時登録するにあたって、訪問先部屋の部屋番号又は目的階を入力するためのテンキーなどの入力器を備えた構成とすることもできる。この構成において、一時登録専用装置3は、入力器から入力される訪問先部屋の部屋番号又は目的階が入力された後、通過可能領域内で記憶媒体8がかざされると、この記憶媒体8からの固有情報を取得している。さらに、上記入力器は、訪問先部屋の居住者から知らされるパスワードを入力することもできる。このパスワードは、各部屋毎に居住者が決めるもので、部屋番号と対応付け(紐付け)されて一時登録専用装置3に予め設定される。この構成において、一時登録専用装置3は、入力器から入力される訪問先部屋の部屋番号とパスワードを正常認証した後、通信可能領域内で記憶媒体8がかざされると、この記憶媒体8からの固有情報を取得している。
【0028】
また、一時登録専用装置3は、共用エントランスの内側の自動ドア(セキュリティ設備)近傍に設置すれば、訪問者が共用エントランスを通過した後に時間ロスなくスムーズに記憶媒体8の一時登録を行うことができる。
【0029】
情報取得装置4(4A,4B)は、リーダ・ライタで構成され、1階エレベータホールのセキュリティ設備(エレベータ)のセキュリティ解除(1階へのエレベータの呼び出し及び開錠:2次セキュリティの解除)と目的階エレベータホールのセキュリティ設備(目的階の自動ドア)のセキュリティ解除(目的階の自動ドアの開錠:3次セキュリティの解除)を行うべく、各セキュリティ設備に対応してそれぞれ設置される。情報取得装置4A,4Bは、通信可能領域内で記憶媒体8がかざされると、制御装置7の制御により、その記憶媒体8にキャリアを送信して電磁誘導により記憶媒体8に電力を供給し、キャリアの変調により記憶媒体8との間で通信を行い、記憶媒体8から固有情報を取得している。
【0030】
インターホン子機5は、各部屋毎に設置され、呼出操作機2のインターホン機器からの呼び出しに応答して来訪者との間で通話を行い、来訪者を確認して共用エントランスの通過を承認した際に押下される開錠ボタンを有し、開錠ボタンが押下されたときに共用エントランスの自動ドアの開錠(セキュリティ設備の解除)を指示する開錠指示信号をインターホン親機6に出力している。
【0031】
インターホン親機6は、インターホン子機5から開錠指示信号が入力されたときに、共用エントランスを開錠する駆動信号の出力を指示する駆動指示信号を制御装置7に出力している。
【0032】
制御装置7は、呼出操作機2、一時登録専用装置3、情報取得装置4(4A,4B)、インターホン子機5、インターホン親機6の各構成要素を統括制御しており、図2に示すように、通話制御部7a、登録処理部7b、記憶部7c、情報処理部7d、駆動信号出力部7eを備えている。
【0033】
通話制御部7aは、呼出操作機2のインターホン機器とインターホン子機5との間の通話を制御している。また、通話制御部7aは、インターホン子機5の開錠ボタンが押下され、インターホン親機6から駆動指示信号が入力されたときに、共用エントランスの自動ドアを開錠動作させるべく出力指示信号を駆動信号出力部7eに出力している。
【0034】
登録処理部7bは、共用エントランス通過後のセキュリティ設備のセキュリティ解除を許可する記憶媒体8の一時的な登録処理を行っている。具体的には、共用エントランスを通過した訪問者自身が所持する記憶媒体8が一時登録専用装置3にかざされたときに、その記憶媒体8から取得した固有情報(記憶媒体8を特定する情報)を記憶部7cに記憶させて一時的に登録している。
【0035】
記憶部7cは、共用エントランス通過後のセキュリティ設備のセキュリティ解除(2次セキュリティ解除及び3次セキュリティ解除)を許可する記憶媒体8の固有情報を一時的に登録記憶している。
【0036】
なお、共用エントランス通過後のセキュリティ設備のセキュリティ解除を許可する記憶媒体8の固有情報は、予め記憶部7cに事前登録して記憶させておくこともできる。その際の事前登録は、一時登録専用装置3や管理人室などに設けられる専用装置を用い、事前登録モードに切り替えて設定する他、どのような方法で行っても良い。また、事前登録しておく情報は、記憶媒体8の固有情報のみに限定されるものではない。例えば訪問先部屋又は目的階に辿り着くまでのセキュリティ設備のセキュリティ解除(2次セキュリティ解除及び3次セキュリティ解除)に必要な許可情報(例えば、訪問先部屋のフロア階数、訪問先部屋の部屋番号など)を記憶媒体8の固有情報と対応付け(紐付け)して記憶部7cに事前登録して記憶させておくこともできる。
【0037】
情報処理部7dは、情報取得装置4(4A,4B)が取得した記憶媒体8の固有情報と、記憶部7cに登録記憶された記憶媒体8の固有情報とを照合し、両者の情報が一致するか否かを判定し、一致すると判定したときに、駆動信号出力部7eからの駆動信号の出力を制御している。
【0038】
また、情報処理部7dは、訪問者が所持する記憶媒体8の固有情報が記憶部7cに一時登録され、この一時登録から予め決められた設定時間が経過したか否かを判定し、設定時間が経過したときに、一時登録された記憶媒体8の固有情報を記憶部7cから抹消して無効化処理することができる。
【0039】
さらに、情報処理部7dは、訪問先部屋又は目的階に辿り着くまでの全てのセキュリティ設備がセキュリティ解除(1次〜3次セキュリティ解除)されたときに、記憶部7cに一時登録された記憶媒体8の固有情報(許可情報やパスワードを含む場合もある)を抹消して無効化処理することもできる。
【0040】
また、情報処理部7dは、情報取得装置4(4A,4B)が取得した記憶媒体8の固有情報と、記憶部7cに登録記憶された記憶媒体8の固有情報との照合による認証回数が予め決められた設定回数に達したか否かを判定し、設定回数に達したときに、記憶部7cに一時登録された記憶媒体8の固有情報を抹消して無効化処理することもできる。情報処理部7dは、上述した何れかの無効化処理がなされたときに、情報取得装置4(4A,4B)が記憶媒体8から固有情報を取得しても、この取得した固有情報を無効と判断する。これにより、駆動信号出力部7eから駆動信号が出力されることはない。
【0041】
駆動信号出力部7eは、通話制御部7aから出力指示信号が入力されたときに、共用エントランスの自動ドアを開錠するべく駆動信号(無電圧a接点出力)を出力している。また、駆動信号出力部7eは、情報取得装置4(4A,4B)が取得した記憶媒体8の固有情報が記憶部7cに一時登録された記憶媒体8の固有情報と一致したときに、該当するセキュリティ設備をセキュリティ解除するべく駆動信号を出力している。
【0042】
具体的には、情報取得装置4Aが取得した記憶媒体8の固有情報が記憶部7cに一時登録された記憶媒体8の固有情報と一致したときに、1階エレベータホールのセキュリティ設備(エレベータ)をセキュリティ解除(2次セキュリティ解除)するべく、駆動信号出力部7eからエレベータに駆動信号を出力し、エレベータが1階エレベータホールまで呼び出されて開錠する。
【0043】
また、情報取得装置4Bが取得した記憶媒体8の固有情報が記憶部7cに一時登録された記憶媒体8の固有情報と一致したときは、目的階エレベータホールのセキュリティ設備(目的階の自動ドア)をセキュリティ解除(3次セキュリティ解除)するべく、駆動信号出力部7eから目的階の自動ドアに駆動信号を出力し、目的階の自動ドアが開錠する。
【0044】
次に、上記のように構成される多重セキュリティシステム1の動作として、来訪者が例えば訪問先部屋505号を訪問する際の一連の処理を例にとって説明する。
【0045】
まず、訪問者は、呼出操作機2の入力機器(テンキー)を操作して訪問先部屋の部屋番号「505」を入力して居住者を呼び出し、インターホン機器で505号の部屋の居住者と通話する。訪問先部屋505号の居住者は、呼出操作機2からの訪問者の呼び出しをインターホン子機5で受けて来訪者を確認し、共用エントランスのセキュリティ設備のセキュリティ解除を行っても良いと判断すれば、承認行為として、インターホン子機5の開錠ボタンを押す。これにより、インターホン親機6は、インターホン子機5からの開錠信号を受け、制御装置7に駆動指示信号を出力する。制御装置7の駆動信号出力部7eは、インターホン親機6から駆動指示信号が入力されると、共用エントランスのセキュリティ設備(自動ドア)をセキュリティ解除(1次セキュリティ解除)するべく、共用エントランスの自動ドアに駆動信号を出力する。これにより、共用エントランスの自動ドアが開錠し、1次セキュリティが解除される。
【0046】
来訪者は、開錠された共用エントランスの自動ドアを通過して建造物に入館すると、一時登録専用装置3に自身が所持する携帯型の記憶媒体8をかざす。一時登録専用装置3は、通信可能領域内で記憶媒体8がかざされると、制御装置7の制御により、その記憶媒体8との間で通信を行い、記憶媒体8から固有情報(記憶媒体8を特定する情報)を取得する。そして、制御装置7の登録処理部7bは、一時登録専用装置3が取得した記憶媒体8の固有情報を記憶部7cに記憶して一時登録する。
【0047】
なお、一時登録専用装置3が入力器を備えた構成では、入力器から訪問先部屋の部屋番号又は目的階が入力された後、通信可能領域内で記憶媒体8がかざされると、制御装置7の制御により、その記憶媒体8との間で通信を行い、記憶媒体8から固有情報を取得する。そして、制御装置7の登録処理部7bは、一時登録専用装置3が取得した記憶媒体8の固有情報を記憶部7cに記憶して一時登録する。また、入力器から入力される訪問先部屋の部屋番号とパスワードを正常認証した後、通信可能領域内で記憶媒体8がかざされると、制御装置7の制御により、その記憶媒体8との間で通信を行い、記憶媒体8から固有情報を取得する。そして、制御装置7の登録処理部7bは、一時登録専用装置3が取得した記憶媒体8の固有情報を記憶部7cに記憶して一時登録する。さらに、共用エントランス通過後のセキュリティ設備のセキュリティ解除を許可する記憶媒体8の固有情報が予め記憶部7cに事前登録されている場合には、この事前登録された固有情報と一時登録専用装置3が取得した固有情報とが一致したときに、一時登録専用装置3から取得した固有情報を記憶部7cに記憶して一時的に登録する。
【0048】
次に、来訪者は、上記一時登録専用装置3による記憶媒体8の一時登録後、1階エレベータホールに設置された情報取得装置4Aに自身が所持する一時登録済の記憶媒体8をかざし、その記憶媒体8の固有情報を情報取得装置4Aに取得させる。制御装置7の情報処理部7dは、情報取得装置4Aが取得した記憶媒体8の固有情報と、記憶部7cに一時登録した記憶媒体8の固有情報とを照合し、両者が一致すれば、1階エレベータホールのセキュリティ設備(エレベータ)をセキュリティ解除するべく、駆動信号出力部7eからエレベータに駆動信号を出力する。これにより、エレベータが1階エレベータホールまで呼び出されて開錠し、2次セキュリティが解除される。
【0049】
次に、訪問者は、エレベータに乗り、訪問先部屋505号がある「5階」のボタンを押し、目的階の「5階」に到達してエレベータが開錠すると、エレベータを降り、目的階エレベータホールに設置された情報取得装置4Bに自身が所持する一時登録済の記憶媒体8をかざし、その記憶媒体8の固有情報を情報取得装置4Bに取得させる。制御装置7の情報処理部7dは、情報取得装置4Bが取得した記憶媒体8の固有情報と、記憶部7cに一時登録した記憶媒体8の固有情報とを照合し、両者が一致すれば、目的階エレベータホールのセキュリティ設備(目的階の自動ドア)をセキュリティ解除するべく、駆動信号出力部7eから目的階の自動ドアに駆動信号を出力する。これにより、目的階の自動ドアが開錠し、3次セキュリティが解除される。そして、訪問者は、開錠した目的階の自動ドアを通過し、訪問先部屋505号の玄関先まで移動することができる。
【0050】
このように、本例の多重セキュリティシステム1では、まず、共用エントランスの呼出操作機2からインターホン機器にて来訪者が居住者を呼び出し、居住者がインターホン子機5で応答して来訪者の入館を許可してインターホン子機5の開錠ボタンを押せば、共用エントランスの自動ドア(セキュリティ設備)が開錠して1次セキュリティが解除され、来訪者が共用エントランスから建造物に入館できる。その後、来訪者は、建造物内の一時登録専用装置3に自身が所持する記憶媒体8をかざして一時登録を行い、以降は一時登録された記憶媒体8を情報取得装置4(4A,4B)にかざすだけで、順次セキュリティ設備(エレベータ、目的階の自動ドア)のセキュリティ解除(2次セキュリティ解除、3次セキュリティ解除)が行え、目的階又は訪問先部屋まで辿り着くことができる。
【0051】
なお、上述した多重セキュリティシステム1では、訪問者が所持する記憶媒体8の固有情報が記憶部7cに一時登録され、この一時登録から予め決められた設定時間が経過したときに、一時登録された記憶媒体8の固有情報を記憶部7cから抹消して無効化処理することができる。
【0052】
また、上述した多重セキュリティシステム1では、訪問者が訪問先部屋又は目的階に辿り着くまでの全てのセキュリティ設備のセキュリティ(1次〜3次セキュリティ)が解除されたときに、記憶部7cに一時登録された記憶媒体8の固有情報(許可情報やパスワードを含む場合もある)を抹消して無効化処理することもできる。
【0053】
さらに、上述した多重セキュリティシステム1では、情報取得装置4(4A,4B)が取得した記憶媒体8の固有情報と、記憶部7cに登録記憶された記憶媒体8の固有情報との照合による認証回数が予め決められた設定回数に達したときに、記憶部7cに一時登録された記憶媒体8の固有情報を抹消して無効化処理することもできる。
【0054】
ところで、本発明に係る多重セキュリティシステムは、上述した実施の形態において、共用エントランスから訪問先部屋まで3重のセキュリティ設備を備えた場合を例にとって説明したが、共用エントランスのセキュリティ設備を含め、少なくとも2重以上のセキュリティ設備を備えた構成であれば良い。
【0055】
そして、上述した本例の多重セキュリティシステムを採用すれば、従来からの運用形態を踏襲しつつ簡易的にセキュリティをかけることが可能になり、以下に示すような様々な効果を奏する。
【0056】
(1)記憶媒体8をセキュリティ解除のための一時的な鍵として用い、記憶媒体8を情報取得装置4にかざすだけの単純な操作により、共用エントランスを通過した以降のセキュリティ設備のセキュリティを順次解除することができる。これにより、従来に比べて居住者及び来訪者双方へのストレスが軽減され、多重セキュリティの利便性を維持することができる。
(2)記憶媒体8を一時登録する場合、専用のサーバーやデータベース等が必要なく、既存のシステムに依存しない独立したシステムを後付けで構築でき、他社機器との運用連携も不要であり、設備投資を抑えることができる。
(3)記憶媒体8を一時登録するにあたって、管理者やコンシェルジュが仲介又は介在する方法が一般的であるが、来訪者であることの承認行為を共用エントランスにて居住者が行い、来訪者が共用エントランスから入館後に改めて訪問者自身が一時登録専用装置3を用いて自身が所持する記憶媒体8の一時登録を行うので、来訪者認証行為と登録状態移行が同時に行え、管理者、コンシェルジュの負担が無くなり、24時間新規の来訪者の一時登録が可能になる。
(4)セキュリティはそのままに目的階の居住者部屋まで友人や知人をストレスなく招き入れたり、生活に必要なサービス(宅配、郵便、ケータリング)を享受できる。
(5)一時登録された記憶媒体8の固有情報(許可情報やパスワードを含む場合もある)を設定時間経過後に記憶部7cから抹消して無効化処理すれば、記憶媒体8をセキュリティ解除のための一時的な鍵として用いることができ、不用意なセキュリティ解除を防ぎ、セキュリティを保つことができる。
(6)訪問者が訪問先部屋又は目的階に辿り着くまでの全てのセキュリティ設備のセキュリティ(1次〜3次セキュリティ)が解除されたときに、一時登録された記憶媒体8の固有情報(許可情報やパスワードを含む場合もある)を記憶部7cから抹消して無効化処理すれば、記憶媒体8をセキュリティ解除のための一時的な鍵として用いることができ、不必要なセキュリティ解除を防ぐこともできる。
(7)一時登録された記憶媒体8による認証回数が予め決められた設定回数に達したときに、一時登録された記憶媒体8の固有情報を記憶部7cから抹消して無効化処理すれば、記憶媒体8をセキュリティ解除のための一時的な鍵として用いることができ、必要回数以上のセキュリティ解除を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 多重セキュリティシステム
2 呼出操作機
3 一時登録専用装置
4(4A,4B) 情報取得装置
5 インターホン子機
6 インターホン親機
7 制御装置
7a 通話制御部
7b 登録処理部
7c 記憶部
7d 情報処理部
7e 駆動信号出力部
8 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の共用エントランスの外側に設置され、訪問者が訪問先部屋の居住者を呼び出して通話するための呼出操作機を有し、該呼出操作機による前記訪問先部屋の居住者の承認により前記共用エントランスを通過した以降の前記訪問先部屋又は目的階までの間に少なくとも1つのセキュリティ設備を備えた多重セキュリティシステムにおいて、
前記共用エントランスの内側のフロアに設置され、前記共用エントランスを通過した訪問者が所持する記憶媒体との間の通信により該記憶媒体から固有情報を取得する一時登録専用装置と、
前記セキュリティ設備に対応して設けられ、前記記憶媒体との間の通信により該記憶媒体から固有情報を取得する情報取得装置と、
前記一時登録専用装置が取得した前記記憶媒体の固有情報を記憶して一時的に登録し、前記情報取得装置が取得した固有情報が前記一時的に登録された固有情報と一致したときに、該当するセキュリティ設備のセキュリティを解除する制御装置とを備えたことを特徴とする多重セキュリティシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記セキュリティ設備の解除を許可する記憶媒体の固有情報を予め記憶しており、この記憶された固有情報と前記一時登録専用装置が取得した固有情報とが一致したときに、前記一時登録専用装置から取得した固有情報を記憶して一時的に登録することを特徴とする請求項1記載の多重セキュリティシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記記憶媒体が一時的に登録されてから設定時間が経過したときに、前記一時的に登録された前記記憶媒体の固有情報を抹消して無効化処理することを特徴とする請求項1又は2記載の多重セキュリティシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、来訪者が訪問先部屋又は目的階に辿り着くまでの全てのセキュリティ設備が解除されたときに、前記一時的に登録された前記記憶媒体の固有情報を抹消して無効化処理することを特徴とする請求項1又は2記載の多重セキュリティシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−55596(P2013−55596A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193954(P2011−193954)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】