説明

多重効用缶式蒸留水製造装置、その蒸気滅菌方法及び熱水殺菌方法

【課題】簡単な付加的手段を備えることにより、通常は従来のように蒸留水を製造することができ、しかも滅菌時や殺菌時には装置内全体を高温高圧の自己発生蒸気で滅菌し又は熱水で殺菌することができる多重効用缶式蒸留水製造装置、その蒸気滅菌方法及び熱水殺菌方法を提供する。
【解決手段】供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備える多重効用缶式蒸留水製造装置において、供給水入口とコンデンサとの間に更に加熱器を設け、供給水を加熱器を通してコンデンサに供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多重効用缶式蒸留水製造装置、その蒸気滅菌方法及び熱水殺菌方法に関し、更に詳しくは複数の竪形蒸発缶とその付属機器等から構成される多重効用缶式蒸留水製造装置、その蒸気滅菌方法及び熱水殺菌方法に関する。例えば各種医薬品の製造工場や医療現場では、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)や日本薬局方に適合した蒸留水が求められる。本発明はかかる蒸留水を製造するための多重効用缶式蒸留水製造装置、その蒸気滅菌方法及び熱水殺菌方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような多重効用缶式蒸留水製造装置として、供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備えるものが知られており、またその蒸気滅菌方法として、装置の各所に装置内を所定温度及び所定圧力の滅菌条件にするためのバイパス管路を設けて該管路に適宜切換えた後、供給水の所定量を第1予熱手段を経て第1蒸発缶に導入し、ここで加熱して蒸気を発生させ、該蒸気を2番目以降の各予熱手段及び各蒸発缶等を経て、コンデンサやそれらの接続管に順次送り、各予熱手段内、各蒸発缶内及び各接続管内等に蒸気を接触させて滅菌する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところが、かかる従来の多重効用缶式蒸留水製造装置及びその滅菌方法には、配管が極めて複雑であって、その製作に手間がかかり、また操作が厄介というだけでなく、供給水入口配管、蒸留水出口配管、外気導入手段等、依然として装置内に滅菌や殺菌が不充分な箇所、更には滅菌や殺菌がされない個所が存在するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−051588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、簡単な付加的手段を備えることにより、通常は従来のように蒸留水を製造することができ、しかも滅菌時や殺菌時には、供給水入口配管、蒸留水出口配管、外気導入手段等も含めて装置内全体を高温高圧の自己発生蒸気で充分に滅菌し又は熱水で殺菌することができる多重効用缶式蒸留水製造装置、その蒸気滅菌方法及び熱水殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決する本発明は、供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備える多重効用缶式蒸留水製造装置において、供給水入口とコンデンサとの間に更に加熱器を設け、供給水を加熱器を通してコンデンサに供給するようにして成ることを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置に係る。
【0007】
また本発明は、前記の本発明に係る多重効用缶式蒸留水製造装置の蒸気滅菌方法であって、供給水を加熱器で加熱することにより、コンデンサを含む装置内を高温高圧の自己発生蒸気により滅菌することを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置の蒸気滅菌方法に係る。
【0008】
更に本発明は、前記の本発明に係る多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法であって、加熱器と第1コンデンサとを接続する配管途中から分岐して供給水入口配管の基端部へと戻る熱水殺菌循環配管を設け、加熱器で加熱した熱水を、供給水入口配管、供給水ポンプ、加熱器、熱水殺菌循環配管及び元の供給水入口配管の経路で循環させて供給水入口配管の管路を熱水殺菌することを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法に係る。
【0009】
本発明に係る多重効用缶式蒸留水製造装置(以下、単に本発明の装置という)も、従来の多重効用缶式蒸留水製造装置と同様、供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気と水滴とを分離する気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備えている。気水分離手段としては各蒸発缶の下流側に気水分離器を接続することもできるし、また各蒸発缶の下部室に気水分離機構を設けることもできる。本発明の装置は、供給水入口とコンデンサとの間に更に加熱器を備え、供給水を加熱器を通してコンデンサに供給するように成っている。
【0010】
本発明の装置では、これを用いる通常の蒸留水製造時には、加熱器を機能させず、供給水は加熱器をいわば素通りさせてコンデンサに供給するが、詳しくは後述するように、その蒸気滅菌時には、供給水を加熱器で加熱して、通常は121〜130℃に加熱してコンデンサに供給し、更に予熱器等で加熱して蒸発缶等の装置内へ供給することにより、コンデンサを含む装置内を高温高圧の自己発生蒸気、通常は121℃以上の自己発生蒸気により滅菌する。またその熱水殺菌時には、加熱器で加熱した熱水を供給水入口配管の管路へ循環させることにより、この管路を熱水殺菌する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、供給水入口とコンデンサとの間への加熱器の付設という簡単な付加的手段により、通常は従来のように蒸留水を製造することができ、しかも蒸気滅菌時や熱水殺菌時には、供給水入口配管、蒸留水出口配管、外気導入手段等も含めて装置内全体を高温高圧の自己発生蒸気で滅菌し又は熱水で殺菌することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の装置、蒸気滅菌手順及び熱水殺菌手段を例示する全体の系統図。
【実施例】
【0013】
図1にしたがって、本発明の装置、その蒸気滅菌方法及び熱水殺菌方法を説明する。図1に例示した本発明の装置では、合計3本の第1蒸発缶70、第2蒸発缶80及び第3蒸発缶90を備え、第3蒸発缶90の下流側にコンデンサが接続されている。第1蒸発缶70、第2蒸発缶80及び第3蒸発缶90の各下部室には図示しない気水分離機構が内蔵されており、コンデンサは第1コンデンサ30とその下流側に接続された第2コンデンサ40とを備え、第2コンデンサ40の下流側にU字管部を有する蒸留水出口配管4が接続されている。供給水入口配管1と第1コンデンサ30との間には加熱器20が設けられており、供給水入口配管1は加熱器20を介して第1コンデンサ30へと接続されていて、冷却水入口配管8は第2コンデンサ40へと接続されている。第1コンデンサ30は排熱回収器50及び予熱器60を介して第1蒸発缶70の上部室70Aへと接続されている。
【0014】
図1に例示した本発明の装置では、第2コンデンサ40の伝熱管内部に残る冷却水を排除し、冷却水接液部の腐食を防止するため、洗浄水入口配管10と洗浄水出口配管11を設け、装置の蒸気滅菌運転に入る前に接液部を洗浄するようになっている。洗浄水入口配管10は冷却水出口配管9の自動式開閉弁9Bと第2コンデンサ40の冷却水出口ノズルとの間の冷却水出口配管から分岐していて、自動式開閉弁10Bと逆止弁10Cが配設されている。自動式開閉弁10Bは装置の滅菌に先立つ洗浄時のみに開き、このとき冷却水出口配管9の自動式開閉弁9Bは閉鎖されている。また洗浄水出口配管11は第2コンデンサ40の冷却水接液部を洗浄した洗浄水の洗浄水出口配管であり、冷却水入口配管8の自動式開閉弁8Bと第2コンデンサ40の冷却水入口ノズルとの間の冷却水入口配管8から分岐していて、自動式開閉弁11Bが配設されている。洗浄水出口配管11に配設された自動式開閉弁11Bは装置の洗浄及び滅菌時のみに開き、このとき冷却水入口配管8の比例制御弁8Cは閉鎖されている。8Cは比例制御弁であるので、冷却水洩れを完全に防ぐことが難しく、漏洩を防ぐために自動式開閉弁8Bを介装する。
【0015】
加熱器20は装置を蒸気滅菌するときと供給水配管を熱水殺菌するときに使用する二重管板式多管円筒型熱交換器であり、供給水入口配管1の供給水入口と切替用の比例制御弁1Hとの間に配設し、加熱器20と比例制御弁1Hとの間には温度センサ1Gを配設する。装置の蒸気滅菌運転時に温度センサ1Gにより加熱器20で加熱された供給水を設定温度(例えば121〜130℃)に保持するため、加熱用蒸気入口配管2の蒸気止め弁2Bと第1蒸発缶70の蒸気入口との間より加熱器蒸気配管21を分岐し、ここには自動式開閉弁21Aと比例制御弁21Bとを配設して、加熱器20に加熱蒸気を供給し、温度センサ1Gと電気的に連係している比例制御弁21Bによって加熱蒸気量を調節する。加熱器20の蒸気ドレンノズルと排熱回収器50のノズルとの間に蒸気ドレン配管22を配設し、その間に蒸気トラップ22Aと逆止弁22Bとを介在させて、加熱器20で発生する蒸気ドレンを排出する。
【0016】
また図1に例示した本発明の装置では、外気導入手段として外気入口配管15とベントフィルタ6Fとを備え、ベントフィルター6Fの滅菌配管32が設けられている。滅菌配管32は第1コンデンサ30に連結されている気体出口配管6と外気入口配管15との間に渡されていて、ベントフィルタ6Fと附属配管を滅菌するために利用する。ベントフィルタ6Fの滅菌配管32の配管系には自動式開閉弁32A、温度センサー32B、オリフイス32C及び逆止弁32Dが配設されている。
【0017】
更に図1に例示した本発明の装置では、飽和水出口バイパス配管92が設けられている。飽和水出口バイパス配管92は第3蒸発缶90の飽和水出口と飽和水出口配管7の自動式開閉弁7Bとの間から分岐し、飽和水出口配管7のオリフイス7Cと手動三方弁7Dとの間で合流するように配設されている。飽和水出口バイパス配管92には流路切換え用の自動式開閉弁92B、温度センサ92A及びオリフイス92Cが配設されている。オリフイス92Cは装置の蒸気滅菌の際、排出する気液混合流体の排出量を調整して装置内に所定の蒸気滅菌圧力を確保するためのものである。蒸気滅菌運転時、自動式開閉弁7Bは閉じ、自動式開閉弁92Bは開く。
【0018】
更にまた図1に例示した本発明の装置では、U字管蒸気滅菌配管41が設けられている。U字管蒸気滅菌配管41は蒸留水出口配管4に配設された自動式開閉弁4Dと廃蒸留水出口配管5に配設された自動式開閉弁5Bの近辺から分岐し、第2コンデンサ40のドレン出口配管12へと接続された配管であって、第2コンデンサ40からU字管部を含む蒸留水出口配管4を直接的に蒸気滅菌するためのものである。U字管蒸気滅菌配管41には自動式開閉弁41A、温度センサ41B、オリフイス41C及び逆止弁41Dが配設されている。ドレン出口配管12は第2コンデンサ40の蒸留水出口ノズルに接続された蒸留水出口配管4のU字管部に溜まるドレンを外部に排出させる配管であって、ドレン出口配管12には自動式開閉弁12A、温度センサ12B、オリフイス12C及び逆止弁12Dが配設されている。
【0019】
そして図1に例示した本発明の装置では、供給水循環配管13が設けられている。供給水循環配管13は比例制御弁1Hと温度センサ1Gとの間の供給水入口配管1から分岐し、逆止弁14C経て供給水入口配管1の基端部に戻るように配設されている。供給水循環配管13には、自動式開閉弁13B及び逆止弁14Cが配設され、供給水入口配管1の供給水ポンプ1Bにて供給水を循環させるようになっている。供給水を循環させるときに供給水ポンプ1Bの出口圧力が供給水入口配管1の元配管圧力を超えることが無いようにするため、供給水元配管14に圧力センサ14Dを、また供給水ポンプ1Bの出口に圧力センサ1Cを配設し、常に供給水ポンプ1Bの出口圧力が供給水元配管14の圧力以下となるよう供給水ポンプ1Bをインバータ制御すると共に比例制御弁1Hの開度を調節する。
【0020】
以下、本発明の装置の蒸気滅菌方法を図1に例示した本発明の装置に基づいて更に詳しく説明する。本発明の装置の蒸気滅菌運転に入る前に、第2コンデンサ40の伝熱管に残っている冷却水を排除し、冷却水接液部の腐食を防止するために、洗浄水(通常は逆浸透膜処理水や限界濾過膜処理水等の純水)による冷却水配管の洗浄を行う。先ず、自動式開閉弁8B,9B及び比例制御弁8Cを閉じ、自動式開閉弁10B,11Bを数分間開けることにより、冷却水出口配管9の自動式開閉弁9Bと比例制御弁8Cの間に残る冷却水(第2コンデンサ40内の冷却水も含む)を洗浄水にて押し流し、接液部を清浄にする。その後、装置の蒸気滅菌中は、自動式開閉弁10Bは閉じ、自動式開閉弁11Bは開とする。装置の蒸気滅菌中、昇温により、残留している洗浄水が膨張したり、蒸発するため、これを逃がす必要があるからである。
【0021】
本発明の装置を蒸気滅菌するに際しては、先ず、洗浄した後、自動式開閉弁14B,11B,12A,41A,32A,92B,67Aを開とし、自動式開閉弁4D,5B,8B,9B,7B,10B,13Bを閉とすることにより、第1蒸発缶70の加熱室と予熱器60の加熱室に加熱用の蒸気(通常は工場蒸気)を送って加熱し、第3蒸発缶の下部室90Cから飽和水を飽和水出口配管7へと抜き、またU字配管内に残る蒸留水もドレン出口配管12へと抜いて空状態にする。しかる後、自動式開閉弁1Eを開き、供給水元配管14より供給水入口配管1に供給水を供給する。供給水の供給量は供給水ポンプ1Bのインバータにより蒸留水製造時の通常は1/5〜4/5倍の量とする。供給水は、圧力センサ1C、流量計1D、自動式開閉弁1E及び手動弁1Fを経て、加熱器20に入り、温度センサ1Cにより加熱器20で設定温度(例えば125〜130℃)に加熱され、第1コンデンサ30、排熱回収器50、予熱器60の接液部を所定の温度(例えば121℃)以上に保持しながら第1蒸発缶70の上部室70Aに入る。供給水を所定の温度以上に保持するのは装置内を滅菌する際の温度保持の安定に役立つ。
【0022】
第1蒸発缶70の上部室70Aに入った供給水は、蒸留水製造時の場合と同様に、伝熱管を落下する間に加熱されて純蒸気と飽和水が混在する気水混合体となり、下部室70Cに至る。気水混合体は下部室70Cに内蔵されている気水分離機構にて第1純蒸気と第1飽和水とに分離され、第1純蒸気は上昇して上部の純蒸気排出口から第2蒸発缶80の加熱室80Bに入って、加熱源となると共にその間の接触面を滅菌する。そして第1飽和水は第1飽和水配管72からオリフイス72Aを通って第2蒸発缶80の上部室80Aに入り供給水となる。
【0023】
一方、供給水の供給量は滅菌すべき対象の容量により通常は蒸留水製造時の約1/5〜4/5程度としているので、蒸留水製造運転時よりも飽和水量が少なくなるために、オリフイス72Aを通る第1飽和水は一部の純蒸気も含み、接触面を蒸気滅菌する。以下の第2蒸発缶80及び第3蒸発缶90においても同様である。第1飽和水は第2蒸発缶80の上部室80Aに入り、第1蒸発缶70の場合と同様、伝熱管により一部は蒸発して気水混合体となって下部室80Cに落下し、下部室80Cに内蔵される気水分離機構にて第2純蒸気と第2飽和水とに分離され、第2純蒸気は上昇して上部の純蒸気排出口から第3蒸発缶90の加熱室90Bに至って、その接触部を蒸気滅菌する。下部室80Cで除去された微細水滴はオリフイス81Aを介して第3蒸発缶90の下部室90Cに入る。第1飽和水と同様に第2飽和水は飽和水排出口及び第2オリフイス82Aを経て第3蒸発缶90の上部室90Aに至る間の接触面を蒸気滅菌する。
【0024】
第3蒸発缶90の上部室90Aに流入した第2飽和水は伝熱管により加熱され、気水混合体となって下部室90Cに至り、下部室90Cに内蔵されている気水分離機構にて第3純蒸気と第3飽和水とに分離され、これらは第3蒸発缶90の伝熱管及び下部室90Cに至る間の接触面を蒸気滅菌する。そして第3飽和水は飽和水出口バイパス配管の温度センサ92A、自動式開閉弁92B及びオリフイス92Cを経て飽和水出口配管7に戻り、その間を蒸気滅菌し、外部に排出される。その排出量はオリフイス92Cにて調整され、装置内に滅菌圧力が保持される。第3蒸発缶90の下部室90Cで分離された第3純蒸気は純蒸気排出口から第1コンデンサ30の内部に流入する。また第3蒸発缶90の加熱室90Bの純蒸気は一部凝縮後、第3凝縮水配管91にて気水混合体となり、接触面を蒸気滅菌しながらオリフイス91Aを経て第1コンデンサ30に流入する。
【0025】
第3凝縮水配管91及び第3純蒸気配管93のそれぞれから第1コンデンサ30に流入した純蒸気若しくは気水混合体となっている凝縮液は接触面を蒸気滅菌しながら第2コンデンサ40の蒸留水出口を経て、蒸留水出口配管4のU字管部に入り、接触面を蒸気滅菌しながらU字管蒸気滅菌配管41の自動式開閉弁41A、温度センサ41B、オリフイス41C及び逆止弁41Dを経て外部に排出される。その間に発生したドレンはドレン出口配管12の自動式開閉弁12A、温度センサ12B、オリフイス12C及び逆止弁12Dを経て外部に排出される。
【0026】
蒸留水出口配管4の自動式開閉弁4Dは閉とされ、同時に廃蒸留水出口配管5の自動式開閉弁5Bも閉とされていて、U字管蒸気滅菌配管41の自動式開閉弁41Aが開かれているので、第3蒸発缶90の純蒸気を第1コンデンサ30、第2コンデンサ40を経て蒸留水出口配管4のU字管部に導き、U字管蒸気滅菌配管41のオリフイス41Cにて管内圧力を滅菌圧力に調整して、管内を蒸気滅菌する。純蒸気は逆止弁41Dを経てドレン出口配管12の出口手前に合流させ、ドレン出口配管12より排出する。
【0027】
ベントフィルタ滅菌配管32は第1コンデンサ30と連結されている気体出口配管6の基端から自動式開閉弁32Aを経て分岐し、気体出口配管6の末端に合流している。これにより、第1コンデンサ30へと流入する純蒸気の一部を抜き出し、ファイルタエレメントが収納されているベントフィルタ6Fを蒸気滅菌する。ベントフィルタ滅菌配管32には温度センサ32B、オリフイス32C及び逆止弁32Dが配設されている。
【0028】
そして、気体出口配管6のオリフイス6Eにより装置内圧力が蒸気滅菌圧力となるように予め調整されているので、第1コンデンサ30に流入した純蒸気の一部は自動式開閉弁32Aを経てベントフィルタ滅菌配管32に入り、ファイルタエレメントが収納されているベントフィルタ6F、温度センサ32B及びオリフイス32Cを蒸気滅菌しながら、逆止弁32Dを経て気体出口配管6に合流して外部に排出される。ここでも排出量はオリフイス32Cにより調整され、装置内の滅菌圧力が保持される。
【0029】
図1に例示した本発明の蒸留水製造装置は、第1蒸発缶70において供給水を蒸気となし、この蒸気(自己蒸気)を装置内に順次導くことによって、装置内全体を蒸気滅菌することができる。そして自己蒸気を装置内に順次導入するに際しては、予め第1コンデンサ30の冷却水を洗浄水で洗浄したため、腐食等の問題が予め除去されているので、装置の長期使用に耐えることができる。
【0030】
図1に例示した本発明の装置では、供給水入口配管1の管路を高温(通常は80〜130℃)の供給水により熱水殺菌を行うときは、第1コンデンサ30以降のすべての機器は使用しないため、比例制御弁1Hは閉じ、自動式開閉弁13Bを開ける。そして加熱器20の加熱室には加熱源となる蒸気が供給される。供給水元配管14の自動式開閉弁14Bが開けられ、供給水入口配管1から送入された供給水は、供給水ポンプ1B、圧力センサ1C、流量計1D、自動式開閉弁1E、流量調整弁1F、加熱器20の伝熱管、温度センサ1G、自動式開閉弁13B、逆止弁14C及び元の供給水入口配管1からなる熱水殺菌循環配管13が構成される。
【符号の説明】
【0031】
1 供給水入口配管
2 加熱用の蒸気入口配管
3 蒸気ドレン出口配管
4 蒸留水出口配管
5 廃蒸留水出口配管
6 気体出口配管
7 飽和水出口配管
8 冷却水入口配管
9 冷却水出口配管
10 洗浄水入口配管
11 洗浄水出口配管
12 ドレン出口配管
15 外気入口配管
20 加熱器
30 第1コンデンサ
40 第2コンデンサ
50 排熱回収器
60 予熱器
70 第1蒸発缶
80 第2蒸発缶
90 第3蒸発缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備える多重効用缶式蒸留水製造装置において、供給水入口とコンデンサとの間に更に加熱器を設け、供給水を加熱器を通してコンデンサに供給するようにして成ることを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の多重効用缶式蒸留水製造装置の蒸気滅菌方法であって、供給水を加熱器で加熱して、コンデンサを含む装置内を高温高圧の自己発生蒸気により滅菌することを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置の蒸気滅菌方法。
【請求項3】
コンデンサを第1コンデンサと第2コンデンサとで構成し、加熱器を第1コンデンサに接続すると共に、第2コンデンサに蒸留水出口配管を接続し、蒸留水出口配管のU字管部からU字管蒸気滅菌配管を分岐して設け、また外気導入手段の外気入口配管から気体出口配管末端部へと渡りベントフィルタ滅菌配管を設けて、蒸留水出口配管及び外気導入手段のベントフィルタをも自己発生蒸気により滅菌する請求項2記載の多重効用缶式蒸留水製造装置の蒸気滅菌方法。
【請求項4】
請求項1記載の多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法であって、加熱器と第1コンデンサとを接続する配管途中から分岐して供給水入口配管の基端部へと戻る熱水殺菌循環配管を設け、加熱器で加熱した熱水を、供給水入口配管、供給水ポンプ、加熱器、熱水殺菌循環配管及び元の供給水入口配管の経路で循環させて供給水入口配管の管路を熱水殺菌することを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−56285(P2013−56285A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194469(P2011−194469)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(597103573)株式会社イシン技研 (5)
【Fターム(参考)】