説明

多重化蒸気タービン制御装置

【課題】多重化した圧力制御装置に故障が発生した場合であっても制御に外乱を生じない多重化蒸気タービン制御装置を提供することである。
【解決手段】3重化された各々の圧力制御装置の圧力設定器22は、3重化された圧力制御装置の3つの圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cのうちの中間値圧力偏差信号を求める中間値選択器8Aと、中間値選択器8Aで得られた中間値圧力偏差信号から自系の圧力偏差信号を差し引いた圧力偏差差分信号を係数倍する係数器11Aと、係数器11Aの出力と圧力設定増減信号との加算信号を積分して圧力設定信号として出力する積分器225Aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3重化された圧力検出器及び3重化された圧力制御装置を用いて、蒸気加減弁を開閉制御して蒸気タービンを制御する多重化蒸気タービン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、多重化構成された蒸気タービン制御装置としては、タービン入口蒸気圧力を検出する圧力検出器及び蒸気タービンに流入する蒸気圧力を制御する圧力制御装置をそれぞれ3重化したものがある。
【0003】
図8は、圧力検出器及び圧力制御装置が3重化されたタービン制御装置の一例を示す構成図である。蒸気発生器1002で発生した蒸気は、主蒸気止め弁1003及び蒸気加減弁1004を通って蒸気タービン1005に導かれ、蒸気タービン1005で発電機1006を駆動する。主蒸気止め弁1003は、タービン停止時には全閉となりタービン運転中は全開となる。また、蒸気加減弁1004はタービン制御装置1001からの開度指令信号V1001に基づき蒸気加減弁1004の弁開度を調整して、蒸気タービン1005への蒸気流入量を調節する。蒸気タービン1005は蒸気流入量に応じたタービン出力を発生し、タービン回転軸に直結した発電機1006により発電を行う。蒸気タービン1005に流入し仕事を終えた蒸気は、図示省略の復水器へ排出される。
【0004】
主蒸気止め弁1003の入口側には、圧力検出器1A、1B、1Cが設置されている。3個の圧力検出器1A、1B、1Cを設置しているのは、圧力制御装置2A、2B、2Cの多重化に対応するためである。3個の圧力検出器1A、1B、1Cは同じ型式の検出器である。タービン制御装置1001は、3重化された圧力制御装置2A、2B、2Cと、中間値選択器3と、蒸気弁制御装置4とから構成される。圧力検出器1A、1B、1Cで検出された圧力信号P1A、P1B、P1Cは圧力制御装置2A、2B、2Cにそれぞれ3信号並列に入力される。
【0005】
圧力制御装置2A、2B、2Cは、それぞれ同じ型式の装置であり、制御信頼性を確保するために3重化している。圧力制御装置2A、2B、2Cは、圧力検出器1A、1B、1Cで検出した圧力信号P1A、P1B、P1Cが所定圧力となるような制御を行う。それぞれの圧力制御装置2A、2B、2Cからの圧力制御信号V21A、V21B、V21Cは中間値選択器3に入力され、3つの信号のうちの中間値の信号をV1として出力して、蒸気弁制御装置4に入力する。蒸気弁制御装置4は蒸気加減弁1004の開度を調整するための開度指令信号V1001を出力する。
【0006】
図9はタービン制御装置1001の詳細構成図であり、圧力制御装置2A、2B、2Cの内部構成を詳細に示している。圧力制御装置2A、2B、2Cは同一構成であるので、圧力制御装置2A、2B、2Cの内部構成については圧力制御装置2Aを代表して説明する。圧力検出器1A、1B、1Cで検出された圧力信号P1A、P1B、P1Cは、圧力制御装置2Aの中間値選択器21Aに入力され、これら3つの信号のうちの中間値に相当する信号が選択され、中間値圧力信号P21Aとして加算器23Aに出力される。加算器23Aには圧力設定器22Aからの圧力設定信号P22Aも入力される。
【0007】
圧力設定器22Aは圧力設定信号P22Aを設定するものである。図10は圧力設定器22Aの構成図である。圧力設定器22Aは、圧力設定信号P22Aを設定増とするための信号発生器221Aと、圧力設定信号P22Aを設定減とするための信号発生器222Aとを有する。信号発生器221Aからの設定増の圧力設定信号P221Aは切換器223Aの端子aに入力される。同様に、信号発生器222Aからの設定減の圧力設定信号P222Aは切換器224Aの端子aに入力される。
【0008】
切換器223Aは端子Dの設定増がONの時には、端子aと端子cとを接続する。この場合は、出力信号である設定増減信号P223AはP221Aとなる。また、端子Dの設定増がOFFの時には、端子aと端子cとは開放状態となり出力は0となる。同様に、切換器224Aは端子Dの設定減がONの時には、端子aと端子cとを接続する。この場合は、出力信号である設定増減信号P223AはP222Aとなる。また、端子Dの設定減がOFFの時には、端子aと端子cとは開放状態となり出力は0となる。設定増減信号P223Aは積分器225Aに入力され、積分されて得られた信号が圧力設定信号P22Aとなる。
【0009】
このようにして、3重化構成のそれぞれ圧力制御装置1A、1B、1Cの圧力設定器22A、22B、22Cで設定された圧力設定信号P22A、P22B、P22Cは、図9に示す中間値選択器5に入力され、得られた中間値信号P2を表示器6に表示して操作員の圧力設定指針として使用する。
【0010】
また、圧力設定器22Aで得られた圧力設定信号P22Aは加算器23Aに入力され、加算器23Aで中間値圧力信号P21Aから圧力設定信号P22Aを差し引いた圧力偏差信号P23Aが求められる。圧力偏差信号P23Aは係数器24Aに入力され、係数器24Aで係数倍された信号が圧力制御信号V21Aとなる。ここで、係数器24Aの設定は圧力偏差信号P23Aに対して、どの程度の割合で蒸気加減弁開度を開くかを決めるもので、一般には圧力調定率と称している。設定係数は、通常制御の圧力偏差量をできるだけ小さくするために比較的大きな係数(本例では50倍)に設定している。
【0011】
そして、3重化構成のそれぞれ圧力制御装置1A、1B、1Cで得られた圧力制御信号V21A、V21B、V21Cは中間値選択器3に入力され、3つの信号のうちの中間値の信号をV1として出力して、蒸気弁制御装置4に入力する。蒸気弁制御装置4は蒸気加減弁1004の開度を調整するための開度指令信号V1001を出力する。
【0012】
ここで、3重系積分信号のリミッタ方法として、自系のデジタル制御装置の積分信号出力が3重系のデジタル制御装置の各積分信号の中間値からずれた際に、自系の積分信号出力を中間値±αに制限するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
3重系のデジタル制御装置の積分信号をトラッキングする3重積分信号のトラッキング方式として、自系のデジタル制御装置の積分信号の出力が3重系のデジタル装置の各積分信号の中間値からずれた際に、自系のデジタル制御装置の積分信号の出力を中間値にトラッキングさせるようにしたものがある。(例えば、特許文献2参照)。
【0014】
また、中間値選択回路として、三重化された第1乃至第3の制御回路からそれぞれ出力される制御信号を入力し、これら3入力の中間値を出力する中間値選択器と、制御信号に対し予め設定されている制御許容値の最大値または最小値に相当するバイアス信号を出力するバイアス信号発生器と、第1乃至第3の制御回路に異常が発生したとき各々動作する第1乃至第3の異常検出リレーと、異常検出リレーの動作に応動し対応する制御回路の出力信号をバイアス信号に切り換え、中間値選択器に入力させる第1乃至第3の切換リレーと、第1乃至第3の切換リレーのうちいずれか1つの切換リレーが1番目に動作したことを条件に他の2つの切換リレーの動作を阻止するロジック回路とを具備したものがある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭63−108401号公報
【特許文献2】特開昭63−108403号公報
【特許文献3】特公平5−63801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、従来のものでは、圧力検出器1A、1B、1Cは同一の検出器であるが、実際には検出誤差を有している。また、圧力制御装置2A、2B、2Cは最近ではデジタル制御装置で構成されており、アナログの圧力信号を、アナログ/デジタル変換器で変換して装置内に取り込むが、ここにも変換誤差を有している。これらの誤差は3重化構成の圧力制御装置2A、2B、2Cのそれぞれの性能によって異なってくる。
【0016】
仮に、取り込み後の圧力信号P21Aが100.5%、P21Bが100.0%、P21Cが99.5%の状態で、圧力設定信号P22A=P22B=P22Cの等しい関係にあったとして、このときの圧力制御信号V21Bを100%とすると、V21Aは125%、V21Cは75%と、相互間の誤差を係数倍した差を持った信号を出力している。
【0017】
この状態で、圧力制御装置2Aが故障して、圧力制御信号V21Aが0%になったとすると、中間値信号V1は、それまでのV21B信号100%からV21C信号の75%に変化する。これにより蒸気加減弁開度が急減し、タービンへの流入蒸気量が減ることで、タービン出力が急減する。その後、蒸気発生器で発生している蒸気とタービン流入蒸気が不均衡になるので圧力信号P1A、P1B、P1Cが増加して圧力制御信号V21B、V21Cが増加するため蒸気加減弁開度が増加して或る値で安定となる。このように制御装置故障から安定点に至るまでの時間はタービン出力が大きく変動する。
【0018】
また、特許文献1、2のものは、プロセス制御系の閉ループ内に積分器を有する多重化制御系において、非選択系積分器の飽和を当該積分器出力に制限を持たせたり、補正(トラッキング)を加えて解決したものであり、比例系のプロセス制御系において、プロセス信号の多重化間の入力誤差によって生じる多重化制御系の出力不均衡を補正しようとするものではない。
【0019】
また、特許文献3のものは3重化信号の1系が異常となったときに残りの2系で安全に制御を続行しようとするものであり、検出器の誤差や取り込み誤差が係数倍され、3系の制御装置間での偏差が大きくなった状態において、中間値選択されていた系が異常になることで制御への外乱になることを防止できるものではない。
【0020】
本発明の目的は、多重化した圧力制御装置に故障が発生した場合であっても制御に外乱を生じない多重化蒸気タービン制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の多重化蒸気タービン制御装置は、3重化された圧力検出器で得られた3つのタービン入口蒸気圧力信号のうちの中間値と圧力設定器に設定された圧力設定値との圧力偏差信号に係数を乗算して圧力制御信号を出力する3重化された圧力制御装置と、3重化の圧力制御装置からの3つの圧力制御信号のうちの中間値に基づいて蒸気加減弁を開閉制御する蒸気弁制御装置とを備えた多重化蒸気タービン制御装置において、3重化された各々の圧力制御装置の圧力設定器は、3重化された圧力制御装置の3つの圧力偏差信号のうちの中間値圧力偏差信号を求める中間値選択器と、中間値選択器で得られた中間値圧力偏差信号から自系の圧力偏差信号を差し引いた圧力偏差差分信号を係数倍する係数器と、前記係数器の出力と圧力設定増減信号との加算信号を積分して圧力設定信号として出力する積分器とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多重化した圧力制御装置に故障が発生した場合であっても制御に外乱を生じない多重化蒸気タービン制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の一例の構成図である。本発明の多重化蒸気タービン制御装置は、3個の圧力制御装置2A、2B、2Cを有しているが、圧力制御装置2A、2B、2Cは同一構成であるので、図1では代表としてA系統の圧力制御装置2Aを図示している。
【0024】
図1において、本発明の第1の実施の形態における圧力制御装置2Aは、図10に示した圧力設定器22Aに対し、中間値選択器8A、加算器9A、係数器11Aが追加して設けられている。図9及び図10と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0025】
3重化された圧力制御装置の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cは、圧力制御装置の圧力設定器に入力される。すなわち、図1に示したA系統の圧力制御装置2Aの圧力設定器22Aにも、3つの圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cが入力される。3つの圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cは、圧力設定器22Aの中間値選択器8Aに入力され、中間値選択器8Aは3つの圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cのうちの中間値である中間値圧力偏差信号P71Aを加算器9Aに出力する。
【0026】
加算器9Aは当該系の圧力偏差信号P23Aから中間値圧力偏差信号P71Aを差し引いた偏差信号P72Aを係数器11Aに出力する。この偏差信号P72Aは係数器11Aで係数倍され、補正信号P74Aとして加算器12Aに出力される。係数器11Aの係数設定は、3重化間の不均衡抑制制御を安定に行うことができるように、できるだけ高い係数値に設定される。加算器12Aは、設定増減信号P223Aに補正信号P74Aを加算し、補正後の設定増減信号P75Aを積分器225Aに出力する。積分器225Aは、補正後の設定増減信号P75Aを積分して圧力設定信号P22Aを求め加算器23Aに出力する。
【0027】
これにより、加算器23Aは中間値選択器21Aで得られた中間値圧力信号P21Aから圧力設定信号P22Aを差し引いた圧力偏差信号P23Aを求め、圧力偏差信号P23Aを係数器24Aに出力して、係数器24Aにより係数倍されて圧力制御信号V21Aとなる。
【0028】
このように、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cの中間値に相当する信号を基準にして、この中間値信号と差が生じている系には補正信号(P74A、P74B、P74C)を加えて積分器225Aで積分する。これにより、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cは互いに等しい値となる。
【0029】
すなわち、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cが等しい値となるように圧力設定信号P22A、P22B、P22Cにより均衡制御するので、多重化した圧力制御装置2A、2B、2Cのいずれかに故障が発生した場合であっても制御に外乱を生じない。従って、タービン出力に変動が生じることがない。
【0030】
図2は本発明の第1の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の他の一例の構成図である。この他の一例は、図1に示した一例に対し、加算器9Aと係数器11Aの間に不感帯器10Aを追加して設けたものである。図1に示した一例と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0031】
図2に示すように、加算器9Aと係数器11Aの間に不感帯器10Aが設けられている。不感帯10Aは、中間値選択器8Aで得られた中間値圧力偏差信号P71Aから自系の圧力偏差信号P23Aを差し引いた圧力偏差差分信号P72Aが所定範囲よりも小さい時には零を出力し、所定範囲よりも大きいときは圧力偏差差分信号P23Aを出力する。図3は、不感帯10Aの特性の一例を示す特性図である。図3に示すように、不感帯器10Aは、入力信号が或る範囲以内では出力を零とするような特性を有する。
【0032】
このように、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cの中間値に相当する信号を基準にして、この中間値信号と差が生じている系の信号が不感帯設定範囲を超えている場合には補正信号(P74A、P74B、P74C)を加えて積分器225Aで積分する。これにより、3重化の圧力偏差信号が3重化間で均衡するように補正する。
【0033】
なお、不感帯10Aは、3重化の圧力制御装置の演算タイミングの違いによる均衡制御の変動や微少誤差値での不要な均衡制御による変動を防止するために設置しており、その不感帯10Aに相当する分の不均衡があっても、タービン出力変動が僅かとなるような設定としている。
【0034】
第1の実施の形態によれば、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cがほぼ等しくなるように圧力設定信号により均衡制御するので、多重化した圧力制御装置のいずれかに故障が発生した場合であっても制御に外乱を生じない。従って、タービン出力の変動が発生しない。また、不感帯10Aを設けた場合には均衡制御による不要な変動が生じない。
【0035】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の一例の構成図である。この第2の実施の形態は、図9に示した従来の圧力制御装置に対し、圧力設定信号補正部13Aを追加して設けたものである。この第2の実施の形態においても、3個の圧力制御装置2A、2B、2Cを有しているが、圧力制御装置2A、2B、2Cは同一構成であるので、図4では代表としてA系統の圧力制御装置2Aを図示している。図9と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0036】
3重化された圧力制御装置2A、2B、2Cの圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cは、圧力制御装置2A、2B、2Cの圧力設定器22A、22B、22Cに入力される。すなわち、図4に示したA系統の圧力制御装置2Aの圧力設定信号補正部13Aにも、3つの圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cが入力される。3つの圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cは、圧力設定信号補正部13Aの中間値選択器8Aに入力される。中間値選択器8Aは3つの圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cのうちの中間値である中間値圧力偏差信号P71Aを加算器9Aに出力する。
【0037】
加算器9Aは当該系の圧力偏差信号P23Aから中間値圧力偏差信号P71Aを差し引いた偏差信号P72Aを係数器11Aに出力する。この偏差信号P72Aは係数器11Aで係数倍され、補正信号P74Aとして積分器14Aに出力される。係数器11Aの係数設定は、3重化間の不均衡抑制制御を安定に行うことができるように、できるだけ高い係数値に設定される。
【0038】
積分器14Aは補正信号P74Aを積分し積分補正信号P131Aとして加算器15Aに出力する。加算器15Aは圧力設定器22Aからの圧力設定信号P22Aと積分補正信号P131Aとを加算し、補正後圧力設定信号P132Aを出力する。そして、加算器23Aに出力する。
【0039】
これにより、加算器23Aは中間値選択器21Aで得られた中間値圧力信号P21Aから補正後圧力設定信号P132Aを差し引いた圧力偏差信号P23Aを求め、圧力偏差信号P23Aを係数器24Aに出力して、係数器24Aにより係数倍されて圧力制御信号V21Aとなる。
【0040】
このように、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cの中間値に相当する信号を基準にして、この信号と差が生じている系には補正信号(P74A、P74B、P74C)を加えて積分器14Aで積分した補正信号を圧力設定信号に加算する。これにより、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cが等しい値になる。
【0041】
すなわち、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cが等しい値となるように圧力設定信号に補正信号を加算するので、多重化した圧力制御装置のいずれかに故障が発生した場合であっても、制御に外乱を生じないのでタービン出力が変動することがない。
【0042】
図5は本発明の第2の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の他の一例の構成図である。この他の一例は、図4に示した一例に対し、加算器9Aと係数器11Aの間に不感帯器10Aを追加して設けたものである。図4に示した一例と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0043】
図5に示すように、加算器9Aと係数器11Aの間に不感帯器10Aが設けられている。不感帯器10Aは、中間値選択器8Aで得られた中間値圧力偏差信号P71Aから自系の圧力偏差信号P23Aを差し引いた圧力偏差差分信号P72Aが所定範囲よりも小さい時には零を出力し、所定範囲よりも大きいときは圧力偏差差分信号P72Aを出力する。
【0044】
このように、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cの中間値に相当する信号を基準にして、この信号と差が生じている系の信号が不感帯設定範囲を超えている場合には補正信号(P74A、P74B、P74C)を積分器14Aで積分した補正信号を圧力設定信号に加算することにより、3重化の圧力偏差信号が3重化間で均衡するように補正する。
【0045】
なお、不感帯10Aは、3重化の圧力制御装置の演算タイミングの違いによる均衡制御の変動や微少誤差値での不要な均衡制御による変動を防止するために設置しており、その不感帯に相当する分の不均衡があっても、タービン出力変動が僅かとなるような設定としている。
【0046】
第2の実施の形態によれば、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cがほぼ等しくなるように圧力設定信号に補正を加えて均衡制御することにより、多重化した圧力制御装置のいずれかに故障が発生した場合であっても、制御に外乱を生じないので、タービン出力の変動が発生しない。また、不感帯10Aを設けているので均衡制御による不要な変動が生じない。
【0047】
(第3の実施の形態)
図6は本発明の第3の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の一例の構成図である。この第3の実施の形態は、図4に示した第2の実施の形態の圧力制御装置に対し、積分器14Aに代えて制限付積分器16Aを設け、信号検出器17Aを追加して設けたものである。図4と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0048】
図6において、係数器11Aの出力信号である補正信号P74Aは制限付積分器16Aに入力される。制限付積分器16Aは、補正信号P74Aの積分出力値が所定の値以上にならないように出力制限機能を有しており、通常生じ得る圧力信号の誤差以上による積分信号を制限している。また、制限付積分器16Aの出力信号P131Aは信号検出器17Aに出力され、信号検出器17Aは、制限付積分器16Aの出力信号P131Aが積分制限信号の制限にかかったか否かを判定する。制限付積分器16Aの出力信号P131Aが積分制限信号の制限にかかったときは警報信号P133Aを出力して、図示省略の警報装置に出力し運転員に異常状態になったことを知らせる。
【0049】
このように、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cの中間値に相当する信号を基準にして、この信号と差が生じている系には補正信号(P74A、P74B、P74C)を加えて制限付積分器16Aで積分した補正信号を圧力設定信号に加算するので、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cが等しい値になる。また、制限付積分器16Aが制限されるような異常な信号となった場合には、警報信号を出力して運転員に知らせる。
【0050】
すなわち、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cが等しい値となるように圧力設定信号に補正信号を加算するので、多重化した圧力制御装置のいずれかに故障が発生した場合に制御に外乱を生じない。従って、タービン出力に変動が発生することがなく、また、異常な補正制御状態となった時には運転員が認識できるので早期に適正な処置が可能となる。
【0051】
図7は本発明の第3の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の他の一例の構成図である。この他の一例は、図6に示した一例に対し、加算器9Aと係数器11Aの間に不感帯器10Aを追加して設けたものである。図6に示した一例と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0052】
図7に示すように、加算器9Aと係数器11Aの間に不感帯器10Aが設けられている。不感帯器10Aは、中間値選択器8Aで得られた中間値圧力偏差信号P71Aから自系の圧力偏差信号P23Aを差し引いた圧力偏差差分信号P72Aが所定範囲よりも小さい時には零を出力し、所定範囲よりも大きいときは圧力偏差差分信号P72Aを出力する。
【0053】
このように、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cの中間値に相当する信号を基準にして、この信号と差が生じている系の信号が不感帯設定範囲を超えている場合には補正信号(P74A、P74B、P74C)を制限付積分器16Aで積分した補正信号を圧力設定信号に加算することにより、3重化の圧力偏差信号が3重化間で均衡するように補正する。
【0054】
なお、不感帯10Aは、3重化の圧力制御装置の演算タイミングの違いによる均衡制御の変動や微少誤差値での不要な均衡制御による変動を防止するために設置しており、その不感帯10Aに相当する分の不均衡があっても、タービン出力変動が僅かとなるような設定としている。また、制限付積分器16Aが制限されるような異常な信号となった場合には、信号検出器17Aは警報信号を出力して運転員に知らせるように動作する。
【0055】
第3の実施の形態によれば、3重化の圧力偏差信号P23A、P23B、P23Cがほぼ等しくなるように圧力設定信号に補正を加えて均衡制御するので、多重化した圧力制御装置のいずれかに故障が発生した場合であっても、制御に外乱を生じない。従って、タービン出力の変動が発生しない。また、不感帯10Aを設けた場合には均衡制御による不要な変動が生じない。また、異常な補正制御状態となった時には運転員が認識でき適正な処置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の一例の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の他の一例の構成図。
【図3】本発明の第1の実施の形態における不感帯の特性の一例を示す特性図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の一例の構成図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の他の一例の構成図。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の一例の構成図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係わる多重化蒸気タービン制御装置の圧力制御装置の他の一例の構成図。
【図8】圧力検出器及び圧力制御装置が3重化された従来のタービン制御装置の一例を示す構成図
【図9】従来のタービン制御装置の詳細構成図。
【図10】従来のタービン制御装置における圧力設定器の構成図。
【符号の説明】
【0057】
1A、1B、1C:圧力検出器、2A、2B、2C:圧力制御装置、3、5、8A、21A:中間値選択器、4:蒸気弁制御装置、6:表示器、9A、12A、15A、23A:加算器、10A:不感帯器、11A、24A:係数器、13A:圧力設定信号補正部、14A、225A:積分器、16A:制限付積分器、17A:信号検出器、22A:圧力設定器、221A、222A:信号発生器、223A、224A:切換器、1001:タービン制御装置、1002:蒸気発生器、1003:主蒸気止め弁、1004:蒸気加減弁、1005:タービン、1006:発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3重化された圧力検出器で得られた3つのタービン入口蒸気圧力信号のうちの中間値と圧力設定器に設定された圧力設定値との圧力偏差信号に係数を乗算して圧力制御信号を出力する3重化された圧力制御装置と、3重化の圧力制御装置からの3つの圧力制御信号のうちの中間値に基づいて蒸気加減弁を開閉制御する蒸気弁制御装置とを備えた多重化蒸気タービン制御装置において、3重化された各々の圧力制御装置の圧力設定器は、3重化された圧力制御装置の3つの圧力偏差信号のうちの中間値圧力偏差信号を求める中間値選択器と、中間値選択器で得られた中間値圧力偏差信号から自系の圧力偏差信号を差し引いた圧力偏差差分信号を係数倍する係数器と、前記係数器の出力と圧力設定増減信号との加算信号を積分して圧力設定信号として出力する積分器とを備えたことを特徴とする多重化蒸気タービン制御装置。
【請求項2】
3重化された圧力検出器で得られた3つのタービン入口蒸気圧力信号のうちの中間値と圧力設定器に設定された圧力設定値との圧力偏差信号に係数を乗算して圧力制御信号を出力する3重化された圧力制御装置と、3重化の圧力制御装置からの3つの圧力制御信号のうちの中間値に基づいて蒸気加減弁を開閉制御する蒸気弁制御装置とを備えた多重化蒸気タービン制御装置において、3重化された各々の圧力制御装置の圧力設定器は、3重化された圧力制御装置の3つの圧力偏差信号のうちの中間値圧力偏差信号を求める中間値選択器と、中間値選択器で得られた中間値圧力偏差信号から自系の圧力偏差信号を差し引いた圧力偏差差分信号が所定範囲よりも小さい時には零を出力し所定範囲よりも大きいときは圧力偏差差分信号を出力する不感帯器と、前記不感帯で得られた信号を係数倍する係数器と、前記係数器の出力と圧力設定増減信号との加算信号を積分して圧力設定信号として出力する積分器とを備えたことを特徴とする多重化蒸気タービン制御装置。
【請求項3】
3重化された圧力検出器で得られた3つのタービン入口蒸気圧力信号のうちの中間値と圧力設定器に設定された圧力設定値との圧力偏差信号に係数を乗算して圧力制御信号を出力する3重化された圧力制御装置と、3重化の圧力制御装置からの3つの圧力制御信号のうちの中間値に基づいて蒸気加減弁を開閉制御する蒸気弁制御装置とを備えた多重化蒸気タービン制御装置において、3重化された各々の圧力制御装置は、3重化された圧力制御装置の3つの圧力偏差信号のうちの中間値圧力偏差信号を求める中間値選択器と、中間値選択器で得られた中間値圧力偏差信号から自系の圧力偏差信号を差し引いた圧力偏差差分信号を係数倍する係数器と、前記係数器の出力を積分して積分信号を圧力設定補正信号として出力する積分器と、前記圧力設定器からの圧力設定値に前記積分器の圧力設定補正信号を加算して補正後圧力設定信号を出力する加算器とを備えたことを特徴とする多重化蒸気タービン制御装置。
【請求項4】
3重化された圧力検出器で得られた3つのタービン入口蒸気圧力信号のうちの中間値と圧力設定器に設定された圧力設定値との圧力偏差信号に係数を乗算して圧力制御信号を出力する3重化された圧力制御装置と、3重化の圧力制御装置からの3つの圧力制御信号のうちの中間値に基づいて蒸気加減弁を開閉制御する蒸気弁制御装置とを備えた多重化蒸気タービン制御装置において、3重化された各々の圧力制御装置は、3重化された圧力制御装置の3つの圧力偏差信号のうちの中間値圧力偏差信号を求める中間値選択器と、中間値選択器で得られた中間値圧力偏差信号から自系の圧力偏差信号を差し引いた圧力偏差差分信号が所定範囲よりも小さい時には零を出力し所定範囲よりも大きいときは圧力偏差差分信号を出力する不感帯器と、前記不感帯で得られた信号を係数倍する係数器と、前記係数器の出力を積分して積分信号を圧力設定補正信号として出力する積分器と、前記圧力設定器からの圧力設定値に前記積分器の圧力設定補正信号を加算して補正後圧力設定信号を出力する加算器とを備えたことを特徴とする多重化蒸気タービン制御装置。
【請求項5】
3重化された圧力検出器で得られた3つのタービン入口蒸気圧力信号のうちの中間値と圧力設定器に設定された圧力設定値との圧力偏差信号に係数を乗算して圧力制御信号を出力する3重化された圧力制御装置と、3重化の圧力制御装置からの3つの圧力制御信号のうちの中間値に基づいて蒸気加減弁を開閉制御する蒸気弁制御装置とを備えた多重化蒸気タービン制御装置において、3重化された各々の圧力制御装置は、3重化された圧力制御装置の3つの圧力偏差信号のうちの中間値圧力偏差信号を求める中間値選択器と、中間値選択器で得られた中間値圧力偏差信号から自系の圧力偏差信号を差し引いた圧力偏差差分信号を係数倍する係数器と、前記係数器の出力を積分して所定値以上は出力しないように制限した積分信号を圧力設定補正信号として出力する制限付積分器と、前記圧力設定器からの圧力設定値に前記制限付積分器の圧力設定補正信号を加算して補正後圧力設定信号を出力する加算器と、前記制限付積分器の積分信号が制限されたときに警報信号を出力する信号発生器とを備えたことを特徴とする多重化蒸気タービン制御装置。
【請求項6】
3重化された圧力検出器で得られた3つのタービン入口蒸気圧力信号のうちの中間値と圧力設定器に設定された圧力設定値との圧力偏差信号に係数を乗算して圧力制御信号を出力する3重化された圧力制御装置と、3重化の圧力制御装置からの3つの圧力制御信号のうちの中間値に基づいて蒸気加減弁を開閉制御する蒸気弁制御装置とを備えた多重化蒸気タービン制御装置において、3重化された各々の圧力制御装置は、3重化された圧力制御装置の3つの圧力偏差信号のうちの中間値圧力偏差信号を求める中間値選択器と、中間値選択器で得られた中間値圧力偏差信号から自系の圧力偏差信号を差し引いた圧力偏差差分信号が所定範囲よりも小さい時には零を出力し所定範囲よりも大きいときは圧力偏差差分信号を出力する不感帯器と、前記不感帯で得られた信号を係数倍する係数器と、前記係数器の出力を積分して所定値以上は出力しないように制限した積分信号を圧力設定補正信号として出力する制限付積分器と、前記圧力設定器からの圧力設定値に前記制限付積分器の圧力設定補正信号を加算して補正後圧力設定信号を出力する加算器と、前記制限付積分器の積分信号が制限されたときに警報信号を出力する信号発生器とを備えたことを特徴とする多重化蒸気タービン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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