説明

多重回路式のピストン機械及びエネルギ回収部を備えた液圧系

【課題】従来技術に比べて向上されたフレキシビリティーを有する多重回路式のピストン機械の液圧系を提供する。本発明の特別な目的は、エネルギ節約型の液圧系を提供することである。
【解決手段】前記多重回路式のピストン機械の1つの高圧接続部(18)がモータ/ポンプ接続部として設けられており、且つ前記多重回路式のピストン機械の少なくとも別の高圧接続部(20)が専らポンプ接続部として設けられているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式、即ち、能動的な低圧弁と高圧弁とによって制御される形式の液圧駆動装置、有利には多重回路式のピストン機械(2回路式のピストン機械)と、エネルギ回収回路とから成る液圧系に関する。
【背景技術】
【0002】
弁制御される液圧駆動装置、例えばラジアルピストン機械(いわゆるDVRs)において、従来技術では、各シリンダ・ピストンユニット毎に、電気的に作動する1つの低圧弁(LPV)と、電気的に作動する1つの高圧弁(HPV)が対応配置されており、これらの低圧弁と高圧弁とは、データバスを介して電子制御装置(ECU)に接続されている。このようにして、各シリンダ・ピストンユニットはそれぞれ互いに無関係に、ポンプモード、モータモード又はアイドルモード若しくは無動力状態に切り換えられる。
【0003】
このようなピストン機械は従来、機械毎、延いてはグループ毎にしか、能動的な弁を介して制御することができないので、単一のHPVを介して1つの高圧接続部だけが制御される場合には、前記高圧接続部に接続された消費装置の(位置の)荷重エネルギの回収は、別のモータコンポーネントを用いなければ不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底を成す課題は、従来技術に比べて向上されたフレキシビリティーを有する多重回路式のピストン機械の液圧系を提供することである。本発明の特別な目的は、エネルギ節約型の液圧系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために本発明では、前記多重回路式のピストン機械の1つの高圧接続部がモータ/ポンプ接続部として設けられており、且つ前記多重回路式のピストン機械の少なくとも別の高圧接続部が専らポンプ接続部として設けられているようにした。
【0006】
本発明の有利な視点及び改良は従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基本思想に基づき、能動的な低圧弁及び高圧弁によって制御される多重回路式のピストン機械を備えた液圧系が供給され、前記ピストン機械の1つの高圧接続部は、本発明に基づきモータ/ポンプ接続部として、且つ前記ピストン機械の少なくとも別の高圧接続部は専らポンプ接続部として設けられている、即ち運転され得る。このようにして、前記ピストン機械は1つの(第1の)高圧接続部においてはポンプとして且つモータとして働いて、前記高圧接続部に接続された高圧回路内の(液圧)エネルギを回収することができる。ピストン機械の少なくとも1つの別の(第2の)高圧接続部は、原則としてポンプモードでしか働く必要がないので、とりわけこの第2の高圧接続部に接続された別の消費装置に液圧を供給する。
【0008】
1改良形では、ポンプとして運転される多重回路式のピストン機械の第1の高圧接続部と第2の高圧接続部とは、構造的に同一に構成されていてよい。
【0009】
有利には、ポンプ/モータ高圧接続部に接続された高圧回路が特にエネルギを有しており、従って、エネルギ回収が有効である。例えば、掘削機の場合、この高圧回路は掘削機のブームを操作するために設けられていてよく、このブームには、著しい位置エネルギが持ち上げられる荷重の形で含まれている。
【0010】
本発明の1視点に基づき、多重回路式のピストン機械は複数のピストン‐シリンダユニットを有しており、これらのピストン‐シリンダユニットは、各1つの能動的な低圧弁と、1つの高圧接続部に接続された第1の能動的な高圧弁と、少なくとも1つの別の高圧接続部に接続された、少なくとも1つの第2の能動的な高圧弁とを有している。有利には、電子制御ユニットが配置されており、この電子制御ユニットは、前記低圧弁及び高圧弁と電気的に接続されており、当該電子制御ユニットによって、第1の高圧弁に接続された第1の高圧回路内に存在する液圧エネルギが、有利には多重回路式のピストン機械の駆動軸に供給される機械的なエネルギとして、第2の高圧弁に接続された第2の高圧回路に移行可能であるように、多重回路式のピストン機械のモータ/ポンプ接続部における高圧弁が制御可能である。このようにして、例えば第1の液圧回路に蓄えられた位置エネルギを機械的なエネルギに変換して、ピストン機械を介して別の回路に供与することができる。これにより、ピストン機械の主要駆動装置、例えばディーゼルエンジンの負荷が軽減され、そのエネルギ消費量が低下される。
【0011】
本発明の別の視点に基づき、第1の消費装置がリフトシリンダユニットの形で設けられており、このリフトシリンダユニットの一方の圧力室、有利にはピストン室は、モータ/ポンプモードで運転されるべき1つの高圧接続部に接続されており、他方の圧力室、有利にはロッド室は、ポンプモードだけで運転されるべき少なくとも別の高圧接続部に接続されている。往復ピストンのピストン室には、(例えば持ち上げられた荷重に基づいて)特に高い圧力が作用可能であり、これにより、この圧力は機械的なエネルギに有効に変換され得る。
【0012】
有利には、第1の消費装置の他方の圧力室(ロッド室)と、ポンプモードのためだけに設けられた高圧接続部との間には、多重回路式のピストン機械から他方の圧力室への体積供給を能動的に制御し且つ第1の消費装置の他方の圧力室からタンク内へ体積を能動的に搬出するための制御弁が中間接続されている。これにより、当該消費装置の運転は、ピストン機械の吸込み/ポンプ容量延いては主要駆動装置の回転数とも独立して無関係になる。
【0013】
本発明の更に別の視点に基づき、第1の消費装置の一方の圧力室(ピストン室)と、ポンプ/モータモードで運転されるべき1つの高圧接続部との間でタンク導管が分岐しており、このタンク導管には、一方の圧力室からタンク内への選択的な高速の体積搬出のための制御可能な高速体積取出し弁が中間接続されている。このようにして、該当する高圧回路に含まれるエネルギが迅速に消費/消滅され得る。
【0014】
本発明の更に別の視点に基づき、別の制御弁が、第1の消費装置の一方の圧力室(ピストン室)と、多重回路式のピストン機械のポンプ/モータモード用に設けられた1つの高圧接続部との間に、一方の圧力室から体積を制御して搬出し、且つ有利には多重回路式のピストン機械から一方の圧力室に体積を制御して供給するためにも設けられている。更に有利には、圧力バランス弁が前記別の制御弁とタンクとの間に配置されており、この圧力バランス弁は規定された体積圧を、別の制御弁と圧力バランス弁との間の導管において準備するために配置されており、前記規定された体積圧は、圧力バランス弁の調整圧の差の分だけ、第1の消費装置の一方の圧力室内の体積圧よりも低い値を有している。多重回路式のピストン機械の1つ又は複数の高圧弁は、別の制御弁と圧力バランス弁との間の前記導管に接続されていてよく、これにより選択的に、前記の予め規定された体積圧下にある所定の体積を取り出して、この体積を、第1の消費装置の他方の圧力室(ロッド室)及び/又は別の消費装置に供給するために使用することができる。即ち、このピストン機械は出力を供給するか、又は別の消費装置に、主要駆動装置の減少された出力消費分を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の有利な1実施例に基づいた、弁制御される多重回路式のポンプの原則的な回路図である。
【図2】有利には図1に示した多重回路式のポンプ(2回路式のポンプ)を、いくつかの消費装置にエネルギ効率良く接続するための、本発明による液圧系の第1の有利な実施例を示した図である。
【図3】有利には図1に示した多重回路式のポンプ(2回路式のポンプ)を、いくつかの消費装置にエネルギ効率良く接続するための、本発明による液圧系の第2の有利な実施例を示した図である。
【図4】有利には図1に示した多重回路式のポンプ(2回路式のポンプ)を、いくつかの消費装置にエネルギ効率良く接続するための、本発明による液圧系の第3の有利な実施例を示した図である。
【図5】図4に示した液圧系の個々の切換弁の種々様々な切換位置を、例えば運転モード「上昇」、「降下」及び「高速降下」又はより原理的に表す場合は「前進」、「後退」及び「高速後退」に関して示した図である。
【図6】有利には図1に示した多重回路式のポンプ(2回路式のポンプ)を、いくつかの消費装置にエネルギ効率良く接続するための、本発明による液圧系の第4の択一的な実施例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を図面につき詳しく説明する。
【0017】
図1には、能動的に弁制御される2回路式のピストン機械(アキシャルピストンポンプ又はラジアルピストンポンプ)1の有利な1実施例の回路図が示されている。前記2回路式のピストン機械は、6つのピストン2a〜fが支持されるリフティングカム(象徴的にしか図示せず)を有している。ピストン2a〜fは、それぞれシリンダ3a〜f内に軸方向で摺動可能に収容されており、これらのシリンダ3a〜fは、互いに平行に且つ間隔をあけて、駆動モータ(内燃機関)5のカムシャフト4に沿って配置されている。但しこれに対して択一的に、シリンダ3a〜fはラジアルピストン機械内で星形に配置されていてもよい。各シリンダ3a〜fは、吸込み通路6を介して低圧弁(LPV)8に流体接続されており、且つ分岐通路10を介して第1の高圧弁(第1のHPV)12と第2の高圧弁(第2のHPV)14とに流体接続されている。各LPV8は、所属の各シリンダ3a〜fの、ピストン機械1の低圧接続部16に対する接続を制御/調整する。この低圧接続部16は、低圧配管系統及び/又は流体タンクTに接続されている。第1のHPV12は、各シリンダ3a〜fの、ピストン機械1の第1の高圧接続部18に対する接続を制御/調整する。この第1の高圧接続部18は、第1の高圧回路Aに接続されている。第2のHPV14は、ピストン機械の第2の高圧接続部20に接続されている。この第2の高圧接続部20は、第2の高圧回路Bに接続されている。両高圧回路A,Bも、図1ではやはり象徴的にしか描かれていない。
【0018】
この実施例では、前記の全ての弁8,12,14がシート弁として形成されており且つ中央電子制御ユニットECUによって能動的に制御されている/制御可能である。但し、前記弁は択一的に電磁的に作動可能なスライド弁として形成されていてもよい。この場合、ピストン機械(ピストンポンプ)1は全圧送量を高圧回路A又はBに圧送することができるか、又は時間的に前後して可変の割り当てで高圧回路A及びBに圧送することができる。
【0019】
複数の回路A,Bを備えた本発明によるピストン機械1、例えば図1に示した2回路式のピストン機械の特別な特性は、互いに独立して、同時に一方の回路はポンプ運転で働き且つ他方の回路はモータ運転で働くことができる、という点にある。従って、モータ運転においてピストン機械1は所定の体積を高圧回路Aから取り出して、タンクT若しくは他方の高圧回路Bに圧送することができる。これにより原則として、一方の回路A内のエネルギを規定された運転モードの最中に、例えば液圧式で持ち上げられた荷重の位置エネルギを降下運転中に回収することが可能である。これに関する有利な例が図2に示されている。
【0020】
図2には、例として掘削機に適用された2回路式のピストン機械1が示されている。
【0021】
これによると、第1の高圧回路Aは、ブーム用の1つの圧力シリンダ対(又は1つの圧力シリンダのみ)22によって形成されており、この場合特に、圧力シリンダの各ピストン室22k(ブーム用シリンダボトム側)は、ピストン機械1の第1の高圧回路Aの該当する高圧接続部18に直接に接続されている。この第1の高圧接続部18において、本実施例によるピストン機械1はポンプ運転モードでも、モータ運転モードでも働くことができる。第2の高圧回路Bは1回路弁24(象徴的にしか図示せず)を有しており、この1回路弁の1つの入口は、ピストン機械1の第2の高圧接続部20に接続されており、この第2の高圧接続部20において、本実施例のピストン機械1は専らポンプ運転モードで働く。1回路弁24の複数の出口には、それぞれ掘削機のバケット用の圧力シリンダ26のピストン室(シリンダボトム側)並びにアーム用の圧力シリンダ28のピストン室(シリンダボトム側)、及び回転装置30(掘削機構造体又は駆動チェーン/ホイールの回転運動用の液圧モータ)が別個に接続されており、これらは1回路弁24を介して個別に操作可能である。ブーム用圧力シリンダ22のロッド室22sを含む全ての圧力シリンダの全てのロッド室(ロッド側)もやはり、1回路弁24に接続されており、これにより、ピストン機械1のポンプとしてのみ働く高圧接続部20又はタンクTに接続され得る。
【0022】
ピストン機械1が第1の高圧接続部18に関してモータモードで運転される場合、ピストン機械1は該当する高圧接続導管32から、即ち第1の高圧回路Aから所定の体積を取り出して、ピストン機械1のタンクT又は他方の高圧接続部20に供給することができる。これにより、第1の高圧回路A(ブーム用シリンダのピストン室回路に相当)に蓄えられたエネルギ、つまり掘削機のブーム22を介して持ち上げられた荷重の位置エネルギを、降下過程中に回収することが可能である。換言すると、持ち上げられた荷重を降下させる場合には、ピストン機械1が第1の高圧接続部18に関係してモータモードに切換え/制御され、この場合、対応するHPV12(図1参照)を介して所定の体積を第1の高圧回路Aから取り出して、運転状態に応じてタンクT又は第2の高圧接続部20に供給することができる。この場合、持ちあげられた荷重の位置エネルギは機械的なエネルギに変換されるので、駆動機械(内燃機関)5の負荷を軽減することができる。
【0023】
図2に示した第1実施例では、ブーム用シリンダ22の運動制御はボトム側ではピストン機械1の第1のポンプ/モータ高圧接続部18によって行われ、且つブーム用シリンダ22のロッド側では1回路弁24と、この1回路弁24に接続されたピストン機械1の第2のポンプ高圧接続部20とによって行われる。従って、図2に示した構成、つまりブームボトム側の押しのけ制御においては、第1の高圧接続部18に関係してモータモードで運転されるピストン機械1の供給量(ポンプ容積/吸込み容積)が、ブーム用シリンダ対22の運動速度を決定する。従って、ブーム用シリンダ対22の運動速度は、駆動モータ5の実際の回転数に依存しており、延いてはこの駆動モータ5の操作(アクセルペダル)を介して可変である。
【0024】
但し、駆動機械5(ディーゼルエンジン)の回転数が低く、従って、ポンプ/モータ圧送/吸込み容積が少ない場合でも、第1の高圧回路Aから大きな体積を取り出し、延いては有利には掘削機ブームの高い降下速度が得られるようにするためには、図3に示した実施例に基づいて、高速体積取出し弁34が、ブーム用シリンダ22、特にこのブーム用シリンダ22のピストン室22kと、タンクTとの間に設けられている。具体的には、ピストン機械1の第1の高圧接続部18と、ピストン室22kとの間で高圧導管32からタンク導管がタンクTに向かって分岐しており、このタンク導管に高速体積取出し弁34が中間接続されている。この付加的な弁34は、本実施例では圧力制御弁(過剰圧力弁)として設計されており、下流側に接続されたマニュアル操作可能な絞りを備えた弁スライダから成っている。この場合、この弁スライダの一方の制御縁は絞りの上位の圧力によって負荷され、且つ弁の開放位置にばねによって予負荷される他方の制御縁は、絞りの下位の圧力によって負荷される。
【0025】
今、ピストン機械1の供給量(吸込み容積)が、高圧回路からの所望の体積取出し速度(降下速度)を達成するためには十分ではない場合に、高速体積取出し弁34を作動させて、これにより、付加的な液圧流体量をタンクTに送る(この場合、エネルギは消滅する)。これにより、該当するシリンダ22に機械的に接続されたブームを高速で降下させることができる。
【0026】
図4には、既に上で図3に基づき説明した本発明の改良が示されている。
【0027】
この実施例では、ブーム用の第1の高圧回路Aの単数/複数のピストン室22kは、ピストン機械1のポンプ/モータ接続部18に直接に接続されているのではなく、切換弁36が(高速体積取出し弁34の上流側で)ピストン機械1のブーム用シリンダ22のピストン室22kと、ポンプ/モータ接続部18との間に中間接続されており、この切換弁36は、一方のポンプ流しか許容しない第1の位置に、ばねによって予負荷されている。この切換弁36は、マニュアルで、又はECUを介して、ポンプ流及びモータ流が通流可能な第2の位置に切り換えることができる。ピストン機械1の専用のポンプ接続部は、(図3にも示したように)ブーム用シリンダ22のロッド室22sに接続されており、場合によっては別の消費装置(象徴的にのみ図示)に接続されている。ピストン機械1のロッド室22sと、当該の(第2の)ポンプ接続部20との間には調整弁38が中間接続されており、この調整弁38は、ロッド室22sを第2のポンプ接続部20に接続するための第1の位置と、第2の遮断位置と、ロッド室22sからの体積取出し用の第3のタンク位置との間で連続的に調整可能である。
【0028】
図5には、ブーム用のピストン機械の個別の運転モード、即ち「持ち上げ」、「低速降下」及び「高速降下」並びに切換弁36及び調整弁38の対応する切換え位置が示されている。
【0029】
「持ち上げ」(図5左側参照)において、ピストン機械1のポンプ/モータ接続部18はポンプモードで作動し且つ所定の体積をブーム用シリンダ22のピストン室22kに圧送する。ピストン室側の切換弁36が構造位置(ポンプ流のみ通流可能)にあるのに対して、ブーム用シリンダ22のロッド側の制御/調整弁38は、ロッド室22sがタンクTと接続されるように切換えられている。この場合、ピストン機械1のポンプだけの接続部20を作動させる必要はない。
【0030】
「降下」(図5中央参照)において、ピストン機械1のポンプ/モータ接続部18はモータモードで作動して、第1の高圧回路A内の位置エネルギを回収することができ、この位置エネルギを機械的なエネルギとしてピストン機械1の駆動軸4に提供することができる。今や、ピストン機械1の他方のポンプ接続部20だけがポンプとして働き且つ下流側に配置された制御/調整弁38を介して規定された体積をブーム用シリンダ22のロッド側22sに圧送する。
【0031】
「高速降下」(図5右側参照)において、ピストン機械1のポンプ/モータ接続部18はモータモードで作動して、第1の高圧回路A内の位置エネルギを、少なくとも部分的に回収する。但し付加的に高速体積取出し弁34も開放されているので、ブーム用シリンダ22は、ピストン機械1の第1のポンプ/モータ接続部18が受け入れ可能な体積流だけを用いるよりも、より高速で降下され得る。
【0032】
本発明の別の実施例が図6に示されている。
【0033】
この場合、ピストン機械1のポンプ/モータ接続部18と、ポンプだけの接続部20とに比例切換弁40が接続されており、この比例切換弁40にもやはり、ブーム用シリンダ22のピストン室22kとロッド室22sとが接続されている。更に、別の消費装置が直接に、ピストン機械1の第2のポンプだけの接続部20に接続されている。ピストン機械1の第1のポンプ/モータ接続部18と、比例切換弁40との間の接続通路32には、圧力バランス弁42が並列接続されており、この圧力バランス弁もやはり、タンクTに接続されている。
【0034】
比例切換弁40は、図6に示した構造位置では遮断位置に、ばねによって予負荷されており且つ、当該比例切換弁40がピストン機械1の第2のポンプだけの接続部20を、荷重を持ち上げるためのブーム用シリンダ22のピストン室22kに接続すると同時に、ブーム用シリンダ22のロッド室22sをタンクTに接続する第1の位置に向かって作動可能である。
【0035】
ブームが降下する場合、荷重によって圧力負荷されるシリンダ室、本実施例ではピストン室22kは、比例切換弁40と(降下運転に関して下流側に接続された)圧力バランス弁42とを介して、タンクTに接続される。これにより、比例弁40と圧力バランス弁42との間で、これらの間に位置する導管/通路/室32a内に、圧力バランス弁42の調整差の分だけ、荷重により圧力負荷されるシリンダ室22k内の圧力よりも低い値の圧力が生じる。前記導管/通路/室32aは、1つ又は複数の高圧弁、本実施例ではピストン機械1のポンプ/モータ接続弁12(図1参照)に、高圧導管32を介して接続されている。従って、ピストン機械1は、予め規定された圧力下にある所定の体積を導管/通路/室32aから取り出して、この体積をブーム用シリンダ22のシリンダロッド側22s及び場合によっては別の消費装置に供給するために使うことができるか、又はタンクTに送ることができる。これにより、ピストン機械1は出力をその駆動軸4に供給し且つ/又は相応に小さな出力消費の場合は別の消費装置に供給する。
【0036】
シリンダの速度制御は、本実施例では比例切換弁40と、この比例切換弁40に接続された圧力バランス弁42とを介して行われる。従って、この特別なケースでは、比例切換弁40は必ずしもECUを介して制御指令されているのではなく、専ら液圧式又は機械式で、例えばハンドレバー(図示せず)を介して操作され得る。
【0037】
従って、開示されているのは原則として、能動的な低圧弁及び高圧弁によって制御される多重回路式のピストン機械を備えた液圧系であって、前記ピストン機械の1つの高圧接続部がモータ/ポンプ接続部として設けられており、且つ少なくとも別の高圧接続部が、専らポンプ接続部として設けられている。これにより、モータ/ポンプ接続部として運転されるべき高圧接続部を介して、エネルギ回収回路が提供され、その結果、前記高圧接続部に接続された高圧回路内の液圧エネルギが、他方の高圧接続部に接続された別の高圧回路に選択的に供与される。
【符号の説明】
【0038】
1 ピストン機械、 2a〜2f ピストン、 3a〜3f シリンダ、 4 カムシャフト、 5 駆動モータ、 6 吸込み通路、 8 低圧弁、 10 分岐通路、 12 第1の高圧弁、 14 第2の高圧弁、 16 低圧接続部、 18 第1の高圧接続部、 20 第2の高圧接続部、 22 ブーム用シリンダ(対)、 22k ブーム用シリンダのピストン室、 22s ブーム用シリンダのロッド室、 24 1回路弁、 26 バケット用の圧力シリンダ、 28 アーム用の圧力シリンダ、 30 回転装置、 32 高圧接続導管、 32a 導管/通路/室、 34 高速体積取出し弁、 36 切換弁、 38 制御/調整弁、 40 比例切換弁、 42 圧力バランス弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動的な低圧弁(8)と高圧弁(12,14)とによって制御される多重回路式のピストン機械(1)を備えた液圧系において、
前記多重回路式のピストン機械の1つの高圧接続部(18)がモータ/ポンプ接続部として設けられており、且つ前記多重回路式のピストン機械の少なくとも別の高圧接続部(20)が専らポンプ接続部として設けられていることを特徴とする、多重回路式のピストン機械を備えた液圧系。
【請求項2】
前記多重回路式のピストン機械(1)が複数のピストン‐シリンダユニット(2,3)を有しており、これらのピストン‐シリンダユニット(2,3)が、各1つの能動的な低圧弁(8)と、前記1つの高圧接続部(18)に接続された第1の能動的な高圧弁(12)と、前記少なくとも別の高圧接続部(20)に接続された少なくとも1つの第2の高圧弁(14)とを有している、請求項1記載の液圧系。
【請求項3】
電子制御ユニット(ECU)が設けられており、該電子制御ユニットが、前記低圧弁(8)と高圧弁(12,14)とに電気的に接続されており、当該電子制御ユニットによって、前記第1の高圧弁(12)に接続された第1の高圧回路(A)内に存在する液圧エネルギが、有利には多重回路式のピストン機械(1)の駆動軸(4)に供給される機械的なエネルギとして、第2の高圧弁(14)に接続された第2の高圧回路(B)に移行可能であるように、多重回路式のピストン機械(1)のモータ/ポンプ接続部(18)に設けられた高圧弁(12,14)が制御可能である、請求項2記載の液圧系。
【請求項4】
第1の消費装置がリフトシリンダユニット(22)として設けられており、該リフトシリンダユニットの一方の圧力室、有利にはピストン室(22k)が、モータ/ポンプモードで運転されるべき1つの高圧接続部(18)に接続されており且つ他方の圧力室、有利にはロッド室(22s)が、ポンプモードでのみ運転されるべき少なくとも別の高圧接続部(20)に接続されている、請求項2又は3記載の液圧系。
【請求項5】
多重回路式のピストン機械(1)から前記他方の圧力室(22s)への体積供給を能動的に制御し且つ第1の消費装置(22)の他方の圧力室(22s)からタンク(T)へ体積を能動的に搬出するために、第1の消費装置(22)の前記他方の圧力室(22s)と、ポンプモード用にのみ設けられた高圧接続部(20)との間に制御弁(24)が中間接続されている、請求項3記載の液圧系。
【請求項6】
第1の消費装置(22)の一方の圧力室(22k)と、ポンプ/モータモードで運転されるべき1つの高圧接続部(18)との間でタンク導管が分岐しており、該タンク導管に、前記一方の圧力室(22k)からタンク(T)へ選択的に高速で体積を搬出するための、制御可能な高速体積取出し弁(34)が中間接続されている、請求項3から5までのいずれか1項記載の液圧系。
【請求項7】
前記制御弁(24)又はポンプモードのためだけに設けられた高圧接続部(20)に直接に接続された別の消費装置(26,28,30)が設けられている、請求項5又は6記載の液圧系。
【請求項8】
前記一方の圧力室(22k)からの体積の制御された搬出のため、及び有利には多重回路式のピストン機械(1)から一方の圧力室(22k)への体積の制御された供給のためにも、第1の消費装置(22)の一方の圧力室(22k)と、多重回路式のピストン機械(1)のポンプ/モータモード用に設けられた1つの高圧接続部(18)との間に別の制御弁(36,40)が設けられている、請求項5から7までのいずれか1項記載の液圧系。
【請求項9】
前記別の制御弁(40)とタンク(T)との間に圧力バランス弁(42)が設けられており、該圧力バランス弁(42)は、別の制御弁(40)と圧力バランス弁(42)との間の導管(32a)において、圧力バランス弁(42)の調整圧の差の分だけ、第1の消費装置(22)の一方の圧力室(22k)内の体積圧力よりも低い規定の体積圧力を生ぜしめる、請求項8記載の液圧系。
【請求項10】
多重回路式のピストン機械(1)の1つ又は複数の高圧弁(12,14)が、前記別の制御弁(40)と圧力バランス弁(42)との間の前記導管(32a)に接続されており、これにより選択的に、予め規定された体積圧力下にある体積を取り出して、該体積を第1の消費装置(22)の他方の圧力室(22s)及び/又は別の消費装置に供給する、請求項9記載の液圧系。
【請求項11】
当該液圧系が掘削機用に設けられており、第1の消費装置(22)がブーム用リフトシリンダであり、別の消費装置がそれぞれバケット及びアーム用のリフトシリンダ並びに回転装置である、請求項1から10までのいずれか1項記載の液圧系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−67749(P2012−67749A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205749(P2011−205749)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】