説明

多量体バイオセンサーおよびそれを用いる方法

多量体トリプトファンバイオセンサーが開示され、これはトリプトファン結合の際の蛍光共鳴エネルギー移動の検出および測定を可能とするドナーおよび蛍光部分に結合しているトリプトファン結合ドメインを含む。かかるバイオセンサーは生細胞におけるトリプトファン代謝のリアルタイムモニタリングに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者: Thijs Kaperおよび Wolf B. Frommer
【0002】
関連出願
本出願は2005年11月16日出願の米国仮出願 60/736,878からの優先権を主張する。
【0003】
発明の分野
本発明は多量体リガンド結合バイオセンサーの構築および蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)を用いてリガンド濃度の変化を測定および検出するための方法に一般に関する。具体的には、本発明は、トリプトファンリプレッサーおよびその他の多量体リガンド結合タンパク質などの二量体タンパク質から構築された一本鎖タンパク質センサーを提供する。
【0004】
政府支援の記載
本研究は助成金番号NIH 5 R33 DK 70272により支援された。政府は本発明についての一定の権利を有しうる。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
本明細書中のすべての出版物および特許出願は、あたかも各々の出版物または特許出願が引用により含まれることを意図して具体的かつ個別に示されるのと同程度に、引用により含まれる。
【0006】
本出願の出願日に先立ち、本明細書中で考察される出版物は、あくまでそれらの開示を目的として提供される。本明細書においては、先行発明に照らして本発明にかかる出版物に先行する権利が与えられないことの承認として解釈されるべき点は全くない。
【0007】
本出願は、国際出願 PCT/US05/36956、国際出願 PCT/US05/36957、国際出願 PCT/US05/36954、国際出願 PCT/US05/36952、国際出願 PCT/US05/36957、国際出願 PCT/US05/36954、および国際出願 PCT/US05/36953に関連し、これらはその内容全体を引用により本明細書に含める。
【0008】
トリプトファン (TrpまたはW)は哺乳類の必須アミノ酸であり、哺乳類はその一日要求量を満たすためにトリプトファンの食餌からの摂取に依存している。トリプトファンは多数の興味深い薬理上の特徴を有し、不眠症の治療および多数の精神障害の治療の補助が含まれる。ヒト細胞におけるトリプトファンレベルは、細胞膜を横切るトリプトファンの輸送に依存する。細胞または器官におけるトリプトファン輸送の欠陥は様々な障害を導きうる。例えば、ハートナップ病は、小腸および腎臓における中性 (即ち、モノアミノモノカルボン酸)アミノ酸、例えば、トリプトファンの輸送の欠陥により起こる常染色体性劣性遺伝性障害である。
【0009】
吸収の後、トリプトファンはおよそ 80%は血漿アルブミンと結合して血液中を循環し、残りの20%は遊離トリプトファンとして循環し、適当な条件下で、トリプトファンは脳に輸送される。いったん血液脳関門(BBB)を横切ると、トリプトファンは、気分、空腹感、および睡眠に関与する神経伝達物質であるセロトニンへの代謝に利用可能となる。低レベルのセロトニンは、抑欝、線維筋痛症、慢性痛、気分変化、不眠症、PMS、および頭痛と関連している。トリプトファンのセロトニンへの代謝はセロトニンレベルの枯渇が存在する症状、例えば、不安障害、強迫性障害、攻撃性および摂食障害においても役立っている。パーキンソン病は主にセロトニンレベルがトリプトファンレベルと直接関係しているセロトニン神経の機能不全に起因する。
【0010】
次いで、セロトニンはまた、脳の視床上部における小さい円錐状構造であって、ヒトの24時間の概日リズムを制御する松果体において特に夜間に産生される睡眠関連ホルモンであるメラトニンへと代謝される。十分な量のトリプトファン自体の摂取の結果、一貫して睡眠潜時、即ち、「消灯」から睡眠までの時間が低下し、睡眠構造の改善により睡眠の全体の質が改善する(Boman、1988)。
【0011】
植物において、L-トリプトファンは植物の成長に必須であり多数の発達工程を協調する植物ホルモンであるオーキシンの前駆体である。多くの天然および合成化合物がオーキシン様活性をバイオアッセイにおいて示しているが、インドール-3-酢酸 (IAA) がほとんどの植物における鍵となるオーキシンであると認識されている。オーキシンは、植物の向性応答 (環境シグナルに向かうまたは離れる成長)および頂芽優性 (茎頂の細胞による腋芽成長の抑制)を制御している。重力および光に応答しての植物の成長には、茎または根にそった非対称的なオーキシンの分布が必要である。これによって一方の側が他方よりもよりよく成長する。同様に、「頂芽優性」茎頂によるオーキシン産生、次いでその茎にそっての下への輸送は、腋芽の成長を抑制する。
【0012】
細菌において、トリプトファン合成は、トリプトファンリプレッサータンパク質 (TrpR)により制御されている。TrpRは、大腸菌 trpR、trp EDCBA および aroH オペロンの遺伝子発現を制御する。精製タンパク質は、L-トリプトファンにより活性化されるとオペレーターDNA配列に結合し(Gunsalus et al.、1980)、それによってトリプトファン合成のための構造遺伝子の転写がブロックされる。TrpRの機能単位は二量体であり、そのなかで6つのヘリックスのうち5つが連結している(Schevitz et al. 1985)。2つのTrpR 分子が2つの機能的結合部位の形成のために必要である。TrpR 二量体のL-トリプトファンへの結合の結果、DNAへの結合を促進する立体構造変化が起こる(Zhang et al. 1987)。TrpR-L-トリプトファン複合体中のL-トリプトファン分子は、DNAとの相互作用に直接関与している (Otwinowski et al. 1988)。TrpRは様々な親和性にて多種多様のトリプトファンアナログに結合することが出来る(Marmorstein et al. 1987)。TrpRとトリプトファンアナログとの結果として得られる複合体のいつくかはtrp オペロン配列に結合することが出来る(Marmorstein et al. 1989)。
【0013】
植物および生物における正常の機能においてトリプトファンは重要な役割を果たすことから、簡便でリアルタイムに、インビトロおよびインビボでトリプトファンレベルをモニターする方法を提供するのが望ましい。生細胞中で直接トリプトファンレベルを測定できるようにするためには、トリプトファンおよびそのアナログのためのナノセンサーを有することが有用であろう。トリプトファンセンサーは創薬および薬剤スクリーニングのための良好なツールとなろう。トリプトファンレベルの応答は化学物質、代謝事象、輸送工程、およびシグナル伝達過程に応答してリアルタイムに測定することが出来るであろう。
【0014】
最近、基質結合の際に2つの葉(lobe)がハエジゴクのように閉じる多数の細菌ペリプラズム結合タンパク質 (PBP)が、代謝産物ナノセンサーの足場としての使用に成功している(Fehr et al. 2002; Fehr et al. 2003; Lager et al. 2003)。かかる知見に基づき、様々な蛍光指標タンパク質が、代謝産物、例えば、 グルコース (Fehr et al. 2004)、マルトース (Fehr et al. 2002)、リボース (Lager et al. 2003)、グルタミン酸 (Okumoto et al. 2005) (国際出願 PCT/US05/36956)、リン酸 (国際出願 PCT/US05/36955)、スクロース (国際出願 PCT/US05/36951)およびポリアミン (国際出願 PCT/US05/36952)、の検出のために開発されている。これらはそれぞれその内容全体を引用により本明細書に含める。
【0015】
これらのセンサーは緑色蛍光タンパク質変異体の対に挟まれたペリプラズム結合タンパク質ファミリーのタンパク質から構成され、蛍光は共鳴エネルギー移動 (FRET)が可能であり、その効率はフルオロフォアの距離と配向に依存する。リガンド結合はかかるセンサーにおける立体構造変化を誘導し、その結果、FRET シグナルが変化し、それがそれぞれの代謝産物のレベルの尺度となる。これらバイオセンサーの開発の成功により、本発明者らは、トリプトファンバイオセンサーも構築できると考えるに至った。というのはトリプトファンリプレッサータンパク質もL-トリプトファンの結合の際に立体構造変化を経ることが観察されているからである。しかし、単量体であるペリプラズム結合タンパク質とは異なり、細菌トリプトファンリプレッサータンパク質は上記のように二量体として機能する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
最近、多量体タンパク質複合体形成の検出におけるFRETの使用が成功している。例えば、FRET 技術がエストロゲン受容体および核共活性化因子の多量体複合体形成の検出に用いられた(Liu et al. 2003)。FRETはまたホモ多量体複合体の1成分、例えば、 2B が蛍光 タンパク質に融合して含まれるFRET バイオセンサーによる生細胞におけるコクサッキーウイルス 2B タンパク質のホモ多量体化の研究 (Van Kuppeveld et al. 2002)および異なる単一ユニットセンサーを細胞に共トランスフェクトすることによる哺乳類アデニル酸シクラーゼの二量体化の研究 (Gu et al. 2002)にも適用された。しかし、これらの研究はいずれも多量体または二量体部分を有する一本鎖バイオセンサーを設計するものでも用いるものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
本発明者らは、多量体バイオセンサーが複数コピーの目的遺伝子をバイオセンサーのコンストラクトに組み込むことにより構築することに成功しうるということを驚くべきことに見いだした。したがって、本発明はリガンド結合蛍光指標をコードする単離核酸を提供し、該指標は、多量体リガンド結合タンパク質複合体の少なくとも1つのリガンド結合タンパク質部分、リガンド結合タンパク質部分に融合したドナーフルオロフォア部分、およびリガンド結合タンパク質部分に融合したアクセプターフルオロフォア部分を含む。
【0018】
本発明はさらに、生細胞におけるトリプトファン濃度の変化の検出および測定に利用可能なトリプトファンバイオセンサーおよび、複数コピーのトリプトファンリプレッサードメインを単一遺伝子産物内にコードさせることによる多量体トリプトファンリプレッサードメインを有するセンサーの最適化を提供する。さらに、本発明は、多量体リガンド結合タンパク質センサーの構築のためのリプレッサーおよび/または DNA 結合 および/または RNA 合成制御タンパク質の使用を提供する。
【0019】
特に、本発明は、トリプトファン蛍光指標をコードする単離核酸を提供し、該指標は、二量体トリプトファンリプレッサータンパク質複合体の少なくとも1つのトリプトファン結合タンパク質部分、トリプトファン結合タンパク質部分に共有結合したドナー蛍光タンパク質部分および少なくとも1つのトリプトファン結合タンパク質部分に共有結合したアクセプター蛍光タンパク質部分を含み、ここでドナー部分とアクセプター部分との間の蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) が、ドナー部分が励起され、トリプトファンがトリプトファン結合タンパク質部分に結合すると変化する。本発明の核酸を含む、発現ベクターを含むベクター、および宿主細胞も提供され、かかる核酸によってコードされるバイオセンサータンパク質も提供される。かかる核酸、ベクター、宿主細胞およびタンパク質は、トリプトファン結合およびトリプトファンレベルの変化の検出方法に用いることが出来、また、トリプトファン結合またはトリプトファン媒介活性を調節する化合物の同定方法にも用いることが出来る。
【0020】
図面の簡単な説明
図1(A)-1(D)は、大腸菌トリプトファンリプレッサー TrpRに基づくトリプトファンセンサーを示す。 (A) trp オペレーター (緑、青)に結合したL-トリプトファン (黒) との複合体中のTrpR 二量体 (黄色、赤) (PDB: 1TRO (Otwinowski et al. 1988))。 (B) 構築された FLIPW 変異体。(C) L-トリプトファン (赤四角)、D-トリプトファン (シアン丸)、5-ヒドロキシ-L-トリプトファン (黄色四角) および 5-メチル-L-トリプトファン (緑三角)の存在下でのFLIPW-CTY の標準化された FRET 比変化。(D) L-トリプトファンの存在下でのFLIPW-CTY (赤四角)、FLIPW-TCTY (シアン丸)、FLIPW-CTYT (緑三角)、およびFLIPW-CTTY (黄色四角)の標準化された FRET 比変化。
【0021】
図 2は、pTK164のプラスミド地図、pTK164のDNA 配列およびFLIPW-CTYのタンパク質配列(配列番号2 および 3)を示す。
【0022】
図 3は、pTK203のプラスミド地図、pTK203のDNA 配列およびFLIPW-TCTYのタンパク質配列(配列番号4および5)を示す。
【0023】
図 4は、pTK204のプラスミド地図、pTK204のDNA 配列およびFLIPW-CTYTのタンパク質配列(配列番号 6および7)を示す。
【0024】
図 5は、pTK205のプラスミド地図、pTK205のDNA 配列およびFLIPW-CTTYのタンパク質配列 (配列番号8および9)を示す。
【0025】
図 6は、pTK222のプラスミド地図およびpTK222のDNA 配列 (配列番号 10)を示す。FLIPW-CTYT は pTK204上にコードされる(図4、配列番号7)。
【0026】
図 7(A)-7(B)はFLIPW-CTYおよび FLIPW-CTYT トリプトファンセンサーの構造モデルを示す。TrpR:緑、マゼンタ(PDB: 1WRP; PDB: タンパク質データバンク: http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do )、eCFP: 青 (PDB: 1MYWに基づく)およびVenus: 黄色(PDB: 1MYW)。(A)2つの FLIPW-CTY 鎖の二量体の結果、トリプトファンに結合しうるTrpR 二量体が生じる。(B) FLIPW-CTYT 単量体。
【0027】
図8(A)-8(B)は、FLIPW-CTYTによりモニターした96-ウェルマイクロプレートにおけるCOS-7 細胞培養によるトリプトファン取り込みを示す。 (a)タイロードバッファー (四角) およびタイロードバッファー中100 μM L-Trp (丸)の存在下での細胞培養のFRET 比変化。データは平均± S.E. (n=12)に対応する。(b)ミカエリスメンテン式に適合させた外部トリプトファン濃度に対する細胞内 FLIPW-CTYT 応答の速度。細胞を 0.05、0.1、0.25、0.5、1、5、10 および25 μM L-Trpとともにインキュベートした。データは平均± S.E. (n=6)に対応する。
【0028】
図9(A)-9(B)は、大腸菌 PurRのコリプレッサー結合ドメインに基づくヒポキサンチンセンサーを示す。(a) purF オペレーター部位 (青)と結合したヒポキサンチン (黒)との複合体におけるPurR 二量体 (赤、黄色) (PDB: 1PNR (22))。 (b) FLIPpur センサーのヒポキサンチンの存在下での飽和。
【0029】
図 10は、FLIPW-CTYT センサーの成分の相対的位置を示す。TrpR 二量体 (緑、マゼンタ、PDB: 1WRP) および Venus (黄色、PDB: 1MYW) を立体的に適合するようにモデリングし、末端は1 オングストローム以内に近接している。
【0030】
図 11(A)-11(B)は、 FLIPW-TCTY および FLIPW-CTYT トリプトファンセンサーの構造モデルを示す。TrpR: 緑、マゼンタ (PDB: 1WRP)、eCFP:青(PDB: 1MYWに基づく)およびVenus: 黄色(PDB: 1MYW)。 (a) FLIPW-TCTY 単量体、(b) FLIPW-CTYT 単量体。
【0031】
図 12はpTK222でトランスフェクトしたHEK293T 細胞の灌流を示す。細胞をタイロードバッファーで灌流した。1’30” および3’の間に (三角で示す) バッファー に10 μM L-トリプトファンを追加した。センサーの応答は528 nm および 485 nmでの蛍光出力の比から測定する。トリプトファンによる灌流の間、細胞内トリプトファンレベルが上昇する。Trpレベルは流出および代謝により続くバッファーによる灌流の間に低下する。
【0032】
発明の詳細な説明
以下の説明には本発明の理解に有用であり得る情報が含まれる。本明細書で提供する情報は従来技術であるかまたは本願発明に関連すると認めるものではなく、明示的または黙示的に引用しているいずれの刊行物も先行技術であると認めるものではない。
【0033】
本発明のその他の目的、利点および特徴は明細書および添付の図面をみると当業者に明らかとなろう。したがって本発明のさらなる目的および利点は以下の記載から明らかであろう。
【0034】
バイオセンサー
本発明は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いて分析物濃度の変化を検出および測定するための多量体リガンド結合タンパク質のバイオセンサーを提供する。一つの態様は、とりわけ、リガンド結合蛍光指標をコードする単離核酸であって、指標が、多量体リガンド結合タンパク質複合体の少なくとも1つのリガンド結合タンパク質部分、リガンド結合タンパク質部分に共有結合したドナー蛍光タンパク質部分およびリガンド結合タンパク質部分に共有結合したアクセプター蛍光タンパク質部分を含み、ここで、ドナー部分とアクセプター部分との間のFRETがドナー部分が励起され、リガンドがリガンド結合タンパク質部分に結合すると変化する、単離核酸である。
【0035】
本明細書において用いる場合、「多量体」という用語およびその文法的な活用形は2以上の異なる分子の間での多量体複合体の形成をいう。多量体複合体は、例えば、同じタンパク質の2以上の分子を含むものでもよいし(例えば、ホモ-二量体、-三量体、-四量体またはより高次の多量体)、2以上の異なる(即ち、同一でない)タンパク質の混合物を含むものでもよい (例えば、ヘテロ-二量体、-三量体,-四量体またはより高次の多量体)。例えば、多量体抗体は同じ抗体を含むものでも2以上の異なる抗体を含むものでもよく、後者の場合そのそれぞれは2以上の機能または活性を有する (例えば、2以上のエピトープに結合する)。
【0036】
本明細書において用いる場合、「共有結合している」とは、ドナーおよびアクセプター蛍光部分がリガンド結合タンパク質部分に化学結合を介して、例えば、該リガンド結合タンパク質部分における選択されたアミノ酸に結合していることを意味する。共有結合しているとは、また、ドナーおよびアクセプター部分がリガンド結合タンパク質部分に、リガンド結合タンパク質部分がドナーおよびアクセプター部分を含む融合タンパク質として発現するように遺伝的に融合していることも意味する。
【0037】
多量体リガンド結合タンパク質部分をコードする単離核酸はいずれの核酸であってもよく、好ましくは多量体タンパク質の部分をコードする核酸である。一つの態様において、目的の単離核酸は、ヘテロ-またはホモ-二量体、-三量体、-四量体、-五量体、-六量体またはより高次の多量体をコードする。多量体タンパク質は、例えば、結合タンパク質 (例えば、抗原結合ポリペプチド)、酵素、受容体、リガンド、核酸結合タンパク質(例えば、 リプレッサータンパク質結合 DNA)、成長制御因子、分化因子、および走化性因子から選択することが出来る。例えば、リプレッサータンパク質である、lac リプレッサーは四量体として作用し、チロシンリプレッサーは六量体として作用する。
【0038】
タンパク質およびペプチドホルモンをコードする核酸は本発明における目的核酸の好ましいクラスである。かかるタンパク質およびペプチドホルモンは内分泌系により合成され、これらに限定されないが、視床下部ホルモンおよび下垂体ホルモン、下垂体前葉、中葉および後葉ホルモン、膵島ホルモン、消化器系で作られるホルモン、腎臓ホルモン、胸腺ホルモン、副甲状腺ホルモン、副腎皮質および髄質ホルモンが挙げられる。具体的には、本発明に利用できるホルモンとしては、これらに限定されないが、絨毛性性腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、エリスロポエチン、グルカゴン、IGF-1、オキシトシン、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、カルシトニン、卵胞刺激ホルモン、黄体ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、インスリン、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンおよびそのアナログ、バソプレシン、オクトレオチド、ソマトスタチン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン (TRH)、成長ホルモン放出ホルモン (GHRH)、ドーパミン、メラトニン、チロキシン (T4)、副甲状腺 ホルモン (PTH)、糖質コルチコイド、例えば、コルチゾール、鉱質コルチコイド、例えば、アルドステロン、アンドロゲン、例えば、 テストステロン、アドレナリン (エピネフリン)、ノルアドレナリン (ノルエピネフリン)、エストロゲン、例えば、エストラジオール、プロゲステロン、グルカゴン、カルシトロール(calcitrol)、カルシフェロール、心房性ナトリウム利尿ペプチド、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン (CCK)、神経ペプチド Y、グレリン、PYY3-36、アンジオテンシノーゲン、トロンボポエチンおよびレプチンが挙げられる。
【0039】
本発明にはさらに、多量体受容体をコードする目的の核酸も含まれる。多量体受容体には、ホモ二量体(例えば、PDGF 受容体αα、およびββ アイソフォーム、エリスロポエチン受容体、MPL、およびG-CSF 受容体)、そのサブユニットがそれぞれリガンド結合およびエフェクタードメインを有するヘテロ二量体(例えば、PDGF 受容体 αβ アイソフォーム)、および異なる機能を有する成分サブユニットを有する多量体(例えば、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、および GM-CSF 受容体)が含まれる。いくつかの受容体サブユニットは複数の受容体に共通している。例えば、その固有のリガンドには結合できず、細胞内シグナル伝達ドメインを含む、AIC2B サブユニットは、IL-3 およびGM-CSF 受容体の成分である。多くのサイトカイン受容体は構造および機能に基づき4つの関連するファミリーの一つに入れることが出来る。造血性受容体は、例えば、保存システイン残基およびWSXWS モチーフを含むドメインの存在を特徴とする。サイトカイン受容体構造は、Urdal、Ann. Reports Med. Chem. 26:221-228、1991 およびCosman、Cytokine 5:95-106、1993に概説されている。新規な生物学的機能を獲得するための生物にとっての選択圧の下で、新規な受容体ファミリーメンバーがおそらく既存の受容体遺伝子の重複により生じ、多重遺伝子ファミリーの存在を導いている。ファミリーメンバーはしたがって先祖遺伝子の痕跡を含み、かかる特徴的な特徴は、さらなるファミリーメンバーの単離および同定に利用できる。したがって、サイトカイン受容体スーパーファミリーはいくつかのファミリー、例えば、免疫グロブリンファミリー (CSF-1、MGF、IL-1、およびPDGF 受容体を含む);ヘマトポエチンファミリー (IL-2 受容体 β-サブユニット、GM-CSF 受容体 α-サブユニット、GM-CSF 受容体 β-サブユニット;および G-CSF、EPO、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、および IL-9 受容体を含む); TNF 受容体ファミリー (TNF (p80) TNF (p60) 受容体、CD27、CD30、CD40、Fas、およびNGF 受容体を含む)に亜分割される。多量体受容体にはホルモン受容体 (TSH、FSH、CG、VEGF、PDGF、EGF、等)、ステロイド受容体、セロトニン受容体、ドーパミン受容体、代謝型およびイオンチャンネル型グルタミン酸受容体、インスリン受容体、IGF1 受容体、G-タンパク質-共役受容体(ロイコトリエン B(4) 受容体および二量体としてのBLT1を含む)も含まれる。
【0040】
本発明を用いて利用できるその他の多量体タンパク質としては以下が挙げられる : DNAの合成または複製に関与する因子、例えば、 DNA ポリメラーゼアルファおよびDNA ポリメラーゼデルタ; mRNAの産生に関与するタンパク質、例えば、 TFIID およびTFIIH; 細胞、核およびその他の膜結合タンパク質、例えば、ホルモンおよびその他のシグナル伝達受容体、能動輸送タンパク質およびイオンチャンネル、ヘモグロビン、フィブリノゲンおよび von Willabrand因子を含む血液中の多量体タンパク質;細胞内構造を形成するタンパク質、例えば、 アクチン、ミオシン、およびチューブリンおよびその他の細胞骨格タンパク質;細胞外環境において構造を形成するタンパク質、例えば、 コラーゲン、エラスチンおよびフィブロネクチン;細胞内および細胞間輸送に関与するタンパク質、例えば、 キネシンおよびダイニン、SNARE ファミリーのタンパク質 (可溶性NSF 結合タンパク質受容体)およびクラスリン;クロマチン構造の制御を助けるタンパク質、例えば、 ヒストンおよびプロタミン、Swi3p、Rsc8pおよびモイラ(moira); 多量体転写因子、例えば、 Fos、JunおよびCBTF (CCAAT ボックス転写因子); 多量体酵素、例えば、 アセチルコリンエステラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼ; シャペロンタンパク質、例えば、 GroE、Gro EL (シャペロニン 60)およびGro ES(シャペロニン 10); 抗毒素、例えば、 ヘビ毒、ボツリヌス毒素、ストレプトコッカススーパー抗原; 溶解素(バクテリオファージおよびウイルスからの酵素);ならびにほとんどのアロステリックタンパク質。
【0041】
別の態様において、本発明は、リガンド結合蛍光指標をコードする単離核酸を提供し、該指標は、リプレッサータンパク質からの少なくとも1つのリガンド結合タンパク質、リガンド結合タンパク質部分に共有結合したドナー蛍光タンパク質部分、およびリガンド結合タンパク質部分に共有結合したアクセプター蛍光タンパク質部分を含み、ここでドナー部分とアクセプター部分との間のFRETが、ドナー部分が励起され、リガンドがリガンド結合タンパク質部分に結合すると、変化する。本明細書において用いる場合、「抑制」という用語は、抑制すべき標的プロモーターに結合する転写リプレッサー、例えば、 DNA 結合転写リプレッサーによるような、転写の抑制をいう。
【0042】
好適なリプレッサータンパク質としては、これらに限定されないが、ラクトース、ガラクトース、プリン、テトラサイクリン、チロシン、トリプトファンリプレッサータンパク質、多剤-結合タンパク質 QacR、アラビノース (AraC)、水銀 (MerR)、ヒストンデアセチラーゼ (HDAC)、MEF2-相互作用転写リプレッサー (MITR)、レチノイドおよび甲状腺ホルモン受容体のためのサイレンシングメディエーター (SMRT)、核コリプレッサー (N-CoR)、Small Unique Nuclear 受容体 コリプレッサー (SUN-CoR)、TG 相互作用因子 (TGIF)、スローンケタリングウイルス癌遺伝子ホモログ (Ski)、Ski-関連新規遺伝子 (Sno)、NGFI-A-結合タンパク質 (NAB)、または Friend of GATA (FOG)が挙げられる。
【0043】
さらに別の態様において、本発明は、トリプトファン結合蛍光指標をコードする単離核酸およびそれによってコードされるトリプトファン蛍光指標を提供する。とりわけ、本発明の態様はトリプトファン結合蛍光指標をコードする単離核酸であり、該指標は、多量体リガンド結合タンパク質複合体の少なくとも1つの トリプトファン結合タンパク質部分、トリプトファン結合タンパク質部分に共有結合したドナー蛍光タンパク質部分 、およびトリプトファン結合タンパク質部分に共有結合したアクセプター蛍光タンパク質部分を含み、ここでドナー部分とアクセプター部分との間のFRETがドナー部分が励起され、トリプトファンがトリプトファン結合タンパク質部分に結合すると変化する、単離核酸である。
【0044】
一例として、トリプトファン結合タンパク質部分はとりわけ、大腸菌由来のトリプトファン結合タンパク質部分であり以下の配列を有する:
MAQQSPYSAA MAEQRHQEWL RFVDLLKNAY QNDLHLPLLN LMLTPDEREA LGTRVRIVEE LLRGEMSQRE LKNELGAGIA TITRGSNSLK AAPVELRQWL EEVLLKSD (配列番号1)。
【0045】
トリプトファン結合領域をコードするトリプトファンリプレッサーDNA 配列のいずれの部分も本発明の核酸において用いることが出来る。トリプトファン結合タンパク質 (BP)またはその他の生物、例えば、好熱性および超好熱性生物を含むグラム陰性細菌からのそのあらゆるホモログのトリプトファン結合部分が、本明細書に記載するベクターにクローニングでき、開示されるアッセイにしたがって活性をスクリーニングすることが出来る。好熱性および超好熱性生物のリガンド結合タンパク質は特に熱または劣悪な環境条件に対する安定性および抵抗性が上昇したセンサーの構築に有用である。国際出願 PCT/US05/36954参照、これはその内容全体を引用により本明細書に含める。
【0046】
トリプトファン BPの天然の種変異体も、測定可能なトリプトファン結合機能を維持する、部位特異的突然変異、欠失または挿入を含む人工操作された変異体に加えて用いることが出来る。本発明の核酸コンストラクトにおける使用に好適な変異体核酸配列は、トリプトファン BPの遺伝子配列に対して好ましくは少なくとも 30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、または99%の類似性または同一性を有する。適切な変異核酸配列はまた、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でトリプトファン BPの遺伝子にハイブリダイズしうる。高度にストリンジェントな条件は当該技術分野で既知であり、例えばManiatis et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2d Edition、1989、およびShort Protocols in Molecular Biology、ed. Ausubel、et al.(双方とも本明細書において引用により含まれる)を参照のこと。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、かつ異なる環境下で異なることになる。より長い配列は、より高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な手引きは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)(引用により本明細書中に含まれる)において見出される。一般にストリンジェントな条件は、所定のイオン強度、pHで特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5〜10℃低いように選択される。Tmは、(標的配列がTmで過剰に存在し、プローブの50%が平衡時に占有される際に)標的に対して相補的なプローブの50%が平衡時に標的配列にハイブリダイズする(所定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下での)温度である。ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的にはpH7.0〜8.3で約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)、ならびに温度が短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃および長いプローブ(例えば50ヌクレオチドより長い)について少なくとも約60℃という条件となる。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって得られる場合がある。
【0047】
開示されたナノセンサーにより測定可能なリガンド濃度の範囲を拡大するために、本発明の好ましい人工変異体が、リガンドに対する低い親和性を示すように設計される場合がある。リガンドに対する結合親和性の低下または増大を示すさらなる人工変異体は、ランダムまたは部位特異的変異誘発および他の既知の変異誘発技術によって構築され、本明細書に記載のベクターにクローニングされ、活性について開示されたアッセイに従いスクリーニングされうる。開示されたバイオセンサーの結合特異性はまた、バイオセンサーによって認識されるリガンドを改変するように変異誘発によって改変されうる。例えば、Looger et al.、Nature、423 (6936): 185-190を参照のこと。
【0048】
本発明のセンサーを、ドナーおよびアクセプター蛍光部分に共有結合または融合したトリプトファン結合部分および1以上のさらなるタンパク質結合部分を有するように設計して、活性が2以上のリガンドによって制御されるアロステリック酵素を作ることが出来る。2以上のリガンドに対する二重特異性を含むアロステリック酵素は当該技術分野において記載されており、本明細書に記載するFRET バイオセンサーの構築に用いることが出来る(Guntas and Ostermeier、2004、J. Mol. Biol. 336(1): 263-73)。
【0049】
本明細書に記載のように、ドナーおよびアクセプター部分は、ドナー部分とアクセプター部分との間のFRETが、ドナー部分が励起され、リガンドがリガンド結合タンパク質部分に結合した場合に変化する限り、多量体リガンド結合タンパク質複合体の少なくとも1つのリガンド結合部分の末端に融合させてもよいし、多量体リガンド結合タンパク質複合体の少なくとも1つのリガンド結合部分の内部位置に融合させてもよい。国際出願 PCT/US05/36957参照、これはその内容全体を引用により本明細書に含める。
【0050】
本発明の多量体結合タンパク質複合体の単離核酸は下記式(I)の構造を含みうる:
A-B-C-D (I)
ここで、AおよびCはフルオロフォア部分であり、B およびDはリガンド結合タンパク質部分である。
【0051】
別の態様において、本発明は単離核酸を提供し、ここで該リガンド結合蛍光指標は式 (I)の構造を含み、ここで AおよびCはリガンド結合タンパク質部分であり、BおよびDがフルオロフォア部分である。
【0052】
さらに別の態様において、本発明は単離核酸を提供し、ここで該リガンド結合蛍光指標は式 (I)の構造を含み、ここで AおよびDはリガンド結合タンパク質部分であり、Bおよび Cはフルオロフォア部分である。
【0053】
さらに別の態様において、本発明は単離核酸を提供し、ここで該リガンド結合蛍光指標は式 (I)の構造を含み、ここで AおよびDはフルオロフォア 部分であり、Bおよび Cはリガンド結合タンパク質部分である。
【0054】
リガンド結合タンパク質部分は多量体リガンド結合タンパク質複合体の別々のタンパク質からのものであってもよい。したがって、本発明は、2以上のポリヌクレオチド部分を有する単離核酸を提供し、そのそれぞれが多量体タンパク質複合体の一部を形成するリガンド結合タンパク質をコードし、ここで、該核酸は2以上のリガンド結合タンパク質部分に融合したドナーフルオロフォア部分、および2以上のリガンド結合タンパク質部分に融合したアクセプターフルオロフォア部分を含むタンパク質をコードする。
【0055】
本発明の単離核酸は FRETにおけるドナーおよびアクセプター部分として組み合わせて作用することができるいずれの好適なドナーおよびアクセプター蛍光タンパク質部分を組み込んでいてもよい。好ましいドナーおよびアクセプター部分は、GFP(緑色蛍光タンパク質)、CFP(シアン蛍光タンパク質)、BFP(青色蛍光タンパク質)、YFP(黄色蛍光タンパク質)、およびこれらの増強された変異体、例えば増強YFP(EYFP)よりなる群から選択され、ここでは特に好ましい実施形態が、ドナー/アクセプター対CFP/YFP Venus(これは改善されたpH耐性および成熟期間を有するYFPの変異体である)(Nagai, et al., 2002 A variant of yellow fluorescent protein with fast and efficient maturation for cell-biological applications. Nat. Biotechnol. 20, 87-90)によって提供される。それ以外として、より高いpH安定性およびより大きいスペクトル分離を有するMiCy/mKO対が挙げられる(Karasawa et al., 2004)。さらに、ドナーまたはアクセプターとして適するものに、ディスコソマ(Discosoma)種に由来する天然DsRed、別属に由来するDsRedのオルソログ、または最適化された特性を有する天然DsRedの変異体(例えば、K83M変異体またはDsRed2(Clontechから入手可能))が挙げられる。ドナーおよびアクセプター蛍光部分を選択する場合に考慮すべき基準は、例えば米国特許第6,197,928号(その全体が引用により本明細書中に含まれる)に開示のように当該技術分野で既知である。
【0056】
本明細書において用いる場合、「変異体」という用語は、少なくとも 約 30%、40%、50%、60%、70%、より好ましくは少なくとも 75%の同一性、例えば少なくとも 80%、90%、95%またはそれを超える同一性をネイティブな蛍光分子に対して有しているポリペプチドをいう。多くのかかる変異体が当該技術分野において知られており、あるいはネイティブな蛍光分子のランダムまたは指向性突然変異誘発によって容易に作ることが出来る(例えば、Fradkov et al.、FEBS Lett. 479:127-130 (2000)参照)。
【0057】
本発明者らは、最近、バイオセンサーのフルオロフォアが類似または関連配列のストレッチを含む場合、遺伝子サイレンシングが特定の細胞内および特に生物全体内でのバイオセンサーの発現に不利に作用しうることを発見している。かかる場合には、フルオロフォアの核酸配列が修飾されてもコードされたアミノ酸配列は変化しないように、フルオロフォアのコード配列を各フルオロフォアのコドンの1つもしくは複数の縮重またはゆらぎ位置で修飾することが可能である。あるいはフルオロフォアの機能に不利に作用しない、1つもしくは複数の保存的置換もまた取り込まれる場合がある。PCT出願[代理人整理番号第056100-5054号、Methods of Reducing Repeat-Induced Silencing of Transgene Expression and Improved Fluorescent Biosensors](その全体が引用により本明細書中に含まれる)を参照のこと。
【0058】
FRET のための発光量子ドット (QD) (Clapp et al.、2005、J. Am. Chem. Soc. 127(4): 1242-50)、色素を使用することも可能であり、例えばこれらに限定されないが、TOTO色素(Laib and Seeger、2004、J Fluoresc. 14(2):187-91)、Cy3およびCy5(Churchman et al.、2005、Proc Natl Acad Sci U S A. 102(5): 1419-23)、テキサスレッド(Texas Red)、フルオレセイン、およびテトラメチルローダミン(TAMRA)(Unruh et al.、Photochem Photobiol. 2004 Oct)、AlexaFluor 488、ならびに蛍光タグ(例えば、Hoffman et al., 2005, Nat. Methods 2(3): 171-76を参照)が挙げられる。
【0059】
本発明は、本明細書に記載のバイオセンサーポリペプチドをコードする単離核酸分子を含むベクターをさらに提供する。例示的なベクターは、バクテリオファージ、バキュロウイルスまたはレトロウイルスなどのウイルス由来のベクター、ならびにコスミドまたはプラスミドなど、細菌あるいは細菌の配列と他の生物由来の配列の組み合わせに由来するベクターを含む。かかるベクターは、バイオセンサーをコードする核酸配列に作動可能に連結される発現制御配列を含む発現ベクターを含む。ベクターは、大腸菌(E.coli)もしくは他の細菌などの原核細胞内、または動物細胞または植物細胞を含む真核細胞内での機能に適合されうる。例えば、本発明のベクターは、一般に、対象とする宿主細胞に適合する複製起点、対象とする宿主細胞に適合する1つもしくは複数の選択可能なマーカーおよび1つもしくは複数のマルチクローニングサイトなどの要素を含むことになる。ベクター内に含めることを意図した特定の要素の選択は、例えば誘導または調節可能なプロモーター、ベクターの所望のコピー数、所望の選択系などの使用を通じ、対象とする宿主細胞、インサートのサイズ、挿入配列の調節された発現が望ましいか否かなどの因子に依存することになる。異なる用途における宿主細胞とベクターの間の適合性を保証することに関連する因子は、当該技術分野で周知である。
【0060】
本発明での使用を目的とする好ましいベクターは、ドナーおよびアクセプター蛍光分子をコードする核酸間のトリプトファン結合ドメインまたは受容体のクローニングを可能にし、ドナーおよびアクセプター蛍光分子に共有結合されたトリプトファン結合ドメインを含むキメラまたは融合タンパク質の発現をもたらすことになる。例示的なベクターは、Fehr et al. (2002) (Visualization of maltose uptake in living yeast cells by fluorescent nanosensors, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 99, 9846-9851)、(その全体が引用により本明細書中に含まれる)に開示された細菌のpFLIP誘導体を含む。融合タンパク質を発現するような正しいフレームで核酸をベクターにクローニングする方法は、当該技術分野で周知である。
【0061】
本発明のトリプトファンバイオセンサーは、細胞のいずれの位置で発現させてもよく、例えば、細胞質、細胞表面または細胞内オルガネラ、例えば、核、小胞、ER、液胞等が挙げられる。タンパク質の発現を様々な細胞内区画へと標的化する方法およびベクター成分は当該技術分野において周知であり、バイオセンサーが発現する特定の細胞または生物に応じて選択される。例えば、Okumoto、S.、Looger、L. L.、Micheva、K. D.、Reimer、R. J.、Smith、S. J.、and Frommer、W. B. (2005) P Natl Acad Sci USA 102(24)、8740-8745; Fehr、M.、Lalonde、S.、Ehrhardt、D. W.、and Frommer、W. B. (2004) J Fluoresc 14(5)、603-609、参照。これらはその内容全体を引用により本明細書に含める。
【0062】
本発明のキメラ核酸は、ドナーとアクセプターの間のFRETにおける変化がリガンド結合時に検出されうるような方法で、ドナーおよびアクセプター蛍光部分のコード配列がリガンド結合ドメインの別の末端に融合されるように構築され得る。蛍光ドメインは、所望により、1つもしくは複数の柔軟なリンカー配列によりリガンド結合ドメインから分離されうる。かかるリンカー部分は、好ましくは約1〜50アミノ酸残基長、およびより好ましくは約1〜30アミノ酸残基長である。リンカー部分およびそれらの用途は当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第5,998,204号および米国特許第5,981,200号ならびにNewton et al.、Biochemistry 35:545-553 (1996)において記載されている。あるいは、本明細書に記載したリンカーまたはフルオロフォアのいずれかの短くしたバージョンも利用できる。例えば、本発明者らはこれら3つのモジュールのいずれのN-またはC-末端部分の欠失も引用により本明細書にその全体を含める出願第60/658141に記載のようにFRET比変化を上昇させることを示した。
【0063】
蛍光部分が末端ではなくバイオセンサー内部の位置から発現および提示されるように、蛍光分子のコード配列の一方もしくは双方を結合タンパク質のオープンリーディングフレーム内に挿入することも、リガンド結合ドメインの性質および大きさに応じて可能となる。かかるセンサーは、米国特許出願番号60/658,141号(その全体が引用により本明細書中に含まれる)に概ね記載されている。リガンド結合配列を、タンデム分子間ではなく、単一のフルオロフォアのコード配列、すなわちGFP、YFP、CFP、BFPなどをコード化する配列内に挿入することも可能となる。米国特許第6,469,154号および米国特許第6,783,958号(これら各々はその全体が引用により本明細書中に含まれる)の開示によると、かかるセンサーは、フルオロフォアの活性に影響するタンパク質内部での検出可能な変化をもたらすことにより応答する。
【0064】
本発明はまた、大腸菌もしくは他の細菌などの原核細胞、または酵母細胞、動物細胞または植物細胞などの真核細胞を含む、本発明のベクターまたは発現ベクターが形質移入された宿主細胞を含む。別の態様では、本発明は、環境的に安定なバイオセンサーの発現をコードする核酸配列の発現に特徴づけられる表現型を有するトランスジェニック非ヒト動物を特徴とする。表現型は、動物の体細胞内および胚細胞内に含有される導入遺伝子によって授けられ、(a)トリプトファンバイオセンサーをコードするDNAコンストラクトを含む導入遺伝子を動物の接合体に導入するステップと、(b)接合体を偽妊娠した動物に移植するステップと、(c)接合体の出産までの発達を可能にするステップと、(d)導入遺伝子を含む少なくとも1つのトランスジェニック子孫を同定するステップと、により生成されうる。導入遺伝子を胚に導入するステップは、導入遺伝子を含む胚性幹細胞を胚に導入するか、または胚を導入遺伝子を含むレトロウイルスに感染させることにより達成可能である。本発明のトランスジェニック動物は、トランスジェニック線虫(C.elegans)、トランスジェニックマウスおよび他の動物を含む。トランスジェニック植物もまた含まれる。
【0065】
本発明は、本明細書に記載の特性を有する単離バイオセンサー分子、特にトリプトファン結合蛍光指標も包含する。かかるポリペプチドは、本明細書に記載の核酸コンストラクトを用いて組み換え発現されうるか、または成分ドメインの一部もしくは全部の化学的結合により生成されうる。発現されたポリペプチドを、所望により、当該技術分野で既知の生化学的および/または免疫学的精製方法により、転写−翻訳系において生成しおよび/またはそれから単離するか、あるいは組み換え細胞から産生してもよい。本発明のポリペプチドを、細胞膜抽出物などの脂質二重層、あるいは人工脂質二重層(例えばリポソーム小胞)またはナノ粒子に導入してもよい。
【0066】
リガンドの検出方法
一つの側面において、本発明は、多量体リガンド結合部分のバイオセンサーを用いる複数のリガンドサンプルの迅速かつ有効な検出方法を提供する。本発明の方法はいずれのリガンドについて利用してもよい。リガンドは一価、二価または多価でありうる。本発明の方法に利用できる例示的なリガンドとしては、これらに限定されないが、タンパク質、これらに限定されないが例えば、抗体 (またはその断片)、受容体および酵素; 核酸; 炭水化物; 脂質;および低分子が挙げられる。同様に、本発明の方法はいずれの結合パートナーについて利用してもよい。本明細書において用いる場合、結合パートナーは、バイオセンサーの1つ、2つまたはそれ以上の多量体リガンド結合部分に特異的様式で結合する分子である。結合パートナーは一価、二価または多価でありうる。本発明の方法に利用できる例示的な結合パートナーとしては、これらに限定されないが、タンパク質、例えば限定されないが、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、(scFv)、F(ab) 断片、F(ab')2 断片、Fv 断片、受容体および酵素; 核酸; オリゴヌクレオチド、炭水化物、例えば、単糖類、二糖類、多糖類; 脂質、脂肪酸、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、プロテオグリカン、糖タンパク質、天然または合成ポリマー、および低分子量化合物、例えば、薬物または薬物候補、細胞、ウイルス、細菌、および生物学的サンプルが挙げられる。生物学的サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、胃腸管分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、糞便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙液、および前立腺液であり得る。
【0067】
好ましい態様において、リガンドまたは結合パートナーはトリプトファンである。したがって本発明のバイオセンサー核酸およびタンパク質は、トリプトファン結合を検出し、かつインビトロと植物または動物内の双方でのトリプトファンレベルにおける変化を測定するのに有用である。一実施形態では、本発明は、細胞のサンプル内でのトリプトファンレベルにおける変化を検出する方法であって、(a)本明細書に記載のトリプトファンバイオセンサーをコードする核酸を発現する細胞および細胞のサンプルを提供するステップと、(b)ドナー蛍光タンパク質部分とアクセプター蛍光タンパク質部分の間のFRETにおける変化を検出するステップと、を含む方法を含み、ここで、ドナー蛍光タンパク質部分とアクセプター蛍光タンパク質部分の各々がトリプトファン結合ドメインに共有結合されており、ドナー部分とアクセプター部分との間のFRETの変化が、細胞のサンプル中のトリプトファンレベルの変化を示す。
【0068】
FRETは、当該技術分野で既知の種々の技術を用いて測定されうる。例えば、FRETを測定するステップは、アクセプター蛍光タンパク質部分から放射される光を測定するステップを含みうる。あるいは、FRETを測定するステップは、ドナー蛍光タンパク質部分から放射される光を測定するステップと、アクセプター蛍光タンパク質部分から放射される光を測定するステップと、ドナー蛍光タンパク質部分から放射される光とアクセプター蛍光タンパク質部分から放射される光の比を計算するステップと、を含みうる。FRETを測定するステップは、ドナー部分の励起状態寿命または異方性変化を測定するステップも含みうる(Squire A, Verveer PJ, Rocks O, Bastiaens PI. J Struct Biol. 2004 Jul;147(1):62-9. Red-edge anisotropy microscopy enables dynamic imaging of homo-FRET between green fluorescent proteins in cells.)。かかる方法は、当該技術分野で既知であり、米国特許第6,197,928号に概ね記載されており、これはその全体が引用により本明細書中に含まれる。
【0069】
細胞のサンプル中のトリプトファンおよびそのアナログの量については、FRETの度合いを測定することにより判定可能である。まずセンサーをサンプル中に導入しなければならない。トリプトファン濃度における変化については、サンプルと蛍光指標の間の接触後における第1の時間および第2の時間にFRETをモニターし、かつFRETの度合いにおける差異を測定することによって判定可能である。サンプル中のトリプトファンの量を、例えば滴定により確定された較正曲線を用いて定量可能である。
【0070】
本発明の方法によって分析されるべき細胞サンプルは、例えば細胞表面上でのトリプトファン輸送またはシグナル伝達の測定においてはインビボに、またはトリプトファンの流出が細胞培養において測定されうるインビトロに含有される場合がある。あるいは、細胞または組織由来の流体抽出物はサンプルとして使用される場合があり、それからトリプトファンが検出または測定される。
【0071】
本明細書に開示されるようにトリプトファンレベルを検出するための方法を用い、トリプトファン濃度およびトリプトファン変化に関連する活性の調節に使用可能な化合物をスクリーニングおよび同定することが可能である。一実施形態では、特に、本発明は、トリプトファン恒常性 (代謝および取り込み)またはレベルを調節する化合物を同定する方法であって、(a)本明細書に開示されるようにトリプトファンバイオセンサーを発現する細胞および細胞のサンプルを含む混合物を、1つもしくは複数の試験化合物に接触させるステップと、(b)該接触させるステップ後に、ドナー蛍光ドメインとアクセプター蛍光ドメインの間のFRETを測定するステップと、を含む、方法を含み、ここで該接触させるステップ後のFRETの増大または低下は、該試験化合物がトリプトファン結合活性またはトリプトファンレベルを調節する化合物であることを示す。
【0072】
「調節する」という用語は、この態様において、かかる化合物がトリプトファン結合恒常性(代謝および取り込み)活性を上昇または低下させうる、または活性、即ち、トリプトファンレベルに影響する細胞機能またはシグナル伝達カスケードに影響を与えうるということを意味する。トリプトファン恒常性 (代謝および取り込み)活性を上昇または低下させる化合物は、上記のように異常なトリプトファン活性または異常な細胞代謝またはシグナル伝達に関連する障害の治療的介入および処置の標的であり得る。細胞機能に関連するトリプトファン恒常性 (代謝および取り込み)活性またはトリプトファンレベルを上昇または低下させるその他の化合物は、リガンド結合活性に関連する障害の処置のための治療製品へと開発され得る。
【0073】
有用性
本発明の多量体センサーは広範な用途に有用であろう。本発明のセンサーは生きた植物および動物細胞にて発現させることが出来、ここでそれはリガンドの定常状態レベルをインビボとインビトロの両方でモニターするのに使用できる。特に、トリプトファンバイオセンサーが細菌または酵母細胞で発現する場合、それはトリプトファントランスポーターの同定およびクローニングのためのゲノムライブラリーのスクリーニングに利用することが出来る。哺乳類細胞で発現する場合、本発明のセンサーはトリプトファンの取り込みに影響を与える薬物の同定のためのスクリーニングに用いることが出来る。トリプトファン取り込みの上昇は様々な病状に関連する症状、例えば、 ハートナップ病および抑欝を低減するであろう。トリプトファンレベルを低下させる化合物はパーキンソン病の治療のためのリード薬物として役立ちうる。したがって、多量体トリプトファンセンサーは様々な疾患におけるトリプトファン治療の進展をモニターするのに用いることが出来る。あるいは、本発明のバイオセンサーはトリプトファン濃度および活性を調節するために使用しうる化合物のスクリーニングおよび同定に用いることが出来る。
【0074】
トリプトファンセンサーは、トリプトファン誘導体、例えば、インドール、セロトニン、およびメラトニンの検出のためのセンサーの開発の基礎として役立ちうる。セロトニンセンサーは神経細胞およびシナプス間隙におけるセロトニンレベルに対する化合物ライブラリーの効果を分析することにより、上記病状の治療のための薬物の同定に利用することが出来る。松果体細胞で発現するメラトニンセンサーはメラトニン産生レベルに影響する化合物の同定に利用でき、不眠症の治療のための薬物リードを提供しうる。
【0075】
トリプトファンセンサーは植物におけるトリプトファンレベルの測定における有用なツールとしても役立ちうる。植物細胞で発現するトリプトファンセンサーにより、トリプトファン生合成を上方制御または下方制御し得、肥料の添加物として利用できる薬剤の同定が可能となる。植物におけるトリプトファンレベルは、トリプトファンがインドール-3-酢酸 (IAA) がもっとも強力であるオーキシンの前駆体であるためオーキシンレベルに重要であり得る。トリプトファンセンサーはしたがって改良された作物の開発を導きうる、または植物代謝産物分析のためのツールとして使用できる、様々な用途への可能性を有するオーキシンセンサーの開発の基礎として役立つ。植物の発達は時間的および空間的オーキシンレベルの光制御下にある。IAA センサーはこれらレベルおよびオーキシン作用の位置の同定に利用できる。オーキシンは植物中を輸送されるため、酵母細胞で発現するオーキシンセンサーはゲノム植物 DNA ライブラリーのスクリーニングによるオーキシントランスポーターの同定に利用できる。オーキシンレベルは作物の発達の指標でもある。したがって、オーキシンセンサーは圃場のオーキシンレベルの迅速且つ簡単な分析に利用でき、したがって最適収穫率の決定を助けうる。
【0076】
本発明は、リガンド、例えば、 Trpの量を測定する方法を提供する。一例として、本発明の方法は、生物学的サンプルと、多量体リガンド結合タンパク質複合体のリガンド結合タンパク質部分、リガンド結合タンパク質部分に融合したドナーフルオロフォア、およびリガンド結合タンパク質部分に融合したアクセプターフルオロフォアを含むリガンド結合蛍光指標を接触させる工程; および、サンプル中のリガンド、例えば、 Trpのレベルの尺度として生物学的サンプルにおけるFRETレベルをモニターする工程を含む。
【0077】
本発明はまた、対象における異常な量のリガンドと関連する疾患の診断方法も提供する。本発明は、リガンドに関連する疾患の発症、進行または退行を対象におけるリガンドレベルを検出することによりモニターする方法を提供する。一例として、本発明のリガンド結合蛍光指標を含む生物学的サンプルにおけるFRET レベルをモニターすることによって、生物学的サンプル中の Trpの量を検出する。
【0078】
一つの態様において、本発明は、本発明のリガンド結合蛍光指標を用いて、リガンド、例えば、 Trpの結合を調節するアゴニストおよびアンタゴニストを同定する方法を提供する。一例として、本発明はTrp 代謝のアゴニストおよびアンタゴニストを同定するためにも用いることが出来る。別の態様において、本発明は、本発明のリガンド結合蛍光指標を用いて、医薬品のリガンド結合、例えば、TrpのTrpRへの結合に対する効果を評価する方法を提供する。
【0079】
上記のように、本発明の方法はFRETレベルをモニターすることを含む。リガンド結合蛍光指標を含むサンプルにおけるFRET のモニタリングには、FRETを測定すること、FRETを検出すること、または当業者に知られた方法によりFRET シグナルを検出することが含まれうる。FRETのモニタリングは、対照サンプルから測定されるFRETを比較することも含みうる。
【0080】
一つの側面において、本発明のリガンド結合蛍光指標は生物学的サンプルとともに用いられる。生物学的サンプルには、対象、例えば、動物または植物からの、細胞、組織、または体液が含まれうる。別の側面において、本発明の方法は対象におけるリガンド結合蛍光指標のインビボ使用および、リガンド、例えば、 代謝産物および栄養素のインビボ分析に適用される。
【0081】
本発明はまた、リガンド結合蛍光指標の様々な使用、例えば、サンプル中のTrp の量の測定または異常な量の Trpに関連する疾患の診断のためのキットを提供する。キットは、本発明のリガンド結合蛍光指標および該指標の使用指示書を含む。キットはまた、FRETを測定または検出する方法を提供しうる。
【0082】
トリプトファンセンサー
L-トリプトファンは必須アミノ酸であり、哺乳類細胞におけるタンパク質合成に必要である。さらにそれは、抑制性神経伝達物質であるセロトニン、概日時計制御ホルモンであるメラトニン、および補酵素 NADおよびNADPの合成に必要なビタミン B3 ナイアシンの前駆体である。L-トリプトファンの分解産物は、T-細胞媒介免疫応答の抑制に関与する。哺乳類細胞はL-トリプトファンを合成できず、その取り込みのための輸送機構に依存している。従来は、取り込みは放射標識基質を用いて測定されており、レベルはLC/GC-MS によって細胞抽出物において測定されていた。これら方法はいずれも時間分解型でも特異的でもなく、時間的または細胞/細胞内の高い分解能を欠いていた。ヒトの健康にL-トリプトファンが重要であるため、細胞内 L-トリプトファンレベルの非侵襲的、時間分解型測定のための分析ツールが強く望まれていた。
【0083】
蛍光指標タンパク質 (FLIP)は、生細胞における代謝産物レベルのリアルタイムモニタリングの便利なツールである。典型的には、ナノセンサーは、共鳴エネルギー移動 (FRET)が可能な緑色蛍光タンパク質変異体の対にアロステリックに結合したリガンド-感知ドメインからなり、FRETの効率はフルオロフォア双極子の距離と相対的配向とに依存する。リガンド結合によりセンサーの立体構造変化が誘導され、その結果FRET効率が変化し、それは対応する代謝産物のレベルと相関する。ペリプラズム結合タンパク質 (PBP)は、重要な代謝産物、例えば、グルコース (Fehr et al. 2003)、マルトース (Fehr et al. 2002)、リボース (Lager et al. 2003)およびグルタミン酸 (Okumoto et al. 2005)のイメージングのためのFLIPの構築のための利用が成功している。しかし、トリプトファン-結合 PBPは今日まで報告されておらず、したがって代替のリガンド感知足場がトリプトファン ナノセンサーの構築のために探索された。
【0084】
大腸菌などのγ-プロテオバクテリアにおいては、トリプトファン生合成オペロンの転写はトリプトファンリプレッサータンパク質 TrpRのtrp オペレーターへの減弱 (Yanofsky 1981)および抑制性結合を介して制御されており(Joachimiak et al. 1983)、ここでL-トリプトファンのリプレッサーへの結合の結果、リプレッサーのオペレーター配列に対する親和性を向上させる立体構造変化が起こる (Zhang et al. 1987)。本発明者らはインビボ L-トリプトファンレベルのモニタリングのための新規な遺伝的にコードされたセンサーの構築のためにTrpRのリガンド-誘導性立体構造変化を利用した。それは代謝産物 FRET センサー概念の新規なリガンド-感知ドメインへの適用可能性を示し、細胞の内側にのみ存在する代謝産物のためのナノセンサーの構築に新しい道を開いた。さらに、TrpRの特定の形態および立体構造に基づいた新規戦略をFRET シグナルの最適化に用いた。トリプトファンナノセンサーは単一細胞におけるトリプトファンレベルの動力学の特徴決定に利用でき、96-ウェルスクリーニング形式に適合する。大腸菌プリンリプレッサー PurRに基づくヒポキサンチンのためのさらなるFRET センサーの構築により、本発明者らはさらにエフェクター-調節型転写調節因子のナノセンサーのための認識要素としての好適性を実証する。
【0085】
要約すると、哺乳類細胞はトリプトファンを合成できず、重要な分子、例えば、神経伝達物質であるセロトニン、ホルモンであるメラトニンおよびビタミン B3 ナイアシンの生成のために膜を横切る輸送に依存しているため、生細胞中でトリプトファンを測定する方法を開発する必要がある。本発明は、シアン (eCFP)および黄色 (Venus) 蛍光タンパク質 FRET対に様々な形態で二量体大腸菌トリプトファンリプレッサー (TrpR)をアロステリックに結合させることによる、細胞内トリプトファンレベルのリアルタイムイメージングのための新規な遺伝的にコードされた蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) ナノセンサーの本発明者らによる開発に部分的に基づく。eCFP-TrpR-Venus-TrpRからなるツインカセット FRET ナノセンサー変異体は、96-ウェルプレート中の細胞培養および個々の細胞におけるトリプトファンレベルの時間分解型モニタリングのためにサル腎臓 COS-7 細胞中にて作成した。大腸菌 PurRに基づくヒポキサンチン FRET センサーは細菌リプレッサーのインビボセンサーの骨組みのための一般化可能性を実証した。遺伝的にコードされた FRETナノセンサーによりトランスフェクトされたHEK293T 細胞を用いた灌流実験において、細胞内トリプトファンレベルはトリプトファンでの灌流の間に上昇する。次いでバッファーによる灌流の間、流出と代謝のためにTrp レベルは低下する。
【0086】
以下の実施例は、本発明を説明および例示するために提供される。そのようなものとして、それらが本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者であれば、多数の他の実施形態も上文や特許請求の範囲に記載のような本発明の範囲内に含まれることを十分に理解するであろう。
【0087】
実施例
材料および方法
化学物質、株、プラスミド:すべての化学物質は分析グレードのものであり、Sigma-Aldrichから購入した。大腸菌株DH5α、 TOP10 F’ およびBL21(DE3)gold (Stratagene)をそれぞれGateway 反応の形質転換、クローニング、およびタンパク質産生に用いた。
【0088】
FLIPWおよびFLIPpur センサーの構築:
大腸菌 trpR遺伝子 (Gunsalus et al. 1980) (EcoGene EG11029、TrpR: UniProt P0A881) をゲノム DNAからプラスミド pGWF1中へのクローニングのために pDONRを介してフォワードプライマー (5’-GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCGGCCCAACAATCACCCTATTCAGC-3’; 配列番号11)およびリバースプライマー (5’-GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTT ATCGCTTTTCAGCAACACCTCTTC-3’; 配列番号12)、そして製造業者が提供するGateway プロトコール(Invitrogen)を用いてPCR増幅した。プラスミド pGWF1はpRSETb 発現ベクター (Novagen)に基づき、バクテリオファージ T7 プロモーターの制御下にクローニングされた増強シアン蛍光タンパク質 (eCFP)および黄色蛍光タンパク質の変異体である Venusの遺伝子を含んでいる。eCFPおよびVenusの遺伝子配列の間のクロラムフェニコール耐性遺伝子および致死ccdB遺伝子はGateway クローニング技術を用いたDNA 配列の挿入に必要な attP DNA 配列に挟まれている。trpR遺伝子をeCFPおよびVenus コード配列の間に挿入した結果、プラスミド pTK164が生じた。pTK164上にコードされるタンパク質配列を FLIPW-CTYと命名した。PCRにより、BamHI またはHindIII 制限部位配列に挟まれたtrpR コピーを産生した。ツインカセットセンサー変異体をECFP コード配列の前(pTK203となる)およびVenusコード配列の後(pTK204となる)にそれぞれ唯一の BamHI および HindIII 制限部位を用いてtrpR コピーを pTK164に挿入することにより構築した結果、単一遺伝子中にリプレッサー二量体をコードするセンサー変異体が得られた。2つのtrpR コピーがGly7 リンカーを用いて連結されたコンストラクトをpTK205と命名した。pTK203、pTK204、および pTK205の遺伝子産物をそれぞれFLIPW-TCTY、FLIPW-CTYTおよびFLIPW-CTTYと命名した。アミノ酸残基 56〜341をコードする大腸菌 purR遺伝子 (EcoGene EG10800、PurR: Uniprot P0ACP7) の部分をゲノム DNA からフォワードプライマー (5’-GGTACCGGAGGCGG CGTTAACCACACCAAGTCTATCG-3’; 配列番号13)およびリバースプライマー (5’-GGTACCGG CGCCTTTACGACGATAGTCGCGGAACGG-3’; 配列番号14)を用いたPCRにより増幅し、pCR4TopoBlunt (Invitrogen)にクローニングした。 DNA 配列決定により2つのT→C 突然変異が位置534および788にあることが判明し、その結果、置換 Leu263Proが生じる (インタクトなPurRの番号付け)。以前に記載された親和性突然変異 Arg190Gln (Lu et al. 1998)をプライマー (5’-GAAATCGGCGTCATCCCCGGCCCGCTGGAACA GAACACCGGCGCAG-3’; 配列番号15)および(5’-CTGCGCCGGTGTTCTGTTCCAGCGGGCC GGGGATGACGCCGATTTC-3’; 配列番号16)を用いた PCRにより導入した。PurR_R190Q をpCR4TopoBluntPurR_R190Qから KpnIにより切り出し、FLIPrib-250n (Lager et al. 2003)由来のKpnI-消化 pRSET_Flipにクローニングした結果、His6-eCFP-PurR-eYFP 融合タンパク質をコードするpFLIPpurが得られた。FLIPW およびFLIPpur コンストラクトは大腸菌 BL21(DE3)goldに担持され、センサータンパク質を以前に記載されたようにして産生および精製した (Fehr et al. 2002)。
【0089】
FLIPWおよび FLIPpur センサーのインビトロ特徴決定:
精製したセンサーを20 mM MOPS pH 7.0 (FLIPW)または 20 mM MES pH7.0 (FLIPpur)中の10-2〜 10-6 Mの範囲の希釈系列のリガンドに添加し、モノクロメータマイクロプレートリーダー (Safire、Tecan、Austria; 励起 433/12 nm、発光 485/12 および528/12 nm)にて分析した。タンパク質を希釈して手動ゲイン(manual gain)70-75にて Venus/eYFP 読み取りを 20,000 〜 30,000とした。リガンド結合の際のFRET比変化を用いて、結合定数 (Kd)を単一部位-結合等温線に基質滴定曲線をあてはめることにより決定した。
リガンド結合の際の比低下についての式は以下の通り:
R = R最大 - (n [S])/(Kd + [S]) (R最大 - R最小)
ここで、[S]、基質濃度; n、同じ結合部位の数; R、比; R最大、リガンドの非存在下での最大比; および、 R最小、リガンドで飽和した際の最小比。
リガンド結合の際の比上昇についての式は以下の通り:
R = R最小 + (R最大 - R最小) (n [S])/(Kd + [S])
ここで、[S]、基質濃度; n、同じ結合部位の数; R、比; R最大、リガンドで飽和した際の最大比;および R最小、リガンドの非存在下での最小比。
3つの独立のタンパク質調製物を分析し、各タンパク質調製物を3連で分析した。
【0090】
組織培養およびトランスフェクション:
COS-7 細胞における細胞質発現のためにCTYTをコードする遺伝子を、5’および3’末端にそれぞれ唯一の BamHIおよびEcoRI 制限部位をコードするプライマーを用いてPCRにより増幅し、BamHI/EcoRI 消化pcDNA3.1(+) ベクター (Invitrogen)にクローニングした結果、プラスミド pTK222が生じた。COS-7 細胞を10% 胎児ウシ血清および50 μg/ml ペニシリンおよびストレプトマイシン (Gibco)を含むダルベッコ改変イーグル培地 (高グルコース; DMEM、Gibco)で培養した。細胞を 37℃、5% CO2で培養した。イメージングのために、細胞を8-ウェル LabTekII German 組織培養スライドグラス(Nalg Nunc International) で培養し、Opti-MEM I 低減血清培地 (Gibco)でLipofectamine 2000 Reagent (Invitrogen)を用いて50 - 70% 集密にて一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの後、細胞をOpti-MEM で16 時間培養し、次いでDMEMで3 時間培養した後、イメージングに供した。蛍光細胞の計数により判定したトランスフェクション効率は少なくとも 30%であった。
【0091】
マイクロプレートアッセイ:
96-ウェルマイクロプレート中の接着細胞を1回 100 μl タイロードバッファー(119 mM NaCl、2.5 mM KCl、2 mM CaCl2、2 mM MgCl2、25 mM HEPES、30 mM グルコース、pH 7.3-7.4)で洗浄した。開始時のFRET比を、eCFPを433 nmで励起した後、Safire モノクロメータマイクロプレートリーダー(Tecan、Grodig、Austria)でeCFPおよびVenus 発光をそれぞれ485 nm および528 nmで読み取ることにより測定した。開始時の比の標準偏差は10%未満であった。タイロードバッファーに100 μl トリプトファンを添加した後、 FRET比 を2 分間隔で2時間まで記録した。取り込み速度を開始時のFRET変化における線形部分から判定し、非線形回帰プログラム Origin 6.1 (OriginLab、Northhampton、Maine、USA)によって適合させた。
【0092】
イメージング:
比イメージングをCoolSnap HQ デジタルカメラ (Roper)および20x 液浸 Corr、40x 油浸、または 63x 水浸レンズ (HC PL APO 20x/0.7またはHCX PL APO、Leica、Germany)を備えた蛍光倒立顕微鏡 (DM IRE2、Leica)で行った。二重発光強度比をOI-5-EM フィルターセットを備えたDualView (eCFP 480/30; eYFP 535/40; Optical 17 Insights、USA)およびMetafluor 6.3r7 ソフトウェア (Molecular Devices、USA)を用いて同時に記録した。励起はSutter Instruments Lambda DG4により提供した。イメージをカメラの線形検出範囲内で獲得し、発現レベルに依存して曝露時間は50〜200 msとし、ソフトウェアビニング2〜 3を用いた。eCFPおよびVenusの蛍光強度は典型的にはそれぞれ1500-2000および2500-3000の範囲にあった。典型的なバックグラウンド値はおよそ100であった。細胞をタイロードバッファーで流速 1.0 ml/分にてチャンバー中総体積0.5 mlで灌流した。分析は少なくとも3回繰り返し、同様の結果を得た。
【0093】
FLIPTrpR 変異体の3D モデリング:
FLIPW センサーの構造モデルをL-Trpとの複合体におけるTrp リプレッサー(PDB 識別子 1WRP; PDB: タンパク質データバンク http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do )およびVenus (PDB 識別子 1MYW)の結晶構造を用いて構築した。タンパク質をMAGE (kinemage.biochem.duke.edu)を用いて手作業により様々な形態にドッキングさせた。
【0094】
pTK222でトランスフェクトされたHEK293T 細胞の灌流:
細胞をタイロードバッファーで灌流した。1’30” と3’との間に (図 12にて三角によって示される) バッファーに10 μM L-トリプトファンを追加した。センサーの応答は528 nmと 485 nmとの蛍光出力の比から判定する。トリプトファンによる灌流の間、細胞内トリプトファンレベルは上昇する。バッファーでの次の灌流の間に流出と代謝によりTrp レベルは低下する。
【0095】
実施例 1: L-トリプトファンのためのリガンド結合足場
この実施例において、トリプトファンオペロン リプレッサーTrpRがバイオセンサーの作成に用いたリガンド結合タンパク質部分である。大腸菌トリプトファンオペロンリプレッサーTrpRは108 アミノ酸の全ヘリックス タンパク質であり、マイクロモルの親和性にてL-トリプトファンに選択的に結合する6つのα-ヘリックスから構成される(図1A) (Marmorstein et al. 1987)。TrpRの活性立体構造は二量体であり、そこで6つのヘリックスのうち5つが分子間接触に関与している(Schevitz et al. 1985)。両方の鎖がトリプトファン-結合部位に寄与しているので、2つのTrpR 分子が2つの機能的部位の形成に必要である(図 1A)。トリプトファンの非存在下では、TrpRの一部はフォールディングされておらず (Reedstrom et al. 1995)、「DNA-読み取りヘッド(reading head)」を形成するヘリックスターンヘリックスモチーフに対応するようである。というのはそれらは TrpR 結晶構造においてトリプトファンの結合により構造再編を経(Zhang et al. 1987)、それらの可動性はオペレーター配列の認識に必須であるからである(Gryk et al. 1996)。さらに、トリプトファン結合の結果、リプレッサーのN-およびC-末端の互いの相対的距離および配向がシフトし (Zhang et al. 1987)、融合フルオロフォアの間の蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)における変化として検出された。大腸菌トリプトファンリプレッサー遺伝子はeCFPおよびVenus コード配列に挟まれていた(図1B)。翻訳された融合産物 FLIPW-CTY (CTY=eCFP-TrpR-VenusYFP)の産生は、全細胞培養におけるeCFP-Venus FRET シグナルの発光スペクトルを読み取ることにより容易に検出できた。実際、トリプトファンの添加は精製タンパク質のFRET 効率をインビトロで低下させ、Venus 蛍光強度の低下として観察できた (図1C) (詳細については表1参照)。FLIPW-CTY はL-トリプトファンにみかけのKd 220 ± 20 μMにて結合し、これは遊離 TrpRと比べて約1桁大きい (Marmostein et al. 1987)。FLIPW-CTYのD-トリプトファンによる滴定の結果、 L-トリプトファンよりも約5倍高い濃度にてFRET比の低下が起こり、したがってFLIPW-CTYのFRET比の低下が発色団のクエンチングに起因するという可能性を制御する(図1C)。野生型 TrpRと同様に、FLIPW-CTY がリガンドに結合する際の親和性の低下は以下の順である: L-5-メチル-トリプトファン > L-トリプトファン > D-トリプトファン > L-5-ヒドロキシ-トリプトファン (詳細については支持する表2を参照) ( Marmostein et al. 1987)。
【0096】
表1. FLIPW センサーのシグナル変化およびL-トリプトファン親和性
【表1】

* 528 nm/485 nmでの発光の蛍光強度の商として規定した比
n.d. 測定せず
【0097】
表2.トリプトファン基質に対するFLIPW-CTYおよびFLIPW-CTYTの親和性(mM)
【表2】

* n.d. 測定せず
【0098】
実施例 2:ツインカセット FLIPW ナノセンサー変異体
TrpRの独特の立体構造特性の結果、機能的 FLIPW-CTY センサーは密に結合した2つのTrpR 分子および4つのフルオロフォアからなり、これは立体障害により結合親和性に影響を与える可能性があり、あるいはフルオロフォアシグナルの平均化によりシグナル欠失が起こる可能性がある。単一のフルオロフォア対を有するセンサーであれば良好な感知特性が得られるであろうと合理的に考えられるため、単一遺伝子産物中に2つのTrpR コピーを含む3つの可能性のあるセンサー (2つのフルオロフォアを同等として処理)を構築した (図1B)。変異体 FLIPW-TCTY および FLIPW-CTYTにおいて緑色蛍光タンパク質変異体の末端は二量体におけるそれぞれのTrpR 分子のN-およびC-末端の間の距離にわたる(~ 22 オングストローム、図10参照)。 これら変異体におけるフルオロフォアの1つはそれゆえ回転的にこれら結合点により拘束されているはずであり、それによって、立体構造平均化の減少によりシグナル変化が改良されうる(Deuschle et al. 2005; Van der Meer et al. 1994)。FLIPW-CTTYの構築のために、2コピーのリプレッサー遺伝子を 7 グリシン残基からなる可動性リンカーによって連結しフルオロフォアの間に挿入した。このリンカーは二量体立体構造を変化させずに2つのTrpR タンパク質をゆるく連結するよう設計されModeller8v1 (Marti-Renom et al. 2000)において構築されたモデルに基づくものであった。FLIPW-CTTYおよびFLIPW-TCTYのFRET比はL-トリプトファンで滴定した場合ほんのわずかに変化した(図1D)。L-トリプトファンについてのFLIPW-TCTYのみかけの結合定数はおよそ 20 μMであり、これは野生型 TrpRに匹敵する(Marmorstein et al. 1987)。FLIPW-CTTYの比変化は均一ではなく、FLIPW-TCTY と同様におよそ 20 μM L-Trp わずかに低下し、1 mm以上上昇した。興味深いことに、FLIPW-CTYTをL-トリプトファンで滴定するとFRET比の上昇が観察され、これはFLIPW-CTYに関しての発色団配向における有意な変化を示す。FLIPW-CTYTの絶対 FRET比 はFLIPW-CTYの半分であった (表1参照)。 FLIPW-CTYTはL-トリプトファンにみかけの親和性 210 ± 20 μMにて結合した。これによりセンサーは哺乳類細胞における生理的トリプトファンレベル (~ 25 μM 2 mM)のモニタリングに好適となった。
【0099】
実施例 3: FLIPW センサーの分子モデリング
この実施例において、観察されたFRET シグナル変化を説明するために分子モデリングを行った。元のセンサー、FLIPW-CTYは二量体化することが予測され、その結果 2対の eCFP-Venus フルオロフォアがTrpR 二量体のそれぞれの側に互いに近接して存在する(図7A)。このセンサーは最高のFRET効率を示し、リガンド結合の際に顕著なFRET低下を示す。FLIPW-CTYT センサーをモデリングして分子内に機能的 TrpR 二量体を形成させた結果、センサー当たり1つのeCFPおよび1つのVenus 分子となった(図7B)。このセンサーは開始時のFRET比が低く、フルオロフォア双極子の間の距離が大きいことと一致しているが、相対 FRET 変化はより高く、おそらくその両方のTrpR 単量体への融合によるVenus 分子の硬直化に起因する。FLIPW-CTTYおよびFLIPW-TCTY センサーはセンサーとして有用であるのに十分なリガンド依存的比変化を示さない。分子モデリングはTrpR 末端が等価でないことによりFLIPW-CTYTと FLIPW-TCTY センサーとの間の驚くべき相違を説明する(図11)。
【0100】
実施例 4: 96-ウェルマイクロプレートにおけるCOS-7 細胞培養中のトリプトファン取り込み
この実施例において、96-ウェルマイクロプレートにおけるCOS-7 細胞培養中のトリプトファン取り込みを調べた。96-ウェルマイクロプレートに播種したCOS-7 細胞培養をFLIPW-CTYT センサーの細胞質産生のためにpTK222で一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞の顕微鏡分析により、FLIPW-CTYTはもっぱら細胞質にて産生され、核には入らないことが示され、これはCOS-7 細胞においてグルコース FRET センサーにて得られた結果と類似する(Fehr et al. 2003) (データ示さず)。FLIPW-CTYTを発現するマイクロウェルで培養した細胞をトリプトファンを含むタイロードバッファー中でインキュベートし、マイクロプレートリーダー中で分析したところ、FRET比の上昇が観察され、取り込みの結果としての細胞質トリプトファンレベルの上昇を示した(図8A)。FRETの上昇速度は外部トリプトファン濃度に依存し、ミカエリスメンテン型動力学を示し、輸送と代謝の組合せについてのみかけの酵素特異性定数 KM が 0.88 ± 0.27 μMであった(図8B)。FLIPW-CTYT センサーはしたがってトリプトファン輸送と代謝とに影響する研究因子として好適であり、ハイスループットの蛍光に基づくアッセイ系に利用できる。
【0101】
実施例 5:大腸菌PurRに基づくヒポキサンチンセンサー
FRET ナノセンサーのための認識要素としての大腸菌トリプトファンリプレッサーの使用の成功により、リガンド-感知ドメインとしての転写制御因子のさらなる探索が行われた。LacI/GalR ファミリーのリプレッサーは多種多様のコリプレッサー、即ち、 ラクトース (LacI)、フルクトース (Vibrio cholera VCA0519)、トレハロース-6-リン酸 (TreR)およびプリン (PurR) に結合するPBP-関連エフェクター-結合ドメインを含む(Fukami-Kobayashi et al. 2003)。後者の大腸菌プリンリプレッサー PurR はプリンのデノボ合成のための酵素をコードする遺伝子の発現を制御する(Meng et al. 1990)。PurR はDNA-結合 N-末端ドメインと大きいコリプレッサー結合 C-末端ドメインとの二分の構造を有する(図9A) (Schumacher et al. 1994)。最終生成物であるヒポキサンチンまたはグアニンのPurRへの結合は立体構造変化を導入する(Choi et al.1992)。 PurR Arg190GlnのC-末端部分(Lu et al. 1998)はeCFPとeYFPに挟まれており、その結果、FLIPpur センサーが生じ、これはヒポキサンチンの存在下でFRET比の3%の低下を示し、みかけの Kd 5.6 ± 0.7 μM であり(図9B)、 遊離 PurR Arg190Glnと同一である ( Lu et al. 1998)。FLIPpurのインビボ使用のためには現在のシグナル対ノイズ比は以前に報告された戦略を用いることにより改善する必要がある(Deuschle et al. 2005)。この結果は、 LacI/GalR リプレッサーファミリーのリガンド結合ドメインは新規特異性を有するFRET ナノセンサーの構築のためのさらなる足場を提供することを示す。
【0102】
実施例 6: pTK222でトランスフェクトしたHEK293T 細胞の灌流:
細胞をタイロードバッファーで灌流した。1’30”と3’の間に (図 12において三角で示す) バッファーに 10 μM L-トリプトファンを加えた。センサーの応答は蛍光出力528 nmおよび485 nmの比から判定する。トリプトファンによる灌流の際、細胞内トリプトファンレベルは上昇する。Trp レベルは続くバッファーでの灌流により流出と代謝のために低下する。
【0103】
ディスカッション
哺乳類細胞はアミノ酸であるトリプトファンを合成できず、基本的細胞機能についてその細胞膜を横切る輸送に依存している。トリプトファンはタンパク質合成に必要であり、ヒトタンパク質におけるアミノ酸の1.3 %を構成している。さらに、トリプトファンはセロトニン、メラトニンおよびナイアシンなどのその他の重要な分子の前駆体である。
【0104】
本研究に記載したFLIPW ナノセンサーは細胞内トリプトファンレベルおよび流れの非侵襲的リアルタイム空間-時間的イメージングを可能とし、従来の分析方法によりも優れた利点を提供する。大腸菌転写制御因子 TrpRの性質がトリプトファンのためのFRET センサーの構築のための認識要素として用いられた。以前に記載されているように、細菌タンパク質の細胞内センサーの構築のための使用は真核細胞の内在性代謝およびシグナル伝達経路と相互干渉する問題を低減する(Belousov et al. 2006)。遺伝的にコードされたナノセンサーはさらにリーダー配列の賢明な選択を介して細胞内のセンサー標的化の利点を提供し、即ち核-およびER-標的化グルコース ナノセンサーが得られ(Fehr et al. 2004; Fehr et al. 2005)グルタミン酸 ナノセンサーの細胞-表面提示が可能となる (Okumoto et al. 2005)。
【0105】
ほとんどのFRET ナノセンサーはそのインターフェースに位置するリガンド結合部位を有する2つのよく構造化された葉からなる細菌ペリプラズム結合タンパク質(PBP)のリガンド結合-誘導ハエジゴク-様立体構造変化に基づいていた(Fehr et al. 2003; Fehr et al.、2002; Lager et al. 2003; Okumoto et al. 2005)。TrpR は平均的なPBPよりも約3分の1と小さく、トリプトファンの非存在下では部分的にフォールディングされていない(Reedstrom et al. 1995)。トリプトファンの存在下ではタンパク質は結晶構造に観察される立体構造をとり(Zhang et al.、1987)、同時に起こる立体構造変化がFRETによるトリプトファン結合の検出を可能とする。FLIPW センサーはそれゆえ、新規クラスのナノセンサーを表す。
【0106】
PBPに基づく FRET ナノセンサーのリガンド結合親和性は典型的には遊離PBPのものと少なくとも直線的に融合したフルオロフォアについては類似している (Fehr et al. 2003; Fehr et al.、2002; Lager et al. 2003; Okumoto et al. 2005)。FLIPW センサーの場合、状況はより複雑である。というのは、2つの結合部位が二量体のインターフェスに形成されるからである。それゆえフルオロフォアの添加がリガンド-誘導フォールディングに影響を与えることが可能であり、そしてそれ自体、トリプトファン結合部位を形成する。実際、トリプトファンリプレッサーとeCFPおよびVenusとの融合の結果、試験したすべてのトリプトファン基質についてTrpRについて報告されている解離定数と比較して(Marmorstein et al. 1987) CTY ナノセンサーの親和性が10倍低下した。偶然にもフルオロフォアの添加の結果、センサーのダイナミックレンジが細胞質トリプトファンレベルの検出に好適となった。
【0107】
FRETは低分子センサーのためのレポーターシグナルとしての使用が成功している(Lalonde et al. 2005; De et al. 2005)。フェルスター理論によると、エネルギー転移の効率はフルオロフォアの間の距離とそれらの双極子の配向とに依存する (Jares-Erijman et al 2003)。これら低分子センサーをレポーターおよび感知ドメインの間のリンカー配列の修飾および/または感知ドメインの表面ループにおけるフルオロフォアの挿入により操作することが出来、その結果FRET ナノセンサーのシグナル出力が上昇および/または逆転する(Deuschle et al. 2005)。TrpRは二量体化してそのリガンド結合部位を形成するので、本発明者らは新規アプローチを採用してFRET シグナルを操作した。主要な FLIPW-CTYにおける第二のTrpR コード配列の挿入により、挿入部位の位置に応じてFRET 出力が変化した。eCFP の前およびeCFPおよびVenusの間の挿入はFRET 応答を大きく消滅させるが、eCFP の後のTrpRコピーは FRET 応答を逆転させ、比変化を上昇させた。FLIPW-CTYおよびFLIPW-CTYT センサーの構造モデルの比較から、前者における方がフルオロフォアが互いに近いであろうことが予測された。FRET 効率はフェルスター式 (Jares-Erijman et al. 2003)に記載されるようにフルオロフォアの間の距離と逆相関するので、実験的に決定したFRET比およびモデルは互いに一致する。
【0108】
FLIPW-CTYTを 96-ウェルマイクロタイタープレートにて培養した細胞培養におけるトリプトファン取り込みのモニタリングに用いた。測定に基づくと、COS-7 細胞におけるトリプトファン取り込みと代謝との組合せについての有効KMはマイクロモルの範囲であった。以前に、トリプトファンについての輸送系、B0 (Broer et al. 2004)、TAT1 (Kim et al. 2002)、LAT1 (Kanai et al. 1998)、およびLAT2 (Rossier et al. 1999; Segawa et al. 1998; Pineda et al. 1999)が、アフリカツメガエル卵母細胞における放射標識アミノ酸の取り込みによって特徴決定されている。トリプトファン取り込み親和性はヒト TAT1 (450 μM) (Kim et al. 2002)およびLAT2 (58 μM) (Pineda et al. 1999)についてのみ決定され、遊離の、組み込まれた、および分解された卵母細胞中のトリプトファンの細胞内プールの和と関連づけられた。FLIPW-CTYTを用いて得られた親和性は一方、標的化細胞内区画における遊離トリプトファンのプールについて決定されるように、より特異的である。新規センサーはしたがって定常状態レベル、取り込み、交換のモニタリングのための補完的なツールを提供し、生細胞におけるトリプトファンの流れを制御する因子の分析のための重要なツールとなろう。薬物またはsiRNAの効果がシステマティックに試験されるハイスループットアッセイを設計できる(Myers et al. 2003)。
【0109】
FLIPW-CTYTでトランスフェクトしたHEK293T 細胞による灌流実験において、細胞内トリプトファンレベルはトリプトファンでの灌流の際に上昇する。Trp レベルは次いでバッファーでの灌流により流出および代謝によって低下する。
【0110】
PBP ファミリーは多種多様のリガンド特異性を含み、例えば、炭水化物、アミノ酸、アニオン、金属イオン、ジペプチドおよびオリゴペプチドが挙げられ、現在までにマルトース (Fehr et al. 2002)、グルコース (Fehr et al. 2003)、リボース (Lager et al. 2003)およびグルタミン酸 (Okumoto et al. 2005)についてのFRET ナノセンサーの感知ドメインを生じてきた。 FLIPW センサーは、リガンド結合の際に立体構造変化を経るその他のタンパク質足場がPBP ファミリーにおいて表されなかった特異性を有する、例えばトリプトファンに対する特異性を有するナノセンサーのための感知ドメインを提供しうることを示している。大腸菌トリプトファンリプレッサー TrpR は様々な基質特異性を有するタンパク質ファミリーの部分ではないが、本願のセットのナノセンサーへの拡張に用いることが出来た。しかし、エフェクターとの結合の際にオペレーター配列との親和性が変化するという細菌転写制御因子の利点は、新規なFRET 代謝産物ナノセンサーについての潜在的感知ドメインを提供しうる。一例として、本発明者らは、LacI/GalR ファミリーのリプレッサーの大腸菌 PurRのエフェクター-結合ドメインに基づきFLIPpur、ヒポキサンチン FRET センサーを構築した。さらに、最近過酸化水素についての蛍光センサー、HyPerが環状に順序を変えた黄色蛍光タンパク質の細菌転写制御因子 OxyR のH2O2-感知部分への挿入により構築された(Belousov et al. 2006)。 転写制御因子が進化してそれに応答するエフェクターのなかには代謝イメージングまたはその医学的関連に関してモニターすることが望ましい分子が多くあり、例えば、例えば、サリチル酸(Pseudomonas sp. NahR) (Park et al. 2005)、ヌクレオシド (大腸菌 XapR) (Jorgensen et al. 1999)、およびテトラサイクリン (TetR) (Orth et al. 2000) が挙げられる。あるいは、新規リガンド特異性を操作しうる (Galvao et al. 2006)。
【0111】
本明細書中て考察されるすべての出版物、特許および特許出願は、引用により本明細書中に含まれる。本発明がその特定の実施形態に関連して記載されている一方、そのさらなる改良を可能とし、さらに本出願が、一般に本発明の原理に従い、本発明が関係する当該技術分野内での既知のまたは習慣的な実施の枠内に収まり、上記の本質的な特徴に適用可能で、かつ添付の特許請求の範囲の範囲内に従うように、本開示からのかかる逸脱を含む、本発明の任意の変数、使用、または適応を網羅するように意図されることが理解されるであろう。
【0112】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1(A)-1(D)は、大腸菌トリプトファンリプレッサー TrpRに基づくトリプトファンセンサーを示す。 (A) trp オペレーター (緑、青)に結合したL-トリプトファン (黒) との複合体中のTrpR 二量体 (黄色、赤) (PDB: 1TRO (Otwinowski et al. 1988))。 (B) 構築された FLIPW 変異体。(C) L-トリプトファン (赤四角)、D-トリプトファン (シアン丸)、5-ヒドロキシ-L-トリプトファン (黄色四角) および 5-メチル-L-トリプトファン (緑三角)の存在下でのFLIPW-CTY の標準化された FRET 比変化。(D) L-トリプトファンの存在下でのFLIPW-CTY (赤四角)、FLIPW-TCTY (シアン丸)、FLIPW-CTYT (緑三角)、およびFLIPW-CTTY (黄色四角)の標準化された FRET 比変化。
【図2】図 2は、pTK164のプラスミド地図、pTK164のDNA 配列およびFLIPW-CTYのタンパク質配列(配列番号2 および 3)を示す。
【図3】図 3は、pTK203のプラスミド地図、pTK203のDNA 配列およびFLIPW-TCTYのタンパク質配列(配列番号4および5)を示す。
【図4】図 4は、pTK204のプラスミド地図、pTK204のDNA 配列およびFLIPW-CTYTのタンパク質配列(配列番号 6および7)を示す。
【図5】図 5は、pTK205のプラスミド地図、pTK205のDNA 配列およびFLIPW-CTTYのタンパク質配列 (配列番号8および9)を示す。
【図6】図 6は、pTK222のプラスミド地図およびpTK222のDNA 配列 (配列番号 10)を示す。FLIPW-CTYT は pTK204上にコードされる(図4、配列番号7)。
【図7】図 7(A)-7(B)はFLIPW-CTYおよび FLIPW-CTYT トリプトファンセンサーの構造モデルを示す。TrpR:緑、マゼンタ(PDB: 1WRP; PDB: タンパク質データバンク: http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do )、eCFP: 青 (PDB: 1MYWに基づく)およびVenus: 黄色(PDB: 1MYW)。(A)2つの FLIPW-CTY 鎖の二量体の結果、トリプトファンに結合しうるTrpR 二量体が生じる。(B) FLIPW-CTYT 単量体。
【図8】図8(A)-8(B)は、FLIPW-CTYTによりモニターした96-ウェルマイクロプレートにおけるCOS-7 細胞培養によるトリプトファン取り込みを示す。 (a)タイロードバッファー (四角) およびタイロードバッファー中100 μM L-Trp (丸)の存在下での細胞培養のFRET 比変化。データは平均± S.E. (n=12)に対応する。(b)ミカエリスメンテン式に適合させた外部トリプトファン濃度に対する細胞内 FLIPW-CTYT 応答の速度。細胞を 0.05、0.1、0.25、0.5、1、5、10 および25 μM L-Trpとともにインキュベートした。データは平均± S.E. (n=6)に対応する。
【図9】図9(A)-9(B)は、大腸菌 PurRのコリプレッサー結合ドメインに基づくヒポキサンチンセンサーを示す。(a) purF オペレーター部位 (青)と結合したヒポキサンチン (黒)との複合体におけるPurR 二量体 (赤、黄色) (PDB: 1PNR (22))。 (b) FLIPpur センサーのヒポキサンチンの存在下での飽和。
【図10】図 10は、FLIPW-CTYT センサーの成分の相対的位置を示す。TrpR 二量体 (緑、マゼンタ、PDB: 1WRP) および Venus (黄色、PDB: 1MYW) を立体的に適合するようにモデリングし、末端は1 オングストローム以内に近接している。
【図11】図 11(A)-11(B)は、 FLIPW-TCTY および FLIPW-CTYT トリプトファンセンサーの構造モデルを示す。TrpR: 緑、マゼンタ (PDB: 1WRP)、eCFP:青(PDB: 1MYWに基づく)およびVenus: 黄色(PDB: 1MYW)。 (a) FLIPW-TCTY 単量体、(b) FLIPW-CTYT 単量体。
【図12】図 12はpTK222でトランスフェクトしたHEK293T 細胞の灌流を示す。細胞をタイロードバッファーで灌流した。1’30” および3’の間に (三角で示す) バッファー に10 μM L-トリプトファンを追加した。センサーの応答は528 nm および 485 nmでの蛍光出力の比から測定する。トリプトファンによる灌流の間、細胞内トリプトファンレベルが上昇する。Trpレベルは流出および代謝により続くバッファーによる灌流の間に低下する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むリガンド結合蛍光指標をコードする単離核酸:
多量体リガンド結合タンパク質複合体の少なくとも1つのリガンド結合タンパク質部分;
リガンド結合タンパク質部分に融合したドナーフルオロフォア部分; および、
リガンド結合タンパク質部分に融合したアクセプターフルオロフォア部分;
ここで、ドナー部分とアクセプター部分との間の蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)がドナー部分が励起され、該リガンドがリガンド結合タンパク質部分に結合すると変化する。
【請求項2】
該多量体リガンド結合タンパク質複合体が、二量体、三量体、四量体および六量体からなる群から選択される請求項 1の単離核酸。
【請求項3】
該多量体リガンド結合タンパク質複合体が二量体である請求項 2の単離核酸。
【請求項4】
該多量体リガンド結合タンパク質複合体がホモ二量体である請求項 3の単離核酸。
【請求項5】
多量体リガンド結合タンパク質複合体の別々のタンパク質からの少なくとも2つのリガンド結合タンパク質部分を含む請求項 1の単離核酸。
【請求項6】
該多量体リガンド結合タンパク質複合体が二量体、三量体、四量体および六量体からなる群から選択される請求項 5の単離核酸。
【請求項7】
該多量体リガンド結合タンパク質複合体が二量体である請求項 6の単離核酸。
【請求項8】
該多量体リガンド結合タンパク質複合体がホモ二量体である請求項 7の単離核酸。
【請求項9】
該リガンド結合蛍光指標が、ドナーおよびアクセプターフルオロフォアに融合したリガンド結合一本鎖二量体を含む請求項 7の単離核酸。
【請求項10】
該リガンド結合蛍光指標が下記式 (I)による構造を含む請求項 5の単離核酸:
A-B-C-D(I)
ここで、AおよびCはフルオロフォア部分であり、BおよびDはリガンド結合タンパク質部分である。
【請求項11】
該リガンド結合蛍光指標が下記式 (I)による構造を含む請求項 5の単離核酸:
A-B-C-D(I)
ここで、AおよびCはリガンド結合タンパク質部分であり、BおよびDはフルオロフォア部分である。
【請求項12】
該リガンド結合蛍光指標が下記式 (I)による構造を含む請求項 5の単離核酸:
A-B-C-D(I)
ここで AおよびDはリガンド結合タンパク質部分であり、BおよびCはフルオロフォア部分である。
【請求項13】
該リガンド結合蛍光指標が下記式 (I)による構造を含む請求項 5の単離核酸:
A-B-C-D(I)
ここで AおよびDはフルオロフォア部分であり、BおよびCはリガンド結合タンパク質部分である。
【請求項14】
該多量体リガンド結合タンパク質複合体が、リプレッサータンパク質、酵素、リガンド、核酸結合タンパク質、成長制御因子、分化因子、および走化性因子、ホルモン受容体、ステロイド受容体、セロトニン受容体、ドーパミン受容体、代謝型およびイオンチャンネル型グルタミン酸受容体、インスリン受容体、IGF1 受容体、G-タンパク質-共役受容体、免疫細胞受容体および抗体からなる群から選択される請求項 1の単離核酸。
【請求項15】
該多量体リガンド結合タンパク質複合体が細菌リプレッサータンパク質である請求項 14の単離核酸。
【請求項16】
細菌リプレッサータンパク質が、ラクトース、ガラクトース、プリン、テトラサイクリン、チロシン、多剤-結合タンパク質 QacR、アラビノース (AraC)、水銀 (MerR)、およびトリプトファンリプレッサータンパク質、ヒストンデアセチラーゼ (HDAC)、MEF2-相互作用転写リプレッサー (MITR)、レチノイドおよび甲状腺ホルモン受容体に対するサイレンシングメディエーター (SMRT)、核コリプレッサー (N-CoR)、Small Unique Nuclear 受容体 コリプレッサー (SUN-CoR)、TG 相互作用因子 (TGIF)からなる群から選択される請求項 15の単離核酸。
【請求項17】
細菌リプレッサータンパク質がトリプトファンリプレッサータンパク質である請求項 16の単離核酸。
【請求項18】
細菌リプレッサータンパク質がプリンリプレッサータンパク質である請求項 16の単離核酸。
【請求項19】
ドナーおよびアクセプター部分が該結合タンパク質部分に遺伝子上で融合している請求項 1の単離核酸。
【請求項20】
ドナーおよびアクセプター部分が結合タンパク質部分の末端に遺伝子上で融合している請求項 19の単離核酸。
【請求項21】
ドナーおよびアクセプター部分の一方または両方が該リガンド結合タンパク質部分の内部位置に遺伝子上で融合している請求項 19の単離核酸。
【請求項22】
該ドナーフルオロフォアがGFP、CFP、BFP、YFP、dsRED、CoralHue ミドリイシ-シアン (MiCy)および単量体CoralHue クサビラ-オレンジ (mKO)からなる群から選択される請求項 1の単離核酸。
【請求項23】
該アクセプターフルオロフォア部分がGFP、CFP、BFP、YFP、dsRED、CoralHue ミドリイシ-シアン (MiCy)および単量体CoralHue クサビラ-オレンジ (mKO)からなる群から選択される請求項 1の単離核酸。
【請求項24】
該ドナーフルオロフォア部分が eCFPの遺伝的に改変されたバージョンである請求項 22の単離核酸。
【請求項25】
該リガンド結合部分核酸配列が配列番号1の配列を含む請求項 24の単離核酸。
【請求項26】
該アクセプターフルオロフォア部分がYFP VENUSの遺伝的に改変されたバージョンである請求項 1の単離核酸。
【請求項27】
該フルオロフォア核酸配列が配列番号 2、4、および6の配列からなる群から選択される請求項 26の単離核酸。
【請求項28】
請求項 1の核酸を発現する細胞。
【請求項29】
請求項 1の核酸を含む発現ベクター。
【請求項30】
請求項 29のベクターを含む細胞。
【請求項31】
原核細胞での機能に適している請求項 29の発現ベクター。
【請求項32】
真核細胞での機能に適している請求項 29の発現ベクター。
【請求項33】
原核細胞である請求項 30の細胞。
【請求項34】
大腸菌である請求項 33の細胞。
【請求項35】
真核細胞である請求項 26の細胞。
【請求項36】
酵母細胞である請求項 35の細胞。
【請求項37】
動物細胞である請求項 35の細胞。
【請求項38】
植物細胞である請求項 35の細胞。
【請求項39】
請求項 1の核酸を発現するトランスジェニック動物。
【請求項40】
請求項 1の核酸を発現するトランスジェニック植物。
【請求項41】
リガンド結合タンパク質部分の該リガンドへの親和性を改変する1以上の核酸置換をさらに含む請求項 1の単離核酸。
【請求項42】
請求項 1の核酸によってコードされるリガンド結合蛍光指標。
【請求項43】
以下を含む、サンプルにおけるリガンドレベルの変化を検出する方法:
(a) 請求項 1の核酸を発現する細胞および該リガンドを含むサンプルを提供する工程;および、
(b)該ドナーフルオロフォア部分と該アクセプターフルオロフォア部分との間のFRETの変化を検出する工程、
ここで該ドナー部分と該アクセプター部分との間のFRETの変化がサンプル中の該リガンドレベルの変化を示す。
【請求項44】
FRETを測定する工程が、アクセプターフルオロフォア部分から放射される光を測定することを含む請求項 43の方法。
【請求項45】
FRETを測定する工程が、ドナーフルオロフォア部分から放射される光を測定すること、アクセプターフルオロフォア部分から放射される光を測定すること、および、ドナーフルオロフォア部分から放射される光とアクセプターフルオロフォア部分から放射される光との比を計算することを含む請求項 43の方法。
【請求項46】
FRETを測定する工程が、ドナー部分の励起状態寿命を測定することを含む請求項 43の方法。
【請求項47】
該細胞がインビボに含まれている請求項 43の方法。
【請求項48】
該細胞がインビトロに含まれている請求項 43の方法。
【請求項49】
ドナー部分とアクセプター部分との間の蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)が、ドナー部分が励起され、該リガンドがリガンド結合タンパク質部分に結合すると上昇する請求項 43の方法。
【請求項50】
ドナー部分とアクセプター部分との間の蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)が、ドナー部分が励起され、該リガンドがリガンド結合タンパク質部分に結合すると低下する請求項 43の方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−520462(P2009−520462A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541361(P2008−541361)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/044633
【国際公開番号】WO2007/059297
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(500026234)カーネギー インスチチューション オブ ワシントン (25)
【Fターム(参考)】