説明

多鎖多親水基型化合物を含有するエマルジョン組成物

【課題】安定性が良好で、油性成分、特に油性成分本来の特性を損なうことの無いエマルジョン組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)と成分(B)と水とを含有することを特徴とするエマルジョン組成物。成分(A):疎水基と親水基とを分子内に2個以上づつ有する多鎖多親水基型化合物の1種以上成分(B):油性成分の1種以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多鎖多親水基型化合物を含有したエマルジョン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油性成分は従来、撥水性、離型性、潤滑性、消泡性などの優れた効果を発揮することからポリッシュ用途、離型用途、繊維用途、消泡剤用途で広く用いられており、近年、処方中へ配合のしやすさや環境への配慮からエマルジョンの形態での使用が増加している。油性成分をエマルジョン化させる手段としては、大量の乳化剤を添加し、混合攪拌して溶解させる方法が多くとられている。しかし、油性成分をは比較的、安定に乳化し難い材料であるため、これらの従来の方法では、配合時に非常に大きなせん断力で乳化しても安定性に乏しく分離が起こったり、また大量の乳化剤の添加が必要なため油性成分の特性を得ることができなかったりする、という問題があった。
【特許文献1】特公昭53−13501号公報
【特許文献2】特開昭56−95952号公報
【特許文献3】特開平5−295264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、安定性が良好で、油性成分の特性を損なうことの無いエマルジョン組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物、即ち、分子内に疎水基と親水基とを2個以上づつ有する化合物(多鎖多親水基型化合物)に着目し、これを油性成分と混合したエマルジョン組成物とすることで、その特性を損なうことなく安定性が良好で、ポリッシュ用途、離型用途、繊維用途、消泡剤用途にも容易に用いることができるエマルジョン組成物が得られることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は下記に示す通りである。
【0005】
[1]次の成分(A)と成分(B)と水とを含有することを特徴とするエマルジョン組成物。成分(A):疎水基と親水基とを分子内に2個以上づつ有する多鎖多親水基型化合物の1種以上。成分(B):油性成分の1種以上
[2]成分(B)がシリコーンであることを特徴とする[1]に記載のエマルジョン組成物。
[3]成分(A)の多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、疎水基がアシル基であり、親水基がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基およびそれらの塩から選ばれる1種以上であるアニオン性化合物であることを特徴とする[1]または[2]に記載のエマルジョン組成物。
[4]成分(A)の多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、分子内に、さらに、アミノ酸残基を有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
[5]成分(A)の多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、一般式(1)に示す化合物であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
【0006】
【化1】

【0007】
(一般式(1)において、Xはm個の官能基、およびそれ以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーを示す。Xに結合しているn(m≧n)個のQは、一般式(2)で表される置換基であり、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。一般式(2)において、ZはXの有する官能基に由来する結合部であり、RCOは炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるアシル基を示し、Rは水素であるか、またはヒドロキシル基またはカルボキシル基が置換していてもよい炭素原子数1〜3のアルキル基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩の内のいずれかを示す。j、kはそれぞれ独立に0,1,2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。nは2〜20の整数を示す。また、mはm≧nである整数を示す。)
【0008】
【化2】

【0009】
[6]多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、一般式(1)に示す化合物であって、一般式(1)において、Xは前記官能基以外の置換基を有していてもよい炭素数1〜40の直鎖、分枝鎖、環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
[7]組成物の平均粒子径が0.01〜100μmであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
[8]さらに、成分(C)ヒドロキシル化合物を含有する事を特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
[9][1]〜[8]のいずれかのエマルジョン組成物を含有してなることを特徴とするポリッシュ用エマルジョン組成物。
【0010】
[10][1]〜[8]のいずれかのエマルジョン組成物を含有してなることを特徴とする離型剤用エマルジョン組成物。
[11][1]〜[8]のいずれかのエマルジョン組成物を含有してなることを特徴とする繊維用シリコーン組成物。
[12][1]〜[8]のいずれかのエマルジョン組成物を含有してなることを特徴とする消泡剤用エマルジョン組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、特定の化合物、即ち、分子内に疎水基と親水基とを2個以上づつ有する化合物(多鎖多親水基型化合物)で油性成分を乳化することにより、安定性が良好で、油性成分、特に油性成分本来の特性を損なうことの無いエマルジョン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のエマルジョン組成物は、構造的には分子内に疎水基と親水基とを2個以上づつ有する多鎖多親水基型化合物の1種以上と油性成分の1種以上とを含んでなる組成物である。
多鎖多親水基型化合物が有する2個以上の疎水基は、それぞれ独立に、炭素数2〜20個の飽和または不飽和の直鎖、分枝鎖、環状鎖を有する疎水基であることが好ましい。また、多鎖多親水基型化合物が有する2個以上の親水基は、それぞれ独立に、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸残基、リン酸残基若しくはそれらの塩等、又はオキシアルキレン基、ポリエチレングリコール基等、又はアミノ基、4級アンモニウム基、ピリジニウム基、スルホニウム基若しくはそれらの塩等であることが好ましい。
多鎖多親水基型化合物に含まれる疎水基または親水基の数は、それぞれ2個以上60個以下であることが好ましく、2個以上40個以下であることがより好ましい。さらには2個以上20個以下であることが特に好ましい。
【0013】
多鎖多親水基化合物の好ましい疎水基としては、例えば、アセチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−エイコシル等の各残基とこれらの分枝鎖異性体、ならびにこれらに対応した、1カ所、2カ所または3カ所に不飽和部分を有する不飽和残基等が挙げられる。
また、多鎖多親水基型化合物の疎水基としては、炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるアシル基であることがより好ましい。すなわち、多鎖多親水基型化合物が2個以上のアシル基を有するアシル化合物であることが好ましい。2個以上のアシル基はそれぞれ独立して異なっていても同一でもよい。アシル基としては、炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるものが好ましく、直鎖、分岐、環状を問わない。ただし、カルボキシル基となっているものを含まない。
【0014】
アシル基としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸のような直鎖脂肪酸;酢酸、2−ブチル−5−メチルペンタン酸、2−イソブチル−5−メチルペンタン酸、ジメチルオクタン酸、ジメチルノナン酸、2−ブチル−5−メチルヘキサン酸、メチルウンデカン酸、ジメチルデカン酸、2−エチル−3−メチルノナン酸、2,2−ジメチル−4−エチルオクタン酸、メチルドコサン酸、2−プロピル−3−メチルノナン酸、メチルトリデカン酸、ジメチルドデカン酸、2−ブチル−3−メチルノナン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、2−(3−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、2−(2−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、ブチルエチルノナン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ジメチルテトラデカン酸、ブチルペンチルヘプタン酸、トリメチルトリデカン酸、メチルヘキサデカン酸、エチルペンタデカン酸、プロピルテトラデカン酸、ブチルトリデカン酸、ペンチルドデカン酸、ヘキシルウンデカン酸、ヘプチルデカン酸、メチルヘプチルノナン酸、ジペンチルヘプタン酸、メチルヘプタデカン酸、エチルヘキサデカン酸、エチルヘキサデカン酸、プロピルペンタデカン酸、ブチルテトラデカン酸、ペンチルトリデカン酸、ヘキシルドデカン酸、ヘプチルウンデカン酸、オクチルデカン酸、ジメチルヘキサデカン酸、メチルオクチルノナン酸、メチルオクタデカン酸、エチルヘプタデカン酸、ジメチルヘプタデカン酸、メチルオクチルデカン酸、メチルノナデカン酸、メチルノナデカン酸、ジメチルオクタデカン酸、ブチルヘプチルノナン酸のような分岐脂肪酸;オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、トウハク酸、ラウロレイン酸、トリデセン酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキセデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、オレイン酸、ノナデセン酸、ゴンドイン酸のような直鎖モノエン酸;メチルヘプテン酸、メチルノネン酸、メチルウンデセン酸、ジメチルデセン酸、メチルドデセン酸、メチルトリデセン酸、ジメチルドデセン酸、ジメチルトリデセン酸、メチルオクタデセン酸、ジメチルヘプタデセン酸、エチルオクタデセン酸のような分岐モノエン酸;リノール酸、リノエライジン酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、リノレンエライジン酸、プソイドエレオステアリン酸、パリナリン酸、アラキドン酸のようなジまたはトリエン酸;オクチン酸、ノニン酸、デシン酸、ウンデシン酸、ドデシン酸、トリデシン酸、テトラデシン酸、ペンタデシン酸、ヘプタデシン酸、オクタデシン酸、ノナデシン酸、ジメチルオクタデシン酸のようなアセチレン酸;、、アレプレスチン酸、アレプリル酸、アレプリン酸、ヒドノカルプン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸、α−シクロペンチル酸、α−シクロヘキシル酸、α−シクロペンチルエチル酸のような環状酸;等の脂肪酸から誘導されるものがあげられる。
【0015】
また、アシル基は、天然油脂から得られる脂肪酸由来のアシル基でも良く、上記の炭素原子数2〜20の飽和または不飽和脂肪酸を80%以上含む混合脂肪酸由来のアシル基が好ましい。例えば、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ツバキ油脂肪酸、菜種油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等から誘導されるアシル基等が挙げられる。これらのアシル基を有するアシル化合物は2種以上組み合わせて用いても良い。アシル基は、好ましくは炭素原子数8〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるものがよい。
【0016】
多鎖多親水基型化合物を塩として用いる場合には、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられ、具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛等の金属、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミン、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等から任意に選ばれる1種または2種以上との塩である。これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩が特に好ましい。
さらに、多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、一般式(1)および(2)で示されるアシル化合物であることが好ましい。ここでいうアシル化合物とは、構造的には一般式(1)および(2)に示すように、分子内に少なくとも1個以上のアシル基と親水基とをそれぞれ有する化合物を、適当なスペーサーで連結した構造のものである。
【0017】
一般式(2)中、RCOで示されるアシル基は独立して、すなわち、それぞれ異なっても同一でもよく、上記したように炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるものが好ましく、直鎖、分岐、環状を問わない。
一般式(2)中、Rは水素であるか、または、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基若しくはそれらの塩等が置換していてもよい炭素原子数1〜3のアルキル基であり、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ(イソ)プロピル基、ジヒドロキシ(イソ)プロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホエチル基等が挙げられる。
一般式(1)中、Xに結合したn個の置換基Q(式(2))は、それぞれ互いに、異なっても同一でもよい。また、式(2)は、いわゆる酸性アミノ酸がN−アシル化されたものを示すものであり、それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0018】
酸性アミノ酸は、分子中に存在するカルボキシル基とアミノ基の数がそれぞれ2個と1個のモノアミノジカルボン酸であり、アミノ基はN−メチル基またはN−エチル基でもかまわない。また光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。酸性アミノ酸としては、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、ランチオニン、β−メチルランチオニン、シスタチオニン、ジエンコール酸、フェリニン、アミノマロン酸、β−オキシアスパラギン酸、α−アミノ−α−メチルコハク酸、β−オキシグルタミン酸、γ−オキシグルタミン酸、γ−メチルグルタミン酸、γ−メチレングルタミン酸、γ−メチル−γ−オキシグルタミン酸、α−アミノアジピン酸、α−アミノ−γ−オキシアジピン酸、α−アミノピメリン酸、α−アミノ−γ−オキシピメリン酸、β−アミノピメリン酸、α−アミノスベリン酸、α−アミノセバシン酸、パントテン酸等が挙げられる。
【0019】
Xに付くn個の置換基(式(2))は、酸性アミノ酸がL−酸性アミノ酸分子である場合が、生分解性に優れることから好ましい。
一般式(2)中、Zは、Xに置換したm個(m≧n、かつ、2〜20の整数)の官能基(ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基)に由来する結合部(−O−、−NR−、−S−)である。ここで、Rは水素、または、炭素原子数1〜10の、アルキル基若しくはアルケニル基若しくはアリール基若しくはアルキルアリール基である。
一般式(1)中、Xはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる1種または2種以上からなるm個の官能基を有する分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーであり、Xは、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基以外の置換基を有していてもよい。
一般式(1)中、Xは好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる1種または2種以上の官能基をm個有する分子量100万以下のm価の化合物の残基であって、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基以外の置換基を有していてもよい化合物残基である。ここで、m価の上記化合物は、m個の官能基に由来する結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0020】
このようなm価の化合物としては、例えば、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、シスチンジスルホキシド、シスタチオニン、メチオニン、アルギニン、リジン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、オキシプロリン等のアミノ酸類;アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、アミノプロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルアミノエタノール、アミノクレゾール、アミノナフトール、アミノナフトールスルホン酸、アミノヒドロキシ安息香酸、アミノヒドロキシブタン酸、アミノフェノール、アミノフェネチルアルコール、グルコサミン等の分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物類;メルカプトエタノール、メルカプトフェノール、メルカプトプロパンジオール、グルコチオース等の分子内にチオール基とヒドロキシル基を有する化合物類;アミノチオフェノール、アミノトリアゾールチオール等の分子内にチオール基とアミノ基を有する化合物類;が挙げられる。また、タンパク質やペプチド等、またはそれらを加水分解したもの等でも良い。
また、一般式(1)中、Xは好ましくはヒドロキシル基以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下のm価(m≧n)のポリヒドロキシル化合物残基である。ここで、m価のポリヒドロキシル化合物は、m個のエステル結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0021】
このようなm価のポリヒドロキシル化合物としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、酒石酸、ジヒドロキシ酒石酸、メバロン酸、3,4−ジヒドロキシけい皮酸、3,4−ジヒドロキシヒドロけい皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン等およびこれらの各異性体等の2価ヒドロキシル化合物;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシステアリン酸等の3価ポリヒドロキシル化合物;ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価ポリヒドロキシル化合物;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価ポリヒドロキシル化合物;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価ポリヒドロキシル化合物;またはこれらの脱水縮合物、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0022】
また、糖類、例えばエリスロース、スレオース、エリスルロース等のテトロース;リボース、アラビノース、キシロース、リクソース、キシルロース、リブロース等のペントース;アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギューロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、ソルボース、プシコース、タガトース等のヘキソース等の単糖類;マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、トレハロース、サッカロース、マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース、スタキオース等のオリゴ糖類が挙げられる。
【0023】
また、その他の糖類、例えばヘプトース、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖、セレノ糖、アルドン糖、ウロン酸、糖酸、ケトアルドン酸、アンヒドロ糖、不飽和糖、糖エステル、糖エーテル、グリコシド等の残基でもよく、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン等の多糖類またはそれらを加水分解したものでもよい。
また、一般式(1)中、Xは好ましくはアミノ基以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下のm価のポリアミノ化合物残基である。ここで、m価のポリアミノ化合物は、m個の酸アミド結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0024】
このようなm価のポリアミノ化合物としては、例えばN,N’−ジメチルヒドラジン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ジアミノアジピン酸、ジアミノプロパン酸、ジアミノブタン酸およびこれらの各異性体等の脂肪族ジアミン類;ジエチレントリアミン、トリアミノヘキサン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチル−オクタン、2,6−ジアミノカプリン酸−2−アミノエチルエステル、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、ジ(アミノエチル)アミンおよびこれらの各異性体等の脂肪族トリアミン類;ジアミノシクロブタン、ジアミノシクロヘキサン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、トリアミノシクロヘキサン等の脂環族ポリアミン類;ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノ安息香酸、ジアミノアントラキノン、ジアミノベンゼンスルホン酸、ジアミノ安息香酸、およびこれらの各異性体等の芳香族ポリアミン類;ジアミノキシレン、ジ(アミノメチル)ベンゼン、ジ(アミノメチル)ピリジン、ジ(アミノメチル)ナフタレン、およびこれらの各異性体等の芳香脂肪族ポリアミン類;ジアミノヒドロキシプロパンおよびこれらの各異性体等のヒドロキシル基が置換したポリアミン類等が挙げられる。
【0025】
また、一般式(1)中、Xは好ましくはチオール基以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下のm価のポリチオール化合物残基である。ここで、m価のポリチオール化合物は、m個のチオエステル結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
このようなm価のポリチオール化合物としては、例えば、ジチオエチレングリコール、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール等のジチオール化合物類等が挙げられる。
Xは上に挙げた化合物の残基の中でも、炭素数1〜40の場合が好ましい、さらに好ましくはXは炭素数1〜20である。また、Xは天然に存在する型である場合の方が、生分解性に優れるという点で好ましい。
【0026】
一般式(2)中、Yで示されるカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基およびX中に含まれうるカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基等は、種々の塩基性物質との間に塩を形成し得る。
かかる塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩、多価金属塩等が挙げられ、具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルト、チタン、ジルコニウム等の金属、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミン、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等から任意に選ばれる1種または2種以上との塩である。
【0027】
このような一般式(1)で示されるアシル化合物の製造方法としては、下記一般式(3)で示されるN−アシル酸性アミノ酸無水物と分子内にヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる1種または2種以上のm個の官能基を有する化合物とを、水および/または水と有機溶媒との混合溶媒中で反応させることによって、またはテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホルム、アセトン等の不活性溶媒を使用して、あるいは無溶媒で−5℃〜200℃でいずれかの融点以上の温度で混合して反応することで得ることができる。
【0028】
【化3】

【0029】
または一般式(1)で示されるアシル化合物は、N−アシル酸性アミノ酸モノ低級エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)とポリヒドロキシル化合物またはポリアミノ化合物またはポリチオール化合物、または分子内にヒドロキシル基、アミノ基、チオール基のうちいずれか2種または3種を有する化合物とをジメチルホルムアミド等の適当な溶媒中に溶解し、炭酸カリウム等の触媒を加え、減圧下に−5℃〜250℃で加熱反応させた後反応溶媒を除去することで得ることができる。あるいは、無溶媒で加熱溶融し、水酸化ナトリウム等の触媒を加えて室温〜250℃でエステル交換反応させてアシル化合物を得ることができる。
【0030】
本発明のエマルジョン組成物は、平均粒子径が0.01〜100μmの粒子からなるエマルジョン組成物であり、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.01〜5μmである。この上限範囲を超える粒子径のエマルジョン組成物は安定性が低下する場合があり、またこの加減範囲未満の粒子径のエマルジョン組成物を調製することは技術的に困難である。
本発明のエマルジョン組成物は、成分(A)多鎖多親水基型化合物の1種以上と成分(B)油性成分の1種以上とを含有するエマルジョン組成物であり、成分(A)多鎖多親水基型化合物/成分(B)油性成分の質量比が50/1〜1/100000、とすることが好ましい。質量比が50/1より大きい場合には、成分(B)の特性を低下させる場合があり、一方、質量比が1/100000より小さい場合には、乳化安定性を損なう場合がある。より好ましくは、成分(A)/成分(B)の質量比が30/1〜1/10000、さらに好ましくは20/1〜1/10000とする。
【0031】
また本発明のエマルジョン組成物においては、成分(C)ポリヒドロキシル化合物を含有することが好ましく、さらには成分(A)多鎖多親水基型化合物の総量が0.001〜20質量%、成分(B)油性成分の総量が0.001〜95質量%、成分(C)ポリヒドロキシル化合物の総量が0.001〜60質量%、であるように配合する(但し、水分は含まないでの量比である。)ことが好ましい。ここで、多鎖多親水基型化合物、ポリヒドロキシル化合物、油性成分のそれぞれの含量は、それぞれに該当する成分の総和である。各成分の組成がこの範囲外であってもエマルジョン組成物になることはあるが、油性成分が分離して経時的な安定性に乏しかったり、本来の特性が得られないなど使用感が好ましくなくなることがある。
【0032】
各成分組成は、より好ましくは、成分(A)多鎖多親水基型化合物の総量が0.01〜10質量%、成分(B)油性成分の総量が1〜60質量%、(C)ポリヒドロキシル化合物の総量が0.1〜30質量%、である。さらに好ましくは、成分(A)多鎖多親水基型化合物の総量が0.1〜5質量%、成分(B)油性成分の総量が5〜50質量%、(C)ポリヒドロキシル化合物の総量が1〜10質量%、である。
さらに本発明のエマルジョン組成物においては、成分(A)/成分(C)の質量比は、10/1〜1/100とすることが感触上好ましい。この範囲外では、使用したときにベタツキ感を感じる場合がある。より好ましくは、5/1〜1/50、さらに好ましくは、5/1〜1/20である。
【0033】
本発明のエマルジョン組成物において配合される成分(B)油性成分としては、液状油または固体脂のいずれをも使用することができる。例えば、アボガド油、タートル油、トウモロコシ油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、パーシック油、ひまし油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ミンク油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、卵黄油、パーム油、パーム核油、トリイソオクタン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルコレステロール脂肪酸エステル、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、月見草油、エノ油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギル油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、馬油、硬化やし油、牛脂、牛脚脂、羊脂、硬化牛脂、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、硬化ひまし油等の油脂、;流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、スクワラン等の炭化水素;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カボックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングルコール、ポリオキシエチレン水素添加ラノリンアルコールエーテルおよびその誘導体等のロウ;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール; コレステロール、フィトステロール等のステロール類;ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアレン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸−2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソプロピル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セパチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸−2−ヘキシルデシル、パルミチン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、セバチル酸ジイソプロピル、コハク酸−2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等のエステル油;金属石鹸;ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシロキサン、アルキルアラルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミノ変性ポリエーテル変性シリコーン、アミド変性シリコーン、各種末端反応性シリコーン、シリコーンワックス、シリコーンレジン、シリコーンレジンオイル、シリコーンエラストマー、ステアロキシメチルポリシロキサン、アミノメチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、揮発性シリコーン、環状シリコーン等のシリコーン類等の揮発性および不揮発性の油分;等が挙げられる。これらの油性成分は、2種以上組み合わせても良い。
【0034】
これらの油性成分の中でも、特にシリコーン類を用いることが好ましく、なかでも揮発性の環状シリコーンの1種以上を用いることがより好ましい。さらに好ましくは、揮発性の環状シリコーンと不揮発性のシリコーンとを組み合わせることが好ましい。
本発明のエマルジョン組成物の好ましい態様において配合される成分(C)のポリヒドロキシル化合物としては、2価以上のポリヒドロキシル化合物が挙げられる。
【0035】
例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、酒石酸、ジヒドロキシ酒石酸、メバロン酸、3,4−ジヒドロキシけい皮酸、3,4−ジヒドロキシヒドロけい皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン等およびこれらの各異性体等の2価ヒドロキシル化合物;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシステアリン酸等の3価ポリヒドロキシル化合物;ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価ポリヒドロキシル化合物; アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価ポリヒドロキシル化合物;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価ポリヒドロキシル化合物;またはこれらの脱水縮合物、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0036】
また、糖類、例えばエリスロース、スレオース、エリスルロース等のテトロース;リボース、アラビノース、キシロース、リクソース、キシルロース、リブロース等のペントース;アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギューロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、ソルボース、プシコース、タガトース等のヘキソース等の単糖類; マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、トレハロース、サッカロース、マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース、スタキオース等のオリゴ糖類が挙げられる。
【0037】
また、その他の糖類、例えばヘプトース、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖、セレノ糖、アルドン糖、ウロン酸、糖酸、ケトアルドン酸、アンヒドロ糖、不飽和糖、糖エステル、糖エーテル、グリコシド等の残基でもよく、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン等の多糖類またはそれらを加水分解したものでもよい。
これらポリヒドロキシル化合物は2種以上組み合わせて用いても良い。ポリヒドロキシル化合物として好ましくは、3価以上のポリヒドロキシル化合物がよい。
【0038】
本発明のエマルジョン組成物は通常の攪拌機、混合機、分散機等を備えた装置を用いる方法によって製造することができる。本発明のエマルジョン組成物は、例えば多鎖多親水基型化合物と油性成分とを水中で乳化させることにより、また必要に応じポリヒドロキシル化合物等を添加混合することによって製造することができる。より、好ましい製造法としては、多鎖多親水基型化合物、ポリヒドロキシル化合物、および水を含む混合液の攪拌下に油性成分を添加して油性ゲル状組成物を形成させた後、該ゲル状組成物に水等を添加して乳化させる方法が良い。ここでいう油性ゲル状組成物は、水を加え撹拌すると極めて容易に、安定なμm〜サブμmオーダーの乳化分散状態となる性質を有するので、この性質を用いると、該ゲル状組成物に水および必要成分を加えるだけで非常に微細な平均粒子径のエマルジョン組成物を製造することができる。
【0039】
ここで上記油性ゲル状組成物を製造するには、多鎖多親水基型化合物、ポリヒドロキシル化合物、油性成分および、場合によっては水を高せん断力の下で攪拌・混合することにより製造される。油性ゲル状組成物の好ましい製造方法としては、最初に油性成分以外の成分を十分に攪拌・混合し、これに油性成分を添加していく製造方法が良い。
また上記の油性ゲル状組成物を製造する場合、ゲル化剤等を添加することでゲル状にする方法がある。ここでゲル化剤としては、油性成分をゲル化することのできる公知のゲル化剤を用いてることができる。例えば、具体的には、デキストリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸、アシルグルタミン酸ジブチルアミド等を挙げることができる。前記デキストリン脂肪酸エステルとしては、例えばレオパールTT〔(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン〕、レオパールMKL〔ミリスチン酸デキストリン〕、レオパールKL〔パルミチン酸デキストリン〕(いずれも商品名:千葉製粉株式会社製)が挙げられる。
また、グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばベヘン酸、エイコサン二酸とグリセ
リンからなるオリゴマーエステルであるノムコートHK−G(商品名:日清製油株式会社製)が挙げられる。
【0040】
かくして得られる本発明のエマルジョン組成物は、多鎖多親水基型化合物の使用量が少なくても安定なエマルジョン組成物が得られることから、油性成分本来の特性を損なうこともない。また、このエマルジョン組成物は容易に、各種の組成物に容易に配合可能である、という特徴があり、これまでの課題を解決するものである。
本発明のエマルジョン組成物は、例えば家庭用(衣料、台所、住居、食器、コンタクトレンズ等)洗浄剤、香粧品、食品、医薬品等の人に接触する組成物から工業用洗浄剤等に幅広く適用することができる。
【0041】
本発明のエマルジョン組成物を含有する組成物は、その形態は液体状、固体状、ゲル状、ペースト、クリーム状、スラリー、エマルション、サスペンジョン、ミスト状、液晶、粉体、エアゾール等の目的に応じて種々の形態で用いることができる。但し、この形態に限定されることはない。
また、本発明のエマルジョン組成物は各種外用剤用途、クリーナー用途等に好適に用いることもできる。外用剤としては、洗顔・クレンジング用のクリーム、コールドクリーム、バニシングクリームやモイスチャークリーム等の各種化粧料、マッサージクリーム、整髪料等の皮膚用あるいは毛髪用化粧料、消炎剤やクリーム状医薬品類、または害虫忌避剤等の薬剤等が挙げられる。
また、クリーナーとして、油性成分とのなじみがよい性質を利用して、例えば、台所・レンジ周り等の油汚れクリーナー、同様に機械油汚れクリーナー、ハンドクリーナー等クリーナー用途、または自動車等の金属の塗膜面、仏壇・仏具・箪笥・机等の木製塗装面、テレビ・パソコン等の家電品のプラスチック表面、ガラス面等のクリーナー用途等が挙げられる。
【0042】
本発明の組成物はポリッシュ用途として、例えばカーワックス、洗車機用ワックス、タイヤ・レザーワックス、コーティング剤、バンパーワックスに利用される。離型用途として、例えばタイヤのブラダーとインナライナーとの間の離型用、アルミニウムダイキャスト用、サンダル、紳士靴、婦人靴、運動靴底のウレタンソール用、食品包装用プラスチック用、ナノインプリント用に利用される。繊維用途として、例えば平滑剤、柔軟剤、撥水剤、風合改良剤、抗菌防臭加工剤、コーティング剤として利用される。消泡剤用途として、例えば食品工業用、繊維工業用、石油化学工業用、合成樹脂・ゴム工業用、塗料・インキ工業用、油脂・洗剤工業用、パルプ・製紙工業用、発酵工業用、金属加工用、廃水処理用として利用される。またこれら用途は上記用途に限定されるものではなく、離型紙用、建築用、香粧品用、塗料用に利用することが出来る。本発明の組成物は、上記の様に水で希釈されて使用されることが多い用途では希釈安定性を高め、かつ、貯蔵安定性を高めるため好適である。
【0043】
以下で、本発明を実施例等を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定させるものではない。
【実施例】
【0044】
下記に本発明の実施例を詳細に説明する。
多鎖多親水基型化合物(製造例を下記に示す)
【0045】
(多鎖多親水基型化合物の製造例1)
L−リジン塩酸塩9.1g(0.05mol)を水57gと混合した。この液を25%水酸化ナトリウム水溶液でpH範囲を10〜11に調整しながら、また反応温度を5℃に維持しながら、攪拌下にN−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1g(0.1mol)を2時間を要して添加し、反応を実施した。さらに30分攪拌を続けた後、ターシャリーブタノールを液中濃度20質量%となるように添加した後、75%硫酸を滴下して液のpH値を2に、また液の温度を65℃に調整した。滴下終了後、攪拌を停止し、20分間65℃で静置すると有機層と水層とに分層し、これから有機層を分離した。分離した有機層にターシャリーブタノールおよび水を添加して、温度を65℃にして20分攪拌した。攪拌停止後、静置すると有機層と水層とに分層した。得られた有機層に対して、同じ水洗操作をくり返した後、得られた有機層から溶媒を除去し、下記式(4)に示すアシル化合物を含有する組成物を得た。
非水系で用いる場合は、トリカルボン酸体(未中和体)で用い、水系で用いる場合は、水酸化ナトリウムを加えて固形分30質量%、pH6.5(25℃))の水溶液に中和調製し、これを用いた。
【0046】
【化4】

【0047】
(式4において、Xは、各々独立にHまたはNa)
【0048】
(多鎖多親水基型化合物の製造例2)
製造例1において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1gをN−ココイル−L−グルタミン酸無水物とした以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施し、アシル化合物を含有する組成物を得た。
【0049】
(多鎖多親水基型化合物の製造例3)
製造例1において、中和処理を水酸化カリウムで実施した以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施し、アシル化合物を含有する組成物を得た。
【0050】
(実施例1〜7、比較例1〜6)
表1に示す各成分を配合した水相と油相とを同質量部混合し、これをホモジナイザーを用いて(10,000rpm×1分)エマルジョン組成物を形成させた。
表1から、本発明の多鎖多親水基型化合物と油性成分とを含有するエマルジョン組成物の安定性が高かった。(表1の数字は質量部)
【0051】
【表1】

【0052】
(実施例8〜11)
表2に示す組成(A)を使用し、油性成分以外の成分を40℃で攪拌しながら混合する。これに、攪拌しながら油性成分をゆっくりと滴下し、更に攪拌した後、ゲル状組成物を得た。このゲル状組成物に対して精製水(組成(B))を同質量部加えたところ、ゲル状組成物は容易に自己分散し、安定なエマルジョン組成物が得られた。(表2の数字は質量部)
これのエマルジョン安定性評価と粒子径評価を実施した。
本発明のエマルジョン組成物は、いずれも安定性が高くエマルジョン組成物として最適な粒子径を有していた。
【0053】
(実施例12〜13、比較例7)
表2に示す組成(A)を使用し室温でホモジナイザーを用いて攪拌混合し、エマルジョン組成物を得た。これのエマルジョン安定性評価と粒子径評価を実施した。本発明のエマルジョン組成物は、いずれも安定性が高くとエマルジョン組成物として最適な粒子径を有していた。
【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、特定の化合物、即ち、分子内に疎水基と親水基とを2個以上づつ有する化合物(多鎖多親水基型化合物)で油性成分を乳化することにより、安定性が良好で、油性成分、特に油性成分本来の特性を損なうことの無いエマルジョン組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)と成分(B)と水とを含有することを特徴とするエマルジョン組成物。
成分(A):疎水基と親水基とを分子内に2個以上づつ有する多鎖多親水基型化合物
の1種以上
成分(B):油性成分の1種以上
【請求項2】
成分(B)がシリコーンであることを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン組成物。
【請求項3】
成分(A)の多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、疎水基がアシル基であり、親水基がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基およびそれらの塩から選ばれる1種以上であるアニオン性化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のエマルジョン組成物。
【請求項4】
成分(A)の多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、分子内に、さらに、アミノ酸残基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
【請求項5】
成分(A)の多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、一般式(1)に示す化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
【化1】

(一般式(1)において、Xはm個の官能基、およびそれ以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーを示す。Xに結合しているn(m≧n)個のQは、一般式(2)で表される置換基であり、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。一般式(2)において、ZはXの有する官能基に由来する結合部であり、RCOは炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるアシル基を示し、Rは水素であるか、またはヒドロキシル基またはカルボキシル基が置換していてもよい炭素原子数1〜3のアルキル基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩の内のいずれかを示す。j、kはそれぞれ独立に0,1,2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。nは2〜20の整数を示す。また、mはm≧nである整数を示す。)
【化2】

【請求項6】
多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、一般式(1)に示す化合物であって、一般式(1)において、Xは前記官能基以外の置換基を有していてもよい炭素数1〜40の直鎖、分枝鎖、環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
【請求項7】
平均粒子径が0.01〜100μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
【請求項8】
さらに、成分(C)ヒドロキシル化合物を含有する事を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかのエマルジョン組成物を含有してなることを特徴とするポリッシュ剤。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかのエマルジョン組成物を含有してなることを特徴とする離型剤
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかのエマルジョン組成物を含有してなることを特徴とする繊維用添加剤
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかのエマルジョン組成物を含有してなることを特徴とする消泡剤

【公開番号】特開2010−110734(P2010−110734A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287855(P2008−287855)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】