説明

多関節ロボット

【課題】複数の関節アクチュエータでの配線構造の共通化を図り、しかも自己の電源ノイズによる制御系への悪影響を抑制する。
【解決手段】関節アクチュエータの配線モジュールにおいて、入力側コネクタ84c−2には全アクチュエータ共通の分配用端子T1が設けられ、出力側コネクタ83c−2には全アクチュエータ共通の次段電力用端子4が設けられている。また、配線モジュールにおいて、電源線配列部K1で信号線K6から最も離れた位置にある次段用電源線K2を次段電力用端子T4に接続すること、及び、電源線配列部K1の残りの電源線を、1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつ信号線K6から離れる側にずらして出力側コネクタ83c−1に接続することにより、電源線の配列が組み替えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば産業用の多関節ロボットであって、複数の関節アクチュエータを用いて構成された多関節ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より産業用ロボットとして多関節ロボットが実用化されており、その多関節ロボットに用いられる関節アクチュエータにおいて電力供給や信号送信のための電気配線を設置する構成として種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、サーボモータ等からなる複数の関節アクチュエータを備える多関節ロボットにおいて、関節アクチュエータに接続される電源線や信号線等を、中空状に形成されたアーム内に収容して配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−328982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多関節ロボットでは、モータ駆動電力を供給するための電源線において電磁ノイズ(自己ノイズ)が生じ、その電磁ノイズによる信号線への悪影響が懸念される。上記特許文献1のように、強電線である電源線と弱電線である信号線とが近接配置される場合にはその懸念が一層強くなると考えられる。また、多関節ロボットにおいて、各アームの長さや配置などを考えると、電源元(例えばロボットコントローラ)からの配線長が関節アクチュエータごとに相違することが考えられ、配線長が大きいものほど、信号線での電圧ドロップが大きいことに起因して信号線での電源ノイズ(自己ノイズ)に対する耐性が低くなると考えられる。そして、信号線においてノイズ耐性が低くなるとモータ制御への影響が生じ、例えば多関節ロボットの手先側において制御性の低下が懸念される。したがって、こうした自己ノイズの対策に関して改善の余地がある。
【0006】
また、多関節ロボットでは、複数の関節アクチュエータに対して各々配線が施されるが、アクチュエータごとに異なる配線(アクチュエータ個別の専用配線)を要する構成であると、多関節ロボットを構築する上で配線部品に関するコストや組み付け作業に要するコストが嵩むことが懸念される。
【0007】
本発明は、複数の関節アクチュエータでの配線構造の共通化を図り、しかも自己の電源ノイズによる制御系への悪影響を抑制することが可能となる多関節ロボットを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0009】
第1の発明は、複数の関節部を有し、各関節部には関節アクチュエータが各々設けられており、それら各関節アクチュエータは、通電により回転駆動されるモータを備えるとともに、該モータへの駆動電力の供給を行う電源線とモータ制御用信号を送信する信号線とを有してなる配線モジュールを備え、後段の関節アクチュエータに対して、前段の関節アクチュエータの配線モジュールを経由して電力供給や信号伝達が行われる多関節ロボットであって、
前記配線モジュールは、絶縁被覆された複数の導電線が横並びで設けられ、該複数の導電線が前記電源線及び前記信号線として用いられる帯状の配線部材を備え、前記配線部材には、前記複数の関節アクチュエータに応じた数分の前記電源線が関節アクチュエータごとに横並びで配列される電源線配列部が設けられており、
前記配線部材の入力側には、前記各導電線に対応する複数の入力端子を有し前段の関節アクチュエータの配線モジュールに電気的に接続される入力側コネクタが設けられ、前記入力側コネクタにおいて前記複数の入力端子のうち、前記電源線配列部への供給電力が入力される電源入力端子とは異なる所定の入力端子が、関節アクチュエータごとにモータ駆動電力を分配するための全アクチュエータ共通の分配用端子として定められており、
前記配線部材の出力側には、前記各導電線に対応する複数の出力端子を有し次段の関節アクチュエータの配線モジュールに電気的に接続される出力側コネクタが設けられ、前記出力側コネクタにおいて前記複数の出力端子のうち所定の出力端子が、次段アクチュエータの配線モジュールで前記分配用端子に接続される全アクチュエータ共通の次段電力用端子として定められており、
前記配線モジュールにおいて、前記電源線配列部で前記信号線から最も離れた位置にある1関節アクチュエータ分の電源線を、次段アクチュエータ用の電源線として前記次段電力用端子に接続すること、及び、前記電源線配列部の残りの電源線を、前記1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつ前記信号線から離れる側にずらして前記出力側コネクタに接続することにより、前記電源線の配列が組み替えられていることを特徴とする。
【0010】
複数の関節アクチュエータを有する多関節ロボットでは、それら複数の関節アクチュエータにおいて各モータに対して電源電力(モータ駆動電力)が供給された状態で各関節部の動きが制御される。また、複数の関節アクチュエータでは、例えば各モータに対する要求出力が相違することが考えられるが、基本構成としてどのアクチュエータも構成が同様であることが望ましい。つまり、各関節アクチュエータは、多関節ロボットにおいてどの関節部でも共通の構成となる汎用アクチュエータであるとよく、本発明は、こうした汎用アクチュエータを複数用いた多関節ロボットに好適な技術である。この場合、フレキシブルプリント配線板等の帯状の配線部材を用いた配線モジュールについても同様に汎用化されていることが望ましい。
【0011】
この点、本発明の多関節ロボットでは、配線モジュールの入力側コネクタにおいて、各関節アクチュエータでモータ駆動電力を分配供給するための全アクチュエータ共通の分配用端子があらかじめ定められているとともに、出力側コネクタにおいて、次段アクチュエータで分配用端子に接続される全アクチュエータ共通の次段電力用端子があらかじめ定められている。これらは、例えば端子ピン番号が決められることで、全アクチュエータ共通の構成となっている。加えて、配線モジュールでは、配線部材の電源線配列部の各電源線について配列の組み替えを行う構成としており、関節アクチュエータが順に後段側になるのに合わせて、分配供給前の各関節アクチュエータのモータ駆動電力について電源線がシフトされる構成となっている。より具体的には、電源線配列部で信号線から最も離れた位置にある1関節アクチュエータ分の電源線を、次段アクチュエータ用の電源線として次段電力用端子に接続するとともに、電源線配列部の残りの電源線を、1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつ信号線から離れる側にずらして出力側コネクタに接続することとしており、これにより電源線の配列組み替えが行われる構成となっている。
【0012】
上記構成によれば、配線モジュールは、どの関節アクチュエータで用いるものも同様の構成となり、配線モジュールの共通使用、すなわち全軸の共通化を実現できる。つまり、配線モジュールの汎用化を実現できる。この場合、電源線の配列組み替えのための構成は、配線モジュールにおいて入力側コネクタと出力側コネクタとの間の回路導線の組み替えを実施することで容易に実現でき、構成の煩雑化を伴うものでもない。
【0013】
一方で、配線モジュールとして電源線と信号線とが設けられている構成では、電源線で生じる電源ノイズに起因する信号線への悪影響が懸念される。例えば、電源線は、数10V〜数100Vを電源電圧とするモータ駆動電力を供給する強電系の配線であり、信号線は、エンコーダの検出信号やモータ制御信号を例えば5Vを動作電圧として送信する弱電系の配線である。またこの場合、多関節ロボットでは各関節アクチュエータにおいて電源元(例えばロボットコントローラ)からの配線長が相違し、後段側ほど配線長が大きくなる。そして、配線長が大きいものほど、信号線での電圧ドロップが大きくなることから、電源元からの配線長が小さい関節アクチュエータと配線長が大きい関節アクチュエータとを比べると、後者の方が信号線において電源ノイズ(自己ノイズ)に対する耐性が低くなると考えられる。
【0014】
この点、本発明では、フレキシブルプリント配線板等の帯状の配線部材の導電線を電源線及び信号線として用いた構成において、電源線配列部で信号線から最も離れた位置にある1関節アクチュエータ分の電源線を、次段アクチュエータ用の電源線として次段電力用端子に接続するとともに、電源線配列部の残りの電源線を、上記のとおり1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつずらして出力側コネクタに接続する構成とした。
【0015】
かかる構成によれば、各関節アクチュエータでは、いずれも電源線配列部で信号線(例えば5V線)から最も離れた位置にある1関節アクチュエータ分の電源線(例えば200V線)が電力分配に用いられ、前段側から後段側への系列で見ると、後段側の関節アクチュエータになるほど、電源線配列部において実際にモータ駆動電力が流れている導電線は、徐々に信号線から離れていくことになる。つまり、配線部材の電源線配列部では、後段側の関節アクチュエータになるほど、実際にモータ駆動電力が流れて導通状態となっている電源線の本数が減り、さらにその導通状態となっている電源線と信号線との離間距離が次第に大きくなっていく。かかる場合、後段側の関節アクチュエータであるほど、信号線におけるノイズ耐性が低くなることを想定しても、他方で電源線からの離間距離が次第に大きくなることから、電源線からの電源ノイズに対する信頼性の低下を抑制できることとなる。
【0016】
以上本発明によれば、複数の関節アクチュエータでの配線構造の共通化を図り、しかも自己の電源ノイズによる制御系への悪影響を抑制することが可能となる多関節ロボットを実現できる。
【0017】
例えば、複数のアームを直列に接続してなる多関節ロボット(多軸ロボット)では、手先に行くに従って信号線(弱電線)と電源線(強電線)との離間距離が大きくなっていくため、その手先側で制御用信号の電圧ドロップが生じても、自己ノイズの影響を受け難くすることができる。
【0018】
第2の発明では、前記複数の関節アクチュエータの各モータには、要求駆動電力が相違するものが含まれており、前段側となる関節アクチュエータは、後段側となる関節アクチュエータに比べて、前記要求駆動電力が大きいものとなっている。
【0019】
多関節ロボットとして各モータの要求駆動電力(モータ出力)が相違するものがあり、各要求駆動電力が相違すると、電源線を流れる電流がモータごとに相違する。そして、前段側となる関節アクチュエータが、後段側となる関節アクチュエータに比べてモータの要求駆動電力が大きい構成が考えられる。この場合、前段側から後段側にいくにつれ、要求駆動電力が高い電源線ほど、先に電力供給が完了することとなる。ここで、後段側の関節アクチュエータでは、電源線(実際にモータ駆動電力が流れて導通状態となっている電源線)と信号線との離間距離が次第に大きくなることに加え、電源線を流れている電力自体も小さくなるため、自己ノイズによる悪影響が一層低減されることとなる。
【0020】
多軸ロボットで言えば、第1軸である根元軸(最前段となる関節アクチュエータ)では、ロボット全体を支えるために大きなトルクが必要となり大きな駆動電力が必要であるが、手先軸(後段側の関節アクチュエータ)に行くに従って支える量が減りトルクも小さくなるため、比較的小さな駆動電力とすることができる。よって、共通モジュールで共通のモータを使用していても、各軸(各関節)によってトルク、すなわち駆動電力が異なる。
【0021】
このことを勘案すれば、上記構成によって、第1軸で使用している配線モジュールでは、信号線に最も近い電源線を、電源線の中でも供給電力が最も小さいものとすることができ、共通の配線モジュールを第1軸として使用する場合に信号線への影響を最も小さくすることができる。そして次の第2軸の配線モジュールでは、電源線の中でも供給電力が最も小さいものとなる電源線と信号線との離間距離はさらに大きくなるため、電圧ドロップが大きくなる傾向にある手先側の信号線であっても、離間距離が大きくなった分だけ自己ノイズの影響を受け難くなる。この傾向は手先に行くことと略比例関係にあることから、信号線と電源線とが共に同一配線モジュールに配置されるロボットにおいて、信号線が自己ノイズを受け難くなるという効果を得ることができる。
【0022】
第3の発明では、前記配線部材として、互いに重ねて配置される第1配線部材と第2配線部材とを有し、そのうち第1配線部材には前記電源線配列部が設けられ、第2配線部材には前記信号線が設けられており、
前記第2配線部材の前記入力側コネクタに前記分配用端子が設けられ、前記出力側コネクタに前記次段電力用端子が設けられているとともに、前記第2配線部材において前記複数の導電線が並ぶ方向である幅方向の一端側に前記分配用端子と前記次段電力用端子とが配置され、他端側に前記信号線が配置されている。
【0023】
帯状の配線部材は、導電線の数が増えるほど幅寸法(複数の導電線が並ぶ方向の幅寸法)が大きくなるため、関節アクチュエータにおける配線収容スペースの都合を考えると、複数枚の配線部材を用い、それらを互いに重ねて配置することが考えられる。かかる場合、本発明のように、第2配線部材の入力側コネクタに分配用端子が設けられ、出力側コネクタに次段電力用端子が設けられているとともに、第2配線部材の幅方向の一端側に分配用端子と次段電力用端子とが配置され、他端側に信号線が配置されている構成とすれば、上記のとおり第1の発明では、電源線配列部で信号線から最も離れた位置にある1関節アクチュエータ分の電源線が次段電力用端子に接続され、かつ電源線配列部の残りの電源線が1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつずらして出力側コネクタに接続されていることから、各配線部材が互いに重ねて配置されていても、自己ノイズによる制御系への悪影響を抑制できる。
【0024】
この場合、各関節アクチュエータでの配線部材の収容性を考慮しつつも、自己の電源ノイズによる制御系への悪影響を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】1つの関節アクチュエータについてそれを4方向から見た外観形状を示す図。
【図2】関節アクチュエータの要部構成を分解して示す分解図。
【図3】モータモジュールの内部構造を示す断面図。
【図4】配線ユニットの構成を示す断面図。
【図5】配線モジュールの構成を示す図。
【図6】FPC板が巻回された状態を説明するための図。
【図7】関節アクチュエータの内部構成を示す断面図。
【図8】多関節ロボットの構成を示す正面図。
【図9】2つの配線モジュールについて、FPC板上の各種配線の構成とその配線の割り当てを説明するための図。
【図10】4段の関節アクチュエータについて各配線モジュールにおけるモータ駆動電力の供給の様子を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、産業用の多関節ロボット(多軸ロボット)に用いられる関節アクチュエータについて具体化し、関節アクチュエータとして、複数の関節部で同様に使用できる構成を構築するものとしている。つまり、各関節部の関節アクチュエータは基本的に同じ構造を有し、ロボットの関節の数に合わせて必要数分の関節アクチュエータが用いられるようになっている。まずは、関節アクチュエータの構成を説明する。図1は、1つの関節アクチュエータ10についてそれを4方向から見た外観形状を示す図であり、図2は、関節アクチュエータ10の主要構成を分解して示す分解図である。
【0027】
図1,図2に示すように、関節アクチュエータ10は大別して、モータモジュール11と、そのモータモジュール11の一端側(出力端側)に設けられるトップカバー12と、モータモジュール11に被せるようにしてモータモジュール11の外周側に設けられる略円筒状の配線ユニット13と、モータモジュール11の他端側(固定端側)に設けられるエンドカバー14とを備えている。そして、これら構成要素11〜14を軸方向に組み付けるとともに、ボルト等からなる複数の締結具15,16により締結して一体化することで、関節アクチュエータ10が構築されている。トップカバー12とエンドカバー14とが、モータモジュール11の軸方向両端部を塞ぐ端面部材に相当する。
【0028】
次に、関節アクチュエータ10の各構成要素11〜14の構成を詳細に説明する。まずはモータモジュール11の構成を説明する。図3は、モータモジュール11の内部構造を示す断面図である。
【0029】
モータモジュール11は減速機付サーボモータとして構成されており、モータ回転速度を所定の減速比で減速する減速機能を有している。またこれに加え、ブレーキ機能や回転検出機能を有している。モータモジュール11の回転中心にはロータ21が設けられており、そのロータ21の軸線方向に沿って出力側(図の左端側)から順に減速部22、モータ駆動部23、ブレーキ部24、回転検出部25が設けられている。このうち、モータ駆動部23とブレーキ部24とは、略円筒状をなすモータハウジング27に収容して設けられている。したがって、モータモジュール11の外観からすれば、モータハウジング27の一端側に減速部22が設けられ、他端側に回転検出部25が設けられる構成となっている(図2参照)。
【0030】
モータハウジング27は、ロータ21と同軸であってかつ真円状の外周面を有する円筒状をなしており、その一端側(減速部22側)にはハウジング外方に延びる外フランジ部27aが形成され、他端側(回転検出部25側)にはハウジング内方に延びる内フランジ部27bが形成されている。内フランジ部27bの径方向内側は開口部27cとなっている。なお、モータハウジング27の円筒部分の直径(外径)はD1である。また、外フランジ部27aも中央の円筒部分と同様、真円状の外周面を有しており、その直径(外径)はD2である。
【0031】
また、ロータ21は、断面円形状の中実構造をなしており、その軸線方向に沿って外周面が多段に形成されている。モータ駆動部23の構成として、ロータ21の軸方向略中央部には他よりも外径寸法が大きい大径部21aが形成されており、その大径部21aの外周側に永久磁石31が装着されている。また、永久磁石31を囲むようにしてその外周側には、ロータ21に回転力を生じさせるためのステータ32が設けられている。ステータ32は、モータハウジング27の円筒部分においてその内側に圧入により固定されている。
【0032】
ロータ21は、軸方向に見て2カ所でベアリング34,35により回転可能に支持されている。ベアリング34,35は、ロータ21との摺動面にシール部材(図示略)が設けられたシール付ベアリングとして構成されており、ロータ21の大径部21aを挟んで両側にそれぞれ設けられている。
【0033】
2つのベアリング34,35のうち減速部22側のベアリング34は、モータハウジング27の外フランジ部27aに固定されたベアリングホルダ36により支持されている。ベアリングホルダ36は、外フランジ部27aと同じ外径寸法を有し、その中心部の貫通孔部にはベアリング34を設置する設置凹部36aが形成されている。設置凹部36aにおいて、その径方向端面(ロータ軸に対して直交する方向に延びる端面)とベアリング34との間には皿ばね37が設けられている。皿ばね37は、ベアリング34をロータ21の大径部21a側に付勢する付勢手段であり、この皿ばね37によりロータ21に対して軸方向の荷重が付加されている。かかる場合、熱の影響等に起因してロータ21が軸方向に伸びたとしても又は軸方向に縮んだとしても、その伸び分又は縮み分を皿ばね37により吸収できる。
【0034】
ベアリングホルダ36は、減速部22とモータ駆動部23との間に設けられており、その減速部22側にはオイルシール38が配設されている。オイルシール38により、外部からの塵埃やオイルの侵入が抑制される。
【0035】
また、ブレーキ部24側のベアリング35は、ブレーキ部24として設けられたブレーキ本体41により支持されている。ブレーキ本体41は、モータハウジング27に対してネジ等により固定されており、ロータ21を挿通させてこれを囲むようにして設けられている。そして、ブレーキ本体41の内周部とロータ21の外周部との間にベアリング35が配設されている。また、モータハウジング27の開口部27cには、ブレーキ本体41に対してネジ等により固定された押さえプレート42が設けられており、ロータ21の外周部分に形成された段差部(ベアリング保持用の段差部)と押さえプレート42とにより、ベアリング35のロータ軸方向の位置固定がなされている。
【0036】
上述したロータ21の支持構造によれば、ステータ32に対向する大径部21aを挟んでその両側が大径部21aよりも小径の小径部となっており、その小径部がベアリング34,35により支持されている。これにより、ロータ21の外径寸法の大型化を抑制できる。また、2つのベアリング34,35及び皿ばね37により、ロータ21のラジアル荷重とスラスト荷重と好適に受けることができるものとなっている。
【0037】
ブレーキ部24は電磁式ブレーキ装置として構成されており、ブレーキ本体41への通電状態に応じて、ロータ21の回転を許容又は禁止するものとなっている。具体的には、ロータ21には、ロータ外周側に突き出た状態でロータ側外歯44が設けられている。また、ブレーキ部24には、ロータ側外歯44に対して係止可能であって、ブレーキ本体41への通電状態に応じてロータ軸方向に進退移動するブレーキ側内歯45が設けられている。ブレーキ部24は、ブレーキ本体41に対する非通電時には、ロータ側外歯44に対してブレーキ側内歯45が係止状態とされ(図示の状態)、ブレーキオン状態に保持されている(常時ブレーキオン)。そして、ブレーキ本体41が通電されることに伴い、ロータ側外歯44に対するブレーキ側内歯45の係止が解除され、ブレーキオフ状態に移行する構成となっている。
【0038】
回転検出部25は、エンコーダを有する構成となっており、ロータ21の回転位置に応じた回転検出信号を出力する。回転検出部25は、ロータ21の端部にネジにより取り付けられたエンコーダプレート47と、そのエンコーダプレート47を囲って設けられる保護カバー48とを有している。
【0039】
モータ駆動部23のステータ32、ブレーキ部24のブレーキ本体41、及び回転検出部25のエンコーダには、これら各々への電力供給や信号伝達を行うためのモータモジュールケーブル51が接続されている。各モータモジュールケーブル51は、それぞれモータハウジング27や保護カバー48からその外側に引き出されており、各ケーブル51の先端側にはモータモジュールコネクタ52が取り付けられている。なお、各モータモジュールケーブル51のうちステータ32及びブレーキ本体41に接続されるケーブルはモータハウジング27の内側に設けられている。
【0040】
また、減速部22の構成として、ロータ21の出力先端側には減速機ユニット61が連結されている。減速機ユニット61は、ハーモニックドライブ(登録商標)構造を有する減速装置であり、ロータ21の回転を所定の減速比(例えば1/100)で減速し出力する。減速機ユニット61は、モータハウジング27の円筒部分よりも外径寸法が大きいものであり、モータハウジング27の外フランジ部27aやベアリングホルダ36と同じ外径寸法を有している。
【0041】
減速機ユニット61は、より具体的には、楕円状のカムの外周にボールベアリングが組み付けられてなるウェーブジェネレータ62と、その外側に配置される薄肉かつ弾性変形可能なフレクスプライン(弾性歯車)63と、その外側に配置される剛体環状のサーキュラスプライン(内歯車)64とを備えて構成されている。フレクスプライン63の外周部には多数の外歯が形成されるとともに、サーキュラスプライン64の内周部にはフレクスプライン63よりも所定数(例えば2つ)だけ歯数が多い内歯が形成されており、それらフレクスプライン63の外歯とサーキュラスプライン64の内歯とがウェーブジェネレータ62の長軸の部分(カム山部分)で噛み合う構成となっている。また、サーキュラスプライン64の外側にはクロスローラベアリングからなる軸受65が一体的に設けられている。
【0042】
ウェーブジェネレータ62には、その中心部に複数のネジ等の締結具66によりカップリング67が固定されており、カップリング67がロータ21の先端部に固定されている。また、軸受65はネジ等からなる複数の締結具68によりベアリングホルダ36に固定されている。
【0043】
上記構成の減速部22では、ロータ21が回転すると、ロータ21と一体でウェーブジェネレータ62が回転し、その回転がフレクスプライン63を介してサーキュラスプライン64に伝達される。これにより、ロータ21の回転に対してサーキュラスプライン64が所定の減速比で減速されて回転する。
【0044】
次に、配線ユニット13の構成を説明する。図4は、配線ユニット13の内部構成を示す断面図である。
【0045】
配線ユニット13は、多関節ロボットにおいてモータ駆動部23への駆動電力の供給を行う電源線やモータ制御用信号を送信する信号線を有してなる配線モジュールを備えて構成されるものであり、特に、ロボットコントローラと各関節アクチュエータ10との間で所望の電気経路を構築すべく、多関節ロボットに設けられる複数の関節アクチュエータ10に相当する複数系統の電力供給や信号伝達を可能にするものとなっている。本実施形態では、多関節ロボットの最大8つの関節アクチュエータ10について電力供給や信号伝達を可能にするものとなっている。
【0046】
配線ユニット13は、大別してユニット本体71と配線カバー72とにより構成されている。なお、ユニット本体71と配線カバー72との分離状態は図2を参照されたい。ユニット本体71は、モータモジュール11のモータハウジング27に対して組み付けられる略筒状の筒体73を有しており、その直径(内径)はD3であり、これはモータハウジング27の直径D1+微小隙間の寸法となっている。微小隙間は、モータハウジング27に対して筒体73を組み付けた状態で、筒体73を回転可能とするのに要する摺動クリアランスである。なお、モータハウジング27と筒体73との摺動部にすべり軸受を設けることも可能である。
【0047】
筒体73の一方の端面73aは、モータハウジング27に対する組み付け状態で外フランジ部27aに当接する当接面となっている(図7参照)。端面73aの直径(外径)はD4であり、これはモータハウジング27の外フランジ部27aの直径D2と同じ寸法となっている。
【0048】
また、筒体73には、その周方向において1カ所に、後述する配線モジュール81の一部を固定するためのモジュール固定部が設けられている。モジュール固定部は、筒体73の外周側の1カ所に形成された凹部73bと、その凹部73bから筒体73の軸方向に延びる突出部73cとからなる。そして、そのモジュール固定部にコネクタケース74が設置されることで、そのケース内部に収容スペースSが形成されるようになっている。
【0049】
また、ユニット本体71は、モータモジュール11への電力供給や信号伝達を行うアクチュエータ電気配線としての配線モジュール81を備えている。配線モジュール81は、帯状(所定幅の長尺状)をなし合成樹脂等の絶縁性フィルム上に銅箔等により電気回路が形成された薄板状のフレキシブルプリント配線板(以下、FPC板という)82と、そのFPC板82の入力側(一端側)に設けられた入力回路部84と、FPC板82の出力側(他端側)に設けられた出力回路部83とを有している。FPC板82は、絶縁被覆された複数の導電線が横並びで設けられており、該複数の導電線により、複数の関節アクチュエータ10について電力供給や信号伝達を実現できるものとなっている。本実施形態では特に、2つの配線モジュール81(2枚のFPC板82)を用いてユニット本体71が構成されている。そして、入力回路部84及び出力回路部83を介して、自アクチュエータのFPC板82が、前段側及び後段側の他アクチュエータのFPC板82に電気的に接続される構成となっている。
【0050】
配線モジュール81の詳細を図5を用いて説明する。図5において(a)は、ユニット本体71への組み付け前における配線モジュール81を示す斜視図であり、(b)は、FPC板82を平面状に展開した状態を示す平面図である。
【0051】
FPC板82は、渦巻き状に巻回される巻回部82aと、その巻回部82aの両端部にそれぞれ形成され、巻回部82aに直交する向きに延びる非巻回部82bとを有する形状となっており、巻回部82aが巻回された状態で、その巻回部82aを挟んで両側に非巻回部82bが引き出される構成となっている(図5(a)参照)。説明の便宜上、図5(b)では、FPC板82のうち巻回部82aに相当する部位に網掛けを付している。入力回路部84は、配線モジュール81の入力端となる入力側コネクタ84cと、FPC板82のフラット配線部の一端側に接続される中継部84bと、入力側コネクタ84cと中継部84bとの間に設けられる配線基板84aとを備えている。また、出力回路部83は、配線モジュール81の出力端となる出力側コネクタ83cと、FPC板82のフラット配線部の他端側に接続される中継部83bと、出力側コネクタ83cと中継部83bとの間に設けられる配線基板83aとを備えている。
【0052】
そして、図4に示すように、配線モジュール81は、FPC板82の巻回部82aと筒体73とが筒体73の軸方向に並ぶようにして、ユニット本体71に組み付けられている。かかる場合、FPC板82は、一方の非巻回部82bの付け根部分(巻回部82aと非巻回部82bとの境界部分)においてFPCクランパ(FPC保持部材)86に取り付けられており、そのFPCクランパ86が筒体73とコネクタケース74とに対して固定されることで、FPC板82が筒体73に対して取り付けられるようになっている。
【0053】
図6は、FPC板82が巻回された状態を説明するための図であり、(a)、(b)は2つの配線モジュール81をそれぞれ示している。なお、説明の便宜上、モータハウジング27を仮想線にて図示している。
【0054】
2つの配線モジュール81のうち一方は、(a)に示すように、巻回角度を360°(巻回数=1周)として、モータハウジング27の外周にFPC板82を巻回させて設けられている。また、他方は、(b)に示すように、巻回角度を540°(巻回数=1周半)として、モータハウジング27の外周にFPC板82を巻回させて設けられている。つまり、各FPC板82では、その巻回数(モータハウジング外周の周回数)が互いに異なるものとなっている。
【0055】
また、本実施形態の関節アクチュエータ10では、初期状態(図示の状態)を基準に正逆両方向に回転が可能となっており、回転出力部(トップカバー12)は±θの角度範囲で正方向及び負方向にそれぞれ回転する。例えば、θ=170°である。この場合、回転出力部(トップカバー12)が回転すると、出力回路部83の位置(周方向における回転位置)が−θ〜+θの範囲内で変更され、それに伴い2つの回路部83,84の相対位置が変更されるものとなっている。なお、FPC板82は、巻回角度が大きくなる場合(+θ方向に回転する場合)を想定して巻回部82aの配線長が設定されており、本実施形態の場合、図6(a)に示すFPC板82は約1.5周分の長さを有し、(b)に示すFPC板82は約2周分の長さを有するものとなっている。
【0056】
図4の説明に戻り、モータハウジング27の外周には内外に重なった状態で2枚のFPC板82が設けられている。各FPC板82の巻回部82aの外周側には、巻回部82aを囲むようにして円筒状の配線カバー72が取り付けられている。この場合、FPC板82の巻回部82aは配線カバー72の内側に配設されている。配線カバー72の設置により、FPC板82の保護と防塵対策を実現できる。なお、配線カバー72は、筒体73ではなくエンドカバー14に対して固定されるものとなっており、筒体73は配線カバー72に対して相対回転する構成となっている。
【0057】
配線モジュール81が筒体73に取り付けられた状態では、FPC板82の非巻回部82bと出力回路部83(詳しくは出力回路部83の一部)とが収容スペースS内に収容されている。そして、出力回路部83において出力側コネクタ83cがケース外部に突出した状態となっている。また、2つの配線モジュール81について、各々の出力回路部83が上下二段に設けられている。一方、筒体73とは反対側では、2つの入力回路部84が、周方向に分散して、すなわち筒体73の中心軸を挟んで互いに反対側となる位置に設けられている。
【0058】
入力回路部84には、モータモジュール11に設けられるモータモジュールケーブル51(図3参照)にFPC板82を電気的に接続するための分配基板部87が設けられている。分配基板部87は、FPC板82に設けられた複数系統の回路配線のうちいずれかをモータモジュールケーブル51(図3参照)に分配して電気的に接続するものである。また、分配基板部87を収納するケース部には、モータモジュールコネクタ52を結合させるための結合穴部87aが形成されている。分配基板部87に対してモータモジュールコネクタ52が接続されることにより、複数系統の回路配線のうち1系統の回路配線がモータモジュールケーブル51に電気的に接続され、モータモジュール11の各部(モータ駆動部23、ブレーキ部24、回転検出部25)に対して電力供給や信号伝達が行われるようになっている。
【0059】
ここで、モータモジュール11の出力側端面部に設けられるトップカバー12には、出力側コネクタ83cを取り付けるための開口部12aが形成されている(図1参照)。また、モータモジュール11の固定側端面部に設けられるエンドカバー14には、入力側コネクタ84cを取り付けるための開口部14aが形成されている(図1参照)。
【0060】
次に、上記各構成要素により構成される関節アクチュエータ10をあらためて説明する。図7は、関節アクチュエータ10の内部構成を示す断面図である。つまりこれは、図3で説明したモータモジュール11に対して、図4で説明した配線ユニット13を組み付け、さらにその両端部にトップカバー12とエンドカバー14とを取り付けた状態を示すものである。
【0061】
図7に示す関節アクチュエータ10では、モータモジュール11の減速機ユニット61のサーキュラスプライン64に締結具15によりトップカバー12が結合されている。また、モータハウジング27の外周側に配線ユニット13が組み付けられ、その状態で配線ユニット13のユニット本体71がトップカバー12に固定されている。この場合、トップカバー12と配線ユニット13の筒体73との間に挟まれた状態で減速機ユニット61が設けられている。配線ユニット13の出力側コネクタ83cは、トップカバー12の開口部12aに挿通させて設けられている。
【0062】
なお、減速機ユニット61の固定部分(本実施形態では軸受65)には、トップカバー12の回転範囲を規制するための複数の回転規制ネジ88が設けられており、トップカバー12は、一の回転規制ネジ88から他の回転規制ネジ88までの回転範囲(例えば340°)内で回転可能となっている。
【0063】
また、トップカバー12の反対側にはエンドカバー14がボルト等の締結具により取り付けられている。この場合、エンドカバー14は、その内側凹部14bにてエンコーダを覆うようにして取り付けられている。また、エンドカバー14と配線ユニット13の筒体73との間に挟まれた状態で配線カバー72が設けられている。モータハウジング27と配線カバー72との間に形成される環状空間部には、モータハウジング27に周回させた状態で2枚のFPC板82が設けられている。また、入力回路部84の分配基板部87には、モータモジュールコネクタ52が結合されている。
【0064】
ここで、エンドカバー14は、モータハウジング27の円筒部分(筒体73が組み付けられる部分)の外径寸法よりも大径に形成されており、そのエンドカバー14においてモータハウジング27よりも大径となる張出部分を用いて、入力側コネクタ84cを挿通配置するための開口部14aが形成されている。そして、そのエンドカバー14の開口部14aに挿通させて配線ユニット13の入力側コネクタ84cが設けられている。
【0065】
上記構成の関節アクチュエータ10では、モータモジュールケーブル51やFPC板82を通じて、モータ駆動部23のステータ32やブレーキ部24のブレーキ本体41に対して電力供給や信号伝達が行われる。また、同様にケーブル51及びFPC板82を通じて、回転検出部25のエンコーダの検出信号の出力が行われる。そして、これら電力供給や信号伝達に基づいて関節アクチュエータ10の動作が制御される。ここで、モータモジュール11のロータ21が回転すると、減速機ユニット61の出力軸であるサーキュラスプライン64と共にトップカバー12が正逆いずれかの方向に回転するとともに、配線ユニット13がモータハウジング27を回転軸として回転する。このとき、トップカバー12及びエンドカバー14にそれぞれ設けられた各回路部83,84(コネクタ83c,84c)では互いの相対的な回転位置が変化するが、モータハウジング27の外周に周回させて設けられたFPC板82により両回路部83,84の相対位置の変化分(ロータ軸方向に対するFPC板82の捩れ)が吸収される。
【0066】
次に、関節アクチュエータ10を用いた多関節ロボットの構成事例を説明する。図8は、多関節ロボット90の構成を示す正面図である。なお、図8には3軸の水平多関節ロボット(3軸スカラロボット)を例示するが、本実施形態の関節アクチュエータ10によれば、ロボットシステムにおける電気系統を最大8系統にすることができ、4軸以上の多関節ロボットの構築も可能となっている。また、水平多関節ロボットに代えて、垂直多関節ロボットでの具体化も可能である。
【0067】
多関節ロボット90は、3つの関節アクチュエータ10を備えるものであり、各関節アクチュエータ10の回転軸として、鉛直方向に延びる3つの軸J1,J2,J3が定められている。詳しくは、多関節ロボット90は、ロボット設置場所に固定される基台91を備え、その基台91の上に、出力端(トップカバー12側)を上、固定端(エンドカバー14側)を下にして第1関節アクチュエータ10Aが設置されている。また、第1関節アクチュエータ10A以外に、第2関節アクチュエータ10Bと第3関節アクチュエータ10Cとが設けられており、第1関節アクチュエータ10Aと第2関節アクチュエータ10Bとはクランク状をなす連結アーム92により連結され、第2関節アクチュエータ10Bと第3関節アクチュエータ10Cとは平板状をなす連結アーム93により連結されている。
【0068】
第2関節アクチュエータ10Bは、出力端(トップカバー12側)を上、固定端(エンドカバー14側)を下にして設置され、第3関節アクチュエータ10Cは、出力端(トップカバー12側)を下、固定端(エンドカバー14側)を上にして設置されている。そして、第3関節アクチュエータ10Cの出力端(トップカバー12側)には、被搬送物を把持するツール等を有するハンド部94が取り付けられている。
【0069】
多関節ロボット90の電気的構成として、基台91において関節アクチュエータ10Aを搭載する搭載部には基台コネクタ95が設けられており、基台91上に関節アクチュエータ10Aが搭載されることで、その関節アクチュエータ10Aの入力側コネクタ84cに対して基台コネクタ95が電気的に結合されるようになっている。また、連結アーム92において関節アクチュエータ10A,10Bとの連結部分にはそれぞれアームコネクタ96,97が設けられており、関節アクチュエータ10A,10Bに対して連結アーム92が連結されることで、それら関節アクチュエータ10A,10Bの各コネクタ83c,84cに対してアームコネクタ96,97がそれぞれ電気的に結合されるようになっている。連結アーム93についても同様に、関節アクチュエータ10B,10Cとの連結部分にはそれぞれアームコネクタ98,99が設けられており、関節アクチュエータ10B,10Cに対して連結アーム93が連結されることで、それら関節アクチュエータ10B,10Cの各コネクタ83c,84cに対してアームコネクタ98,99がそれぞれ電気的に結合されるようになっている。さらに、ハンド部94において関節アクチュエータ10Cとの連結部分にはコネクタ100が設けられており、関節アクチュエータ10Cに対してハンド部94が連結されることで、関節アクチュエータ10Cの出力側コネクタ83cに対してコネクタ100が電気的に結合されるようになっている。
【0070】
連結アーム92にはコネクタ96,97を電気的に接続するアーム配線101が設けられ、連結アーム93にはコネクタ98,99を電気的に接続するアーム配線102が設けられている。このアーム配線101,102についても、関節アクチュエータ内の電気配線(配線モジュール)と同様、フレキシブルプリント配線板(FPC板)により構成されている。なお、各FPC板により構築される複数系統の電気経路には、ハンド部94への電力供給及び信号伝達の経路も含まれる。
【0071】
上記構成の多関節ロボット90では、3つの関節アクチュエータ10A〜10Cが直列に機械連結されており、それらのうち前段の第1関節アクチュエータ10Aの動きにより中段の第2関節アクチュエータ10Bが変位し、さらに、第2関節アクチュエータ10Bの動きにより後段の第3関節アクチュエータ10Cが変位する。また、基台91からハンド部94までの電気経路(バスライン)として、第1関節アクチュエータ10Aの配線モジュール81→アーム配線101→第2関節アクチュエータ10Bの配線モジュール81→アーム配線102→第3関節アクチュエータ10Cの配線モジュール81というように、前段アクチュエータの配線モジュール81を経由して後段アクチュエータの配線モジュール81に繋がるようにして一連の経路が構築されており、この電気経路を通じて、各アクチュエータへの電力供給や信号伝達が行われる。この場合、各関節アクチュエータ10A〜10Cの配線モジュール81(FPC板82)は、全アクチュエータ(ハンド部94を含む)において共通配線として使用される。
【0072】
なお、多関節ロボット90では、関節アクチュエータ10A〜10Cに設けられる配線類は全て内装配線とされ、連結アーム92,93に設けられる配線類は概ね全て内部配線とされている。図示の構成では、関節アクチュエータ10Bの固定端部付近でアーム配線101が外部に露出しているが、その露出部分は回転が生じる部位でないため、回転に起因する配線類の絡まり等が生じないものとなっている。言い換えれば、連結アーム92,93に設けられる配線類は、少なくとも回転部分に設けられる配線が内装配線となっていればよい。
【0073】
ところで、本実施形態の多関節ロボット90では、上記のとおり各関節アクチュエータ10がいずれも同様の構成を有し、機械的な構造部分での構成の共通化が図られているが、これに加えて、配線系の構成についても共通化が図られるものとなっている。すなわち、配線ユニット13を構成する配線モジュール81が、どの関節アクチュエータでも(換言すれば、どの軸でも)共通に使用できるように共通部品として構成されている。以下、配線モジュール81の構成をあらためて詳しく説明する。
【0074】
上述したとおり配線モジュール81は、FPC板82と入力回路部84と出力回路部83とを有しており、関節アクチュエータ10ごとに配線モジュール81を2つ用いて配線ユニット13が構成されている。図9は、2つの配線モジュール81について、FPC板82等における各配線部分の構成と、その配線の割り当てを説明するための図である。なお、2つの配線モジュール81のうち一方は、モータモジュール11のモータ駆動部23に対して駆動用の電源電力を供給するためのモータ電源線を含むものであり、以下これを「第1配線モジュール81−1」と称し、他方は、モータ電源線以外であって少なくとも制御系の信号線を含むものであり、以下これを「第2配線モジュール81−2」と称することとする。第1配線モジュール81−1のFPC板82−1が第1配線部材に相当し、第2配線モジュール81−2のFPC板82−2が第2配線部材に相当する。
【0075】
なお、2つの配線モジュール81−1,81−2は、実際には互いに重なった状態で配設されるものであるが(図7参照)、図9では便宜上、それら両配線モジュール81−1,81−2を上下に分離させて示している。すなわち、関節アクチュエータ10への実際の組み付け状態では、第1配線モジュール81−1の図示上側と第2配線モジュール81−2の図示上側とが内外に重なり、第1配線モジュール81−1の図示下側と第2配線モジュール81−2の図示下側とが内外に重なるものとなっている。
【0076】
上記2つの配線モジュール81−1,81−2において、そのFPC配線部分には複数の導電線Lが板状に並べて設けられており、入力回路部84−1,84−2の入力側コネクタ84c−1,84c−2には、各導電線Lに対応する複数の入力端子(導電線Lと同数の入力端子)が設けられている。また、出力回路部83−1,83−2の出力側コネクタ83c−1,83c−2には、各導電線Lに対応する複数の出力端子(導電線Lと同数の出力端子)が設けられている。両配線モジュール81−1,81−2において、入力側コネクタの構成は同じであり、出力側コネクタの構成も同じである。入力側コネクタ84c−1,84c−2は、前段の関節アクチュエータ10の配線モジュール81に電気的に接続されるものであり、出力側コネクタ83c−1,83c−2は、次段の関節アクチュエータ10の配線モジュール81に電気的に接続されるものである。
【0077】
第1配線モジュール81−1では、入力側コネクタ84c−1の各入力端子が電源入力用の端子として用いられ、出力側コネクタ83c−1の各出力端子が電源出力用の端子として用いられる。また、第1配線モジュール81−1では、複数の導電線Lがモータ電源線として割り当てられており、あらかじめ想定された系統(本実施形態では8系統)の本数がモータ電源線として確保されるように設定されている。本実施形態では、モータ駆動部23として交流3相モータを用いており、関節アクチュエータ10ごとに3本ずつのモータ電源線が用いられて、それが多関節ロボットにおける複数の関節アクチュエータ10に応じた数分並べて配列されている。これにより、第1配線モジュール81−1において電源線配列部K1が構成されている。この場合、多関節ロボットで実際に用いられるアクチュエータ数nに対して、少なくとも(n−1)個のアクチュエータ数分のモータ電源線が電源線配列部K1となっていればよい。本実施形態では、モータ駆動電源をAC200Vとしており、電源線配列部K1の各電源線を通じて各々200Vのモータ駆動電力が供給される。
【0078】
第1配線モジュール81−1において、入力回路部84−1には、FPC板82−1の導電線Lと同数の導線が設けられており、この導線により入力側コネクタ84cの各入力端子とFPC板82の各導電線Lとが1対1で接続されている。ここで、FPC板82−1において、その一端側の1関節アクチュエータ分の導電線(3本の導電線)が次段アクチュエータ用のモータ駆動電力を供給する次段用電源線K2となっている。
【0079】
これに対し、出力回路部83−1の導線部分においてはモータ電源線の配列が変更されており、その詳細は後述する。
【0080】
一方、第2配線モジュール81−2では、入力側コネクタ84c−2において複数の入力端子のうち、コネクタ一端側(図の上端側)から4つ分の入力端子(例えば、端子番号1〜4の入力端子)が、関節アクチュエータ10ごとにモータ駆動電力とブレーキ駆動電力とを分配する分配用端子T1として定められており、この分配用端子T1に入力された各駆動電力が自アクチュエータに対して分配供給される構成となっている。4つ分の分配用端子T1のうち、3つが自アクチュエータのモータ駆動電力用の入力端子であり、1つが自アクチュエータのブレーキ駆動電力用の入力端子である。
【0081】
また、入力側コネクタ84c−2において分配用端子T1の内側(図の下側)の7つ分の入力端子が、自アクチュエータよりも後段側の他アクチュエータで用いられるブレーキ駆動電力を入力するためのブレーキ電力入力端子T2となっている。さらに、コネクタ他端側(図の下端側)から4つ分の入力端子が、モータ制御用信号を送受するための信号用端子T3となっている。
【0082】
入力回路部84−2の導線部分では、分配用端子T1から入力されたモータ駆動電力及びブレーキ駆動電力が、電力分配用の導電線K3を介して自アクチュエータのモータ駆動部23やブレーキ部24に分配供給される。電力分配用の導電線K3は、FPC板の長尺方向に対して交差する方向に延びるように形成されている。なお、この電力分配用の導電線K3を含んで、前記分配基板部87が構成されている。
【0083】
また、信号用端子T3に接続されている各導線には分岐線K4が接続されており、その分岐線K4を介して自アクチュエータのエンコーダ信号等が送受される。ここで、第2配線モジュール81−2の信号線は、シリアル通信によりエンコーダ信号等を送受するものであって、その通信方式として半2重通信方式が採用されている。これにより、複数の関節アクチュエータ10について共通の通信ラインを用いての信号送受が可能となっている。
【0084】
また、第2配線モジュール81−2のFPC板82−2において、K5は、自アクチュエータよりも後段側の他アクチュエータで用いられるブレーキ駆動電力を供給するためのブレーキ電源線であり、K6は、モータ制御用信号を送受するための信号線である。K7は空き配線である。なお、ブレーキ駆動電力は、例えば24Vを電源電圧とするものである。その他、第2配線モジュール81−2にはモータ用/ブレーキ用のアース線等が設けられている。
【0085】
また、出力回路部83−2の出力側コネクタ83c−2において複数の出力端子のうち、コネクタ一端側(図の上端側)から4つ分の出力端子(例えば、端子番号1〜4の出力端子)が、次段アクチュエータの第2配線モジュール81−2で分配用端子T1に接続される次段電力用端子T4として定められており、次段アクチュエータに対して、次段電力用端子T4を介してモータ駆動電力とブレーキ駆動電力とが出力される。4つ分の次段電力用端子T4のうち、3つが次段アクチュエータのモータ駆動電力用の出力端子であり、1つが次段アクチュエータのブレーキ駆動電力用の出力端子である。
【0086】
また、出力側コネクタ83c−2において次段電力用端子T4の内側(図の下側)の7つ分の入力端子が、後段側の他アクチュエータで用いられるブレーキ駆動電力を出力するためのブレーキ電力出力端子T5となっている。さらに、コネクタ他端側(図の下端側)から4つ分の出力端子が、モータ制御用信号を送受するための信号用端子T6となっている。
【0087】
また、出力回路部83−2では、モータ用の電源線とブレーキ用の電源線とについて、次段アクチュエータへの電力分配を行わせるべく配列の組替えが行われる構成となっている。具体的には、第1配線モジュール81−1の電源線配列部K1の各電源線のうち次段用電源線K2と、第2配線モジュール81−2の次段用のブレーキ電源線とが、次段電力用端子T4に接続されている。この場合特に、次段用電源線K2は、第1配線モジュール81−1の電源線配列部K1において信号線K6から最も離れた位置にある電源線であり、その次段用電源線K2が、FPC板の長尺方向に対して交差する方向に延びる組替線K8を介して次段電力用端子T4に接続されている。なお、2枚のFPC板82−1,82−2が互いに重なった状態であることを考慮すると、組替線K8は、それら両FPC板の間の隙間を一方から他方に延びる配線部となっている。
【0088】
そして、第1配線モジュール81−1では、次段用以外の残りのモータ電源線が、1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつ信号線K6から離れる側にずらして出力側コネクタ83c−1に接続されている。この場合、次段用以外の残りのモータ電源線は、次段用電源線K2を次段電力用端子T4に接続したことで空きとなった(すなわち、次段用電源線K2が未接続となった)出力側コネクタ83c−1の出力端子(図のTA)を用いて、1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつずらして出力側コネクタ83c−1に接続されるものである。
【0089】
また、複数の導電線からなるブレーキ電源線K5はそれぞれ、信号線K6から離れるようにして1導電線ずつシフトされており、これによりブレーキ電源線の配列が変更されている。この場合、信号線K6から最も離れた位置にある導電線が、次段用のブレーキ電源線として次段電力用端子T4に接続されている。
【0090】
次に、配線モジュール81における電源線の配列組み替えによる作用を、図10を用いて説明する。図10は、4段分の関節アクチュエータ10が直列に接続される構成を想定し、その4段の関節アクチュエータ10について各配線モジュール81におけるモータ駆動電力の供給の様子を説明するものである。なお、図10では、説明の簡略化のため、電源線配列部K1において各アクチュエータのモータ電源線として1本ずつの導電線を示すとともに、信号線K6として1本の導電線を示している。また、図9と同様、両配線モジュール81−1,81−2を上下に分離させて示している。下段側に図示する第1配線モジュール81−1において、実際にモータ駆動電力が流れている電源線については実線で示し、モータ駆動電力が流れていない電源線(空き線)については破線で示している。
【0091】
図10に示す各配線モジュール81−1,81−2は、各段の関節アクチュエータ10ごとに異なる構成のものではなく、いずれも共通の構成となっている。つまり、各第1配線モジュール81−1では、前後段となる配線モジュール81−1同士を接続することで、いずれも図の最上段の電源線が次段用電源線K2となっている。また、各第2配線モジュール81−2では、前後段となる配線モジュール81−2同士を接続することで、いずれも分配用端子T1(全アクチュエータ共通の所定入力端子)から自アクチュエータ用のモータ駆動電力が入力されるとともに、次段電力用端子T4(全アクチュエータ共通の所定出力端子)から次段アクチュエータ用のモータ駆動電力が出力されるようになっている。図示は省略するが、ブレーキ駆動電力についても同様に、自アクチュエータ用の電力入力と、次段アクチュエータ用の電力出力とが全アクチュエータ共通の所定端子を介して行われる。
【0092】
ここで、多関節ロボットに用いられる複数の関節アクチュエータ10の各モータ駆動部23には、要求駆動電力(モータ出力)が相違するものが含まれており、前段側となる関節アクチュエータは、後段側となる関節アクチュエータに比べて、要求駆動電力が大きいものとなっている。図8の構成で言えば、各関節アクチュエータ10A,10B,10Cは要求駆動電力が各々相違しており、関節アクチュエータ10A(前段アクチュエータ)の要求駆動電力>関節アクチュエータ10B(中段アクチュエータ)の要求駆動電力>関節アクチュエータ10C(後段アクチュエータ)の要求駆動電力となっている。要するに、前段側の関節アクチュエータ10は駆動負荷が大きく、後段側の関節アクチュエータ10は駆動負荷が小さくなることから、各アクチュエータの要求駆動電力が相違するものとなっている。付言すると、第1軸である根元軸(最前段となる関節アクチュエータ)では、ロボット全体を支えるために大きなトルクが必要となり大きな駆動電力が必要であるが、手先軸(後段側の関節アクチュエータ)に行くに従って支える量が減りトルクも小さくなるため、比較的小さな駆動電力とすることができる。この場合、共通構成のモータを使用していても、各軸(各関節)によってトルク、すなわち駆動電力が異なる。それを加味して、図10では4つの要求駆動電力を想定しており、前段側から順に、200W、100W、80W、60Wとなっている。
【0093】
また、各電源線や信号線は、その上流側において電源元としてのロボットコントローラ(図示略)に接続されており、後段側になるほど、配線長が大きくなるものとなっている。この場合、配線長が大きいものほど、信号線での電圧ドロップが大きくなることから、電源元からの配線長が小さい前段側の関節アクチュエータと配線長が大きい後段側の関節アクチュエータとを比べると、後者の方が信号線において電源ノイズ(自己ノイズ)に対する耐性が低くなると考えられる。
【0094】
さて、図10において、1段目の関節アクチュエータ10では、第1配線モジュール81−1の電源線配列部K1の各電源線のうち信号線K6から最も離れた位置にある次段用電源線K2として200W電源線が次段電力用端子T4に接続されるとともに、第1配線モジュール81−1において次段以外の残りの電源線が1アクチュエータ分ずつずらすことで配線の組み替えが行われている。
【0095】
また、2段目以降の各関節アクチュエータ10でも同様に、モータ電源線の組み替えが行われており、
・2段目では、信号線K6から最も離れた位置にある次段用電源線K2として100W電源線が次段電力用端子T4に接続され、
・3段目では、信号線K6から最も離れた位置にある次段用電源線K2として80W電源線が次段電力用端子T4に接続され、
・4段目では、信号線K6から最も離れた位置にある次段用電源線K2として60W電源線が次段電力用端子T4に接続されている。また、各段において次段用電源線K2以外の電源線の組み替え配置も図示のごとく行われている。
【0096】
上記構成によれば、前段側から後段側への系列で見ると、後段側の関節アクチュエータになるほど(すなわちロボット手先側になるほど)、電源線配列部K1において実際にモータ駆動電力が流れている導電線(強電線)が、徐々に信号線K6(弱電線)から離れていくことになり、信号線K6に近い側では空き配線が増えていく。この場合、実際に導通状態となっているモータ電源線と信号線K6との離間距離が次第に大きくなっていくため、後段側の関節アクチュエータであるほど、信号線K6でその電圧ドロップが大きくなりノイズ耐性が低くなることを想定しても、他方でモータ電源線からの離間距離が次第に大きくなることから、モータ電源線からの電源ノイズに対する信頼性の低下を抑制できることとなる。
【0097】
さらに、どの関節アクチュエータ10でも、第1配線モジュール81−1の電源線配列部K1において実際にモータ駆動電力が流れている導電線(強電線)のうち、信号線K6に最も遠い側(図の上側)が最大電力の電源線となり、信号線K6に最も近い側(図の下側)が最小電力の電源線となっている。かかる場合、第1軸(1段目)で使用している配線モジュールでは、信号線K6に最も近い電源線が、電源線の中でも供給電力が最も小さいものとなり、共通の配線モジュールを第1軸として使用する場合に信号線K6への影響を最も小さくすることができる。そして次の第2軸以降(2段目以降)の配線モジュールでは、導通状態にあるモータ電源線の中でも供給電力が最も小さいものとなる電源線と信号線K6との離間距離が徐々に大きくなるため、電圧ドロップが大きくなる傾向にある手先側の信号線であっても、離間距離が大きくなった分だけ自己ノイズの影響を受け難くなる。この傾向は手先に行くことと略比例関係にあることから、信号線と電源線とが共に同一配線モジュールに配置されるロボットにおいて、信号線において自己ノイズを受けにくくすることが可能となる。
【0098】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0099】
複数の関節アクチュエータ10において、配線モジュール81の構成を全て共通としたため、配線ユニット13に関して、部品コストの削減や配線モジュール81の組み付け作業の容易化を実現できる。また、配線モジュール81の組み替え(交換)を行う場合にも、どの軸の関節アクチュエータ10であるかなどを判断しなくてもよく、その組み替え作業が容易となる。配線モジュール81の再利用性の向上も実現できる。
【0100】
具体的には、配線モジュール81の第2配線モジュール81−2では、入力側コネクタ84c−2において各関節アクチュエータ10でモータ駆動電力を分配供給するための全軸共通(全アクチュエータ共通)の分配用端子T1があらかじめ定められるとともに、出力側コネクタ83c−2において次段アクチュエータで分配用端子T1に接続される全軸共通(全アクチュエータ共通)の次段電力用端子T4があらかじめ定められている。加えて、次段用電源線K2が第2配線モジュール81−2の次段電力用端子T4に接続されるとともに、残りのモータ電源線が、1関節アクチュエータ分のモータ電源線の分ずつ信号線K6から離れる側にずらして出力側コネクタ83c−1に接続されることにより、モータ電源線の配列組み替えが行われる構成となっている。
【0101】
上記構成によれば、各関節アクチュエータ10の配線モジュール81(81−1,81−2)は、どの関節アクチュエータ10で用いるものも同様の構成となり、配線モジュール81の共通使用、すなわち全軸の共通化を実現できる。つまり、配線モジュールの汎用化を実現できる。この場合、モータ電源線の配列組み替えのための構成は、配線モジュール81において入力側コネクタ84cと出力側コネクタ83cとの間の回路導線の組み替えにより容易に実現することができ、構成の煩雑化を伴うものでもない。
【0102】
一方で、配線モジュール81−1,81−2において、電源線配列部K1で信号線K6から最も離れた位置にある次段用電源線K2を次段電力用端子T4に接続するとともに、電源線配列部K1の残りの電源線を、上記のとおり1関節アクチュエータ分のモータ電源線の分ずつずらして出力側コネクタ83c−1に接続する構成とした。これにより、後段側の関節アクチュエータであるほど、信号線K6におけるノイズ耐性が低くなることを想定しても、他方でモータ電源線からの離間距離が次第に大きくなることから、モータ電源線からの電源ノイズに対する信頼性の低下を抑制できることとなる。
【0103】
本実施形態の上記構成によれば、複数の関節アクチュエータ10での配線構造の共通化を図り、しかも自己の電源ノイズによる制御系への悪影響を抑制することが可能となる多関節ロボットを実現できる。
【0104】
前段側となる関節アクチュエータ10は、後段側となる関節アクチュエータ10に比べて、要求駆動電力が大きいものとなっており、かかる構成によれば、前段側から後段側にいくにつれ、要求駆動電力が高い電源線ほど、先に電力供給が完了することとなる。この場合、後段側の関節アクチュエータ10では、電源線(実際にモータ駆動電力が流れて導通状態となっている電源線)と信号線との離間距離が次第に大きくなることに加え、電源線を流れている電力自体も小さくなるため、自己ノイズによる悪影響が一層低減されることとなる。
【0105】
配線ユニット13において、互いに重ねて配置された2枚のFPC板82−1,82−2のうち一方のFPC板82−1には電源線配列部K1が設けられ、他方のFPC板82−2には信号線K6が設けられており、さらに、FPC板82−2の入力側コネクタ84c−2に分配用端子T1が設けられ、出力側コネクタ83c−2に次段電力用端子T4が設けられているとともに、FPC板の幅方向の一端側に分配用端子T1と次段電力用端子T4とが配置され、他端側に信号線K6が配置されている。
【0106】
この場合、上記のとおり電源線配列部K1で信号線K6から最も離れた位置にある次段用電源線K2が次段電力用端子T4に接続され、かつ電源線配列部K1の残りの電源線が1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつずらして出力側コネクタ83c−1に接続されていることを併せ考えると、各FPC板が互いに重ねて配置されていても、自己ノイズによる制御系への悪影響を抑制できる。したがって、各関節アクチュエータ10の配線ユニット13において、複数のFPC板を重ねて配置することで当該FPC板の収容性の面で有利な構成としつつも、自己の電源ノイズによる制御系への悪影響を好適に抑制することができる。
【0107】
また、関節アクチュエータ10の構成として、モータハウジング27の外周に周回させてFPC板82が設けられており、ロータ回転時にはFPC板82の捩れが好適に吸収される。また、関節アクチュエータ10の端面部材であるトップカバー12とエンドカバー14とに配線モジュール81の入出力の各回路部83,84がそれぞれ取り付けられているため、それら各回路部83,84がモータモジュール11の径方向(外周方向)に展開されて引き出される構成に比べて、その径方向における張出を極力小さくできる。さらに、モータハウジング27の内外に分けて内側にはモータ駆動部23とブレーキ部24とが設けられ、外側にはFPC板82が周回されて設けられており、こうした二重構造によれば、アクチュエータ全体の小型化が可能となる。
【0108】
またこのとき、関節アクチュエータ10の小型化のために、新規にモータやブレーキ等の小型品を開発、設計することが強いられることもない。
【0109】
多関節ロボット90において、各関節アクチュエータ10のトップカバー12及びエンドカバー14をそれぞれ連結アーム92,93に連結させ、さらに連結アーム92,93に設けたアームコネクタ96〜99により多関節ロボット90(ロボットシステム)における一連の電気経路を構築する構成とした。これにより、複数の関節アクチュエータ10についての機械的な連結と電気的な接続とを連結アーム92,93を介して簡易に実施できる。
【0110】
また、上記構成では、各関節アクチュエータ10が回転する場合に、その回転動作に伴う電気配線の捻れは各配線ユニット13のアクチュエータ電気配線(アクチュエータ内の内装配線)で生じるのみであり、それ以外の配線では生じない。したがって、外部に露出する配線の捻れや絡まりに起因する機械系又は電気系の不具合を回避できる。
【0111】
以上により、関節アクチュエータ間の配線の絡みを防止することで電気配線の設置の好適化を図り、その上でしかも多関節ロボットの小型化を実現することができる。
【0112】
上記のとおり入出力の各回路部83,84による配線取り出しがモジュール軸方向のみになっている構成は、モータモジュール11の外周側を配線ユニット13の回転軸とする本実施形態の関節アクチュエータ10にとって好適な構成であると言える。
【0113】
配線ユニット13に複数(本実施形態では2つ、3つ以上も可)のFPC板82を設けたため、回路配線の系統数の一層の増加が可能となっている。この場合、FPC板82は薄板状でかつ可撓性を有するものであるため、複数のFPC板82を重ねた状態でモータハウジング27の外周に周回させて設けることができ、モータモジュール11の限られた設置領域(モータハウジング27と配線カバー72との間に形成される環状空間部)であっても複数のFPC板82の設置が可能となっている。
【0114】
複数のFPC板82を用いた構成において各FPC板82の巻回数(巻回角度)を各々相違させ、各FPC板82のエンドカバー14側(入力側)の回路部84を分散して設ける構成とした。これにより、関節アクチュエータ10においてエンドカバー14側での径方向の寸法の拡大を抑制できる。
【0115】
また、各FPC板82の巻回数(モータハウジング外周の周回数)が各々異なっている構成では、各FPC板82がロータ21の回転により巻回数を多くする方向に又は巻回数を少なくする方向に捩れる(回転する)場合に、各FPC板82において回転動作に伴う径方向の変位量が各々相違するため、各FPC板82の回転の挙動が各々異なるものとなると考えられる。かかる場合、ロータ21が正逆両方向に回転することで、FPC巻回部において複数のFPC板82が互いに離れたり近づいたりするため、FPC同士の固着等の不都合を抑制できる。
【0116】
エンドカバー14を、モータハウジング27の円筒部分(筒体73が組み付けられる部分)の外径寸法に比べて大径に形成し、そのエンドカバー14には、モータハウジング27よりも大径となる張出部分に開口させて、入力側コネクタ84cを挿通配置するための開口部14aを形成した。これにより、モータハウジング27の外周にFPC板82を周回させて設ける構成において、そのFPC板82の端部に設けられた入力側コネクタ84cを容易に取り付けることができる。
【0117】
モータモジュール11において、ステータ32がロータ21の軸方向の一部に対向して設けられているとともに、ロータ21の軸方向においてステータ32に対向していない部位に対向させて、減速部22(減速機ユニット61)とブレーキ部24(ブレーキ本体41)とが設けられているため、ロータ21を中心にして同軸上にこれらステータ32、減速機ユニット61及びブレーキ本体41をコンパクトに配置できる。したがって、これら各部材が多軸で配置される構成に比べて、アクチュエータ全体の小型化を実現できる。
【0118】
また、ロータ21においてステータ32との対向部分を大径に、それ以外を小径にしているため、モータモジュール11としての回転能力を確保しつつ、径方向における大型化を抑制できるものとなっている。
【0119】
関節アクチュエータ10において、当該アクチュエータ10の構成要素であるモータモジュール11、トップカバー12、配線ユニット13、及びエンドカバー14は、ボルトやネジ等からなる複数の締結具により締結可能であってかつ締結具の締結解除により分離も可能となっている。したがって、関節アクチュエータ10において、モータモジュール11に組み合わせる配線ユニット13を変更する等を容易に実施できる。例えば、FPC板82の設置形態が異なる複数の配線ユニット13(具体的には、FPC板82の枚数や、FPC板82の回路配線数が異なる複数の配線ユニット13)を用意しておき、それら配線ユニット13の交換を実施する構成であってもよい。
【0120】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0121】
・上記実施形態では、配線ユニット13において、2枚のFPC板82−1,82−2を互いに重ねて配置する構成としたが、この構成を変更してもよい。例えば、配線ユニット13において1枚のFPC板を用いる構成や、3枚のFPC板を互いに重ねて配置する構成が可能である。かかる場合にも前記同様、
(イ)電源線配列部K1で信号線K6から最も離れた位置にある次段用電源線K2を次段電力用端子T4に接続すること、
(ロ)電源線配列部K1の残りの電源線を、1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつ信号線K6から離れる側にずらして出力側コネクタ83c−1に接続すること、
により、電源線の配列を組み替えるとよい。
【0122】
1枚のFPC板を用いる場合、その1枚のFPC板に電源線配列部K1と信号線K6とが設けられる構成となるが、やはり上記(イ)(ロ)の構成により、複数の関節アクチュエータ10での配線構造(配線モジュール)の共通化を図り、しかも自己の電源ノイズによる制御系への悪影響を抑制することが可能となる。3枚のFPC板を互いに重ねて配置する場合も同様である。ただし、いずれの場合にも、分配用端子T1は、電源線配列部K1への供給電力が入力される電源入力端子とは異なる入力端子である。
【0123】
・上記実施形態では、第2配線モジュール81−2において分配用端子T1と次段電力用端子T4とを、入力側/出力側の各コネクタの一端側(特にFPC板の幅方向において信号線K6とは反対の端部側)に設ける構成としたが(図9参照)、全アクチュエータで共通の構成であり、かつ分配用端子T1が、電源線配列部への供給電力が入力される電源入力端子とは異なる入力端子になっていれば、分配用端子T1及び次段電力用端子T4の設置位置は任意であり、これを変更してもよい。例えば、入力側/出力側の各コネクタにおいて、信号用端子T3,T6の隣(FPC板の面内方向内側の隣)に設けることも可能である。
【0124】
・上記実施形態では、複数の関節アクチュエータ10について要求駆動電力(モータ出力)が互いに相違するものとし、前段側となる関節アクチュエータ10について、後段側となる関節アクチュエータ10に比べて要求駆動電力が大きいものとしたが、これを変更し、各関節アクチュエータ10の要求駆動電力(モータ出力)が同じであってもよい。
【0125】
・上記実施形態では、モータモジュール11においてモータハウジング27内にモータ駆動部23(モータ)とブレーキ部24とを収容する構成としたが、これらモータ駆動部23やブレーキ部24に加えて、モータハウジング27内に減速機ユニット61を収容する構成としてもよい。
【0126】
・モータモジュール11の減速機として、ハーモニックドライブ構造の減速装置に代えて、遊星歯車式の減速装置を用いることも可能である。
【0127】
・上記実施形態では、配線モジュールの配線部材としてFPC板を用いたが、これを変更してもよい。例えば、同配線部材として、平角導体を並列に配置してなるFFC(フレキシブルフラットケーブル)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0128】
10…関節アクチュエータ、11…モータモジュール、13…配線ユニット、23…モータ駆動部(モータ)、81…配線モジュール、82…FPC板(配線部材)、83…出力回路部、83c…出力側コネクタ、84…入力回路部、84c…入力側コネクタ、90…多関節ロボット、92,93…連結アーム、K1…電源線配列部、K2…次段用電源線、T1…分配用端子、T4…次段電力用端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節部を有し、各関節部には関節アクチュエータが各々設けられており、それら各関節アクチュエータは、通電により回転駆動されるモータを備えるとともに、該モータへの駆動電力の供給を行う電源線とモータ制御用信号を送信する信号線とを有してなる配線モジュールを備え、後段の関節アクチュエータに対して、前段の関節アクチュエータの配線モジュールを経由して電力供給や信号伝達が行われる多関節ロボットであって、
前記配線モジュールは、絶縁被覆された複数の導電線が横並びで設けられ、該複数の導電線が前記電源線及び前記信号線として用いられる帯状の配線部材を備え、前記配線部材には、前記複数の関節アクチュエータに応じた数分の前記電源線が関節アクチュエータごとに横並びで配列される電源線配列部が設けられており、
前記配線部材の入力側には、前記各導電線に対応する複数の入力端子を有し前段の関節アクチュエータの配線モジュールに電気的に接続される入力側コネクタが設けられ、前記入力側コネクタにおいて前記複数の入力端子のうち、前記電源線配列部への供給電力が入力される電源入力端子とは異なる所定の入力端子が、関節アクチュエータごとにモータ駆動電力を分配するための全アクチュエータ共通の分配用端子として定められており、
前記配線部材の出力側には、前記各導電線に対応する複数の出力端子を有し次段の関節アクチュエータの配線モジュールに電気的に接続される出力側コネクタが設けられ、前記出力側コネクタにおいて前記複数の出力端子のうち所定の出力端子が、次段アクチュエータの配線モジュールで前記分配用端子に接続される全アクチュエータ共通の次段電力用端子として定められており、
前記配線モジュールにおいて、前記電源線配列部で前記信号線から最も離れた位置にある1関節アクチュエータ分の電源線を、次段アクチュエータ用の電源線として前記次段電力用端子に接続すること、及び、前記電源線配列部の残りの電源線を、前記1関節アクチュエータ分の電源線の分ずつ前記信号線から離れる側にずらして前記出力側コネクタに接続することにより、前記電源線の配列が組み替えられていることを特徴とする多関節ロボット。
【請求項2】
前記複数の関節アクチュエータの各モータには、要求駆動電力が相違するものが含まれており、前段側となる関節アクチュエータは、後段側となる関節アクチュエータに比べて、前記要求駆動電力が大きいものとなっている請求項1に記載の多関節ロボット。
【請求項3】
前記配線部材として、互いに重ねて配置される第1配線部材と第2配線部材とを有し、そのうち第1配線部材には前記電源線配列部が設けられ、第2配線部材には前記信号線が設けられており、
前記第2配線部材の前記入力側コネクタに前記分配用端子が設けられ、前記出力側コネクタに前記次段電力用端子が設けられているとともに、前記第2配線部材において前記複数の導電線が並ぶ方向である幅方向の一端側に前記分配用端子と前記次段電力用端子とが配置され、他端側に前記信号線が配置されている請求項1又は2に記載の多関節ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−192497(P2012−192497A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58928(P2011−58928)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】