説明

多面付け基板シート、半導体パッケージ基板、及びこれらの製造方法

【課題】複数配置された個々の半導体パッケージ基板を、ダイシングによって加工する際に、半導体パッケージ基板の表面の汚染を抑制可能な多面付け基板シートと半導体パッケージ基板、及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基材と、この基材上に設けられた配線パターンと、前記基材及び配線パターン上に形成されたソルダーレジストと、を有する半導体パッケージ基板を、複数配置した多面付け基板シートであって、前記複数配置した半導体パッケージ基板同士の境界には、前記配線パターンの逃げ部と、この逃げ部において凹部を形成するソルダーレジストと、前記逃げ部内に設けられたダイシング領域と、このダイシング領域内に設けられた前記ソルダーレジストの溝部とを有すること、を特徴とする多面付け基板シートとこれをダイシングすることにより作製される半導体パッケージ基板及びこれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ基板用の多面付け基板シート、この多面付け基板シートから製造される半導体パッケージ基板、及びこれらの製造方法に関するものであり、特には、多面付け基板シート内に複数配置された個々の半導体パッケージ基板を、ダイサーを用いて加工する際に、基板表面を汚染することなく、安定して加工できる多面付け基板シート、半導体パッケージ基板及びこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体パッケージ基板の製造工程では、多面付け基板シート内に格子状に配列された半導体パッケージ基板を、個々の半導体パッケージ基板に分割切断し、個片化している。ダイサーを用いてダイシングブレードにより切断を行うが、個々に分割する半導体パッケージ基板を固定する必要がある。このため、通常は多面付け基板シートの一方の面にダイシングフィルムを貼り、これをダイサーにセットした後、ダイシングブレードを用いて他方の面より切断を行う。この際に、ダイシングフィルムを完全に切断せずに、部分的に残すように切断することにより、切断中に個々の半導体パッケージ基板が分離することなく、安定して切断できるようにしている。
【0003】
このダイシングフィルムとしては、PVC(ポリ塩化ビニル)等の延性の良いフィルムに、粘着剤を塗布した2層構造のフィルムが一般的に使用されている。厚みは、80〜200μm程度のものが用いられる。また、多面付け基板シートにダイシングフィルムを貼る際、フィルムマウンタと呼ばれる装置を使用する。これは、多面付け基板シートをフィルムマウンタ上の所定の平面の設置箇所に固定し、フィルムマウンタ内にセットされたダイシングフィルムの粘着面を、多面付け基板シート側になるようにして引き出し、多面付け基板シートと所定の間隔に平行になるように、ダイシングフィルムを保持した後、専用のラミネートロールにより、ダイシングフィルムの上から多面付け基板シートにフィルムを密着させるようにして貼り付ける。
【0004】
図7に示すように、多面付け基板シート1上に配線パターン5の段差によってソルダーレジスト4の凹部12が生じると、図8に示すように、ダイシングフィルム8をラミネートする際に、この凹部12にはラミネート時のロール圧力が伝わらないため、ダイシングフィルム8が凹部12に追従しなくなり、凹部12に空気溜まり9が生じる。また、この空気溜まり9が生じた箇所が、丁度切断する箇所(ダイシング領域7)と重なる場合は、切断時に発生した多面付け基板シート1の切り屑を混合した切削水が、図8の矢印のように、この空気溜まり9箇所に入り込み、多面付け基板シート1の表面を汚染する。
【0005】
通常、ダイサーの加工においては、ダイサーの機内にて、スピナーと呼ばれる洗浄を実施する。これは、切断後のダイシングフィルムに保持された半導体パッケージ基板を、ダイシングフィルムに固定した側とその反対面側よりスプレー水で洗浄を実施するものである。ただし、前述のダイシングフィルムの空気溜まり箇所に進入した切削水によって汚染された箇所は、ダイシングフィルムによって覆われ、スピナーによる洗浄のスプレー水が当たり難い箇所であるため、汚染した箇所は洗浄できないままとなり、製品となる半導体パッケージ基板に残留する問題がある。
【0006】
また、このような多面付け基板シートを切断する際の切削水による汚染を抑制するためには、切断しダイシングフィルムから半導体パッケージ基板を取り外した後、個々の半導体パッケージ基板をスプレー水の洗浄によって、両面より洗浄する方法が取られている。しかしながら、このようにして半導体パッケージ基板上から汚染を除去する方法は、洗浄工程を新たに追加する必要があることと、その工程追加によってハンドリングが多くなり、歩留まりが低下することが懸念される。以上の理由により、洗浄工程やそのためのハンドリングを追加する必要がないようにするため、ダイシング領域では、多面付け基板シート表面の凹凸に追従するようにダイシングフィルムを貼り付けることができ、空気溜まりが生じにくい構造の多面付け基板シートが必要とされる。
【0007】
空気溜まりを生じないで、基板上に接着フィルムを貼り付ける方法のひとつとして、基板の凹凸を少なくするため、凹みが発生しやすい箇所に予めダミーパターンを追加して凹みの発生を抑える方法(特許文献1)、ダイシングフィルムを保持するのにR面を有した凸形状の弾性体を使用し、貼り付ける面に対して中心部より徐々に貼り付けることにより、空気溜まりを抑制する方法(特許文献2)、ダイシングフィルムの貼り付け面と基板を減圧し、ダイシングフィルムの貼り付け面と逆側の圧力を高くして、これら両者の圧力差を用いて貼り付ける方法(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−340249号公報
【特許文献2】特開2003−124153号公報
【特許文献3】特開平9−129576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法は、凹みの生じる部分がダイシング領域内である場合、このダイシング領域内にダミーパターンを設けることになるので、ダイシングの際は、基板とともにダミーパターンをダイシングする必要があり、ダイシンングブレードへの負荷が増加する問題やダミーパターンのダイシング面やバリが基板端部に露出することにより電気特性等へ悪影響を与える問題がある。特許文献2の方法は、弾性体の変形量が凹みの深さに追従できないと空気溜まりが生じる恐れがあり、かつ設備面においてもダイシングフィルムを保持する真空系ならびに基板を保持する真空系が必要で設備も大掛かりなものが必要である。また弾性体として使用するゴムの劣化によって、変形量の変動が生ずる問題がある。特許文献3の方法は、基板を吸引保持したり、基板とダイシングシートとの密閉空間を構成するための真空系が必要で、やはり設備コストが膨らむ問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、大掛かりな設備を必要とせずに、空気溜まりを生じることなくダイシングフィルムを貼り付けることができ、複数配置された個々の半導体パッケージ基板をダイシングする際に、半導体パッケージ基板の表面の汚染を抑制し、しかも、ダイシングブレードの負荷の増加やバリを抑制可能な多面付け基板シートと半導体パッケージ基板、及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下に関する。
(1) 基材と、この基材上に設けられた配線パターンと、前記基材及び配線パターン上に形成されたソルダーレジストと、を有する半導体パッケージ基板を、複数配置した多面付け基板シートであって、前記複数配置した半導体パッケージ基板同士の境界には、前記配線パターンの逃げ部と、この逃げ部において凹部を形成するソルダーレジストと、前記逃げ部内に設けられたダイシング領域と、このダイシング領域内に設けられた前記ソルダーレジストの溝部とを有すること、
を特徴とする多面付け基板シート。
(2) 上記(1)の多面付け基板シートのダイシング領域を、ダイシングによって個々の半導体パッケージ基板に分割することにより形成される半導体パッケージ基板。
(3) 基材上に複数の半導体パッケージ基板の配線パターンを配置し、前記複数の半導体パッケージ基板同士の境界に前記配線パターンの逃げ部を設けるとともに、この逃げ部内にダイシング領域を設ける工程と、前記配線パターンの逃げ部及びこの逃げ部内のダイシング領域にソルダーレジストを形成し、前記ダイシング領域内のソルダーレジストに溝部を形成する工程と、を有する多面付け基板シートの製造方法。
(4) 上記(3)において、配線パターンの逃げ部及びこの逃げ部内のダイシング領域にソルダーレジストを形成し、前記ダイシング領域内のソルダーレジストに溝部を形成する工程では、この溝部がダイシング領域の幅よりも小さい幅に形成されることを特徴とする多面付け基板シートの製造方法。
(5) 上記(3)または(4)の後に、多面付け基板シートにダイシングフィルムを貼り付ける工程と、前記多面付け基板シートのダイシング領域を、ダイシングによって個々の半導体パッケージ基板に分割する工程を有する半導体パッケージ基板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大掛かりな設備を必要とせずに、空気溜まりを生じることなくダイシングフィルムを貼り付けることができ、複数配置された個々の半導体パッケージ基板をダイシングする際に、半導体パッケージ基板の表面の汚染を抑制し、しかも、ダイシングブレードの負荷の増加やバリを抑制可能な多面付け基板シートと半導体パッケージ基板、及びこれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る多面付け基板シートの平面図である。
【図2】本発明の実施例に係る多面付け基板シートにおける、図1のA−A’断面の逃げ部拡大図である。
【図3】本発明の実施例に係る半導体パッケージ基板の平面図である。
【図4】本発明の実施例に係る半導体パッケージ基板における、図3のB−B’断面のB’側逃げ部の拡大図である。
【図5】本発明の実施例に係る多面付け基板シートにダイシングフィルムを貼った場合における、図2と同様のA−A’断面の逃げ部拡大図である。
【図6】本発明の実施例に係る多面付け基板シート及び半導体パッケージ基板の製造方法を示すフローである。
【図7】従来(比較例)の多面付け基板シートにおける、図2と同様のA−A’断面の逃げ部拡大図である。
【図8】従来(比較例)の半導体パッケージ基板における、ダイシングフィルムを貼った時の図5と同様のA−A’断面の逃げ部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多面付け基板シート1の構造を、図1、図2、図5に示す例を用いて説明する。図1は、ダイシングを行なう前の多面付け基板シート1の平面図を示す。図2は、図1のA−A’断面における配線パターン5の逃げ部10の拡大図を示す。図5は、図2の多面付け基板シート1に、ダイシングフィルム8を貼り付けた状態を示している。
【0015】
本発明の多面付け基板シート1の一例としては、図1、図2、図5に示すように、基材6と、この基材6上に設けられた配線パターン5と、前記基材6及び配線パターン5上に形成されたソルダーレジスト4と、を有する半導体パッケージ基板2を、格子状に複数配置した多面付け基板シート1であって、前記複数配置した半導体パッケージ基板2同士の境界には、前記配線パターン5の逃げ部10と、この逃げ部10において凹部12を形成するソルダーレジスト4と、前記逃げ部10内に設けられたダイシング領域7と、このダイシング領域7内に設けられた前記ソルダーレジスト4の溝部3とを有する多面付け基板シート1が挙げられる。図1には、半導体パッケージ基板2を4個格子状に配置した多面付け基板シート1の例を示すが、半導体パッケージ基板2を配置する数や配置形状には特に制限はなく、ハンドリング、その他の都合によって変更してもよい。なお、半導体パッケージ基板2を格子状に配置すると、ダイシング作業を効率よく行うことができる。
【0016】
本発明に用いる基材6は、絶縁材であって、配線パターン5やソルダーレジスト4を支持する基体となるものである。基材6を構成する材料としては、半導体パッケージ基板2に使用されるものであれば特に限定されず、一般基材(例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイド−トリアジン樹脂、フェノール樹脂等を、ガラスクロスや紙等の補強材に含浸させ、積層した基材)を用いることができる。エポキシ樹脂系の基材6としては、例えば、日立化成工業株式会社製のMCL−E−679FGが挙げられる。また、この基材6には、内層パターンを有した多層板を用いてもよい。
【0017】
配線パターン5は、基材6上に設けられ、一般的な半導体パッケージ基板2に備えられる導体のパターンであり、例えば、電子部品との接続パッド11やこれらの接続パッド11からの引出し線等を有している。これらの配線パターン5は、個々の半導体パッケージ基板2の領域内に設けられ、金属箔15やめっき16等で構成される導体をエッチングすること等の公知の方法によって形成することができる。
【0018】
ソルダーレジスト4は、基材6及び配線パターン5上に形成され、一般的な半導体パッケージ基板2に備えられる材料を使用し、公知の方法で形成することができる。例えば、液状タイプの感光性ソルダーレジストインクを用い、印刷、ロールコート、スプレーコート、カーテンコート等の方法で、基材6及び配線パターン5上に塗布、乾燥した後、フォトリソグラフにより、ソルダーレジスト4のパターンを形成することができる。液状タイプとして、例えば、PFR−800AUS402(太陽インキ製造株式会社製、商品名)等が挙げられる。また、ドライフィルムタイプの感光性ソルダーレジストを用い、基材6及び配線パターン5上に、ラミネート装置等により貼り合せた後、フォトリソグラフにより、ソルダーレジスト4のパターンを形成することができる。ドライフィルムタイプとして、例えば、SR−3000(日立化成工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0019】
本発明の多面付け基板シート1は、ダイシング可能なサイズとしたものであり、必要な場合は、予めワークシートからルーターやシアカッター等で切り出すことにより形成できる。この多面付け基板シート1内には、複数の半導体パッケージ基板2が、ダイシングで用いるブレードの刃厚分(ダイシング領域7の幅)の間隔を空けて配置されている。この多面付け基板シート1内に配置した各半導体パッケージ基板2の間には、ダイシングフィルム8を貼り付ける際に、多面付け基板シート1のソルダーレジスト4の凹部12に溜まる空気を逃がすための通路が、ソルダーレジスト4に設けられる溝部3によって形成される。この溝部3は、多面付け基板シート1内に配した個々の半導体パッケージ基板2の外周部に形成される。
【0020】
配線パターン5の逃げ部10は、複数の半導体パッケージ基板2同士の境界近傍に設けられる配線パターン5を有しない領域であり、ダイシング領域7を含むように、配線パターン5を有する個々の半導体パッケージ基板2の外周に設けられる。このように配線パターン5の逃げ部10を設けることによって、ダイシングの際に、配線パターン5を加工することがないので、ダイシングブレードの加工負荷が軽減され、ダイシングのコストや作業性を改善することができる。
【0021】
この配線パターン5の逃げ部10においては、ソルダーレジスト4が、傾斜部14を備える凹部12を形成する。凹部12とは、ソルダーレジスト4の表面が、配線パターン5上のソルダーレジスト4表面に比べて凹んだ領域をいう。ソルダーレジスト4を塗布した段階では、配線パターン5及び逃げ部10を含めた全体に亘って、塗布表面はほぼ平坦となるが、ソルダーレジスト4の硬化に伴って、塗布されたソルダーレジスト4中の固形分のみが残留するため、ソルダーレジスト4の表面に凹凸が生じる。つまり、逃げ部10においては、硬化後のソルダーレジスト4の厚みは、塗布したソルダーレジスト4に含まれる固形分の厚みまで減少するため、表面が比較的大きく凹む。一方、配線パターン5上においては、硬化後のソルダーレジスト4の厚みは同様に減少するものの、その下の配線パターン5の厚みは減少しないので、表面の凹みは比較的小さい。このようにして、図2に示すように、配線パターン5の逃げ部においては、ソルダーレジスト4の表面に凹みが発生し、ソルダーレジスト4の凹部12が形成される。
【0022】
配線パターン5の逃げ部10内には、ダイシング領域7が設けられる。ダイシング領域7とは、ダイシングにより、多面付け基板シート1が削られて除去される部分であり、このため、ダイシング領域7の幅は、ほぼダイシングブレードの幅に相当する。このダイシング領域7の幅は、配線パターン5に重ならないように、配線パターン5の逃げ部10の幅よりも狭く設定される。これにより、配線パターン5をダイシングすることがないため、ダイシングブレードの負荷が軽減され、加工コストを低減できる。
【0023】
ソルダーレジスト4には、溝部3が設けられる。ここで、溝部3とは、ソルダーレジスト4表面に細長く掘られた部分をいう。ところで、図5に示すように、配線パターン5の逃げ部10では、配線パターン5表面と基材6表面の段差の影響により、その上に塗布されたソルダーレジスト4表面に凹みが生じ、凹部12が形成されている。このように凹部12を有するソルダージレスト4表面にダイシングフィルム8を貼り合わせた場合、従来は、図8のように、ソルダーレジスト4の凹部12においては、ダイシングフィルム8が追従できない。そのため、溝部3を形成しない状態では、ダイシングフィルム8を貼り付ける際に、ラミネートロールによりダイシングフィルム8とソルダーレジスト4表面との間に押し出されてきた空気が、凹部12に留まる。この結果、ダイシングフイルム8とソルダーレジスト4との間に空気溜まり9が発生し、ダイシングフィルム8とソルダーレジスト4とが密着していない領域が生じていた。これに対して、本発明では、ソルダーレジスト4に溝部3を設けることにより、ダイシングフィルム8を貼る際に、ダイシングフィルム8とソルダーレジスト4との間に挟まれた空気を、溝部3を通して逃がすことができるようになる。つまり、ソルダーレジスト4の溝部3によって、空気の逃げ道が形成されることにより、押し出されてきた空気が凹部12に溜まろうとするが、最終的に溝部3を通して空気が逃げて空気溜まり9が生じなくなり、ダイシングフィルム8とソルダーレジスト4の追従密着性が向上する。このため、ダイシングフィルム8とソルダーレジスト4との密着が確保され、ダイシングの際にも、切削水が、ダイシングフィルム8とソルダーレジスト4との間に浸入することがないので、ソルダーレジスト4表面が切削水によって、汚染されるのを防ぐことが可能になる。
【0024】
ダイシングフィルム8には、感圧型(non―UVタイプ)及びUV硬化型とも使用できる。またダイシングフィルム8の厚みは、80〜200μmが一般的である。
【0025】
ソルダーレジスト4の溝部3は、ダイシング領域7内に設けられる。つまり、ダイシング領域7の幅は、ソルダーレジスト4の溝部3の幅を含むように、溝部3よりも広く設定される。これにより、ダイシングフィルム8とソルダーレジスト4が密着した部分のみをダイシングすることができる。このため、ダイシング時の切削水が、ダイシング領域7よりも外側のソルダーレジスト4表面に付着、残留するのを抑制することができ、切削水による半導体パッケージ基板2の汚染を防ぐことができる。
【0026】
ソルダーレジスト4の溝部3は、ダイシングフィルム8を貼り付ける面にのみ形成すればよい。また、ソルダーレジスト4の形成と同時に形成を行うことができる。これは、例えば、感光性のソルダーレジスト4を用い、溝部3を形成する部分を、現像により除去することによって形成することができる。また、例えば、ルータや回転刃等の切削装置を用いて、ソルダーレジスト4表面から深さ方向に切削加工したり、型を用いて成形加工することによって形成してもよい。また、溝部3は、基材6まで達していてもよく、基材6を貫通した開口を破線状に繋げて形成してもよい。
【0027】
本発明の半導体パッケージ基板2の構造を、図3、図4に示す例を用いて説明する。図3は、本発明の実施例に係る半導体パッケージ基板2の平面図を示す。図4は、本発明の実施例に係る半導体パッケージ基板2における、図3のB−B’断面におけるB’側の逃げ部10の拡大図を示す。
【0028】
本発明の半導体パッケージ基板2は、上記で作製した多面付け基板シート1を、ダイシングによって個々の半導体パッケージ基板2に分割することにより形成される。ダイシングによる分割は、多面付け基板シート1のダイシング領域7に沿って行なう。この本発明の半導体パッケージ基板2の一例としては、図3、図4に示すように、基材6と、この基材6上に設けられた配線パターン5と、前記基材6上及び配線パターン5上に形成されたソルダーレジスト4と、を有する半導体パッケージ基板2であって、この半導体パッケージ基板2の外周の端面13近傍に、前記配線パターン5の逃げ部10を有し、この逃げ部10がソルダーレジスト4に覆われ、前記ソルダーレジスト4が前記配線パターン5の逃げ部10において、傾斜部14を有するものが挙げられる。
【0029】
ソルダーレジスト4の傾斜部14は、半導体パッケージ基板2の外周の端面13近傍に設けられた配線パターン5の逃げ部10に形成される。このように外周の端面13近傍のソルダーレジスト4の表面に傾斜部14が形成されることにより、半導体パッケージ基板2を製造するため、複数の半導体パッケージ基板2を配置した多面付け基板シート1を構成した場合、個々の半導体パッケージ基板2同士の境界には、ソルダーレジスト4の凹部12が形成される。即ち、個々の半導体パッケージ基板2の外周には、ソルダーレジスト4の凹部12が格子状に連続して形成される。この結果、多面付け基板シート1上にダイシングフイルム8を貼り付ける際に、半導体パッケージ基板2の端面13近傍以外では、ラミネートロールによりダイシングフィルム8とソルダーレジスト4表面との間の空気は残留せずに押し出され、この押し出された空気は、半導体パッケージ基板2の外周の端面13近傍のソルダーレジスト4の凹部12に留まることになる。また、このソルダーレジスト4の凹部12に溜まった空気も、例えば、凹部12に溝部3を設けることにより、溝部3内を通じて逃がすことが可能である。このため、溝部3以外のソルダーレジスト4表面とダイシングフィルム8との密着が確保されるので、溝部3がダイシング領域7よりも狭い幅であれば、配線パターン5の逃げ部10に形成されるソルダーレジスト4の傾斜部14でも、ダイシングフィルム8との密着が確保されることになり、ダイシングの際に切削水等で汚染されることがない。
【0030】
傾斜部14を設ける方法の一例としては、半導体パッケージ基板2の外周の端面13近傍に配線パターン5の逃げ部10を設け、配線パターン5上から逃げ部10上までを覆うようにソルダーレジスト4を設ける方法が挙げられる。この方法によれば、ソルダーレジスト4を塗布した段階では、配線パターン5及び逃げ部10を含めた全体に亘って、塗布表面はほぼ平坦となるが、ソルダーレジスト4の硬化に伴って、塗布されたソルダーレジスト4中の固形分のみが残留するため、ソルダーレジスト4の表面に傾斜が生じる。つまり、逃げ部10においては、硬化後のソルダーレジスト4の厚みは、塗布したソルダーレジスト4に含まれる固形分の厚みまで減少するため、表面が比較的大きく凹む。一方、配線パターン5上においては、硬化後のソルダーレジスト4の厚みは同様に減少するものの、その下の配線パターン5の厚みは減少しないので、表面の凹みは比較的小さい。このことにより、配線パターン5上のソルダーレジスト4の表面に比べて、逃げ部10上のソルダーレジスト4の表面がより凹むようになるため、配線パターン5上から逃げ部10上にかけて、傾斜部14が形成される。
【0031】
本発明の多面付け基板シート1及び半導体パッケージ基板2の製造方法について、図6により説明する。図6は、本発明の実施例に係る多面付け基板シート1及び半導体パッケージ基板2の製造方法を示すフローである。
【0032】
本発明の多面付け基板シート1及び半導体パッケージ基板2の製造方法の一例としては、基材6上に複数の半導体パッケージ基板2の配線パターン5を格子状に配置し、前記複数の半導体パッケージ基板2同士の境界に前記配線パターン5の逃げ部10を設けるとともに、この逃げ部10内にダイシング領域7を設ける工程と、前記配線パターン5の逃げ部10及びこの逃げ部10内のダイシング領域7にソルダーレジスト4を形成し、前記ダイシング領域7内のソルダーレジスト4に溝部3を形成する工程と、を有するものが挙げられる。
【0033】
より詳細に例示すると、まず、図6(A)に示すように、基材6上に金属箔15を有する積層板を準備する。この積層板には、必要な層間接続や内層配線パターンを有する多層板を用いてもよい。金属箔15には、一般の半導体パッケージ基板2に用いられる銅箔等やめっき等を用いることができる。
【0034】
次に、図6(B)に示すように、金属箔15上の配線パターン5となる部分をめっき16で厚付けした後、金属箔15をエッチング等で除去することにより回路加工を行なう。このとき、基材6上に、複数の半導体パッケージ基板2の配線パターン5が格子状に配置されて形成され、これら複数の半導体パッケージ基板2同士の境界に、配線パターン5の逃げ部10が形成される。この配線パターン5の逃げ部10は、後に個々の半導体パッケージ基板2へと分割するためのダイシング領域7を含むように形成される。つまり、配線パターン5の逃げ部10内に、ダイシング領域7が設けられる。
【0035】
次に、図6(C)に示すように、基材6上及び配線パターン5上にソルダーレジスト4を形成する。ソルダーレジスト4は、配線パターン5の逃げ部10及びこの逃げ部10内のダイシング領域7の両者にも形成する。このとき、図6(D)に示すように、ダイシング領域7内のソルダーレジスト4に溝部3を形成する。この溝部3の形成は、例えば、感光性のソルダーレジスト4を用い、溝部3を形成する部分を、現像により除去することによって形成することができる。また、例えば、ルータや回転刃等の切削装置を用いて、ソルダーレジスト4表面から深さ方向に切削加工したり、型を用いて成形加工することによって形成してもよい。また、溝部3は、基材6に達するように形成してもよく、また基材6を貫通した開口をミシン目のように破線状に繋げてもよい。なお、この溝部3は、ダイシング領域7の幅よりも小さい幅に形成される。
【0036】
次に、図5に示すように、上記で作製した多面付け基板シート1の溝部3を形成したソルダーレジスト4を有する面に、ダイシングフィルム8を貼り付ける。このダイシングフィルム8としては、一般に使用される、PVC(ポリ塩化ビニル)等の延性の良いフィルムに、粘着剤を塗布した2層構造のフィルムを使用することができる。感圧型(non―UVタイプ)及びUV硬化型の何れも使用できる。厚みは、80〜200μm程度のものが一般的に用いられる。また、多面付け基板シート1にダイシングフィルム8を貼る際、フィルムマウンタと呼ばれる装置を使用することができる。この場合、多面付け基板シート1をフィルムマウンタ上の所定の平面の設置箇所に固定し、フィルムマウンタ内にセットされたダイシングフィルム8の粘着面を、多面付け基板シート1側になるようにして引き出し、多面付け基板シート1と所定の間隔に平行になるように、ダイシングフィルム8を保持した後、専用のラミネートロールにより、ダイシングフィルム8の上から多面付け基板シート1にダイシングフィルム8を密着させるようにして貼り付けを行なうことができる。
【0037】
次に、多面付け基板シート1のダイシング領域7をダイシングすることによって、個々の半導体パッケージ基板2に分割し、図4に示すような半導体パッケージ基板2を作製する。ダイシングは、ダイサーにセットし、ダイシングブレードを用いて、ダイシングフィルム8を貼り付けた面の反対側から行なう。ダイシングフィルム8を完全に切断せずに、部分的に残すように切断することにより、切断中に個々の半導体パッケージ基板2が分離することなく、安定して切断することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって制限されない。
【0039】
まず、エポキシ樹脂の基材6上に、金属箔15として銅箔を備えたMCL−E−679FG(日立化成工業株式会社製、商品名)を準備した(図6(A))。
【0040】
次に、銅箔上に、感光性ドライフィルムレジストのNIT−225(ニチゴーモートン社製、商品名)をラミネートし、これにフォトマスクを使用して露光、現像を行い、配線パターン5を形成する部分のレジストを除去して、めっきレジストを形成した。次に、めっきレジストから銅箔の露出した部分に電解銅めっき16を施し、配線パターン5となる部分にめっき16を形成した。次に、めっきレジストをレジスト剥離液を用いて除去し、その後、硫酸−過酸化水素系のエッチング液を用いて、全面をエッチングし、電解銅めっき16を行なっていない銅箔だけの部分が、先にエッチング除去されることを利用して配線パターン5を形成した((図6(B))。これにより、基材6上に、複数の半導体パッケージ基板2の配線パターン5を格子状に配置して形成し、これらの複数の半導体パッケージ基板2同士の境界に、配線パターン5の逃げ部10を形成した。この配線パターン5の逃げ部10は、後に個々の半導体パッケージ基板2へと分割するためのダイシング領域7を含むように形成した。つまり、配線パターン5の逃げ部10内に、ダイシング領域7を設けた。
【0041】
次に、配線パターン5を形成した基材6の上に、ソルダーレジスト4の形成を行った。まず、ソルダーレジスト4と配線パターン5との密着性を上げるため、配線パターン5表面の粗化を行った。粗化には、CZ−8101(メック株式会社製、商品名)を用いた。次に、液状の感光性ソルダーレジストであるPSR−4000 AUS703(太陽インキ製造株式会社製、商品名)を、ロールコーターで塗布、仮乾燥した後、フォトマスクを用いて露光、現像を行って、溝部3を含む所定のソルダーレジスト4のパターンを形成した((図6(C)、(D))。その後、熱及びUVを用いてソルダーレジスト4の硬化を行った。これにより、配線パターン5の逃げ部10では、ソルダーレジスト4表面に凹みが生じ、凹部12が形成した。
【0042】
上記により作製した多面付け基板シート1は、図1、図2及び図3に示すように、基材6と、この基材6上に設けられた配線パターン5と、前記基材6及び配線パターン5上に形成されたソルダーレジスト4と、を有する複数の半導体パッケージ基板2が、格子状に配置され、前記複数の半導体パッケージ基板2同士の境界には、前記配線パターン5の逃げ部10と、この逃げ部10において凹部12を形成するソルダーレジスト4と、前記逃げ部10内に設けられたダイシング領域7と、このダイシング領域7内に設けられた前記ソルダーレジスト4の溝部3とを有するものである。つまり、基材6上に形成した配線パターン5と、基材6と配線パターン5とを覆うように形成したソルダーレジスト4を備え、ダイシング領域7内のソルダーレジスト4に溝部3を有する。配線パターン5の逃げ部10の幅は0.4mm、ダイシング領域7の幅は0.2mm、形成した溝部3の幅は0.1mmとした。
【0043】
次に、多面付け基板シート1を、フィルムマウンタの所定の位置にセットし、ダイサーフレームと共に、ダイシングフィルム8のラミネートを行った。このとき、図5に示すように、ダイシングフィルム8は、溝部3を除いてソルダーレジスト4上に密着しており、空気溜まり9は観察されなかった(図5)。
【0044】
次に、多面付け基板シート1にダイシングフィルム8を貼った状態で、ダイサー用のマガジンにセットし、このマガジンをダイサー内の所定の位置にセットし、ダイサーにより加工を実施した。ダイサーブレードには、刃厚0.2mmのものを用い、ダイサーの切断条件としては、回転速度30krpm、送り速度50mm/秒、切り込み深さ100μmにて実施した。
【0045】
25枚の多面付け基板シート1について、ダイシングを実施した後、半導体パッケージ基板2をダイシングフィルム8から剥がしてトレイに移載し、ダイシングフィルム8を貼り付けた面側のダイシング領域7付近の状況を、実体顕微鏡で観察した。その結果、ソルダーレジスト4の凹部12を含む表面に、ダイシングフィルム8が追従できずに発生した空気溜まり9に伴う、切削水等の染み込みの不具合は見当たらなかった。
【0046】
上記により作製した半導体パッケージ基板2は、基材6と、この基材6上に設けられた配線パターン5と、基材6上及び配線パターン5上に形成されたソルダーレジスト4とを有し、この半導体パッケージ基板2の外周の端面13近傍に、配線パターン5の逃げ部10を有し、この逃げ部10がソルダーレジスト4に覆われ、ソルダーレジスト4が配線パターン5の逃げ部10において、傾斜部14を有するものであった(図4)。
【0047】
(比較例)
配線パターン5を形成した基材6の上に、ソルダーレジスト4の形成を行う際に、液状の感光性ソルダーレジストであるPSR−4000 AUS703(太陽インキ製造株式会社製、商品名)を、ロールコーターで塗布、仮乾燥した後、フォトマスクを用いて露光、現像を行って、溝部3を有しないソルダーレジスト4を形成した(図7)。これ以外は、実施例と同様にして、多面付け基板シート1及び半導体パッケージ基板2を作製した。
【0048】
実施例と同様に、フィルムマウンタを用いて、多面付け基板シート1をダイサーフレームと共にダイシングフィルム8にラミネートをした。このとき、格子状に面付けした複数の半導体パッケージ基板2同士の境界には、配線パターン5の逃げ部10においてソルダーレジスト4の凹部12が形成されており、この凹部12には空気溜まり9が生じていた(図8)。
【0049】
その後、多面付け基板シート1をダイサーフレームと共にダイサー用マガジンにセットして、実施例と同一条件にて切断加工を実施した。25枚の多面付け基板シート1を加工後、ダイシングフィルム8を貼り付けた面側のダイシング領域7近傍を実体顕微鏡にて観察したところ、ほぼ全数にダイシングフィルム8がソルダーレジスト4面から浮いたことによる切削水の汚染物が確認された。
【符号の説明】
【0050】
1…多面付け基板シート、2…半導体パッケージ基板、3…溝部、4…ソルダーレジスト、5…配線パターン、6…基材、7…ダイシング領域、8…ダイシングフィルム、9…空気溜まり、10…逃げ部、11…接続パッド、12…凹部、13…端面、14…傾斜部、15…金属箔、16…めっき

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、この基材上に設けられた配線パターンと、前記基材及び配線パターン上に形成されたソルダーレジストと、を有する半導体パッケージ基板を、複数配置した多面付け基板シートであって、
前記複数配置した半導体パッケージ基板同士の境界には、前記配線パターンの逃げ部と、この逃げ部において凹部を形成するソルダーレジストと、前記逃げ部内に設けられたダイシング領域と、このダイシング領域内に設けられた前記ソルダーレジストの溝部とを有すること、
を特徴とする多面付け基板シート。
【請求項2】
請求項1の多面付け基板シートのダイシング領域を、ダイシングによって個々の半導体パッケージ基板に分割することにより形成される半導体パッケージ基板。
【請求項3】
基材上に複数の半導体パッケージ基板の配線パターンを配置し、前記複数の半導体パッケージ基板同士の境界に前記配線パターンの逃げ部を設けるとともに、この逃げ部内にダイシング領域を設ける工程と、
前記配線パターンの逃げ部及びこの逃げ部内のダイシング領域にソルダーレジストを形成し、前記ダイシング領域内のソルダーレジストに溝部を形成する工程と、
を有する多面付け基板シートの製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
配線パターンの逃げ部及びこの逃げ部内のダイシング領域にソルダーレジストを形成し、前記ダイシング領域内のソルダーレジストに溝部を形成する工程では、この溝部がダイシング領域の幅よりも小さい幅に形成されることを特徴とする多面付け基板シートの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4の後に、多面付け基板シートにダイシングフィルムを貼り付ける工程と、
前記多面付け基板シートのダイシング領域を、ダイシングによって個々の半導体パッケージ基板に分割する工程を有する半導体パッケージ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−176007(P2011−176007A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37227(P2010−37227)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】