説明

多面体の整列方法、多面体保持ユニット、及び梱包構造

【課題】量産された微小光学部品の多面体を方向性良く整列保持して、次工程、或いはアッセンブリメーカに提供する。
【解決手段】 ベースシート31の片面に接着した粘着シート上に同一形状の複数の多面体を棒状に連結した連結棒状体20を、所定の間隔で平行に接着する接着工程と、各連結棒状体間に位置する粘着シートを各連結棒状体と平行な第1の切断線L1に沿って完全切断し、かつベースシートをハーフカットして積層シートを未分離の状態とする第1の切断工程と、前記第1の切断線と交差し、多面体個片の境界に沿った各第2の切断線に沿って各連結棒状体を完全切断し、かつ粘着シートをハーフカットする第2の切断工程と、切断済みの多面体を接着保持した粘着シートをベースシートから剥離して多面体個片を所定の間隔で粘着シート上に一列に接着保持した多面体保持ユニットを形成する工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量産された微小光学部品等の多面体を方向性よく整列保持して次工程、或いはアッセンブリメーカーに提供することを可能とした多面体の整列方法、及び多面体保持ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ、その他の光学装置に使用される光学デバイスとしてのビームスプリッタやプリズム等の多面体は、小型化の要請によって数mm角の微小寸法に構成されているが、歩留まりを考慮しつつ量産性よく製造するために従来から種々の製造方法が提案されている。
例えば、図5(a)に示した如き立方体状のビームスプリッタ1は、2つの三角柱状のガラスプリズム2、3をビームスプリッタ膜(偏光分離膜)4を介して接合することにより立方体に構成したものであり、その製造に当たっては従来はまず図5(b)に示したごとき断面形状が直角三角形状の三角柱のガラスブロック10の傾斜面A、両端面B、Cを予め鏡面加工した後で、傾斜面Aにビームスプリッタ膜4を形成し、更に他の面には反射防止膜(AR膜)を形成する。このようなガラスブロック10を2個用意し、傾斜面A同士を接着剤にて接合することにより(c)に示した直方体状のガラスブロック11を得る。このガラスブロック11を(d)に示すように長手方向に沿って所定のピッチで切断、分割することにより、立方体状のビームスプリッタを得る。
しかし、この製造方法は、工数が極めて多く煩雑であり、生産性が悪いという欠点を有しているばかりでなく、切断された後のビームスプリッタを次工程、或いはアッセンブリメーカーに提供するために、図6に示した如きトレイ15上の収納個所16に個々のビームスプリッタ1を一個一個手作業にて収納する必要が生じる。この際、次の組立作業での便宜を図るために、ビームスプリッタの入射面と出射面をトレイ上での収納方向から確実に判別できるように、トレイ上への収納作業を実施する必要がある。即ち、分割されたビームスプリッタ個片をトレイに収納する際には、全ての個片の同一面が同一方向を向いた状態でセットされるように収納する必要がある。
しかし、このようなケースへの収納作業は、微小なビームスプリッタの方向性を目視確認する作業と、確認後にピンセットにて保持して収納個所16に同一面を同一方向に向けて収納する作業を必要とするため、全体として煩雑で効率の悪い作業となっていた。
【0003】
次に、特開2000−296894公報には、ケースに設けた光学デバイスの収容部底面に両面接着テープを差し渡しておき、このテープ上に光学デバイスを所定のピッチにて接着保持することによって、輸送時に光学デバイスが遊動することによる不具合を解消するようにした光学デバイス梱包用のケースが開示されている。しかし、この公報記載のケースにあっても、光学デバイス個片を所定の方向性にて一個ずつ収容部にセットする為の煩雑な作業が必要であり、同公報にはこの点を改善するための対策は開示されていない。
また、特開2000−143264公報には、予め片面に偏光分離膜を形成した複数の矩形ガラス板を所定方向に位置をずらしつつ重ねて接着してから所定の切断ラインに沿って切断分割し、切断された積層体同志を重ねて接合してから接合面と直交する方向に沿って複数に切断するといった工程を経ることによって、目的とする直方体状のビームスプリッタを複数個棒状に連結した連結体を得、最後に個片に分割する手順が開示されている。
しかし、この公報に記載された製造方法にあっても、ビームスプリッタを複数個棒状に連結した連結体を個片に分割した後で個片ごとに方向性を目視確認して、同一面を同一方向に向けた状態でトレイに手作業にて収納する必要がある。
このように、微小な多面体としての光学部品を所定の方向性を維持しつつトレイに収納する作業は旧来から行われてきているが、その作業性を改善するための対策はなされていないのが実情であった。
【特許文献1】特開2000−296894公報
【特許文献2】特開2000−143264公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、立方体、直方体、三角柱、その他の多面体から成る光学部品を複数個直列に接続した構造の一本の棒状連結体を形成してから、この棒状連結体を個片に分割することによって光学部品を完成する工程を経る光学部品の製造方法において、分割される前の棒状連結体を所定の手順にて粘着シートに貼り付けてから、所定の手順にて切断作業を実施することにより、粘着シート上に方向性を揃えた状態で複数の多面体を整列させることができる多面体の整列方法、及び多面体保持ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、複数の多面体を方向性を揃えて粘着シート上に接着することにより多面体を整列させる整列方法であって、ベースシートの片面に粘着シートを接着して成る積層シートの粘着シートの粘着面上に、同一形状の複数の多面体を棒状に連結した連結棒状体を、所定の間隔を隔てて平行に且つ方向性を同一に揃えて接着する接着工程と、各連結棒状体間に位置する粘着シートを各連結棒状体と平行な第1の切断線に沿って完全切断すると共に、ベースシートをハーフカットすることにより積層シートを未分離の状態とする第1の切断工程と、前記第1の切断線と交差すると共に多面体個片の境界に沿った各第2の切断線に沿って各連結棒状体を完全切断すると共に粘着シートをハーフカットする第2の切断工程と、前記切断済みの多面体を接着保持した粘着シートを前記ベースシートから剥離して多面体個片を所定の間隔を隔てて粘着シート上に一列に接着保持した多面体保持ユニットを形成する工程と、から成ることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記多面体は、ガラス製の光学部品であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1、又は2において、前記粘着シートに接着する光学部品の一面は、非光学面であることを特徴とする。
請求項4の発明に係る多面体保持ユニットは、請求項1、2又は3に記載の多面体の整列方法によって形成されたことを特徴とする。
請求項5の発明に係る梱包構造は、請求項4に記載の多面体保持ユニットの少なくとも粘着シートの対面側にクッション板を載置し、前記多面体保持ユニットとクッション材を板状の補強部材により挟持した状態で帯封して梱包することを特徴とする。
請求項6の発明に係る梱包構造は、請求項4に記載の多面体保持ユニットの少なくとも粘着シートの対面側にクッション板を載置し、前記多面体保持ユニットとクッション材を板状の補強部材により挟持したものを複数積層した状態で帯封して梱包することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ベースシート上に粘着シートを積層した積層シートを用いて、複数の連結棒状体を所定の間隔を隔てて平行に接着保持してから、第1の切断線に沿ってベースシートの厚さの途中にまで達する切り込みを形成し、更に第2の切断線と交差する第2の切断線に沿って連結棒状体と積層シートを分断することによって、多面体の個片を所定の間隔を隔てて粘着シート上に一列に配列した多面体保持ユニットを得るようにしたので、連結棒状体を粘着シート上に接着した時点で各多面体個片の方向性が一義的に確定しており、多面体保持ユニットが完成した段階において多面体個片の方向性がずれたり変動することがない。従って、多面体保持ユニットにおいて粘着シート上に接着保持された多面体の方向性を容易に知ることができ、多面体を実機に搭載する際にその方向性を誤ることがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)は、特開2000−143264公報に記載された手順によってビームスプリッタ1を製造する過程で形成されるビームスプリッタの棒状連結体20を示し、(b)はこの棒状連結体20を接合面20aにて分割することによって得たビームスプリッタ個片1を示している。この棒状連結体20は、ビームスプリッタ1の入射面、出射面を同一方向へ向けた状態で直列に接合した構成を備えており、個片間の接合手段21としては加熱によって溶解するパラフィンを用いてもよいし、通常の接着剤であってもよい。
図2は本発明の一実施形態にかかる多面体の整列方法を説明するための工程図である。
本発明は、積層シート30を用いて、少なくとも一つの面が方向性を有している複数の多面体(この例ではビームスプリッタ)を所定の方向性を以て粘着保持することにより多面体を整列させる方法に関するものである。ここで方向性を有している面とは、入射面、出射面の如く6面のうち光の入出射面として使用される面を指称する。
積層シート30は、円形で大面積のベースシート31と、ベースシート31の少なくとも中央部に設けた接着層によって着脱可能に保持された小面積の粘着シート32とから構成されている。ベースシート31は例えば所定の厚みを有した樹脂シートと、その中央部に設けた接着層から構成する。粘着シート32は例えば表面側に粘着面を備えた矩形シートとし、ベースシート31中央部の接着層に剥離可能な接着力によって接着されて固定される。
本発明の多面体の整列方法では、ベースシート31の片面に接着した粘着シート32の粘着面上に、同一形状の多面体としてのビームスプリッタ1を同数棒状に連結した連結棒状体20を、所定の間隔を隔てて平行に且つ方向性を同一に揃えて接着する接着工程を実施する。この際、連結棒状体20を構成する各ビームスプリッタの入射面、或いは出射面以外の面(以下、非光学面、という)を粘着シート32上に接着すると共に、入射面、及び出射面が特定の方向を向くように連結棒状体の方向性を定める。
次いで、各連結棒状体20間に位置する粘着シート32を、図示しないカッタを用いて各連結棒状体と平行な第1の切断線L1に沿って完全切断すると共に、ベースシート31をハーフカットすることにより、積層シート30を未分離の状態とする第1の切断工程を実施する。即ち、各連結棒状体20間に位置する粘着シート32の中央部に沿ってベースシート31の肉厚の中間部まで達する切り込みを形成する。この状態では、ベースシート31は完全には分断されておらず、各第1の切断線L1による未切断部分を介して連結された状態にある。
次いで、第1の切断線L2と交差(直交)すると共に多面体個片の境界21に沿った各第2の切断線L2に沿って各連結棒状体20を完全切断すると共に、粘着シート32をハーフカットする第2の切断工程を実施する((a)(b))。この結果、連結棒状体20は、各第2の切断線L2に沿って完全に分断される。次いで、切断済みのビームスプリッタ個片1を接着保持したテープ状の粘着シート(粘着テープ)32aをベースシート31から剥離してビームスプリッタ個片を所定の間隔を隔てて粘着テープ32a上に一列に接着保持した多面体保持ユニット35を形成する工程を実施する((c))。
【0008】
この多面体保持ユニット35は、粘着テープ32a上に各ビームスプリッタ1の特定の一面(非光学面、図1の下面)を接着した構成を備えており、図3に示すように粘着テープ32aにビームスプリッタを貼り付けた状態で、上面と両側面の三個所を検査することにより、接着方向性が正しいか否かを確認する。粘着テープ32a上におけるビームスプリッタの接着方向が正しいことが確認された場合には次工程への移送、或いは梱包による出荷が可能な状態となる。
従来のように数mm角のビームスプリッタを一個ずつ目視検査した上で、ピンセットを用いてトレイに収納する作業が不要となるため、作業性が向上する。
また、このビームスプリッタを実機に組み込む場合には、粘着テープ32aにより接着された状態のビームスプリッタ(多面体保持ユニット35)を用い、粘着テープ32aによる接着面を手掛かりとして何れの面が光学面(入射面、出射面)であるかを容易に判別できるので、組み込み作業に際してその方向性を見誤ることがなくなる。
なお、本発明の整列方法は、特開2000−143264公報記載の工法によって製造される連結棒状体に限らず、図5(b)(c)に示した如く三角柱状のガラスの傾斜面同志を貼り合わせた直方体ガラス(連結棒状体)に対しても適用することができる。即ち、図5(c)に示した連結棒状体を図2(a)のように複数本平行に所定の間隔を隔てて粘着シート32上に接着保持した状態で、第1及び第2の切断工程を実施することにより、多面体保持ユニット35を形成することができる。
また、本発明の整列方法を適用する多面体としては、ビームスプリッタのみならず、あらゆる多面体形状の光学部品(プリズム、ミラー、TAPフィルタ等)を対象とすることができる。
【0009】
次に、図4(a)は本発明の多面体保持ユニット35の梱包方法の一例を示す縦断面図であり、下側の台紙40a上に多面体保持ユニット35の粘着テープ32aの下面を載置すると共に、粘着テープ上の各多面体1の上面に対してはスポンジ、発泡材、ゴム等から成るクッション板41を介して上側の台紙40bを添設し、上下の台紙(補強部材)によって多面体保持ユニット35を挟圧保持した状態で図示しない輪ゴムやビニルテープ等により帯封する。更に必要に応じて段ボール箱等の梱包体内に梱包する。複数の多面体保持ユニット35を梱包する場合には、図4(b)に示すように図4(a)に示した状態のものを重ねて積層した上で帯封すればよい。
なお、本発明の多面体の整列方法は、光学部品に限らず、個片を棒状に連結した連結体を個片に分割することによって製造される部材、部品一般に適用することができる。また、多面体は、全ての面が平坦面である必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)及び(b)は本発明の連結棒状体の一例の斜視図、及びビームスプリッタの構成図。
【図2】(a)(b)及び(c)は、本発明の整列方法の説明図。
【図3】多面体保持ユニットの点検方法の説明図。
【図4】(a)は本発明の多面体保持ユニットの梱包方法の一例を示す縦断面図、(b)は多段に積層して梱包する状態を示す説明図。
【図5】(a)はビームスプリッタ個片の斜視図、(b)(c)及び(d)は従来のビームスプリッタの製造手順を示す図。
【図6】光学部品を収容するトレイの構成説明図。
【符号の説明】
【0011】
1 ビームスプリッタ(多面体)、20 棒状連結体、20a 接合面、21 接合手段、30 積層シート、31 ベースシート、32 粘着シート、32a 粘着テープ、35 多面体保持ユニット、40a、40b 台紙、41 クッション板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の多面体をその方向性を揃えて粘着シート上に接着することにより多面体を整列させる整列方法であって、
ベースシートの片面に粘着シートを接着して成る積層シートの粘着シートの粘着面上に、同一形状の複数の多面体を棒状に連結した連結棒状体を、所定の間隔を隔てて平行に且つ方向性を同一に揃えて接着する接着工程と、
各連結棒状体間に位置する粘着シートを各連結棒状体と平行な第1の切断線に沿って完全切断すると共に、ベースシートをハーフカットすることにより積層シートを未分離の状態とする第1の切断工程と、
前記第1の切断線と交差すると共に多面体個片の境界に沿った各第2の切断線に沿って各連結棒状体を完全切断すると共に粘着シートをハーフカットする第2の切断工程と、
前記切断済みの多面体を接着保持した粘着シートを前記ベースシートから剥離して多面体個片を所定の間隔を隔てて粘着シート上に一列に接着保持した多面体保持ユニットを形成する工程と、から成ることを特徴とする多面体の整列方法。
【請求項2】
前記多面体は、ガラス製の光学部品であることを特徴とする請求項1に記載の多面体の整列方法。
【請求項3】
前記粘着シートに接着する光学部品の一面は、非光学面であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の多面体の整列方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の多面体の整列方法によって形成されたことを特徴とする多面体保持ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の多面体保持ユニットの少なくとも粘着シートの対面側にクッション板を載置し、前記多面体保持ユニットとクッション材を板状の補強部材により挟持した状態で帯封して梱包することを特徴とする多面体保持ユニットの梱包構造。
【請求項6】
請求項4に記載の多面体保持ユニットの少なくとも粘着シートの対面側にクッション板を載置し、前記多面体保持ユニットとクッション材を板状の補強部材により挟持したものを複数積層した状態で帯封して梱包することを特徴とする多面体保持ユニットの梱包構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−53278(P2006−53278A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233903(P2004−233903)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】