説明

多面体オリゴマーシルセスキオキサンおよび容器用の多面体オリゴマーシリケートバリアー材料

シリコン含有作用物を用いてバリアー特性を高め、ナノスコピックなガラス層をポリマー表面に現場作製する方法である。多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)のようなナノ構造の化学物質は、ポリマーに加えられ、次いで、現場での表面酸化によってガラス層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願およびクレームは、2004年12月8日に出願された米国仮特許出願シリアルNo.60/634,495の利益を受ける。
【0002】
本発明は、一般的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステルテレフタレート、およびセルロースやポリ乳酸ポリマーのような天然ポリマーのバリアー特性を高める方法に関する。より具体的には、本発明は、ガスおよび水分のバリアー制御のために、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)および多面体オリゴマーシリケート(POS)のようなナノ構造の化学物質を、食品、飲料、製薬、および医薬品のための多層化されたポリマー積層体の容器またはボトルに取り込む方法に関する。
【0003】
そのような材料への用途は、金属的性格を与えられたポリマー容器の代替品、金属缶の代替品、およびディスクリートな(discreet)接着剤層とディスクリートなシリカ層とを含む容器の代替品を含む。
【背景技術】
【0004】
本発明は、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA),ポリエステルレレフタレート(PET)中での複合可能な作用物(alloyable agents)としての多面体オリゴマーシルセスキオキサン、シルセスキオキサン、多面体オリゴマーシリケート、シリケート、シリコーン、または金属的性格を与えられた多面体オリゴマーシルセスキオキサン、シルセスキオキサン、多面体オリゴマーシリケート、シリケート、シリコーンの使用に関する。以下においては、多面体オリゴマーシルセスキオキサン、シルセスキオキサン、多面体オリゴマーシリケート、シリケート、シリコーン、または金属的性格を与えられた多面体オリゴマーシルセスキオキサン、シルセスキオキサン、多面体オリゴマーシリケート、シリケート、シリコーンを“シリコン含有作用物(silicon containing agent)”と称する。
【0005】
シリコン含有作用物は、USP6,441,210号に報告されているように、金属原子を複合化するために以前用いられてきた。USP6,716,919およびWO01/72885 PCT/US01/09668に記載されているように、そのようなシリコン含有作用物は、シリコンおよび金属原子をナノスコピックレベルで均一にポリマー鎖に分散し複合化するのに有用である。シリコン含有作用物は、酸素分子の存在下で変化して、ガラス状のシリカ層を形成することができる。.酸化保護ガラス層を形成するためのそのようなシリコン含有作用物の使用は、USP6,767,930で論じられている。防火表面チャー被覆を形成するためのそのようなシリコン含有作用物の使用は、USP6,362,279に記載されている。シリコン含有は、また、USP6,425,936で論じられているように、透過性多孔質膜の形成にも有用であることが記載されている。
【0006】
上述を考慮して、そのようなシリコン含有作用物は、多層化された薄膜の容器製品におけるガスおよび液体バリアーの形成のためにも有用であることが見出されたことは、驚くべきことである。そのような能力において、シリコン含有作用物は、ポリマー中に複合化された場合にはそれ自体で有用であるが、酸素プラズマ、オゾン、酸化炎、または空気のような熱い酸化ガスに曝された際に、ナノスコピックに薄いガラスバリアーの現場(in situ)作製に特に効果的である。
【0007】
シリコン含有作用物の使用の利点は、ポリマー中の自由体積の減少またはふさぐこと(plug)であり、それゆえ透過性が減少する。すなわち、ナノスコピックに薄いガラス層に変化された場合には、層の不透過性により透過性が低下する。他の利点は、以下を含む。すなわち、人間の目によるナノスコピックバリアー(nanoscopic barrier)の検出されない特性、強靭性および柔軟性、およびそれによるロールおよび薄膜での容器の貯蔵安定性、放射線吸収、液体およびガスに対する不透過性、直接印刷性、汚れ耐性、環境劣化耐性、化学劣化耐性、スクラッチ耐性、ガラスより低コストで軽量、ディスクリートな組成的ボンドライン(discreet compositional bondlines)の除去および組成的に傾斜した材料界面(compositionally graded material interfaces)での置き換えに起因したポリマーとガラスとの間の優れた接着性、改善された機械的特性(熱歪曲、クリープ、圧縮セット、収縮、モジュラス、硬さ、および摩擦耐性など)、および改善された物理特性(電気および熱伝導性、および耐火性)である。優れた接着特性はまた、歯科用接着剤におけるナノスコピックなシリコン作用物(nanoscopic silicon agents)として用いられているように、実現可能な利点である。最終的に、金属を含有するシリコン化合物は、フォトンおよび粒子放射の吸収によってポリマーに安定性を付与することができる。それらは、ポリマーにダメージを与えて劣化を加速する。これらのファクターは全て、従来の方法で達成されていたよりも優れたバリアー性および透明性を容器材料に与える。
【0008】
ガスおよび水分に対する低いバリアー性を備えた容器を製造するための、多くの従来法が知られている。そのような方法は、USP6,720,097に記載されているようなポリマー上への金属の堆積および薄いガラス被覆を含む。効果的であるものの、この方法は、高速の鋳造および押し出しプロセスの広い範囲にはなじみにくい。また、この方法は、ガラスまたは金属とポリマー層との間の乏しい界面接着も受ける。従来の一般的な方法は、クレイ、マイカ、タルク、ガラスフレーク、カーボンメソフェーズおよびチューブのような二次元の板状材料の取り入れも含んできた(USP6,376,591,USP6,387,996)。この従来技術は、十分に高い均一性で接着剤を取り入れて、光学的透明性を保持しつつ高いバリアー性を与える能力に欠けている。それゆえ、透明性および装飾的な外観を提供するために、バリアーのレベルにおいて妥協が受け入れられた。後者の方法のさらなる制限は、ポリマー層に相溶する二次元板状材料とするために、獣脂のような天然に由来する脂肪界面活性剤の使用であるとされてきた。コスト的には有効であるものの、これは、容器材料中への生物学的に活性な汚染物質の混入のおそれを招き、それは、食品や無菌医薬品には適切でないものとなる。
【0009】
これに最も有用なシリコン含有作用物は、シルセスキオキサン、多面体オリゴマーシルセスキオキサン、および多面体オリゴマーシリケートのような低コストのシリコン化合物に基づくものが代表例として挙げられる。図1は、シロキサン、シルセスキオキサン、およびシリケートを含むシリコン化合物のいくつかの代表例を示す。これらの構造におけるR基は、Hから、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族、およびエーテル類、酸類、アミン類、チオール類、ホスフェート類、およびハロゲン化R基を含む置換された有機系までとすることができる。構造および組成もまた、金属的性格を与えた誘導体を含むことが意図され、これにおいては、高から低Zの金属が構造中に取り込まれ得る。
【0010】
シリコン含有作用物は全て、共通のハイブリッド(すなわち、有機−無機)組成を共有し、それにおいては、内部構成は、主として無機シリコン−酸素結合から組み立てられる。そのような作用物が取り込まれることは、アモルファス領域の封鎖による水分および酸素へのバリアーを与え、自由体積はポリマーの密な状態の構造を含む。ナノスコピックなシリコンをナノスコピックに薄いシリカガラスとするマイルドな現場酸化によって、バリアー特性はさらに改善することができる。ガラス化工程は、フィルム加工の間または後に行なうことができる。ナノ構造の外側は、反応性および非反応性の有機官能基(R)で覆われ、これは、有機ポリマーへのナノ構造の相溶性および適応性を確実にする。ナノ構造の化学物質のこれらおよび他の特性は、USP5,412,053およびUSP5,484,867に詳細に論じられている。これらの文献は、特にその全体において参照として本明細書に取り込まれる。これらのナノ構造の化学物質は、低密度であり、0.5nm〜5.0nmの範囲の直径とすることができる。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、一連の新規なポリマー添加剤、ポリマー内およびポリマー表面へのガスおよび水分バリアーの形成におけるそれらの使用に関する。得られたナノ複合化された(nano-alloyed)ポリマーは、それ自体で、他のポリマーとの組み合わせにおいて、またはファイバー、クレイ、ガラス、金属、ミネラル、および他の粒子状フィラー、インク、および色素のようなマクロスコピックな補強材との組み合わせにおいて、全面的に有用である。ナノ複合化されたポリマーは、酸素および水分に対する高められたバリアー特性、印刷性、汚れ、酸および塩基に対する耐性を備えた多層化された容器の製造に特に有用である。ここでの好ましい構成は、2つの主要な材料の組み合わせを含む:(1)ナノ構造の化学物質、ナノ構造のオリゴマー、またはシリコーン、多面体オリゴマーシルセスキオキサン、ポリシルセスキオキサン、多面体オリゴマーシリケート、ポリシリケート、ポリオキシメタレート、カルボラン、ボランといった化学物質群からのナノ構造のポリマーを含むシリコン含有作用物;および(2)ポリプロピレン、ポリアミド、およびポリエステルのような合成の熱可塑性ポリマーである。
【0012】
熱可塑性プラスチック中にナノ構造の化学物質を取り込む好ましい方法は、ポリマー中へのシリコン含有作用物の溶融混合により達成することができる。溶融ブレンディング、乾式ブレンディング、溶液ブレンディング、反応性および非反応性ブレンディングを含む全てのタイプのブレンディング技術もまた効果的である。
【0013】
さらに、特定のポリマーへのシリコン含有作用物の選択的な取り入れおよび最大仕込みレベルは、その中で複合化されるポリマー内の領域の化学ポテンシャルと一致する化学ポテンシャル(混和性)を有するシリコン含有作用物の使用によって達成することができる。その化学特性ゆえ、シリコン含有作用物は適合して、選択された配列およびポリマー鎖およびコイル内のセグメントとの互換性または非互換性を示すことができる。その適合可能な互換性との組み合わせにおいて、それらの物理的サイズは、ナノ構造の化学物質に基づくシリコン含有作用物がポリマー中に選択的に取り込まれるのを可能にして、コイル、ブロック、ドメインおよびセグメントの動的な状態(dynamics)を制御し、引き続いて都合よく、多くの物理的特性に影響を与える。
【0014】
バリアー材料としてのナノスコピックなシリコン含有作用物を混入することの特別な利点は、低い仕込みにおけるその使用であり、ポリマー中における使用しやすい自由体積をふさぐ。透過性(P)は、式P=DSによって制御される。ここで、Dは拡散係数であり、Sは材料中の成分の溶解度である。バリアー用途のために、ナノスコピックなシリコン作用物は、ポリマー中のガス分子に取って代わり、それによって、ポリマー内におけるガスの溶解度が低下する。さらに、それらは、ガスの拡散のために役立てられる利用し易い自由体積もまた占有し、それによって全体にわたる透過性が低下する。
【0015】
シリコン含有作用物で複合化されたポリマーから成型された製品に、現場でガラスのつや出し加工を行なう製造プロセスは、製品を酸素プラズマ、オゾン、または他の高度に酸化性の媒体に曝すことによって行なうことができる。現在の工業プロセスであり、ポリマー表面の加熱を引き起こさないので、これらの化学酸化法は望ましい。成型された製品の上には、幾何学的な抑制や装飾的な制約はない。処理後、部分はナノメーターの厚さの表面ガラス層を含む。最も効果的であり、それゆえ好ましい酸化方法は酸素プラズマである。しかしながら、シリコン含有作用物におけるRがH、メチルまたはビニルの複合体については、オゾン、過酸化物、あるいは熱い蒸気に曝された際にガラスに変化する可能性がある。上述の方法の信頼できる代替法は、酸化火炎の使用である。方法の選択は、化学物質、ポリマー複合システム、シリコン含有作用物の仕込みレベル、作用物の表面セグメント、所望されるシリカ表面の厚さ、および製造条件に応じて決定される。.ポリマー中にナノスコピックレベルで分散したシリコン含有作用物の状態を図2に示す。
【0016】
.酸化源に表面を曝す際、用いられる酸化条件に応じて1〜500nm、好ましくは1〜100nmのナノスコピックに薄いガラスの層が得られる。形成される層の厚さは、ガラス層に要求される特性(例えば、不透過性、スクラッチ耐性、透明性、放射線減衰性など)に応じて変更することができる。シリカ含有作用物が金属を含む場合には、金属もまたガラス層中に取り込まれるであろう。ナノスコピックなガラス表面層の形成により得られる利点は、ガスおよび液体についてのバリアー特性、改善された化学的および酸化安定性、引火性の減少、改善された電気的特性、改善された印刷性、汚れおよびスクラッチの改善された耐性を含む。さらに、シリカのナノスコピックに薄い層は、バルクの未加工のポリマーと継ぎ目なしに一体化されて可塑性であるのに加え、ロールの上に保存することができ、多層化された容器に積層することが可能である。
【0017】
ナノ構造についての式表現の定義
本発明の化学組成の理解の目的で、シリコン含有作用物、特に多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)および多面体オリゴマーシロキサン(POS)の式表現について以下に定義する。
【0018】
ポリシルセスキオキサンは、式[RSiO1.5で表わされる材料である。ここで、∞は、重合度を表わし、R=有機置換基(H、シロキシ、環状または鎖状の脂肪族基、芳香族基であり、アルコール、エステル、アミン、ケトン、オレフィン、エーテル等の反応性の官能基を付加的に含むことができる。あるいは、ハロゲンを含んでもよい。)。ポリシルセスキオキサンは、ホモレプティック(homoleptic)またはヘテロレプティック(heteroleptic).のいずれであってもよい。ホモレプティック系は、1種のみのR基を含み、ヘテロレプティック系は、1種より多くのR基を含む。
【0019】
POSSおよびPOSナノ構造組成は、式で表わされ:
ホモレプティック組成は[(RSiO1.5nΣ#で表わされ、
ヘテロレプティック組成(R≠R’)は[(RSiO1.5n(R’SiO1.5mΣ#で表わされ、
異種官能基化された(heterofunctionalized)ヘテロレプティック組成は、[(RSiO1.5n(RSiO1.0m(M)jΣ#で表わされ、
官能基化された(functionalized)ヘテロレプティック組成(R基は、同一でも異なっていてもよい)は、[(RSiO1.5n(RXSiO1.0mΣ#で表わされる。
【0020】
上述の全てにおいて、Rは上で定義されたように同一であり、XはOH,Cl,Br,I,アルコキシド(OR),アセテート(OOCR),パーオキサイド(OOR),アミン(NR2)、イソシアネート(NCO)、およびRを含むが、これらに限定されない。Mは、組成内の金属元素を表わし、高および低Zを含み、特に、Al,B,Ce,Ni,Ag,Tiである。.m,nおよびjは、組成の化学両論比である。Σは、組成がナノ構造を形成することを示し、#はナノ構造内に含まれるシリコン原子の数を表わす。#の値は、通常、m+nの和であり、nは典型的には1〜24の範囲内であり、mは、典型的には1〜12の範囲内である。Σ#は、単にシステム(aka cageサイズ)の全体的なナノ構造の特性を述べるのみであり、化学両論比を決定するための倍数として混同されるべきでないことに留意する。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、酸素および水に対するバリアー特性を有するポリマーおよびポリマー積層容器の設計および作製のための複合化剤(alloying agents)として、シリコン含有作用物の使用を説明する。付加的なバリアーは、ナノスコピックなシリコン含有作用物の現場酸化による、ポリマー材料の上にガラス層の現場作製によって得られることがわかる。
【0022】
ナノ構造の化学物質のようなシリコン含有作用物が、この性能において機能するための鍵は、次を含む:(1)ポリマー鎖の寸法に対する、その特有のサイズ、(2)不適合性およびポリマー鎖によるナノ強化剤の排除を促進する斥力を克服するために、ポリマーシステムに適合され、ナノレベルで均一に分散される能力、(3)ハイブリッド組成、および選択的な酸化剤に曝された際にガラス化する能力、(4)シリカ作用物の中、およびそこから形成される対応するガラスの中に、金属を化学的に取り込む能力である。透過性の制御およびガラス化のためのシリコン含有作用物の効果的な選択のためのファクターは、ナノ構造の化学物質のナノサイズ、ナノサイズの分布、およびナノ構造の化学物質とポリマー系との間の適合性および異種性、シリカ作用物の仕込みレベル、所望されるシリカ層の厚さ、およびポリマーの光学および物理特性を含む。
【0023】
図1に示した多面体オリゴマーシルセスキオキサンのようなシリカ作用物は、金属を含んで、または含まずに固体およびオイルとして使用することができる。溶融ポリマー中または溶媒中に溶解した状態のいずれも、ポリマーに直接反応することができ、あるいは、それ自体がバインダー材として用いられ得る。POSSについて、分散は、混合の自由エネルギーの式(ΔG=ΔH−TΔS)により、熱力学的に支配されるようである。R基の性質およびPOSSケージの反応性基がポリマーおよび表面と反応または相互作用する能力は、都合のよいエンタルピー(ΔH)項に大きく関与する。一方、モノスコピックなケージサイズおよび1.0の割り当てのため、エンロトピー項(ΔS)は非常に好ましい。
【0024】
上述の分散を引き起こす熱力学的力は、高剪断混合、溶媒混合または複合化の間に起こるような動的な混合力によっても与えられる。動的な分散は、また、ほとんどのポリマーの処理温度またはその近傍で溶融することを、いくつかのシリカ作用物の能力によって促進される。
【0025】
それゆえ、化学物質および処理パラメータを制御することによって、ナノ強化および1.5nmレベルでのポリマーの複合化を、任意のポリマーシステムについて図2に示すように実際に達成することができる。シリカ含有作用物はまた、物理的特性、バリアー、汚れ耐性、酸および塩基耐性、および放射線吸収の強化に関して、同様に望ましい有利なものとするために、マクロスコピックなフィラーとの組み合わせにおいて用いることができる。ダメージを与える放射線の吸収は、ニッケル、チタン、セリウムまたはボロンのような金属的な性格を与えられたシリカ含有作用物によって調節することができる(図3)。そのような金属的性格を与えられたシステムは、環境的な劣化、およびビタミン類、調味料(flavorants)、着色剤、および他の栄養物のような内容物の劣化に対するポリマーの安定のために、非常に重要である。
【0026】
本発明は、バリアー特性の向上が、シリコン含有作用物の直接ブレンド、好ましくはナノ構造の化学物質をポリマーに直接ブレンドされることによって実現できることを示す。これは、従来技術のプロセスを非常に簡素化する。
【0027】
さらに、ナノ構造の化学物質と同様にシリコン含有作用物は、球状(単位結晶当たりのX線解析結果)を有するので、分子による球と同様であり、それらは溶解するので、ポリマーシステムの粘度の減少においても効果的である。これは、そのようなナノ複合化されたポリマーを用いた製品の処理、成型、または被覆に有利であり、さらに、化学物質のナノスコピックな性質に起因して、個々のポリマー鎖の強化の付加的な利点も有する。ナノ複合化されたポリマーを酸化剤へ引き続いて曝すことは、曝された表面へのナノスコピックなガラスの現場作製をもたらす。図4は、シルセスキオキサンのようなシリコーンのガラスへの酸化を示す。ナノ複合化されたポリマーが酸化源に曝されると、シリコン−R結合が切断され、R基が揮発性の反応副生成物として失われ、このとき、酸素原子を介したケージ同士の結合によってシリコンの原子価は維持され、溶融ガラスと同等のものとなる。このように、このガラス表面層の現場作製の容易さは、ナノ構造のシリコン含有作用物の使用によって得ることができる。従来技術は、二次被覆または堆積法の使用を必要とし、これは、表面へのミクロン厚さのガラス層の形成を引き起こす。
【0028】
成型された製品のポリマー表面へのガラス層の直接的な現場作製の能力と相俟って、ポリマー内およびポリマー全体にわたるシリカ含有作用物のナノスコピックに分散した性質は、処理費用の低減において非常に大きな利点があり、これは、時間および材料の削減、容器の簡素化に起因する(図5)。多層に積層された種々のポリマー容器構造物が存在する。それゆえ、図4、図5A〜5Fは、現在の容器設計へ本発明を取り入れることを、限定されない状態で表わすことが意図される。シリコン含有作用物の仕込みレベルは、重量で0.1%〜99%の範囲であり、1〜30wt%の範囲が好ましい。
【0029】

全てのプロセスに適用可能な可変の一般的なプロセス
化学プロセスに典型的なように、純度、選択性、速度、および任意のプロセスのメカニズムを制御するために用い得る多くの変数が存在する。プラスチック中へのシリコン含有作用物(例えば、シリコーン類およびシルセスキオキサン類)の混入のためのプロセスに影響を及ぼす変数は、ナノスコピックな作用物のサイズ、多分散性、および組成を含む。同様に、ポリマーシステムの分子量、多分散性、および組成もまた、シリコン含有作用物のそれとポリマーとの間で調和しなければならない。最後に、動力学、熱力学、処理の補助、およびコンパウンド化やミキシングのプロセスの間に用いられるフィラーもまた、手段(tools of the trade)であり、それは、仕込みレベルや取り込みに起因した向上の程度に影響を及ぼす。溶融ブレンド、乾式ブレンド、および溶液混合ブレンドのようなブレンドプロセスは全て、プラスチック中にナノスコピックなシリカ作用物を混合し複合化するのに効果的である。
【0030】
代替法:溶媒アシストされた処方。シリコン含有作用物は、所望のポリマー、プレポリマーまたはモノマーを収容する容器に加え、十分な量の有機溶媒(例えば、ヘキサン、トルエン、ジクロロメタン等)またはフッ素化溶媒に溶解して1つの均質な相の処方をもたらすことができる。混合物は、次いで、満足な混合を保証するのに十分な温度において、30分間、高い剪断のもとで攪拌して揮発性の溶媒を除去した後、真空下または蒸留を含むプロセスと同様のタイプを用いて回収する。CO2のような超臨界流体もまた、可燃性の炭化水素溶媒の代替として利用できることに留意する。こうして処方されたものは、その後、直接にまたは後に続く処理のために用いることができる。
【0031】
例1.透過性バリアー
以下の例は、特定の材料の組み合わせまたは条件に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0032】
典型的な酸素プラズマ条件は、100%のパワーのもとで1秒から5分の範囲内である。典型的なオゾン処理(ozonolysis)条件は、CH2Cl2溶液によって与えられたオゾンを用いて、ビニル基当たり0.03等量のO3で1秒から5分の範囲内である。典型的な蒸気処理の条件は、1秒から5分の範囲である。.典型的な酸化火炎処理の条件は、1秒から5分の範囲である。
【表1】

【0033】
例2.容器に収容された食品の改善
本発明を食品容器に取り込んだことにより観察された利点を、以下に示す。
【表2】

【0034】
例3.設計に基づく容器の性能
一連のシリコン含有作用物を、シリコーンおよび熱硬化性エポキシ、ポリオレフィン、および熱可塑性ポリカーボネートに配合し、UV−Vis、ニュートロン、ガンマおよび低エネルギーフォトンの入射量に関して、その吸収特性を測定した。低Zの複合化されたポリマーについての主な利点は、低エネルギーフォトン(<1000eV)で観察された。改善は、材料中の電子密度の増加に起因し、これは、入射される放射線のダメージの影響に対する遮蔽を与える。高Zの複合化されたポリマーについての主な利点は、シリコンおよびポリカーボネートにダメージを与え変色させることからの高エネルギーUV照射の妨害である。この改善は、ガラス層のUV吸収特性が90〜390nmまで拡大することに起因する。
【0035】
本発明の説明の目的で代表例および詳細を示したが、ここに開示された方法および装置は、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、種々変更できることは当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】金属的性格を与えないシリコン含有作用物の代表的な構造例。
【図2】ナノ構造のシリコン含有作用物が、ポリマーの表面およびバルクに1〜3nmのレベルで均一に分散する能力を示す図。
【図3】金属的性格を与えたシリコン作用物が、ダメージを与える放射線を選択的に吸収する能力を示す図。
【図4】溶融したナノスコピックに薄いガラス層へのシリコン含有作用物の酸化的変化の化学プロセスを示す図。
【図5A】ナノ構造のシリコン含有作用物をプラスチック多層に積層された容器に取り込む好ましい方法を示す図。
【図5B】ナノ構造のシリコン含有作用物をプラスチック多層に積層された容器に取り込む好ましい方法を示す図。
【図5C】ナノ構造のシリコン含有作用物をプラスチック多層に積層された容器に取り込む好ましい方法を示す図。
【図5D】ナノ構造のシリコン含有作用物をプラスチック多層に積層された容器に取り込む好ましい方法を示す図。
【図5E】ナノ構造のシリコン含有作用物をプラスチック多層に積層された容器に取り込む好ましい方法を示す図。
【図5F】ナノ構造のシリコン含有作用物をプラスチック多層に積層された容器に取り込む好ましい方法を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ナノスコピックに分散したシリコン含有作用物をポリマー中に取り入れる工程と、
(b)前記ポリマーの表面を酸化して、ガラス層を形成する工程と
を具備するポリマー表面にガラス層を現場作製する方法。
【請求項2】
異なるシリコン含有作用物の混合物が前記ポリマーに取り入れられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、および接着剤からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーは、ポリマーコイル、ポリマードメイン、ポリマー鎖、ポリマーセグメント、またはその混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコン含有作用物は、分子レベルで前記ポリマーを強化する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記取り入れは非反応性である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記取り入れは反応性である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー中に前記シリコン含有作用物が取り入れられた結果として、前記ポリマーの物理的特性が改善される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ガラス層の現場作製の結果として、前記ポリマー層の物理的特性が改善される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記物理的特性は、接着性、撥水性、密度、ガラス転移、粘度、溶融変化(melt transition)、貯蔵モジュラス、緩和、応力変形(stress transfer)、摩擦耐性、ガスおよび水分透過性、接着性、生物学的適合性、化学的耐性、気孔率、放射線吸収、および光学特性からなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記物理的特性は、接着性、撥水性、密度、ガラス転移、粘度、溶融変化、貯蔵モジュラス、緩和、応力変形、摩擦耐性、ガスおよび水分透過性、接着性、生物学的適合性、化学的耐性、気孔率、放射線吸収、および光学特性からなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記取り入れる工程は、少なくとも1種の他のフィラーまたは添加剤との組み合わせで行なわれる請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記取り入れる工程は、少なくとも1種の他のフィラーまたは添加剤との組み合わせで行なわれる請求項9に記載の方法。
【請求項14】
(a)ナノスコピックに分散されたシリコン含有作用物を、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリアミドからなる群から選択されるポリマーに取り入れる工程と、
(b)前記ポリマーの表面を酸化して、ガラス層を形成する工程と
を具備する多層に積層された容器のバリアー特性を改善する方法。
【請求項15】
異なるシリコン含有作用物の混合物が前記ポリマーに取り入れられる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーは、ポリマーコイル、ポリマードメイン、ポリマー鎖、ポリマーセグメント、またはその混合物である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記シリコン含有作用物は、分子レベルで前記ポリマーを強化する請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記取り入れは非反応性である請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記取り入れは反応性である請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー中に前記シリコン含有作用物が取り入れられた結果として、前記ポリマーの物理的特性が改善される請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記ガラス層の現場作製の結果として、前記ポリマー層の物理的特性が改善される請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記物理的特性は、接着性、撥水性、密度、ガラス転移、粘度、溶融変化、貯蔵モジュラス、緩和、応力変形、摩擦耐性、ガスおよび水分透過性、接着性、生物学的適合性、化学的耐性、気孔率、放射線吸収、および光学特性からなる群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記物理的特性は、接着性、撥水性、密度、ガラス転移、粘度、溶融変化、貯蔵モジュラス、緩和、応力変形、摩擦耐性、ガスおよび水分透過性、接着性、生物学的適合性、化学的耐性、気孔率、放射線吸収、および光学特性からなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記取り入れる工程は、少なくとも1種の他のフィラーまたは添加剤との組み合わせで行なわれる請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記取り入れる工程は、少なくとも1種の他のフィラーまたは添加剤との組み合わせで行なわれる請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記シリコン含有作用物は金属を含む請求項14に記載の方法。
【請求項27】
前記金属は、ポリマーまたは容器の内容物の劣化を遅らせる請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【公表番号】特表2008−523219(P2008−523219A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545593(P2007−545593)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044284
【国際公開番号】WO2006/073662
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506207473)ハイブリッド・プラスティックス・インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】