説明

多面体構造ポリシロキサン変性体およびこれからなる組成物

【課題】 高い透明性、耐熱性、耐光性、ダイシング性、ヒートサイクル性を有し、加工性等に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体およびこれから得られる組成物を提供すること。
【解決手段】 特定個数のアルケニル基およびヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)同士をヒドロシリル化して得られるポリシロキサン化合物(b)に、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)をヒドロシリル化させて得られる多面体構造ポリシロキサン変性体および、該多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を含有するポリシロキサン系組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い透明性、耐熱性、耐光性、ダイシング性、ヒートサイクル性、加工性等に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体、製法およびこれからなる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多面体骨格を有するポリシロキサン化合物は、その特異的な化学構造から優れた耐熱性、耐光性、化学的安定性、低誘電性を示し、その応用が期待されている。
例えば、光素子封止剤用途への展開を意図し、多面体骨格を有するポリシロキサンを用いた樹脂組成物が開示されている(特許文献1、2)。
【0003】
しかしながら、耐熱性や耐光性の面や、材料としての加工性、例えば、封止剤として適用する上で重要特性である切削加工性(ダイシング性)、ヒートサイクル性には更なる改良が求められていた。
【0004】
また、上述のような加工性を付与するために、多面体骨格を有するポリシロキサンへの種々の有機基の導入が試みられているが(特許文献3)、有機基を導入した結果、多面体骨格を有するポリシロキサン本来の特徴である耐熱性や耐光性を低下する恐れがあるため、更なる改良が求められていた。
【0005】
上述のように、多面体骨格を有するポリシロキサン化合物を用いた材料の開示は見られるが、本来期待される高い耐熱性・耐光性を維持しつつ、加工性・成形性を持ち合せた新たな材料の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−359933号公報
【特許文献2】特開2007−31619号公報
【特許文献3】特表2008−523165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題が解決された、高い透明性、耐熱性、耐光性、ダイシング性、ヒートサイクル性を有し、加工性等に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体およびこれから得られる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至った。本発明は以下の構成を有するものである。
【0009】
1). アルケニル基およびヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)同士をヒドロシリル化して得られるポリシロキサン化合物(b)に、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)をヒドロシリル化させて得られる多面体構造ポリシロキサン変性体であって、該多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)が、以下の(i)または(ii)のいずれかを満たすことを特徴とする多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
(i)1分子中のアルケニル基が平均して1.0〜3.5個、かつ、1分子中のヒドロシリル基が平均して0.02〜1.0個。
(ii)1分子中のヒドロシリル基が平均して1.0〜3.5個、かつ、1分子中のアルケニル基が平均して0.02〜1.0個。
【0010】
2). 前記ポリシロキサン化合物(b)において、(a)由来のアルケニル基もしくはヒドロシリル基のどちらか一方が残留していることを特徴とする1)に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【0011】
3). 温度20℃において、液状であることを特徴とする、1)または2)に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【0012】
4). 分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基またはアルケニル基を有する事を特徴とする、1)〜3)のいずれか1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【0013】
5). (c)成分が、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有するシロキサン化合物であることを特徴とする、1)〜4)のいずれか1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【0014】
6). (c)成分が、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する環状シロキサンであることを特徴とする、5)に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【0015】
7). アルケニル基およびヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)同士をヒドロシリル化させて得られるポリシロキサン化合物(b)を得た後、さらにヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)とをヒドロシリル化反応させて得られることを特徴とする、1)〜6)のいずれか1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の製造方法。
【0016】
8). 1)〜6)のいずれか1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体と硬化剤(B)とからなるポリシロキサン系組成物。
【0017】
9). 硬化剤(B)が、アルケニル基またはヒドロシリル基を有するポリシロキサンであることを特徴とする8)に記載のポリシロキサン系組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高い透明性、耐熱性、耐光性、ダイシング性、ヒートサイクル性を有し、加工性等に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体および組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0020】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(A)>
本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、アルケニル基およびヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)同士をヒドロシリル化して得られるポリシロキサン化合物(b)に、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)をヒドロシリル化させて得られる多面体構造ポリシロキサン変性体であって、該多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)が、(i)1分子中のアルケニル基が平均して1.0〜3.5個、かつ、1分子中のヒドロシリル基が平均して0.02〜1.0個、(ii)1分子中のヒドロシリル基が平均して1.0〜3.5個、かつ、1分子中のアルケニル基が平均して0.02〜1.0個の(i)または(ii)のいずれかを満たすことを特徴とする。
【0021】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の製造においては、アルケニル基およびヒドロシリル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)同士をヒドロシリル化して得られるポリシロキサン化合物(b)を得た後、さらにヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)とをヒドロシリル化反応させることにより、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)、あるいは、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を用いて得られる硬化物に、より高い耐熱性や耐光性、耐青色レーザー性、強度、ダイシング性、ヒートサイクル性等を付与することが可能となる。
【0022】
本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、ハンドリング性・加工性の観点から温度20℃において、液状であることが好ましい。
また、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、得られる硬化物の強度や硬度、さらには、耐熱性・耐光性等の観点から、分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基、または、少なくとも3個のアルケニル基を有することが好ましい。より高い耐熱性・耐光性の観点から、分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有することが好ましい。
【0023】
<多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)>
本発明における(a)成分は、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基およびヒドロシリル基が結合したポリシロキサン化合物であればよく、特に限定されない。
【0024】
本発明において使用される多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基およびヒドロシリル基が結合したポリシロキサン化合物において、多面体骨格に含有されるSi原子の数は6〜24であることが好ましく、具体的に、例えば、以下の構造で示される多面体構造を有するシルセスキオキサンが例示できる(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。
【0025】
【化1】

【0026】
上記式中R1〜R8は、アルケニル基、アミノ基を有する有機基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロシリル基またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の基を示し、アルケニル基またはヒドロシリル基が平均して1.0〜3.5個、かつアルケニル基が平均して0.02〜1.0個である。
【0027】
これらの基としては炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の非置換又は置換の1価の炭化水素基が好ましい。
【0028】
アルケニル基の例として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基を含有する基としては具体的には(メタ)アクリロイル基を例示することができる。
【0029】
アルキル基の例として、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0030】
シクロアルキル基の例として、シクロヘキシル基等、アリール基の例として、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0031】
炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基としてはクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0032】
前記アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましく、アルケニル基およびヒドロシリル基以外の基が選択される場合は、耐熱性の観点からメチル基が好ましい。
【0033】
なお、本発明における(a)成分は、それ同士をヒドロシリル化させるので、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基およびヒドロシリル基を有する化合物であるが、例えば、化1においてR1〜R8の少なくとも1つが水素であれば化1はヒドロシリル基を有する。この場合は、多面体骨格を形成するSi原子上に直接ヒドロシリル基が結合した一態様として本発明に含まれるものである。
【0034】
上記、多面体構造を有するシルセスキオキサンは、例えば、RSiX3(式中Rは、上述のR1〜R8を表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得ることができる。また、RSiX3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより、閉環し、多面体構造を有するシルセスキオキサンを合成することもできる。
【0035】
さらには、前記トリシラノール化合物に、1官能性シランおよび/または2官能性シランを反応させることにより、部分開裂型の多面体構造を有するシルセスキオキサンを合成することもできる。
【0036】
本発明での多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)において、さらに好ましい例としては、以下の構造で示されるような多面体構造を有するシリル化ケイ酸が例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。多面体骨格を形成するSi原子とアルケニル基およびヒドロシリル基とが、シロキサン結合を介して結合していると、得られる硬化物の剛直になり過ぎず、良好な成形体を得ることができる傾向がある。
【0037】
【化2】

【0038】
上記式中R9〜R32は、アルケニル基、アミノ基を有する有機基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロシリル基またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の基であり、R9〜R32のうち、アルケニル基又はヒドロシリル基が平均して1.0〜3.5個、かつアルケニル基が平均して0.02〜1.0個である。
【0039】
また、同一のSi原子にある3個のRにはアルケニル基とヒドロシリル基の両方が存在することを避けることが好ましい。アルケニル基とヒドロシリル基とは異なるSi原子のRに分散されていることが好ましい。
好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の非置換又は置換の1価の炭化水素基である。アルケニル基を含有する基としては具体的には(メタ)アクリロイル基を例示することができる。
【0040】
アルケニル基の例として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙上げられる。アルキル基の例として、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。シクロアルキル基の例として、シクロヘキシル基等、アリール基の例として、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0041】
炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基としてはクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0042】
前記アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましく、アルケニル基およびヒドロシリル基以外の基が選択される場合も、耐熱性、耐光性の観点からメチル基が好ましい。
【0043】
多面体構造を有するシリル化ケイ酸の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成される。前記合成方法としては、具体的に、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。
【0044】
本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド、ヒドロシリル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基およびヒドロシリル基とが、シロキサン結合を介して結合した多面体構造ポリシロキサン系化合物を得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカ含有物質からも、同様の多面体構造を有するシリル化ケイ酸を得ることが可能である。
【0045】
本発明においては、多面体骨格に含有されるSi原子の数として、6〜24、さらに好ましくは、6〜10のものを好適に用いることが可能である。また、Si原子数の異なる多面体骨格を有するポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0046】
本発明の(a)における多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的に存在するアルケニル基およびヒドロシリル基については、得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)や多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を用いて得られる硬化物の強度やダイシング性、ヒートサイクル性、ハンドリング性、成形加工性の観点から、以下の(i)または(ii)を満たす事が必要である。
(i)1分子中のアルケニル基が平均して1.0〜3.5個、かつ、1分子中のヒドロシリル基が平均して0.02〜1.0個。好ましくは、1分子中のアルケニル基が平均して1.0〜3.0個、かつ、1分子中のヒドロシリル基が平均して0.02〜0.5個である。
(ii)1分子中のヒドロシリル基が平均して1.0〜3.5個、かつ、1分子中のアルケニル基が平均して0.02〜1.0個。好ましくは、1分子中のヒドロシリル基が平均して1.0〜3.0個、かつ、1分子中のアルケニル基が平均して0.02〜0.5個である。
【0047】
上記(i)および(ii)において、アルケニル基やヒドロシリル基の数が多すぎたり少なすぎたりすると、例えば、本発明の組成物を用いて得られる硬化物のダイシング性やヒートサイクル性が悪化する恐れがある。
【0048】
<ポリシロキサン化合物(b)>
本発明におけるポリシロキサン化合物(b)は、(a)由来のアルケニル基およびヒドロシリル基の反応により、多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)の分子同士が直接結合することで、例えば、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を用いて得られる硬化物の強度やダイシング性(切削加工性)、ヒートサイクル性を向上させることが可能となる。
【0049】
ポリシロキサン化合物(b)には多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)由来のアルケニル基とヒドロシリル基のヒドロシリル化反応において、アルケニル基またはヒドロシリル基のどちらか一方が残留していることが、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を用いて得られる硬化物の硬度や強度やダイシング性(切削加工性)、ヒートサイクル性の観点から好ましい。
【0050】
アルケニル基またはヒドロシリル基のどちらか一方が残留した状態とは、アルケニル基もしくはヒドロシリル基の一方が実質的に消失している状態のことである。この状態とは、例えばポリシロキサン化合物(b)の1分子中に、平均して1.0個未満、好ましくは0.5個以下、更に好ましくは0個の状態であるということができる。他方、残留する置換基の数がポリシロキサン化合物(b)1分子中に、平均して1.5個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは、2.5個以下の状態となることをさす。
【0051】
また、具体的に例えば、最終的に得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)や多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を含有する組成物を硬化させて得られる硬化物の耐熱性や耐光性の観点から、アルケニル基が残留していることが好ましい。
【0052】
多面体ポリシロキサン化合物(a)同士をヒドロシリル化反応させてポリシロキサン化合物(b)を得るが、用いる(a)成分が(i)あるいは(ii)の条件に該当する多面体構造ポリシロキサン系化合物を用いれば良く、必ずしも同一の化合物を用いる必要はない。
【0053】
また、多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)同士をヒドロシリル化反応させてポリシロキサン化合物(b)を得る際には、ヒドロシリル化触媒を用いることができる。前記ヒドロシリル化触媒としては、特に制限はなく、任意のものを使用することができる。
【0054】
具体的に例示すると、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4n};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34}(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0055】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0056】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましい。また、ポリシロキサン化合物(b)にヒドロシリル化触媒が残存する場合は、残存するヒドロシリル化触媒を、次の(c)とヒドロシリル化する際のヒドロシリル化触媒として用いることも可能である。
【0057】
<ヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)>
本発明におけるヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)は、分子中にヒドロシリル基またはアルケニル基を平均して1個以上含有する化合物であることが必要である。多面体構造ポリシロキサン変性体(A)のハンドリング性、成形加工性、透明性、あるいは、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を用いて得られる硬化物の透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有するシロキサン化合物が好ましい。
【0058】
シロキサン化合物の中では、さらには、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する環状シロキサン、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する直鎖状シロキサンを挙げることができるが、特には、耐青色レーザー性等の観点から、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する環状シロキサンが好ましいものとして例示される。
【0059】
本発明におけるヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
アルケニル基を有する直鎖状シロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0061】
アルケニル基を有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0062】
ヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、などが例示される。
【0063】
ヒドロシリル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0064】
本発明におけるヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)は、耐熱性・耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基、メチル基から構成されることが好ましい。
【0065】
ポリシロキサン化合物(b)には、最終的に得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)や多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を含有する組成物を硬化させて得られる硬化物の耐熱性や耐光性の観点から、アルケニル基が残存していることが好ましいが、その場合、化合物(c)としては具体的には、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが入手性にも優れていることから好ましい。また、特には、耐青色レーザー性の観点から、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0066】
ヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)の添加量は、ポリシロキサン化合物(b)に残留するアルケニル基および/またはヒドロシリル基1個あたり、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が生じてハンドリング性の劣る多面体構造ポリシロキサン変性体(A)となり、多すぎると、(A)を用いて得られる硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0067】
化合物(b)と化合物(c)のヒドロシリル化反応の際には過剰量の化合物(c)を存在させることが好ましい。多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を得た後例えば減圧・加熱条件下にて、未反応のヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)を取り除くことが好ましい。
【0068】
<ポリシロキサン系組成物>
本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)に、必須成分として硬化剤(B)、必要に応じてヒドロシリル化触媒、硬化遅延剤、接着性付与剤を添加して成すこともできる。添加物は必要に応じて適宜選択することができる。硬化遅延剤を用いることで組成物安定性、硬化過程でのヒドロシリル化の反応性の調整をすることができる。また、組成物の基材との接着性を向上する目的で接着性付与剤を用いる事ができる。
【0069】
本発明のポリシロキサン系組成物は、透明な液状性樹脂組成物となす事が可能である。
液状組成物と成すことにより、基材に塗布し、加熱して硬化させることで透明の膜を得ることができ、例えば、各種接着剤、コーティング剤、封止剤として好適に用いることが可能である。また、本組成物は金型に流し込み、加熱することにより、高い透明性、耐熱性、耐光性、ヒートサイクル性、加工性等に優れる硬化物を得ることもできる。
【0070】
硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは40〜250℃である。硬化温度が高くなり過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃、180℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることが可能となる。
【0071】
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量その他、本願組成物のその他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜24時間、好ましくは10分〜16時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0072】
硬化剤(B)としては、アルケニル基もしくはヒドロシリル基を有する化合物を好適に用いることができる。前記アルケニル基もしくはヒドロシリル基を有する化合物としては、1分子中に少なくともアルケニル基もしくはヒドロシリル基を2個含有するものが好ましく、アルケニル基もしくはヒドロシリル基を有するポリシロキサンが好ましい。
【0073】
さらには、アルケニル基もしくはヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサン、アルケニル基もしくはヒドロシリル基を有する環状シロキサン、分子末端にアルケニル基もしくはヒドロシリル基を有するポリシロキサンが好ましいものとして例示される。さらに、具体的に例えば、得られる硬化物の強度や耐熱性、耐光性、耐青色レーザー性の観点から、アルケニル基もしくはヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンであることが好ましく、両末端にアルケニル基もしくはヒドロシリル基を有する直鎖状のポリシロキサンであることがさらに好ましい。
【0074】
硬化剤(B)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記アルケニル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0076】
前記アルケニル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0077】
分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0078】
前記ヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0079】
前記ヒドロシリル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示される。
【0080】
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH32SiO1/2単位)とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0081】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0082】
また、組成物に用いることができる、ヒドロシリル化触媒については、特に制限はなく、任意のものを使用することができる。具体的に例示すると、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4n};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34}(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0083】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0084】
さらに、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、ヒドロシリル化触媒を追加することができる。
【0085】
本発明のポリシロキサン系組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもかまわない。
【0086】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示されうる。
【0087】
有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示されうる。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示されうる。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示されうる。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。
【0088】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0089】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0090】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0091】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10-1〜103モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜300モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0092】
また、組成物の基材との接着性を向上する目的で組成物に接着性付与剤を用いる事ができる。接着性付与剤については、特に制限はなく、任意のものを使用することができる。具体的に例示すると、シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。
【0093】
有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0094】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0095】
シランカップリング剤の添加量としては、(A)成分および(B)成分の合計重量の0.05〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量%である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0096】
エポキシ化合物としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2'−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0097】
エポキシ化合物の添加量としては種々設定できるが、(A)成分および(B)成分の合計重量に対しての好ましい添加量の下限は1重量%、より好ましくは3重量%であり、好ましい添加量の上限は50重量%、より好ましくは25重量%である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0098】
また、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種併用してもよい。さらに、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることができる。接着性促進剤としては、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、シリカ、粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンなどの充填剤を添加してもよい。
【0100】
また、本発明のポリシロキサン系組成物には、必要に応じて接着性付与剤、着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。
【0101】
この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0102】
また、本発明のポリシロキサン系組成物を難燃性、耐火性にするためには二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe23、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0103】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
【0104】
本発明のポリシロキサン系組成物は、成形体として使用することができる。成形方法としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の方法を使用することができる。
【0105】
本発明によるポリシロキサン系組成物から得られる成形体は、耐熱性、耐光性に優れ、光学材料用組成物として用いることができる。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0106】
本発明において得られる変性体および組成物の用途としては、具体的には、カラーフィルター、レジスト材料、液晶ディスプレイ分野における基板材料、パッシベーション膜、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。
【0107】
また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤。LED表示装置に使用されるLED素子のモールド材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤。プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム。
【0108】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤。フィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0109】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。
【0110】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーが例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0111】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。
光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。
光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0112】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0113】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0114】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラスが例示される。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートが例示される。
【0115】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
【0116】
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【実施例】
【0117】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0118】
<試験方法>
(耐熱試験)
200℃に温度設定した熱風循環オーブン内にて、3mm厚板状成形体を12時間養生し、養生後の外観を目視で評価し、透明性の変化がみられない場合を○、着色がみられる場合を×とした。
【0119】
(光線透過率)
紫外可視分光光度計V−560(日本分光株式会社製)を用い、温度20℃/湿度50%の条件下、波長700nmでの光線透過率を測定した。
【0120】
(ダイシング性)
ISOMETTM低速切断機(BUEHLER製)を用い、3mm厚板状成形体をダイヤモンドカッターで半分に切断し、クラックなしで切断できたものを○、切断できたが、クラックが入ってしまったものを×とした。
【0121】
(ヒートサイクル性試験)
縦0.4cm×横0.4cmのシリコン製ダミーチップを固定した縦 2.5cm×横5cmの基板に樹脂組成物を流し込んで硬化させた後、ダイシングし、一つの基板から4個の試験片を作成した。ダミーチップ数は、一個の試験片あたり1個固定した物を使用し、この試験片を熱衝撃試験機(エスペック製 TSA−71H−W)によって、高温さらし100℃, 30分間、低温さらし−40℃, 30分間を1サイクルとして、100サイクル試験を行った後、試料を観察した。ヒートサイクル試験後の結果を、クラックや剥離が入ってしまったものを×、クラックや剥離のないものを○とした。
【0122】
(製造例1)
48%コリン水溶液515gにテトラアルコキシシラン416gを加え、室温で3時間激しく攪拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、攪拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール400mLを加え均一溶液とした。ジメチルビニルクロロシラン2.4g、トリメチルクロロシラン3.1g、ジメチルクロロシラン0.1g、ヘキサン400mLの溶液を攪拌しながら、得られた均一溶液をゆっくりと滴下した。
【0123】
滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をアセトニトリル中で攪拌し洗浄した後、ろ別することにより多面体構造を有するポリシロキサン系化合物250gを得た。1H−NMRより、ビニル基が2.6個とトリメチルシリル基が5.1個、ヒドロシリル基が0.3個導入している事を確認した。
【0124】
(製造比較例)
48%コリン水溶液128gにテトラアルコキシシラン104gを加え、室温で3時間激しく攪拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、攪拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール113mLを加え均一溶液とした。ジメチルビニルクロロシラン120g、ジメチルクロロシラン16.7g、ヘキサン113mLの溶液を攪拌しながら、得られた均一溶液をゆっくりと滴下した。
【0125】
滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をアセトニトリル中で攪拌し洗浄した後、ろ別することにより多面体構造を有するポリシロキサン系化合物55gを得た。1H−NMRより、ビニル基が6.5個、ヒドロシリル基が1.5個導入している事を確認した。
【0126】
(実施例)
製造例1で得られた多面体構造を有するポリシロキサン系化合物10g、トルエン20gの混合溶液に、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)2.52μL、トルエン5gの混合溶液を滴下し、105℃で1時間加温したのち、室温まで冷却した。1H−NMRより、ポリシロキサン系化合物由来のヒドロシリル基のピークが消失している事を確認し、ヒドロシリル基がなくなっており、ビニル基が2.3個とトリメチルシリル基が5.1個存在している事を確認した。
【0127】
次いで1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(クラリアント製)20gとトルエン20gの混合溶液に滴下し、105℃で2時間加温したのち、室温まで冷却した。1H−NMRより、ポリシロキサン系化合物由来のビニル基のピークが消失している事を確認し、さらにヒドロシリル基が少なくとも3個以上入っている事を確認した。得られた反応溶液から、トルエンと未反応の1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体15gを得た。
【0128】
得られた多面体構造ポリシロキサン変性体10.0gに、ビニル基を両末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVMV、クラリアント製)2.12g、ビニル基を両末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVD8MV、クラリアント製)0.42g、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンを0.3μL、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.31gを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。得られた多面体構造ポリシロキサン系組成物を型枠に流し込み、80℃で3時間、110℃で5時間、150℃で2時間、100℃で1時間、80℃で1時間加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。このようにして得られた成形体の耐熱試験、ダイシング性、ヒートサイクル性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0129】
(比較例)
製造比較例で得られた多面体構造を有するポリシロキサン系化合物5g、トルエン40gの混合溶液に、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)1.33μL、トルエン5gの混合溶液を滴下し、105℃で1時間加温したのち、室温まで冷却した。1H−NMRより、ポリシロキサン系化合物由来のヒドロシリル基のピークが消失しており、ビニル基が5.0個存在している事を確認した。
【0130】
次いで1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(クラリアント製)16gとトルエン16gの混合溶液に滴下し、105℃で2時間加温したのち、室温まで冷却した。1H−NMRより、ポリシロキサン系化合物由来のビニル基のピークが消失している事を確認し、さらにヒドロシリル基が少なくとも3個以上入っている事を確認した。得られた反応溶液から、トルエンと未反応の1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体15gを得た。
【0131】
得られた多面体構造を有するポリシロキサン系化合物5gにビニル基を両末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVMV、クラリアント製)2.45g、ビニル基を両末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVD8MV、クラリアント製)0.49g、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンを0.01μL、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.20gを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。得られた多面体構造ポリシロキサン系組成物を型枠に流し込み、80℃で3時間、110℃で5時間、150℃で2時間、100℃で1時間、80℃で1時間加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。このようにして得られた成形体の耐熱試験、ダイシング性、ヒートサイクル性の評価を行った。このようにして得られた成形体の各種評価結果を表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
以上のように、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体からなる組成物は、透明性、耐熱性、耐光性、ダイシング性、ヒートサイクル性に優れている。また、液状組成物としての取り扱いも可能となるため、加工性・成形性にも優れることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル基およびヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)同士をヒドロシリル化して得られるポリシロキサン化合物(b)に、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)をヒドロシリル化させて得られる多面体構造ポリシロキサン変性体であって、該多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)が、以下の(i)または(ii)のいずれかを満たすことを特徴とする多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
(i)1分子中のアルケニル基が平均して1.0〜3.5個、かつ、1分子中のヒドロシリル基が平均して0.02〜1.0個。
(ii)1分子中のヒドロシリル基が平均して1.0〜3.5個、かつ、1分子中のアルケニル基が平均して0.02〜1.0個。
【請求項2】
前記ポリシロキサン化合物(b)において、(a)由来のアルケニル基もしくはヒドロシリル基のどちらか一方が残留していることを特徴とする請求項1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【請求項3】
温度20℃において、液状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【請求項4】
分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基またはアルケニル基を有する事を特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【請求項5】
(c)成分が、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有するシロキサン化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【請求項6】
(c)成分が、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する環状シロキサンであることを特徴とする、請求項5に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)。
【請求項7】
アルケニル基およびヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)同士をヒドロシリル化させて得られるポリシロキサン化合物(b)を得た後、さらにヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(c)とをヒドロシリル化反応させて得られることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体と硬化剤(B)とからなるポリシロキサン系組成物。
【請求項9】
硬化剤(B)が、アルケニル基またはヒドロシリル基を有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項8に記載のポリシロキサン系組成物。

【公開番号】特開2011−246656(P2011−246656A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123308(P2010−123308)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】