説明

大粗粒含有不定形耐火物の連続混練方法と連続混練機

【課題】不定形耐火物の連続混練、とくに、不定形耐火物が大粗粒を含有する場合であっても、連続混練機に支障を生じることなく原料粉末を均一に分散させること。
【解決手段】連続混練機10は、断面がU字形をした樋状のケーシング1と、そのケーシング1内に設けた回転軸2と、回転軸に設けた螺旋羽根3とパドル羽根4と、回転軸を駆動するモーター5とからなる。回転軸2のモーター5とは反対側の端部は外枠に設けた回転軸受け17に保持されている。ケーシングの上面には蓋13を有するが、この蓋13には上流側つまり図においてはモーター側から粗粒供給口14、スラリー供給口15、及び大粗粒供給口16を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶融金属容器、セメントロータリーキルン、焼却炉及び廃棄物処理炉等の内張施工あるいは補修に使用する大粗粒を含有する不定形耐火物の連続混練に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄鋼業においては、溶融金属容器である取鍋や樋等のライニングの施工と補修には不定形耐火物が多く使用されている。この不定形耐火物の中でもキャスタブルは、施工現場で水を加えて混練し、溶融金属容器の内側に鋳込み成形するという簡便な施工によって行われる。
【0003】
このキャスタブルには、施工後、緻密な組織となるように数ミクロンからサブミクロンまでの仮焼アルミナや無定形シリカ等の超微粉原料が使用されている。このような超微粉原料の使用によってキャスタブルは流動性が改善され、より低水分での施工が可能となり、緻密で耐用性に優れる施工体が得られるようになっている。
【0004】
ところが、通常、このキャスタブルの施工現場での混練設備においては、超微粉原料をスラリー中に完全に均一分散させることは難しく、そのため、超微粉原料を使用することによる本来の性能が完全に引き出されていないと言われている。
【0005】
さらに、使用現場での混練機の種類も様々で、中には混練能力に劣るものもあり、耐火物によっては均一な混練が困難で、キャスタブルによる施工体に十分な性能を発揮させるのは難しい場合もある。
【0006】
そこで、不定形耐火物の混練において、超微粉を含む微粉原料をスラリー中に均一分散させるために、あらかじめ、原料粉末中の微粉に分散剤と水とを、必要に応じて結合材を添加して混練したスラリーを予め調製し、次いで、このスラリーと微粉以外の他の原料粉末とを混練する方法が多く提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、コンクリートの連続混練ではあるが、砂およびセメントに水を計量供給し第1連続ミキサーで連続混練してモルタルを製造し、このモルタルの供給量に応じて骨材を連続供給し第2連続ミキサーで連続混練してコンクリートを連続的に製造する方法が記載されている。この方法によって、水とセメントの水和反応が十分に行われ、しかも、水に溶けてセメントミルクとなったセメントが砂と十分混練されて均質なモルタルができ、このモルタルが骨材を包むようになるため、大変強度が出るようになるコンクリートを連続的に製造することができるとされている。
【0008】
しかしながら、この方法は、混練効果が低いとされている連続混練機を使ってモルタルを混練しているため、耐火材料としてキャスタブル原料粉末中の超微粉原料をスラリー中に均一に分散することができない。また、セメントを一緒に混練しているため長期保管ができず、さらに、十分な品質管理が行える設備が整った施工現場から離れた遠方の工場で混練することができない。
【0009】
そこで、特許文献2には、あらかじめ、平均粒径が10μm以下の微粉原料と分散剤と水とを混練してスラリーとしておき、このスラリーを骨材等の他の原料と混練する2回に分けて混練する方法が開示されている。これによって、微粉が水中で十分に分散でき、流動性に優れたキャスタブルが得られ、強度の高い施工体が得られるとされている。
【0010】
しかしながら、平均粒径10μm以下の微粉原料の含有量は、キャスタブルの場合、多くて15質量%程度であり、通常は10質量%以下と低含有率である。
【0011】
このため、最初に少量の一部の微粉原料のみを水と混練してスラリーとし、次に他の乾燥した原料とスラリーとを混練する場合には、2度目の混練時に添加水分の調整が必要で、しかも、その変動が大きくなる。つまり、平均粒径10μm以下の原料を除いた1mm以下の微粉原料は、含有水分、気孔率、粒度等が原料銘柄や製造ロット等によって変動するため、どうしても、添加水分量に大きな影響を与えてしまう。そして、この方法を連続混練に適用するためには、混練途中にフロー値を確認して添加水分と流動特性との相関を確認する必要があり、そのためには、煩雑な作業が増える。
【0012】
一方、近年、不定形耐火物の施工法として、施工体の亀裂の進展を抑制し、剥離防止を図るために、粒径が10〜20mm程度あるいは、それ以上の30〜50mm程度の大粗粒を配合した不定形耐火物の施工も行われるようになった。
【0013】
この大粗粒を含有する不定形耐火物の場合、原料の粒度構成において、大粗粒以外のものとの間に粒度ギャップがあり、そのため、混練中に均一に分散しにくい問題がある。
【0014】
このため、施工現場では混練機として、連続混練機よりも生産性に劣るが混練効果に優れるバッチ式の混練機が使用されている。ところが添加水分量は作業者の経験で判断されるケースも多く、品質管理面での精度に欠ける問題があった。
【0015】
このため、近年では大粗粒を含有する不定形耐火物のための新たな連続混練方法が要望されている。
【0016】
例えば、先の特許文献1で開示されている連続混練機は、大粗粒を含むコンクリート材の混練に適用されており、底を可とう性材質によって形成し、オムニ効果で混練を助長し、しかも、この可とう性材質によって混練機の底を形成することで、混練機のスクリューおよびパドルを損傷することがなく、しかも、混練物が詰まることなく混練できるとされている。
【0017】
しかしながら、この連続混練機によって、あらかじめ微粉原料と分散剤と水とを混練して得たスラリーを、このような大粗粒を含む耐火物とともに混練すると、まず原料を定量供給するためのホッパーの中で原料が詰まってしまう問題がある。しかも、混練時には大粗粒の均一な分散が充分にできず、施工体の品質にバラツキを生じるという問題があることがわかった。
【0018】
また、特許文献3には、あらかじめ微粉原料と分散剤と水とを混練したスラリーを用いないで連続混練する大粗粒を含む不定形耐火物を混練するための連続混練機が開示されている。この連続混練機は、材料の供給口を、上流側から、大粗粒を除く粉末原料の供給口、水注入口、そして大粗粒供給口の順に分けて配置し、さらに、大粗粒供給口には羽根の長さが短いパドル羽根を設け、それぞれを、連続的に混練機に供給しながら連続混練するものである。この連続混練機においては、大粗粒は粉末原料と水との混練物に対して最後に添加されるものであるため、大粗粒が均一に分散できるとされている。
【0019】
しかしながら、この連続混練機の場合も、大粗粒の均一分散は未だ不十分で、また、原料が羽根と容器との隙間に噛み込み混練物が詰まり、そのため、混練機が止まってしまったり、さらには、混練中にモーターの負荷が異常に高くなって操業に支障を来す問題もあることがわかった。さらに、施工体の品質はバッチ式ミキサーで混練したものと比較するとバラツキが大きく劣るものであった。
【特許文献1】特開昭60−229715号公報
【特許文献2】特開平8−239276号公報
【特許文献3】特開2001−215086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明が解決しようとする課題は、不定形耐火物の連続混練、とくに、不定形耐火物が大粗粒を含有する場合であっても、連続混練機に支障を生じることなく原料粉末を均一に分散させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上流側から粗粒配合物、微粉スラリー、大粗粒配合物の順に連続的に連続混練機に供給する大粗粒含有不定形耐火物の連続混練方法であって、前記連続混練機は底部が可とう性材料からなる樋状のケーシングを有し、このケーシング内には回転軸が設けられ、この回転軸には複数の螺旋羽根と、これらの螺旋羽根の間に螺旋羽根とは逆向きのパドル羽根とが備えられていることを特徴とする。
【0022】
本発明の方法を実施するための連続混練機においては、螺旋羽根によって推進力を得たスラリーに対して、逆向きパドルによってその推進力に逆らう方向に大粗粒の押し込み力が極めて強く働く。そして、底部が可とう性材料からなっているため押し込まれたスラリーの逃げ代が可とう性材料のたわみ代で確保されて原料粒子の噛み込みが防止できる。
【0023】
その結果、大粗粒をスラリー中に均一に分散させることができ、しかも、連続混練機に大きな負荷を与えることがなくなる。
【0024】
これに対して、底部が金属製の場合には、材料が羽根と底部との間に噛み込んでしまい混練できなくなり、通常のパドル羽根では大粗粒の押し込み力が弱いので、大粗粒が均一に分散できない。
【0025】
さらに、混練機内を連続的に移動する粗粒配合物に対して上から微粉スラリーを供給することで、微粉スラリーが粗粒配合物中の粒子間の隙間に素早く浸透し、迅速に均一で流動性に優れるスラリー状の混練物が得られ、この粗粒配合物を含むスラリーに対して、大粗粒を添加する際に逆向きパドルの押し込み力が有効に働く。つまり、超微粉原料を含む微粉部があらかじめ混練されているため非常に流動性に優れるスラリーとなっており、このスラリーに対して大粗粒を押し込む時の抵抗は極めて小さくなり、逆向きパドルの押し込み力で大粗粒をスラリー中により均一に分散することができる。
【0026】
また、回転軸に螺旋羽根と逆向きパドルとを交互に配置することで、螺旋羽根と逆向きパドルの間でスラリーに対する大粗粒の押し込み力がより効果的に得られる。この螺旋羽根の作用が逆向きパドルの抵抗に打ち勝って混練物を排出口へ進めるためには、螺旋羽根の回転軸に対する角度は、250〜400度の範囲とすることができる。そして、混練中に材料を噛み込まず、しかも大粗粒を分散するためにはケーシングの底部の内面と螺旋羽根の端部との隙間は5〜20mmとすることもできる。
【0027】
本発明でいう粗粒配合物は耐火原料と結合材とからなり、耐火原料中には粒径1mm以上9.5mm未満の耐火原料を80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有する。残部の耐火原料は1mm未満の耐火原料もしくは9.5mm以上45mm未満の耐火原料である。粗粒配合物に1mm未満の原料を含有しても悪影響はほとんどないが、むしろ微粉スラリーとしての1mm未満の原料が少なくなるために、その使用は少ない方が良い。 また粗粒配合物中に9.5mm以上の原料を含有するとそれらが偏析しやすいので少ない方が好ましい。
【0028】
結合材は、1mm以下の微粉であることから、保管中に結合材を偏析させないこと、また、水と反応させないために粗粒配合物中に含ませることが必要である。これに対して、結合材を微粉スラリーに添加した場合には、微粉スラリーが水和反応を起こして移動や保管中に硬化してしまい、また、大粗粒配合物に添加したのでは、結合材が分離し偏析してしまう。そして、結合材を含む粗粒配合物中の耐火原料は、移送中の振動等により結合材が偏析するのを防止するために、その表面を結合材によってコーティングしていることがより好ましい。単に、粗粒中に結合材を添加しただけではトラック等による運搬中の振動によって結合材が分離し、この状態で連続混練機へ粗粒配合物を供給すると、スラリー中の結合材の濃度が不均一となり硬化不良が生じる。このように、結合材を耐火原料の表面にコーティングしておくことで、結合材が均一に分散した粗粒配合物を連続混練機に供給することができる。
【0029】
本発明で使用する結合材は、アルミナセメント、ポルトランドセメント、マグネシアセメント等を使用することができるが、アルミナセメントが耐火性の面から使い易い。
【0030】
また、コーティング方法としては、使用する耐火原料の表面に凹凸が多い場合には、事前にVコーン等の混合機等で十分混和することで耐火原料の表面に結合材の微粉をコーティングすることができる。例えば、電融アルミナ等の電融原料は表面に凹凸が多いため適正な混和条件(量と時間)を設定することでVコーン等の一般的な混和装置あるいは混練機等でコーティング処理することができる。また表面に凹凸の少ない原料は、事前に原料の表面に液体のみあるいは液体に希釈した糊を湿潤させた後で結合材と混合することでコーティングすることもできる。
【0031】
大粗粒配合物は、耐火原料のみからなり、ホッパーや定量供給装置等での詰りやセグレを防止すること及びスラリー中へ均一に分散しやすくする点から粒径9.5mm以上45mm以下の耐火原料を90質量%以上含有するが、より好ましくは95質量%以上であり、残部は9.5mm未満の耐火原料である。
【0032】
さらに、微粒スラリーは、耐火原料微粒に分散剤と水とを混練したスラリーであって、耐火原料は粒径1mm未満の耐火原料を80質量%以上含有するものであるが、最大粒径が1mm未満で平均粒径が10μm以上の耐火原料を50〜90質量%含むことがより好ましい。1mm以上の粒子を多く含むとそれらが沈降するため望ましくないが、施工現場で微粉スラリーを予備混練する場合には1mm以上の原料も使用可能である。混練時に添加水分量に影響を与える最大粒径が1mm未満で平均粒径が10μm以上の耐火原料は、予め、水と混練されてスラリーになるので、混練時の水分添加量の変動要因が少なくなる。 このため、現場での混練作業時には、添加水分が不要か、または、添加する場合でもその添加量のバラツキが小さくなる利点がある。
【0033】
微粉スラリーには、保存中の耐火原料粒子の沈降防止のために、増粘剤を添加することができる。この微粉スラリーの粘性は耐火原料の沈降防止の点から粘度が12.5Pa・s以上であることがより好ましい。12.5Pa・s未満では耐火原料粒子が沈降して分離しやすくなる。なお、この粘度はB型粘度計で25℃、3rpmの条件で測定した値である。
【0034】
増粘剤は通常一般的に市販されている増粘剤や沈降防止剤等を使用することができる。具体的には、バイオガム、グアーガム誘導体、セルロース誘導体等の天然系増粘多糖類やベントナイト等の無機系の公知の増粘剤や沈降防止剤を使用することができる。
【0035】
さらに、微粒スラリーは、移動中の振動によるあるいは長期保管中の沈降をより確実に防止するためにシュードプラスティック性を有していることがより好ましい。このシュードプラスティック性とは、静止状態で高粘性であり、剪断力を加えると粘度が剪断速度の上昇につれて低下する性質を意味する。このシュードプラスティック性のため、長期保存中は高粘性であるために1mm前後の粒子までは沈降による分離を防止することができ、しかも、攪拌するときには剪断力が働くため低粘性のスラリーとなる。このシュードプラスティック性をスラリーに付与するには、例えば、増粘剤としてバイオガムを添加することよって可能である。
【0036】
微粒スラリーとするために、耐火原料微粒に添加される分散剤としては、不定形耐火物に一般に使用されているものであれば問題なく使用することができる。
【0037】
さらに、この微粉スラリーには、大粗粒を含有する不定形耐火物の施工に必要とされる水分を全量含ませることができる。これによって、施工現場での混練時には水分添加が不要となり、施工現場の作業者が特別な管理をすることなく混練作業に携わることができるので、作業能率が大幅に向上ししかも安定した品質の施工体が得られる。
【0038】
この大粗粒を含有する不定形耐火物の総合的な配合組成としては、一般的な大粗粒を含有する不定形耐火物の配合組成を使用することができるが、より好ましくは混練作業の能率と施工体の品質の安定性の面から、粒径9.5mm以上45mmが10〜30質量%、粒径1mm以上9.5mm未満が30〜50質量%、及び粒径1mm未満が30〜50質量%の粒度構成を有する耐火原料と、結合材と、分散剤とで構成される配合組成である。また、必要に応じて増粘剤を添加しても良い。
【0039】
本発明で使用する耐火原料とは、不定形耐火物で通常使用されている耐火原料であれば問題なく使用することができる。例えば、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、炭素類、金属ホウ化物、金属等である。
【0040】
本発明の不定形耐火物の連続混練機は、底部が可とう性材料からなる樋状のケーシングと、このケーシング内に設けた回転軸を有し、前記回転軸には混練物に排出口へ向う推進力を与える方向に複数の螺旋羽根と、螺旋羽根とは逆向きのパドル羽根とが交互に取付けられた連続混練機が使用され、螺旋羽根は、回転軸の外周に、回転軸に対して250〜400度の範囲の角度で設けられ、ケーシングの底部の内面と螺旋羽根の端部との隙間は5〜20mmであるのがよい。
【0041】
尚、本発明の連続混練機は、大粗粒を含有する不定形耐火物の混練において、もちろん水のみを添加する従来法にも使用することができるが、本発明の混練方法に使用することでより低水分で緻密でしかもバラツキの少ない施工体が得られる。
【発明の効果】
【0042】
不定形耐火物が大粗粒を含有する場合であっても、大粗粒を均一に分散させることができ、バラツキが少ない高品質の施工体が得られる。
【0043】
大粗粒を含有する不定形耐火物を連続して混練するこができるので、製造能率が大幅に向上する。また混練機に大きな負荷がかかり混練中に詰まったり混練効果が低下することがない。
【0044】
施工現場での水分管理の手間がなくなるか少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって説明する。
【実施例】
【0046】
図1〜図4は、本発明の連続混練機の実施例を示す。
【0047】
図1は材料搬送方向と平行な断面図であり、図2は図1のA−A矢視図を示し、図3は螺旋羽根とパドル羽根との斜視図であり、図4は本発明の連続混練機を備えた施工装置の概略図を示す。
【0048】
図1及び図2に示すように本発明の連続混練機10は樋状のケーシング1と、そのケーシング1内に設けた回転軸2と、回転軸に設けた螺旋羽根3とパドル羽根4と、回転軸を駆動するモーター5とからなる。
【0049】
ケーシング1は、平面視の外形が長方形をした外枠11と、外枠11の内側に固定保持された細長い半円筒部12と、外枠の上面に設けた蓋13とからなる。
【0050】
半円筒部12は、図2に示すように材料進行方向と直角な断面が完全な半円ではなくU字形をしており、底部と側壁とが一体化したゴムから成り、底部は螺旋羽根の回転半径よりもやや大きな半円形で、上部は固定板111とボルト112によって外枠の内側に固定されている。
【0051】
半円同部12の一方の端部は開口して排出口121を形成し、もう一方の端部は回転軸を回転可能に保持した外枠の側壁122に固定されている。
【0052】
外枠は、内側に半円筒部を保持し、上面に蓋13を有するが、この蓋13には上流側つまり図においてはモーター側から第一供給口14、第二供給口15、及び第三供給口16を有している。
【0053】
そして外枠11の一端の上部にはモーター5が設けられ、モーター5はギヤ6によってギヤ7を駆動することで回転軸2を駆動可能にしている。
【0054】
回転軸2のモーター5とは反対側の端部は外枠の端部に設けた回転軸受け17に保持されている。
【0055】
半円筒部の底部と螺旋羽根との隙間は、5〜20mmであることがより好ましい。ここで底部とは回転軸芯を含む水平面よりも下の部分のことである。底部と螺旋羽根との隙間が5mm未満では、螺旋羽根と底部との間に耐火原料を噛み込むことがあり、20mmを超えると可とう性材質の伸縮による大粗粒を分散させる混練効果が不十分となる。
【0056】
つまり、本発明で使用する連続混練機は、少なくとも底部が可とう性材料になっている必要がある。可とう性材質としては天然ゴムや合成ゴム等を使用することができる。その厚みは5〜20mmが好ましい。5mm以下では十分な耐用性が得られずしかも反発力が少ないので混練効果も不十分になる。20mmを超えると混練時に伸びが不十分であり、耐火原料を螺旋羽根3との間に噛み込む問題がある。
【0057】
半円筒部の側壁の高さは、回転軸と平行な面を起点として螺旋羽根の回転半径以上必要でしかも回転半径と同じ高さまで垂直な壁であることがより好ましい。この理由は、パドル羽根4によってスラリーが推進方向とは逆向きに攪拌されるため、材料が上部へ逃げるための移動空間が必要なためである。
【0058】
半円筒部の上部も下部と同様に5〜20mmの隙間で断面が半円形になっていると、大粗粒の移動空間がなくなり、大粗粒が均一に分散しにくくなる。また、側壁が十分高い場合には蓋は不要であるが、側壁の高さが低い場合には蓋を設けた方が内容物が溢れないことから好ましい。
【0059】
回転軸2には、第一供給口より下流側には螺旋羽根3とパドル羽根4とが交互になるように配置されている。
【0060】
螺旋羽根3は図1及び図3に示すように排出口へ向って混練物に推進力を与える方向に螺旋形をしており、1枚づつ9箇所に設けている。
【0061】
そして1枚の螺旋羽根は回転軸の外周面に対して360度の範囲の角度で取付けている。
【0062】
螺旋羽根3どうしの間には矩形をした板状のパドル羽根4を2個づつ設けているが、混練物の推進方向が螺旋羽根3とは逆方向になるようにつまり螺旋羽根3とは逆向きに設けている。
【0063】
このパドル羽根4は、図1においては8箇所に設け1ヵ所につき2枚、対向して設けている。
【0064】
螺旋羽根3は、このパドル羽根4による逆方向の推進力に打ち勝つために、回転軸2の外周に対して250〜400度の範囲の角度で取付けることがより好ましい。250度未満では、パドル羽根4に対抗する推進力が不十分となり混練能率が低下し、400度を超えると推進力が強くなりすぎて大粗粒の均一分散が得られにくくなる。
【0065】
パドル羽根4は、少なくとも大粗粒配合物の投入位置から下流側に螺旋羽根3どうしの間に少なくとも2枚対向して設けることがより好ましい。パドル羽根4のみを連続して設けると大粗粒の押し込み効果が得られず、しかも混練時間が長くなり過ぎて混練効率が低下する。螺旋羽根3を連続して設けると大粗粒の分散が不十分となる。パドル羽根4はこのように2枚を1組とすることで混練効果がより高まるが、3枚あるいは4枚1組とすることもできる。パドル羽根の長さは螺旋羽根の長さ以下とする。
【0066】
次に、本発明の連続混練機を使用した施工装置(連続混練装置)の例を説明する。図4は、連続混練機が、架台8の受け台9に上下に回動可能に取付けられている。そして架台には、第三供給口16の上部には大粗粒配合物投入ホッパー18を、第一供給口14の上部には粗粒配合物投入ホッパー19をそれぞれ3箇所にロードセル(図示しない)を介して設けている。このロードセルによって原料の重量を自動測定することができるようになっている。
【0067】
大粗粒配合物投入ホッパー18には、テーブルフィーダー20を設けており、大粗粒配合物を自動的に定量供給することが可能である。
【0068】
粗粒配合物投入ホッパー19の下には電磁フィーダー21を有しており、粗粒配合物を自動的に定量供給することができる。
【0069】
スラリー供給機22はスラリー保持タンク23と、スラリーポンプ24と流量計25を備え、微粉スラリーを定量的にしかも連続して供給できるようになっている。
【0070】
スラリー保持タンク23は、微粉スラリーを常に攪拌し沈降を防止している、前述のホッパーと同様にロードセル(図示しない)によって微粉スラリー重量が自動測定できるようになっている。
【0071】
攪拌には、例えば水中撹乱ポンプ等を使用することができる。スラリーポンプの出口側には流量計25を設け、スラリーの供給量を自動制御することができる。
【0072】
次に、上記の連続混練機を使って不定形耐火物を混練する方法について説明する。
【0073】
本発明では、まず、大粗粒含有不定形耐火物の配合組成に対応して大粗粒配合物、粗粒配合物、及び微粉スラリーのそれぞれを事前に混合あるいは混練しておく。
【0074】
大粗粒配合物については、所定の配合割合になるよう秤量し、均一になるように混合機等で混合する。
【0075】
粗粒配合物については、所定の配合割合の耐火原料と結合材とを秤量し、混合する。この粗粒配合物中に電融アルミナのような電融原料を含む場合には、例えばVコーンで混合し、耐火原料の表面に結合材をコーティング処理する。
【0076】
微粒スラリーは、所定の配合割合の耐火原料、分散剤、及び水とを秤量し、例えばモルタルミキサーで混練して微粉スラリーとする。
【0077】
以上のように、大粗粒含有不定形耐火物を上記のように3つに分けて調整しておく。これは、耐火物メーカーでそれぞれを調整することでより高レベルな品質管理をした材料を得ることができる。
【0078】
以上のように別々に製造された材料を施工現場に移動し、大粗粒配合物投入ホッパー18と粗粒配合物投入ホッパー19にはそれぞれ大粗粒配合物と粗粒配合物を充満し、スラリー保持タンク23には、微粉スラリーを充満し、均一な組成となるように攪拌しておく。また、スラリー供給配管は、スラリー供給機22と連続混練機の第二供給口15に接続しておく。そして自動制御装置にて、大粗粒を含有する不定形耐火物の配合組成に対応してそれぞれの材料の供給量を設定する。
【0079】
そして、連続混練機10を使用した施工装置を始動すると、自動制御によって上流側で粗粒配合物が定量的に自動供給され螺旋羽根3によって下流方向に移動する。
【0080】
第二供給口15では微粉スラリーが定量的に自動供給される。そして連続混練機10内では微粉スラリーと粗粒配合物は螺旋羽根3とパドル羽根4によって均一に混練されながら、下流へ移動する。その下流側では大粗粒配合物が定量的に自動投入される。
【0081】
大粗粒配合物は粗粒配合物を含むスラリー中へ分散されるが、螺旋羽根3とは逆向きのパドル羽根4によるより強力な攪拌力によって分散される。
【0082】
さらに、半円筒部12は断面がU字側をしているので上部においてもコーナー部に螺旋羽根3に対する隙間がありこの部分でスラリーの抵抗を少なくし、より大粗粒の分散性を高めている。その結果、排出口からは大粗粒が均一に分散された混練物が排出されることになる。
【0083】
この混練物は引き続き溶融金属容器へ流し込み施工される。
【0084】
図1、図2、図3及び図4に示す連続混練装置を使用して表1に示す配合割合の大粗粒含有キャスタブルの配合組成を表2に示すように大粗粒配合物、粗粒配合物、及び微粉スラリーの3つに分けて耐火物原料の合計が1000kgになるように秤量し、混合または混練したものを連続混練機に供給して混練した(比較例1を除く)。粗粒配合物は、混合機で混合することで電融アルミナの表面にアルミナセメントが均一にコーティングされた混合物が得られた。また、微粉スラリーは、施工に必要な所定量の水を全量添加してミキサーで十分混練し微粉スラリーとした。そして、連続混練装置に対して、大粗粒配合物は大粗粒配合物投入ホッパーへ、粗粒配合物は粗粒配合物投入ホッパーへ、微粉スラリーはスラリー保持タンクへそれぞれ充填した。制御装置にてそれぞれの供給量を所定の表1の配合割合に応じて設定し、混練を開始すると自動的に材料が供給され混練物が得られた。また、混練時には水は添加しなかった。
【0085】
1000kgを連続混練し、連続して排出される混練物を30秒毎にサンプリングし、並形れんが形状の金枠6つに流し込んだ。混練速度は250kg/minで、1000kgの混練に4分要した。脱枠後、得られた成形体を乾燥し、それぞれの試験片からサンプルを切り出して曲げ強さと耐食性試験を行った。実施例2はスラリーの粘度を測定したところ19.2Pa・Sであった(測定条件はB型粘度計、25℃、3rpm)。
【0086】
また、比較例1は、バッチ式ミキサーで同様にして粗粒配合物、微粉スラリー、大粗粒配合物の順に投入し1バッチで100kgを5分間で混練し、混練物をランダムにサンプリングして並形れんが形状の金枠6つに流し込み、これ以降は実施例と同じ手法で試験を行った。
【0087】
実施例の試験結果から、バッチ式混練機と同等な物性でしかもバラツキの少ない施工体が得られることがわかった。
【0088】
一方、比較例2は、微粒スラリー中の粒径1mm未満かつ平均粒径10μm以上の耐火原料の割合が73質量%と本発明の範囲外で、微粒スラリー中の粗粒が多すぎるため施工体のバラツキが大きくなっている。比較例3は、粗粒配合物中の粒径1mm以上9.5mm未満の耐火原料の割合が69質量%と本発明の範囲外で、混練効果が不十分なため耐食性が低下しバラツキも大きくなっている。
【表1】

【表2】

【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の連続混練機の断面図である。
【図2】図1のA−A矢視図を示す。
【図3】螺旋羽根とパドル羽根との斜視図である。
【図4】本発明の連続混練機を備えた施工装置の概略図を示す。
【符号の説明】
【0090】
1 ケーシング
2 回転軸
3 螺旋羽根
4 パドル羽根
5 モーター
6、7 ギヤ
8 架台
9 受け台
10 連続混練機
11 外枠
111 固定板、 112 ボルト
12 半円筒部
121 排出口、 122 側壁
13 蓋
14 第一供給口
15 第二供給口
16 第三供給口
17 回転軸受け
18 大粗粒配合物投入ホッパー
19 粗粒配合物投入ホッパー
20 テーブルフィーダー
21 電磁フィーダー
22 スラリー供給機
23 スラリー保持タンク
24 スラリーポンプ
25 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から粗粒配合物、微粉スラリー、大粗粒配合物の順に連続的に連続混練機に供給する大粗粒含有不定形耐火物の連続混練方法であって、前記連続混練機は底部が可とう性材料からなる樋状のケーシングを有し、このケーシング内には回転軸が設けられ、この回転軸には複数の螺旋羽根と、これらの螺旋羽根の間に螺旋羽根とは逆向きのパドル羽根とが備えられている大粗粒含有不定形耐火物の連続混練方法。
【請求項2】
螺旋羽根は、回転軸の外周に、回転軸に対して250〜400度の範囲の角度で設けられ、ケーシングの底部の内面と螺旋羽根の端部との隙間は5〜20mmであり、大粗粒配合物の供給位置から下流側には螺旋羽根と逆向きのパドル羽根とが交互に取付けられている請求項1に記載の大粗粒含有不定形耐火物の連続混練方法。
【請求項3】
粗粒配合物は耐火原料と結合材とからなり、耐火原料は粒径1mm以上9.5mm未満の耐火原料を80質量%以上含有し、
大粗粒配合物は耐火原料のみからなり、粒径9.5mm以上45mm以下の耐火原料を90質量%以上含有し、
微粒スラリーは耐火原料に分散剤と水とを混練したスラリーであって、耐火原料は粒径1mm未満の耐火原料を80質量%以上含有している請求項1に記載の大粗粒含有不定形耐火物の連続混練方法。
【請求項4】
微粉スラリー中の耐火原料には最大粒径が1mm未満で平均粒径が10μm以上の耐火原料が50〜90質量%含まれている請求項3に記載の大粗粒含有不定形耐火物の連続混練方法。
【請求項5】
微粉スラリーは施工に必要な水分を全量含有している請求項3または請求項4に記載の大粗粒含有不定形耐火物の連続混練方法。
【請求項6】
粗粒配合物は、耐火原料の表面に結合材がコーティングされている請求項3に記載の大粗粒含有不定形耐火物の連続混練方法。
【請求項7】
底部が可とう性材料からなる樋状のケーシングと、このケーシング内に設けた回転軸を有し、
この回転軸には混練物に排出口へ向う推進力を与える方向に複数の螺旋羽根と、螺旋羽根とは逆向きのパドル羽根とが交互に取付けられ、
螺旋羽根は、回転軸の外周に、回転軸に対して250〜400度の範囲の角度で設けられ、
ケーシングの底部の内面と螺旋羽根の端部との隙間は5〜20mmである大粗粒含有不定形耐火物の連続混練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−15184(P2007−15184A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197879(P2005−197879)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】