説明

大腸癌予防剤

【目的】 スフィンゴ糖脂質を配合した大腸癌抑制剤
【構成】 スフィンゴ糖脂質または、スフィンゴ糖脂質含有物を飲食品、医薬品に配合し、安全性の高い新規な大腸癌予防剤を提供する。
【効果】 大腸癌発生に関与があると考えられる異型陰窩巣(ACF)および粘液枯渇巣(MDF)を防ぐことで、安全性の高い新規な大腸癌予防に有用な飲食品または薬品を提供する事が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医薬品、医薬部外品、飲食品等に適用されるスフィンゴ糖脂質又はスフィンゴ糖脂質を含有する大腸癌予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸癌による死亡率は我が国では消化器癌のうち、胃癌に次いで高く、特に最近の欧米型の食習慣化により急増している。
近年、ヒト大腸癌についての癌遺伝子や発癌抑制遺伝子の解析が積極的に行われているが、長年月を要する大腸癌の発生機構の解明は現在なお困難であり、大腸癌の発生に関わる環境要因の様式の解明は容易ではない。大腸癌の化学予防は、天然または合成系化学物質による発癌プロセスの抑制により行われる現在のような時代的背景において、天然物由来の安全な予防物質を発見することは特に重要である。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような背景の下、本発明者らは、各種成分について実験を行い、鋭意研究に努めた結果、米糠から抽出、精製したスフィンゴ糖脂質に大腸癌の発癌抑制作用があることを見出した。
本発明の目的は、スフィンゴ糖脂質という、米糠から得られ、しかも安全性の高い新規な大腸癌予防剤、並びにこれを含有する飲食品および薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための本発明の大腸癌予防剤は、米糠をそのまま用いる事は可能である。抽出する場合、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、二酸化炭素など、どの様な溶媒を、どの様に組み合わせても可能である。
【0005】
本発明の飲食品は、前記大腸癌予防剤を含有してなることを特徴とする。
本発明の薬品は、前記大腸癌予防剤を含有してなることを特徴とする。
【発明実施の形態】
【0006】
本発明に用いるスフィンゴ糖脂質としては、精製したものを用いるとよい。また、それに限らず、スフィンゴ糖脂質を含有する原料としては、米糠又は米糠から得られた抽出物でも用いることができる。
【0007】
前記、抽出溶媒としては、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、二酸化炭素などをそのまま単一溶媒で用いるか、2種類以上を任意に混合して用い、エキスを作成する事も出来る。
【0008】
本発明の大腸癌予防剤のエキスを用いる場合、抽出温度は、抽出溶媒が液体状態で有ればよく、そのつど温度は任意に決められる事になる。抽出時間は、好ましくは、1時間以上必要であるが温度条件によっては、もっと短い時間でも可能である。
【0009】
本発明の大腸癌予防剤はスフィンゴ糖脂質もしくはスフィンゴ糖脂質精製物、または米糠抽出物をそのまま製剤の形態にしてもよいが、食品原料に所要量を加えて一般の製造法により加工製造してもよい。例えば大腸癌予防剤を飲料に添加物として直接添加するか、固形食品に添加して癌予防の食品、健康食品等として提供することができる。
【00010】
本発明の大腸癌予防剤の効果を損なわない範囲で、本発明の大腸癌予防剤を油分、高級アルコール、脂肪酸、界面活性剤、多価アルコール、糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、高分子化合物、生理活性成分、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤等の医薬品、食品、食品添加物に配合することができる。
以下に配合される成分を列挙するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
油分としてはトリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソアラキル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、カプリル酸セチル、ラウリン酸デシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルデシル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンイソステアリン酸エステル、炭酸ジプロピル、炭酸ジアルキル(C12〜C18)、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソアラキル、クエン酸トリイソオクチル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オクチルデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソセチル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソステアリル、スクワラン、流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマー、イソパラフィン、セレシン、パラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、牛脂、硬化牛脂、豚脂、硬化豚脂、馬油、硬化馬油、ミンク油、オレンジラフィー油、魚油、硬化魚油、卵黄油等の動物油およびその硬化油、アボカド油、アルモンド油、オリブ油、カカオ脂、杏仁油、ククイナッツ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、シアバター、大豆油、月見草油、シソ油、茶実油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、硬化ナタネ油、パーム核油、硬化パーム核油、パーム油、硬化パーム油、ピーナッツ油、硬化ピーナッツ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ホホバ油、硬化ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドホーム油、綿実油、硬化綿実油、ヤシ油、硬化ヤシ油等の植物油およびその硬化油、ミツロウ、高酸価ミツロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬化ラノリン、液状ラノリン等が挙げられる。
高級アルコールとしてはラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2−エチルヘキサノール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
脂肪酸としてはカプリル酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸、2−エチルヘキサン酸等が挙げられる。
界面活性剤としてはプロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、水素添加大豆リン脂質、レシチン、サポニン、糖系界面活性剤等が挙げられる。
多価アルコール及び糖としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ラフィノース、エリスリトール、グルコース、ショ糖、果糖、キシリトール、ラクトース、マルトース、マルチトール、トレハロース、アルキル化トレハロース、混合異性化糖、水溶性多糖類、硫酸化トレハロース、プルラン等が挙げられる。またこれらの化学修飾体等も使用可能である。
高分子化合物としてはセルロース又はその誘導体、ケラチン及びコラーゲン又はその誘導体、アルギン酸カルシウム、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、グアーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン等の天然由来高分子化合物も好適に用いることができる。
生理活性成分としてはビタミン類、アミノ酸、各種植物抽出物等が挙げられる。これらの好適な配合成分の例としては、例えばアシタバエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、温州みかんエキス、エチナシ葉エキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、カカオエキス、カカオハスクエキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カワラヨモギエキス、カルカデエキス、カキョクエキス、γ−アミノ酪酸富化米胚芽、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、米胚芽発酵エキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンジョウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソの実エキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、植物ステロール、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソバの葉エキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チオクト酸、チガヤエキス、チンピエキス、月見草エキス、月見草種子エキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、トコトリエノール、トマトエキス、トリテルペノイド、納豆エキス、生コーヒー豆エキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、フキエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブロッコリーエキス、ブロッコリースプラウトエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユズ種子エキス、ヨクイニンエキス、ライチ種子エキス、ラベンダーエキス、ルテイン、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
また、デオキシリボ核酸、ムコ多糖類、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜などの生体高分子、アミノ酸、加水分解ペプチド、乳酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質などの油性成分、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンD、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド等のビタミン類、γ−オリザノール等の血行促進剤、製剤の酸化防止を目的とする酸化防止剤としては亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ジラウリル、トリルビグアナイド、ノルジヒドログアヤレチン酸、パラヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル。
【0011】
また、本発明の大腸癌予防剤は、飲食品に含有させることができる。例えば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック菓子、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)などが上げられる。インスタント食品に本発明の大腸癌予防剤を添加しても良い。例えば、大腸癌予防剤を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥したものを、粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品に含有させることができる。
【0012】
本発明の大腸癌予防剤は、医薬品、医薬部外品、機能性食品等の内服剤に配合することができる。投与方法は経口投与することが望ましい。一般的には錠剤、丸剤、軟・硬カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤等の製品形態にすることができる。
【0013】
本発明の大腸癌予防剤は、医薬品、飲食品に添加する場合、有効成分の使用量に特に制限はない。健康食品として摂取する場合、病気予防や健康維持が目的であるので、含有する飲食品に対して有効成分が合計0.01〜10重量%であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、次のような優れた効果を奏する。
(a)植物原料である米糠から安全性の高い新規な大腸癌予防剤を得ることができる。
(b)副作用のない癌予防食品や癌予防・治療薬を容易に製造することができる。
(c)飲食品または薬品から大腸癌予防の有効成分を日常的に摂取しやすくすることができる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に示す大腸癌予防剤およびその製法は、大腸癌予防効果の確認のために説明するもので、これらに限定されるものではない。
【0016】
(1)米糠10kgを5倍量(重量)クロロホルム/メタノール(混合比2:1)抽出溶媒に加えて抽出を行った。同じ操作を3回繰り返し行い、抽出液を回収し、溶媒を留去してスフィンゴ糖脂質含有抽出物を得た。次に、抽出物をクロロホルム/メタノール/水(3:48:47)で3回水洗して、水洗後のクロロホルム層を濃縮した。さらに、濃縮物を10倍量クロロホルムに溶かして、シリカゲルカラムに注入し、クロロホルムで中性油を溶出した後、クロロホルム/メタノール(3:1)でスフィンゴ糖脂質を溶出した。この操作を2回繰り返し、すべてのクロロホルム/メタノール(3:1)溶出部を合わせて溶媒留去した後、固形分含量が5%になるようにヘキサン/プロパノール(9:1)に溶かして、シリカゲルカラム処理を行った。その後、ヘキサン/エタノール(4:1)でスフィンゴ糖脂質を回収した。スフィンゴ糖脂質フラクションを集め、濃縮、真空乾燥により、純度95%以上の精製スフィンゴ糖脂質100mgを得た。
【0017】
大腸癌抑制試験
次に、動物実験による大腸癌の発癌抑制作用を試験した。
試験用のサンプルとしては、スフィンゴ糖脂質を8.6%含有する米糠抽出物と90%以上のスフィンゴ糖脂質の微粉砕品を用いた。
【0018】
実験(1)のプロトコール図.1に示す。
実験(1):5週齢、雄F344ラット4匹を使い、6群に分け(実験プロトコール図.1参照)、第1〜4群に対してはアゾキシメタン(azoxymethane:AOM)(20mg/kg,body weight)を週1回の計2回皮下投与した。第2〜4群のラットにはAOM投与の1週間前から基礎食にスフィンゴ脂質を8.6%含有する米糠抽出物粉末(cGSL)を250,1,000,3,000ppmの濃度で混餌投与した。第5群はcGSL摂取による副作用の有無を検討するするためにcGsL3,000ppmを含む基礎食を与えた。第6群は対照群として基礎食のみを与えた。全てのラットは実験開始5週目にCOガス麻酔下で屠殺し,大腸,肝臓,腎臓を採取した。大腸は長軸方向に切り開いて10%中性緩衝ホルマリンで固定した。肝および腎は重量を測定し,10%中性緩衝ホルマリンで固定した。
大腸前癌病変の評価:
固定の終了した大腸をアルシアン青染色(pH2.5)した後,光学顕微鏡で大腸癌の前癌病変と考えられているaberant crypt foci(ACF),mucin depleted foci(MDF)の数を測定した。通常の大腸粘膜陰窩から腫大した異型陰窩巣形成を見る、いわゆるaberant crypt foci(ACF)の数を調査した。また、一つのACFに含まれる陰窩数を観察し、大腸癌発生に関与があると考えられる大型ACF(ACF内に4つ以上の陰窩を認めるもの)の数を調査した。具体的には大腸を3%酢酸溶液で2分,0.5%アルシアン青(3%酢酸中)で5分,ホウ酸・塩化ナトリウム・ホウ砂緩衝液(Palitisch buffer)で5分間処理した。染色の済んだ大腸はガラス板に載せ,乾燥しないように蒸留水で浸しながら100倍で全ての粘膜面を顕鏡し病変の数を記録した。ラット1匹あたりのACF数の有意差判定にはDucanの多重比較検定を用い、ACF数の統計値を算出した。
【0019】
実験(2)のプロトコール図.2に示す。
実験(2):5週齢、雄F344ラット114匹を7群に分け(実験プロトコール図.2参照)、第1〜5群に対しては実験(1)と同様にAOM(20mg/kg bodyweight)を週1回2週間皮下注射し、大腸癌の前癌病変であるACFとMDFを誘発した。第1群はAOM投与1週間前より基礎食を実験終了8週目まで与えた。実験(1)の結果を考慮して、第2,3群は実験(1)で使用した粗精製物を約90%の純度に精製したスフィンゴ脂質(GCM)を、100及び250ppm含有する餌をそれぞれ実験開始より4週間投与しその後は基礎食を実験終了まで与えた。第4,5群は実験開始3週目より100及び250ppm GCM含有食をそれぞれ実験終了まで投与した。第6,7群はAOM非投与群で250ppmGCM含有食と基礎食を通期で与えた。実験開始4週目には第1−3群(各12匹)と第6,7群(各3匹)をそれぞれ屠殺した。また、8週目には全てのラットを屠殺し大腸を摘出しホルマリン固定後、実験(1)と同様にアルシアン青染色(pH2.5)を行い、ACFとMDFを測定し、GCMのinitiation期及びpost−initiation期投与によるACFとMDFの抑制効果を検討した。
【0020】
結果を表1に示す。
【表1】
実験(1):全てのラットは実験終了まで生存し,大腸に腫瘍を形成した個体は認めなかった。各群の体重,相対肝および腎重量(体重100gあたりの臓器重量)の平均ではいずれの群間でも有意な差は認められず(P>0.05)、AOM,cGSLの投与による体重抑制,肝・腎重量抑制の副作用はなかった.
cGSLが大腸前癌病変の数に与える影響:
AOMを投与した第1から4群までの全ての個体の大腸にはACFの発生がみられた.各群のACF数の平均は第1群;138.2±24.8,第2群;116.1±16.8,第3群;97.9±17.7,第4群;105.9±37.6であり,陽性対照群(第1群)に比べcGSLを投与した群では有意な減少を認めた(P<0.05)。一方、MDFについては,第1群;13.9±4.1,第2群;8.2±1.9,第3群;7.8±2.5,第4群;9.8±2.4であり,ACF発生数と同様に陽性対照群(第1群)に比べcGSL投与群で有意な差を認めた(P<0.01)。尚、第5と6群では前癌病変は認めなかった。
【0021】
結果を表2に示す。
【表2】
実験(2):実験開始4週目におけるACFとMDF発生数は陽性対照群(第1群)でそれぞれ75.7±17.5、9.2±5.2であった。それに対し、initiation期にGCMを混餌投与した第2,3群におけるACFとMDFはそれぞれ第2群で45.9±8.8(P<0.01)、0.8±0.8(P<0.05)、第3群で44.8±14.5(P<0.01)、0.8±0.4(P<0.05)であり第1群に比較し有意な抑制が認められた。
実験開始8週目における各群のACFはそれぞれ第1群111.1±32.9、第2群90.1±28.1、第3群74.8±19.9(P<0.05)、第4群89.0±28.6、第5群78.7±14.9(P<0.05)であり250ppmGCMのinitiation期及びpost−initiation期投与群において第1群に比較し有意な抑制が認められた。一方、MDF数はそれぞれ第1群17.2±6.6、第2群10.8±5.9(P<0.05)、第3群6.8±27(P<0.05)(P<0.005)、第4群10.0±5.1(P<0.05)、第5群9.6±3.1(P<0.01)でありGCMのinitiation期及びpost−initiation期投与全群において第1群に比較し有意な抑制が認められた。
以上の結果から、大腸粘膜内の2種類前癌病変のACFおよびMDF発生数を大腸癌の前癌病変マーカーとした場合、粗抽出およびその精製物の混餌投与により、同等の濃度で、前癌病変の抑制効果を示し、がん病巣の芽を抑制する点で、がん予防の可能性を示唆した。特に発癌剤と投与と同時でなく、腫瘍形成のプロモーション期での投与により、前癌病変の発生低下を示し、細胞増殖抑制のみならず、アポトーシス誘導の可能性をした。
【0022】
製造例
本発明による大腸癌予防剤を適用した飲食品または薬品の製造例を示す。なお、下記の原料の種類および配合比は、適宜変更することが可能である。
製造例1:ソフトカプセル
玄米胚芽油 87.0wt%
乳化剤 12.0
大腸癌予防剤 1.0
100.0wt%
【0023】
製造例2:錠剤
乳糖 54.0wt%
結晶セルロース 30.0
澱粉分解物 10.0
グリセリン脂肪酸エステル 5.0
大腸癌予防剤 1.0
100.0wt%
【0024】
製造例3:錠菓
砂糖 76.4wt%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
大腸癌予防剤 0.5
精製水 3.9
100.0wt%
【0025】
製造例4:チューインガム
砂糖 53.0wt%
ガムベース 20.0
グルコース 10.0
水飴 16.0
香料 0.5
大腸癌予防剤 0.5
100.0wt%
【0026】
製造例5:キャンディー
砂糖 50.0wt%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
大腸癌予防剤 0.4
100.0wt%
【0027】
製造例6:グミ
還元水飴 40.0wt%
グラニュー糖 20.0
ブドウ糖 20.0
ゼラチン 4.7
水 9.68
ウメ果汁 4.0
ウメフレーバー 0.6
色素 0.02
大腸癌予防剤 1.0
100.0wt%
【0028】
製造例7:ヨーグルト(ハード・ソフト)
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
大腸癌予防剤 0.4
香料 微量
水 残余
100.0wt%
【0029】
製造例8:清涼飲料
果糖ブドウ等液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
大腸癌予防剤 0.05
香料 微量
精製水 残余
100.0wt%
【0030】
製造例9:コーヒー飲料(液状)
焙煎コーヒー豆 6.0wt%
砂糖 6.0
重曹 0.2
乳化剤 0.15
大腸癌予防剤 1.0
水 残余
100.0wt%
【図1】

【図2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴ糖脂質又はスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする大腸癌予防剤。
【請求項2】
大腸癌予防剤であるスフィンゴ糖脂質又はスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする医薬品。
【請求項4】
大腸癌予防剤であるスフィンゴ糖脂質又はスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項5】
大腸癌予防剤であるスフィンゴ糖脂質又はスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする健康食品。
【請求項6】
大腸癌予防剤であるスフィンゴ糖脂質又はスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする機能性食品。
【請求項7】
大腸癌予防剤であるスフィンゴ糖脂質又はスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする医療用食品。
【請求項8】
スフィンゴ糖脂質が米糠由来であること、スフィンゴ糖脂質を0.001%〜100%含有することを特徴とする大腸癌予防剤。

【図1】実験(1)のプロトコールを示す説明図である。
【図2】実験(2)のプロトコールを示す説明図である。

【公開番号】特開2006−290856(P2006−290856A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139057(P2005−139057)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(594045089)オリザ油化株式会社 (96)
【Fターム(参考)】