説明

天然ガスエンジン用の潤滑油組成物

【課題】天然ガスエンジン用の潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】
下記の成分を含む潤滑油組成物:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤、ただし、潤滑油組成物はリンを、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量パーセントを超える量で含むことなく、かつ潤滑油組成物は如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物、および天然ガスを燃料とする内燃機関の排気弁座凹みの発生の防止又は抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスを燃料とするエンジン(天然ガス燃料エンジン)とは、燃料源に天然ガスを使用するエンジンのことである。天然ガスエンジンに使用される潤滑油としては一般に、この種のエンジンであるとの条件ゆえに、耐酸化性、耐ニトロ化性および粘度増加抑制性の高い潤滑油が好ましい。
【0003】
天然ガスは、液体炭化水素燃料よりも比熱容量が高く、よって一般的な条件では液体炭化水素燃料よりも高温で燃焼することになる。また、天然ガスは既に気体であるので、液体炭化水素燃料の液滴に比べて蒸発によって吸入空気を冷却することができない。さらに、多くの天然ガスを燃料とするエンジンは化学量論条件かそれに近い条件で運転され、僅かな過剰空気しか、燃焼ガスを希釈したり冷却したりするのに利用できない。その結果、天然ガスを燃料とするエンジンでは、液体炭化水素燃料を燃焼するエンジンよりも高い燃焼ガス温度が生じる。多くの場合、天然ガスを燃料とするエンジンが連続して70乃至100%負荷で使用されるのに対して、車両運行で運転されるエンジンでは全負荷にその運転時間の50%しか費やされない。
【0004】
この連続してほぼ全負荷で運転するという条件は、潤滑剤に厳しい要求をつきつける。例えば、潤滑剤が持続した高温環境に供されることにより、潤滑剤の寿命は、しばしば油酸化工程によって制限される。また、窒素(NOx)の生成速度は温度で指数関数的に増加するので、天然ガスを燃料とするエンジンでは、深刻な潤滑油のニトロ化を引き起こすほど充分に高いNOx濃度が発生する。
【0005】
エンジンの運転費用を低下させるためには、優れた弁摩耗抑制も重要であり、適正な量及び組成の灰分を供することによって達成できる。また、燃焼室の堆積物や点火プラグ汚れを最少にすることも、このような油の灰分を設定するときの考慮すべき事項である。潤滑油の灰分レベルが制限されるので、清浄剤は、ピストン堆積物やリング固着が最少となるように慎重に選ばなければならない。
【0006】
耐弁摩耗性も、天然ガスを燃料とするエンジンの耐久性には重要である。一般的に、排気弁凹みの発生は、弁と弁座の接触面で生じる摩耗に起因し、天然ガスを燃料とするエンジンでは弁摩耗が最も著しい。弁を適正に閉ざすことが妨げられると、エンジンの粗雑な作動や不充分な燃費、過剰な排出ガスの生成を引き起こすことがある。過剰な弁摩耗を修理するには、通常、シリンダヘッドの分解整備が必要となる。天然ガスを燃料とするエンジンは一般に、弁当たり面や弁座合わせ面に非常に硬い耐食性物質を用いることによりシリンダヘッド寿命を長くしているけれども、弁凹みの発生を完全には排除できていない。
【0007】
天然ガスを燃料とするエンジンと液体炭化水素燃料を燃料とするエンジンとでは、潤滑油の要求条件に違いがある。ディーゼル燃料のような液体炭化水素燃料の燃焼の場合は、しばしば少量の不完全燃焼物(例えば、排気粒子)が生じる。液体炭化水素を燃料とするエンジンでは、これら不燃物が排気弁/弁座接触面に僅かであるが重要な潤滑性をもたらし、それによりシリンダヘッドと弁両方の耐久性を確保している。
【0008】
天然ガスを燃料とするエンジンでは、燃焼室に気相で導入された燃料が燃焼する。天然ガス燃料の燃焼は往々にして非常に完全であり、事実上不燃物が無い。このことは吸気及び排気弁に重大な影響を及ぼす。なぜならば、天然ガスを燃料とするエンジンの排気弁/弁座接触面には、潤滑を助ける液滴またはススのような燃料由来の潤滑剤が存在しないからである。従って、シリンダヘッドと弁の耐久性は、潤滑油の灰分や他の性状、および高温の弁当たり面とその合わせ弁座間に潤滑剤が付与する消費の速度によって制限される。少な過ぎる灰分または間違ったタイプのものでは弁及び弁座の摩耗を加速することがあり、一方、多過ぎる灰分は弁上の筋流れ(ガタリング)、次いで弁の焼付き(トーチング)を招きうる。また、多過ぎる灰分は燃焼室堆積物の圧縮又はデトネーション損失を招くこともある。その結果、ガスエンジンの製造者たちはしばしば、彼等が学んで知った最適な性能を与える狭い灰分範囲を特定している。大抵のガスは硫黄が少ないので、アルカリ度要求条件に対処するのに過剰な灰分は一般に必要ではなく、灰分レベルは主として弁類の要求に基づいて最適化される。ただし、サワーガスや埋立地ガスを使用する場合には、例外もあるかもしれない。
【0009】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛類は、耐摩耗および酸化防止用の天然ガスエンジン油添加剤パッケージに用いられる非常に有効な添加剤であり、例えば排気弁に生成する灰の生成に寄与することが明らかになっている。しかし、ジアルキルジチオリン酸亜鉛類は実際には、弁当たり面と化学的に反応するか、あるいは弁当たり面から簡単に離脱する他の灰原料と化合物を作ると考えられる。
【0010】
さらに、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の使用に関する問題は、そのリン及び硫黄の誘導体が触媒コンバータの触媒成分を害することにもある。有効な触媒コンバータは、汚染を低減して、内燃機関の排気物質中の有害ガス、例えば炭化水素類や一酸化炭素、窒素酸化物を削減するように設計された政府規制を満たす必要があるので、これは大きな関心事である。そのような触媒コンバータは一般に触媒金属の組合せ、例えば白金と金属酸化物を使用し、そして排気流れ、例えば自動車の排気管に取り付けられて有害ガスを有害でないガスに変換する。従って、潤滑油中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の量を低減させ、それにより触媒失活を減らして触媒コンバータの寿命と有効性を高めながら、将来の工業標準規格案のエンジン油のリン分と硫黄分も満たすことが望ましい。しかしながら、単純にジアルキルジチオリン酸亜鉛の量を減らすことには問題がある。というのは、これは必然的に潤滑油の耐摩耗性および酸化防止性を低下させるからである。このため、エンジン油の耐摩耗性および酸化防止性を保持する方法を見つける必要がある。
【0011】
特許文献1(「‘163特許明細書」)には、天然ガスを燃料とする内燃機関のエンジン構成部分に潤滑油組成物を潤滑量で維持することにより、内燃機関の排気弁凹みの発生を抑制又は防止する方法が開示されている。‘163特許明細書は更に、潤滑油組成物が次の成分を含有することも開示している:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)組成物の清浄性を高めるのに充分な量の少なくとも一種のアルカリ土類金属スルホネート、および(c)(i)アルキレンポリアミンと、(ii)アルデヒドと、(iii)置換フェノールの縮合物の少なくとも一種のアルカリ土類金属塩、ただし、縮合物のアルカリ土類金属塩は、エンジン排気弁のエンジンシリンダヘッド内への凹みの発生を防止するのに充分な量で存在させる。
【0012】
特許文献2(「‘133特許明細書」)には、主要量の潤滑粘度の基油、およびASTM D874で硫酸灰分が約0.1乃至0.6%となるのに充分な少量の添加剤混合物であって、全塩基価(TBN)が約250以下で低い少なくとも一種の第一のアルカリ又はアルカリ土類金属塩又はそれらの混合物と、第一の低TBN塩よりは中性である少なくとも一種の第二のアルカリ又はアルカリ土類金属塩又はそれらの混合物とを含む清浄剤混合物を含む添加剤混合物、を含む低灰分ガスエンジン油が開示されている。‘133特許明細書には更に、完全配合ガスエンジン油は一般に、ジチオリン酸亜鉛などの耐摩耗性添加剤、分散剤、フェノール系又はアミン系酸化防止剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、消泡剤および粘度指数向上剤を含む、当該分野の熟練者に知られている他の標準的な添加剤も含有することができるとの開示がある。
【0013】
特許文献3(「‘842特許明細書」)には、(a)主要量の潤滑油、(b)反応性硫黄を実質的に含まない油溶性モリブデン化合物、(c)油溶性ジアリールアミン、および(d)アルカリ土類金属フェネートを含有する潤滑油組成物が開示されている。‘842特許明細書には更に、組成物が更に耐摩耗性添加剤として二炭化水素ジチオリン酸亜鉛を含むことができるとの開示がある。また、‘842特許明細書の実施例2に開示された油ブレンド18は、耐摩耗性添加剤を含有し、そしてカミンズ天然ガスエンジン試験にて排気弁凹み発生の評価がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第3798163号明細書
【特許文献2】米国特許第5726133号明細書
【特許文献3】米国特許第6174842号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
少なくとも如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない潤滑油組成物を用いて、天然ガスを燃料とする内燃機関の排気弁凹みの発生を防止又は抑制することができる、天然ガスエンジン用に改良された潤滑油組成物を開発することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様では、次の成分を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物を提供する:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤、ただし、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物はリンを、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量パーセントを超える量では含まず、かつ天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない。
【0017】
本発明の第二の態様では、基本的に次の成分からなる天然ガスエンジン用の潤滑油組成物を提供する:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤、ただし、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物はリンを、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量パーセントを超える量では含まず、かつ潤滑油組成物は如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない。
【0018】
本発明の第三の態様では、天然ガスを燃料とするエンジンの排気弁座の凹み発生を防止又は抑制する方法であって、(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物であって、リンを天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量パーセントを超える量では含まず、かつ如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない天然ガスエンジン用の潤滑油組成物を用いて、エンジンを潤滑にすることを含む方法を提供する。
【0019】
本発明の第四の態様では、天然ガスを燃料とするエンジンの排気弁座の凹み発生の防止又は抑制から明らかなように、天然ガス燃料エンジンの排気弁の寿命を高める方法であって、(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物であって、リンを天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量パーセントを超える量では含まず、かつ如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない天然ガスエンジン用の潤滑油組成物を用いて、エンジンを潤滑にすることを含む方法を提供する。
【0020】
本発明の第五の態様に従って、天然ガスを燃料とするエンジンの排気弁座の凹みの発生を防止又は抑制する目的での、次の成分を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の使用方法を提供する:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤、ただし、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物はリンを、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量パーセントを超える量では含まず、かつ天然ガスエンジン用潤滑油組成物は如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない。
【発明の効果】
【0021】
(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物であって、リンを天然ガスエンジン用潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量パーセントを超える量では含まず、かつ如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない天然ガスエンジン用の潤滑油組成物を用いて、天然ガスを燃料とする内燃機関の潤滑を行なうことによって、天然ガスを燃料とするエンジンの排気弁座の凹みの発生を防止又は抑制できると思われる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、次の成分を含有する天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に関する:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤、ただし、潤滑油組成物はリンを、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量パーセントを超える量では含まず、かつ天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない。概して、本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は、天然ガス燃料エンジンの排気弁座の凹みの発生を防止又は抑制するために有用である。「実質的に含まない」とは、本明細書で使用するとき、潤滑油組成物中に亜鉛化合物および縮合物のアルカリ土類金属塩の各々が存在するとしても、ほんの痕跡量、一般には潤滑油組成物の全質量に基づき0.001質量%以下であることを意味すると理解されたい。
【0023】
ある態様では、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は次の成分を含有している:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤、ただし、潤滑油組成物はリンを、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量パーセントを超える量では含まず、かつ潤滑油組成物は如何なる亜鉛化合物も、またアルキレンポリアミンとアルデヒドと置換フェノールの縮合物のアルカリ土類金属塩も各々、実質的に含まない。
【0024】
ある態様では、本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物はリンを、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.03質量%を超える量で含まない。別の態様では、本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物のリン含量は、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.005乃至約0.03質量%である。
【0025】
ある態様では、本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の硫酸灰分は、ASTM D874で測定したときに約1.25質量%以下となる。別の態様では、本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の硫酸灰分は、ASTM D874で測定したときに約1質量%以下となる。別の態様では、本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の硫酸灰分は、ASTM D874で測定したときに約0.3質量%以下となる。ある態様では、天然ガスを燃料とするエンジンに使用するための本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の硫酸灰分は、ASTM D874で測定して約0.1質量%乃至約1.25質量%である。別の態様では、本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の硫酸灰分は、ASTM D874で測定して約0.12質量%乃至約1.0質量%となる。別の態様では、本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の硫酸灰分は、ASTM D874で測定して約0.15質量%乃至約0.3質量%となる。潤滑剤の灰分は固体潤滑剤として有利に作用して、炭化水素燃料エンジンにおける自然発生排気粒子の代わって弁/弁座接触面を保護する。
【0026】
別の態様では、本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の硫黄含有量は相当に低いレベルであり、すなわち、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき0.7質量%を越えることなく、好ましくは0.5質量%を越えることなく、より好ましくは0.3質量%を越えない量である。
【0027】
本発明を適用できる内燃機関は、天然ガスで作動するもの、すなわち天然ガスを燃料とするものとみなすことができ、内燃機関が含まれる。そのような内燃機関の例としては四サイクルエンジン等が挙げられる。好ましい態様では内燃機関は、例えば坑口のガス収集や圧縮、他のガス配管サービス;発電(熱電併給を含む);および潅漑に使用される定置機関である。
【0028】
本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に使用される潤滑粘度の油は、基油とも称されるが、一般には主要量で、例えば組成物の全質量に基づき50質量%より多い量で、好ましくは約70質量%より多い、より好ましくは約80乃至約99.5質量%、最も好ましくは約85乃至約98質量%の量で存在する。「基油」なる表現は、本明細書で使用するとき、単一の製造者により同一の仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様を満たし、かつ独特の処方、製造物確認番号またはその両方によって識別される潤滑剤成分である、基材油または基材油のブレンドを意味すると理解されたい。本発明に使用される基油は、ありとあらゆる用途に、例えばエンジン油、舶用シリンダ油、機能液、具体的には油圧作動油、ギヤ油、変速機液等として潤滑油組成物を配合するのに使用される、今日知られているか後日発見される如何なる潤滑粘度の油であってもよい。さらに、本発明に使用される基油は任意に、粘度指数向上剤、例えば高分子量アルキルメタクリレート類;エチレン・プロピレン共重合体またはスチレン・ブタジエン共重合体などのオレフィン共重合体等;およびそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0029】
当該分野の熟練者であれば容易に理解できることであるが、基油の粘度は用途に依る。よって、本発明に使用される基油の粘度は通常、摂氏100度(℃)で約2乃至約2000センチストークス(cSt)の範囲にある。一般にエンジン油として使用される個々の基油は、動粘度範囲が100℃で約2cSt乃至約30cStであり、好ましくは約3cSt乃至約16cSt、最も好ましくは約4cSt乃至約12cStであり、そして所望の最終的な用途および調整油の添加剤に応じて、選択またはブレンドされて、所望のグレードのエンジン油、例えばSAE粘度グレードが0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30、15W−40、30および40等の潤滑油組成物を与える。
【0030】
基材油は各種の異なる方法を用いて製造することができ、その例としては、これらに限定されるものではないが、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を挙げることができる。再精製基材油には、製造、汚染もしくは以前の使用によって混入した物質が実質的に含まれるべきではない。本発明の潤滑油組成物の基油は、如何なる天然あるいは合成潤滑油基油であってもよい。好適な炭化水素合成油としては、これらに限定されるものではないが、エチレンの重合または1−オレフィン類の重合で重合体にすることにより製造された油、例えばポリアルファオレフィン又はPAO油、あるいはフィッシャー・トロプシュ法のような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いた炭化水素合成法により製造された油を挙げることができる。例えば好適な基油は、重質留分を含む場合でもその量が僅かである、例えば粘度が約100℃で20cSt以上の潤滑油留分を殆ど含むことのない油である。
【0031】
基油は、天然の潤滑油、合成の潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な基油としては、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られた基材油、並びに粗原料の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出というよりはむしろ)水素化分解することにより生成した水素化分解基材油を挙げることができる。好適な基油としては、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定された全API分類I、II、III、IV及びVに含まれるものが挙げられる。IV種基油はポリアルファオレフィン(PAO)類である。V種基油には、I、II、III又はIV種に含まれなかったその他全ての基油が含まれる。II、III及びIV種基油が本発明に使用するのに好ましいが、これらの基油は、I、II、III、IV及びV種基材油又は基油のうちの一種以上を組み合わせることにより製造することができる。
【0032】
使用できる天然油としては、鉱油系潤滑油、例えば液体石油、パラフィン系、ナフテン系又は混合パラフィン・ナフテン系の溶剤処理又は酸処理鉱油系潤滑油、石炭またはシェールから誘導された油、動物油および植物油(例えば、ナタネ油、ヒマシ油およびラード油)等を挙げることができる。
【0033】
使用できる合成潤滑油としては、これらに限定されるものではないが、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン類、具体的にはポリブチレン類、ポリプロピレン類、プロピレン・イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン類、ポリ(1−ヘキセン)類、ポリ(1−オクテン)類、ポリ(1−デセン)類等およびそれらの混合物;アルキルベンゼン類、例えばドデシルベンゼン類、テトラデシルベンゼン類、ジノニルベンゼン類、ジ(2−エチルヘキシル)−ベンゼン類等;ポリフェニル類、例えばビフェニル類、ターフェニル類、アルキル化ポリフェニル類等;アルキル化ジフェニルエーテル類およびアルキル化ジフェニルスルフィド類並びにそれらの誘導体、類似物及び同族体等を挙げることができる。
【0034】
他の使用できる合成潤滑油としては、これらに限定されるものではないが、炭素原子数5未満のオレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン類、イソブテン、ペンテンおよびそれらの混合物を重合することにより製造された油が挙げられる。そのような重合油の製造方法も当該分野の熟練者にはよく知られている。
【0035】
別の使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用な合成炭化水素油は、C−C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー類、例えば1−デセン三量体である。
【0036】
使用できる合成潤滑油の別の部類としては、これらに限定されるものではないが、アルキレンオキシド重合体、すなわち単独重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基が例えばエステル化またはエーテル化により変性したそれらの誘導体を挙げることができる。これらの油の例示としては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合により製造された油、これらポリオキシアルキレン重合体のアルキル及びフェニルエーテル類(例えば、平均分子量1000のメチルポリプロピレングリコールエーテル、分子量500−1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量1000−1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、またはそれらのモノ及びポリカルボン酸エステル類、例えば酢酸エステル類、混合C−C脂肪酸エステル類、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルがある。
【0037】
使用できる合成潤滑油のまた別の部類としては、これらに限定されるものではないが、ジカルボン酸類、例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等と、各種アルコール類、例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等とのエステル類が挙げられる。これらエステル類の具体例としては、ジブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、およびセバシン酸1モルをテトラエチレングリコール2モルおよび2−エチルヘキサン酸2モルと反応させて生成した複合エステル等を挙げることができる。
【0038】
また、合成油として使用できるエステル類としては、これらに限定されるものではないが、炭素原子数約5乃至約12のカルボン酸類と、アルコール類、例えばメタノール、エタノール等、およびポリオール及びポリオールエーテル類、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール等とから製造されたものも挙げることができる。
【0039】
ケイ素系の油、例えばポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油は、合成潤滑油の別の有用な部類を構成する。これらの具体例としては、以下に限定されるものではないが、テトラエチルシリケート、テトラ−イソプロピルシリケート、テトラ−(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(4−メチルヘキシル)シリケート、テトラ−(p−tert−ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル−(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン類、およびポリ(メチルフェニル)シロキサン類等を挙げることができる。更に別の使用できる合成潤滑油としては、これらに限定されるものではないが、リン含有酸の液体エステル類、例えばリン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デカンホスフィン酸のジエチルエステル等、および高分子量テトラヒドロフラン類等が挙げられる。
【0040】
潤滑油は、以上に開示したこれら種類のうちの天然、合成又は任意の二種以上の混合物の未精製、精製及び再精製の油から誘導することができる。未精製油は、天然原料または合成原料(例えば石炭、シェールまたはタール・サンド・ビチューメン)から直接に、それ以上の精製や処理無しに得られた油である。未精製油の例としては、これらに限定されるものではないが、レトルト操作により直接得られたシェール油、蒸留により直接得られた石油、またはエステル化処理により直接得られたエステル油が挙げられ、これらの各々はその後それ以上の処理無しに使用される。精製油は、一つ以上の性状を改善するために一以上の精製工程で更に処理されたことを除いては、未精製油と同じである。これらの精製技術は、当該分野の熟練者に知られているが、例えば溶剤抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、ろ過、パーコレート、水素化処理、脱ろう等が挙げられる。再精製油は、使用済の油を精製油を得るのに用いたのと同様の方法で処理することにより得られる。そのような再精製油は、再生又は再処理油としても知られていて、しばしば使用された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする技術により更に処理される。
【0041】
ろうの水素異性化から誘導された潤滑油基材油も、単独で、もしくは前記天然及び/又は合成基材油と組み合わせて使用することができる。そのようなろう異性化油は、天然又は合成ろうまたはそれらの混合物を水素異性化触媒で水素異性化することにより生成する。
【0042】
天然ろうは一般に、鉱油を溶剤脱ろうすることにより回収された粗ろうであり、合成ろうは一般に、フィッシャー・トロプシュ法により生成したろうである。使用できる潤滑粘度の油の例としては、HVI及びXHVI基材油、そのような異性化ろう基油、およびUCBO(非在来型基油)基油が挙げられる。
【0043】
本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は、ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤を含有する。好適なリン含有耐摩耗性添加剤としては、これらに限定されるものではないが、炭化水素亜リン酸エステル類、例えば亜リン酸トリアルキル類、アリール含有亜リン酸エステル類、具体的には亜リン酸トリアリール類等;炭化水素リン酸エステル類、例えばリン酸トリアルキル類、アリール含有リン酸エステル類、具体的にはリン酸トリアリール類、リン酸アルキルジアリール類等、およびそれらの混合物を挙げることができる。ある態様では少なくとも二種類のリン含有耐摩耗性添加剤が、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に使用される。
【0044】
亜リン酸トリアルキル類の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリラウリル、および亜リン酸トリオレイル等を挙げることができる。アリール含有亜リン酸エステル類の代表的な例としては、亜リン酸トリアリール類、例えば亜リン酸トリフェニル、および亜リン酸トリクレジル等が挙げられる。
【0045】
リン酸トリアルキル類の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、リン酸トリブチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリデシル、リン酸トリラウリル、およびリン酸トリオレイル等を挙げることができる。アリール含有リン酸エステル類の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、リン酸ブチルジフェニル、リン酸ジブチルフェニル、リン酸t−ブチルフェニルジフェニル、リン酸ビス(t−ブチルフェニル)フェニル、リン酸トリ(t−ブチルフェニル)、リン酸トリフェニル、リン酸プロピル化トリフェニル等、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
一般に、一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤は合計で天然ガスエンジン用の潤滑油組成物中に、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.25乃至約1.5質量%の範囲の量で存在する。
【0047】
本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物はまた、(i)一種以上の無灰分散剤、(ii)一種以上の金属含有清浄剤、および(iii)一種以上の酸化防止剤も含有している、ただし、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛化合物など如何なる亜鉛化合物の各々も実質的に含まない。
【0048】
本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に用いられる一種以上の無灰分散剤は一般に、使用中に酸化により生じた不溶物を懸濁状態で維持して、それによりスラッジの凝集や沈殿または金属部分への堆積を防ぐために使用される。窒素含有無灰(無金属)分散剤は塩基性であり、このため追加の硫酸灰分を持ち込むことなく、添加された潤滑油組成物の(ASTM D2896で測定することができる)塩基価又はBNに寄与する。「塩基価」又は「BN」は、本明細書で使用するとき、試料1グラム中のKOHのミリグラムと等価な塩基の量を意味する。従って、BN値が高いほど、生成物のアルカリ性が強く、よってアルカリ度が大きいことを反映している。ASTM D2896試験を用いてBNを測定した。無灰分散剤は一般に、分散対象の粒子と会合できる官能基を持つ油溶性の重合炭化水素主鎖を含んでいる。多くの種類の無灰分散剤が当該分野では知られている。
【0049】
無灰分散剤の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、重合体主鎖に架橋基で結合したアミン類、アルコール類、アミド類又はエステル極性部が挙げられる。本発明の無灰分散剤は例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩類、エステル類、アミノ−エステル類、アミド類、イミド類及びオキサゾリン類;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体、ポリアミンが直接結合した長鎖脂肪族炭化水素類;および長鎖置換フェノールをホルムアルデヒドとポリアルキレンポリアミンで縮合することにより生成したマンニッヒ縮合物から選ぶことができる。
【0050】
カルボン酸分散剤は、炭素原子を少なくとも約34個、好ましくは少なくとも約54個含むカルボン酸アシル化剤(酸類、無水物、エステル類等)と、窒素含有化合物(例えば、アミン類)、有機ヒドロキシ化合物(例えば、一価及び多価アルコール類を含む脂肪族化合物、またはフェノール類およびナフトール類を含む芳香族化合物)、および/または塩基性無機物質との反応生成物である。これらの反応生成物としては、イミド類、アミド類およびエステル類が挙げられる。
【0051】
コハク酸イミド分散剤は、カルボン酸分散剤の一種である。それらは、炭化水素置換コハク酸アシル化剤を、有機ヒドロキシ化合物と、または少なくとも1個の水素原子が窒素原子に結合してなるアミン類と、またはヒドロキシ化合物とアミンの混合物と反応させることにより生成する。「コハク酸アシル化剤」は、炭化水素置換コハク酸またはコハク酸生成化合物を意味し、後者には酸自体も含まれる。そのような物質としては一般に、炭化水素置換コハク酸類、無水物、エステル類(半エステル類も含む)およびハロゲン化物が挙げられる。
【0052】
コハク酸系分散剤は様々な化学構造を有する。コハク酸系分散剤の一部類は下記式で表すことができる。
【0053】
【化1】

【0054】
式中、各Rは独立に、炭化水素基、例えばポリオレフィン誘導基である。一般に炭化水素基は、ポリイソブチル基などのアルキル基である。別の方法で表せば、R基は炭素原子約40乃至約500個を含むことができ、これらの原子は脂肪族の形で存在できる。Rは、アルキレン基、普通はエチレン(C)基である。コハク酸イミド分散剤の例としては、例えば米国特許第3172892号、第4234435号及び第6165235号の各明細書に記載されているものが挙げられる。
【0055】
置換基が誘導されるポリアルケン類は一般に、炭素原子数2乃至約16、通常は炭素原子数2乃至6の重合可能なオレフィン単量体の単独重合体及び共重合体である。コハク酸アシル化剤と反応してカルボン酸分散剤組成物にするアミン類は、モノアミン類であってもポリアミン類であってもよい。
【0056】
アミド官能基はアミン塩類、アミド類、イミダゾリン類並びにそれらの混合物の形をとりうるが、コハク酸イミド分散剤は、通常イミド官能基の形で窒素を沢山含んでいるので、そのように呼ばれる。コハク酸イミド分散剤を製造するには、一種以上のコハク酸生成化合物と一種以上のアミン類を、任意に実質的に不活性な有機液体溶媒/希釈剤の存在下で、加熱し、そして一般的には水を取り除く。反応温度は、約80℃から混合物又は生成物の分解温度までの範囲にあってよいが、一般には約100℃から約300℃の間にある。本発明のコハク酸イミド分散剤の製造方法の更なる詳細および例としては、例えば米国特許第3172892号、第3219666号、第3272746号、第4234435号、第6165235号及び第6440905号の各明細書に記載されていることが挙げられる。
【0057】
また、好適な無灰分散剤としてはアミン分散剤も挙げられ、比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物と、アミン類、好ましくはポリアルキレンポリアミン類との反応生成物である。そのようなアミン分散剤の例としては、例えば米国特許第3275554号、第3438757号、第3454555号及び第3565804号の各明細書に記載されているものが挙げられる。
【0058】
さらに、好適な無灰分散剤としては「マンニッヒ分散剤」も挙げられ、アルキル基が炭素原子少なくとも約30個を含むアルキルフェノール類と、アルデヒド類(特には、ホルムアルデヒド)、およびアミン類(特には、ポリアルキレンポリアミン類)との反応生成物である。そのような分散剤の例としては、例えば米国特許第3036003号、第3586629号、第3591598号及び第3980569号の各明細書に記載されているものが挙げられる。
【0059】
好適な無灰分散剤はまた、後処理コハク酸イミド類のような後処理無灰分散剤であってもよく、例えば、米国特許第4612132号及び第4746446号明細書に開示されているような、ホウ酸塩またはエチレンカーボネートを伴う後処理方法等、並びに他の後処理方法がある。カーボネート処理したアルケニルコハク酸イミドは、分子量約450乃至約3000、好ましくは約900乃至約2500、より好ましくは約1300乃至約2400、最も好ましくは約2000乃至約2400のポリブテン類、並びにこれら分子量の混合物から誘導されたポリブテンコハク酸イミドである。米国特許第5716912号明細書に開示されているようなポリブテンコハク酸誘導体と、不飽和酸性試薬とオレフィンの不飽和酸性試薬共重合体と、ポリアミンとの混合物を、反応条件で反応させることにより製造することが好ましく、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0060】
好適な無灰分散剤はまた高分子であってもよく、デシルメタクリレート、ビニルデシルエーテルおよび高分子量オレフィン類などの油可溶性単量体と、極性置換基を含む単量体との共重合体である。高分子分散剤の例としては、例えば米国特許第3329658号、第3449250号及び第3666730号の各明細書に記載されているものが挙げられる。
【0061】
本発明の好ましい態様では、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に使用される無灰分散剤は、数平均分子量約700乃至約2300のポリイソブテニル基から誘導されたビス−コハク酸イミドである。本発明の潤滑油組成物に使用される分散剤(群)は、非高分子(例えば、モノ又はビス−コハク酸イミド類)であることが好ましい。
【0062】
一般に、一種以上の無灰分散剤は天然ガスエンジン用の潤滑油組成物中に、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約1乃至約8質量%の範囲の量で存在し、好ましくは約1.5乃至約6質量%の範囲の量で存在する。
【0063】
本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に用いられる一種以上の金属含有清浄剤化合物は、堆積物を低減又は除去する清浄剤としても、また酸中和剤またはさび止め添加剤としても機能し、それにより摩耗および腐食を低減してエンジン寿命を延ばすものである。清浄剤は一般に長い疎水性尾を持つ極性頭部からなり、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩からなる。
【0064】
本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は一種以上の清浄剤を含有することができ、該清浄剤は通常は塩、特には過塩基性塩である。過塩基性塩又は過塩基性物質は、金属および金属と反応する特定の酸性有機化合物の化学量論に従って存在する量よりも過剰の金属含量に特徴がある、単相で均質なニュートン系である。酸性物質(一般には、無機酸または二酸化炭素などの低級カルボン酸)を、少なくとも一種の不活性有機溶媒(例えば、鉱油、ナフサ、トルエン、キシレン)を含む反応媒体中で、化学量論量より過剰の金属塩基と促進剤を存在させて、酸性有機化合物を含む混合物と反応させることによって、過塩基性物質が製造される。
【0065】
過塩基性組成物を製造するのに使用できる酸性有機化合物としては、カルボン酸類、スルホン酸類、リン含有酸類、フェノール類およびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、酸性有機化合物はカルボン酸類またはスルホン酸類および炭化水素置換サリチル酸類である。
【0066】
カルボキシレート清浄剤、例えばサリチレート類は、芳香族カルボン酸を酸化物または水酸化物などの適当な金属化合物と反応させることにより製造することができる。そののち当該分野でよく知られた方法により、中性又は過塩基性生成物を得ることができる。芳香族カルボン酸の芳香族部は、窒素や酸素などのヘテロ原子を1個以上含むことができる。好ましくは、芳香族部は炭素原子のみを含む。より好ましくは、芳香族部はベンゼン部のように炭素原子を6個又はそれ以上含む。芳香族カルボン酸は、任意に縮合したもしくはアルキレン橋で連結した、1つ以上のベンゼン環のような1つ以上の芳香族部を含んでいてもよい。芳香族カルボン酸類の代表的な例としては、サリチル酸類およびそれらの硫化誘導体、例えば炭化水素置換サリチル酸およびその誘導体が挙げられる。例えば炭化水素置換サリチル酸を硫化する方法は当該分野の熟練者には知られている。サリチル酸類は一般に、フェノキシド類を例えばコルベ・シュミット法でカルボキシ化することにより製造される。その場合には一般に、非カルボキシ化フェノールとの混合でサリチル酸類が希釈剤中に得られる。
【0067】
フェノール及び硫化フェノールの金属塩類は、酸化物または水酸化物などの適当な金属化合物と反応させることにより製造される。当該分野でよく知られた方法により中性又は過塩基性生成物を得ることができる。例えば硫化フェノール類は、フェノールを、硫黄もしくは硫黄含有化合物、例えば硫化水素、一ハロゲン化硫黄または二ハロゲン化硫黄と反応させることにより製造することができ、2つ以上のフェノールを硫黄含有橋で架橋した化合物の混合物である生成物が生成する。
【0068】
過塩基性塩を製造するのに使用できる金属化合物は一般に、元素の周期表の任意のI族又はII族金属化合物である。好ましくは、金属化合物はII族金属であり、IIa族アルカリ土類金属類(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)、並びにIIb族金属類、例えば亜鉛またはカドミウムが挙げられる。好ましくは、II族金属がマグネシウム、カルシウム、バリウムもしくは亜鉛であり、さらに好ましくはマグネシウムもしくはカルシウムであり、特に好ましくはカルシウムである。
【0069】
過塩基性清浄剤の例としては、これらに限定されるものではないが、カルシウムスルホネート類、カルシウムフェネート類、カルシウムサリチレート類、カルシウムステアレート類、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明の潤滑油組成物に使用するのに適した過塩基性清浄剤は、低過塩基性、例えばBNが約100未満の過塩基性清浄剤であってもよい。そのような低過塩基性清浄剤のBNは、約5乃至約50、又は約10乃至約30、又は約15乃至約20であってよい。あるいは、本発明の潤滑油組成物に使用するのに適した過塩基性清浄剤は、高過塩基性(例えば、BNが約100より高い過塩基性清浄剤)であってもよい。そのような高過塩基性清浄剤のBNは、約100乃至約450、又は約200乃至約350、又は約250乃至約280であってよい。BNが約17の低過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤と、BNが約115の高過塩基性硫化カルシウムフェネートは、本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に使用される二種類の典型的な過塩基性清浄剤である。
【0070】
本発明に係る天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は過塩基性清浄剤を一種類より多く含んでいてもよく、全て低BN清浄剤であっても、全て高BN清浄剤であっても、あるいはそれらの混合物であってもよい。例えば、本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は、BNが約100乃至約450の過塩基性アルカリ土類金属スルホネート又はフェネート清浄剤である第一の金属含有清浄剤と、BNが約10乃至約50の過塩基性アルカリ土類金属スルホネート又はフェネート清浄剤である第二の金属含有清浄剤とを含有していてもよい。
【0071】
また、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に使用するのに適した清浄剤としては、「混成」清浄剤、例えばフェネート/サリチレート類、スルホネート/フェネート類、スルホネート/サリチレート類、およびスルホネート/フェネート/サリチレート類等も挙げることができる。混成清浄剤の例としては、例えば米国特許第6153565号、第6281179号、第6429178号及び第6429179号の各明細書に記載されているものが挙げられる。
【0072】
一般に、一種以上の金属含有清浄剤は天然ガスエンジン用の潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.5乃至約8.5質量%の範囲の量で存在し、好ましくは約1乃至約6質量%の範囲の量で存在する。二種類の金属含有清浄剤が用いられるなら、第一の金属含有清浄剤は天然ガスエンジン用の潤滑油組成物中に、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき、約0.5乃至約5質量%、好ましくは約1乃至約3質量%の範囲の量で存在し、そして第二の金属含有清浄剤は天然ガスエンジン用の潤滑油組成物中に、約0.1乃至約1.0質量%、好ましくは約0.15乃至約0.5質量%の範囲の量で存在する。
【0073】
本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に用いられる一種以上の酸化防止化合物は、基材油がサービス中に劣化する傾向を低減するものであり、金属表面のスラッジ及びワニス状堆積物のような酸化生成物および粘度増加が、その劣化の証拠となる。そのような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、油溶性無灰フェネート及び硫化フェネート類、ジフェニルアミン類、アルキル置換フェニル及びナフチルアミン類等、およびそれらの混合物を挙げることができる。ジフェニルアミン型酸化防止剤としては、これらに限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化−α−ナフチルアミンが挙げられる。
【0074】
ある態様では本発明に使用される酸化防止化合物は、下記一般式を有する一種以上のヒンダードフェノール類であってよい。
【0075】
【化2】

【0076】
式中、RはC−C30の炭化水素基であり、例えば置換又は未置換アルキル基、置換又は未置換シクロアルキル基、置換又は未置換アリール基、および置換又は未置換複素環基等が含まれる。ヒンダードフェノールの代表的な例は、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノールプロピオネートである。ヒンダードフェノールである3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノールプロピロネートは、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals、ニューヨーク州テリタウン)よりイルガノックスL135(IRGANOX L135、商標)として、クロンプトン・コーポレーション(Crompton Corporation、コネチカット州ミドルベリー)よりナウガード(Naugard、商標)PS−48として市販されている。ある態様ではヒンダードフェノールは液体ヒンダードフェノールである。
【0077】
一般に、一種以上の酸化防止化合物は天然ガスエンジン用の潤滑油組成物中に、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.1乃至約3質量%の範囲の量で存在し、好ましくは約0.2乃至約2.5質量%の範囲の量で存在する。
【0078】
本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は、添加剤を潤滑粘度の油と単にブレンド又は混合することにより、好適に製造することができる。また、添加剤を所望の濃度で含む潤滑油組成物のブレンドを容易にするために、後述するように添加剤を適切な比率で濃縮物として予備ブレンドすることもできる。所望の完成潤滑油にて添加剤が油に溶解し、かつ他の添加剤と混合できる濃度で、添加剤パッケージを基油とブレンドする。この場合に混合性とは一般に、本発明の化合物が適切な処理比で油溶性であることは勿論、正常条件で他の添加剤を沈殿させないことも意味する。潤滑油配合物のある一定の化合物に適した油溶性/混合性の範囲は、当該分野の熟練者であれば日常の溶解度試験手段を用いて決定することができる。例えば、配合した潤滑油組成物からの周囲条件(約20℃乃至25℃)での沈殿は、油組成物から実際に沈殿するか、あるいは不溶性ろう粒子生成の証拠となる「曇った」溶液が処方されることによって判断することができる。
【0079】
これまでに述べたように、本明細書に記載する天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は、如何なるアルキレンポリアミンとアルデヒドと置換フェノールの縮合物のアルカリ土類金属塩も、実質的に含むことがない。また、ある態様では潤滑油組成物は如何なるモリブデン含有化合物も実質的に含まない。縮合物のアルキレンポリアミン類は、次のような構造:NH[R(R)−NH]nH(ただし、Rは炭素原子約2乃至約6個を含むアルキレン基であり、そしてnは1乃至約10の整数である)であってよい。代表的なアルキレンポリアミン類としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、およびテトラエチレンペンタアミン等が挙げられる。アルデヒド類は一般に、分子当り炭素原子1乃至約3個を含む脂肪族アルデヒド類である。置換フェノール類は、縮合物に油溶性を付与するほど充分に長いアルキル基を少なくとも1個持つ、アルキル化一価フェノール類である。代表的なアルキルフェノール類は、アルキル基が炭素原子約4乃至約24個を含むもの、好ましくは炭素原子約8乃至約24個を持つものであり、例えばn−アミルフェノール、ジアミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、p−ter−オクチルフェノール、フェノールの混合物、およびアルキル化ワックスフェノール類等がある。
【0080】
天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は、補助的な機能を付与する他の従来添加剤も含有して、これら添加剤が分散または溶解した完成天然ガスエンジン用の潤滑油組成物とすることができる。例えば、さび止め添加剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦緩和剤、流動点降下剤、消泡剤、補助溶媒、パッケージ混合剤、腐食防止剤、染料、極圧剤等およびそれらの混合物を、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物にブレンドすることができる。様々な添加剤が知られていて市販されてもいる。これら添加剤またはそれらの類似化合物を通常のブレンド手段により、本発明の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の製造に用いることができる。
【0081】
さび止め添加剤の例としては、これらに限定されるものではないが、非イオン性ポリオキシアルキレン剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート;ステアリン酸および他の脂肪酸類;ジカルボン酸類;金属石鹸;脂肪酸アミン塩類;重質スルホン酸の金属塩類;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル類;(短鎖)アルケニルコハク酸類;それらの部分エステル類およびそれらの窒素含有誘導体;合成アルカリールスルホネート類、例えば金属ジノニルナフタレンスルホネート類等;およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0082】
摩擦緩和剤(摩擦調整剤)の例としては、これらに限定されるものではないが、アルコキシル化脂肪アミン類;ホウ酸化脂肪エポキシド類;脂肪亜リン酸エステル類、脂肪エポキシド類、脂肪アミン類、ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン類、脂肪酸の金属塩類、脂肪酸アミド類、グリセロールエステル類、ホウ酸化グリセロールエステル類;および米国特許第6372696号明細書に開示されている脂肪イミダゾリン類(その内容も参照内容として本明細書の記載とする);C−C75、好ましくはC−C24、最も好ましくはC−C20の脂肪酸エステルと、アンモニアおよびアルカノールアミンからなる群より選ばれた窒素含有化合物との反応生成物から得られた摩擦緩和剤等;およびそれらの混合物を挙げることできる。
【0083】
消泡剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アルキルメタクリレートの重合体;ジメチルシリコーンの重合体等;およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0084】
上述した添加剤の各々は、使用されるなら、機能的に有効な量で使用されて潤滑剤に所望の特性を付与する。よって、例えば添加剤が摩擦緩和剤であるなら、この摩擦緩和剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の摩擦緩和特性を付与するほど充分な量となる。一般にこれら添加剤の各々の濃度は、使用されるなら、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.001質量%乃至約20質量%の範囲にあり、ある態様では約0.01質量%乃至約10質量%の範囲にある。
【0085】
所望により、潤滑油添加剤は添加剤パッケージまたは濃縮物として供することができて、実質的に不活性で普通は液体の有機希釈剤、例えば鉱油、ナフサ、ベンゼン、トルエンまたはキシレンに添加剤を混合して添加剤濃縮物にする。これら濃縮物は通常、そのような希釈剤を約20質量%乃至約80質量%含んでいる。一般に、粘度が100℃で約4乃至約8.5cSt、好ましくは100℃で約4乃至約6cStのニュートラル油が希釈剤として使用されるが、合成油、並びに添加剤や完成潤滑油と混合できる他の有機液体も使用することができる。添加剤パッケージは一般に、上記に言及した添加剤を所望の量及び比率で含有して、必要量の基油との直接的な配合を容易にする。
【0086】
以下の限定的ではない実施例は、本発明を説明するものである。
【実施例】
【0087】
[実施例1]
ビスコハク酸イミド(MW:1300のポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)、および重質ポリアミンとジエチレントリアミンの混合物から誘導した)3.3質量%、およびビスコハク酸イミド(MW950のポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)、および重質ポリアミンとジエチレントリアミンの混合物から誘導した)1.0質量%、カルシウムスルホネート(BN17)0.21質量%、硫化カルシウムフェネート(BN114)1.5質量%、酸化防止剤0.5質量%、硫化イソブチレン0.14質量%、亜リン酸トリフェニル耐摩耗性添加剤/酸化防止剤0.08質量%、リン酸トリアリール耐摩耗性添加剤0.25質量%、消泡剤5ppmを含有し、残りはII種基油である潤滑油組成物を調製した。天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の硫酸灰分は、ASTM D874で測定して0.23質量%であり、リン分は0.028質量%であった。
【0088】
本明細書に開示した態様には様々な変更を加えることができることが理解できるであろう。従って、これまでの記述は、本発明を限定するものではなくて単に好ましい態様の例示とみなすべきである。例えば、上述した本発明を実施するための最良の形態として実行した機能は、説明の目的でしかない。当該分野の熟練者であれば、本発明の範囲及び真意から逸脱することなく他の構成や方法を実行することができよう。さらに、当該分野の熟練者であれば、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲及び真意内で他の変更を思い描くであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、
(c)一種以上の無灰分散剤、
(d)一種以上の金属含有清浄剤、および
(e)一種以上の酸化防止剤、
ただし、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物はリンを、天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき0.03質量パーセントを超える量では含むことなく、かつ該天然ガスエンジン用の潤滑油組成物は如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない。
【請求項2】
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤が、炭化水素亜リン酸エステル、炭化水素リン酸エステルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項3】
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤が、亜リン酸トリアルキル、亜リン酸トリアリール、リン酸トリアルキル、リン酸トリアリールおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項4】
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤が、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリラウリル、リン酸トリオレイル、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリオレイル、リン酸t−ブチルフェニルジフェニル、リン酸ビス(t−ブチルフェニル)フェニル、リン酸トリ(t−ブチルフェニル)、リン酸トリフェニル、リン酸プロピル化トリフェニルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項5】
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤が二種以上のリン含有耐摩耗性添加剤からなる請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項6】
一種以上の無灰分散剤がビスコハク酸イミドである請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項7】
一種以上の金属含有清浄剤が、BNが10乃至450の過塩基性アルカリ土類金属塩清浄剤である請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項8】
一種以上の金属含有清浄剤が二種類の金属含有清浄剤を含む請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項9】
二種類の金属含有清浄剤が、塩基価(BN)100乃至450の過塩基性アルカリ土類金属フェネート清浄剤である第一の金属含有清浄剤と、BN10乃至50の過塩基性アルカリ土類金属スルホネート清浄剤である第二の金属含有清浄剤とからなる請求項8に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項10】
一種以上の酸化防止剤がヒンダードフェノール化合物である請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項11】
硫酸灰分が、ASTM D874で測定して0.15乃至0.3質量%である請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項12】
天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき、
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤0.25乃至1.5質量%、
一種以上の無灰分散剤1質量%乃至8質量%、
一種以上の金属含有清浄剤0.5質量%乃至8.5質量%、および
一種以上の酸化防止剤0.1質量%乃至3質量%、
を含む請求項1に記載の天然ガスエンジン用の潤滑油組成物。
【請求項13】
天然ガスを燃料とするエンジンの排気弁座凹みの発生を防止又は抑制する方法であって、(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)ジチオリン酸亜鉛以外の一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤、(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の金属含有清浄剤、および(e)一種以上の酸化防止剤を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物であって、リンを天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき0.03質量パーセントを超える量を含むことなく、かつ如何なる亜鉛化合物も実質的に含まない天然ガスエンジン用の潤滑油組成物を用いて、エンジンの潤滑を行なうことを含む方法。
【請求項14】
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤が、炭化水素亜リン酸エステル、炭化水素リン酸エステルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤が、亜リン酸トリアルキル、亜リン酸トリアリール、リン酸トリアルキル、リン酸トリアリールおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項13に記載の方法。
【請求項16】
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤が、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリラウリル、リン酸トリオレイル、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリオレイル、リン酸t−ブチルフェニルジフェニル、リン酸ビス(t−ブチルフェニル)フェニル、リン酸トリ(t−ブチルフェニル)、リン酸トリフェニル、リン酸プロピル化トリフェニルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項13に記載の方法。
【請求項17】
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤が二種以上のリン含有耐摩耗性添加剤からなる請求項13に記載の方法。
【請求項18】
天然ガスエンジン用の潤滑油組成物が、該天然ガスエンジン用の潤滑油組成物の全質量に基づき、
一種以上のリン含有耐摩耗性添加剤0.25乃至1.5質量%、
一種以上の無灰分散剤1質量%乃至8質量%、
一種以上の金属含有清浄剤0.5質量%乃至8.5質量%、および
一種以上の酸化防止剤0.1質量%乃至3質量%、
を含んでいる請求項13に記載の方法。
【請求項19】
一種以上の無灰分散剤がビスコハク酸イミドである請求項13に記載の方法。
【請求項20】
一種以上の金属含有清浄剤が、塩基価(BN)が10乃至450の過塩基性アルカリ土類金属塩清浄剤である請求項13に記載の方法。
【請求項21】
一種以上の金属含有清浄剤が二種類の金属含有清浄剤を含む請求項13に記載の方法。
【請求項22】
二種類の金属含有清浄剤が、BN100乃至450の過塩基性アルカリ土類金属フェネート清浄剤である第一の金属含有清浄剤と、BN10乃至50の過塩基性アルカリ土類金属スルホネート清浄剤である第二の金属含有清浄剤とからなる請求項21に記載の方法。
【請求項23】
潤滑油組成物の全質量に基づき、第一の金属含有清浄剤が0.5質量%乃至5質量%の量で存在し、そして第二の金属含有清浄剤が0.1質量%乃至1質量%の量で存在する請求項21に記載の方法。
【請求項24】
一種以上の酸化防止剤がヒンダードフェノール化合物である請求項13に記載の方法。
【請求項25】
潤滑油組成物の硫酸灰分が、ASTM D874で測定して0.15乃至0.3質量%である請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2013−503939(P2013−503939A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527989(P2012−527989)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/047446
【国際公開番号】WO2011/028751
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】