説明

天然ガス及び二酸化炭素からの合成ガス製造用触媒及びその製造方法

本発明は、天然ガスと二酸化炭素からの合成ガス製造用触媒及びその製造方法に関し、より詳しくは、二酸化炭素の経済的な利用方法であって、天然ガスの水蒸気改質反応と同時にメタンの二酸化炭素改質反応を行う混合型改質反応により、一酸化炭素及び二酸化炭素と水素が特定比[H/(2CO+3CO)=0.85〜1.15]を維持し、メタノール合成反応に適し、かつフィッシャー・トロプシュ反応にも活用できる合成ガスを製造するための方法に関する。また、本発明は、Ni/Ce/MgAlO又はNi/Ce−Zr/MgAlOで構成される特定の触媒上において合成ガスを製造し、これを利用してメタノール合成反応及びフィッシャー・トロプシュ反応を実施するための触媒、その製造方法及び該触媒を用いたメタノール合成反応に適し、かつフィッシャー・トロプシュ反応にも活用できる合成ガスの製造方法に関する。したがって、本発明に係る上記触媒は、反応中にコークス生成による触媒の不活性化を抑制するとともに、反応中に添加される水によるニッケルの再酸化による触媒の不活性化も抑制され、従来報告されている混合型改質反応用触媒と比較して反応性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス及び二酸化炭素からの合成ガス製造用触媒、その製造方法、及び該触媒を用いたメタノール合成反応又はフィッシャー・トロプシュ反応に活用可能な合成ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスを利用した合成ガスを製造するための方法は、メタンの水蒸気改質反応(steam reforming of methane;SRM)、酸素を利用したメタンの部分酸化反応(partial oxidation of methane;POM)、メタンの二酸化炭素改質反応(carbon dioxide reforming of methane;CDR)に大きく区分でき、それぞれの改質反応から生成される一酸化炭素と水素(H/CO)の比は、後に続く工程において要求される最適比に応じて異なる。一例として、強い吸熱反応であるSRM反応の場合には、H/CO比が3以上で得られるので、水素生産及びアンモニア合成反応に適した改質反応であり、また、POMの反応の場合には、H/CO比が2程度で得られるので、メタノール合成反応及びフィッシャー・トロプシュ反応による炭化水素生成に有利な改質反応であることが知られている。こうした改質反応の長所、短所、及び発熱量を比較して整理すると、次のとおりである。
(1)メタンの水蒸気改質反応(SRM)
CH+HO=3H+CO ΔH=226kJ/mol
⇒ 強い吸熱反応、
/CO>3、
過剰水蒸気が要求される
(2)メタンの部分酸化反応(POM)
CH+0.5O=2H+CO ΔH=−44kJ/mol
⇒ 穏やかな発熱反応、
/CO=2、
生産工程が要求される
(3)メタンの二酸化炭素改質反応(CDR)
CH+CO=2H+2CO ΔH=261kJ/mol
⇒ 強い吸熱反応、
/CO=1、
COの追加が要求される
前記個々の改質工程としては、エネルギーや炭素効率の増大とともに、適切なH/CO比の維持のために、POM及びSRMが混合された自己熱改質反応(auto−thermal reforming;ATR)や、POM、SRM及びCDRの3つの改質反応が混合された方法である三反応型改質反応(tri−reforming)などがよく知られている。また、改質反応の種類や触媒に応じてH/CO比が異なる合成ガスを製造することができる。これらの様々な比を有する合成ガスを利用した様々な方法に関する特許出願が、現在数多く出願されている[特許文献1及び2]。
【0003】
本発明は、混合型改質工程としてSRM及びCDRを同時に進行させ、ニッケル系の改質触媒を利用して、メタノールの合成及びフィッシャー・トロプシュ反応工程に使用可能な合成ガスを製造する触媒系を特徴とする。一般に、メタノール合成において熱力学的に適切な合成ガス(H/(2CO+3CO))の組成比は1.05付近であることが知られており、また、前記割合を増加させるほどメタノールの収率が増加するという利点があるため、前記比率を調整するために、水素をさらに添加するか、CDR反応での転換率を調整する必要性がある。また、鉄系触媒を使用しているフィッシャー・トロプシュ反応は、高い水性ガス転換反応(CO+HO=H+CO)により、余剰の水素が反応中に生成され、COへの高い選択性がもたらされる。鉄系触媒は、固有の高い活性を持ち、高い水性ガス転換反応のためにCOを含む低いモル比の合成ガス(H/CO=0.5〜0.7)においてもフィッシャー・トロプシュ反応が進行するという利点がある。
【0004】
現在、商業的に活用されているSRMの場合、反応温度750〜850℃、水蒸気
/メタンのモル比4〜6:1の範囲で、Ni/Al触媒系が主に使用されている。しかし、炭素の堆積による著しい触媒の不活性化が発生するという問題があり、貴金属又は助触媒として遷移金属及びアルカリ金属を含有する触媒系についての研究が数多く行われている[非特許文献1]。
【0005】
また、CDR反応では、SRM反応よりも炭素の堆積による触媒の不活性化がさらに著しく、これを抑制するための方法として、貴金属触媒(Pt/ZrO)、Ni/MgO、又はNi/MgAlO系の触媒に助触媒としてアルカリ金属を含む触媒系についての研究が数多く行われている[非特許文献2、3、及び特許文献3]。一般に、商業的に使用されているSRM触媒をCDR反応及び混合型改質工程(CDR+SRM)に直接使用する場合には、炭素の堆積による不活性化がさらに加速化するという問題点が知られている。本研究チームによる先行研究(特許文献4〜6)では、SRM及びCDR反応に効果的な触媒系として、セリウムで修飾されたジルコニア担体及びアルミナ担体にニッケルを担持させた触媒、又は前記セリウム、ジルコニウム及びニッケルを共沈法により製造した触媒を使用して、炭素の堆積による触媒の不活性化を抑制する方法を紹介している。
【0006】
本発明では、セリウム及びジルコニウムの少なくともいずれか一方により前処理されたMgAlO金属酸化物支持体上に担持されたニッケルを活性成分とする触媒を使用することにより、炭素の堆積による触媒の不活性化を抑制するとともに、前記触媒上でメタンのSRM及びCDRの混合型改質反応により合成ガスを製造する。製造される合成ガスは、メタノール合成反応及びフィッシャー・トロプシュ反応に適した組成を有する。
【0007】
現在までにメタノール合成触媒の性能向上のための研究に多くの研究者が関与している。これまではメタノール合成のための触媒の活性部位の完全な理解が不足していたが、Cuの酸化状態と還元された銅粒子のレドックス(redox)転換性質が重要な作用をすることが知られている。メタノール合成反応において、Cu触媒の活性は、金属成分のCuの比表面積に比例することが知られている。COの配位(coordination)、化学吸着(chemisorption)、活性化と均一なHの分割(splitting)は、CuやCu上で発生し、ZnOを含む触媒を使用する触媒工程において、Hδ+及びHδ−を提供する不均一なHの分割は、ZnO上で発生するという報告がある[非特許文献4]。このとき、Cu/Znのモル比が8以上の場合、比表面積が急激に減少することが報告されている[非特許文献5]。これにより、触媒製造の際にCuとZnとを混合して使用する場合が多く、Cu/Znのモル比が3/7において活性が最も高くなることが知られている。しかし、COが存在していたり、Cu表面を覆っている酸素含有物質の割合が増加すると、触媒の活性はCuの表面積に依存しなくなることが知られている。こうした現象は、Cu活性部位がメタノール合成において活性部位として作用するためであると報告されている。
【0008】
一方、フィッシャー・トロプシュ工程では、使用される触媒の活性成分に応じて生成物と副産物の分布が変化するが、一般的に、鉄系触媒及びコバルト系の触媒が使用されている。鉄系触媒を使用するフィッシャー・トロプシュ反応は、高い水性ガス転換反応(CO+HO=H+CO)により、余剰の水素が反応中に生成され、COへの選択性が高くなるという特徴がある。しかし、フィッシャー・トロプシュ反応において、鉄系触媒はコバルトよりも低価格で、固有の高い活性を有しており、また、高い水性ガス転換反応のために、COを含む低いモル比の合成ガス(H/CO=0.5〜0.7)においてもフィッシャー・トロプシュ反応が進行するという利点がある。そのため、水性ガス転換反応に対する優れた活性により、低いH/CO比を有する合成ガスを処理するためには、鉄系触媒を使用するフィッシャー・トロプシュ反応が優れている。これに対し、コバルト系触媒は、水性ガス転換反応に対する活性が低いため、天然ガスから生成された高いH/COのモル比を有する合成ガス(H/CO=1.6〜2.2)を使用してフィッシャー・トロプシュ反応を実施する。フィッシャー・トロプシュ合成のための鉄系触媒は、溶融法や沈殿法により製造することができ、噴霧−乾燥法(spray−drying method)によっても製造することができる。また、噴霧−乾燥法により得られる鉄系触媒は、触媒活性を維持すると同時に、より優れた摩耗抵抗性及び物理的強度を有すると報告されている[非特許文献6]。また、一般的に、鉄系触媒は、COの吸着や鉄の還元を助ける一種以上の助触媒を含むように製造される。特に、沈殿した鉄触媒にカリウム(potassium)を追加することにより、分子量の大きい生成物の収率及び触媒活性を増加させる。カリウムの他に、銅を、鉄の還元を促進するために、一般に鉄系触媒を使用しているフィッシャー・トロプシュ反応において助触媒として使用できる。銅は、鉄の還元性を促進させ、フィッシャー・トロプシュ反応速度においてカリウムよりも効果的であるが、水性ガス転換の活性を減少させるため、フィッシャー・トロプシュ合成に適切なH/CO比を維持することができないという短所がある。これを補完するために、支持体を使用していない鉄−マンガンに銅と1A或いは2A族金属元素を助触媒として使用し、高い一酸化炭素の転換率において、C5+の炭化水素を選択的に合成する場合がある[特許文献7]。鉄触媒製造の際の微小な金属粒子の分散と触媒の安定化のためには、比表面積を大きくすることが有利であり、鉄触媒系に、構造安定剤として助触媒とともにバインダーを添加することもある。
【0009】
したがって、本発明は、高い触媒活性を有するニッケル系改質触媒(Ni/Ce(Zr)/MgAlO)を用いたSRM及びCDRの混合型改質工程を実施することにより合成ガスを製造する方法を提供する。製造される合成ガスは、適切な一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素の組成[H/(2CO+3CO)]を維持し、かつ、メタノール合成及び鉄系触媒を使用するフィッシャー・トロプシュ反応に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第2006−0132293号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2005−0051820号公報
【特許文献3】韓国公開特許第2007−0043201号公報
【特許文献4】韓国公開特許第2002−0021721号公報
【特許文献5】韓国公開特許第2004−0051953号公報
【特許文献6】韓国公開特許第2002−0088213号公報
【特許文献7】米国特許第5,118,715号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal of Molecular Catalysis A 147,1999,41
【非特許文献2】Catalysis Today 46,1998,203
【非特許文献3】Catalysis communications 2,2001,49
【非特許文献4】Appl.Catal.A 25,1986,101
【非特許文献5】Appl.Catal.A 139,1996,75
【非特許文献6】Industrial&Engineering Chemistry Research 40,2001,1065
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記のような状況を勘案して鋭意研究した結果、メタノール合成又はフィッシャー・トロプシュ反応に使用するための適切なH/(2CO+3CO)モル比で合成ガスを製造することができる反応条件、及びこれに適した触媒系の選定が重要であることが判明した。本発明者らは、活性成分としてNiを支持体であるCe/MgAlO又はCe−Zr/MgAlOに対し5〜20重量%で担持させ、600〜1000℃で焼成した後の比表面積が80〜200m/gであるメタノール合成のための混合型改質反応用触媒及びその製造方法を開発した。さらに、前記触媒系は、炭素の堆積により触媒活性が変化しても適切なH/(2CO+3CO)モル比が維持されるという優れた長期性能を有するため、最終的にメタノール合成の収率及びフィッシャー・トロプシュ合成の反応性が向上することが確認された。
【0013】
したがって、本発明の目的は、メタノール合成反応又はフィッシャー・トロプシュ反応のための混合型改質反応用触媒及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記触媒を使用して合成ガスを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による混合型改質反応用触媒は、支持体であるCe/MgAlO又はCe−Zr/MgAlOに対し5〜20重量%で担持させたNiを活性成分とし、かつ、600〜1000℃で焼成した後の比表面積が80〜200m/gであることを特徴とする。
【0015】
本発明による混合型改質反応用触媒の製造方法は、1)MgAlO支持体上に担持させたCe又はCe−Zrを、含量3〜20重量%を維持し、かつCe及びZrの金属の重量組成比(Zr/Ce)が0〜4の範囲を維持するように、600〜900℃で焼成してCe(Zr)/MgAlO混合型改質用支持体を製造するステップ、及び2)支持体であるCe/MgAlO又はCe−Zr/MgAlOに対し、活性成分としてNiを5〜20重量%で担持させた後、600〜1000℃で焼成して触媒を製造するステップを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による合成ガスの製造方法は、前記触媒を700〜1000℃で水素気体により還元処理して得られた触媒上において、反応温度800〜1000℃、反応圧力50.7〜2026kPa(0.5〜20気圧)、空間速度1,000〜500,000h−1、CH/HO/COのモル比1/1.0〜2.0/0.3〜0.6の条件下で、天然ガスの水蒸気改質反応とメタンの二酸化炭素改質反応とを同時に進行させる混合型改質反応を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
天然ガスの混合型改質は、二酸化炭素の経済的な利用方法である。本発明において、天然ガスの水蒸気改質反応は、一酸化炭素及び二酸化炭素と水素とが特定比を維持するように、メタンの二酸化炭素改質反応と同時に実施される。この方法により、メタノール合成反応に適した合成ガス又はフィッシャー・トロプシュ反応にも活用可能な合成ガスを製造することができる。また、Ni/Ce(Zr)/MgAlOで構成される特定の触媒上において合成ガスを製造し、この合成ガスを用いてメタノール合成反応又はフィッシャー・トロプシュ反応を実施する。前記触媒は、反応中にコークスの生成による不活性化を抑制するとともに、反応中に添加される水によるニッケルの再酸化に起因する不活性化も抑制する。したがって、本発明は、従来報告されている混合型改質反応用触媒と比較して反応性に優れた触媒、その製造方法及びそれを用いた合成ガスの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る混合型改質触媒の反応後のX線回折(XRD)パターンを示す。
【図2】本発明に係る混合型改質触媒の反応前のXRDパターンを示しており、実施例で使用されたNi/Ce(Zr)/MgAlO触媒の場合には、反応の前後でのニッケル粒子サイズの変化が、比較例2の場合のようにNi/Ce−Zr/γ−Alを使用する場合と比較して相対的に小さいことが分かる。このことは、触媒(Ni/Ce(Zr)/MgAlO)の活性が安定的に維持されることを示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、支持体であるCe/MgAlO又はCe−Zr/MgAlOに対し5〜20重量%で担持させたNiを活性成分とし、かつ、600〜1000℃で焼成した後の比表面積が80〜200m/gである混合型改質反応用触媒及びその製造方法を提供する。
【0020】
また、前記触媒を用いて合成ガスを製造する方法を提供する。
以下、本発明をより詳細に説明する。
天然ガスの混合型改質は、二酸化炭素の経済的な活用方法である。本発明において、天然ガス(CH)の水蒸気改質反応(steam reforming of methane;SRM)は、一酸化炭素、二酸化炭素及び水素の合成ガスが特定のモル比(H/(2CO+3CO)=0.85〜1.15)を維持するように、メタンの二酸化炭素改質反応(Carbon dioxide reforming of methane;CDR)と同時に実施される。この方法において、触媒(Ni/Ce(Zr)/MgAlOとも称される)は、メタノール合成反応又はフィッシャー・トロプシュ反応に有利な合成ガスを製造するために用いられる。メタノール合成触媒としては、先行特許文献(韓国特許出願第2008−0072286号公報)に提示された副産物の生成を最小化する触媒系、及び既存の商業用Cu−ZnO−Al系触媒を使用することができる。
【0021】
一般に、SRM反応及びCDR反応の平衡転換率は、反応物であるCH/CO/水蒸気の比と反応圧力及び反応温度に応じて決定される。反応圧力が増加するにつれ、CDR反応の転換率は減少し、炭素の堆積速度は増加する。しかしながら、商業的には、反応器を小さくして初期投資額を削減し、また、分離工程のコスト削減のために通常1.0MPa以上の反応圧力で改質反応を実施する。混合型改質反応において、反応圧力とともに供給(feed)組成中の水蒸気の量が増加するほどCOの転換率が低下するという問題があるため、水蒸気の使用を最小化することが有利であるが、このことは炭素の堆積による触媒の寿命に影響を与えるので、前記条件において不活性化を生じにくい触媒の開発が必要である。
【0022】
前記条件下における触媒の不活性化を抑制するために、二酸化炭素を用いる経済的な方法として、天然ガスの水蒸気改質反応と同時にメタンの二酸化炭素改質反応を実施する混合型改質反応を、一酸化炭素及び二酸化炭素と水素とが特定比[H/(2CO+3CO)=0.85〜1.15]を維持するように実施する。これに関連して、メタノール合成反応又はフィッシャー・トロプシュ反応に適した合成ガスを製造するために、Ni/Ce(Zr)/MgAlOで構成される特定の触媒が使用される。
【0023】
以下、本発明による混合型改質方法をより詳細に説明する。
まず、Ni/Ce(Zr)/MgAlOで構成される触媒上において、天然ガスの水蒸気改質反応とメタンの二酸化炭素改質反応とが同時に実施される混合型改質反応によりH/(2CO+3CO)=0.85〜1.15を維持する。こうすることで、メタノール合成反応及びフィッシャー・トロプシュ反応にも優れた活性を示す反応条件を導入することができる。
【0024】
前記混合型改質反応は、天然ガス(CH)の水蒸気改質反応(steam reforming of methane;SRM)及びメタンの二酸化炭素改質反応(carbon dioxide reforming of methane;CDR)で構成されるが、こうした混合型改質反応は、メタノール合成反応に優れた活性を示す範囲として、具体的には、H/(2CO+3CO)のモル比0.85〜1.15により実現可能である。前記H/(2CO+3CO)のモル比が0.85未満であると、水素が足りず一酸化炭素及び二酸化炭素の一回転換率が減少するという問題があり、1.15モル比を超える場合には、未反応の水素が過度に再循環され、工程の効率が低下するという問題が発生し得るため、前記範囲を維持することが好ましい。
【0025】
混合型改質反応では、Ni−Ce(Zr)/MgAlOで構成される特定の触媒を使用して、炭素の堆積による不活性化を抑制することにより、反応中に特定のH/(2CO+3CO)のモル比を維持する。まず、混合型改質反応の支持体として使用されるハイドロタルサイト構造のMgAlOは、次に示す共沈法により製造することができ、又は商用化されているMgAlO(PURAL MGシリーズ,サソール(SASOL)社)を使用することもできる。
【0026】
共沈法により製造されるMgAlO支持体は、当分野において一般的に使用されるものであって、比表面積が100〜400m/g、好ましくは150〜300m/gであり、MgO/Alモル比が0.2〜0.8の範囲を満たすものを使用すればよい。このとき、MgAlOの比表面積が100m/g未満であると、支持体の比表面積が小さく、活性成分の分散性が減少するため触媒の活性が減少し、400m/gを超える支持体を使用する場合には、支持体の熱的安定性が低下し、触媒の製造及び反応過程において支持体の焼結現象による触媒の活性が減少し得る。また、MgO/Alのモル比が0.2以下の場合には、既存の商用化触媒であるNi/Alを使用する場合と同様に、混合型改質反応中のニッケルアルミネート形成により触媒の活性が減少することがあり、また、0.8を超える場合には、高温焼成過程において生成されるハイドロタルサイト構造が安定化せず、触媒の不活性化が発生し得るため、前記範囲を維持する必要がある。
【0027】
支持体であるMgAlOを共沈法で製造するためには、まず、アルミナ前駆体及びマグネシウム前駆体の金属の混合物に塩基性沈殿剤を加え、pH10の塩基性水溶液中で共沈、熟成させ、形成された沈殿物を濾過及び洗浄する工程を導入する。
【0028】
前記アルミナ前駆体及びマグネシウム前駆体の金属混合物は、当分野において一般的に使用される各金属の前駆体であり、具体的には、酢酸塩、水酸化塩や硝酸塩などを使用することができる。前記塩基性沈殿剤は、当分野において一般的に使用されるものであり、具体的には、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)などを使用することが好ましい。
【0029】
共沈反応後、触媒の熟成過程を経て沈殿物を製造する。このとき、前記熟成は、50〜90℃で2〜20時間、好ましくは2〜15時間維持することが適切である。提示された熟成時間において、適切なサイズの比表面積を有する安定化されたハイドロタルサイト構造のMgAlO酸化物が有利に形成される。前記熟成過程において、熟成温度が50℃未満であると、MgAlO酸化物の構造形成が困難であり、90℃を超える場合には、MgAlO酸化物支持体の粒子サイズが増加し、比表面積が減少する。また、熟成時間が2時間未満であると、MgAlO酸化物の構造が十分に発達せず、20時間を超える場合には、MgAlO酸化物支持体の粒子サイズが増加し、比表面積が減少するため最終触媒の活性部位が減少し、合成時間が増加して経済的ではないため、適切でない。
【0030】
前記沈殿物を洗浄した後、100℃以上、具体的には100〜150℃の範囲のオーブンで一日以上乾燥させ、さらに500〜1000℃の範囲、好ましくは600〜900℃の範囲で焼成して触媒を製造する。または、乾燥させた後、焼成過程を省略して、触媒の製造に直接使用することもできる。前記焼成温度が500℃未満であると、金属前駆体が酸化物の形態に転換されず、適切な構造が形成されないため支持体の比表面積が減少し、1000℃を超える場合には、支持体の粒子サイズの増加による非表面積の減少により活性成分の分散性が減少し、混合型改質の反応速度が減少する。また、乾燥工程のみを経たMgAlO酸化物を支持体として使用する場合には、活性成分を担持している間、触媒粒子の分散性を向上させ、混合型改質反応の活性を増加させ得る。しかし、この場合、ハイドロタルサイト構造のMgAlOが適切な構造の酸化物形態に転換されない場合があるため、スピネル構造形成のための適切な当量比を有するMgAlO支持体の製造が重要となる。
【0031】
混合型改質反応用触媒は、前記方法により製造されたハイドロタルサイト構造のMgAlOを支持体として使用し、かつ、次のような含浸法を利用して製造される。
まず、酸素貯蔵能力を有することが知られているCe成分、又は酸性部位と塩基性部位とを同時に導入して炭素の堆積を抑制することができるCe−Zr成分を導入することにより、支持体としてのMgAlOを前処理する。これにより、改質反応中における炭素の堆積による触媒の不活性化を抑制することができる。前記前処理方法は、本研究の先行研究の結果(韓国公開特許第2002−0021721号公報、韓国公開特許第2004−0051953号公報及び韓国公開特許第2002−0088213号公報)に基づくものであり、セリウムで修飾されたジルコニア成分を使用する場合には、炭素の堆積による触媒の不活性化を抑制できることが報告されている。本発明において、使用される混合型改質触媒用支持体は、Ce(Zr)/MgAlOで構成される成分中Ce又はCe−Zrの含量がMgAlOの重量に対し3〜20重量%を維持するように製造される。このとき、Ce又はCe−Zrの含有量が3重量%未満の場合には、前処理による炭素の堆積の抑制効果が微々たるものであり、20重量%を超える場合には、支持体であるMgAlOの気孔の閉塞による比表面積の減少によってNiの分散性が減少し、触媒の活性が減少する。また、MgAlO支持体の前処理のための成分であるCe及びZrの金属の重量組成比(Zr/Ce)は、0〜4の範囲を維持するようにする。Zrの含有量が増加してZr/Ceの比が4を超える場合には、活性成分であるNiの分散性が減少して活性が低下し得るため、前記範囲を維持する必要がある。
【0032】
前記Ce及びZr前駆体は、当分野において一般的に使用される各金属の前駆体であり、具体的には、酢酸塩、水酸化塩又は硝酸塩などを使用することができる。より詳しくは、MgAlO支持体にCe及びZr前駆体を担持させた後、100〜200℃で乾燥し、600〜1000℃の範囲、好ましくは700〜900℃の範囲で焼成する。このとき、含浸法は、40〜90℃の範囲の温度、かつ水溶液又はアルコール溶液中で行う。前記工程により製造された生成物を、真空乾燥機中で乾燥させ、溶媒を蒸発させて除去してから、100℃以上のオーブンで約24時間程度乾燥させた後、焼成して、触媒として使用する。
【0033】
前記方法により製造された混合型改質反応の支持体であるCe(Zr)/MgAlOに、さらに活性成分として、NiをCe(Zr)/MgAlOに対し5〜20重量%で担持させ、最終触媒を製造する。このとき、ニッケル金属の前駆体として、具体的には、酢酸塩、水酸化塩又は硝酸塩などを使用することができ、より詳しくは、Ce(Zr)/MgAlO支持体にニッケル前駆体を担持させた後、100〜200℃で乾燥させ、600〜1000℃の範囲、好ましくは700〜900℃の範囲で焼成する。前記方法により製造されるNi/Ce(Zr)/MgAlO触媒の比表面積は、80〜200m/gの範囲にある。前記活性成分として担持されるニッケルの含有量が5重量%未満の場合、改質反応に活性を示すニッケルの含有量が少なくなるため活性が低下し、20重量%を超える場合、支持体であるCe(Zr)/MgAlOの気孔を塞ぐためニッケルの分散性が減少し、触媒の活性が減少し得るため、前記範囲を維持する必要がある。
【0034】
混合型改質反応用Ni/Ce(Zr)/MgAlO触媒の他の製造方法は、NiとCe及びZrから選択された1種以上の金属前駆体とを同時にMgAlO支持体に担持させてNi/Ce(Zr)/MgAlO触媒を製造する方法である。より詳しくは、MgAlO支持体にNiとCe及びZr前駆体から選択される1種以上の金属化合物とを担持させた後、100〜200℃で乾燥させ、600〜1000℃の範囲、好ましくは700〜900℃の範囲で焼成して、Ni/Ce(Zr)/MgAlO触媒の比表面積が80〜200m/gとなるようにする方法である。
【0035】
一般に、メタノール合成反応では、CO及びHのみが共存する合成ガス組成よりも、COが含まれている合成ガスの組成においてメタノールの収率が向上するという結果が本発明者らによって確認されており、CO/(CO+CO)のモル比が0.6〜0.8の場合に、メタノールの収率が最大となることが確認されている。これに基づき、SRM及びCDRで構成される混合型改質反応においては、得られる合成ガスがメタノール合成及びフィッシャー・トロプシュ合成に適したものとなるように、一酸化炭素及び二酸化炭素と水素とが特定の比[H/(2CO+3CO)=0.85〜1.15]を維持するような反応条件を選定することが重要である。
【0036】
したがって、Ni−Ce(Zr)/MgAlOで構成される混合型改質用触媒上においてH/(2CO+3CO)のモル比0.85〜1.15を維持するための反応条件として、改質反応物であるCH/HO/COのモル比を1/1.0〜2.0/0.3〜0.6の範囲に維持し、反応温度800〜1000℃、反応圧力50.7〜2026kPa(0.5〜20atm)を維持して、メタンの転換率を80%以上、二酸化炭素の転換率を45%以上に維持する必要がある。また、メタノール合成反応に有利なH/(2CO+3CO)のモル比0.85〜1.15を維持することが、メタノールの収率向上及び工程の安定性を確保するために必要であり、本明細書では、反応時間20時間のH/(2CO+3CO)モル比の変化率が2%未満で活性が維持される触媒を提示している。前記混合型改質反応条件において、反応温度が800℃以下の場合には、ブードア(Boudourd)反応(2CO→C+CO ΔH=−172kJ/mol)による炭素の堆積によって触媒の急激な不活性化が発生し、1000℃以上の反応温度の場合には、メタン及び二酸化炭素の転換率の面においては優れているが、改質用反応器の材質の選定が難しく、吸熱反応である混合型改質における燃料の使用が増加し、経済性に劣る。また、混合型改質反応における圧力は、常圧から2026kPa(20気圧)までの運転が可能である。低圧の場合には、平衡転換率は上昇するが、反応器の嵩が増加して初期投資額が増加し、生成物の分離のための高圧ブースターの使用により経済性が減少する。また、2026kPa(20気圧)以上の運転条件においては、触媒の不活性化速度の増大とともにメタンと二酸化炭素の平衡転換率が低下する。したがって、反応条件を前記範囲に維持する必要がある。
【0037】
また、メタノール合成反応に最適な供給条件であるH/(2CO+3CO)のモル比0.85〜1.15を維持するために、改質反応物であるCH/HO/COのモル比を1/1.0〜2.0/0.3〜0.6の範囲に維持する必要がある。メタンに対するHOのモル比が1.0未満の場合には、炭素の堆積による触媒の不活性化が著しく、2.0を超える場合には、COの転換率が減少し、COの利用率が低下する。また、メタンに対するCOのモル比が0.3以下の場合には、COの1回処理量が減少するとともに、適切なH/(2CO+3CO)のモル比を維持することができず、0.6を超える場合には、COの転換率が減少して、メタノール反応器における未反応COの処理が問題となり得るため、前記供給組成を維持する必要がある。前記反応条件の範囲において、メタノール収率の向上や工程の安定性を確保するために、混合型改質反応後の生成物であるH/(2CO+3CO)のモル比を0.85〜1.15に維持することが必要であり、また、本明細書では、反応時間20時間のH/(2CO+3CO)モル比の変化率が2%未満で活性が維持される触媒が提示される。
【0038】
前記混合型改質反応用触媒は、改質反応前に700〜1000℃の温度範囲で還元処理した後に使用される。前記混合型改質反応は、800〜1,000℃の反応温度、50.7〜2026kPa(0.5〜20気圧)の反応圧力、及び1,000〜500,000h−1の空間速度の条件で行う。前記安定した活性を有する触媒を用いた混合型改質反応により得られるCHの転換率は80%以上、COの転換率は45%以上である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
まず、MgO/Al比が3/7のハイドロタルサイト構造のMgAlO(30)支持体であるPURAL MG30(サソール社製、比表面積は250m/g以上)を混合型改質反応用触媒の支持体として使用した。次に、酢酸セリウムを、Ce金属がMgAlO(30)支持体に対して4重量%となるように含浸させると同時に、ニッケル前駆体として硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO)をCe/MgAlO(30)支持体に対し12重量%となるように担持させた。さらに、真空乾燥機中70℃で12時間攪拌して溶媒である水を除去し、100℃のオーブンで24時間以上乾燥させた後、850℃で6時間焼成して最終触媒であるNi/Ce/MgAlO(30)を製造した。
【0040】
前記製造された触媒の比表面積は117m/g、気孔体積は0.34cm(cc)/g、平均気孔サイズは12.4nmであった。
混合型改質反応を実施する前に、触媒0.5gと希釈剤であるアルファ−アルミナ34.5gとを均一に混合してインコロイ(Incoloy)800H反応器に装入し、700℃の水素(5体積%H/N)雰囲気下で3時間還元処理した後に反応を実施した。CH、CO、HO、Nを1:0.4:1:1(CH:CO:HO:N)の割合のモル比で含む反応物を反応器へ注入し、反応温度850℃、反応圧力1.0MPa、空間速度5000L(CH)/kg触媒/時の条件で反応を実施した。3時間及び20時間反応させた後のメタン及び二酸化炭素の転換率並びにH/(2CO+3CO)モル比の2時間の平均値、及び反応20時間のH/(2CO+3CO)のモル比の変化率を以下の表1に示した。
【0041】
[実施例2]
MgO/Al比5/5のハイドロタルサイト構造のMgAlO(50)支持体であるPURAL MG50(サソール社製、比表面積は200m/g以上)を使用したことを除き、実施例1と同様の方法で、最終触媒であるNi/Ce/MgAlO(50)を製造した。このとき、触媒の比表面積は117m/g、気孔体積は0.30cm(cc)/g、平均気孔サイズは13.2nmであった。前記触媒を使用して実施例1と同様の方法で混合型改質反応を実施し、3時間及び20時間反応させた後のメタン及び二酸化炭素の転換率並びにH/(2CO+3CO)モル比の2時間の平均値、及び反応20時間のH/(2CO+3CO)のモル比の変化率を以下の表1に示した。
【0042】
[実施例3]
MgO/Al比7/3のハイドロタルサイト構造のMgAlO(70)支持体であるPURAL MG70(サソール社製、比表面積は180m/g以上)を使用したことを除き、実施例1と同様の方法で、最終触媒であるNi/Ce/MgAlO(70)を製造した。このとき、触媒の比表面積は104m/g、気孔体積は0.24cm(cc)/g、平均気孔サイズは11.0nmであった。前記触媒を使用して実施例1と同様の方法で混合型改質反応を実施し、3時間及び20時間反応させた後のメタン及び二酸化炭素の転換率並びにH/(2CO+3CO)モル比の2時間の平均値、及び反応20時間のH/(2CO+3CO)のモル比の変化率を以下の表1に示した。
【0043】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で、MgO/Al比3/7のハイドロタルサイト構造のMgAlO(30)支持体であるPURAL MG30(サソール社製、比表面積は250m/g以上)を使用し、かつ酢酸セリウム及び硝酸ジルコニウムを、Zr/Ce重量比が0.25となるようにMgAlO(30)支持体に含浸させ、かつCe−Zrの重量がMgAlO(30)支持体に対し18重量%となるように担持させた。同時に、ニッケル前駆体として硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO)をCe−Zr/MgAlO(30)支持体に対し15重量%となるように担持させ、真空乾燥機中70℃で12時間攪拌して溶媒である水を除去し、100℃のオーブンで24時間以上乾燥させた後、850℃で6時間焼成して最終触媒であるNi−Ce−Zr/MgAlO(30)を製造した。このとき、触媒の比表面積は85m/g、気孔体積は0.21cm(cc)/g、平均気孔サイズは11.5nmであった。
【0044】
前記触媒を用いて実施例1と同様の方法で混合型改質反応を実施し、3時間及び20時間反応させた後のメタン及び二酸化炭素の転換率並びにH/(2CO+3CO)モル比の2時間の平均値、及び反応20時間のH/(2CO+3CO)のモル比の変化率を以下の表1に示した。
【0045】
[実施例5]
MgO/Al比3/7のハイドロタルサイト構造のMgAlO(30)支持体であるPURAL MG30(サソール社製、比表面積は250m/g以上)を使用し、かつ酢酸セリウム及び硝酸ジルコニウムを、Zr/Ce重量比が3となるようにMgAlO(30)支持体に含浸させ、かつCe−Zrの重量がMgAlO(30)支持体に対し5重量%となるように担持させた。70℃で12時間攪拌して溶媒である水を除去し、100℃のオーブンで24時間以上乾燥させた後、900℃で6時間焼成してCe−Zr/MgAlO(30)支持体を製造した。前記製造された支持体に対し12重量%のニッケルを担持させ、70℃で12時間攪拌して溶媒である水を除去し、100℃のオーブンで24時間以上乾燥させた後、550℃で6時間焼成して最終触媒であるNi/Ce−Zr/MgAlO(30)を製造した。このとき、触媒の比表面積は96m/g、気孔体積は0.31cm(cc)/g、平均気孔サイズは16.5nmであった。
【0046】
前記触媒を用いて実施例1と同様の方法で混合型改質反応を実施し、3時間及び20時間反応させた後のメタン及び二酸化炭素の転換率並びにH/(2CO+3CO)モル比の2時間の平均値、及び反応20時間のH/(2CO+3CO)のモル比の変化率を以下の表1に示した。
【0047】
[比較例1]
MgO/Al比3/7のハイドロタルサイト構造のMgAlO(30)支持体であるPURAL MG30(サソール社製、比表面積は250m/g以上)を使用し、ニッケルのみを支持体に対し12重量%となるように担持させたことを除き、実施例1と同様の方法でNi/MgAlO(30)の触媒を製造した。このとき、触媒の比表面積は118m/g、気孔体積は0.34cm(cc)/g、平均気孔サイズは13.8nmであった。前記触媒を用いて実施例1と同様の方法で混合型改質反応を実施し、3時間及び20時間反応させた後のメタン及び二酸化炭素の転換率並びにH/(2CO+3CO)モル比の2時間の平均値、及び反応20時間のH/(2CO+3CO)のモル比の変化率を以下の表1に示した。
【0048】
[比較例2]
前記実施例4と同様の方法で、比表面積が200m/gのサソール社のガンマ−アルミナを支持体として使用し、酢酸セリウム及び硝酸ジルコニウムを、Zr/Ce重量比が0.75となるように支持体に含浸させ、かつCe−Zrの重量がアルミナ支持体に対し5重量%となるように担持させてから乾燥させ、さらに900℃で6時間焼成してCe−Zr/γ−Al支持体を製造した。前記Ce−Zr/γ−Al支持体に対し、ニッケル前駆体として硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO)を12重量%となるように担持させ、真空乾燥機中70℃で12時間撹拌して溶媒である水を除去し、100℃のオーブンで24時間以上乾燥させた後、900℃で6時間焼成して最終触媒であるNi/Ce−Zr/γ−Alを製造した。このとき、触媒の比表面積は110m/g、気孔体積は0.34cm(cc)/g、平均気孔サイズは14.1nmであった。
【0049】
前記触媒を用いて実施例1と同様の方法で混合型改質反応を実施し、3時間及び20時間反応させた後のメタン及び二酸化炭素の転換率並びにH/(2CO+3CO)モル比の2時間の平均値、及び反応20時間のH/(2CO+3CO)のモル比の変化率を以下の表1に示した。
【0050】
【表1】

前記表1から見てとれるように、本発明によって製造された、混合型改質反応に使用されるNi/Ce(Zr)/MgAlO触媒(実施例1〜5)の場合には、メタン及び二酸化炭素の転換率がそれぞれ80%及び45%以上で安定であった。特に反応20時間後のH/(2CO+3CO)のモル比の変化率が2%未満と安定的に維持されていて、メタノール合成反応に有利な条件を維持することができる。それに対し、比較例1及び比較例2の場合のように、MgAlO支持体にNiのみを担持させる場合や、支持体としてAlを使用した場合には、実施例と類似の転換率においてH/(2CO+3CO)モル比の変化率が著しく、これらの触媒を使用する場合にはメタノール合成反応に有利でないことが判明した。また、メタノール合成反応に最適な供給条件であるH/(2CO+3CO)のモル比0.85〜1.15を維持するために、反応温度及び反応圧力の最適条件の選定が重要な要素であることが確認された。また、前記方法により製造される合成ガスは、フィッシャー・トロプシュ反応にも効果的に適用でき、特に、COの水素化反応にも活性を示す鉄系の触媒を使用する場合に、より効果的に使用することができる。
【0051】
【表2】

図1、図2及び表2は、前記方法により製造された触媒の反応前と反応後のXRDパターン、ならびにNiO及びNiの粒子サイズを、XRD回折パターンのうち2θ=37.2°(NiO、反応前)と2θ=44.5°(Ni、反応後)におけるFWHM値を用いて、シェラー(Scherrer)の式により計算した結果を示したものである。実施例において使用された触媒の場合には、焼結現象(sintering)が抑制され、反応前後におけるニッケルの粒子サイズの変化が比較例2の場合と比較して相対的に小さいことが判明した。このことは、触媒の活性が安定的に維持される理由と関連性があることを示唆している。また、比較例1の活性成分であるニッケルの焼結現象によるニッケルの粒子サイズの変化は相対的に小さかったが、反応中に触媒の不活性化によるH/(2CO+3CO)のモル比の変化が著しく、本明細書において提示する目的に使用するには適切ではない触媒系であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
地球温暖化への対策として、2005年に二酸化炭素排出量の削減に関する京都議定書が発効したことにより、韓国は、2013年以降、二酸化炭素の削減義務履行国になることが予想されており、経済的な二酸化炭素排出量の削減技術及びエネルギー化技術の開発に対する重要性が次第に増大している。本発明において、二酸化炭素の経済的な活用策として、メタンの二酸化炭素改質反応(CDR)及びメタンの水蒸気改質反応(SRM)を同時に行う混合型改質反応のための触媒を開発した。この改質反応によって製造される合成ガスは、メタノールの合成又はフィッシャー・トロプシュ反応に適用可能であるとともに、優れた長期安定性を有する。また、主要生成物であるメタノールは、DME、DMC、バイオディーゼル及び合成揮発油などの様々な用途の製品を生産することのできる出発物質に用いることができ、フィッシャー・トロプシュ反応により生成される炭化水素もまた様々な用途に適用される化学原料として使用することができるため、本明細書において提示する改質触媒系は、今後の経済的な二酸化炭素活用のための工程の開発に大きく寄与し得るものと期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ce/MgAlO支持体又はCe−Zr/MgAlO支持体に対し5〜20重量%となるように前記支持体に担持させたNiを活性成分として含み、かつ、600〜1000℃で焼成した後の比表面積が80〜200m/gであることを特徴とする、混合型改質反応用触媒。
【請求項2】
メタノール合成反応又はフィッシャー・トロプシュ反応のための合成ガスの製造に使用されることを特徴とする、請求項1記載の混合型改質反応用触媒。
【請求項3】
1)MgAlO支持体上に担持させたCe又はCe−Zrを、含有量3〜20重量%ならびにCe及びZrの金属の重量組成比(Zr/Ce)0〜4の範囲を維持するように、600〜900℃で焼成してCe(Zr)/MgAlO混合型改質用支持体を製造するステップと、
2)Ce/MgAlO支持体又はCe−Zr/MgAlO支持体に対し5〜20重量%となるように、活性成分としてNiを前記支持体に担持させた後、600〜1000℃で焼成して触媒を製造するステップと
を含むことを特徴とする、混合型改質反応用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記MgAlO支持体は、アルミナ前駆体及びマグネシウム前駆体の金属の混合物に塩基性沈殿剤を加え、塩基性水溶液中で共沈させることにより製造されることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記アルミナ前駆体又はマグネシウム前駆体は、酢酸塩、水酸化塩又は硝酸塩であることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記塩基性沈殿剤は、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)であることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項7】
MgAlO支持体上に、金属前駆体であるNiとともにCe又はCe−Zrを同時に担持させた後、600〜1000℃で焼成して触媒を製造することを特徴とする、混合型改質反応用触媒の製造方法。
【請求項8】
前記金属前駆体は、酢酸塩、水酸化塩及び硝酸塩から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
合成ガスの製造方法であって、
請求項1又は請求項2記載の触媒を700〜1000℃で水素気体により還元処理して得られた触媒上において、反応温度800〜1000℃、反応圧力50.7〜2026kPa(0.5〜20気圧)、空間速度1,000〜500,000h−1、CH/HO/COのモル比1/1.0〜2.0/0.3〜0.6の条件下で、天然ガスの水蒸気改質反応及びメタンの二酸化炭素改質反応を同時に進行させる混合型改質反応を実施することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記混合型改質反応において、CHの転換率が80%以上かつCOの転換率が45%以上に維持され、かつH/(2CO+3CO)のモル比が0.85〜1.15に維持されることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記混合型改質反応の前記条件下において、H/(2CO+3CO)のモル比の変化率が2%未満であることを特徴とする、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−529394(P2011−529394A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521026(P2011−521026)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004256
【国際公開番号】WO2010/013958
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(594006932)ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド (31)
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI HEAVY INDUSTRIES CO., LTD.
【出願人】(398043850)コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (21)
【Fターム(参考)】