説明

天然ミネラル含有剤、及びそれらの製造方法

【課題】高いミネラル成分を含有するため、排水などの水処理にはもちろんのこと、飲食料、農園芸、林業、魚業分野、さらには、化粧品、医療分野にも安心して使用できる天然ミネラル含有剤、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】雲母系鉱物を、リンゴ酸、クエン酸、フマール酸、酒石酸及び乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸又はその塩の水溶液と接触させ、雲母系鉱物中に含有されるミネラル成分を前記有機酸中に抽出、溶解させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水、汚水、廃水などの浄化処理、湖沼、池、河川など水質改善、浴場、プールの水質改善、芝、園芸用の土壌改良などの分野のみならず、飲食料、化粧品、医療品、農園芸、漁業などの分野にも安全に使用できる天然ミネラル含有剤、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉱物などに含有されるミネラル成分を硫酸や塩酸などの無機酸により抽出した天然ミネラル含有液は、汚水、廃水処理、湖水、沼水、河川、更には、浴場、プールなどの水質改善、濃園芸用の土壌改質剤などして有用なことが例えば、特許文献1〜特許文献6などにより知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水処理用析出凝集剤として、雲母系鉱物が風化したバーミキュライトを硫酸などの無機酸水溶液に溶解させて得た多種類の金属塩及び非金属塩からなるミネラルを主成分として含有する酸性添加剤が開示されている。かかる水処理用析出凝集剤によれば、水中の懸濁物質やコロイド物質のみならず、従来の凝集剤では除去が困難であった、水中に溶解し水の汚染の大部分を占める蛋白質、アミノ酸、含水炭素、脂肪類などの有機物も凝集させて除去させることが可能なことが記載されている。
【0004】
また、上記の雲母系鉱物を硫酸などの無機酸水溶液により抽出、溶解させて得たミネラルを主成分として含有する酸性添加剤は、それぞれ、堆積したヘドロの処理(特許文献2参照)、アオコの予防、除去剤(特許文献3参照)、さらには、消臭剤(特許文献4参照)などとして有効なことが開示されている。
更に、雲母系鉱物を硫酸などの無機酸水溶液により抽出、溶解させて得た酸性添加剤の水溶液には、雲母系鉱物に由来する各種のミネラル成分を含有されているため、植物の栽培(特許文献5参照)や水耕植物の栽培(特許文献5参照)に使用されることが開示されている。
【0005】
しかし、上記のような従来の鉱物などからのミネラル成分の抽出には、硫酸などの無機酸が使用されているが、この場合、得られるミネラル含有液には、硫酸などに起因する硫酸イオンが多量に含有されている。この硫酸イオンが含まれることにより、例えば、農園芸に使用する場合、土中に硫酸痕と呼ばれる物質が残留蓄積し、土壌を数年にして崩壊に至らしめることになる。
【0006】
また、上記ミネラル含有液を養殖漁業に使用した場合には、抽出に使用された硫酸イオンを含むために養殖対象魚類を死滅に至らしめることもある。さらに、ミネラル含有液を飲食料において使用した場合には、硫酸イオンが体内に残留蓄積するために安全上極めて問題である。このため、従来のミネラル含有液は、各種の有用な各種のミネラル分が含有されるにも拘らず、水処理でも、汚水、廃水などの主に凝集作用を必要とする分野以外には使用が制限せざるをえなかった。
【0007】
さらに、従来の硫酸などの無機酸による鉱物から抽出されるミネラル含有液は、そもそも硫酸などの無機酸が常温で液体であることから粉末状にするのは困難であり、使用、取扱い、包装、運搬、保管上のいずれでも不便でありコスト高になり、この点からしても、使用に制限のあるものであった。
【0008】
【特許文献1】特公平01−44363号公報
【特許文献2】特開平07−000998号公報
【特許文献3】特開平06−227927号公報
【特許文献4】特開平06−218031号公報
【特許文献5】特開平08−051811号公報
【特許文献6】特開平07−132029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かくして、本発明は、硫酸イオンなどの有害イオンを自然界に存在する極微量の程度か又は全く含まないため安全で、かつ高いミネラル成分をバランス良く含有するため、従来の廃水、排水などの水処理にはもちろんのこと、飲食料、農園芸、林業、魚業分野、さらには、化粧品、医療分野にも安心して使用できる天然ミネラル含有剤、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、ミネラル含有剤が液状の形態であるばかりでなく、使用、取扱い、包装、運搬、保管上において極めて有利である、粉末状の天延ミネラル含有剤をも提供することを目的とする。
なお、本発明では、ミネラル含有液、その濃縮液、濃縮ゼリー、さらには、ミネラル含有粉末を総称してミネラル含有剤ともいう。また、本発明のミネラル含有剤におけるミネラル成分は、雲母系鉱物に含まれる天然ミネラルであるが、単にミネラルともいう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、雲母系鉱物に含まれるミネラル成分を抽出するために、従来の硫酸などの強酸の代りに、融点が高いために常温で固体である、リンゴ酸、クエン酸、フマール酸、酒石酸及び乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の特定の有機酸若しくはその塩、なかでも、リンゴ酸若しくはその塩の水溶液を使用した場合、予想外のことに、これらの有機酸が硫酸などに比べて弱酸であるにも拘らず、硫酸などの強酸の場合と同様に雲母系鉱物に含有される有用なミネラル成分が高濃度でバランス良く抽出されることを見出した。
一方、これらの特定の弱酸である有機酸の場合には、硫酸などを使用した場合に含まれる硫酸イオン類などの有害なミネラル成分が含まれないという大きな利点を有する。
【0012】
また、このようにして得られるミネラル含有液は、従来の硫酸によるミネラル含有液と異なり、抽出に使用する酸は、劇物として分類される強酸性の硫酸ではなく、上記特定の弱酸性の有機酸であるとともに、これらの有機酸は食料、飲料、医療用などの添加物にも使用されることから、極めて安全性が高いために、従来の硫酸によるミネラル含有液では使用できなかった分野にも安心して使用できる利点がある。加えて、上記の特定の有機酸によるミネラル含有液は、そこから水分を除くことにより、容易に粉末状のミネラル含有剤が得られる。得られるミネラル含有粉末は、使用、取扱い、包装、運搬、保管上において極めて有利である、
【0013】
かくして、本発明は、上記の新規な知見に基づくものであり、以下の要旨を有するものである。
(1)雲母系鉱物を、リンゴ酸、酒石酸及び乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸又はその塩の水溶液と接触させ、雲母系鉱物中に含有されるミネラル成分を前記有機酸中に抽出、溶解させることを特徴とする天然ミネラル含有液の製造方法。
(2)前記有機酸又はその塩の水溶液の濃度が10〜90重量%である請求項1に記載の天然ミネラル含有液の製造方法。
(3)前記雲母系鉱物と前記有機酸又はその塩の水溶液とを5〜100℃の温度で接触させる請求項1又は2に記載の天然ミネラル含有液の製造方法。
(4)前記雲母系鉱物がバーミキュライトである請求項1〜3のいずれかに記載の天然ミネラル含有液の製造方法。
(5)前記有機酸がリンゴ酸であり、前記有機酸の塩がリンゴ酸の金属塩である請求項1〜4のいずれかに記載の天然ミネラル含有液の製造方法。
(6)請求項1〜5のいずれかに記載のミネラル含有液を乾燥させて水分を除去する天然ミネラル含有粉末の製造方法。
(7)雲母系鉱物を、リンゴ酸、クエン酸、フマール酸、酒石酸及び乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸又はその塩の水溶液に抽出されるpHが1〜3であるより抽出され、雲母系鉱物中に含有されるミネラル成分を2000〜30000ppm含み、かつpHが1〜3であることを特徴とする天然ミネラル含有液。
(8)前記雲母系鉱物がバーミキュライトであり、かつ前記有機酸がリンゴ酸であり、前記有機酸の塩が金属塩である請求項7に記載の天然ミネラル含有液。
(9)請求項7又は8に記載のミネラル含有液を乾燥させてなる天然ミネラル含有粉末。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硫酸イオンなどの有害イオンを自然界に存在する極微量の程度か又は全く含まないため安全で、かつ高いミネラル成分をバランス良く含有するため、従来の廃水、排水などの水処理にはもちろんのこと、飲料、食料、農園芸、林業、漁業分野、さらには、化粧品、医療分野にも安心して使用できる天然ミネラル含有剤、及びその製造方法が提供される。
また、本発明によれば、ミネラル含有剤が液状の形態であるばかりでなく、使用、取扱い、包装、運搬、保管上において極めて有利である、粉末状の形態の天然ミネラル含有剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。
<雲母系鉱物>
本発明において、使用される雲母系鉱物としては、黒雲母、金雲母、鉄雲母、チンワルド雲母などの黒雲母系列雲母;白雲母、紅雲母、ソーダ雲母、セリサイト、イライトなどの白雲母系列雲母;これら雲母が風化してできるバーミキュライト(ひる石)などが挙げられる。また、雲母を含有する鉱物、例えば花崗岩、長石などの鉱物、又はこれが風化してできる鉱物も本発明の雲母系鉱物に含まれる。
【0016】
上記の雲母系鉱物のうち、鉱物中のミネラル成分が多く、かつ溶解しやすいことから、本発明では、バーミキュライトが好ましい。バーミキュライトは、その産地によっても異なるが、例えば、日本のバーミュライトはSiO 35.76%、Al 18.70%、Fe 18.30%、MnO 0.42%、MgO 7.82%、CaO 1.40%、NaO 1.02%、KO 3.16%、その他TiOに、Cr、FeOなどの組成を有している。
【0017】
これらの雲母系鉱物は、大きな粒径、細かい粒径、又は各種の粒径の混合物として使用できる。また、後記する有機酸若しくはその塩の水溶液との接触面積を増大させ、抽出を効率的にするために、粉砕して粉末化して使用することができる。雲母系鉱物の粉砕は、既存の装置を使用した方法で実施される。
雲母系鉱物は、必要に応じて焼成して使用することができる。特に、抽出されたミネラル含有液やミネラル含有粉末を飲食料や医療薬品など使用する場合、焼成により、鉱物中に含有される胞子類や雑菌類を死滅させることができるので好ましい。焼成は、既存の焼成装置にて好ましくは800〜1000℃にて、例えば、0.5〜数分間にて行われる。
【0018】
また、上記の雲母系鉱物は、後の抽出工程に先立ち、例えば、マイクロ波などの照射により120℃以上の加熱や、強酸性電解水の添加などにより殺菌又は滅菌処理を施すことができる。これにより、雲母系鉱物に含まれる土壌胞子類その他の雑菌類を死滅させ、得られるミネラル含有液やミネラル含有粉末が飲食料品、医療薬品、に安心して使用することができる。
【0019】
<有機酸又はその塩>
本発明において、雲母系鉱物の抽出には、リンゴ酸、クエン酸、フマール酸、酒石酸及び乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の特定の有機酸若しくはその塩が使用される。これらの有機酸は、常温で固体状を呈し、雲母系鉱物中のミネラル成分を容易に抽出できる。また、抽出された有機酸又はその塩を含むミネラル含有液は、水分除去により容易に粉末にできる。
【0020】
有機酸としては、リンゴ酸、クエン酸、フマール酸、酒石酸及び乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸又はその塩が使用される。有機酸の塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩が挙げられる。なかでも、溶解性及び入手性の点から、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩が好ましい。また、有機酸に光学異性体がある場合には、D体、L体、ラセミ体、又はそれらの混合物のいずれでもよい。
これらの有機酸のなかでも、リンゴ酸は、クエン酸などと比較して、酸性度が高く、また、酒石酸及び乳酸などと比較しても安定性が優れているので特に好ましい。リンゴ酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが好ましい。
【0021】
有機酸又はその塩は、雲母系鉱物のミネラル成分の抽出にあたり、その水溶液が使用される。有機酸又はその塩の水溶液の濃度は、10〜90重量%であるのが好ましい。有機酸水溶液の濃度が低い場合には、ミネラル成分の抽出能力が小さく好ましくない。なかでも、25〜65重量%が好ましく、特には30〜60重量%が好ましい。
有機酸又はその塩を溶解してその水溶液を調製に使用される水は、純水、逆浸透膜処理水などの各種の水が使用できるが、例えば、殺菌水、電解酸性水などを使用し、得られるミネラル含有液を同時に殺菌することもできる。また、酸、アルカリ、電解質類などを添加した水を使用し、続いて行われる抽出工程の効率を促進することができる。
【0022】
<抽出工程>
雲母系鉱物、好ましくはその粉末と上記有機酸又はその塩の水溶液と接触させることにより行われる。上記有機酸又はその塩の水溶液は、雲母系鉱物の100重量部に対して、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは20〜300重量部、特に好ましくは30〜200重量部の割合で接触させるのが好適である。有機酸又はその塩の水溶液の量が少ないと、抽出時間が長くなったり、抽出液量が少なくなったりして好ましくない。逆に多すぎると、抽出した液のpHが低くなり好ましくない。
この場合、抽出液である、上記有機酸又はその塩の水溶液のpHを好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜2に保持することにより、抽出効率を高めることができる。
【0023】
雲母系鉱物と上記有機酸又はその塩の水溶液とを接触させる手段としては、種々のものが使用できる。例えば、上記有機酸又はその塩の水溶液中に雲母系鉱物を好ましくは1〜7日間、好ましくは攪拌しながら浸漬する方法、また、雲母系鉱物を収容する槽に有機酸又はその塩の水溶液中を、噴射・スプレーする方法、さらには循環しながら流通させる方法、などが挙げられる。また、抽出液である上記有機酸又はその塩の水溶液は、抽出工程から抽出液を取り出し、代わりに新たな有機酸又はその塩の水溶液を添加して抽出効率を高めることができる。
雲母系鉱物の上記有機酸又はその塩の水溶液による抽出を促進させるため、両者の接触は、好ましくは常温〜90℃、特に好ましくは、40〜70℃の高温下に実施するのが好適である。また、必要に応じて、抽出工程からミネラル含有液を一部取り出しながら、新たな抽出液である上記有機酸又はその塩の水溶液を添加する、所謂、抽出―液出し工程を複数回、又は連続して行うことができる。
【0024】
<ミネラル含有液>
雲母系鉱物と上記有機酸又はその塩の水溶液との接触により、雲母系鉱物中のミネラル成分が抽出される。すなわち、雲母系鉱物中に存在するミネラル成分である、Si、Al、Mg、Fe、K、Naなどの主成分、また、Li、Zr、V、Ni、Co、P、Ba、Sなどの微量成分が抽出され、これらのミネラル成分がバランスよく含まれるミネラル含有液が得られる。得られるミネラル含有液には、上記雲母系鉱物中に含有されるミネラル成分が好ましくは2000〜30000ppm、特に好ましくは10000〜25000ppm含有される。また、ミネラル含有液のpHは、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特には、1.1〜1.4が好適である。
本発明における抽出におけるメカニズムは必ずしも明らかではないが、雲母系鉱物中の上記のSi、Al、Mg、Fe、K、Naなどの多種の金属や非金属の酸化物が有機酸によってその金属塩や非金属塩の形態になり抽出されるものと思われる。
【0025】
なお、本発明における有機酸又はその塩の水溶液による雲母系鉱物の抽出の場合、雲母系鉱物中のHg、As、Pb、Cd、Crなどの有害な成分は驚くことにほとんど抽出されない。その結果、本発明により得られるミネラル含有液は、有機酸自体が弱酸であり、飲食料品や医療薬品などの分野で添加物として既に使用されることもあり、極めて多くの分野に使用できるので極めて有用である。
【0026】
ミネラル含有液は、必要に応じて、水で希釈したり、或いは、蒸発や透析などにより濃縮し、液状乃至ゼリー状などの形態で使用できる。希釈に使用する水として、例えば、電解酸性水を使用し、ミネラル含有液を同時に殺菌することもできる。
また、ミネラル含有液を食品添加物、栄養源などに使用する場合には、ミネラル成分を外部から添加含有させることにより、含有されるミネラル成分の量を調整することができる。ミネラル成分の量を調整には、他の酸により抽出されたミネラル含有液や、他の鉱物から抽出されたミネラル含有液と混合することにより行うことができる。また、ミネラル含有液は、必要により、中空糸状膜などを使用した濾過処理を行い、また、紫外線、加熱処理などにより殺菌又は滅菌処理することができる。
【0027】
<ミネラル含有粉末>
上記のミネラル含有液は、液状の形態で種々の分野に使用できるが、本発明では、ミネラル含有液中の水分を除去し、さらさらした粉末状にすることができる。これは、雲母系鉱物の抽出に使用した有機酸自体がもともと常温で固体であり、容易に粉末状にすることができるためである。
【0028】
ミネラル含有液中の水分の除去は、適宜の手段で実施できるが、乾燥、好ましくは、自然乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥などが採用される。得られるミネラル含有粉末は、用途にあわせた粒径の粒状にすることができる。その平均粒子径としては、例えば、1〜1000μmなどの任意の範囲で選ばれる。ミネラル含有粉末は、必要に応じて造粒して顆粒状にし、その取り扱いを改善することができる。
【0029】
このようにして得られたさらさらしたミネラル含有粉末は、液状のものと異なり、水分を含有しない分、体積や重量が小さく、また、含有される有機酸も弱酸であるので、計量、取り扱い、運搬、保管が容易になる。そして、使用に際しては、必要に応じて、水分を添加しミネラル含有液にすることができる。
【0030】
一方、本発明と異なり、硫酸などを抽出酸として使用した場合に得られるミネラル含有液からその含有水分を除去した場合は、硫酸が常温で液状であるので、水分の除去に伴なって粘度の高いゼリー状乃至湿った凝固物になり、決してさらさらした粉末にはならない。加えて、水分の除去に伴なって硫酸が濃縮され酸性度が大きくなるので取扱い上危険になり、その包装、運搬、保管などが困難になる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定して解釈されないことはもちろんである。
【0032】
実施例1
各種の粒径のバーミキュライト混合物を1kgを筒状の反応器に収納し、反応器中に、濃度50重量%のDLリンゴ酸の水溶液1kg(バーミキュライト/リンゴ酸の重量比=1/0.5)を添加し、温度40℃にて7日間放置した。時間の経過につれてバーミキュライトの外観色が徐々に白化していくのが見られた。その時点にて、抽出液0.3kgを取り出し、取り出した量と同量の50重量%の新たなリンゴ酸水溶液を注入し同様に温度40℃で7日間放置した。この操作を更に3回繰返し、合計4回の抽出を行った。
なお、濃度50重量%のリンゴ酸の水溶液は、市販の粉末状のリンゴ酸を5kgを5kgの蒸留水に溶解することにより調製した。
【0033】
次いで、得られた液−固のスラリー状抽出混合物を5μm濾紙により濾過して固体を分別することにより、液状物として1.2kgを得た。得られた液状物のpHは1.27であり、これについて組成成分を分析した結果は表1に示す通りであった。表1において単位は、「ppm(ug/g)」である。
【0034】
実施例2
各種の粒径のバーミキュライト混合物を1kgを筒状の反応器に収納し、反応器中に、濃度50重量%のDLリンゴ酸の水溶液0.8kg(バーミキュライト/リンゴ酸の重量比=1/0.4)を添加し、温度40℃にて7日間放置した。
得られた液−固のスラリー状抽出混合物を5μm濾紙により濾過して固体を分別することにより、液状物として0.25kgを得た。液状物のpHは1.36であり、これについて組成成分を分析した結果は表1に示す通りであった。
【0035】
実施例3
各種の粒径のバーミキュライト混合物を5kgを筒状の反応器に収納し、反応器中に、濃度50重量%のDLリンゴ酸の水溶液15kg(バーミキュライト/リンゴ酸の重量比=1/1.5)を添加し、常温にて30日間放置した。
得られた液−固のスラリー状抽出混合物を5μm濾紙により濾過して固体を分別することにより、液状物として10kgを得た。液状物のpHは1.11であり、これについて組成成分を分析した結果は表1に示す通りであった。
【0036】
比較例1
濃硫酸1kgを純水3kgに添加し、濃度約25重量%の硫酸水溶液を調製した。この調製直後の硫酸水溶液は高温状態にあるが、この状態の硫酸水溶液中に実施例1で使用したのと同じバーミキュライト混合物を2.4kgを投入し、常温になるまで約8時間放置した。
得られた液−固のスラリー状の抽出混合物を実施例1と同様に濾過して固体を分別することにより、液状物として2.5kgを得た。液状物の組成成分を分析した結果は表1に示す通りであった。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例4〜6
実施例3において、5kgのバーミキュライト混合物を代りに1kgのバーミキュライト混合物を使用し、また、15kgの50重量%のDLリンゴ酸の水溶液の代りに、1.2kgの50重量%のDLリンゴ酸の水溶液(実施例4)、1.2kgの53重量%のDLリンゴ酸の水溶液(実施例5)、1.2kgの60重量%のDLリンゴ酸の水溶液(実施例6を使用したほかは、実施例3と同様にして、常温(22℃)にて30日間、攪拌せずに放置した。
【0039】
それぞれで得られた液−固のスラリー状抽出混合物を5μm濾紙により濾過して固体を分別することにより以下の液状物が得られた。すなわち、実施例4では0.36kgの液状物が得られ、そのpHは1.38であり、実施例5では0.36kgの液状物が得られ、そのpHは1.35であり、実施例6では0.32kgの液状物が得られ、そのpHは1.31であった。
また、実施例4〜6で得られた液状物の組成成分を分析した結果は表2に示す通りであった。
【0040】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によるミ天然ネラル含有液や天然ミネラル含有粉末は、雲母系鉱物から抽出された天然ミネラルをバランス良く含有しており、また含有有機酸も食品添加物として使用されている安全であるので、従来の硫酸などによる抽出ミネラル含有液と異なり各種の分野に広く使用される。
例えば、新たなミネラルの補給剤として、飲料、食料、農業、林業、水産、漁業分野など、さらには、化粧品、医療分野などに使用でき、また、従来のミネラル含有液が使用されている排水、汚水、廃水などの浄化処理、湖沼、池など水質改善、浴場、プールの水質改善、芝、園芸用の土壌改良などに有効に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雲母系鉱物を、リンゴ酸、クエン酸、フマール酸、酒石酸及び乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸又はその塩の水溶液と接触させ、雲母系鉱物中に含有されるミネラル成分を前記有機酸中に抽出することを特徴とする天然ミネラル含有液の製造方法。
【請求項2】
前記有機酸又はその塩の水溶液の濃度が10〜90重量%である請求項1に記載の天然ミネラル含有液の製造方法。
【請求項3】
前記雲母系鉱物と前記有機酸又はその塩の水溶液とを5〜100℃の温度で接触させる請求項1又は2に記載の天然ミネラル含有液の製造方法。
【請求項4】
前記雲母系鉱物がバーミキュライトである請求項1〜3のいずれかに記載の天然ミネラル含有液の製造方法。
【請求項5】
前記有機酸がリンゴ酸であり、前記有機酸の塩がリンゴ酸の金属塩である請求項1〜4のいずれかに記載の天然ミネラル含有液の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の天然ミネラル含有液を乾燥させて水分を除去する天然ミネラル含有粉末の製造方法。
【請求項7】
リンゴ酸、クエン酸、フマール酸、酒石酸及び乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸又はその塩の水溶液により抽出され、雲母系鉱物中に含有されるミネラル成分を2000〜30000ppm含み、かつpHが1〜3であることを特徴とする天然ミネラル含有液。
【請求項8】
前記雲母系鉱物がバーミキュライトであり、かつ前記有機酸がリンゴ酸であり、前記有機酸の塩がリンゴ酸の金属塩である請求項7に記載の天然ミネラル含有液。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のミネラル含有液を乾燥させてなる天然ミネラル含有粉末。

【公開番号】特開2008−136945(P2008−136945A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325840(P2006−325840)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(506400823)
【出願人】(506402045)
【出願人】(506401509)
【Fターム(参考)】