説明

太陽熱蓄熱装置

【課題】簡易な装置で、太陽光から蓄熱体への蓄熱及び蓄熱体から室内側への放熱を効率的に行い、快適な暖房効果を長時間得る。
【解決手段】日射による熱を蓄積する蓄熱体11と、蓄熱体の室外4側及び室内5側に配置された外側断熱部材13及び内側断熱材15とを備え、予め設定された複数の時刻、蓄熱体の温度、室温等に基づいて、上記断熱部材13,15の開閉を制御する。空気流発生装置17を備え、暖められた空気を室内の下部へ送り出すこともできる。
また、蓄熱体の裏面に断熱部材を取り付けた積層体と、積層体の室内側に設けた開閉断熱部材と、で構成し、積層体の表裏の反転及び開閉断熱部材の開閉を制御することにより蓄熱、放熱の効率化を図ることもできる。
さらに、装置をユニット化し、冬は南面の窓際に設置して暖房として用い、夏は北面の窓際に設置して冷房として使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を蓄積し、室内へ放射することによって暖房効果を得る太陽熱蓄熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策やエネルギー自給率向上等の観点から再生可能エネルギーの利用を拡大する要請がなされている。一般住宅においても再生可能エネルギーを導入した住宅の建築が推進されており、自然エネルギーである太陽光を利用して室内を暖房する技術が開発されている。
このような太陽光を利用する技術として、例えば特許文献1又は特許文献2に開示されているものがある。
【0003】
特許文献1には、建物の開口に設けられた透光板と、この透光板と間隔をあけて配置された蓄熱体と、この透光板と蓄熱体との間つまり蓄熱体よりも室外側に配置された遮光装置と、を備えるトロンブ壁パネルが記載されている。
このトロンブ壁パネルに備えられた遮光装置は開閉可能となっており、季節によって太陽光の遮断や室外への放熱を抑制できるものとなっている。例えば、冬期には遮光装置を開放し、蓄熱体に蓄熱して室内の暖房を行い、夏期には遮光状態として室内の温度上昇を抑えることができる。また、日没後から日の出前の夜間においても、遮光装置を遮光状態として屋内から屋外への放熱を抑制することもできる。
【0004】
特許文献2には、屋外に面して設けられた透明板と、この透明板の内側に配置された太陽熱集熱材と、透明板と太陽熱集熱材との間に設けられた透明多孔質断熱材と、太陽熱周熱材の屋内側に設けられて放熱板として機能する内壁板と、で主要部が構成された太陽熱利用の暖房外壁構造が提案されている。
この暖房外壁構造によれば、太陽光は透明板と透明多孔質断熱材を通過して集熱材に集熱される。そして、透明多孔質断熱材により太陽熱が屋外に放散するのを防止しながら屋内に熱を伝えるようになっている。また、集熱された太陽熱を蓄熱材に蓄積して、夜間等にも屋内の暖房ができるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−256992号公報
【特許文献2】特開2007−132024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術には以下のような問題点がある。
従来のトロンブ壁パネルや太陽熱利用の暖房外壁構造では、蓄熱体又は太陽光集熱材によって蓄熱又は集熱することができるが、室内側に熱を供給することを制御することが難しい。つまり、蓄熱された熱の利用が室内で不要である場合や、太陽光が照射されている昼間は室内における熱の利用は不要であるが夜間に熱の利用が必要となる場合等に対応することができない。また、夜間に蓄熱材等が冷却され、室内温度より低下した場合等には、室内の暖房効果を阻害することになる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な装置で、太陽熱の蓄積及びこの蓄積された熱の室内への供給を効率よく行うことができる太陽熱蓄熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 建築物の外壁に設けられた開口部に配置され、入射する太陽光の熱を蓄える蓄熱体と、 該蓄熱体に蓄積された熱の放射を抑制する断熱部材と、を備え、 少なくとも、前記断熱部材が前記蓄熱体の室内側を遮蔽して太陽光によって前記蓄熱体に蓄熱するとともに室内側への放熱を抑制する状態と、前記断熱部材が前記蓄熱体の室外側を遮蔽して前記蓄熱体から室内側に放熱するとともに室外側への放熱を抑制する状態とに、切り換えが可能となっていることを特徴とする太陽熱蓄熱装置を提供する。
【0009】
この太陽熱蓄熱装置では、太陽光が強く照射されるときには室内側への放熱を抑制して蓄熱を効率よく行うことができるとともに、室内で暖房が必要なときに限定して室内側に熱を供給することができる。つまり、昼間は効率の良い蓄熱を行い、夜間に気温が低下し、室内の温度が低下したときに蓄積した熱を室内に供給する。特に、昼間に利用者が不在となる居室等で蓄熱を効率よく行い、利用者が在室する夜間に有効に熱を供給することが可能となる。なお、上記太陽熱蓄熱装置は、上記2つの状態の他に、室外側と室内側との双方に放熱を抑制する状態、室外側からの蓄熱と室内側への放熱との双方を行う状態にも設定可能としても良い。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の太陽熱蓄熱装置において、 前記断熱部材は、 前記蓄熱体よりも室外側に設けられ、該蓄熱体の室外側を覆う状態と室外側を開放する状態とに開閉が可能となった外側断熱部材と、 前記蓄熱体よりも室内側に設けられ、該蓄熱体の室内側を覆う状態と室内側を開放する状態とに開閉が可能となった内側断熱部材と、を有するものとする。
【0011】
この太陽熱蓄熱装置では、開閉可能となった断熱部材が蓄熱体の室外側及び室内側のそれぞれに設けられており、外側断熱部材を開放し、内側断熱部材を閉鎖して蓄熱を行う状態、及び外側断熱部材を閉鎖し、内側断熱部材を開放して熱を室内に供給する状態とを容易に切り換えることができる。また、室内側と室外側との双方の断熱部材を閉鎖して蓄熱体に蓄積された熱を長時間保持することもできる。したがって、太陽光からの蓄熱、蓄熱体から室外への放熱の抑制、室内への放熱、蓄熱体の熱の保持等を制御して、太陽光の熱を効率よく利用することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の太陽光蓄熱装置において、 前記蓄熱体の温度を測定する温度センサと、 室内の温度を測定する室内温度センサと、を有し、 前記外側断熱部材は、該外側断熱部材の開閉を行う時刻として予め設定された複数の時刻又は前記温度センサによる検出温度に基づいて開閉が制御され、 前記内側断熱部材は、該内側断熱部材の開閉を行う時刻として予め設定された複数の時刻、前記温度センサによって検出された温度又は前記室内温度センサによって検知された温度に基づいて開閉が制御され、 前記外側断熱部材の開閉と前記内側断熱部材の開閉とが独立して制御されるもの
ものとする。
【0013】
この太陽熱蓄熱装置では、外側断熱部材と内側断熱部材との開閉が独立して日毎のサイクルで制御される。また、上記時刻に基づいて制御するとともに、温度センサ及び室内温度センサの検出値に基づく制御を併用することにより、季節や天候の変動に対応して有効に太陽熱を利用することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の太陽熱蓄熱装置において、 前記断熱部材は、前記蓄熱体の片面を覆うように該蓄熱体と一体に積層されており、 太陽光によって蓄熱するときは前記断熱部材が前記蓄熱体の室内側となり、室内へ放熱するときは前記断熱部材が前記蓄熱体の室外側となるように、該蓄熱体と該断熱部材との積層体の表裏を反転して設置可能となっているものとする。
【0015】
この太陽熱蓄熱装置は、蓄熱体の片面を覆うように断熱部材が積層されているので、表裏を反転させることによって蓄熱状態と室内へ放熱する状態とを切り換えることが可能となる。また、断熱部材が蓄熱体と一体に積層されており、断熱部材が高い断熱効果を有するものとなる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の太陽熱蓄熱装置において、 前記積層体の室内側に開閉可能な開閉断熱部材を備えるものとする。
【0017】
この太陽熱蓄熱装置では、開閉可能となった開閉断熱部材が積層体の室内側に備えられているので、積層体を蓄熱体が室内側となるように設置した場合であっても、開閉断熱部材を閉鎖しておくことにより室内への放熱を制限し、蓄積された熱を保持することができる。つまり、室内に暖房が必要でない場合には室外側及び室内側の双方への放熱を抑制し、暖房が必要なときに室内へ放熱することができる。したがって、夜間にも長時間にわたって暖房効果を得ることが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の太陽熱蓄熱装置において、 前記蓄熱体の温度を測定する温度センサと、 室内の温度を測定する室内温度センサと、を有し、 前記蓄熱体の反転を行う時刻として予め設定された複数の時刻又は前記温度センサによる検出温度に基づいて、前記断熱部材が前記蓄熱体の室内側となるように前記積層体を支持するか又は前記断熱部材が前記蓄熱体の室外側となるように前記積層体を支持するかの反転動作が制御され、 前記断熱部材が前記蓄熱体の室外側となるように前記積層体が支持されているときに、前記温度センサ又は前記室内温度センサによって検知された温度に基づいて、前記開閉断熱部材を開閉する動作が制御されるものとする。
【0019】
この太陽熱蓄熱装置では、複数の予め定められた時刻に基づき、積層体の反転動作が日毎のサイクルで制御される。また、予め設定された時刻に基づいて制御するとともに、温度センサ及び室内温度センサによる検出値による制御を併用することにより、季節や天候の変動に対応することが可能となり、有効に太陽熱を利用することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか、又は請求項5もしくは請求項6に記載の太陽熱蓄熱装置において、 前記蓄熱体と該蓄熱体の室内側にある断熱部材との間に、前記蓄熱体の上方から室内の空気を取り込み、該断熱部材の下側から室内へ空気を送り出す空気流発生装置を備えるものとする。
【0021】
この太陽熱蓄熱装置では、室内から取り込んだ空気を蓄熱体で温め、室内の低い位置へ送り出すことができる。したがって、効率よく足元を暖めることができ、天井付近に暖かい空気が滞留するのを抑制することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7までのいずれかに記載の太陽熱蓄熱装置において、 前記蓄熱体及び少なくとも前記断熱部材の一部が枠体内に収容されて、枠体とともに移動可能な蓄熱ユニットとなっており、 該蓄熱ユニットは、太陽光からの熱の蓄積が可能である前記建築物の南側と、室内からの放熱若しくは冷熱の蓄積が可能である北側と、のいずれにも据え付け可能であるものとする。
【0023】
この太陽熱発熱装置は、容易に移動することが可能なユニットになっているので、必要なときに必要な場所に設置することができる。つまり、冬期には南側に設置して日射を取り込んで蓄熱し、この蓄熱を暖房として使用することができる。春や秋の暖房も冷房も必要がない時期には撤去することにより、この太陽熱蓄熱装置が設置されていた開口部を通して採光や眺望を楽しむことができる。夏期には北側に設置し、室内の暖かい熱を蓄熱体に吸収させて室内温度を低下させることができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の太陽熱蓄熱装置において、 前記蓄熱ユニットは、夏期に建築物の北側に設置し、 午前中の予め定められた時刻に前記蓄熱体が室内側に開放される状態とし、 午後の予め定められた時刻に前記蓄熱体が室外側に開放される状態とするとともに、該蓄熱体の室外側表面に外気による通風を行うものとする。
【0025】
この太陽熱蓄熱装置は、夏期に建築物の北側で使用し、夜間に蓄熱体を室外側に開放して室外に蓄熱体から熱を放射するとともに、蓄熱体の表面への通風によって放熱する。これにより蓄熱体の温度を低下させることができる。そして、昼間は低温となった蓄熱体を屋内側に開放し、蓄積されている冷熱による室内の冷房、又は空調機等による冷房効果の補助を行うことができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項1から請求項9までのいずれに記載の太陽熱蓄熱装置において、 前記蓄熱体は、22°C〜32°Cの範囲に融点を有する潜熱蓄熱材を含むものとする。
【0027】
この太陽熱蓄熱装置では、22℃〜32℃の範囲において潜熱として多くの熱量を蓄積することができる。したがって、蓄熱された蓄熱体から放熱されるときに、上記温度の範囲に長時間維持できるので、平準化した快適な室温を長時間持続させることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係る太陽熱蓄熱装置では、簡易な装置で効率的な蓄熱及び室内への放熱が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態である太陽熱蓄熱装置を備えた建築物を示す正面図及びこの太陽熱蓄熱装置が設置される室内を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態である太陽熱蓄熱装置の蓄熱体に蓄熱する状態を示す概略断面図である。
【図3】図2に示す太陽熱蓄熱装置の室内に放熱する状態を示す概略断面図である。
【図4】図2に示す太陽熱蓄熱装置の空気流発生装置を用いて室内に放熱する状態を示す概略断面図である。
【図5】図2に示す太陽熱蓄熱装置を建築物の南側又は北側に設置した状態を示す概略断面図である。
【図6】図2に示す太陽熱蓄熱装置に備えられた外側断熱部材及び内側断熱部材の開閉制御の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の他の実施形態である太陽熱蓄熱装置の蓄熱する状態を示す概略断面図である。
【図8】図7に示す太陽熱蓄熱装置の空気流発生装置を用いて室内に放熱する状態を示す概略断面図である。
【図9】図7に示す太陽熱蓄熱装置に備えられた積層体が反転するときの動作を示す概略斜視図である。
【図10】図7に示す太陽熱蓄熱装置に備えられた積層体が反転するときの動作を示す概略断面図である。
【図11】図7に示す太陽熱蓄熱装置における積層体の反転の制御及び開閉断熱部材の開閉制御の一例を示す概略図である。
【図12】積層体の反転装置の他の例を示す概略斜視図及び概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態である太陽熱蓄熱装置を備えた建築物を示す正面図、及びこの太陽熱蓄熱装置が設置された室内を示す概略斜視図である。図2、図3及び図4は、この建築物で用いられる太陽熱蓄熱装置の概略側断面図である。
この建築物1は、図1(a)に示すように、2階建てとなっており、上層階である2階の南側に上下連窓が設けられている。この上下連窓は、図1(b)に示すように、床面とほぼ同じ位置から約90cmの高さとなる位置までに形成された下窓2と、この下窓2の上に形成された上窓3とで構成されており、それぞれに太陽光を透過するガラスがはめ込まれている。
上記下窓2は、開閉することができない固定窓であり、2枚のガラス板2aが間隔をあけて重ね合わされた状態ではめ込まれている。この下窓2の室内側に対向して上記太陽熱蓄熱装置10が設置され、下窓2から入射した太陽光の熱を蓄積し、この熱で室内を暖めることができるようになっている。
上記上窓3は、開閉可能な窓となっており、この窓を通して眺望、採光、通風等を可能としている。
なお、下窓2に使用するガラスは、断熱効果は高いが太陽からの放射熱が大きく低減されない断熱ガラスにするのが望ましい。また、上窓3は紫外線や赤外線の透過を抑制するもの等を使用することができるが、室内の熱が屋外に放出されにくい断熱ガラスとするのが望ましい。
【0031】
上記太陽熱蓄熱装置10は、図2、図3及び図4に示すように、太陽光の入射により供給される熱を蓄積する蓄熱体11と、この蓄熱体11に蓄積された熱が室外側4に放射されることを抑制する外側断熱部材13と、室内側5に放熱されることを抑制する内側断熱部材15と、室内から取り込んだ空気を室内の下部に送り出す空気流発生装置17と、上記蓄熱体11、上記内側断熱部材15及び上記空気流発生装置17を支持する枠体19と、で主要部が構成されている。
なお、この太陽熱蓄熱装置10は、上記枠体19に蓄熱体11、内側断熱部材15及び空気流発生装置17を支持させて蓄熱ユニット20とし、上記外側断熱部材13は窓枠に支持されるものとしている。そして、上記蓄熱ユニット20は、暖房が必要な時期、冷房が必要な時期、又は暖房も冷房も不要な時期等に応じて、移動や撤去が可能となっている。
【0032】
上記蓄熱体11は、下窓2のガラスと対向するように配置された矩形のパネル状となっており、例えば潜熱蓄熱材を収容した複数の容器が平たい函体に格納されたものを用いることができる。潜熱蓄熱材としては、硫酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物等を用いることができ、本実施形態では、22℃〜32℃の範囲で融点を有する硫酸ナトリウム10水塩を用いている。したがって、この蓄熱体11は約22℃〜32℃の範囲の温度を長時間維持し、室内側5に長時間にわたって放熱することが可能となる。これにより、室温を平準化して快適な室内温度を持続させることができるものとなっている。
また、蓄熱体11のほぼ中央には温度センサ12が備えられており、蓄熱体11の温度を定期的に計測し、蓄熱量が増加している状態であるか蓄熱量が減少している状態であるかを判断することができるようになっている。例えば、蓄熱体11の温度が所定時間上昇を続けていれば蓄熱量が増加していると判断し、所定時間下降が継続していれば放熱量が多く蓄熱量が減少していると判断する。
なお、温度センサ12としては、熱電対等の温度を検知することができる既存のものを用いることができる。
【0033】
蓄熱体11は、下窓2から入射する太陽光を有効に取り込むことができるように広い範囲で下窓2のガラスと対向するように設けるのが望ましい。本実施の形態では、上記枠体19は全周にわたって下窓2の窓枠に沿って設けられており、この枠体で囲まれた範囲のほぼ全域に蓄熱体11を設けるものとしている。
【0034】
上記外側断熱部材13は、ポリエステル等の不織布からなり、水平方向の多数の折り曲げ線で交互に方向を変えて折り曲げられたものを複数枚重ね合わせ、複数の小室が縦方向及び横方向に配列された断面としたものである。したがって、上記折り曲げ線における折り曲げ角度の変化等により、蓄熱体11の室外側を覆うように上下に長く伸びた状態と、折りたたんで蓄熱体11の室外側を開放した状態とにすることが可能となっている。そして、上下に引き伸ばした状態では、多数の小室が配列されることによって対流が制限された空気層が形成され、大きな断熱効果を有するものである。
【0035】
上記外側断熱部材13の上端部は、窓枠に取り付けられた上部支持体21に支持され、下端を引き上げて折りたたんだ状態で上記上部支持体21内に収容することができるようになっている。上記外側断熱部材13の下端部は、窓枠又は床に固定された下部保持体22に着脱が可能に保持されるものとなっている。上部支持体21と下部保持体22との間の両側部にはガイド部材23が設けられ、窓枠の側部に支持されている。このガイド部材23は、外側断熱部材13が蓄熱体11の室外側を覆うように引き伸ばされたときに側縁の変位を規制するとともに、外側断熱部材13を開閉するときに、下端部を案内して円滑な移動を可能としている。したがって、図3に示すように、外側断熱部材13を上下方向に引き伸ばして蓄熱体11の室外側を遮蔽した状態と、図2に示すように、外側断熱部材13の下端部を上方に引き上げ、折りたたんで上部支持体21内に収容した状態とに切り換えて設定することができる。これにより、蓄熱体11の室外側を遮蔽した状態では、蓄熱体11に蓄積された熱が室外側4へ放出されるのを抑制し、外側断熱部材13を折りたたんで収容した状態では、蓄熱体13の室外側を開放し、太陽光の入射を許容して蓄熱体11に蓄熱することができる。
【0036】
上記内側断熱部材15は、外側断熱部材13と同様に不織布を折り曲げて形成され、複数の小室が形成されたものであり、上部が枠体19に取り付けられた上部支持体24に支持されている。また、下端部は、枠体19に支持された下部保持体25に着脱が可能に保持されるものとなっている。そして、図3に示すように、内側断熱部材15の下端部を上方に引き上げて蓄熱体の室内側を開放し、蓄熱体11から室内5へ放熱する状態と、図2に示すように、内側断熱部材15の下端部を下部保持体25に保持させて蓄熱体11から室内5への放熱を抑制した状態とに切り換えることができる。したがって、内側断熱部材15の開閉により、蓄熱体11からの室内5への放熱が調整でき、例えば蓄熱された熱を暖房として使用したいときには、図3に示すように開放し、蓄熱を暖房として使用する必要がないときには、図2に示すように遮蔽することができる。
なお、上記内側断熱部材15は、上部支持体24に収容された状態と下端部が下部保持体25に保持された状態との間で下端部を保持し、一部が開放又は一部が遮蔽された状態として放熱量を調整することもできるようになっている。
【0037】
上記空気流発生装置17は、枠体19の上部に設けられたファンとなっている。また、上記内側断熱部材15の下端部を保持する下部保持体25は、床面6上に設置された枠体の底枠19bよりも上方に支持されており、枠体の底枠19bと下部保持体25との間は、上記空気流発生装置17による空気流を吹き出す開口16となっている。この開口16には、形成された空気流を誘導するために開閉可能となったシャッタ18が設けられている。
上記ファン17は、図4中に矢印で示すように、枠体19の上方から室内の空気を取り込んで蓄熱体11の表面に沿った位置に送り込む。そして、暖められた空気を内側断熱部材15の下方の開口16から室内5へ送り出すものである。また、上記シャッタ18は板状の部材であり、上下方向のほぼ中央に設けられた水平な支持軸18aを介して枠体19に支持されている。そして、軸線回りに回転し開口16の開閉を切り換えることができるものとなっている。これにより、ファン17を駆動させて枠体19の内側に取り込んだ空気を蓄熱体11で温め、この暖められた空気を開口16から室内5の低い位置に送り出すことができる。したがって、室内にいる者の足もとを暖めるとともに、暖められた空気を室内の低い位置から全体に対流させ、天井付近は暖まるが足元は寒いという不快感を低減できるものとしている。
なお、上記のように空気流発生装置17を使用するときには、図4に示すように、内側断熱部材15を遮蔽した状態にするのがよい。
また、本実施の形態では開口16に開閉可能なシャッタ18を設けたが、ブラインド状の羽根板を平行に取り付け、この羽根板を開閉させるものであってもよい。
【0038】
上記枠体19は、上枠19a、底枠19b及び側枠19c(図2,3,4には示さず)からなり、蓄熱体11、内側断熱部材15及び空気流発生装置17を支持して蓄熱ユニット20を構成するものである。そして、下窓2に近接して床6上に設置できるようになっている。
上記上枠19aは、上窓3を支持する中間横枠3aの側面に当接し、マグネット8により中間横枠3aに固着できるものとなっている。また、室内5側には室内温度を計測する室内温度センサ14が備えられている。
上記底枠19bは、床面上に安定した状態で設置することができるものであり、直接に床面に載置されるものであってもよいし、キャスター等の移動を容易にするための部材が取り付けられたものであってもよい。
【0039】
上記側枠19cは、上枠19a及び底枠19bの両端部を連結するとともに、内側断熱部材15を案内するガイド部材26、シャッタ18等を支持するものであり、該蓄熱ユニット20を設置したときに下窓2の両側部と近接又は当接するものとなっている。
【0040】
上記枠体19に蓄熱体11、内側断熱部材15、空気流発生装置17等を支持させた蓄熱ユニット20は、撤去や他の部屋への移動を容易に行うことができるものとなっている。
図5は、建築物の南側の下窓2に蓄熱ユニット20を設置した状態と、この蓄熱ユニット20を北側の窓際に移動して設置した状態とを示す図である。
この図が示すように、南側の下窓2に設置して暖房として使用していた蓄熱ユニット20を撤去して、夏は北側の窓9に移設し、空調機による冷房効果を向上させるために活用することができる。また、春秋の暖房も冷房も必要としない時期には、この蓄熱ユニット20を撤去するとともに外側断熱部材13をカーテンとして使用すれば、下窓2からの眺望や採光を得ることができる。夏期における使用の方法については後述する。
なお、本実施の形態では、下窓2は開閉ができない固定窓としたが、開閉可能な窓としておき、蓄熱ユニット20の撤去時に通風等を行うことが可能な窓としてもよい。
【0041】
上記のような太陽熱蓄熱装置10における外側断熱部材13及び内側断熱部材15の開閉は、使用者が適宜に手動で行うこともできるが、駆動装置と制御装置(図示しない)とを備えるものとし、時刻、蓄熱体の温度、室内の温度等に基づいて駆動を制御することもできる。
このような太陽熱蓄熱装置10を暖房として使用する場合における外側断熱部材13及び内側断熱部材15の開閉制御の一例を図6に基づいて説明する。
この制御においては、外側断熱部材13及び内側断熱部材15の開閉は、予め設定された複数の時刻、例えば第1の時刻、第2の時刻、第3の時刻、第4の時刻に行うことを原則とし、上記時刻のみに基づく制御では天候等によって効率が悪くなるのを蓄熱体11の温度又は室内5の温度に基づく制御によって是正するものである。
【0042】
上記第1の時刻と第2の時刻とは、それぞれ外側断熱部材13の開放及び遮蔽を制御するために設定されたものであり、上記第3の時刻と第4の時刻とは、それぞれ内側断熱部材15の遮蔽及び開放を制御するために設定されたものである。
上記第1の時刻は、例えば太陽光が照射されることにより蓄熱体11への蓄熱が開始されると推測される時刻として設定することができ、本実施の形態では6時と設定する。この設定時刻は、日の出の時刻が変動することから、季節によって変更することもできる。
上記第2の時刻は、日射による蓄熱量よりも室外4側への放熱量が多くなると推定される時刻として設定することができ、本実施の形態では15時と設定する。
上記第3の時刻は、夜間に蓄熱体11から室内5に放熱し、室内5を暖房することができない程度まで蓄熱体11の温度が低下したと推定される時刻であり、本実施の形態では6時とする。
上記第4の時刻は、室内温度が低くなり暖房が必要になると推定される時刻として設定することができ、本実施の形態では18時と設定する。
【0043】
一方、温度による制御は、例えば外側断熱部材13が開放された状態で、蓄熱体11の温度が下降状態であることを検知したときに、外側断熱部材13を遮蔽するものである。「蓄熱体11の温度が下降状態であることを検知したとき」とは、蓄熱体11に備えられた温度センサ12により定期的に、例えば5分毎に蓄熱体11の温度を測定し、所定時間以上継続して、例えば30分間温度が下降を続けている場合に「温度が下降状態にある」と判断することができる。
また、温度センサ12により検出される蓄熱体11の温度が予め設定された第1の温度まで低下したときに、開放されている内側断熱部材15を遮蔽し、室内温度センサ14により検出される室内5の温度が予め設定された第2の温度まで低下したときに遮蔽されている内側断熱部材15を開放するように制御することができる。上記第1の温度は、例えば夜間に蓄熱体11から室内5に放熱し、蓄熱体11の温度が低下して室内を暖房することができない状態となったときの温度として設定することができ、本実施の形態では20℃と設定する。上記第2の温度は、室内にいる人が寒いと感じる室内温度として設定することができ、本実施の形態では20℃と設定する。
【0044】
上記のように設定されていると、外側断熱部材13及び内側断熱部材15の開閉は次のように行われる。
夜間に閉鎖されていた外側断熱部材13は、6時(第1の時刻)になると開放して蓄熱を開始し、15時(第2の時刻)に遮蔽する。ただし、15時以前であっても天候の変化等によって太陽光の照射が減少し、蓄熱体11の温度が下降状態となったことを検知したときには外側断熱部材13を遮蔽して室外4への放熱を抑制する。
【0045】
一方、室内を暖房するために夜間に開放されていた内側断熱部材15は、6時(第3の時刻)なると遮蔽する。ただし、外気温が低い場合等に蓄熱体11が早期に冷却され、6時以前であっても蓄熱体11の温度が20℃(第1の温度)以下になったことが検知されると内側断熱部材15を遮蔽し、室内の空気が冷却されるのを抑制する。例えば、図6に示すように、4時に蓄熱体の温度が20℃以下になったことが検出されると内側断熱部材15は遮蔽して外側断熱部材13と内側断熱部材15との双方を遮蔽する。
内側断熱部材15が遮蔽された後、太陽光の照射によって蓄熱体に蓄熱され、18時(第4の時刻)になると内側断熱部材15を開放する。ただし、18時以前において室内の温度が20℃(第2の温度)以下であることが検出されると内側断熱部材15を開放する。
【0046】
上記のように日の出後に外側断熱部材13が開放され、内側断熱部材15が遮蔽された状態では蓄熱体11が太陽光の照射を受け、蓄熱体11に太陽熱が蓄積される。このとき室内5への放熱が抑制されているので効率よく蓄熱が行われる。また、蓄熱体11から室内5への放熱は抑制されているが、太陽光は上窓から室内に照射され、室内の温度を上昇させることができる。
蓄熱体11への蓄熱を行っている状態で太陽光の照射が弱くなり、蓄熱体11の温度が下降し始めるときには外側断熱部材13は遮蔽して、蓄熱体11に蓄積された熱が室外に放出されるのを抑制することができる。そして、室内の暖房が必要となったときに内側断熱部材15を開放して蓄熱体11に蓄積された熱を室内5に放出する。
蓄熱体11に蓄熱され、外側断熱部材13が遮蔽された後も、室内温度が高く維持されて暖房が不要であるときには内側断熱部材15は遮蔽された状態を維持することにより、外側及び内側の双方の断熱部材13,15を遮蔽して蓄熱体11の蓄熱量を長く保持することが可能となる。これにより夜間の遅い時間まで有効に暖房効果を得ることができる。
【0047】
このように外側断熱部材13及び内側断熱部材15の開閉が独立して制御されることにより、蓄熱体11への蓄熱及び室内側への放熱の双方が効率よく行われる。特に、この太陽熱蓄熱装置10は、室内側への放熱を調整することができるので、室内側の放熱を制御しない装置と比較すると、長時間にわたって室内を暖房することが可能となり、快適な室温を長時間維持することができる。
【0048】
なお、上記時刻の設定や温度の設定によっては、外側断熱部材13と内側断熱部材15の双方が開放される時間帯が生じ、蓄熱と同時に室内に暖房として熱を供給する状態が生じる。このように蓄熱と室内への放熱を同時に行ってもよいが、本実施の形態では、太陽熱蓄熱装置10が設置された位置の上方が上窓3となっており、この上窓3から入射する太陽熱によって直接に室内の温度を上昇させることができる。したがって、蓄熱時にはできるだけ内側断熱部材15を遮蔽して蓄熱を効率化するのが望ましい。
【0049】
一方、このような太陽熱蓄熱装置10の蓄熱ユニット20を、図5に示すように、夏期に建築物の北側の窓9に設置して冷房を補助するために使用する場合は、夜間に蓄熱体11を室外への熱の放射及び外気への放熱によって冷却する。そして、午前中の予め定められた時刻である第5の時刻、例えば9時に内側断熱部材15を開放し、蓄熱体11が室内側5に開放されるようにする。これにより、室内の暖かい熱を蓄熱体11に吸収させて、冷房効果を得ることができる。
なお、第5の時刻は、例えば冷房が必要になると推測される時刻として設定することができる。また、蓄熱体11の室外4側つまり北側の窓9際には外側断熱部材13と同等な断熱部材を設け、外気温が高いときに蓄熱体11の室外4側を遮蔽しておくのが効果的である。
一方、午後の予め定められた時刻である第6の時刻、例えば20時に蓄熱体11を室外4側に開放するとともに、内側断熱部材15を閉鎖する。また、蓄熱体11と対向している窓9を開放して蓄熱体11の室外側に通風し、外気による蓄熱体11の冷却を行う。このような通風を行うために、北側の窓9は開閉が可能な窓とするのが望ましい。
なお、上記第6の時刻は、例えば外気温度が室温よりも低くなると推定される時刻として設定することができる。
【0050】
次に、本願に係る発明の第2の実施形態について説明する。
図7及び図8は、本発明に係る太陽熱蓄熱装置の第2の実施形態を示す概略断面図、図9はこの太陽熱蓄熱装置に備えられた積層体の取り付け状態を示す概略斜視図、図10はこの積層体の表裏を反転する状態を示す概略断面図である。
この太陽熱蓄熱装置30は、図7及び図8に示すように、太陽光の放射熱を蓄積する蓄熱体31と、この蓄熱体31の片面を覆うように積層された断熱部材33と、蓄熱体31と断熱部材33とが重ね合わされた積層体40の室内5側に設けられた開閉断熱部材35と、積層体40の表裏を反転させる反転装置36と、室内の空気を蓄熱体31に沿った領域に取り込んで室内の下部に送り出す空気流発生装置37と、を備えており、これらが枠体39に支持されている。そして、この枠体39を第1の実施の形態と同様に上下連窓の下窓2に近接して設置することができるとともに、容易に移動させることが可能となっている。
なお、この太陽熱蓄熱装置が用いられる建築物、上下連窓については第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0051】
上記枠体39は、図9に示すように、上枠39aと、底枠39bと、側枠39cとで矩形に形成されており、積層体40、反転装置36及び開閉断熱部材35を支持して床面6上に安定した状態で設置できるものとなっている。また、積層体40の室外4側及び開閉断熱部材35の室内5側は開放されており、太陽光による蓄熱体31への蓄熱及び蓄熱体31から室内への放熱を可能としている。そして、高さ及び幅が下窓2とほぼ同じとなっており、複数に分割された下窓2のそれぞれについて配列されている。
上記上枠39aは、上窓3を支持する中間横枠3aに当接し、当接する面に備えられたマグネット38により中間横枠3aに固着できるものとなっている。また、室内5側には室内温度を計測する室内温度センサ34が備えられている。
【0052】
上記蓄熱体31は、パネル状に形成されており、蓄熱材は第1の実施の形態と同様に22℃〜32℃の範囲で融点を有する硫酸ナトリウム10水塩等を用いることができる。
上記断熱部材33は、蓄熱体31に積層して一体となった積層体40とすることができるものであればよく、例えば合成樹脂の発泡材を用いることができる。
【0053】
上記反転装置36は、蓄熱体31と断熱部材33との積層体40を反転が可能に枠体39に支持する2本のアーム36であり、上端部36bは側枠39cの上部から突き出した支持軸によって水平な軸線回りの回動が可能に接合されている。そして、下端部36aは積層体40の両側縁のほぼ中央に、該積層体の水平な軸線回りの回転が可能となるように接合されている。したがって、アーム36の上端部36bの支持軸を中心に積層体40を支持したアーム36が回動するととともに、アーム36の下端36aに支持された積層体40の回転が可能となる。このような反転装置により、図10に示すように、積層体40はアーム36の回転にともなって室内側5に引き出されながら回転し、室外側4に大きな空間がなくても反転することが可能となっている。一方、積層体40の反転時には、室内側5へ積層体40が大きく張り出すので、室内5側に配置されている開閉断熱部材35は開放しておく必要がある。
【0054】
上記開閉断熱部材35は、第1の実施の形態における断熱部材13,15と同様に、ポリエステル等の不織布を折り曲げて形成されたものであり、不織布で区切られた多数の小室によって断熱性能を有するものである。そして、上端部が上部支持体41によって支持され、蓄熱体31の室内側を開放したときには、図10に示すように折りたたまれて上記上部支持体41内に収容されるものとなっている。また、蓄熱体31の室内側を遮蔽するときには、図7に示すように開閉断熱部材35の下端部が下部保持体42に保持され、側縁部は枠体39の側枠に設けられたガイド部材43に支持されるものとなっている。
このような開閉断熱部材35は、積層体40が蓄熱体31を室内側5にして支持されているときに、開閉することによって室内側5への放熱を調整することができる。
【0055】
上記空気流発生装置37は、積層体40の上方の枠体39に設けられたファン37であり、このファン37で室内の空気を取り込んで蓄熱体31と開閉断熱部材35との間に送り込む。そして、蓄熱体31に蓄積された熱で取り込んだ空気を暖め、室内5の下部に送り出すものである。
なお、この実施形態では、第1の実施形態のように室内側の断熱部材の下方に開口が形成されていないが、図8に示すように、開閉断熱部材35の下端部を下部保持体42から上昇させ、下側に通風が可能な間隙が生じる高さで停止して、室内5の低い位置から暖められた空気を送り出すこともできる。
【0056】
以上のように構成された太陽熱蓄熱装置30の積層体40の反転及び開閉断熱部材35の開閉は、使用者が適宜に手動で行うものとしてもよいが、駆動装置と制御装置と(図示しない)を備えるものとし、時刻、蓄熱体の温度、室内の温度等に基づいて駆動を制御することもできる。
この太陽熱蓄熱装置30を暖房として使用する場合における積層体40の反転及び開閉断熱部材35の開閉制御の一例を図11に基づいて説明する。
この制御は、積層体40の反転と開閉断熱部材35の開閉とを、予め設定された複数の時刻、例えば第1の時刻若しくは第2の時刻、又は蓄熱体の温度である第1の温度若しくは室内の温度である第2の温度に基づいて行うものである。
【0057】
上記第1の時刻と第2の時刻とは、積層体40の反転を制御するために設定されたものであり、上記第1の温度と第2の温度とは、開閉断熱部材35の遮蔽又は開放を制御するために設定されたものである。
上記第1の時刻及び第2の時刻は、第1の実施の形態と同様に設定することができるものであり、説明は省略する。また、第1の温度及び第2の温度も第1の実施の形態と同様に設定することができる。
【0058】
上記のような設定に基づき、積層体40の反転と開閉断熱部材35の開閉は次のように行うことができる。
夜間には、蓄熱体31を室内側へ向け、断熱部材33が室外側となるように支持されている積層体40は、6時(第1の時刻)になると表裏が反転されて、蓄熱体31を室外側に向けて太陽光からの蓄熱が開始される。そして、15時(第2の時刻)になったときと、蓄熱体31の温度が下降状態となったときとのいずれか早い時刻に、積層体40を再び反転し、蓄熱体31を室内側に向ける。つまり、有効に蓄熱が可能な時間に蓄熱体31を室外側に向けて蓄熱し、その後は断熱部材33を室外側に向けて室外4への放熱を抑制する。
【0059】
一方、開閉断熱部材35は、積層体40の蓄熱体31が室外側に向けられているときは、開放されていてもよいし、遮蔽されていてもよい。そして、蓄熱された蓄熱体31が室内側へ向くように反転されたときに室内の温度を検出し、第2の温度を超えていれば開閉断熱部材35を遮蔽し、その後室内の温度が第2の温度以下となったときに開放する。また、積層体40を反転して蓄熱体31が室内側に向けられたときに、室内の温度が第2の温度以下であれば、このときに開閉断熱部材35を開放する。このように制御して、室内の温度が低いときに有効に蓄熱体31に蓄積されている熱を利用して室内の暖房を行う。その後、蓄熱体31の温度が第1の温度(20℃)より低下したとき、つまり蓄熱体31が暖房に寄与することができない温度となったときには開閉断熱部材35を遮蔽して室内の空気が冷却されるのを抑制する。
このように積層体40の反転及び開閉断熱部材35の開閉が制御されることにより、蓄熱体31への蓄熱及び室内側への放熱の双方が効率よく行われる。
【0060】
なお、積層体40の蓄熱体31を室内側に向けて放熱するときには、上述のように開閉断熱部材35を開放し、上部支持体41内に収容した状態としてもよいが、図8に示すように、開閉断熱部材35の下端部を下部保持体42から上昇させ、下側に通風が可能な間隙が生じる高さで停止してもよい。そして、ファン37を駆動して室内の空気を蓄熱体31に沿った位置へ取り込み、一部が開放された開閉断熱部材35の下側から暖められた空気を室内に送り込むことができる。
【0061】
一方、本実施形態の太陽熱蓄熱装置30も、蓄熱体31等が移動可能となった枠体39に支持されており、夏には北側の窓際に設置して冷房効果を補助するために使用することもできる。さらに、固定された装置として使用してもよい。
【0062】
図7及び図8に示す実施の形態における積層体の反転装置は、上述した機構に限定されるものではなく、他の機構を採用することもできる。
図12は、反転装置の他の例を示す概略斜視図及び概略断面図である。
この反転装置は、図12(a)に示すように、積層体51の両側縁の上部に両側方へ水平に突き出した支持軸52を設け、この支持軸52の水平方向の移動を、枠体53の側枠53cに備えられた溝状のガイド部53dによって拘束するとともに、支持軸52の軸線回りの回転及び上下方向の移動を許容するように規制するものである。つまり、支持軸52には軸受け54が装着されて該支持軸52の軸線回りに、積層体40とともに回転することが可能となっている。そして、この軸受け54がガイド部53dに沿って上下方向に移動が可能となっている。したがって、積層体51を反転するときには、図12(b)に示すように、積層体51の上部51aをガイド部53dに沿って下降させるともに回転して、下部51bを室内側5に引き出す。そして、下部51bを上昇させて上下を逆転するとともに表裏を反転するものである。
なお、この積層体51も室内5側に張り出して回転するようになっており、下窓と積層体51が配置される間隔は小さく設定し、太陽光が蓄熱体に照射され易くすることができる。また、積層体51の室内側に配置されている開閉断熱部材(図示せず)は、積層体51が反転するときは開放される。
【0063】
本発明は、以上に説明した第1の実施形態又は第2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他の形態として実施することもできる。
例えば、上記実施形態では、蓄熱材として潜熱蓄熱材を使用したが、水など比熱が大きい他の材料を使用することもできるし、蓄熱体の太陽光が入射する面に黒色のアルマイト層等を形成して日射吸収率を増大させてもよい。
外側断熱部材13、内側断熱部材15及び開閉断熱部材35は、ポリエステル等の不織布を折り曲げて形成されたものとしたが、材料や形態はこれに限定されるものではなく、断熱効果が高くて開閉が可能となった他の断熱部材を使用することができる。また、断熱部材の開閉は、上記実施形態では上下方向に移動させて行っているが、左右に開閉するもの等他の形態であってもよい。
【0064】
上記第1の実施形態及び第2の実施形態における蓄熱体、断熱部材等は移動が可能となった枠体19,39に支持させているが、蓄熱体や断熱部材等の全てを窓と近接する位置に固定して設けるものであってもよい。また、第1の実施形態において、外側断熱部材13を下窓2の窓枠に近接した位置に固定し、蓄熱体11と内側断熱部材15は移動可能な枠体19に搭載しているが、外側断熱部材をも枠体に搭載してもよい。一方、第2の実施形態では、積層体40の室内側に開閉断熱部材35を設けているが、開閉断熱部材を用いずに積層体の反転によって蓄熱と室内への放熱を制御するものであってもよい。
【0065】
第1の実施形態における外側断熱材13及び内側断熱材15の開閉の制御、第2の実施形態における積層体40の反転や開閉断熱部材35の開閉の制御は、上記実施形態に限定されるものではなく他の制御方法を採用することができる。設定時刻、蓄熱体の設定温度、室温の設定温度等は適宜に変更することが可能であるとともに、時刻のみによる制御や検出された温度のみによる制御方法を採用してもよい。また、これ以外の条件又はこれらの条件と時刻又は温度との組み合わせによって制御することもできる。
【0066】
また、上記実施の形態では、空気流発生装置17,37を使用しているが、空気流発生装置を設置しないものであってもよい。また、上記空気流発生装置は、各蓄熱ユニット毎に設置したが、横に並べて設置された蓄熱ユニットの一部に備えるものでもよいし、1箇所に備えられたファンで取り込んだ室内の空気を複数の蓄熱ユニットに送り込み、それぞれの蓄熱ユニットに備えられた蓄熱体で暖めて室内へ送り出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1:建築物、 2:下窓、 3:上窓、 4:室外、 5:室内、 6:床、 7:壁、 8:マグネット、 9:北側の窓、
10:太陽熱蓄熱装置、 11:蓄熱体、 12:温度センサ、 13:外側断熱部材、 14:室内温度センサ、 15:内側断熱部材、 16:開口、 17:空気流発生装置(ファン)、 18:シャッタ、 19:枠体、 20:蓄熱ユニット、
21:外側断熱部材の上部支持体、 22:外側断熱部材の下部保持体、 23:外側断熱部材のガイド部材、 24:内側断熱部材の上部支持体、 25:内側断熱部材の下部保持体、 26:内側断熱部材のガイド部材、
30:太陽熱蓄熱装置、 31:蓄熱体、 32:温度センサ、 33:断熱部材、 34:室内温度センサ、 35:開閉断熱部材、 36:アーム(反転装置)、 37:空気流発生装置(ファン)、 38:マグネット、 39:枠体、 40:積層体、
41:開閉断熱部材の上部支持体、 42:開閉断熱部材の下部保持体、 43:開閉断熱部材のガイド部材、
51:積層体、 52:支持軸、 53:枠体、 54:軸受け、





【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁に設けられた開口部に配置され、入射する太陽光の熱を蓄える蓄熱体と、
該蓄熱体に蓄積された熱の放射を抑制する断熱部材と、を備え、
少なくとも、前記断熱部材が前記蓄熱体の室内側を遮蔽して太陽光によって前記蓄熱体に蓄熱するとともに室内側への放熱を抑制する状態と、前記断熱部材が前記蓄熱体の室外側を遮蔽して前記蓄熱体から室内側に放熱するとともに室外側への放熱を抑制する状態とに、切り換えが可能となっていることを特徴とする太陽熱蓄熱装置。
【請求項2】
前記断熱部材は、
前記蓄熱体よりも室外側に設けられ、該蓄熱体の室外側を覆う状態と室外側を開放する状態とに開閉が可能となった外側断熱部材と、
前記蓄熱体よりも室内側に設けられ、該蓄熱体の室内側を覆う状態と室内側を開放する状態とに開閉が可能となった内側断熱部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽熱蓄熱装置。
【請求項3】
前記蓄熱体の温度を測定する温度センサと、
室内の温度を測定する室内温度センサと、を有し、
前記外側断熱部材は、該外側断熱部材の開閉を行う時刻として予め設定された複数の時刻又は前記温度センサによる検出温度に基づいて開閉が制御され、
前記内側断熱部材は、該内側断熱部材の開閉を行う時刻として予め設定された複数の時刻、前記温度センサによって検出された温度又は前記室内温度センサによって検知された温度に基づいて開閉が制御され、
前記外側断熱部材の開閉と前記内側断熱部材の開閉とが独立して制御されるものであることを特徴とする請求項2に記載の太陽熱蓄熱装置。
【請求項4】
前記断熱部材は、前記蓄熱体の片面を覆うように該蓄熱体と一体に積層されており、
太陽光によって蓄熱するときは前記断熱部材が前記蓄熱体の室内側となり、室内へ放熱するときは前記断熱部材が前記蓄熱体の室外側となるように、該蓄熱体と該断熱部材との積層体の表裏を反転して設置可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の太陽熱蓄熱装置。
【請求項5】
前記積層体の室内側に開閉可能な開閉断熱部材を備えることを特徴とする請求項4に記載の太陽熱蓄熱装置。
【請求項6】
前記蓄熱体の温度を測定する温度センサと、
室内の温度を測定する室内温度センサと、を有し、
前記蓄熱体の反転を行う時刻として予め設定された複数の時刻又は前記温度センサによる検出温度に基づいて、前記断熱部材が前記蓄熱体の室内側となるように前記積層体を支持するか又は前記断熱部材が前記蓄熱体の室外側となるように前記積層体を支持するかの反転動作が制御され、
前記断熱部材が前記蓄熱体の室外側となるように前記積層体が支持されているときに、前記温度センサ又は前記室内温度センサによって検知された温度に基づいて、前記開閉断熱部材を開閉する動作が制御されることを特徴とする請求項5に記載の太陽熱蓄熱装置。
【請求項7】
前記蓄熱体と該蓄熱体の室内側にある断熱部材との間に、前記蓄熱体の上方から室内の空気を取り込み、該断熱部材の下側から室内へ空気を送り出す空気流発生装置を備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか、又は請求項5もしくは請求項6に記載の太陽熱蓄熱装置。
【請求項8】
前記蓄熱体及び少なくとも前記断熱部材の一部が枠体内に収容されて、枠体とともに移動可能な蓄熱ユニットとなっており、
該蓄熱ユニットは、太陽光からの熱の蓄積が可能である前記建築物の南側と、室内からの放熱若しくは冷熱の蓄積が可能である北側と、のいずれにも据え付け可能であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の太陽熱蓄熱装置。
【請求項9】
前記蓄熱ユニットは、夏期に建築物の北側に設置し、
午前中の予め定められた時刻に前記蓄熱体が室内側に開放される状態とし、
午後の予め定められた時刻に前記蓄熱体が室外側に開放される状態とするとともに、該蓄熱体の室外側表面に外気による通風を行うものであることを特徴とする請求項8に記載の太陽熱蓄熱装置。
【請求項10】
前記蓄熱体は、22°C〜32°Cの範囲に融点を有する潜熱蓄熱材を含むことを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかに記載の太陽熱蓄熱装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−23977(P2013−23977A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162079(P2011−162079)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】