説明

太陽電池モジュール用水切り構造

【課題】太陽電池モジュールを設置された屋根等の敷設面において、太陽電池モジュールの取付金具の取付面等から雨水が家屋に侵入するのを防止し、さらに、経年劣化に耐え、太陽電池モジュールを取り付ける家屋等に対する負担の小さい水切り構造を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール3を載置する載置部55を備えた設置金具5と、設置金具5が載置される載置部41と、載置部41上であって、載置部41上に設置金具5が載置された際に、設置金具5の取付孔5aが位置する箇所の外側に形成された突設部41aとを備えた水切り板4と、水切りカバー6とを有する。水切り板4は敷設面1上に載置される。設置金具5は載置部41上に載置されると共に、取付ネジによって、水切り板4を介して敷設面1に取り付けられる。水切りカバー6は設置金具5を覆う。太陽電池モジュール3は、水切りカバー6及び縦材2を介して載置部55上に載置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールを屋根等に取り付ける際の水切り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する関心や政策等から、公共施設や一般家庭など、至る場所で太陽電池の設置が進められている。
太陽電池を屋外に設置する場合、多くは施設あるいは家屋の屋根への設置が想定されるが、風雨に十分に耐え得る構造が必要となる。そのため、屋根等の敷設面への太陽電池の固定に際しては、ボルトやビスなどが使われている。
【0003】
一方、屋根等の敷設面の多くは本来、太陽電池を取り付けることを想定して作られてはいない。そのため、太陽電池の取り付けに際しては、取付面等から雨水が侵入して家屋の雨漏りを引き起こすことがないよう配慮する必要がある。
そして、防水機能の付加においては、これまでシーリングに頼ったものが多かったが、シーリング材の経年劣化や、作業者の熟練度による仕上がりのバラつきなど、改善の余地があった。
【0004】
この点、特許文献1では、屋根上機器を、第一取付桟を介して、屋根面上に取り付けるようにした屋根上機器の取付構造であって、前記第一取付桟が、屋根面上に固定される長尺の固定部材と、該固定部材に対して上から固定される長尺の水切板とから構成される構造が提案されている。
また、特許文献2では、傾斜した屋根の上に雨水が流下する金属板を配し、この金属板の上に太陽光利用機器を設置する屋根設置架台を配設した太陽光利用システムであって、前記屋根設置架台は、太陽光利用機器を固定する支持体と、この支持体を覆うカバー体とから成り、前記金属板における屋根設置架台の配設領域の上流部分に当該金属板を折り曲げて成る鍔部を形成し、この鍔部の下に前記カバー体の端部を挿入した太陽光利用システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−155804号公報
【特許文献2】特開2006−89978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、屋根面上に固定され、水切板を取り付ける固定部材が、屋根面上に取り付けられる全ての太陽電池モジュールの取付幅と同程度に長尺の部材からなる。そのために重量が大きくなり、取付家屋等に対する負荷が大きく、材料の調達コストもかかる。
また、特許文献2記載の技術では、固定金具の基底部上に、防水カバーを接着剤で接着しているだけであるため、時間の経過と共に防水カバーが剥がれるなどして、防水効果が減じてしまうという問題があった。
さらに、特許文献1、2共に、固定部材ないしは固定金具の角部分において、屋根等の敷設面に局所的な圧力が加えられ、敷設面が突き破られる虞があるし、敷設面上における雨水等の横走りを防止することについては特段の配慮がなされていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、太陽電池モジュールが設置された屋根等の敷設面において、太陽電池モジュールの取付金具の取付面等から雨水が家屋に侵入するのを防止することを目的とする。
その上で、本発明は特に、経年劣化に耐え、太陽電池モジュールを取り付ける家屋ないしは屋根等に対する負担を小さくすることの出来る水切り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、太陽電池モジュールが取り付けられた敷設面の水切り構造であって、取付ネジによって上記敷設面に取り付けるための取付孔が形成された基底部と、上記太陽電池モジュールを載置する第一の載置部と、を備えた太陽電池モジュール設置用金具と、上記太陽電池モジュール設置用金具が載置される第二の載置部と、当該第二の載置部上であって、当該第二の載置部上に太陽電池モジュール設置用金具が載置された際に、上記太陽電池モジュール設置用金具の取付孔が位置する箇所の外側に、上記敷設面に対して直角な向きに突出して形成された突設部と、を備えた水切り板と、下面側に開口面を有した水切りカバーと、を有し、上記水切り板は、上記敷設面上に載置され、上記太陽電池モジュール設置用金具は、上記水切り板の第二の載置部上に上記基底部を載置させられると共に、上記取付孔を介し、取付ネジによって、上記水切り板を介して上記敷設面に取り付けられ、上記水切りカバーは、上記太陽電池モジュール設置用金具を覆い、上記第一の載置部上に、上記水切りカバー、及び所定の太陽電池モジュール設置用部材を介して、上記太陽電池モジュールが載置されることを特徴とする。
【0009】
また、上記敷設面は所定の勾配を形成しており、上記突設部は、上記第二の載置部のうち、載置される太陽電池モジュールの基底部の外周形状に沿って、梁行方向棟側と桁行方向の両側において形成されているものとしてもよい。
【0010】
また、上記水切りカバーの梁行方向棟側の外周面は、中央部分が棟側へ突出すると共に、両端方向に向かって軒側へ傾斜するものとしてもよい。
【0011】
また、上記突設部の梁行方向棟側部分は、中央部分が棟側へ突出すると共に、両端方向に向かって軒側へ傾斜するものとしてもよい。
【0012】
上記敷設面は、複数の屋根板が梁行方向に葺き上げられた横葺き屋根であり、上記複数の屋根板は、隣り合う屋根板同士において、梁行方向棟側の屋根板の端部が、軒側の屋根板の端部に被さって上下に段差を形成しており、上記水切り板の棟側端部が、上記段差内に差し込まれているものとしてもよい。
【0013】
また、上記水切り板の棟側端部には、軒側へ折り返した折返部が形成されており、上記段差内に差し込まれた折返部が、上記梁行方向棟側の屋根板の下面に当接しているものとしてもよい。
【0014】
また、少なくとも、上記突設部の梁行方向棟側の部分と、当該部分に当接する上記水切りキャップの内周面とがシーリングされているものとしてもよい。
【0015】
また、上記水切り板の第二の載置部の下面側であって、上記第二の載置部上に太陽電池モジュール設置用金具が載置された際に、上記太陽電池モジュール設置用金具の取付孔が位置する箇所の外側に、軒側端部に向かって上面側へ溝状に窪むと共に、この窪みの軒側端部が外部に向かって開口した空隙部、を備えるものとしてもよい。
【0016】
また、上記空隙部は、上記突設部に沿って、上記水切り板の第二の載置部の下面側に形成されているものとしてもよい。
【0017】
また、上記水切りカバーは、下面側に開口面を有した中空のキャップ状体からなるものとしてもよい。
【0018】
また、上記水切りカバーは、下面側において、長さ方向に開口した中空の略棒状体からなり、複数の上記太陽電池モジュール設置用金具が、上記基底部の取付孔に取付ネジを挿通させることにより、上記敷設面上に所定の設置間隔を置いて一列に取り付けられ、上記水切りカバーが、上記開口面より、上記敷設面上に一列に設置された複数の太陽電池モジュール設置用金具を一体的に覆うものとしてもよい。
【0019】
また、上記敷設面と上記水切り板との間は、シール材によりシーリングされているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、太陽電池モジュールが設置された屋根等の敷設面において、太陽電池モジュールの取付金具の取付面等から雨水が家屋に侵入するのを防止することができる。
さらに、本発明に係る水切り構造は、経年劣化に耐え、太陽電池モジュールを取り付ける家屋ないしは屋根等に対する負担を小さくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る水切り構造において、太陽電池モジュールを敷設面に設置する状態を示す外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る水切り構造を示す側断面図である。
【図3】本実施形態に係る水切り構造を示す、(a)平面図、及び(b)正面図である。
【図4】本実施形態に係る水切り構造において用いられる水切り板を示す外観斜視図であり、(a)、(b)は夫々、異なる例を示す。
【図5】本実施形態に係る水切り構造において用いられる設置金具を示す外観斜視図である。
【図6】本実施形態に係る水切り構造を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る水切り構造を示す側断面図である。
【図8】本実施形態に係る水切り構造を示す、(a)平面図、及び(b)正面図である。
【図9】本実施形態に係る水切り構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の第一の実施形態に係る水切り構造について、図を参照して説明する。
本実施形態に係る水切り構造では、図1及び図2に示されるように、屋根等の敷設面1上に水切り板4があてがわれ、その上に設置金具5、水切りカバー6、及び縦材2を介して太陽電池モジュール3が取り付けられている。
【0023】
本例における敷設面1は、図2に示されるように、所定の勾配を有した野地板11上に、複数枚の金属板12を梁行方向(y方向)に葺き上げた横葺きの金属屋根である。
ここで、金属板12は、軒側端部においては、棟側方向に下面側へ折り返した顎部12aを形成し、棟側端部においては、軒側方向に上面側へ折り返した顎部12bを形成している。そして、上下に隣り合う屋根板において、棟側の金属板12の顎部12aと、軒側の金属板12の顎部12bとは互いに係合しており、当該係合部分においては、梁行方向(y方向)棟側の屋根板が軒側の屋根板上に被さるように段差を形成している。
なお、金属板12の裏面には適宜、発砲スチレン、発砲スチロール等の裏打材が積層されている。
【0024】
縦材2は、その上に太陽電池モジュール3を載置するための部材であって、水切りカバー6を介して設置金具5上に固定される。
この縦材2は、図6に示されるように、中空の直方体形状からなる棒状体である。
上面には長さ方向に開口した開口部21aが形成され、この開口部21aの両脇の水平面は、太陽電池モジュールを載置するための載置部21を構成する。また、載置部21の側端部から敷設面1に向かって側面部22が延び出ており、側面部22の下端部には、水平な基底部23が形成されている。そして、この載置部21、側面部22、及び基底部23に囲まれて中空部21bが形成されている。
また、基底部23には、設置金具5の設置間隔に応じて、設置金具5に取り付けられる締結ボルト5bを挿通させるための締結孔2aが設けられている。
【0025】
また、この縦材2は、水切りカバー6を介して、設置金具5上に載置され、設置金具5に取り付けられた締結ボルト5bを基底部23の締結孔2aに挿通させ、ナット等で螺合することにより、設置金具5上に固定的に設置される。
また、載置部21上に太陽電池モジュール3を載置し、予め太陽電池モジュール3のフレームに設けられている締結孔と、載置部21間の開口部21aとに所定の締結ボルトを挿通させ、中空部21b内でナット等とで螺合することにより、縦材2上に太陽電池モジュール3が固定的に設置される。
【0026】
なお、本例においては、上面に開口部21aが形成された縦材2を用いているが、これに限らず、下面に開口部が形成された縦材を用いることもできる。この場合、縦材と設置金具5に取り付けた締結ボルト5bを基底部の開口部から挿通させ、これを中空部内でナット等により螺合させて締結する。一方、上面の載置部には、太陽電池モジュール3と縦材とを締結する締結ボルトを挿通させるための締結孔を予め設けておき、太陽電池モジュール3のフレームに予め設けておいた締結孔と載置部の締結孔とに締結ボルトを挿通させ、ナット等で締結することで、縦材上に太陽電池モジュール3を設置することができる。また、設置金具5と縦材2、及び縦材2と太陽電池モジュール3を締結する締結ボルトは、別々の締結ボルトを用いずに、同じ締結ボルトでまとめて締結してもよい。
【0027】
太陽電池モジュール3は、受光により発電する光電変換素子をフレームで囲ってなるものである。素子の種類は、シリコン系、化合物系、有機系等などが用いられ、本発明の実施においては特に限定されない。
この太陽電池モジュール3のフレームには、太陽電池モジュール3を縦材2に設置するための締結孔が予め設けられており、この締結孔と、縦材2の基底部21間の開口部21aに締結ボルトを挿通させると共に、ナット等を螺合することにより、縦材2上に太陽電池モジュール3が固定される。
【0028】
水切り板4は、設置金具5の角部分において敷設面1にかかる力を緩衝すると共に、敷設面1上を横走りする雨水等が、敷設面1の設置金具5を取り付けた箇所を伝って屋内等へ入り込まないようにするための部材である。
この水切り板4は、図4(a)に示されるように、一枚の矩形状の金属板を成形加工してなり、敷設面1上に載置されると共に、設置金具5を載置する載置部41と、載置部41の一側縁部を上面側へ折り返して形成した折返部42とからなる。
【0029】
また、載置部41の上面側には、載置される設置金具5の基底部51の外周形状に沿って、敷設面1から立ち上がるようにして突き出した突設部41aが形成されている。この突設部41aは、図3(a)又は図4(a)に示されるように、載置される設置金具5の桁行方向(x方向)側に形成される一対の桁行側突設部41xと、梁行方向(y方向)のうちの棟側に形成される梁行側突設部41yとからなる。なお、図3(a)中、斜線部分は突設部41aを示しており、桁行方向(x方向)及び梁行方向(y方向)は共に、各部材が敷設面1上に取り付けられた際の向きを示している。
ここで、桁行側突設部41xは、梁行方向(y方向)に真っ直ぐに形成されている。一方、梁行側突設部41yは、中央部分が梁行方向(y方向)棟側に張り出すと共に、両端部に向かって、梁行方向(y方向)軒側へ傾斜している。これにより、敷設面上を雨水等が横走りした場合でも、雨水等の浸入が突設部41aに妨げられて、取付ボルト51bによって敷設面1に取り付けることによって敷設面1に空けられた孔(以下、敷設面1に取付ボルト51bを取り付けた箇所を「取付面」という)から雨水等が浸入するのを防止することができる。
【0030】
また、載置部41の下面側には、図4(a)に示されるように、底面から上面側へ溝状に窪んで凹設された空隙部41bが形成されている。この空隙部41bは、突設部41aに沿って、突設部41aの下面側に形成されている。また、空隙部41bは、載置部41の軒側端部まで形成され、この軒側端部は外側に向かって開口している。これにより、水切り板4の下面に、雨水等が横走りして浸入してきた場合であっても、雨水は空隙部41bを伝って軒側端部から外へ排水され、取付面から雨水等が浸入するのを防止することができる。
【0031】
また、折返部42は、図2に示されるように、隣り合う金属板12の係合部に差し込まれる。この際、折返部42は、下面側が、軒側の金属板12上に当接すると共に、上面側が、棟側の金属板12の顎部12aに当接する。このように差し込まれることで、敷設面1ないしは金属板12と水切り板4との間に棟側から雨水、例えば棟側の金属板12上から流れ落ちてくる雨水等が取付面へ浸入するのを防ぐことができる。また、折返部42が、軒側の金属板12と、棟側の金属板12の顎部12aとに当接することで、当該当接面から係合部内へ、雨水等が回り込んで浸入するのを防ぐことができる。
【0032】
なお、本例における水切り板4は、突設部41aの裏面側に空隙部41bを形成しているが、これに限らず、突設部41aと空隙部41bは少なくとも、設置金具5の取付面の外側に形成されていればよく、このような水切り板4の他の例を図4(b)に示す。
【0033】
水切り板7は、水切り板4と同様に、一枚の矩形状の金属板を成形加工してなり、敷設面1上に載置されると共に、設置金具5を載置する載置部71と、載置部71の一側縁部を折り返して形成した折返部72とからなる。
一方、水切り板7は、水切り板4とは異なり、突設部71aとは異なる位置に空隙部71bを設けられている。即ち、空隙部71bは、突設部71aの外側において、梁行方向(y方向)に真っ直ぐに形成されている。このような形状からなる水切り板7によってもやはり、敷設面上を横走りする雨水等は突設部71aによって浸入を妨げられるし、水切り板7の下面に浸入してくる雨水等は空隙部71bを伝って軒側へ排水され、取付面から雨水等が浸入するのを防止することができる。
【0034】
以上の構成を備える水切り板4は、所定の間隔を設けながら、桁行方向(x方向)及び梁行方向(y方向)において一列となるように、隣り合う屋根板の係合部分に折返部42を差し込んで取り付けられている。
なお、本例における水切り板4は、桁行方向(x方向)では、縦材2が2本で1枚の太陽電池モジュール3を支持する間隔を形成するように、敷設面1上に取り付けられている。また、梁行方向(y方向)では、隣り合う屋根板の段差部ごとに取り付けられている。しかしながら、水切り板4ないしは水切り板4を介して取り付けられる設置金具5の設置間隔は、上述の例に限られるものではなく、桁行方向(x方向)において、3本以上の縦材2によって1枚の太陽電池モジュール3を支持する設置間隔とすることもできるし、梁行方向(y方向)において、屋根板の段差部の幾つかを飛ばし、例えば2つ置きといったような設置間隔とすることもできる。
【0035】
なお、水切り板4と、これに当接する敷設面1との間はシーリングされていてもよい。この場合に使用するシーリング剤は、接着性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、シリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、アクリルウレタン系、ポリウレタン系、変性ポリサルファイド系、アクリル系、SBR系、ブチルゴム系の油性コーキング剤など、水分の遮蔽性に優れたものが好適である。
【0036】
設置金具5は、図2及び図3に示されるように、敷設面1上において、縦材2及び太陽電池モジュール3を載置するために、敷設面1に取り付けられる金具である。設置金具5の材質には、アルミや鉄やステンレスなどの金属を適用でき、特に限定されないが、耐候性の良いものが好適である。
【0037】
この設置金具5は金属を成形加工したものであり、図5に示されるように、矩形状の基底部51と、この基底部51の両端部から一定の間隔を置いた位置から、互いと近接する向きに斜めに立設させて形成した一対の斜設部52と、この斜設部52の端部を互いに向き合うように屈曲させて一体的に形成した掛架部53と、斜設部52の端部から基底部51及び掛架部53と直角な向きに延出させて形成した一対の立設部54と、両立設部54の先端に夫々、基底部51及び掛架部53と平行に形成された一対の載置部55とを備える。
【0038】
基底部51の両端部近傍には夫々、取付ネジ51bを挿通させるための取付孔51aが穿設されている。そして、設置金具5は、水切り板4の載置部41のうち、突設部41aで囲われた部分に基底部51を載置させると共に、取付孔51aに挿通させた取付ネジ51bを敷設面1にねじ込ませて、敷設面1上に取り付けられる。
【0039】
また、掛架部53の上面側には、掛架部53、立設部54、及び載置部55により囲まれた中空部5aが形成されている。さらに、この中空部5aの上方に形成されている載置部55間には、その幅が、締結ボルト5bの軸の直径より僅かに大きく、また、締結ボルト5bの頭部分の直径よりも小さい開口部55aが形成されている。
そして、図2に示されるように、中空部5a内には締結ボルト5bの頭部分が差し込まれ、開口部55aから、基底部51ないしは掛架部53と対向する向きに、締結ボルト5bの軸部分が突き出している。
設置金具5の中空部5a及び開口部55aから突き出て、水切りカバー6の締結孔6a及び縦材2の締結孔2aに挿通された締結ボルト5bは、ナット5cと螺合して、これらを一体的に固定している。
【0040】
以上の構成からなる設置金具5は、各水切り板4上に取り付けられている。取り付けにおいては、取付孔51aが梁行方向(y方向)軒側ないしは棟側に位置するように、あるいは開口部55aが桁行方向(x方向)と平行となるように取り付けられている。
【0041】
水切りカバー6は、設置金具5の敷設面1への取付面に水分が浸入するのを防止するカバーである。水切りカバー6の材質には、アルミや鉄やステンレス等の板金のプレス加工品や、ポリカーボネイトなどの樹脂成型品等を適用できるが、特に限定されない。
【0042】
この水切りカバー6は、図3又は図6に示されるように、敷設面1に向けられる面である下面が開口した中空のキャップ形状からなり、開口面は、水切り板4の突設部42の外周に沿った形状を有している。即ち、開口面のうち、設置金具5を覆った際、梁行方向(y方向)棟側に相当する部分は、中央部分が梁行方向(y方向)棟側に張り出すと共に、両端部に向かって、梁行方向(y方向)軒側へ傾斜している。
また、水切りカバー6の中央には、設置金具5から突き出した締結ボルト5bを挿通させるための締結孔6aが穿設されている。
なお、図3の(a)平面図、及び(b)正面図では、水切りカバー6に覆われた設置金具5の形状等を示すため、水切りカバー6を破線により示している。
【0043】
水切りカバー6の深さは少なくとも、設置金具5の高さ、即ち基底部51から載置部55までの長さに相当する長さを有しており、設置金具5に水切りカバー6を被せた際には、設置金具5全体が水切りカバー6で覆われる。
【0044】
ここで、少なくとも水切りカバー6の棟側部分の内面と、この部分に当接する水切り板4との間はシーリングされている。シーリングに使用するシーリング剤は、接着性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、シリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、アクリルウレタン系、ポリウレタン系、変性ポリサルファイド系、アクリル系、SBR系、ブチルゴム系の油性コーキング剤など、水分の遮蔽性に優れたものが好適である。なお、水切りカバー6とこれに当接する水切り板4との間を全体的にシーリングすることもできる。
【0045】
さらに図6を参照して、敷設面1上に順次、水切り板4、設置金具5、水切りカバー6、及び縦材2を取り付ける一連の工程について説明する。
まず、敷設面1上において、横葺きされた複数枚の屋根板の間に水切り板4の折返部42を差し込んで、水切り板4を設置する。この際、水切り板4は、梁行方向(y方向)においては一列に且つ、屋根板の段差部分毎に差し込む。また、桁行方向(x方向)においては2つの縦材2で太陽電池モジュール3を支えるように、所定の間隔をおいて取り付ける。
なお、水切り板4を敷設面1に設置する際には、図2を参照して前述したとおり、水切り板4の折返部42を、下面側が、軒側の金属板12上に当接すると共に、上面側が、棟側の金属板12の顎部12aに当接するように、金属板12の係合部へ差し込む。
また、この際、水切り板4とこれに当接する敷設面1との間をシーリングしてもよい。ここで使用するシーリング剤は、前述の通り、接着性を有するものであれば特に限定されない。
【0046】
次に、水切り板4の載置部41のうち、突設部41aで囲われた部分に設置金具5を載置する。そして、図2に示されるように、タッピンネジ等の取付ネジ51bを、載置された設置金具5の取付孔51aに挿通させると共に、水切り板4を貫いて敷設面1にねじ込ませ、設置金具5と水切り板4とを敷設面1に一体的に取り付ける。
【0047】
次に、設置金具5を覆って水切りカバー6を取り付ける。取り付けに際しては、水切りカバー6の締結孔6aに、設置金具5から突き出した締結ボルト5bを挿通させる。
この際、少なくとも水切りカバー6の棟側部分の内側とこの部分に当接する水切り板4との間をシーリングするとよい。ここで使用するシーリング剤は、前述の通り、接着性を有するものであれば特に限定されない。なお、水切りカバー6とこれに当接する水切り板4との間を全体的にシーリングすることもできる。
【0048】
次に、水切りカバー6の上から縦材2を取り付ける。取り付けに際しては、縦材2の締結孔2aに、設置金具5及び水切りカバー6の締結孔6aから突き出した締結ボルト5bを挿通させる。
【0049】
最後に、水切りカバー6の締結孔6a及び縦材2の締結孔2aに挿通された締結ボルト43bにナット5cを螺合させ、これにより、設置金具5、水切りカバー6、及び縦材2が一体的に取り付けられる。
【0050】
なお、太陽電池モジュール3は、縦材2上に載置され、フレームの所定の位置に予め設けられた締結孔と、載置部21間の開口部21aとに所定の締結ボルトを挿通させ、ナット等で螺合することにより、縦材2上に設置される。これにより、設置金具5の載置部55上に、水切りカバー6及び縦材2を介して太陽電池モジュール3が固定的に設置される。また、設置金具5と縦材2、及び縦材2と太陽電池モジュール3を締結する締結ボルトは、別々の締結ボルトを用いずに、同じ締結ボルトでまとめて締結してもよい。
【0051】
なお、取付ネジ51bや締結ボルト5bの取り付けに際しては、座面を保護するために、適宜ワッシャーを挟み込むとよい。
【0052】
以上のように各部材が取り付けられることで、太陽電池モジュール3が設置された屋根等の敷設面1において、太陽電池モジュール3の設置金具5の取付面等から雨水が屋内に侵入するのを防止することができる。また、経年劣化に耐え、太陽電池モジュール3を取り付ける家屋等に対する負担を小さくすることが出来る。
さらに、設置金具5と敷設面1との間に水切り板4が挟持されているため、設置金具5の角部分において、屋根等の敷設面に局所的にかかる力を緩衝することができ、敷設面の突き破りを防ぐことができる。また、水切り板4に突設部41aが設けられていることで、敷設面上における雨水等の横走りにより、取付面から屋内等へ雨水等が浸入することを防止することができる。また、水切り板4に空隙部41bが設けられていることで、水切り板4の下面に雨水等が横走りして浸入等した場合であっても、雨水は空隙部41bを伝って軒側へ排水され、取付面から雨水等が浸入することを防止することができる。
【実施例2】
【0053】
次に、本発明の第二の実施形態について図を参照して説明する。
本実施形態に係る水切り構造は、図7及び図9に示されるように、第一の実施形態の水切りカバー6とは異なる長尺形状の水切りカバー8を用い、敷設面1上に梁行方向へ一列に設置された複数の設置金具5を一体的に覆う。
なお、水切りカバー8以外の構成については、第一の実施形態と同様であって、図7に示されるように、屋根等の敷設面1上に水切り板4があてがわれ、その上に設置金具5、水切りカバー8、及び縦材2が取り付けられる。また、第一の実施形態の図1と同様に、縦材2上には太陽電池モジュール3が取り付けられている。
【0054】
この水切りカバー8は、図8又は図9に示されるように、一枚の金属板を折り曲げて形成された断面が略ハット状の長尺部材であり、敷設面1に対して斜めに立ち上がるように設けられた一対の傾斜部81と、この傾斜部81から、敷設面1に対して直角に立設された一対の立設部82と、この立設部82から屈曲して一体的に形成された載置部83とからなる。
また、上面に縦材2を載置する載置部83上には、設置金具5から突き出した締結ボルト5bを挿通させるための締結孔8aが、設置金具5の取付間隔に応じて穿設されている。
なお、図8の(a)平面図、及び(b)正面図では、水切りカバー8に覆われた設置金具5の形状等を示すため、水切りカバー6を破線により示している。
【0055】
また、水切りカバー8は少なくとも、設置金具5の高さ、即ち基底部51の下端から載置部55までの長さに相当する高さと、設置金具5の横幅に相当する幅を有しており、設置金具5に水切りカバー6を被せた際には、設置金具5全体が水切りカバー8で覆われる。
さらに、水切りカバー8は、敷設面1上に梁行方向(y方向)に一列に設置された複数の設置金具5を、一体的に覆うことの出来る長さを有している。
なお、本例においては、水切りカバー8の端部は、水切り板4の載置部41上に当接しているが、これに限らず、水切りカバー8の幅を本例よりも広く形成することにより、水切り板4の外側において、水切りカバー8の端部が敷設面1に当接するように構成してもよい。
【0056】
ここで、水切りカバー8の傾斜部81の内側の面と、この部分に当接する水切り板4との間はシーリングしておいてもよい。シーリングに使用するシーリング剤は、接着性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、シリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、アクリルウレタン系、ポリウレタン系、変性ポリサルファイド系、アクリル系、SBR系、ブチルゴム系の油性コーキング剤など、水分の遮蔽性に優れたものが好適である。
【0057】
さらに図9を参照して、敷設面1上に順次、水切り板4、設置金具5、水切りカバー8、及び縦材2を取り付ける一連の工程について説明する。
まず、第一の実施形態と同様に、敷設面1上において、横葺きされた複数枚の屋根板の段差部内に水切り板4の折返部42を係合して、水切り板4を設置する。この際、水切り板4は、梁行方向(y方向)においては一列に且つ、段差部分毎に差し込む。また、桁行方向(x方向)においては2つの縦材2で太陽電池モジュール3を支えるように、所定の間隔をおいて取り付ける。
【0058】
さらに、図7に示されるように、水切り板4の載置部41のうち、突設部41aで囲われた部分に設置金具5を載置する。そして、タッピンネジ等の取付ネジ51bを、載置された設置金具5の取付孔51aに挿通させると共に、水切り板4を貫いて敷設面1にねじ込ませ、設置金具5と水切り板4とを敷設面1に一体的に取り付ける。
【0059】
次に、敷設面1上において梁行方向(y方向)に一列に設置された複数の設置金具5を一体的に覆って、水切りカバー8を取り付ける。取り付けに際しては、水切りカバー6の各締結孔8aに、対応する設置金具5から突き出した締結ボルト5bを挿通させる。これにより、一つの水切りカバー8で、一列に設置された複数の設置金具5がまとめて覆われる。
この際、少なくとも水切りカバー8の傾斜部81の内側の面と、この部分に当接する水切り板4との間をシーリングしてもよい。ここで使用するシーリング剤は、前述の通り、接着性を有するものであれば特に限定されない。
【0060】
次に、水切りカバー8の上から縦材2を取り付ける。取り付けに際しては、縦材2の各締結孔2aに、設置金具5及び水切りカバー8の締結孔8aから突き出した締結ボルト5bを挿通させる。
【0061】
最後に、水切りカバー8の締結孔8a及び縦材2の締結孔2aに挿通された締結ボルト43bにナット5cを螺合させ、これにより、設置金具5、水切りカバー8、及び縦材2が一体的に取り付けられる。
【0062】
なお、太陽電池モジュール3については第一の実施形態と同様、縦材2上に載置され、フレームの所定の位置に予め設けられた締結孔と、載置部21間の開口部21aとに所定の締結ボルトを挿通させ、ナット等で螺合することにより、縦材2上に設置される。これにより、設置金具5の載置部55上に、水切りカバー8及び縦材2を介して太陽電池モジュール3が固定的に設置される。また、設置金具5と縦材2、及び縦材2と太陽電池モジュール3を締結する締結ボルトを、別々の締結ボルトを用いずに、同じ締結ボルトでまとめて締結してもよいこと、また、取付ネジ51bや締結ボルト5bの取り付けに際して、座面を保護するために、適宜ワッシャーを挟み込んでもよいことについては、第一の実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態によれば、複数の設置金具5に対して一つの水切りカバー8を取り付けるだけでよいため、施工の工数が少なくて済む。
【符号の説明】
【0064】
1 敷設面
11 野地板
12 金属板
12a 顎部
12b 顎部
2 縦材
2a 締結孔
21 載置部
21a 開口部
21b 中空部
22 側面部
23 基底部
3 太陽電池モジュール
4 水切り板
41 載置部
41a 突設部
41b 空隙部
41x 桁行側突設部
41y 梁行側突設部
42 折返部
5 設置金具
5a 中空部
5b 締結ボルト
5c ナット
51 基底部
51a 取付孔
51b 取付ネジ
52 斜設部
53 掛架部
54 立設部
55 載置部
55a 開口部
6 水切りカバー
6a 締結孔
7 水切り板
71 載置部
71a 突設部
71b 空隙部
72 折返部
8 水切りカバー
8a 締結孔
81 傾斜部
82 立設部
83 載置部
x 桁行方向
y 梁行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールが取り付けられた敷設面の水切り構造であって、
取付ネジによって上記敷設面に取り付けるための取付孔が形成された基底部と、上記太陽電池モジュールを載置する第一の載置部と、を備えた太陽電池モジュール設置用金具と、
上記太陽電池モジュール設置用金具が載置される第二の載置部と、当該第二の載置部上であって、当該第二の載置部上に太陽電池モジュール設置用金具が載置された際に、上記太陽電池モジュール設置用金具の取付孔が位置する箇所の外側に、上記敷設面に対して直角な向きに突出して形成された突設部と、を備えた水切り板と、
下面側に開口面を有した水切りカバーと、を有し、
上記水切り板は、上記敷設面上に載置され、
上記太陽電池モジュール設置用金具は、上記水切り板の第二の載置部上に上記基底部を載置させられると共に、上記取付孔を介し、取付ネジによって、上記水切り板を介して上記敷設面に取り付けられ、
上記水切りカバーは、上記太陽電池モジュール設置用金具を覆い、
上記第一の載置部上に、上記水切りカバー、及び所定の太陽電池モジュール設置用部材を介して、上記太陽電池モジュールが載置される、
ことを特徴とする水切り構造。
【請求項2】
上記敷設面は所定の勾配を形成しており、
上記突設部は、上記第二の載置部のうち、載置される太陽電池モジュールの基底部の外周形状に沿って、梁行方向棟側と桁行方向の両側において形成されている、
請求項1記載の水切り構造。
【請求項3】
上記水切りカバーの梁行方向棟側の外周面は、中央部分が棟側へ突出すると共に、両端方向に向かって軒側へ傾斜する、
請求項1又は2記載の水切り構造。
【請求項4】
上記突設部の梁行方向棟側部分は、中央部分が棟側へ突出すると共に、両端方向に向かって軒側へ傾斜する、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の水切り構造
【請求項5】
上記敷設面は、複数の屋根板が梁行方向に葺き上げられた横葺き屋根であり、
上記複数の屋根板は、隣り合う屋根板同士において、梁行方向棟側の屋根板の端部が、軒側の屋根板の端部に被さって上下に段差を形成しており、
上記水切り板の棟側端部が、上記段差内に差し込まれている、
請求項1乃至4いずれかの項に記載の水切り構造。
【請求項6】
上記水切り板の棟側端部には、軒側へ折り返した折返部が形成されており、
上記段差内に差し込まれた折返部が、上記梁行方向棟側の屋根板の下面に当接している、
請求項5記載の水切り構造。
【請求項7】
少なくとも、上記突設部の梁行方向棟側の部分と、当該部分に当接する上記水切りキャップの内周面とがシーリングされている、
請求項1乃至6いずれかの項に記載の水切り構造。
【請求項8】
上記水切り板の第二の載置部の下面側であって、上記第二の載置部上に太陽電池モジュール設置用金具が載置された際に、上記太陽電池モジュール設置用金具の取付孔が位置する箇所の外側に、軒側端部に向かって上面側へ溝状に窪むと共に、この窪みの軒側端部が外部に向かって開口した空隙部、を備える、
請求項1乃至7いずれかの項に記載の水切り構造。
【請求項9】
上記空隙部は、上記突設部に沿って、上記水切り板の第二の載置部の下面側に形成されている、
請求項8記載の水切り構造。
【請求項10】
上記水切りカバーは、下面側に開口面を有した中空のキャップ状体からなる、
請求項1乃至9いずれかの項に記載の水切り構造。
【請求項11】
上記水切りカバーは、下面側において、長さ方向に開口した中空の略棒状体からなり、
複数の上記太陽電池モジュール設置用金具が、上記基底部の取付孔に取付ネジを挿通させることにより、上記敷設面上に所定の設置間隔を置いて一列に取り付けられ、
上記水切りカバーが、上記開口面より、上記敷設面上に一列に設置された複数の太陽電池モジュール設置用金具を一体的に覆う、
請求項1乃至9いずれかの項に記載の水切り構造。
【請求項12】
上記敷設面と上記水切り板との間は、シール材によりシーリングされている、
請求項1乃至11いずれかの項に記載の水切り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−117204(P2011−117204A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276018(P2009−276018)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】