説明

太陽電池モジュール裏面用放熱シート及びこれを用いた太陽電池モジュール

【課題】既に使用されている太陽電池モジュールの放熱性を高めることができ、また、張り替えることによって太陽電池モジュールの放熱機能等を常に維持することができる太陽電池裏面用放熱シート及びこれを用いた太陽電池モジュールの提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明は、放熱フィルムと、この放熱フィルムの一方の面側に積層される粘着剤層とを備える太陽電池モジュール裏面用放熱シートである。上記放熱フィルムが、他方の面全面に微細な凹凸形状を有していることが好ましい。上記放熱フィルムが、一方の面側に上記粘着剤層が積層される基材層と、この基材層の他方の面側に積層される放熱層とを備えるとよい。上記放熱層は、微小粒子とこの微小粒子のバインダーとを備えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの裏面に貼設し、太陽電池モジュールの放熱性を高めることができる太陽電池モジュール裏面用放熱シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の環境問題に対する意識の高まりから、クリーンエネルギー源としての太陽光発電が注目され、種々の形態からなる太陽電池が開発されている。この太陽電池は、一般的には直列又は並列に配線された複数枚の太陽電池セルをパッケージングし、ユニット化した複数の太陽電池モジュールから構成されている。
【0003】
上記太陽電池モジュールは、屋外で長期間使用し得る十分な耐久性、耐候性等が要求される。図5に示すように、一般的な太陽電池モジュール41の具体的な構造としては、ガラス等からなる透光性基板42と、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂からなる充填剤層43と、光起電力素子としての複数枚の太陽電池セル44と、上記充填剤層43と同様の充填剤層45と、太陽電池モジュール用バックシート46とが表面側からこの順に積層され、真空加熱ラミネーション法等により一体成形されている。更には、各太陽電池セル44は、直列又は並列に配線されており、配線の端子47は裏面(バックシート46)側に設けられるジャンクションボックス48を通じて外部端子と接続される。
【0004】
このような構成の太陽電池モジュール41を屋外に設置した場合、その発電時には、外気温が20℃でも、太陽電池モジュール41の温度は太陽電池セル44の動作に伴って生じる熱などによって50℃を超える温度上昇が生じる。このように太陽電池モジュール41の温度が上昇した場合、太陽電池セル44の温度特性に起因して発電効率が低下するという不都合が生じる。
【0005】
さらに、発電中の太陽電池モジュール41において、複数の太陽電池セル44のうち、一つの太陽電池セル44が何らかの構造に起因して、そこに影が生じた場合、この太陽電池セル44の発電が不十分となり、このことでこの太陽電池セル44自体が抵抗となり、この太陽電池セル44の両電極にその抵抗値と流れる電流との積である電位差が生じる。つまり、太陽電池セル44に逆方向のバイアス電圧が印加されることで、このセルが発熱し、いわゆるホットスポットと呼ばれる状態が生じる。このようなホットスポット現象が発生することで、太陽電池セル44の温度が上昇し続けると、この太陽電池セル44が破壊し、この太陽電池モジュール41から所定の電力出力を得ることが出来なくなるという不都合がある。
【0006】
このような不都合を解消するために、太陽電池モジュールの温度上昇や、ホットスポットが発生したときに、太陽電池モジュールを冷却する技術が提案されており、例えば、突起膜状の放熱部を有する放熱フィルムが裏面側に配設されている太陽電池モジュールが提案されている(例えば、特開2000−183375号公報等参照)。しかし、上記の太陽電池モジュールは、放熱フィルム表面が一度傷ついた場合にはその修復が困難であり、その部分から水蒸気が進入する等により、充填剤層の加水分解を促進させ、太陽電池セルの寿命を低下させるおそれがある。また、既存の太陽電池モジュールには対応できないため、既に屋外で使用されている太陽電池モジュールの放熱効果を高めること等による長寿命化には寄与することができない。また、既存の放熱シートよりも、更に放熱効果が高い放熱シートへのニーズは高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−183375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、既に使用されている太陽電池モジュールの放熱性を高めることができ、また、張り替えることによって太陽電池モジュールの放熱機能等を常に維持することができる太陽電池モジュール裏面用放熱シート及びこれを用いた太陽電池モジュールの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、放熱フィルムと、この放熱フィルムの一方の面側に積層される粘着剤層とを備える太陽電池モジュール裏面用放熱シートである。当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、一方の面側に積層される粘着剤層を備えているため、従来の太陽電池モジュールの裏面にこの粘着剤層により貼設されることができる。従って、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、従来の太陽電池モジュールの放熱性を高め、ひいてはこの太陽電池モジュールの発電効率の上昇、長寿命化を行うことができる。また、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートは、一方の面側に積層される粘着剤層を備えているため、この放熱シートの放熱フィルムが傷ついたり、経年劣化によって放熱性が低下した場合も、新しい放熱シートに容易に張り替えることができ、常に太陽電池モジュールの高い放熱性を維持することができる。更には、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、長期使用等によってクラック等の物理的欠陥が生じている太陽電池モジュール裏面に貼り付けた際に、粘着剤層によってこの欠陥を埋めることができるため、裏面の水蒸気バリア性を高めることができ、また、密閉させることにより熱伝導性を高めることができるために、放熱性を促進させることができる。
【0010】
上記放熱フィルムが、他方の面全面に微細な凹凸形状を有するとよい。当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、他方の面全面に微細な凹凸形状を有することで、他方の面の表面積が格段に増加し、放熱機能を高めることができる。
【0011】
上記放熱フィルムが、一方の面側に上記粘着剤層が積層される基材層と、この基材層の他方の面側に積層される放熱層とを備えるとよい。このように放熱フィルムが2層に分かれていることにより、基材層又は放熱層に例えば水蒸気バリア性の高い材質を用いること等が可能となり、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートがより高い機能性を持つことができる。また、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートは、放熱層が別途設けられることで、成型が容易になるとともに、所望する放熱性に応じた放熱層の成型を行うことが容易になる。
【0012】
上記放熱層は、微小粒子と、この微小粒子のバインダーとを備えているとよい。当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、この微小粒子によって表面(放熱フィルムの他方の面)全面に、容易かつ所望する形状に微小な凹凸形状を形成することができるために、確実に放熱性を高めることができる。
【0013】
上記微小粒子が、金属及び/又は無機酸化物ビーズであるとよい。当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、微小粒子がビーズであることで、確実に表面(放熱フィルムの他方の面)全面に微小な凹凸形状を設けることができる。また、金属及び無機酸化物が高い熱伝導性を備えているため、局所的に発生した熱をシート全面に拡散させることによって、更に放熱性を高めることができる。
【0014】
上記放熱層が、蒸着された無機酸化物を有することも好ましい。当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、無機酸化物の高い熱伝導性によって、局所的に発生した熱をシート全面に拡散させることによって、放熱性を高めることができるとともに、無機酸化物を有する放熱層が高い水蒸気バリア機能を備えるため、耐加水分解性を向上させることができる。また、絶縁性を有する無機酸化物を有することで、太陽電池モジュールの絶縁性を高めることができ、太陽電池セルや配線等の導電性部分を保護することができる。
【0015】
上記放熱層は、金属箔であることも好ましい。当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、金属箔の極めて高い熱伝導性によって、局所的に発生した熱をシート全面に拡散させることによって、放熱性を高めることができるとともに、金属箔である放熱層が高い水蒸気バリア機能を有するため、耐加水分解性を向上させることができる。
【0016】
上記粘着剤層の一方の面(放熱フィルムが積層される側の面と反対側の面)が、離型シートで被覆されているとよい。当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートは、離型シートで一方の面が被覆されていることにより、貼り付け作業直前まで、粘着剤層を他のものと接触することを防止することができるため、作業性が高いと共に、貼り付け時の当該放熱シートの粘着機能を高めることができる。
【0017】
従って、透明性基板と、充填剤層と、光起電力素子としての太陽電池セルと、充填剤層と、バックシートと、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートとが表面側からこの順に積層されている太陽電池モジュールであって、上記バックシートの裏面に上記太陽電池モジュール裏面用放熱シートが、その粘着剤層により貼設されていることを特徴とする太陽電池モジュールによれば、太陽電池モジュールの放熱性を高めることができ、発電効率の向上及び長寿命化が実現できる。
【0018】
ここで太陽電池モジュールの「表面側」とは、太陽電池モジュールの受光面側を意味する。「裏面側」とは、表面側つまり上記受光面側と反対側の面を意味する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、太陽電池モジュール裏面に粘着剤層により貼設されることで、太陽電池モジュールの放熱性を高めることができ、その結果、太陽電池モジュールの発電効率を高め、かつ太陽電池モジュールの長寿命化を実現できる。更に、本発明の太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、既に使用されている太陽電池モジュールの裏面にも貼り合わせることができるために、既に使用されている太陽電池モジュールの発電効率を高め、かつ寿命を延ばすことができる。また、この使用されている太陽電池モジュールの裏面にクラック等欠陥が生じている場合においても、粘着剤層によって欠陥を埋めることで、バックシートの機能低下を防止させることができる。また、本発明の太陽電池モジュールによれば、放熱性が高まることによって、発電効率が高まり、かつ長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール裏面用放熱シートを示す模式的断面図
【図2】図1の太陽電池モジュール裏面用放熱シートとは異なる形態に係る太陽電池モジュール裏面用放熱シートを示す模式的断面図
【図3】図1及び図2の太陽電池モジュール裏面用放熱シートとは異なる形態に係る太陽電池モジュール裏面用放熱シートを示す模式的断面図
【図4】図1の太陽電池モジュール裏面用放熱シートを用いた太陽電池モジュールを示す模式的断面図
【図5】従来の一般的な太陽電池モジュールを示す模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の太陽電池モジュール裏面用放熱シート及びこれを用いた太陽電池モジュールについて詳説する。
【0022】
図1の太陽電池モジュール裏面用放熱シート1は、放熱フィルム2と、この放熱フィルム2の一方の面側に積層される粘着剤層3とを備えている。
【0023】
放熱フィルム2は、一方の面側に上記粘着剤層3が積層される基材層4と、この基材層4の他方の面側に積層される放熱層5とを備えている。
【0024】
基材層4は、合成樹脂を主成分として形成されている。この基材層4の主成分の合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。上記の樹脂の中でも、高い耐熱性、物理的強度、耐候性、耐久性、水蒸気等に対するガスバリア性等を有するポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂が好ましい。
【0025】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体(例えばエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等)、アイオノマー樹脂などが挙げられる。これらの中でも、耐加水分解性、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンや、耐熱性、強度、耐候性、耐久性、ガスバリア性等の機能性に優れる環状ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0026】
上記環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばa)シクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)、シクロヘキサジエン(及びその誘導体)、ノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンを重合させてなるポリマー、b)当該環状ジエンとエチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系モノマーの1種又は2種以上とを共重合させてなるコポリマー等が挙げられる。これらの環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるシクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)又はノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンのポリマーが特に好ましい。
【0027】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂の中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0028】
上記フッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましい。
【0029】
なお、基材層4の形成材料としては、上記合成樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。また、基材層4の形成材料中には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を混合することができる。この添加剤としては、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等が挙げられる。上記基材層4の成形方法としては、特に限定されず、例えば押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の公知の方法が採用される。上記基材層4は、単層構造でもよく、2層以上の多層構造でもよい。
【0030】
基材層4の厚さの下限としては12μmが好ましく、25μmが特に好ましい。一方、基材層4の厚さの上限としては1mmが好ましく、500μmが特に好ましい。
【0031】
基材層4の厚さが上記下限未満であると、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1の取扱いが困難になる、水蒸気のバリア性が不十分になるという不都合が発生する。特に当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1は、既存の太陽電池モジュールのサイズ及び太陽電池モジュールのジャンクションボックスの位置及びサイズに合わせて切り、太陽電池モジュールの裏面に貼り合わせるものであるため、厚さが上記下限未満であると切り貼りの際の作業性が低下すると共に、各太陽電池モジュールサイズに対応した貼り合わせが困難となる、又は、ずれて貼り合わせられることによってバックシートとの密着性が低下し、その結果、熱伝導率が低下し、放熱機能を十分に発揮させることができなくなるおそれがある。
【0032】
逆に、基材層4の厚さが上記上限を超えると、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することとなる。また、基材層4の厚さが上記上限を超えると、基材層4の厚さにより熱伝導率が低下するとともに、基材層4ひいては放熱シート1の熱容量が増加することで、放熱効率が低下することとなる。更には、基材層4の厚さが上記上限を超えると、太陽電池モジュール裏面用放熱シート1の重量が増加することで、同様に、裏面への貼りあわせの際の作業性が低下するとともに、各太陽電池モジュールサイズに対応した貼り合わせが困難となる、又は、ずれて貼り合わせられることによってバックシートとの密着性が低下し、その結果、熱伝導率が低下し、放熱機能を十分に発揮させることができなくなるおそれがある。
【0033】
基材層4中に顔料を分散含有するとよい。このように基材層4中に顔料を分散含有することで、基材層4、ひいては当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1の耐熱性、耐候性、耐久性、熱的寸法安定性、強度等の諸特性を向上することができる。また、基材層4中に白色顔料を分散含有することで、太陽電池セルを透過した光線を反射させる機能が付加され、より発電効率を高めることができる。更に、基材層4中に黒色顔料等を分散含有し、基材層4を種々の色に着色することで、太陽電池モジュールの意匠性を向上することができる。
【0034】
この白色顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸鉛、硫酸バリウムなどを使用することができる。中でも、基材層4を形成する樹脂材料中への分散性に優れ、基材層4の耐久性、耐熱性、強度等の向上効果が比較的大きい炭酸カルシウムが好ましい。この炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト、バテライトなどの結晶タイプがあり、どの結晶タイプでも使用できる。この炭酸カルシウムは、ステアリン酸、ドデジシルベンゼンスルホン酸ソーダ、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等で表面処理されていてもよく、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン等の不純物が10%以下程度含まれていてもよい。その他の顔料としては、カーボンブラック等の黒色顔料、ウルトラマリン,紺青等の青色顔料、べんがら(酸化鉄赤),カドミウムレッド,モリブデンオレンジ等の赤色顔料、メタリック光沢を与える金属粉顔料などが挙げられ、太陽電池モジュールの意匠性の向上に寄与する。
【0035】
上記顔料の平均粒子径は、100nm以上30μm以下が好ましく、300nm以上3μm以下が特に好ましい。なお、本発明における平均粒子径は、倍率1000倍の電子顕微鏡において観測される粒子から無作為に抽出した30個の粒子の粒子径を平均したものをいう。また、粒子径は、フェレー径(一定方向の平行線で投影像を挟んだときの間隔)で定義する。
【0036】
顔料の平均粒子径が上記範囲より小さいと、凝集等により基材層4中への均一な分散が困難になるおそれがある。一方、顔料の平均粒子径が上記範囲を超えると、上述の基材層4に対する耐熱性等の諸特性向上効果が低下するおそれがある。
【0037】
上記顔料の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%が特に好ましい。また、上記顔料の含有量の上限としては60質量%が好ましく、30質量%が特に好ましい。顔料の含有量が上記下限より小さいと、基材層4の耐久性、耐熱性、強度等の向上効果が小さくなる。一方、顔料の含有量が上記上限を超えると、基材層4中での顔料の分散性が低下し、基材層4の強度の低下を招来するおそれがある。
【0038】
放熱層5は、微小粒子6と、この微小粒子6のバインダー7とを備えている。このように放熱層5中に微小粒子6を含有することによって、放熱層5の表面(放熱フィルム2の他方の面)全面に微細な凹凸形状8を均一かつ容易に成形することができる。このように放熱層5の表面(放熱フィルム2の他方の面)全面に微細な凹凸形状8を設けることにより、表面積が拡大し、表面(放熱フィルム2の他方の面)からの放熱機能が飛躍的に上昇することとなる。なお、放熱層5の平均厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上1mm以下程度とされている。
【0039】
微小粒子6は、無機粒子と有機粒子に大別される。無機粒子としては、具体的には、アルミニウムや鉄、合金等の金属粒子、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム等の無機酸化物、その他水酸化アルミニウム、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコン珪酸塩等、又はこれらの混合物を用いることができる。有機粒子の具体的な材料としては、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等を用いることができる。これらの中でも、熱伝導率が高い金属粒子又は無機酸化物粒子が好ましく、金属又は金属酸化物が特に好ましく、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムがさらに特に好ましい。微小粒子6が、金属粒子又は無機酸化物粒子である場合は、基材層4側から伝導される太陽電池セルからの発熱を表面(放熱フィルム2の他方の面)側に瞬時に伝導させることができるために放熱性が高まるとともに、局部的に生じた熱もシート全面に拡散させることができるために、この点からも放熱性を高めることができる。
【0040】
微小粒子6としては、熱伝導率が比較的高くかつ高い電気抵抗値を有する粒子も好ましい。微小粒子6がこのような粒子である場合は、当該シートの放熱性を高めることができる一方で、導電性は低く抑えることができるため、耐電圧性を向上させることができる。このような粒子としては、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の無機窒化物等を挙げることができる。
【0041】
微小粒子6の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられる。この中でも、表面(放熱フィルム2の他方の面)に微小な凹凸を容易、かつ所望するサイズに確実に形成することができる球状、すなわちビーズであることが好ましい。
【0042】
微小粒子6の配合量(バインダー7の形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては、10部、特に20部、更に50部が好ましく、この配合量の上限としては500部、特に300部、更に200部が好ましい。微小粒子6の配合量が上記下限未満であると、表面(放熱フィルム2の他方の面)への微細な凹凸形状8の形成が不十分となり、表面積が充分に拡大しないため、放熱効果が顕著には現れない、又、微小粒子間の間隔が広い(隣接しない)ため、微小粒子6間の熱伝導が遅くなるために、熱核酸速度が低下し、その結果、放熱性が低下する。一方、配合量が上記上限を超えると、熱伝導性及び放熱性は高まるものの、微小粒子6を固定する効果が低下することとなる。
【0043】
微小粒子6の平均粒子径の下限としては100nm、特に3μm、さらに10μmが好ましく、微小粒子6の平均粒子径の上限としては1mm、特に400μm、さらに100μmが好ましい。微小粒子6の平均粒子径が上記下限未満であると、表面(放熱フィルム2の他方の面)に充分な凹凸形状8を形成することが困難になり、表面積が拡大せず、放熱機能が充分に発揮されない。逆に微小粒子6の平均粒子径が上記上限を超えると、放熱層5の厚さが増大し、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反する。
【0044】
バインダー7は、主原料として基材ポリマーを含有している。上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂などが挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易に放熱層5を形成することができるポリオールが好ましい。
【0045】
上記ポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオール、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
【0046】
この水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えばエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
【0047】
また、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、1−メチルスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上記(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合してポリオールを製造することもできる。
【0048】
かかる水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0049】
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
【0050】
かかる水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0051】
当該ポリマー組成物の基材ポリマーとして用いられるポリオールとしては、上記ポリエステルポリオール、及び上記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られかつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー7は耐候性が高く、微小粒子6の固着性の低下を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
【0052】
なお、上記ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0053】
粘着剤層3は、粘着剤を放熱フィルム2の一方の面に塗工することにより形成されている。粘着剤層3の厚さの下限としては、12μmが好ましく、25μmが特に好ましく、100μmがさらに好ましい。また、粘着剤層3の厚さの上限としては、1mmが好ましく、500μmが特に好ましく、200μmがさらに好ましい。
【0054】
粘着剤層3が上記厚さを備える当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1によれば、キズ付きやクラックが生じた太陽電池モジュール裏面のバックシート表面に、当該放熱シート1を積層させた場合においても、キズ及びクラック部分を粘着剤で埋めることによって、バックシートと放熱シート1とを完全に密着させることができ、熱伝導性を高めることができる。また、当該放熱シートによれば水蒸気等の進入を防ぐとともに、キズ及びクラック等欠陥の拡大を抑えることができる。また、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1によれば、粘着剤層の厚さが上記範囲であるため、通常発生する物理的なキズ及びクラックの最深部にまで粘着剤層を埋め込むことができ、キズ及びクラック等欠陥拡大の抑制及び水蒸気等の外部からの侵入を確実に防止することができる。
【0055】
粘着剤層3の厚さが上記下限未満であると、通常発生するキズやクラック等の欠陥の深さを粘着剤が埋めることができなくなり、隙間が生じ、欠陥の拡大が進行しやすくなり、また、この隙間から水蒸気等が進入することで水蒸気等のバリア性が低下するとともに、この隙間の存在により熱伝導性が低下し、ひいては放熱効率が低下する。逆に、粘着剤層3の厚さが上記上限を超えると、例えば、粘着剤層3の厚さのため当該放熱シート1を所望する形状に切る際に支障を来すなど、作業性が低下するおそれがあることに加えて、熱伝導性が低下するため、放熱効率が低下する。
【0056】
この粘着剤層3に用いられる粘着剤としては、特に限定されないが、例えばアクリル系粘着剤、アクリル−ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ブチルゴム系等の合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエチレン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が挙げられ、これらのうち粘着力、保持力、タック力のバランス、耐久性・耐候性がよく、安価に入手可能であるとの理由からアクリル系粘着剤、または耐候性、耐候性及び凹凸に対する追従性が良好であるブチルゴム系粘着剤であることが特に好ましい。
【0057】
アクリル系粘着剤を構成するモノマーとしては特に限定されないが、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル(アルキル基としては例えば炭素数1〜20のもの);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(ヒドロキシアルキル基としては例えば炭素数1〜20のもの);アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;酢酸ビニル;これらの組み合わせ等が挙げられる。中でもn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートをモノマーとして用いることで、室温での粘着力、保持力、タック力などの粘着特性が良好であり、かつ印刷装置内部での粘着剤層のはみ出しが抑制された放熱シートを得ることができるため、とくに好ましい。これらのモノマーを、重合開始剤の存在下、通常の方法で溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等により重合することによって上記アクリル系粘着剤を製造する。とくに乳化重合にて得られたエマルジョン型のアクリル系粘着剤であることが、主たる重合溶剤として水を用いるため、放熱シート製造時の安全性や地球環境への負荷低減が図れることから好ましい。
【0058】
上記ブチルゴム系粘着剤は、通常ブチルゴム、軟化剤及び粘着付与樹脂を備えている。
【0059】
上記ブチルゴムは、イソブチレンを主成分とし、架橋のためにイソプレンを1〜2重量%を共重合して得られる。ブチルゴムは、気体の透過性が極めて低いという特徴を有している。上記ブチルゴムは、粘着力と凝集力のバランスを向上させるために架橋されることが好ましく、ポリアルキルフェノール樹脂類による加硫、電子線架橋、光開始剤と光重合性多官能性モノマー(例えばトリメチロールプロパントリアクリレートなど)の添加による紫外線架橋などが挙げられるが、他のゴム系粘着剤に必要な加硫触媒が不要であり、かつ耐熱性、非汚染性が良好であるという理由からポリアルキルフェノール樹脂類による加硫が好ましい。
【0060】
上記軟化剤は、ブチルゴムのガラス転移温度を下げて低温時における初期接着性を向上させ、凝集力と粘着力のバランスを高く保持する目的で添加されるものであり、例えば、プロセスオイル、エキステンダオイルなどの石油系;液状ポリイソブチレン、液状ポリブテン、液状ポリイソプレンなどの液状ゴム;ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの二塩基酸エステル系可塑剤などが挙げられる。
【0061】
上記粘着付与樹脂は、初期接着性を向上させる目的で添加されるものであり、例えば、ロジン、変性ロジン、ロジンエステルなどのロジン系樹脂;テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノールなどのテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、C5/C9系共重合石油樹脂、脂環族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系石油樹脂などの石油樹脂;アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などのフェノール系樹脂;キシレン樹脂などの通常の粘着付与樹脂が全て挙げられるが、耐候性が良好であるという点で石油樹脂が好ましい。
【0062】
上記ブチルゴム系粘着剤にはその粘着物性等を阻害しない範囲において、例えば、充填剤、老化防止剤などが適宜添加されてもよい。
【0063】
上記充填剤としては、例えば炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;ドロマイトなどのカルシウム;マグネシウム炭酸塩;カオリン、焼成クレー、パイロフィライト、ペントナイト、セリサイト、ゼオライト、ネフェリン・シナイト、タルク、アタパルジャイト、ワラストナイトなどの珪酸塩;珪藻土、珪石粉などの珪酸;水酸化アルミニウム;パライト、沈降硫酸バリウムなどの硫酸バリウム;石膏などの硫酸カルシウム;亜硫酸カルシウム;カーボンブラック;酸化亜鉛;二酸化チタンなどが挙げられる。
【0064】
上記老化防止剤としては、例えば、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、リン系老化防止剤、イオウエステル系老化防止剤などが挙げられる。
【0065】
粘着剤層3を構成する粘着剤としては、紫外線硬化型粘着剤であることが好ましい。粘着剤として紫外線硬化型粘着剤が用いられていることで、この放熱シート1を太陽電池モジュールに貼った後に、太陽光に晒されることで徐々に紫外線硬化していくことで、この放熱シートの強度を高めることができる。
【0066】
紫外線硬化型粘着剤としては、上述した粘着性ポリマー成分に加えて、紫外線硬化成分を含有したものがもちいられるが、粘着性ポリマーの側鎖に不飽和二重結合が付加された形態の紫外線硬化型ポリマーを含有するものを用いることもできる。
【0067】
紫外線硬化成分としては、紫外線照射により、紫外線硬化成分による反応[例えば、紫外線硬化成分同士の反応や、紫外線硬化成分と粘着剤層中の他の成分(例えば、アクリル系ポリマーなど)との反応など]が生じるものを用いることができる。具体的には、紫外線硬化成分としては、分子内に不飽和二重結合を含有する基(不飽和二重結合含有基)を少なくとも1つ有している化合物(モノマー、オリゴマーまたはポリマーなど)を用いることができ、特に、不揮発性化合物が好適である。紫外線硬化成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0068】
紫外線硬化成分における不飽和二重結合含有基としては、特に、炭素−炭素二重結合を含有する基(炭素−炭素二重結合含有基)が好ましく、該炭素−炭素二重結合含有基としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合含有基などが挙げられる。不飽和二重結合含有基は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、紫外線硬化成分1分子において、不飽和二重結合含有基の数としては、2つ以上であることが好ましい。紫外線硬化成分が1分子中に2つ以上の不飽和二重結合含有基を有している場合、同一の不飽和二重結合含有基が複数用いられていてもよく、2種以上の不飽和二重結合含有基が用いられていてもよい。
【0069】
紫外線硬化成分としては、例えば、(メタ)アクリレートと多価アルコールとのエステル化物、エステルアクリル系化合物、ウレタンアクリル系化合物、不飽和二重結合含有基を有するシアヌレート系化合物や、不飽和二重結合含有基を有するイソシアヌレート系化合物などが挙げられる。
【0070】
紫外線硬化成分として、より具体的には、例えばアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸ジ(アルキレングリコール)エステル;例えば、テトラエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレートなどのC1−9アルキレングリコール又はポリ(C1−9アルキレングリコール)のジ(メタ)アクリレートなど]、2−プロペニル−ジ−3−ブテニルシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに対して4モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はその変性体のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン又はその変性体のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン又はその変性体のトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、アジピン酸ネオペンチルグリコール変性ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステル変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサン変性ジ(メタ)アクリレート、シクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0071】
紫外線硬化成分の含有割合としては、特に制限されないが、例えば、粘着性ポリマー成分(アクリル系樹脂等)100質量部に対して5〜500質量部(好ましくは10〜200質量部)程度である。
【0072】
なお、紫外線硬化型粘着剤には、粘着性ポリマー成分や紫外線硬化成分以外に、必要に応じて、光重合開始剤、架橋剤等の添加剤などが配合されていてもよい。
【0073】
前記光重合開始剤としては、紫外線により活性化され、紫外線硬化成分の反応を生じさせることが可能な光重合開始剤であれば特に制限されない。具体的には、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤などを用いることができる。光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0074】
光重合開始剤としては、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤が好適である。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えばベンゾインなどが挙げられる。
【0075】
また、ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えばチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0076】
また、前記架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、メラミン樹脂、尿素樹脂、アジリジン系化合物、エポキシ系架橋剤(エポキシ樹脂など)、カルボキシル基を複数有する低分子化合物やその無水物、ポリアミン、カルボキシル基複数有するポリマーなどを用いることができる。
【0077】
当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1は、一方の面側に積層される粘着剤層3を備えていることで、従来の太陽電池モジュールの裏面にそのまま貼設されることができ、従来の太陽電池モジュールの放熱性を高め、ひいてはこの太陽電池モジュールの発電効率の上昇及び長寿命化を行うことができる。また、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1は、一方の面側に積層される粘着剤層3を備えているため、この放熱シートの他方の面が傷ついたり経年劣化によって放熱性が低下した場合も、新しい放熱シート1に容易に張り替えることができ、常に太陽電池モジュールの高い放熱性を維持することができる。更には、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1によれば、クラック等欠陥が生じている太陽電池モジュール裏面に貼り付けた際に、粘着剤層3によってこの欠陥を埋めることができるため、裏面の水蒸気バリア性を高めることができ、また、密閉させることにより熱伝導性を高めることができるために、放熱性を促進させることができる。また、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1は、放熱層5が微小粒子6とバインダー7とを有しているため、表面(放熱フィルム2の他方の面)の微細な凹凸形状8によって表面積を増やし、放熱効果を高めることができる。
【0078】
図2の太陽電池モジュール裏面用放熱シート11は、放熱フィルム12と、この放熱フィルム12の一方の面側に積層される粘着剤層3とを備えている。粘着剤層3は、図1の太陽電池モジュール裏面用放熱シート1と同様であるので、同一番号を付して説明を省略する。
【0079】
放熱フィルム12は、一方の面側に上記粘着剤層3が積層される基材層13と、この基材層13の他方の面側に積層される放熱層14とを備えている。
【0080】
基材層13の形成材料、平均厚さ等は、図1の太陽電池モジュール裏面用放熱シート1の基材層4と同様であるが、基材層13の他方の面(粘着剤層3が積層されていない面)には全面に微小な凹凸形状が形成されている。
【0081】
基材層13の他方の面(微小凹凸形状が形成されている面)の表面粗さ(Ra)の下限としては、1μmが好ましく、10μmが特に好ましい。一方、基材層13の微小凹凸形状が形成されている面の表面粗さ(Ra)の上限としては、1mmが好ましく、100μmが特に好ましい。なお、本発明における「表面粗さ(Ra)」は、JIS−B0601−1994に準拠して測定するカットオフ値8mm、評価長さ40mmの値である。
【0082】
このような表面粗さを有する基材層13の他方の面(微小凹凸形状が形成されている面)に放熱層14を設けることで、放熱層14の表面積が拡大し、放熱効果が格段に向上する。基材層13の他方の面(微小凹凸形状が形成されている面)の表面粗さが、上記下限より小さいと、放熱層14を設けた際に、表面の微細凹凸形状が充分に形成されず、表面積の拡大が不十分となる。逆に、基材層13の微小凹凸形状が形成されている面の表面粗さが、上記上限を超えると表面が粗くなるために、均一な蒸着が難しくなる上に、表面にキズが付きやすくなる。
【0083】
基材層13の成型方法としては、上記構造のものが形成できれば特に限定されるものではなく、種々の方法が採用される。当該基材層13の製造方法としては成型されたシートの表面に凹凸形状を形成する方法と、シート形成と凹凸形状形成とを一体成形する方法とが可能であり、具体的には、
(a)基材層13表面の凹凸形状の反転形状を有するシート型に形成材料樹脂を積層し、そのシート型を剥がすことにより基材層13を形成する方法、
(b)基材層13表面の凹凸形状の反転形状を有する金型に溶融形成材料樹脂を注入する射出成型法、
(c)シート化された形成材料樹脂を再加熱して前記と同様の金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、
(d)基材層13表面の凹凸形状の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の形成材料樹脂を通し、上記形状を転写する押出しシート成形法
(e)シート表面へのサンドブラストによって表面に凹凸形状を設け基材層13を形成する方法などがある。
【0084】
放熱層14は、蒸着された無機酸化物を有している。放熱層14が無機酸化物を有することで、無機酸化物の高い熱伝導性によって、太陽電池セル等からの局所的に発生した熱をシート全面に拡散させることによって、放熱性を高めることができるとともに、無機酸化物を有する放熱層14が高い水蒸気バリア機能を有するため、耐加水分解性を向上させることができる。
【0085】
この無機酸化物の蒸着手段としては、合成樹脂製の基材層13に収縮等の劣化を招来することなく無機酸化物が蒸着できれば特に限定されるものではなく、例えば、(a)真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法;PVD法)、(b)プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法;CVD法)が採用される。これらの蒸着法の中でも、生産性が高く良質な放熱層14が形成できる真空蒸着法やイオンプレーティング法が好ましい。
【0086】
放熱層14を構成する無機酸化物としては、高い熱伝導率を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば酸化アルミニウム、酸化シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム等の金属酸化物が用いられ、中でも高い熱伝導率に加えて、ガスバリア性及び価格面のバランスが良好な酸化アルミニウム又は酸化シリカが特に好ましい。
【0087】
放熱層14の平均厚さの下限としては、3Åが好ましく、400Åが特に好ましい。一方、放熱層14の平均厚さの上限としては、3000Åが好ましく、800Åが特に好ましい。放熱層14の平均厚さが上記下限より小さいと、放熱層14を無機酸化物で成型する利点の一つであるガスバリア性が十分に発揮されない。一方、放熱層14の平均厚さが上記上限を超えると、放熱層14のフレキシビリティーが低下し、放熱層14にクラック等の欠陥が発生しやすくなる。
【0088】
また、放熱層14は、アルミニウムの蒸着により形成されてもよい。放熱層14がアルミニウムの蒸着により形成されている場合、当該放熱シート1によれば、高い熱伝導性により放熱機能が特に高まると共に、アルミニウム蒸着表面が金属光沢を有しているため、太陽電池セルを通過した光線を反射して再利用に供し、発電効率を高めることができる。
【0089】
放熱層14をアルミニウムの蒸着により形成する方法としては、上記の無機酸化物の蒸着方法と同等の方法を用いることができる。放熱層14がアルミニウムの蒸着により形成される場合、放熱層14の平均厚さの下限としては10nmが好ましく、20nmが特に好ましい。一方、アルミニウム蒸着による放熱層14の厚みの上限としては、200nmが好ましく、100nmが特に好ましい。放熱層14の厚みが上記下限より小さいと、熱伝導性及びガスバリア性が十分に発揮されないおそれがある。逆に、放熱層14の厚みが上記上限を超えると、放熱層14にクラック等の欠陥が生じやすくなる。
【0090】
放熱層14は、単層構造でもよく、2層以上の多層構造でもよい。このように放熱層14を多層構造とすることで、蒸着の際にかかる熱負担の軽減により基材層13の劣化が低減され、さらに基材層13と放熱層14との密着性等を改善することができる。また、上記物理気相成長法及び化学気相成長法における蒸着条件は、基材層13の樹脂種類、放熱層14の厚さ等に応じて適宜設計される。
【0091】
また、放熱層14は、金属アルコキシド及び/又はその加水分解物を含む組成物を用いたゾル・ゲル法により形成されてもよい。放熱層14をこのようなゾル・ゲル法にて形成することにより、基材層13との密着性が高まり、高い熱伝導性に加え、ガスバリア性を発揮することができる。また、蒸着ほど高温とならないゾル・ゲル法にて形成することにより、比較的低温で放熱層14を形成することができる。従って、高温に比較的強くない基材層13に負担を掛けることがないため、多層の放熱層14を容易に形成することができる。
【0092】
この金属アルコキシドが含有する金属としては、3価以上の金属、例えば遷移金属、希土類金属、周期表3〜5族の金属などが挙げられ、周期表3b族又は4族に属する金属が好ましい。周期表3b族に属する金属としては例えばAlなどが挙げられる。周期表4族に属する金属としては例えば4a族に属するTi、Zrなど、4b族に属するSiなどが挙げられる。これらの金属のうち、ゾル・ゲル法による製膜が容易で界面平坦化機能に優れるAl及びSiが好ましく、Siが特に好ましい。
【0093】
金属アルコキシドが有するアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。中でも、加水分解重合性に優れる炭素数1〜4の低級アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が特に好ましい。また、加水分解重合性を促進する趣旨で、少なくとも2つのアルコキシ基を有する金属アルコキシドが好ましい。
【0094】
金属アルコキシドは、炭化水素基を有していてもよい。この炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基のうち、アルキル基及びアリール基が好ましい。このアルキル基の中でも、炭素数1〜4の低級アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基及びプロピル基が特に好ましい。また、アリール基の中でも、フェニル基が好ましい。金属アルコキシドにおける炭化水素基の数としては、アルコキシ基の数に応じて適当に選択でき、一般的に1分子中0〜2個程度とされている。
【0095】
金属アルコキシドとしては、具体的には、下記式(1)で表されるものが好ましい。
(RM(ORX−m (1)
上記式(1)において、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、置換基を有していてもよい。Rは、低級アルキル基を示す。R及びRは、mによって異なっていてもよい。Mは、3価以上の金属を示す。Xは、金属Mの価数を示す。mは、0〜2の整数を示し、X−m≧2である。
【0096】
特に、金属がSiである金属アルコキシドとしては、下記式(2)で表されるものが好ましい。
(RSi(OR4−n (2)
上記式(2)において、Rは、アルキル基又はアリール基を示し、置換基を有していてもよい。Rは、低級アルキル基を示す。R及びRは、nによって異なっていてもよい。nは、0〜2の整数を示す。
【0097】
金属がAlである金属アルコキシドとしては、具体的にはトリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、エチルジエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネートなどが挙げられる。
【0098】
上記式(2)で表される金属(Si)アルコキシドとしては、具体的にはテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0099】
上記式(2)で表される金属(Si)アルコキシドの中でも、炭素数1〜4程度のアルキル基又はアリール基を0〜2個、炭素数1〜3程度のアルコキシ基を2〜4個有する化合物、例えばテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどが特に好ましい。
【0100】
なお、上記組成物中には、同種又は異種の金属アルコキシドを一種又は二種以上混合して使用できる。また、上記組成物中には、組成物の硬さ、柔軟性などを調整するため、n=3のモノアルコキシシランを添加してもよい。また、上記組成物中には、5b族の化合物、例えばメチルホスホナスジメチルエステル、エチルホスホナスジメチルエステル、トリクロロメチルホスホナスジエチルエステル、メチルホスホナスジエチルエステル、メチルホスホニックジメチルエステル、フェニルホスホニックジメチルエステル、リン酸トリアルキルエステルなどのリン系化合物や、ホウ酸トリアルキルエステルなどのホウ素化合物を添加してもよい。さらに、上記組成物中には、少なくとも1つの加水分解性有機基を有するアルカリ土類金属化合物を必要に応じて添加してもよい。このアルカリ土類金属化合物は、炭化水素基と加水分解性有機基との双方を有していてもよい。
【0101】
上記組成物中に、窒素、酸素、硫黄及びハロゲンの少なくとも1つを含む官能基を有する金属アルコキシド(A)を含有するとよい。このように窒素、酸素、硫黄及びハロゲンの少なくとも1つを含む官能基を有する金属アルコキシド(A)を含有する組成物を塗工及びキュアすることで、放熱層14に特定のポリシロキサン構造を発現させ、放熱層14の膜物性ひいてはガスバリア性を向上させることができ、加えて放熱層14の放熱性及びガスバリア性の温度依存性を低減することができる。
【0102】
上記窒素、酸素、硫黄及びハロゲンの少なくとも1つを含む官能基としては、例えばアミノ基、塩素、メルカプト基、グリシドキシ基などが挙げられる。上記窒素、酸素、硫黄及びハロゲンの少なくとも1つを含む官能基を有する金属アルコキシド(A)としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコ−ン等が挙げられ、これらの金属アルコキシドの1種又は2種以上を使用することができる。
【0103】
上記金属アルコキシド(A)の含有量(組成物中の全金属アルコキシドに対する含有量)としては、1質量%以上50質量%以下が好ましく、3質量%以上30質量%以下が特に好ましい。金属アルコキシド(A)の含有量を上記範囲とすることで、放熱層14に放熱性及びガスバリア性に寄与するポリシロキサン構造を発現することができる。
【0104】
上記組成物中に、溶剤可溶性ポリマーを含有するとよい。かかる溶剤可溶性ポリマーと金属アルコキシドとを含む組成物を用いたゾル・ゲル法により放熱層14を形成することで、放熱層14の膜物性が向上し、かつ放熱層14の放熱性及びガスバリア性(特に、高温時における放熱性及びガスバリア性)をより高めることができる。
【0105】
上記溶媒可溶性ポリマーとしては、種々の官能基や官能性結合基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、アミド基、アミド結合など)を有するポリマー、グリシジル基を有するポリマー、ハロゲン含有ポリマー、これらのポリマーからの誘導体等が挙げられる。これらの官能基や官能性結合基はポリマーの主鎖又は側鎖のいずれに存在していてもよい。溶媒可溶性ポリマーとしては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、単独又は二種以上混合して使用してもよい。また、溶媒可溶性ポリマーとしては、金属アルコキシドとの反応に活性であってもよく、不活性であってもよいが、一般的には非反応性ポリマーとされている。なお、「アミド結合」とは、−NHC(O)−に限定されず、>NC(O)−結合単位を含む概念である。
【0106】
上記ヒドロキシル基を有するポリマーとその誘導体としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フェノール樹脂、メチロールメラミン等とその誘導体(例えばアセタール化物、ヘキサメトキシメチルメラミン等)が挙げられる。上記カルボキシルを有するポリマーとその誘導体としては、例えばポリ(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の重合性不飽和酸の単位を含む単独又は共重合体、これらのポリマーのエステル化物などが挙げられる。上記エステル結合を有するポリマーとしては、例えば酢酸ビニル等のビニルエステル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステルなどの単位を含む単独又は共重合体(例えばポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル系樹脂など)、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、セルロースエステルなどが挙げられる。上記エーテル結合を有するポリマーとしては、例えばポリアルキレンオキサイド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ケイ素樹脂などが挙げられる。上記カーボネート結合を有するポリマーとしては、ビスフェノールA型ポリカーボネートなどのポリカーボネートが挙げられる。
【0107】
上記アミド結合を有するポリマーとしては、例えば>N(COR)−結合を有するポリオキサゾリン、ポリアルキレンイミン等のN−アシル化物;>NC(O)−結合を有するポリビニルピロリドンとその誘導体;ウレタン結合−HNC(O)O−を有するポリウレタン;尿素結合−HNC(O)NH−を有するポリマー;アミド結合−C(O)NH−を有するポリマー;ビュレット結合を有するポリマー;アロハネート結合を有するポリマーなどが含まれる。上記結合式において、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。
【0108】
>N(COR)−結合を有するポリオキサゾリンの場合、上記Rで示されるアルキル基としては、例えば炭素数1〜10程度のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4の低級アルキル基、特にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが該当する。アルキル基の置換基としては、例えばフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜4程度のアルコキシ基、カルボキシル基、アルキル部分の炭素数が1〜4程度のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル基などが挙げられる。アリール基の置換基としては、例えば前記ハロゲン原子、炭素数1〜4程度のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜4程度のアルコキシ基、カルボキシル基、アルキル部分の炭素数が1〜4程度のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0109】
オキサゾリンとしては、例えば2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ジクロロメチル−2−オキサゾリン、2−トリクロロメチル−2−オキサゾリン、2−ペンタフルオロエチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−メトキシカルボニルエチル−2−オキサゾリン、2−(4−メチルフェニル)−2−オキサゾリン、2−(4−クロロフェニル)−2−オキサゾリンなどが挙げられる。特に、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリンなどが好ましい。このようなオキサゾリンのポリマーは一種又は二種以上混合して使用できる。ポリオキサゾリンは、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。また、ポリオキサゾリンは、ポリマーにポリオキサゾリンがグラフトした共重合体であってもよい。
【0110】
なお、ポリオキサゾリンは、置換基を有していてもよいオキサゾリンを触媒の存在下で開環重合することにより得られる。触媒としては、例えば硫酸ジメチル、p−トルエンスルホン酸アルキルエステルなどの硫酸エステルやスルホン酸エステル;ヨウ化アルキル(例えば、ヨウ化メチル)などのハロゲン化アルキル;フリーデルクラフツ触媒のうち金属フッ素化物;硫酸、ヨウ化水素、p−トルエンスホン酸などの酸、これらの酸とオキサゾリンとの塩であるオキサゾリニウム塩などが使用できる。
【0111】
ポリアルキレンイミンのアシル化物としては、上記ポリオキサゾリンに対応するポリマー、例えばN−アセチルアミノ、N−プロピオニルアミノなどのN−アシルアミノ基を有するポリマーが挙げられる。ポリビニルピロリドンとその誘導体としては、置換基を有してもよいビニルピロリドンのポリマー、例えばポリビニルピロリドンなどが挙げられる。ウレタン結合を有するポリウレタンとしては、例えばポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と、ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロビレングリコール等のポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオールなど)との反応により生成するポリウレタンが挙げられる。尿素結合を有するポリマーとしては、例えばポリ尿素、ポリイソシアネートとポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのジアミンなど)との反応により生成するポリマーなどが挙げられる。
【0112】
アミド結合を有するポリマーとしては、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアミノ酸などが挙げられる。このアミド結合を有するポリマーとしては、置換基を有していてもよいオキサゾリンのポリマー、ポリアルキレンイミンのN−アシル化物、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。ビュレット結合を有するポリマーとしては、前記ポリイソシアネートとウレタン結合を有する化合物との反応により生成するポリマーが挙げられる。アロハネート結合を有するポリマーとしては、前記ポリイソシアネートと尿素結合を有する化合物との反応により生成するポリマーなどが挙げられる。グリシジル基を有するポリマーとしては、例えばエポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートの単独又は共重合体等が挙げられる。ハロゲン含有ポリマーとしては、例えばポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデンの単位を有する塩化ビニリデン系ポリマー、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0113】
溶媒可溶性ポリマーは、一般的には、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;含窒素溶媒(例えば、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類など)やスルホキシド類(例えばジメチルスルホキシドなど)等の非プロトン性極性溶媒;又はこれらの混合溶媒に可溶である。
【0114】
溶媒可溶性ポリマーとしては、水素結合可能な基、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、アミド結合や窒素原子などを有するものが好ましい。このような水素結合可能な基を有する溶剤可溶性ポリマーを用いると、金属アルコキシド及び/又はその加水分解物に対して共通する溶媒を使用できる場合が多く、金属アルコキシドの加水分解重合により生成した有機金属ポリマーのヒドロキシル基と溶剤可溶性ポリマーの官能基や結合基とが水素結合し、その結果均一な有機・無機ハイブリッドを形成し、ミクロ的に均質で透明な皮膜を形成できると考えられる。
【0115】
また、溶媒可溶性ポリマーとしては、金属アルコキシドとの共通溶媒が使用できるアルコール可溶性ポリマーが好ましい。このようなアルコール可溶性ポリマーとしては、ヒドロキシル基を有するポリマー等の水溶性ポリマーが好ましく、窒素原子を有するポリマー(例えば、上記アミド結合を有するポリマー)が特に好ましい。
【0116】
溶媒可溶性ポリマーの金属アルコキシド(その加水分解物を含む)100質量部に対する含有量は、40質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上80質量%以下が特に好ましい。溶剤可溶性ポリマーの含有量が上記範囲より小さいと、放熱性及びガスバリア性の向上効果が低下し、無機ポリマーと有機ポリマーとの複合体で均一な皮膜を形成するのが困難となるおそれがある。一方、溶媒可溶性ポリマーの含有量が上記範囲を超えると、成膜性や均一性が高くなる傾向を示すが、放熱性及びガスバリア性が低下するおそれがある。
【0117】
上記組成物中には、一般的には有機溶媒が配合される。この有機溶媒としては、金属アルコキシドの種類に応じて重合反応に不活性な適当な溶媒、例えばアルコール類、芳香族炭化水素、エーテル類、含窒素溶媒、スルホキシド類、又はこれらの混合溶媒などが使用される。また、上記溶媒可溶性ポリマーも有機溶媒として使用することができる。この有機溶媒としては、金属アルコキシドの溶媒と混和性を有する溶媒が好ましく、溶剤可溶性ポリマー及び金属アルコキシドに対して共通する良溶媒が特に好ましい。
【0118】
また、上記組成物中には硬化触媒を含有し、硬化触媒の存在下で金属アルコキシドの下垂分解重合を行なってもよい。硬化触媒としては、実質的に水に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミン類や酸触媒などが使用される。第三アミン類としては、例えばN.N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等が挙げられる。酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;例えばギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸などの有機酸が挙げられる。
【0119】
なお、放熱層14をゾル・ゲル法にて形成する組成物中には、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、充填剤、着色剤などの種々の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0120】
次に、ゾル・ゲル法による放熱層14の形成方法を説明する。金属アルコキシド及び/又はその加水分解物に溶剤可溶性ポリマー、硬化触媒、有機溶媒等を適宜添加して充分に混練することで上記組成物を調整し、この組成物を通常のコ−ティング法で基材層13の表面にコ−ティングし、次いで加熱乾燥し、更にエ−ジング処理等を施すことにより、コ−ティング硬化膜である放熱層14を形成する。この加熱温度としては、金属アルコキシドの加水分解性や基材層13の耐熱性に応じて適宜選択されるが、50℃以上120℃以下が好ましい。なお、重合反応は、不活性ガスの存在下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、加水分解重合に伴って生成するアルコールを除去しながら、重合してもよい。
【0121】
上記ゾル・ゲル法による放熱層14の形成方法において、加熱工程の際に、組成物への紫外線照射を施すとよい。このようにゾル・ゲル法の加熱工程の際に組成物への紫外線照射を施すことで、組成物がより低温(100℃以下)で硬化し、かつ放熱層14に欠陥が格段に少なく膜物性に優れ、放熱層14と基材層13との密着性が向上する。そのため、放熱層14の放熱性及びガスバリア性がより高められる。
【0122】
また、基材層13と放熱層14との密接着性等を向上させるため、基材層13の蒸着面に表面処理を施すとよい。このような密着性向上表面処理としては、例えば(a)コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いた酸化処理や、(b)プライマーコート処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理、蒸着アンカーコート処理などが挙げられる。これらの表面処理の中でも、放熱層14との接着強度が向上し、緻密かつ均一な放熱層14の形成に寄与するコロナ放電処理及びアンカーコート処理が好ましい。
【0123】
上記アンカーコート処理に用いるアンカーコート剤としては、例えばポリエステル系アンカーコート剤、ポリアミド系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤、エポキシ系アンカーコート剤、フェノール系アンカーコート剤、(メタ)アクリル系アンカーコート剤、ポリ酢酸ビニル系アンカーコート剤、ポリエチレンアルイハポリプロピレン等のポリオレフィン系アンカーコート剤、セルロース系アンカーコート剤などが挙げられる。これらのアンカーコート剤の中でも、基材層13と放熱層14との接着強度をより向上することができるポリエステル系アンカーコート剤が特に好ましい。
【0124】
上記アンカーコート剤のコーティング量(固形分換算)の下限としては、0.1g/mが好ましく、1g/mが特に好ましい。一方、当該アンカーコート剤のコーティング量の上限としては、5g/mが好ましく、3g/mが特に好ましい。アンカーコート剤のコーティング量が上記下限より小さいと、基材層13と放熱層14との密着性向上効果が小さくなるおそれがある。一方、当該アンカーコート剤のコーティング量が上記上限を超えると、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート11の強度、耐久性等が低下するおそれがある。
【0125】
なお、上記アンカーコート剤中には、密接着性向上のためのシランカップリング剤、基材層13とのブロッキングを防止するためのブロッキング防止剤、耐候性等を向上させるための紫外線吸収剤等の各種添加剤を適宜混合することができる。かかる添加剤の混合量としては、添加剤の効果発現とアンカーコート剤の機能阻害とのバランスから0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0126】
また、放熱層14の他方の面(基材層13と接しない外側の面)にトップコート処理を施すとよい。このように放熱層14の外面にトップコート処理を施すことで、放熱層14が封止及び保護され、その結果、当該放熱シート11の取扱性が向上し、また放熱層14にキズや、凹部等の欠陥があってもガスバリア性の低下が抑制され、さらに放熱層14の経年劣化が低減される。
【0127】
上記トップコート処理に用いるトップコート剤としては、例えばポリエステル系トップコート剤、ポリアミド系トップコート剤、ポリウレタン系トップコート剤、エポキシ系トップコート剤、フェノール系トップコート剤、(メタ)アクリル系トップコート剤、ポリ酢酸ビニル系トップコート剤、ポリエチレンアルイハポリプロピレン等のポリオレフィン系トップコート剤、セルロース系トップコート剤などが挙げられる。かかるトップコート剤の中でも、放熱層14との接着強度が高く、放熱層14の表面保護、欠陥の封止等に寄与するポリエステル系トップコート剤が特に好ましい。
【0128】
上記トップコート剤のコーティング量(固形分換算)の下限としては、1g/mが好ましく、3g/mが特に好ましい。一方、当該トップコート剤のコーティング量の上限としては、10g/mが好ましく、7g/mが特に好ましい。トップコート剤のコーティング量が上記下限より小さいと、放熱層14を封止及び保護する効果が小さくなるおそれがある。一方、当該トップコート剤のコーティング量が上記上限を超えても、上記放熱層14の封止及び保護効果があまり増大せず、かえって当該放熱シート1の厚みが増大し、放熱性が低下し、更には薄型化及び軽量化の要請に反するおそれがある。
【0129】
なお、上記トップコート剤中には、密接着性向上のためのシランカップリング剤、耐候性等を向上させるための紫外線吸収剤、耐熱性等を向上させるための無機フィラー等の各種添加剤を適宜混合することができる。かかる添加剤の混合量としては、添加剤の効果発現とトップコート剤の機能阻害とのバランスから0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0130】
放熱層14の表面粗さ(Ra)の下限としては、1μmが好ましく、10μmが特に好ましい。一方、放熱層14の表面粗さ(Ra)の上限としては、1mmが好ましく、100μmが特に好ましい。この表面粗さは、基材層13の表面粗さと同様であるが、基材層13の表面粗さに対して、放熱層14の平均厚さが無視できる程度の薄さであるためこのようになる。放熱層14の表面粗さが上記範囲であることで、表面積が拡大し、放熱効果が格段に向上する。
【0131】
太陽電池モジュール裏面用放熱シート11によれば、このように放熱層14が無機酸化物又はアルミニウムの蒸着若しくはゾル・ゲル法によって設けられていることで、無機物の高い熱伝導性により、太陽電池セル等から局所的に発生した熱をシート全面に拡散させることによって、放熱性を高めることができるとともに、無機物を有する放熱層が高い水蒸気バリア機能を有するため、耐加水分解性を向上させることができ、太陽電池モジュールの長寿命化を実現できる。また、太陽電池モジュール裏面用放熱シート11は、放熱フィルム2の他方の面(放熱層14の表面)に微細な凹凸形状を有することで大きな表面積を有し、放熱効率を高めることができる。更には、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート11は、放熱層14が絶縁性を有する無機酸化物を有する場合は、太陽電池モジュールの絶縁性を高めることができ、太陽電池セルや配線等の導電性部分を保護することができる。
【0132】
図3の太陽電池モジュール裏面用放熱シート21は、放熱フィルム22と、この放熱フィルム22の一方の面側に積層される粘着剤層3とを備えている。粘着剤層3は、図1の太陽電池モジュール裏面用放熱シート1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0133】
放熱フィルム22は、一方の面側に上記粘着剤層3が積層される基材層4と、この基材層4の他方の面側に接着剤層23を介して積層される放熱層24とを備えている。基材層4は図1の太陽電池モジュール裏面用放熱シート1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0134】
接着剤層23を構成する接着剤としては、特に限定されないが、ラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂が好適に用いられる。このラミネート用接着剤としては、例えばドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、ホットメルトラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤等が挙げられる。これらのラミネート用接着剤の中でも接着強度、耐久性、耐候性等に優れ、基材層4表面の欠陥(例えばキズ、ピンホール、凹部等)を封止及び保護する機能を有するドライラミネート用接着剤が特に好ましい。
【0135】
上記ドライラミネート用接着剤としては、例えばポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル,ブチル,2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマーまたはこれらとメタクリル酸メチル,アクリロニトリル,スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル,アクリル酸エチル,アクリル酸,メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂,メラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム,ニトリルゴム,スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート,低融点ガラス等からなる無機系接着剤などが挙げられる。これらのドライラミネート用接着剤の中でも、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート21の屋外での長期間使用に起因する接着強度低下やデラミネーションが防止され、さらに接着剤層23の黄変等の劣化が低減されるポリウレタン系接着剤、特にポリエステルウレタン系接着剤が好ましい。また硬化剤としては、熱黄変が少ない脂肪族系ポリイソシアネートが好ましい。
【0136】
上記溶融押出樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、サーリン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂の1種又は2種以上を使用することができる。なお、上記溶融押出樹脂を用いた押出ラミネート法を採用する場合、より強固な接着強度を得るために、上記各フィルムの積層対向面に上述のアンカーコート処理等の表面処理を施すとよい。
【0137】
接着剤層23の積層量(固形分換算)の下限としては1g/mが好ましく、3g/mが特に好ましい。一方、接着剤層23の積層量の上限としては、20g/mが好ましく、10g/mが特に好ましい。接着剤層23の積層量が上記下限より小さいと、接着強度が得られなかったり放熱層24との間に隙間が生じ、熱伝導性及び放熱効果が低下するおそれがある。一方、接着剤層23の積層量が上記上限を超えると、積層強度や耐久性が低下するおそれがある。
【0138】
なお、接着剤層23を形成するラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂中には、取扱性、耐熱性、耐候性、機械的性質等を改良、改質する目的で、例えば、溶媒、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等の種々の添加剤を適宜混合することができる。
【0139】
放熱層24は、微細な凹凸形状が設けられた金属箔が用いられている。この金属箔の材質としてはアルミニウム、アルミニウム合金、銅、鋼、ステンレス鋼等が挙げられるが、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム−鉄系合金(軟質材)が特に好ましい。このアルミニウム−鉄系合金における鉄含有量としては0.3%以上9.0%以下が好ましく、0.7%以上2.0%以下が特に好ましい。この鉄含有量が上記下限未満の場合は、ピンホールの発生の防止の効果が不十分になるおそれがあり、逆に鉄含有量が上記上限を超える場合は、柔軟性が阻害されて、加工性が低下するおそれがある。また金属箔の材料としては、ピンホールを防止する観点から、焼きなまし処理を行った柔軟性アルミニウムも好ましい。
【0140】
金属箔の厚さ(平均厚さ)の下限としては、6μmが好ましく、15μmが特に好ましい。一方、金属箔の厚さの上限としては50μmが好ましく、30μmが特に好ましい。金属箔の厚さが上記下限より小さいと、加工の際に金属箔の破断が起きやすくなり、またピンホール等に起因してガスバリア性が低下するおそれがある。一方、金属箔の厚さが上記上限を超えると、加工の際にクラック等が発生するおそれがあり、また当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート21の厚さや重量が増大して薄型軽量化の社会的要請に反することとなる。
【0141】
金属箔の表面には、溶解、腐食を防止する観点から例えばクロメート処理、リン酸塩処理、潤滑性樹脂被覆処理等の表面処理が施されてもよく、接着性を促進する観点からカップリング処理等が施されてもよい。
【0142】
金属箔に設けられる微細な凹凸形状は、金属箔を接着剤層23の表面に積層させた後にエンボス加工等により設けてもよいし、微細な凹凸形状を設けた金属箔を接着剤層23の表面に積層させてもよい。
【0143】
放熱層24の表面粗さ(Ra)の下限としては、1μmが好ましく、10μmが特に好ましい。一方、放熱層24の表面粗さ(Ra)の上限としては、1mmが好ましく、100μmが特に好ましい。放熱層24の表面粗さが、上記下限より小さいと、表面積の拡大が不十分で、凹凸形状を設けることによる放熱機能の上昇が十分に発揮されない。逆に、放熱層24の表面粗さが、上記上限を超えると、表面が粗くなるために、見た目にギラツキが生じるとともに、表面にキズが付きやすくなる。
【0144】
また、放熱層24である金属箔の表面(接着剤層23と接しない側の面)には、太陽電池モジュール裏面用放熱シート11の放熱層14と同様に、トップコート処理を施すとよい。このように放熱層24の表面にトップコート処理を施すことで、放熱層24が封止及び保護され、その結果放熱シート21の取扱性が向上し、また放熱層24にキズ、凹部等の欠陥があってもガスバリア性の低下が抑制され、さらに放熱層24の経年劣化が低減される。
【0145】
当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート21は、放熱層24が金属箔であることで、金属箔の極めて高い熱伝導性によって、太陽電池セル等局所的に発生した熱をシート全面に拡散させることによって、放熱機能を高めることができるとともに、金属箔からなる放熱層が高い水蒸気バリア機能を有するため、耐加水分解性を向上させることができる。更には、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート21は、表面に凹凸形状が設けられているため、広い表面積を有し、極めて高い放熱機能を発揮することができる。
【0146】
これらの太陽電池モジュール裏面用放熱シート1、11、21において、粘着剤層3の一方の面(基材層と接していない側の面)が、離型シートで被覆されていることが好ましい。当該太陽電池モジュール裏面用放熱シートによれば、この離型シートで一方の面が被覆されていることにより、貼り付け作業直前まで、粘着剤層を他のものと接触することを防止することができるため、作業性が高まると共に、貼り付け時の当該放熱シートの粘着機能を高めることができる。
【0147】
この離型シートとしては特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔、又はこれらのラミネート体等からなる適当なフィルム状体を用いることができる。離型シートの表面には、粘着剤層3からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を施すことが好ましい。剥離シートの剥離性は、剥離処理に用いる薬剤の種類及び/又はその塗工量等を調節することにより制御することができる。
【0148】
図4の太陽電池モジュール31は、透光性基板32と、充填剤層33と、複数枚の太陽電池セル34と、充填剤層35と、バックシート36と、当該太陽電池モジュール裏面用放熱シート1とが表面側からこの順に積層され、バックシート36の裏面の一部には、各太陽電池セル34を接続する配線37の両端子を有するジャンクションボックス38を備えている。
【0149】
上記透光性基板32は、最表面に積層されるものであり、a)太陽光に対する透過性及び電気絶縁性を有すること、b)機械的、化学的及び物理的強度、具体的には耐候性、耐熱性、耐久性、耐水性、水蒸気等に対するガスバリア性、耐風圧性、耐薬品性、堅牢性に優れること、(c)表面硬度が高く、かつ表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れることが要求される。
【0150】
透光性基板32の形成材料としては、ガラス及び合成樹脂が使用される。透光性基板32に使用される合成樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0151】
なお、合成樹脂製の透光性基板32の場合、(a)ガスバリア性等を向上させる目的で上記PVD法又はCVD法によりその一方の面に酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の透明蒸着膜を積層すること、(b)加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、充填剤、強化繊維、補強剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等の各種添加剤を含有することも可能である。
【0152】
透光性基板32の厚さ(平均厚さ)としては、特に限定されず、使用する材料に応じて所要の強度、ガスバリア性等を具備するよう適宜選択される。合成樹脂製の透光性基板32の厚さとしては6μm以上300μm以下が好ましく、9μm以上150μm以下が特に好ましい。また、ガラス製の透光性基板32の厚さとしては、一般的には3mm程度とされている。
【0153】
上記充填剤層33及び充填剤層35は、透光性基板32及びバックシート36間における太陽電池セル34の周囲に充填されており、(a)透光性基板32及びバックシート36との接着性や、太陽電池セル34を保護するための耐スクラッチ性、衝撃吸収性等を有している。なお、太陽電池セル34の表面に積層される充填剤層33は、上記諸機能に加え、太陽光を透過する透明性を有している。
【0154】
充填剤層33及び充填剤層35の形成材料としては、例えばフッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレンフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、耐候性、耐熱性、ガスバリア性等に優れるフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂又はエチレン−酢酸ビニル系樹脂が好ましい。
【0155】
また、充填剤層33及び充填剤層35の形成材料としては、特開2000−34376公報に示される熱可逆架橋性オレフィン系重合体組成物、具体的には(a)不飽和カルボン酸無水物と不飽和カルボン酸エステルとによって変性された変性オレフィン系重合体であって、1分子当たりのカルボン酸無水物基の平均結合数が1個以上で、かつ該変性オレフィン系重合体中のカルボン酸無水物基数に対するカルボン酸エステル基数の比が0.5〜20である変性オレフィン系重合体と、(b)1分子当たりの水酸基の平均結合数が1個以上の水酸基含有重合体とを含み、(a)成分のカルボン酸無水物基数に対する(b)成分の水酸基数の比が0.1〜5のものなども使用される。
【0156】
なお、充填剤層33及び充填剤層35の形成材料には、耐候性、耐熱性、ガスバリア性等の向上を目的として例えば架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤等の各種添加剤を適宜含有することができる。また充填剤層33及び充填剤層35の厚さとしては、特に限定されるものではないが、200μm以上1000μm以下が好ましく、350μm以上600μm以下が特に好ましい。
【0157】
上記太陽電池セル34は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力素子であり、充填剤層33及び充填剤層35間に配設されている。複数枚の太陽電池セル34は、略同一平面内に敷設され、直列又は並列に配線されている。この太陽電池セル34としては、例えば単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型やタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等の第3〜第5族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe2)等の第2〜第6族化合物半導体太陽電子素子等を使用することができ、それらのハイブリット素子も使用することができる。なお、複数枚の太陽電池セル34間にも充填剤層33又は充填剤層35が隙間なく充填されている。
【0158】
バックシート36は、太陽電池セル34、充填剤層33及び35を裏面から保護するものであり、強度、耐候性、耐熱性等の基本性能に加えて、水蒸気、酸素ガス等に対するガスバリア性を備えるものであり、公知のものが用いられる。このバックシート36は、ガスバリア層の表面及び裏面に一対の合成樹脂層を積層した多層構造を有している。
【0159】
太陽電池モジュール裏面用放熱シート1は、バックシート36の裏面に、粘着剤層3により貼設されている。太陽電池モジュール裏面用放熱シート1は、ジャンクションボックス38の部分を抜き取った形状に切り抜かれ、貼設される。
【0160】
当該太陽電池モジュール31の製造方法としては、特に限定されるもではないが、一般的には(1)透光性基板32、充填剤層33、複数枚の太陽電池セル34、充填剤層35及びバックシート36をこの順に積層する工程と、(2)それらを真空吸引により一体化して加熱圧着する真空加熱ラミネーション法等により一体成形するラミネート工程と、(3)バックシート36裏面にジャンクションボックス38を設ける工程と、(4)バックシート36裏面のジャンクションボックス38が設けられた部分以外の場所に、太陽電池モジュール裏面用放熱シート1を積層する工程とを有している。上記太陽電池モジュール31の製造方法において、各層間の接着性等を目的として(a)加熱溶融型接着剤、溶剤型接着剤、光硬化型接着剤等を塗工すること、(b)各積層対向面にコロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理、酸化処理、プライマーコート処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理等を施すことなどが可能である。
【0161】
なお、太陽電池モジュール裏面用放熱シート1は、既に使用されている太陽電池モジュール(透光性基板32と、充填剤層33と、複数枚の太陽電池セル34と、充填剤層35と、バックシート36とが表面側からこの順に積層され、バックシート36の裏面に、各太陽電池セル34を接続する配線37の両端子を有するジャンクションボックス38を備えている)の裏面(バックシート36側の面)に積層することもできるし、製造当初から積層することもできる。
【0162】
当該太陽電池モジュール31は、上述のように太陽電池モジュール裏面用放熱シート1を備えているため、太陽電池モジュールの放熱性を高めることができ、その結果、発電効率の向上及び長寿命化が実現できる。また、当該太陽電池モジュール31は、太陽電池モジュール裏面用放熱シート1が粘着剤層3によって貼設されているため、例えば放熱フィルム2が傷ついた場合などにおいても、太陽電池モジュール裏面用放熱シート1を張り替えることによって、常に高い放熱機能を発揮することができる。また、既に使用されている太陽電池モジュール(透光性基板32と、充填剤層33と、複数枚の太陽電池セル34と、充填剤層35と、バックシート36とが表面側からこの順に積層され、バックシート36の裏面に各太陽電池セル34を接続する配線37の両端子を有するジャンクションボックス38を備えているもの)に積層することによって、既存の太陽電池モジュールの放熱効率を高めることで、発電効率を向上させることができることに加え、粘着剤層3が、バックシート36裏面にキズやクラック等物理的欠陥が生じている場合にも、太陽電池モジュール裏面用放熱シート1によって、物理的欠陥の拡大を抑制するとともに、この物理的欠陥部分からの水蒸気等の透過を防止することができるため、太陽電池モジュールの長寿命化を促進できる。
【0163】
なお、本発明の太陽電池モジュール裏面用放熱シート及びこれを用いた太陽電池モジュールは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール裏面用放熱シート1以外の、太陽電池モジュール裏面用放熱シート11、21及びその他の太陽電池モジュール裏面用放熱シートを積層することもできる。
【0164】
また、放熱層が無機酸化物やアルミニウムである太陽電池モジュール裏面用放熱シートにおいて、表面に微細な凹凸形状を設けなくともよい。無機酸化物やアルミニウムは高い熱伝導率を有しているため、表面に凹凸形状を備えることで表面積を拡大しなくとも、この放熱フィルムによって局所的に発する熱をシート全面に拡散することにより放熱効果を発揮させることができる。
【0165】
同様に、放熱層が微小粒子と、この微小粒子のバインダーとを備える太陽電池モジュール裏面保護用放熱シートにおいても、表面に微細な凹凸形状を設けなくともよい。このような太陽電池モジュール裏面保護用放熱シートにおいても、この微小粒子が高い熱伝導率を有し、かつ各微小粒子が互いに接する程度密に含有することで、局所的に発する熱をシート全面に拡散することにより放熱効果を発揮させることができる。
【0166】
更には、放熱フィルムが基材層と放熱層との2層構造ではなく、単層構造であってもよい。すなわち、例えば、図2の太陽電池モジュール裏面用放熱シート11において、放熱層14が無い構造であってもよい。このような太陽電池モジュール裏面用放熱シートにおいても、基材層、つまり放熱フィルム表面(他方の面)の全面に微細な凹凸形状を有しているため、表面積が増大し、放熱性が高いため、放熱シートとしての機能を十分に発揮することができる。また、放熱フィルムが単層である例として、放熱フィルムが金属箔のみである構造であってもよい。このような太陽電池モジュール裏面用放熱シートにおいてもこの金属箔の高い熱伝導性から放熱機能を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
以上のように、本発明の太陽電池モジュール裏面用放熱シートは、太陽電池モジュールの放熱効果を高め、発電効率を高めるとともに、太陽電池セル等の劣化を防止し長期使用を実現させるため、太陽電池モジュールの裏面に貼り合わせる放熱シートとして利用される。特に、使用環境の激しい屋外取付の太陽電池モジュール等へ好適に利用される。
【符号の説明】
【0168】
1 太陽電池モジュール裏面用放熱シート
2 放熱フィルム
3 粘着剤層
4 基材層
5 放熱層
6 微小粒子
7 バインダー
8 凹凸形状
11 太陽電池モジュール裏面用放熱シート
12 放熱フィルム
13 基材層
14 放熱層
21 太陽電池モジュール裏面用放熱シート
22 放熱フィルム
23 接着剤層
24 放熱層
31 太陽電池モジュール
32 透光性基板
33 充填剤層
34 太陽電池セル
35 充填剤層
36 バックシート
37 端子
38 ジャンクションボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱フィルムと、この放熱フィルムの一方の面側に積層される粘着剤層とを備える太陽電池モジュール裏面用放熱シート。
【請求項2】
上記放熱フィルムが、他方の面全面に微細な凹凸形状を有する請求項1に記載の太陽電池モジュール裏面用放熱シート。
【請求項3】
上記放熱フィルムが、
一方の面側に上記粘着剤層が積層される基材層と、
この基材層の他方の面側に積層される放熱層と
を備える請求項1又は請求項2に記載の太陽電池モジュール裏面用放熱シート。
【請求項4】
上記放熱層が、微小粒子と、この微小粒子のバインダーとを備える請求項3に記載の太陽電池モジュール裏面用放熱シート。
【請求項5】
上記微小粒子が、金属及び/又は無機酸化物ビーズである請求項4に記載の太陽電池モジュール裏面用放熱シート。
【請求項6】
上記放熱層が、蒸着された無機酸化物を有する請求項3に記載の太陽電池モジュール裏面用放熱シート。
【請求項7】
上記放熱層が、金属箔である請求項3に記載の太陽電池モジュール裏面用放熱シート。
【請求項8】
上記粘着剤層の一方の面が、離型シートで被覆されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール裏面用放熱シート。
【請求項9】
透明性基板と、充填剤層と、光起電力素子としての太陽電池セルと、充填剤層と、バックシートと、太陽電池モジュール裏面用放熱シートとが表面側からこの順に積層されている太陽電池モジュールであって、
上記バックシートの裏面に請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール裏面用放熱シートが、その粘着剤層により貼設されていることを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−96989(P2011−96989A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252472(P2009−252472)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】