説明

太陽電池保護用積層体及びそれを用いて作製された太陽電池モジュール

【課題】太陽電池用セルの保護部材として用いられる封止材と裏面保護材との組み合わせにおいて、柔軟性と耐熱性および全光線透過率との良好なバランスが図られたフィルム層を有することによって、裏面保護材表層面での高反射率を確保し長期の耐候性と高発電効率実現し、太陽電池の軽量化、耐久性の向上に有効な太陽電池保護用積層体を提供する。
【解決手段】下記(1)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Aー1)及び下記(2)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Aー2)を含有する封止層(A)、並びに、裏面保護層(B)を有する太陽電池保護用積層体。
(1)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(2)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用モジュールの封止材と裏面保護材との組み合わせに関し、特に、光反射性に優れ、太陽電池の軽量化、耐久性、出力の向上に有効な太陽電池保護用積層体及びこの太陽電池用保護用積層体を用いた軽量、高耐久性の太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池が注目され、開発が進められている。太陽電池は、通常、前面保護材、封止材 、発電素子、封止材及び裏面保護材をこの順で積層し、加熱溶融させることにより接着一体化することで製造される。
太陽電池の裏面保護材としては、紫外線に対する耐久性に優れることが要求されるが、加えて、湿気ないし水の透過による内部の導線や電極の発錆を防止するために、防湿性に優れることが極めて重要な要件となる。また、裏面保護材として、発電素子側最表面に白色のポリプロピレン樹脂や、ポリエステル樹脂のフィルムなど反射率の高いフィルムを用いることで、入射光の反射率を高め発電効率を高めている。
封止材としては、太陽電池素子を保護する為の柔軟性や耐衝撃性、太陽電池モジュールが発熱した際の耐熱性、太陽電池素子へ太陽光が効率的に届く為の透明性(全光線透過率など)、耐久性、寸法安定性、難燃性、水蒸気バリア性等が主に要求される。
【0003】
従来、先の封止材としては、柔軟性、透明性等の観点から、材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと省略することがある)が広く用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。また、EVAに耐熱性を付与することを主な目的として架橋剤として有機過酸化物を用いた架橋が行われる。そのため架橋剤(有機過酸化物)や架橋助剤を混合したEVAシートを予め作製し、得られたシートを用いて太陽電池素子を封止するという工程が採用されている。該シートの製造段階では、有機過酸化物が分解しないような低い温度(通常、80〜100℃程度)での成形が必要であるため、押出成形の速度が上げ難く、また太陽電池素子の封止段階では、ラミネーターにおいて数分〜十数分かけてエア抜きや仮接着を行う工程と、オーブン内において有機過酸化物が分解する高い温度(通常、130〜150℃程度)で十数分〜60分程度かけて本接着(架橋)する工程とからなる2段階の工程を経る必要があった。そのため太陽電池モジュールの製造には工数と時間を要し、その製造コストを上昇させるという問題があった。
また、EVAシートを用いる太陽電池素子の封止材は、長期間における使用に際して、
EVAの加水分解等により発生する酢酸による太陽電池の回路腐食やその懸念があり、さらには、架橋剤や架橋助剤、あるいは発生した酢酸などが原因となり、太陽電池素子との
界面や前面保護材との界面、または、裏面保護材との界面で剥離が発生することがある等の問題があった。
【0004】
これらの問題点に対し、EVAシートを用いず、架橋工程が省略可能な太陽電池封止材として、例えば、特許文献3には、非晶性α−オレフィン重合体と結晶性α−オレフィン重合体を含有する樹脂組成物からなる太陽電池封止材が開示されており、具体的には、プロピレンを主成分とする重合体からなる樹脂組成物が用いられている。
また、特許文献4には、少なくとも一種のポリオレフィン系共重合体と、少なくとも一
種の結晶性ポリオレフィンからなるポリマーブレンドまたはポリマーアロイであることを
特徴とする太陽電池封止材が開示されており、具体的には、低融点のEVAと高融点のE
VAとのポリマーブレンド(実施例1参照)、エチレン−メタクリル酸共重合体と汎用の
結晶性ポリエチレンとのポリマーブレンド(実施例2参照)、エチレン−アクリル酸メチ
ル共重合体と汎用の結晶性ポリプロピレンとのポリマーブレンド(実施例3参照)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3978911号公報
【特許文献2】特許第3978912号公報
【特許文献3】特開2006−210905号公報
【特許文献4】特開2001−332750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3で用いられているプロピレンを主成分とする重合体からなる樹脂組成物では、透明性(全光線透過率:83.2%(実施例参照))が未だ不十分であった。また、プロピレンを主成分とする重合体は脆化温度が高く、低温特性も不十分であるという問題点もある。また、特許文献4で用いられているポリマーブレンドの例では、すべての組み合わせが必ずしも透明性が良いものではなく、特に、柔軟性と耐熱性および透明性とのバランス化においては未だ問題があった。すなわち、これらの特許文献3や特許文献4に開示された知見によっても、柔軟性、耐熱性、および透明性という全ての要求品質を同時に満たす封止材は得られていなかった。
【0007】
また、このような封止材を裏面保護材と組み合わせ使用する場合、裏面保護材へ到達する入射光が封止材により弱められ、更に反射光も弱められることにより、セルに回帰する光の強度が低下し、発電効率が大幅に低下するため、太陽電池の性能に重大な影響を与える。
このように、従来の太陽電池用裏面保護材と封止材の組み合わせに関する技術において、裏面保護材表層からの光反射率が低下することによる太陽電池性能低下を防止する有用な解決手段は提案されてなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、太陽電池用セルの保護部材として用いられる封止材と裏面保護材との積層体において、柔軟性と耐熱性および全光線透過率のいずれも十分優れ、これらの良好なバランスが図られた樹脂層を有することによって、裏面保護材表層面での高光反射性を確保することによって、太陽電池モジュールの長期の耐候性と高発電効率を実現することにある。
また、本発明の課題は、この太陽電池用封止材と裏面保護材との組み合わせにより、高効率の太陽電池モジュール及び太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体と特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体を含有する封止材を太陽電池用裏面保護シートと積層して用いることにより、太陽電池保護用積層体の柔軟性、耐熱性および高光反射性を同時に満足できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
下記(1)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Aー1)及び下記(2)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Aー2)を含有する封止層(A)、並びに、裏面保護層(B)を有する太陽電池保護用積層体に関する。
(1)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(2)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
また、本発明は、前記本発明の太陽電池用封止層と裏面保護層を有する積層体を用いて作製された太陽電池モジュール及び太陽電池に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池用封止層と裏面保護層を有する積層体において、該両層を特定の構成とすることによって、該層の柔軟性と耐熱性および全光線透過率とのバランスを図ることができる。これにより、裏面保護材表層面での高反射性を確保し長期の耐候性と高発電効率を実現し、太陽電池の軽量化、耐久性の向上に有効な太陽電池保護用積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
<封止層(A)>
本発明における封止層(A)とは、太陽電池において、裏面保護層(B)と積層して太陽電池用セルの封止に使用されるものである。封止層(A)としては、具体的には、高透明で可撓性に富み、耐熱性、加水分解性に優れることから、エチレン−α−オレフィン共重合体からなる樹脂層が用いられ、さらに、特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体と特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体を含有する樹脂組成物を使用することが高光線透過率、耐熱性、柔軟性の発現の観点から必要となる。
【0013】
ここで特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体とは下記(1)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)であり、特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体とは下記(2)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)である。
(1)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(2)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
【0014】
太陽電池用封止層の耐熱性は封止層(A)を構成するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)およびエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)により影響されるが、とくに、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の結晶融解ピーク温度が強く影響する。
【0015】
一般に、太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで、その温度が85〜90℃程度まで昇温するが、封止層(A)におけるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、本発明の太陽電池用封止層の耐熱性を確保することが出来る。一方、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の結晶融解ピーク温度の上限温度が145℃であれば、太陽電池素子の封止工程であまり高温にすることなく封止することができるため好ましい。また封止層(A)におけるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)及びエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の各々の結晶融解熱量が前記規定の範囲内であれば、本発明の太陽電池保護用積層体の高光反射性が確保され、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難いため好ましい。
【0016】
本発明における封止層(A)を構成するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)及びエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の各々に用いられるα−オレフィンの種類は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、本発明においては、同一である方が、混合した際の相溶性や太陽電池保護用積層体の光反射性、すなわち、太陽電池の光電変換効率が向上するため好ましい。
【0017】
本発明における封止層(A)の柔軟性は、適用される太陽電池の形状や厚み、設置場所などを考慮して適宜調整すれば良いが、例えば、動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)が1〜2000MPaであることが好ましい。太陽電池素子の保護の観点からは貯蔵弾性率(E´)は、より低い方が好ましいが、シート形状などで本発明の封止層(A)を採取した場合のハンドリング性やシート表面同士のブロッキング防止などを考慮すると、3〜1000MPaであることがより好ましく、5〜500MPaであることがさらに好ましく、10〜100MPaであることが特に好ましい。
【0018】
本発明における封止層(A)の耐熱性は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)およびエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)により影響されるが、とくに、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の結晶融解ピーク温度が強く影響する。
前述の通り、封止層(A)におけるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、本発明における封止層(A)の耐熱性を確保することが出来る。そして、本発明の太陽電池保護用積層体は封止層(A)の耐熱性と弾性率が部材を構成する層において最も低いことから、本発明の積層体の耐熱性については封止層(A)がその性能を決定する。
【0019】
本発明においては、封止層(A)の耐熱性は、厚み3mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)と厚み5mmのアルミ板(サイズ;縦120mm、横60mm)の間に厚みが0.5mmのシート状の封止層(A)を重ね、真空プレス機を用いて150℃、15分の条件で積層プレスした試料を作製し、該試料を100℃の恒温槽内で60度に傾斜して設置し500時間経過後の状態を観察し、ガラスが初期の基準位置からずれなかったものを○、ガラスが初期の基準位置からずれたり、シートが溶融したものを×として評価した。
【0020】
本発明における封止層(A)の全光線透過率は、適用する太陽電池の種類が、例えばアモルファスの薄膜系シリコン型である場合や、太陽電子素子に届く太陽光を遮らない部位に適用する場合には、あまり重視されないこともあるが、太陽電池の光電変換効率や各種部材を重ね合わせる時のハンドリング性などを考慮し、通常、85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明における封止層(A)の柔軟性、耐熱性および透明性については背反特性になり易い。具体的には、柔軟性を向上させるために用いる樹脂組成物の結晶性を低下させ過ぎると、耐熱性が低下し不十分となる。一方、耐熱性を向上させるために用いる樹脂組成物の結晶性を向上させ過ぎると、透明性が低下し不十分となる。本発明においては、これらのバランスを柔軟性の指標として動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)、耐熱性の指標として示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度および透明性の指標として全光線透過率を用いた場合、3つの指標は、貯蔵弾性率(E´)が1〜2000MPa、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の結晶融解ピーク温度が100℃以上、全光線透過率85%以上であることが好ましく、貯蔵弾性率(E´)が5〜500MPa、重合体(A−2)の結晶融解ピーク温度が105〜145℃、全光線透過率87%以上であることがさらに好ましく、貯蔵弾性率(E´)が10〜100MPa、重合体(A−2)の結晶融解ピーク温度が110〜145℃、全光線透過率90%以上であることが特に好ましい。
【0022】
上記封止層(A)の厚さは、50〜1000μm程度であり、取り扱いの点から、150〜750μmが好ましく、300〜500μmが更に好ましい。
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10min程度、好ましくは2〜50g/10min、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものが用いられる。ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性などを考慮して選択すればよい。例えば、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い値、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量を増大させる観点からMFRは、2〜50g/10minが好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものを用いればよい。
【0023】
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)は、条件(1)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/gを満足することが重要であり、好ましくは、5〜70J/g、さらに好ましくは、10〜65J/gである。該範囲内であれば、本発明の太陽電池封止材の柔軟性や透明性(全光線透過率)などが確保されるため好ましい。また、結晶融解熱量が0J/g以上であれば、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。ここで、該結晶融解熱量の参考値としては、汎用の高密度ポリエチレン(HDPE)が170〜220J/g程度、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が100〜160J/g程度である。
【0024】
また、本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)の結晶融解ピーク温度は、特に限定されるものではないが、通常、100℃未満であり、好ましくは30〜90℃である。ここで、該結晶融解ピーク温度の参考値としては、汎用の高密度ポリエチレン(HDPE)が130〜145℃程度、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が100〜125℃程度である。すなわち、本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)単独では、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/gを達成することは困難である。
【0025】
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「エンゲージ(Engage)」、「アフィニティー(Affinity)」、三井化学(株)製の商品名「タフマーA(TAFMER A)」、「タフマーP(TAFMER P)」、日本ポリエチレン(株)製の商品名「カーネル(Karnel)」等を例示することができる。
【0026】
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)は、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g(条件(2))を満足することが重要である。該結晶融解ピーク温度は好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上であり、上限は通常145℃である。また、結晶融解熱量は好ましくは10〜60J/g、さらに好ましくは15〜55J/gである。
【0027】
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10min程度、より好ましくは1〜50g/10min、さらに好ましくは1〜30g/10min、特に好ましくは1〜10g/10minであるものが用いられる。
【0028】
ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性などを考慮して選択すればよい。具体的には、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い方、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量を増大させる観点からMFRは、1〜30g/10minであるものが好適に用いられる。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、3〜50g/10minであるものが好適に用いられる。
【0029】
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)のブロック構造は、既述の条件(2)を満足すれば特に限定されるものではないが、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランス化の観点から、コモノマー含有率、結晶性、密度、結晶融解ピーク温度(融点Tm)、又はガラス転移温度(Tg)の異なる2つ以上、好ましくは3つ以上のセグメント又はブロックを含有するマルチブロック構造であることが好ましい。具体的には、完全対称ブロック、非対称ブロック、テ−パ−ドブロック構造(ブロック構造の比率が主鎖内で漸増する構造)などが挙げられる。該マルチブロック構造を有する共重合体の構造や製造方法については、国際公開第2005/090425号パンフレット(WO2005/090425)、国際公開第2005/090426号パンフレット(WO2005/090426)、および国際公開第2005/090427号パンフレット(WO2005/090427)などで詳細に開示されているものを採用することができる。
【0030】
本発明においては、前記マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体について、以下、詳細に説明する。
該マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体は、本発明において好適に使用でき、α−オレフィンとして1−オクテンを共重合成分とするエチレン−オクテンマルチブロック共重合体が好ましい。該ブロック共重合体としては、エチレンに対してオクテン成分が多く(約15〜20モル%)共重合されたほぼ非晶性のソフトセグメントと、エチレンに対してオクテン成分が少なく(約2モル%未満)共重合された結晶融解ピーク温度が110〜145℃である高結晶性のハードセグメントが、各々2つ以上存在するマルチブロック共重合体が好ましい。これらのソフトセグメントとハードセグメントの連鎖長や比率を制御することにより、柔軟性と耐熱性の両立を達成することができる。
該マルチブロック構造を有する共重合体の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(Infuse)」が挙げられる。
【0031】
次に、封止層(A)中におけるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A−1)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(A−2)の含有量は、柔軟性、耐熱性、透明性等の優れたバランスを有する観点から、それぞれ、好ましくは、50〜99質量%、1〜50質量%であり、より好ましくは、60〜98質量%、2〜40質量%であり、更に好ましくは、70〜97質量%、3〜30質量%である。
【0032】
次に、封止層(A)におけるこれらの共重合体の混合(含有)質量比は、特に制限されるものではないが、好ましくは(A−1)/(A−2)=99〜50/1〜50、より好ましくは、98〜60/2〜40、さらに好ましくは、97〜70/3〜30である。但し、(A−1)と(A−2)の合計を100質量部とする。ここで、混合(含有)質量比が上記範囲内であれば、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランスに優れた封止層(A)が得られやすいため好ましい。
【0033】
<裏面保護層(B)>
本発明における太陽電池裏面保護層は、太陽電池用熱可塑性樹脂シートまたは太陽電池用熱可塑性樹脂シート積層品であって、汚れや水蒸気などから太陽電池モジュールを保護するため使用される。
太陽電池裏面保護層(B)は、ポリオレフィン系樹脂層(B-1)を有することが好ましく、また、水蒸気の進入を防ぐこと、紫外線劣化を防止することから、それぞれの要求に応えるべく、ポリオレフィン系樹脂層(B-1)、防湿層(B-2)、耐候層(B-3)などの各層を接着剤を介して積層することがより好ましい。特に、裏面保護層まで到達した光を素子に戻し発電効率を向上させるため、ポリオレフィン系樹脂層として、光線反射率が80%以上の白色樹脂層を用いることが好ましい。
【0034】
裏面保護層(B)は上述の各樹脂層をポリウレタン系接着剤を用いて、100〜140℃の温度で接着剤を乾燥させ、0〜80℃の温度下、ドライラミネートにより貼り合わせて製造することができる。接着剤を十分飽和架橋度に到達させることの観点から、得られた積層体は30〜80℃の温度で、1〜7日間養生を行うことが好ましい。本発明の積層体は、このようなラミネート工程を経ても、防湿性および層間強度が劣下しない柔軟性と防湿性に優れたものとなる。
【0035】
裏面保護層(B)の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、30〜100μm程度であり、好ましくは40〜80μm程度あり、より好ましくは40〜60μm程度のシート状で用いられる。
【0036】
(ポリオレフィン系樹脂層(B一1))
ポリオレフィン系樹脂層としては、特に制限はないが、その主成分として、例えば、安価である点からポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン等ポリオレフィンなどの樹脂からなる樹脂層が利用できるが、可撓性に富み、加湿耐久性の点から、アイソタクチックポリプロピレン樹脂を主成分とする無延伸ポリプロピレン層が好ましい。裏面保護層(B)は、裏面保護層まで入射してきた光を反射させて太陽電池素子に戻し、電力変換効率を向上させることができるものであり、裏面保護層の最表面に積層されることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂層(B-1)は樹脂に白色顔料を練り混んだ白色樹脂層を使用することが好ましい。
【0037】
特に、ポリオレフィン系樹脂層(B-1)を本発明の封止層(A)と積層して使用する場合、封止層(A)がポリオレフィンを主成分とすることから、封止層-裏面保護層界面での光の回折を抑制すること、封止層との密着性を高めることから、ポリオレフィンを用いることが望ましい。
白色顔料としては、酸化チタンや酸化亜鉛が利用できる。上記樹脂に白色顔料を添加して好ましくは光線反射率が80%以上の白色樹脂フィルムとすることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂層(B-1)の厚さは、40〜200μm程度とするのが好ましく、耐部分放電圧特性を確保する観点から80〜180μmがより好ましい。
前記ポリオレフィン系樹脂層(B一1) の光線反射率は、後述する光線反射率測定方法で80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0038】
(防湿層(B一2))
本発明における防湿層(B一2)は、湿気、水の透過による内部の導線、電極の発錆等を防止するために用いられ、防湿性に優れ、好ましくは高透明であれば特に制限はないが、基材フィルムの少なくとも一方の面に無機酸化物のコーティング膜を少なくとも1層有する透明防湿層が好ましく用いられる。
【0039】
上記基材フィルムとしては、透明性に優れた熱可塑性高分子フィルムが好ましく、その材料としては、通常の包装材料に使用しうる樹脂であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体などのポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリレート樹脂、生分解性樹脂などが挙げられる。これらの中では、フィルム物性、コストなどの点から、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンが好ましい。中でも、フィルム物性の点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
【0040】
また、上記基材フィルムは、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0041】
上記基材フィルムとしての熱可塑性高分子フィルムは、上記の原料を用いて成形してなるものであるが、基材として用いる際は、未延伸であってもよいし延伸したものであってもよい。また、他のプラスチック基材と積層されていてもよい。
【0042】
かかる基材フィルムは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、原料樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、多層ダイを用いることにより、1種の樹脂からなる単層フィルム、1種の樹脂からなる多層フィルム、多種の樹脂からなる多層フィルム等を製造することができる。
【0043】
この未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向又はフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより、少なくとも一軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。延伸倍率は任意に設定できるが、150℃熱収縮率が、0.01〜5%、更には0.01〜2%であることが好ましい。中でもフィルム物性の点から、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムや、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートと他のプラスチックの共押出二軸延伸フィルムが好ましい。
【0044】
なお、上記基材フィルムには、無機薄膜との密着性向上のため、アンカーコート剤を塗布することが好ましい。アンカーコート剤としては、溶剤性又は水性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル変性樹脂、ビニルアルコール樹脂、ビニルブチラール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ニトロセルロース樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、メチレン基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂及びアルキルチタネート等を単独、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。また、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有したり、それらを上記樹脂と共重合させたものを使用することができる。
【0045】
アンカーコート層の形成方法としては、公知のコーティング方法が適宜採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレイあるいは刷毛を用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、蒸着フィルムを樹脂液に浸漬して行ってもよい。塗布後は、80〜200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥などの加熱乾燥や、赤外線乾燥などの公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させることができる。また、耐水性、耐久性を高めるために、電子線照射による架橋処理を行う事もできる。また、アンカーコート層の形成は、基材フィルムの製造ラインの途中で行う方法(インライン)でも、基材フィルム製造後に行う(オフライン)方法でも良い。
【0046】
防湿層(B-2)としては、該基材フィルムにアルミニウム等の金属のコーティング膜を形成したものも知られているが、アルミニウム等の金属では、太陽電池に適用した場合、電流がリークする場合があるため、シリカ・アルミナ等の無機酸化物のコーティング膜が好ましく用いられる。
【0047】
上記無機酸化物コーティング膜の形成方法としては、蒸着法、コーティング法などの方法がいずれも使用できるが、ガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、あるいは化学気相蒸着(CVD)などの方法が含まれる。物理気相蒸着法には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどが挙げられ、化学気相蒸着法には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
【0048】
無機酸化物コーティング膜を構成する無機物質としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、水素化炭素等、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物またはそれらの混合物が挙げられるが、好ましくは酸化珪素、酸化アルミニウム、水素化炭素を主体としたダイアモンドライクカーボンである。特に、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウムは、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。
【0049】
上記コーティング膜の厚さは、安定な防湿性能の発現の点から、40〜1000nmであることが好ましく、40〜800nmがより好ましく、50〜600nmが更に好ましい。また、上記基材フィルムの厚さは、一般に5〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から8〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。従って、上記防湿層(B一2)の厚さは、一般に6〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から9〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。
【0050】
(耐候層(B一3))
本発明における耐候層(B一3)は可撓性に富み、透明性、耐熱性、防湿性、紫外線耐久性に優れる性能を有するフィルムをいい、太陽電池裏面保護層の表面(暴露側)に用いられる。
耐候層の耐候性は、JIS K7350に準じてなされるサンシャインウェザーメーターによる耐候性試験において、力学物性や全光線透過率の低下が少ないものが好ましく、5000時間経過後の力学物性や全光線透過率の低下がないものがより好ましく、10000時間経過後の力学物性や全光線透過率の低下がないものが特に好ましい。
耐候層(B一3)の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂層、或いは、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂に紫外線吸収剤を練り込んだ樹脂組成物を成膜したものが好ましく用いられ、長期耐久性と高光線透過率の観点から、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)がより好ましく用いられる。なお、上記紫外線吸収剤としては、後述の紫外線吸収剤と同様のものが使用できる。上記樹脂は1種で用いることもできるが2種以上組合せて使用することもできる。
耐候層(B一3)の厚さは、一般に20〜200μm程度であり、フィルムの取り扱いやすさとコストの点から30〜120μmが好ましく、30〜80μmがより好ましい。
【0051】
<太陽電池保護用積層体>
本発明の太陽電池保護用積層体には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性など)や成形加工性あるいは経済性などをさらに向上させる目的で上述したエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Aー1)やエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Aー2)以外の樹脂を使用することができる。該樹脂としては、例えば、他のポリオレフィン系樹脂や各種エラストマー(オレフィン系、スチレン系など)、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基、シラノール基などの極性基で変性された樹脂および粘着付与樹脂などが挙げられる。
【0052】
該粘着付与樹脂としては、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン− インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体などが挙げられる。具体的には、石油樹脂としては、シクロペンタジエンまたはその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂があり、テルペン樹脂としてはβ−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が、また、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン樹脂などを例示することができる。また、該粘着付与樹脂は主に分子量により種々の軟化温度を有するものが得られるが、例えば、既述の共重合体(Aー1)、共重合体(Aー2)と混合した場合の相溶性、色調や熱安定性などの点から軟化温度が100〜150℃、好ましくは120〜140℃の脂環式石油樹脂の水素添加誘導体が特に好ましい。上述した共重合体(Aー1)、(Aー2)以外の樹脂を混合する場合は、通常、例えば、裏面保護層(B)を構成する各樹脂層中、樹脂組成物を100質量%とした場合、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0053】
また、太陽電池保護用積層体には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、光拡散剤、造核剤、顔料(例えば白色顔料)、難燃剤、変色防止剤などが挙げられる。本発明においては、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが後述する理由等から好ましい。また、本発明においては、例えば、高度の耐熱性を要求される場合は架橋剤および/または架橋助剤を配合してもよい。
【0054】
シランカップリング剤の例としては、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基のような不飽和基、アミノ基、エポキシ基などとともに、アルコキシ基のような加水分解可能な基を有する化合物を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例としては、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを例示することができる。本発明においては、接着性が良好であり、黄変などの変色が少ないこと等からγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。該シランカップリング剤の添加量は、太陽電池保護用積層体を構成する各樹脂層中、通常、0.1〜5質量%程度であり、0.2〜3質量%添加することが好ましい。また、シランカップリング剤と同様に、有機チタネート化合物などのカップリング剤も有効に活用できる。
【0055】
酸化防止剤としては、種々の市販品が適用でき、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、ホスファイト系など各種タイプのものを挙げることができる。モノフェノール系としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどを挙げることができる。ビスフェノール系としては、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,9,10−テトラオキサスピロ〕5,5−ウンデカンなどを挙げることができる。
【0056】
高分子フェノール系としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ビドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキスフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{(3,3′−ビス−4′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グルコールエステル、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トリフェノール(ビタミンE)などを挙げることができる。
硫黄系としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオプロピオネートなどを挙げることができる。
【0057】
ホスファイト系としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(モノおよび/またはジ)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどを挙げることができる。
【0058】
本発明においては、酸化防止剤の効果、熱安定性、経済性等からフェノール系およびホスファイト系の酸化防止剤が好ましく用いられ、両者を組み合わせて用いることがさらに好ましい。該酸化防止剤の添加量は、太陽電池保護用積層体を構成する各樹脂層中、通常、0.1〜1質量%程度であり、0.2〜0.5質量%添加することが好ましい。
【0059】
紫外線吸収剤としては、種々の市販品が適用でき、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5− クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0060】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2− ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。またトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。
該紫外線吸収剤の添加量は、太陽電池保護用積層体を構成する各樹脂層中、通常、0.01〜2.0質量%程度であり、0.05〜0.5質量%添加することが好ましい。
【0061】
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。
【0062】
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ}]、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などを挙げることができる。該ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、太陽電池保護用積層体を構成する各樹脂層中、通常、0.01〜0.5質量%程度であり、0.05〜0.3質量%添加することが好ましい。
【0063】
本発明に用いられる封止層(A)、裏面保護層(B)の各層であるポリオレフィン系樹脂層(B―1)、防湿層(B―2)及び耐候層(B―3)の各々の製膜方法としては、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性等の面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いる樹脂組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね130〜300℃、好ましくは、150〜250℃である。シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤等の各種添加剤は、予め樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給しても良いし、予め全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給しても良いし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製し供給してもかまわない。
【0064】
本発明の太陽電池保護用積層体の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、0.40〜2.3mm程度であり、好ましくは0.5〜1.6mm程度あり、より好ましくは0.60〜1.0mm程度のシート状で用いられる。
上記積層体は、上述の製膜された封止層(A)、裏面保護層(B)を、ポリオレフィン系樹脂層(B-1)面を封止層(A)面と積層し、常法に従って、真空ラミネーターで温度120〜150℃、脱気時間2〜15分、プレス圧力0.5〜1atm、プレス時間8〜45分で加熱加圧圧着することにより製造することができる。
【0065】
なお、本発明においては、太陽電池保護用積層体は、発電素子側から、封止層(A)、裏面保護層(B)、の順に配置されるのが好ましい。本発明においては、このような構成により、防湿層(B-2)の劣化を防止し、長期の高い防湿性と耐候性を達成することができる。
【0066】
本発明における太陽電池保護用積層体の封止材面からの入射光に対する反射率は、適用する太陽電池の種類、例えばアモルファスの薄膜系シリコン型などや太陽電子素子に届く太陽光を遮らない部位に適用する場合には、あまり重視されないこともあるが、太陽電池の光電変換効率や各種部材を重ね合わせる時のハンドリング性などを考慮し、80%以上であることが好ましく、特に高発電効率を得るためには82%以上であることがさらに好ましい。反射率は、後述するように、JIS Z8722に準じて測定することができる。
【0067】
<太陽電池モジュール、太陽電池の製造方法>
このような太陽電池保護用積層体を用いて本発明の太陽電池モジュール及び/又は太陽電池を製造するには、従来の封止材、裏面保護材の代りに本発明の太陽電池保護用積層体を用いて公知の方法により、作成すれば良い。
【0068】
このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができ、例えば、前面保護材、前面封止材、太陽電池素子と、本発明の太陽電池保護用積層体とを用いて作製された太陽電池モジュールが挙げられ、具体的には、太陽電池用前面保護材/封止材/太陽電池素子/本発明の太陽電池保護用積層体の構成のものなどを挙げることができる。
【0069】
太陽電池素子としては、例えば、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体型、色素増感型、有機薄膜型等が挙げられる。
【0070】
本発明の太陽電池保護用積層体を用いて作製された太陽電池モジュールを構成する各部材については、特に限定されるものではないが、前面保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単層もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレスなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの単層もしくは多層の保護材を挙げることができる。前面および/又は裏面の保護材、封止材の表面には、封止材や他の部材との接着性を向上させるために、その少なくとも一方の面にプライマー処理、コロナ処理やプラズマ処理などの公知の表面処理を施すことができる。
【0071】
本発明の太陽電池モジュール及び/又は太陽電池は、前面保護材、封止材、発電素子、本発明の保護用積層体を、常法に従って、真空ラミネーターで温度120〜150℃ 、脱気時間2〜15分、プレス圧力0.5〜1atm、プレス時間8〜45分で加熱加圧圧着することにより容易に製造することができる。
【0072】
なお、本発明においては、「層」と称する場合は、「フィルム」及び「シート」を含むことがあるものとし、「フィルム」あるいは「シート」と称する場合でも「層」を含むことがあるものとする。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例及び比較例により本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるシートについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。
【0074】
(物性測定)
以下、(1)〜(4),(6)は、各封止層の物性を測定したものであり、(5)は当該封止層と裏面保護材との積層体について測定したものである。
(1)結晶融解ピーク温度(Tm)
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)を求めた。
【0075】
(2)結晶融解熱量(ΔHm)
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解熱量(ΔHm)(J/g)を求めた。
【0076】
(3)貯蔵弾性率測定
アイティ計測(株)製の粘弾性測定装置、商品名「粘弾性スペクトロメーターDVA−200」を用いて、試料(縦4mm、横60mm)を振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmで横方向について、−150℃から150℃まで測定し、得られたデータから20℃における貯蔵弾性率(E´)(MPa)を測定し、柔軟性を確認した。
【0077】
(4)全光線透過率
厚み3mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)2枚の間に厚み0.5mmの各封止層を重ね、真空プレス機を用いて、150℃、15分の条件で積層プレスした試料を作製し、JIS K7105に準じて全光線透過率を測定した。
【0078】
(5)光線反射率
下記に記載の裏面保護層単体の光線反射率および実施例、比較例記載の封止層裏面保護層積層品1〜9の光線反射率を測定した(JIS Z 8722準拠の日本電色工業(株)製 Spectro Color Meter SQ2000を用い、C光源にて550nmにて)。また、裏面保護層単体の光線反射率と封止層裏面保護層積層品の光線反射率とを比較し、反射率低下度[裏面保護層単体光線反射率―封止層裏面保護層積層品の光線反射率)/裏面保護層単体光線反射率]を下記の基準で評価した結果も併記した。
(◎)反射率低下度が5.0%未満
(○)反射率低下度が5.0%以上、6.0%未満
(×)反射率低下度が6.0%以上、あるいは、明らかに白濁している場合(未測定)
【0079】
(6)耐熱性
厚み3mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)2枚の間に以下に記載する各封止層を重ね、真空プレス機を用いて、150℃、15分の条件で積層プレスした試料を作製し、該試料を100℃の恒温槽内で60度に傾斜して設置し500時間経過後の状態を観察し、下記の基準で評価した。
(○)ガラスが初期の基準位置からずれなかったもの
(×)ガラスが初期の基準位置からずれたり、シートが溶融したもの
【0080】
(構成フィルム)
ポリオレフィン系樹脂層(B―1)
アイソタクチックポリプロピレン樹脂に、白色化剤としての酸化チタン(8質量%)と紫外線吸収剤としての超微粒子酸化チタン(粒子径、0.01〜0.06μm、3質量%)とを添加し、その他、所要の添加剤を添加し、十分に混練してポリプロピレン樹脂組成物を調製し、次いで、該ポリプロピレン樹脂組成物を押出機で押し出して、厚さ90μmの無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを製造し、更に、該無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの片面に、常法に従って、コロナ放電処理を施してコロナ処理面を形成した。得られた樹脂フィルムの光線反射率は86.8%であった。
【0081】
防湿層(B―2)
12μmポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに、厚み50nmのシリカを蒸着した三菱樹脂製テックバリアLXを使用した。上述の方法で測定した防湿性は0.2[g/(m2・day)]であった。
【0082】
耐候層(B―3)
アルケマ社製ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系フィルムKynar 302-PGM-TR(厚み:30μm)を使用した。
【0083】
裏面保護層(B)
三井化学ポリウレタン株式会社製A1102、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアナート成分を含む硬化剤として三井化学ポリウレタン株式会社製A3070を使用し、重量比で16:1となるように混合し、固形分濃度が30%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液を調製した。
続いて、防湿層(B−2)のシリカ面に本接着剤塗液を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、ドライラミネートによって耐候層(B−3)と貼合した。
更にポリオレフィン系樹脂層(B−1)のコロナ処理面に本接着剤塗液を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、先の貼合フィルムの防湿層とドライラミネートによって貼合した。その後40℃x5日間養生し、厚み144μmの裏面保護層を作製した。
ポリオレフィン系樹脂層面の反射率を上述の方法を測定したところ550nmにて86.8%であった。
【0084】
封止層1
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Bー1)として、エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:エンゲージ(Engage)8200、オクテン含有量:10.1モル%(31質量%)、MFR:5、Tm:65℃、ΔHm:53J/g)(以下、α−1と略する)を95質量部とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Bー2)として、エチレン−オクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズ(INFUSE)D9100.05、オクテン含有量:12.8モル%(37質量%)、MFR:1、Tm:119℃、ΔHm:38J/g)(以下、β−1と略する)とを5質量部の割合で混合した樹脂組成物をTダイを備えた40mmφ 単軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練し、20℃のキャストロールで急冷製膜することにより厚みが0.5mm(500μm)の封止層1を得た。
【0085】
封止層2
封止層1の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(α−1)80質量部とエチレン−オクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズD9507.15、オクテン含有量:16.4モル%(44質量%)、MFR:5、Tm:123℃、ΔHm:21J/g)(以下、β−2と略する)20質量部との樹脂組成物に変更した以外は、封止層1と同様にして、厚みが0.5mm(500μm)の封止層2を得た
【0086】
封止層3
封止層1の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(α−1)をエチレン−プロピレン−ヘキセン3元ランダム共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名:カーネル(Kaernel)KJ640T、プロピレン含有量:7.4モル%(10質量%)、ヘキセン含有量:4.4モル%(10質量%)、MFR:30、Tm:53℃、ΔHm:58J/g)(以下、α−2と略する)に変更した以外は、封止層1と同様にして、厚みが0.5mm(500μm)の封止層3を得た。
【0087】
封止層4
封止層1の調製において、シートの厚みを0.3mm(300μm)に変更した以外は、封止層1と同様にして封止層4を得た。
【0088】
封止層5
封止層1の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(α−1)100質量部に変更した以外は、封止層1と同様にして、厚みが0.5mm(500μm)の封止層5を得た。
【0089】
封止層6
封止層1の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(β−1)を汎用の結晶性ポリエチレン樹脂であるエチレン−オクテンランダム共重合体((株)プライムポリマー製、商品名:モアテック0238CN、オクテン含有量:1モル%(4質量%)、MFR:2.1、Tm:121℃、ΔHm:127J/g)(以下、P−1と略する)に変更した以外は、封止層1と同様にして、厚みが0.5mmの(500μm)封止層6を得た。
【0090】
封止層7
封止層1の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(P−1)100質量部に変更した以外は、封止層1と同様にして、厚みが0.5mm(500μm)の封止層7を得た。
【0091】
封止層8
Etimex社製EVA封止材496を用いた。なお、本EVA封止材単体を下記実施例に示す方法で真空ラミネートし、その後、EVA封止材のみを取り出し、評価を行った。
【0092】
封止層9
東洋インク製ウレタン(PU)系接着剤IS801と硬化剤CR001を10:1の比で配合し固形分塗工量10g/m2となるようにシリコーン離型PETフィルムに塗布し、40℃、4日間養生した。その後、接着剤層のみを取り出し、評価を行った。

以上の封止層1〜9の各々について、その厚み、組成、全光線透過率、耐熱性及び柔軟性を前記の方法で測定し、以下の表1にまとめて示す。
【0093】
【表1】

【0094】
実施例1
前記調製した封止層1と裏面保護層を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃、15分の条件で定法によりこの順に積層し封止層裏面保護層積層品1を作製した。その後、作製した封止層裏面保護層積層品1を使用して、前述の方法で反射率を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
実施例2
前記調製した封止層2と裏面保護層を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃、15分の条件で定法によりこの順に積層し封止層裏面保護層積層品2を作製した。その後、作製した封止層裏面保護層積層品2を使用して、前述の方法で反射率を測定した。結果を表2に示す。
【0096】
実施例3
前記調製した封止材3と裏面保護材を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃、15分の条件で定法によりこの順に積層し封止層裏面保護層積層品3を作製した。その後、作製した封止層裏面保護層積層品3を使用して、前述の方法で反射率を測定した。結果を表2に示す。
【0097】
実施例4
前記調製した封止層4と裏面保護層を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃、15分の条件で定法によりこの順に積層し封止層裏面保護層積層品4を作製した。その後、作製した封止層裏面保護層積層品4を使用して、前述の方法で反射率を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
比較例1
前記調製した封止層5と裏面保護層を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃、15分の条件で定法によりこの順に積層し封止層裏面保護層積層品5を作製した。その後、作製した封止層裏面保護層積層品5を使用して、前述の方法で反射率を測定した。結果を表2に示す
【0099】
比較例2
前記調製した封止層6と裏面保護層を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃、15分の条件で定法によりこの順に積層し封止層裏面保護層積層品6を作製した。その後、作製した封止層裏面保護層積層品6を使用して、前述の方法で反射率を測定した。結果を表2に示す
【0100】
比較例3
前記調製した封止層7と裏面保護層を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃、15分の条件で定法によりこの順に積層し封止層裏面保護層積層品7を作製した。その後、作製した封止層裏面保護層積層品7を使用して、前述の方法で反射率を測定した。結果を表2に示す
【0101】
比較例4
前記調製した封止層8と裏面保護層を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃、15分の条件で定法によりこの順に積層し封止層裏面保護層積層品8を作製した。その後、作製した封止層裏面保護層積層品8を使用して、前述の方法で反射率を測定した。結果を表2に示す
【0102】
比較例5
前記調製した封止層9と裏面保護層を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃、15分の条件で定法によりこの順に積層し封止層裏面保護層積層品9を作製した。その後、作製した封止層裏面保護層積層品9を使用して、前述の方法で反射率を測定した。結果を表2に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
このようにして得られた本発明の封止層裏面保護層積層品1〜4は、いずれも柔軟性と耐熱性を兼備し、反射率にも優れるものであった。
また、本発明の封止層裏面保護層積層品1〜4は、表2に示されるように、防湿層を保護するために必要な柔軟性と耐熱性および反射率との良好なバランスが図られた、十分な厚みを有したものであった。したがって、実施例1〜4の封止層裏面保護層積層体は、柔軟性と耐熱性を兼備し、反射性にも優れるのみならず、その高反射率を獲得することにより、長期における高温・傾斜条件下での使用に耐え、発電効率の高い太陽電池モジュールを実現できるものである。
【0105】
一方、封止層5、9は、耐熱性に劣り、高温下・傾斜条件で使用されることによれば、基準値からずれたりシートが溶融したりすることが明らかとなった。したがって、封止層5、9を用いて作製された封止層裏面保護層積層体においては、封止層がその役割を果たしきれず、その結果、実際の高温での太陽電池素子の稼動時には防湿性や反射率の低下が予見される。すなわち、高温下・傾斜条件での使用が見込まれる太陽電池用部材の素材としては好ましくない。また、封止層6〜8は、柔軟性(貯蔵弾性率)に劣り、モジュールへの衝撃などに対する保護が不十分であることが示された。したがって、封止層6〜8を用いて作製された封止層裏面保護層積層品においても、封止層がその役割を果たしきれず、防湿層の保護が十分ではないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Aー1)及び下記(2)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Aー2)を含有する封止層(A)、並びに、裏面保護層(B)を有する太陽電池保護用積層体。
(1)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(2)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
【請求項2】
前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Aー1)及びエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Aー2)の各々におけるα−オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン及び1−オクテンからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の太陽電池保護用積層体。
【請求項3】
前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Aー1)及び前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Aー2)を構成するα−オレフィンの種類が同一である、請求項1又は2に記載の太陽電池保護用積層体。
【請求項4】
前記裏面保護層(B)が、少なくともポリオレフィン系樹脂層(B一1)を有する積層体である請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池保護用積層体。
【請求項5】
前記裏面保護層(B)が、少なくとも ポリオレフィン系樹脂層(B一1)、防湿層(B一2)、及び耐候層(B一3)の3層を有する積層体である請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池保護用積層体。
【請求項6】
前記裏面保護層(B)に含まれる前記ポリオレフィン系樹脂層(B一1)が、光線反射率80%以上の白色樹脂層である、請求項4又は5に記載の太陽電池保護用積層体。
【請求項7】
前記防湿層(B-2)が、樹脂からなる基材フィルムの少なくとも一方の面に、無機酸化物コーティング膜を少なくとも1層有するものである請求項5又は6に記載の太陽電池保護用積層体。
【請求項8】
前記基材フィルムがポリエステル、ポリアミド、及びポリオレフィンより選ばれる少なくとも1つの樹脂を有するものである請求項7に記載の太陽電池保護用積層体。
【請求項9】
前記耐候層(B-3)が、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート(PEN)より選ばれる少なくとも1つの樹脂に紫外線吸収剤を含有する樹脂組成物を成膜したもの、又はフッ素系樹脂層である請求項5〜8のいずれかに記載の太陽電池保護用積層体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の太陽電池保護用積層体を用いて作製された太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2012−148557(P2012−148557A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275608(P2011−275608)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】