説明

太陽電池用連続焼成炉

【課題】 太陽電池用セルを省エネルギーで連続的に焼結すること可能な太陽電池用連続焼成炉を実現する。
【解決手段】 電極が印刷されたウェーハを予熱する予熱ゾーン41内、ウェーハを本加熱する第1・第2の本加熱ゾーン42,43内およびウェーハを冷却する冷却ゾーン44内をウェーハを載置して搬送する耐熱搬送ベルト30を配設する。予熱ゾーン41内における耐熱搬送ベルト30の上方の部位に、近赤外線ヒータ60を配設する。第1・第2の本加熱ゾーンにおける耐熱搬送ベルトの上方および下方の部位に、近赤外線ヒータ60を配設する。耐熱搬送ベルト30上にウェーハを移載して供給する供給ベルト20aを配設する。耐熱搬送ベルト30上から移載されたウェーハを冷却ゾーン44から搬出する搬出ベルト20bを配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池用連続焼成炉に関する。具体的には、結晶系シリコン・ウェーハ上に厚膜印刷方式により導電性ペーストを用いて電極が形成された太陽電池用セルを、省エネルギーで連続的に焼結することができる太陽電池用連続焼成炉を提供せんとするものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の製造においては、銀ペーストなどの導電性ペーストを用いてスクリーン印刷方式により電極を印刷した結晶系シリコン・ウェーハを、これを150℃前後で一定時間にわたって乾燥した後、850℃前後で焼成炉により焼結することが行われる。
【0003】
そこで、従来より用いられている太陽電池用連続焼成炉の構成を、図4に示し説明する。ここで、図4は、この従来例の構成を示す、一部を断面表示した側面図である。
【0004】
図4において、110は、電極が印刷されたウェーハを搬送するための耐熱性を有するメッシュ・ベルトである耐熱搬送ベルトであり、その素材には、ニッケルクロムなどが用いられる。この耐熱搬送ベルト110は、駆動ローラ120により駆動され、各誘導ローラ121,122に誘導されて、ベルト面が部分的に外装体100より露出して外装体100内を図面上で時計方向に走行する。外装体100は、耐熱搬送ベルト110が露出して走行する部分を除いて焼成炉全体を囲んでいる。
【0005】
外装体100の上方内部には、対向する2つの箱体状の断熱材130a,130bにより囲まれた、ウェーハが内部を走行する空間が形成されている。この空間は、耐熱搬送ベルト110の上流側より、搬送されてきたウェーハを予熱するための予熱ゾーン131、予熱されたウェーハを本加熱するための本加熱ゾーン132、および加熱されたウェーハを冷却するための冷却ゾーン133の3つのゾーンに仕切られている
【0006】
最も上流側の予熱ゾーン131には、走行する耐熱搬送ベルト110の上方の部位に、ウェーハを加熱するための近赤外線ヒータ140が配設されている。また、予熱ゾーン131に続く本加熱ゾーン132には、耐熱搬送ベルト110の上方のみならず下方の部位にも、近赤外線ヒータ140が配設されている。この本加熱ゾーン132において、ウェーハの表裏両面を同時に加熱して焼結する。
【0007】
これに対して、最も下流側の冷却ゾーン133は、空気冷却の空間であって加熱手段は配設されておらず、ここより搬出されたウェーハを急速冷却するための2つのファン150が、ベルト面が外装体100より露出している耐熱搬送ベルト110の上方に配設されている。なお、予熱ゾーン131、本加熱ゾーン132および冷却ゾーン133のそれぞれの上部には、加熱したウェーハにおける電極材料からの蒸発物(有機溶剤を含むバインダー)を外部に排出するための排気ダクト160が、外装体100を貫通して配設されている。
【0008】
他方、外装体100の下方内部には、ウェーハを搬送することにより耐熱搬送ベルト110に付着した汚れを洗浄するための、水が充填された超音波洗浄機170が配設されている。
【0009】
以上のように構成された焼成炉により、電極が印刷されたウェーハを焼結する場合は、図示されてはいない乾燥炉から排出された、印刷電極が乾燥したウェーハを、これを載置して走行する、ベルト面が露出している耐熱搬送ベルト110の最も上流側の部分に移載させる。
【0010】
耐熱搬送ベルト110に移載したウェーハは、耐熱搬送ベルト110により搬送されて、まず予熱ゾーン131内を走行する。これにより、ウェーハは加熱されて一定温度まで上昇する。予熱ゾーン131内を走行することにより加熱されたウェーハは、温度が例えば約850℃前後の本加熱ゾーン132内に進入して加熱され、これにより焼結する。
【0011】
その後、本加熱ゾーン132内で加熱されて焼結したウェーハは、冷却ゾーン133内を走行することにより温度が下降して冷却ゾーン133より搬出され、冷却ファン150の駆動によりさらに冷却されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図4に示した従来例によると、耐熱搬送ベルト110が、冷却ゾーン133より出てから予熱ゾーン131に入るまでの間に、高温加熱されたベルト・エネルギーが失われてしまう。すなわち、冷却ゾーン133から予熱ゾーン131までの距離があるうえに、その中途において耐熱搬送ベルト110を洗浄するために、超音波洗浄機170内に充填された水の中を通る。その結果、予熱ゾーン131および本加熱ゾーン132における所要の昇温能力を確保するためには、大量の電力消費と長い加熱時間を必要とすることになる。
【0013】
また、図4に示した従来例では、長尺の耐熱搬送ベルト110を使用しているが、この耐熱搬送ベルト110を高温による消耗などで交換する必要があるときは、長尺(12m前後)の耐熱搬送ベルト110全体を交換しなければならない。しかし、耐熱搬送ベルト110の素材には、ニッケルクロムなどの高価格の金属が用いられている。したがって、耐熱搬送ベルト110の交換は高コストとなり、焼成炉のランニング・コストが高くなってしまうことになる。以上のような解決すべき課題が、図4に示した従来例にはあった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、上記課題を解決するために、本発明はなされたものである。そのために、本発明では、つぎのような手段を用いるようにした。すなわち、部分的に着脱可能な断熱材により囲まれて形成される、電極が印刷されたウェーハを予熱するための予熱ゾーン内、予熱されたウェーハを本加熱するための少なくとも1つの本加熱ゾーン内および本加熱されたウェーハを冷却するための冷却ゾーン内をウェーハを載置して搬送するための、耐熱材料を用いた耐熱搬送ベルトを配設する。予熱ゾーン内における耐熱搬送ベルトの上方の部位に、ウェーハを予熱するための加熱手段を配設する。少なくとも1つの本加熱ゾーンにおける耐熱搬送ベルトの上方および下方の部位に、ウェーハを本加熱するための加熱手段を配設する。耐熱搬送ベルト上にウェーハを移載して供給するための供給ベルトを配設する。耐熱搬送ベルト上から移載されたウェーハを冷却ゾーンから搬出するための搬出ベルトを配設する。以上のような手段を、本発明では用いるようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるならば、耐熱搬送ベルトが、本加熱ゾーンのみを巡回転し、冷却ゾーンより出てから予熱ゾーンに入るまでの距離が短い。しかも、耐熱搬送ベルトが焼成炉の外装体から露出することもなく、また、水が充填された超音波洗浄機内を通ることもない。すなわち、耐熱搬送ベルトの高温加熱されたベルト・エネルギーが失われることがない。その結果、予熱ゾーンおよび本加熱ゾーンにおける所要の昇温能力を確保するうえで、電力消費の節減化および加熱時間の短縮化を図ることができ、省エネルギーの要請に応えることができる。
【0016】
また、図4に示した従来例では、単一の長尺の搬送ベルト使用しているため、高温による消耗などで搬送ベルトを交換する必要があるときは、高価格の長尺の搬送ベルト全体(約12m前後)を交換しなければならないのに対して、本発明による焼成炉では、耐熱搬送ベルト(約5m前後)のみを交換すれば足りる。すなわち、ベルト交換による高コストを回避することができ、焼成炉のランニング・コストの低廉化を実現することが可能となる。したがって、本発明によりもたらされる効果は、実用上極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す、一部を断面表示した側面図である。
【図2】図1に示した供給ベルト、耐熱ベルトおよび搬出ベルトを傾斜して配設する構成を示す側面図である。
【図3】図1に示した焼成炉による昇温能力を示すヒート・カーブ図である。
【図4】従来例の構成を示す、一部を断面表示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による太陽電池用連続焼成炉は、部分的に着脱可能な断熱材により囲まれて形成される、電極が印刷されたウェーハを予熱するための予熱ゾーン内、予熱されたウェーハを本加熱するための第1および第2の本加熱ゾーン内および本加熱されたウェーハを冷却するための冷却ゾーン内をウェーハを載置して搬送するための、ニッケルクロムなどの耐熱性を有する材料からなる耐熱搬送ベルトを配設する。予熱ゾーン内における耐熱搬送ベルトの上方の部位に、ウェーハを予熱するための近赤外線ヒータを配設する。第1および第2の本加熱ゾーンにおける耐熱搬送ベルトの上方および下方の部位に、ウェーハを本加熱するための近赤外線ヒータを配設する。耐熱搬送ベルト上にウェーハを移載して供給するための供給ベルトを配設する。耐熱搬送ベルト上から移載されたウェーハを冷却ゾーンから搬出するための搬出ベルトを配設する。以下、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の一実施例の構成を、図1に示し説明する。ここで、図1は、本実施例における太陽電池用連続焼成炉の構成を示す、一部を断面表示した側面図である。
【0020】
図1において、本実施例における太陽電池用連続焼成炉では、図4の従来例が単一の耐熱搬送ベルト110を用いているのとは異なり、つぎの3つのメッシュ・ベルトを用いている。
a.断熱材40,50〜52により囲まれた空間内を、駆動ローラ31により駆動され各誘導ローラ32に誘導されて図面上で時計方向に走行する耐熱搬送ベルト30
b.駆動ローラ21により駆動され誘導ローラ22により誘導されて、ウェーハを載置して走行するベルト面のほぼ全体が外装体10より露出して図面上で時計方向に走行する、耐熱搬送ベルト30にウェーハを移載させるための供給ベルト20a
c.耐熱搬送ベルト30上から移載したウェーハを焼成炉から搬出するための搬出ベルト20b
【0021】
耐熱搬送ベルト30は、高温に加熱された空間内を走行するため、ニッケルクロムなどの耐熱性に優れた金属を素材に用いている。これに対して、供給ベルト20aおよび搬出ベルト20bには、常温下で走行するため、例えばステンレス製の細めのベルトが使用される。
【0022】
ここで、耐熱搬送ベルト30が高温による消耗により交換する必要がある場合は、外装体10に設けられている開閉扉(図示せず)を開けて、新しい耐熱搬送ベルト30と交換することができる。すなわち、図4に示した従来例とは異なり、ベルト交換は、高価格である耐熱搬送ベルト30の部分のみという必要最小限の範囲にとどめることができる。
【0023】
以上の供給ベルト20a、耐熱搬送ベルト30および搬出ベルト20bは、ウェーハを載置して走行するベルト面を同一平面上に配設するのではなく、段差を設けて階段状に配設してもよく、さらには、若干の傾斜角(3〜10°)をもって、図2(a)に示すように走行方向に向かって下方に傾斜させて、または、図2(b)に示すように上方に傾斜させて配設するようにしてもよい。
【0024】
ウェーハを高温に加熱すると、ウェーハの上部が電極材料により開口した椀状に湾曲して回転することがある。ウェーハが回転してしまうと、耐熱搬送ベルト30から下流側の搬出ベルト20bへのウェーハの移載が円滑に行われなくなる。そこで、供給ベルト20a、耐熱搬送ベルト30および搬出ベルト20bを段差状に配設し、ウェーハがベルト面のエッジから押し出されて落下して下流側のベルト面に移載するようにすれば、ウェーハの移載の確実性を確保することができる。なお、加熱されて湾曲したウェーハは、温度が下がると平坦な状態に戻る。
【0025】
つぎに、耐熱搬送ベルト30が走行する断熱材40,50〜52が形成する空間は、ウェーハを予熱するための予熱ゾーン41と、予熱されたウェーハを本加熱するための第1の本加熱ゾーン42および第2の本加熱ゾーン43と、加熱されたウェーハを冷却するための冷却ゾーン44とに仕切られている
【0026】
予熱ゾーン41には、耐熱搬送ベルト30の上方の部位に、ウェーハを加熱するための近赤外線ヒータ60が配設されている。第1および第2の本加熱ゾーン42,43、には、ウェーハの表裏両面を加熱して焼結するために、耐熱搬送ベルト30の上方および下方に近赤外線ヒータ60が配設されている。
【0027】
また、予熱ゾーン41よりも上流側の近赤外線ヒータ60が配設されていないゾーン、予熱ゾーン41、第1および第2の本加熱ゾーン42,43および冷却ゾーン44のそれぞれの上部には、排気ダクト70が、外装体10を貫通して配設されている。
【0028】
なお、耐熱ベルト30の下方に配設された断熱材50〜52のうち、中央の断熱材51は、着脱可能に配設されており、下方に取り外すことができる。このような構成を用いているのは、本焼成炉の使用に伴い耐熱ベルト30からウェーハの破砕片などが落下して堆積したような場合に、中央の断熱材51を取り外して、本焼成炉のメンテナンス時にウェーハの破砕片などを除去するためである。ウェーハの破砕片などの除去作業は、外装体10に配設されている開閉扉(図示せず)を開けて行う。
【0029】
以上のように構成された焼成炉により、電極が印刷されたウェーハを焼結する場合は、乾燥炉から排出された、印刷電極が乾燥したウェーハを、ウェーハを載置して走行するベルト面が露出している供給ベルト20aの最も上流側の部分に移載させる。
【0030】
供給ベルト20aに移載したウェーハは、耐熱搬送ベルト30に向けて搬送されて、耐熱搬送ベルト30上に移載する。耐熱搬送ベルト30上に移載したウェーハは、予熱ゾーン41内を走行して加熱され、一定温度まで上昇する。
【0031】
予熱ゾーン41内を走行することにより加熱されたウェーハは、第1および第2の本加熱ゾーン42,43内に進入して加熱され、これにより焼結する。
【0032】
その後、加熱されて焼結したウェーハは、冷却ゾーン44内を走行することにより温度が下降して、搬出ベルト20bに移載する。搬出ベルト20bに移載したウェーハは、外装体10より搬出され、所定距離搬送されて焼成炉より排出されることになる。
【0033】
図3は、図1に示した焼成炉によった場合の昇温能力を示すヒート・カーブ図であり、破線部分は、図4に示した従来例によった場合の昇温能力を示している。このヒート・カーブ図から明らかなように、本発明による焼成炉によれば、図4の従来例よりも短時間で所要のピーク値に到達するので、高い昇温能力を得ることができる。
【0034】
太陽電池のセル特性を向上させるためには、短時間で温度のピーク値に到達して焼成することが重要であり、このような要請に本発明による焼成炉は充分に応えることができるものである。
【0035】
また、第1および第2の本加熱ゾーン42,43の温度をそれぞれ制御することにより、太陽電池の電極を形成する導体材料の特性に応じた理想的なヒート・カーブとなるようにすることもできる。
【0036】
以上においては、ウェーハを本加熱するためのゾーンとして2つの本加熱ゾーン42,43を設ける場合について説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。少なくとも1つの本加熱ゾーンを設ける場合について、本発明は適用され得るものである。
【0037】
また、ウェーハを高温加熱して焼結するための加熱手段として、近赤外線ヒータを用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限られるものではない。その他にも、例えば、遠赤外線ヒータやパネル・ヒータなどを用いる場合についても、本発明は適用し得るものである。
【符号の説明】
【0038】
10 外装体
20a 供給ベルト
20b 搬出ベルト
21 駆動ローラ
22 誘導ローラ
30 耐熱搬送ベルト
31 駆動ローラ
32 誘導ローラ
40 断熱材
41 予熱ゾーン
42,43 本加熱ゾーン
44 冷却ゾーン
50,51,52 断熱材
60 近赤外線ヒータ
70 排気ダクト
100 外装体
110 耐熱搬送ベルト
120 駆動ローラ
121,122 誘導ローラ
130a,130b 断熱材
131 予熱ゾーン
132 本加熱ゾーン
133 冷却ゾーン
140 近赤外線ヒータ
150 冷却ファン
160 排気ダクト
170 超音波洗浄機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に着脱可能な断熱材(40,50〜52)により囲まれて形成される、電極が印刷されたウェーハを予熱するための予熱ゾーン(41)内、前記予熱ゾーンにおいて予熱された前記ウェーハを本加熱するための少なくとも1つの本加熱ゾーン(42,43)内および前記少なくとも1つの本加熱ゾーンにおいて本加熱された前記ウェーハを冷却するための冷却ゾーン(44)内を前記ウェーハを載置して搬送するための、耐熱性を有する材料からなる耐熱搬送ベルト(30)と、
前記予熱ゾーンにおける前記耐熱搬送ベルトの上方の部位に配設された、前記ウェーハを予熱するための加熱手段(60)と、
前記少なくとも1つの本加熱ゾーンにおける前記耐熱搬送ベルトの上方および下方の部位に配設された、前記ウェーハを本加熱するための加熱手段(60)と、
前記耐熱搬送ベルト上に前記ウェーハを移載して供給するための供給ベルト(20a)と、
前記耐熱搬送ベルト上から移載された前記ウェーハを前記冷却ゾーンから搬出するための搬出ベルト(20b)とを
含む太陽電池用連続焼成炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−75132(P2011−75132A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224015(P2009−224015)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(509271462)
【出願人】(509271174)
【Fターム(参考)】