説明

始動作動中のプロセスガスの排気を最小限に抑えるコンプレッサ組立体及び方法

【課題】過渡期間中において、プロセス流れを排気することなく、多段コンプレッサを用いて低温流体を圧縮する装置及び方法が提供される。
【解決手段】第一冷却剤ループ内の冷却剤は、圧縮段の冷却ジャケット及び/又は段間熱交換器を冷却し、予圧縮熱交換器を加温する。第一熱交換器内の冷却剤の温度は、周囲空気熱交換によって加減される。プロセス流体は、プロセス流体の温度が温度基準より高い場合、各圧縮段後に段間熱交換器の一つによって選択的に冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2011年11月17日に提出された「始動作動中のプロセスガスの排気を最小限に抑えるコンプレッサ組立体及び方法」と題する仮出願第61/560976号からの優先権を主張し、前記仮出願の内容は、引用することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
医療、化学及び製造業を含む多くの産業において圧縮ガスが使用される。使いやすい形態で圧縮ガスを提供するために、コンプレッサを使用してガスの体積を縮小する。ガスを圧縮するために有用なコンプレッサとしては、多段コンプレッサ、及び直列に配置された複数台のコンプレッサがある。このようにして、プロセス流体の圧力を入口圧力から最終的な出口圧力へ徐々に増大できる。
【0003】
低温液体は、低い圧力で密度が高いので分配に役立つ。低温液体は、液体として輸送され貯蔵されるが、しばしば周囲温度で気体として使用される。低温ポンプまたはコンプレッサは一般に使用されており、本発明の目的とするものである。
【0004】
低温ガスを圧縮するためのコンプレッサは本技術分野で周知であり、低温貯蔵タンクからのボイルオフガスを圧縮するために及び空気分離工程においてしばしば使用される。この種のコンプレッサは、単一の圧縮段から成ることも、また複数の圧縮段を持つことも可能である。多段コンプレッサの場合、圧縮されるガス(「プロセス流れ」)を段と段の間で冷却するか、または冷却せずにその後の段へ送ることができる。段間冷却を有する装置において、低温ヒートシンクを用いて多段コンプレッサのプロセス流れを冷却することが知られている。また、圧縮段の間に熱交換器を使用して、熱交換器において、液化天然ガス(LNG)などの低温流体に対してプロセス流れを冷却することも知られている。しかし、これらの装置は全て、通常運転の前に定常状態の温度へ冷やされるように設計されており、この過渡期間中に通常作動するようには設計されていない。
【0005】
過渡期間中において、低温コンプレッサまたはポンプのプロセス流体は、圧縮されず通常は排気されて、プロセス流体の損失という結果になる。そのような排気は、圧縮段及び関連する流体装置が、低温モードでの機械の作動を可能にする温度まで冷えたとき終了する。プロセス流れのこのような排気は、製品の損失及び関連するコストのため好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、プロセス流れを排気することなく、過渡的冷却期間における作動が可能な改良された装置に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において開示される発明は、各圧縮段の間に段間熱交換器を有する多段コンプレッサ装置を提供することによって、上記の必要性に応える。過渡的冷却段階においてプロセス流体は熱交換器を通過して流れる。
【0008】
流体圧縮装置及び方法の様相は、下に概説するようにいくつかある。
【0009】
様相1:流体を圧縮するための流体圧縮装置であって、流体圧縮装置は、
(a)第一冷却剤と外部ヒートシンクとの間で熱交換を行う第一熱交換器と、
(b)第一冷却剤との熱交換によってタンクからの流体の加熱を行う第二熱交換器と、
(c)多段コンプレッサであって、
(c1)第二熱交換器から流体を受け取るように作用可能に配置された第一圧縮段と、
(c2)(i)第一冷却剤との熱交換によって第一圧縮段を離れる流体の少なくとも一部の冷却を行う第三熱交換器、及び(ii)第一冷却剤との熱交換によって第一圧縮段において流体の冷却を行う第一冷却ジャケットの少なくとも一方と、
(c3)第一圧縮段から流体の少なくとも一部を受け取るように作用可能に配置された第二圧縮段と、を備える多段コンプレッサと、
(d)第一熱交換器と、第二熱交換器と、第三熱交換器及び第一冷却ジャケットの少なくとも一方とを通して第一冷却剤を循環させるように作用可能に配置された第一冷却剤ループと、を備える。
【0010】
様相2:外部ヒートシンクが周囲空気である、様相1の流体圧縮装置。
【0011】
様相3:
(e)タンクから流体を受け取るための第一弁と、
(f)流体が第二熱交換器を通過することなくタンクから流体を選択的に搬送する第一バイパス導管と、をさらに備え、
第一弁が、第二熱交換器と第一バイパス導管へ流体を分配するように作用可能に配置されており、
(g)第一圧縮段へ流入する流体の温度を測定するように作用可能に配置された第一温度センサと、
(h)第一温度センサと信号通信するコントローラであって、コントローラは、第一温度センサによって測定された温度が第一温度基準より低いことを第一温度センサが検出したとき、第一弁によって流体の少なくとも一部を第二熱交換器へ分配させ、第一温度センサによって測定された温度が第一温度基準より高いことを第一温度センサが検出したとき、第一弁によって流体の少なくとも一部を第一バイパス導管へ分配させるように構成される、コントローラと、をさらに備える、様相1または様相2の流体圧縮装置。
【0012】
様相4:コントローラは、第一温度センサによって測定された温度が第一温度基準より低いことを第一温度センサが検出したとき、第一弁によって流体全部を第二熱交換器へ誘導させ、第一温度センサによって測定された温度が第一温度基準より高いことを第一温度センサが検出したとき、第一弁によって流体全部を第一バイパス導管へ分配させるように構成される、様相3の流体圧縮装置。
【0013】
様相5:第一温度基準が第一設定値温度である、様相3または様相4の流体圧縮装置。
【0014】
様相6:
第一圧縮段から流体を受け取るための第二弁と、
流体が第三熱交換器を通過することなく第一圧縮段から流体を選択的に搬送するための第二バイパス導管と、
第一圧縮段を離れる流体の温度を測定するように作用可能に配置された第二温度センサと、をさらに備え、
第二弁が、第三熱交換器と第二バイパス導管へ流体を分配するように作用可能に配置され、かつ
コントローラは、第二温度センサと信号通信して、第二温度センサによって測定された温度が第二温度基準より高いことを第二温度センサが検出したとき、第二弁によって流体の少なくとも一部を第三熱交換器へ分配させ、第二温度センサによって測定された温度が第二温度基準より低いことを第二温度センサが検出したとき、第二弁によって流体の少なくとも一部を第二バイパス導管へ分配させるように構成される、様相3〜5のいずれか一つの流体圧縮装置。
【0015】
様相7:コントローラは、第二温度センサによって測定された温度が第二温度基準より高いことを第二温度センサが検出したとき第二弁によって流体全部を第三熱交換器へ誘導させ、第二温度センサによって測定された温度が第二温度基準より低いことを第二温度センサが検出したとき第二弁によって流体全部を第二バイパス導管へ誘導させるように構成される、様相6の流体圧縮装置。
【0016】
様相8:第二温度基準が第二設定値温度である、様相6または7の流体圧縮装置。
【0017】
様相9:多段コンプレッサが、
第二圧縮段から流体の少なくとも一部を受け取るように作用可能に配置された第三圧縮段と、
(i)第一冷却剤との熱交換によって第二圧縮段を離れる流体の少なくとも一部の冷却を行う第四熱交換器、及び(ii)第一冷却剤との熱交換によって第二圧縮段において流体の冷却を行う第二冷却ジャケットの少なくとも一方、をさらに備え、かつ
第一冷却剤ループが、さらに、第四熱交換器及び第二冷却ジャケットの少なくとも一方を通過して第一冷却剤を循環させるように作用可能に配置される、様相1〜8のいずれか一つの流体圧縮装置。
【0018】
様相10:多段コンプレッサが、
流体が第四熱交換器を通過することなく第二圧縮段から第三圧縮段へ流体を選択的に搬送する第三バイパス導管と、
第二圧縮段から流体を受け取るための第三弁と、
第二圧縮段を離れる流体の温度を測定するように作用可能に配置された第三温度センサと、をさらに備え、
コントローラは、さらに第三温度センサと信号通信して、コントローラは、第三温度センサによって測定された温度が第三温度基準より高いことを第三温度センサが検出したとき、第三弁によって流体の少なくとも一部を第四熱交換器へ分配させ、第三温度センサによって測定された温度が第三温度基準より低いことを第三温度センサが検出したとき、第三弁によって流体の少なくとも一部を第三バイパス導管へ分配させるように構成される、様相9の流体圧縮装置。
【0019】
様相11:コントローラは、第三温度センサによって測定された温度が第三温度基準より低いことを第三温度センサが検出したとき第三弁によって流体全部を第四熱交換器へ誘導させ、第三温度センサによって測定された温度が第三温度基準より高いことを第三温度センサが検出したとき第三弁によって流体全部を第三バイパス導管へ分配させるように構成される、様相10の流体圧縮装置。
【0020】
様相12:第三温度基準が第三設定値温度である、様相11の流体圧縮装置。
【0021】
様相13:
第二冷却剤と第二外部ヒートシンクとの間の熱交換を行う第五熱交換器をさらに備え、 多段コンプレッサが、第二冷却剤との熱交換によって第一圧縮段を離れる流体の少なくとも一部の冷却を行う第六熱交換器をさらに備え、
第五熱交換器及び第六熱交換器を通過して第二冷却剤を循環させるように作用可能に配置された第二冷却剤ループをさらに備える、様相1〜12のいずれか一つの流体圧縮装置。
【0022】
様相14:第二外部ヒートシンクが周囲空気である、様相13の流体圧縮装置。
【0023】
様相15:
第一圧縮段を通過した流体が第二圧縮段を迂回できるようにしてこれを第三圧縮段へ供給するように作用可能に配置された第一圧力バイパスをさらに備える、様相9〜14のいずれか一つの流体圧縮装置。
【0024】
様相16:低温貯蔵容器から供給された流体を圧縮する方法であって、
方法が、
(a)第一熱交換器と、第二熱交換器と、第三熱交換器及び第一冷却ジャケットの少なくとも一方とを通して第一冷却剤を循環させるステップと、
(b)第一冷却剤と熱交換することによって第一冷却剤を冷却するために流体の少なくとも一部を第二熱交換器へ送ることによって流体を加熱するステップと、
(c)多段コンプレッサの第一圧縮段14においてステップ(b)からの流体を圧縮するステップと、
(d)多段コンプレッサの第二圧縮段16において第一圧縮段からの流体の少なくとも一部をさらに圧縮するステップと、を含み、
第一冷却剤が外部ヒートシンクと熱交換するために第一熱交換器へ循環させられ、かつ
(i)流体が、ステップ(c)において第一冷却ジャケットを通過して流れる第一冷却剤との熱交換によって冷却され、及び/又は(ii)ステップ(c)の後でかつステップ(d)前に流体の少なくとも一部が第三熱交換器へ送られて、第三熱交換器において第一冷却剤との熱交換によって冷却される、方法。
【0025】
様相17:外部ヒートシンクが周囲空気である、様相16の方法。
【0026】
様相18:
多段コンプレッサの第三圧縮段において第二圧縮段からの流体の少なくとも一部をさらに圧縮するステップをさらに含み、
(i)流体がステップ(d)において第二冷却ジャケットを通過して流れる第一冷却剤との熱交換によって冷却され、及び/又は(ii)流体の少なくとも一部がステップ(d)後に第四熱交換器へ送られて、第四熱交換器において第一冷却剤との熱交換によって冷却され、第一冷却剤が第四熱交換器を通過して循環させられる、様相16または17の方法。
【0027】
様相19:
第一圧縮段へ流入する前に流体の温度を測定するステップと、
第一圧縮段へ流入する前の流体の測定温度が第一温度基準より低いときより多くの流体を加熱し、第一圧縮段へ流入する前の流体の測定温度が第一温度基準より高いときより少ない流体を加熱するように、第二熱交換器へ送られる流体の量を調節するステップと、をさらに含む、様相16〜18のいずれか一つの方法。
【0028】
様相20:
第一圧縮段を通過した後に流体の温度を測定するステップと、
第一圧縮段を通過した後の流体の測定温度が第二温度基準より高いときより多くの流体を冷却し、第一圧縮段を通過した後の流体の測定温度が第二温度基準より低いときより少ない流体を冷却するように、第三熱交換器へ送られる流体の量を調節するステップと、をさらに含む、様相16〜19のいずれか一つの方法。
【0029】
様相21:
第二圧縮段を通過した後に流体の温度を測定するステップと、
第二圧縮段を通過した後の流体の測定温度が第三温度基準より高いときより多くの流体を冷却し、第二圧縮段を通過した後の流体の測定温度が第三温度基準より低いときより少ない流体を冷却するように、第四熱交換器へ送られる流体の量を調節するステップと、をさらに含み、
第一冷却剤が第四熱交換器も通過して循環させられる、様相16〜20のいずれか一つの方法。
【0030】
様相22:
第二冷却剤を第五熱交換器及び第六熱交換を通過して循環させるステップをさらに含み、
第二冷却剤が第二外部ヒートシンクと熱交換するために第五熱交換器へ循環させられ、かつ
ステップ(c)後でかつステップ(d)前に、流体が第六熱交換器へ送られ、第六熱交換器148において第二冷却剤との熱交換によって冷却される、様相16〜21のいずれか一つの方法。
【0031】
様相23:第二外部ヒートシンクが周囲空気である、様相22の方法。
【0032】
様相24:流体を圧縮する方法であって、方法が、
(a)様相1〜15のいずれか一つの流体圧縮装置を用意するステップと、
(b)第一熱交換器と、第二熱交換器と、第三熱交換器及び第一冷却ジャケットの少なくとも一方とを通して第一冷却剤を循環させるステップと、
(c)第一冷却剤と熱交換することによって第一冷却剤を冷却するために流体の少なくとも一部を第二熱交換器へ送ることによって流体を加熱するステップと、
(d)多段コンプレッサの第一圧縮段14においてステップ(c)からの流体を圧縮するステップと、
(e)多段コンプレッサの第二圧縮段において第一圧縮段からの流体の少なくとも一部をさらに圧縮するステップと、を含み、
第一冷却剤が外部ヒートシンクと熱交換するために第一熱交換器へ循環させられ、かつ
(i)流体がステップ(d)において第一冷却ジャケットを通過して流れる第一冷却剤との熱交換によって冷却され、及び/又は(ii)ステップ(d)後でかつステップ(e)前に流体の少なくとも一部が第三熱交換器へ送られて、第三熱交換器において第一冷却剤との熱交換によって冷却される。
【0033】
様相25:外部ヒートシンクが周囲空気である、様相24の方法。
【0034】
様相26:様相1〜15のいずれか一つの流体圧縮装置を用いる、様相16〜25のいずれか一つの方法。
【0035】
様相27:様相16〜25のいずれか一つの方法を実施する様相1〜15のいずれか一つの流体圧縮装置。
【0036】
様相28:流体を圧縮するための流体圧縮装置であって、流体圧縮装置は、
多段コンプレッサであって、多段コンプレッサが、
第一圧縮段と、
第一圧縮段からの流体を受け取るための弁と、
第一圧縮段を離れる流体の冷却を選択的に行う熱交換器と、
流体が熱交換器を通過することなく第一圧縮段から流体を選択的に搬送するバイパス導管と、
バイパス導管から流体の少なくとも一部及び熱交換器から流体の少なくとも一部を受け取るための第二圧縮段と、
第一圧縮段を離れる流体の温度を測定するように作用可能に配置された温度センサと、を備え、
弁が、熱交換器とバイパス導管へ流体を分配するように作用可能に配置される、多段コンプレッサと、
温度センサと信号通信するコントローラであって、コントローラは、温度センサによって測定された温度が温度基準より高いことを温度センサが検出したとき、弁によって流体の少なくとも一部を熱交換器へ分配させ、温度センサによって測定された温度が温度基準より低いことを温度センサが検出したとき、弁によって流体の少なくとも一部をバイパス導管へ分配させるように構成される、コントローラと、を備える。
【0037】
様相29:コントローラは、温度センサによって測定された温度が温度基準より高いことを温度センサが検出したとき、弁によって流体全部を熱交換器へ誘導させ、温度センサによって測定された温度が温度基準より低いことを温度センサが検出したとき、弁によって流体全部をバイパス導管へ誘導させるように構成される、様相28の流体圧縮装置。
【0038】
様相30:第一温度基準が設定値温度である、様相28または29の流体圧縮装置。
【0039】
様相31:低温貯蔵容器から供給された流体を圧縮する方法であって、方法は、
(a)多段コンプレッサの第一圧縮段へ流体を送るステップと、
(b)第一圧縮段を通過した後、流体の温度を測定するステップと、
(c)ステップ(a)の実施の後でかつステップ(d)の実施の前に、温度が温度基準より高いとき流体を冷却するために流体の少なくとも一部が熱交換器を通過するように導き、温度が温度基準より低いとき熱交換器を迂回させるステップと、
(d)ステップ(c)からの流体の少なくとも一部を多段コンプレッサの第二圧縮段へ送るステップと、を含む。
【0040】
実施形態例の以上の要約及び以下の詳細な説明は、添付図面を参照して読むことによってより良く理解できる。実施形態を例示するために、図面においては例示的構成を示すが、本発明は、開示される具体的な方法及び手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第一の例示的実施形態に従った装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第二の例示的実施形態に従った装置を示す概略図である。
【図3】本発明の第一の例示的実施形態を作動される例示的方法を図解する流れ図である。
【図4】本発明の第一の例示的実施形態を作動させる例示的方法を図解する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の詳細な説明は、好ましい例示的実施形態を示すものであり、本発明の範囲、応用可能性または構成を限定しようとするものではない。むしろ、以下の好ましい例示的実施形態の詳細な説明は、本発明の好ましい例示的実施形態を実施できるようにする説明を当業者に与える。請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく要素の機能及び配置に様々な変更を加えられることが分かるはずである。
【0043】
本明細書において使用される単数冠詞は、明細書及び請求項において説明される本発明の実施形態の特徴に応用される場合一つまたはそれ以上を意味する。単数冠詞の使用は、限定が明記されない限り、意味を単独の特徴に限定しない。単数または複数名詞または名詞句の前の定冠詞は、特定の指定される特徴(単数または複数)を指し、これが使用される文脈次第で、単数または複数の意味を持つことができる。形容詞「どんな」又は「任意の」は、どのような数量かに関係なく一つ、いくつかまたは全部を意味する。第一実体と第二実体との間に配置される用語「及び/または」は、(i)第一実体、(ii)第二実体、及び(3)第一実体と第二実体の中の一つを意味する。三つまたはそれ以上の実体のリストの最後の二つの実体の間に配置された用語「及び/または」は、リストの中の実体の少なくとも一つを意味する。
【0044】
語句「少なくとも一部」は「一部または全部」を意味する。流れの少なくとも一部は、その源の流れと同じ組成を持つことができる。流れの少なくとも一部は、その源の流れの固有の成分を含むことができる。
【0045】
本発明を説明する助けとして、本発明の一部を説明するために明細書及び請求項において方向性の用語(例えば、上側、下側、左、右など)を使用する場合がある。これらの方向性の用語は、単に本発明を説明し主張するのを助けるためのものであり、決して本発明を限定するためのものではない。さらに、図面に関連付けて明細書において使用される参照番号は、他の特徴に文脈を与えるために、明細書において追加の説明なしにその後の一つまたはそれ以上の図面において繰返し使用される場合がある。
【0046】
請求項において、請求範囲のステップを識別するために文字(例えば(a)、(b)及び(c))が使用される。これらの文字は、方法のステップを指示する助けとして使用されており、請求項において明白に順序が記述されない限り、請求範囲のステップが実施される順序を指示するためのものではない。
【0047】
本明細書において明示されない限り、明細書、図面及び請求項において示されるパーセンテージはいずれも、重量パーセントに基づいて理解されるべきである。
【0048】
本明細書において明示されない限り、明細書、図面及び請求項において示される圧力は、いずれもゲージ圧を意味するものとして理解されるべきである。
【0049】
明細書及び請求項において使用される場合、用語「流体流連通」は、二つまたはそれ以上の要素が、弁、ゲートまたは選択的に流体の流れを制限及び/または制御できるその他のデバイスを含む接続部を含む該要素間での流体の流動を可能にする様態で作動可能に(直接的または間接的に)接続されることを意味することが意図されている。
【0050】
明細書及び請求項において使用される場合、用語「下流」及び「上流」は、移送されるプロセス流体の意図された流動方向を指す。プロセス流体の意図された流動方向が第一装置から第二装置へ向う場合、第二装置は、第一装置の下流でこれと流体流連通している。
【0051】
図面において、各熱交換器と関連付けて示される矢印は、熱の流れの方向を示す。言い換えると、矢印の尾は、熱交換器の温かい方の側を表し、矢印の頭は熱交換器の冷たい方の側を表す。二つの頭を有する矢印は、装置の作動条件次第で熱の流れの方向が変化する可能性があることを示す。
【0052】
本明細書において使用される場合、用語「冷凍剤」または「低温流体」は、−70℃未満の温度を有する液体、気体、または混合相流体を意味する。冷凍剤の例には、液体水素(LIH)、液体窒素(LIN)、液体酸素(LOX)、液体アルゴン(LAR)、液体ヘリウム、液体二酸化炭素及び加圧混合相冷凍剤(例えば、LINと気体窒素の混合物)が含まれる。同様に、用語「低温貯蔵容器」は、その中に低温流体が貯蔵される容器を意味する。本明細書において使用される場合、用語「低温」は−70℃未満の温度を意味する。
【0053】
既存の圧縮設備に伴う欠点を克服するために、本明細書において説明する装置及び方法は、周囲温度ガス及び低温流体の両方の導入を受け入れるように設計される。さらに、前記装置及び方法は、始動時にプロセス流体を排気する必要なく、及び補助的冷却設備の必要なく、低温のプロセス流体を受け入れるように構成される。
【0054】
装置の始動後の過渡期間(本明細書において「冷却期間」または「過渡期間」と呼ばれる)において、本明細書において説明する装置は、設備が冷えるにつれて(例えば、コンプレッサ及び関連機械類の温度の低下)低温多段コンプレッサとして機能するように徐々に切り替わる。一つの実施例において、この過渡期は、各圧縮段が、プロセス流体をほぼ周囲温度まで冷却する熱交換器へ排出可能にすることによって適合される。さらに、この冷却期間中に、入口配管及びその他の設備は、低温プロセス流体の流れによって冷え、コンプレッサ入口の温度を低下させる。最終的に、入口温度は定常値まで(特定の装置構成に依存して)低下して、この時点で過渡期間は終了し、プロセス流体の定常圧縮が続行する。この圧縮は、多重の段を使用して実行でき、多重の段のいくつかまたは全ては低温で作動できる。
【0055】
図1を参照すると、コンプレッサ装置10の第一の例示的実施形態が示される。貯蔵タンク12はプロセス流体を収容する。プロセス流体は、多段コンプレッサ13によって圧縮された後、出口導管20によって装置10から移送される。この実施形態において、多段コンプレッサ13は、三つの圧縮段14、16、18を備え、これらの段において流体の一部または全部が圧縮される。
【0056】
この実施形態において、プロセス流体は低温流体なので、貯蔵タンク12は液相部分22と気相部分24とを含む。上で説明したように、装置10は、低温流体も(この実施形態において示すように)非低温ガスも圧縮できる。貯蔵タンク12は、液相出口26及び気相出口28を含む。各出口26,28は、導管34、36へのプロセス流体の流れを制御するそれぞれの弁30、32と流体流連通されている。この実施形態において、導管34及び36は、弁30及び32の下流で合流する。装置10が周囲温度のプロセス流体を圧縮するために使用されるなら、貯蔵タンク12は、液相部分22または液相出口26を含まないであろう。
【0057】
多くの用途において、気相出口28は、プロセス流体の一次供給源として使用される。液相出口26は、(a)プロセス流体の温度を下げることが好ましい場合、または(b)プロセス流体の気相出口28から流れ出る速度が貯蔵タンク12内の圧力を所望のレベルを超えて低下させる場合に、気相出口28の代わりにあるいは気相出口28と一緒に使用される。
【0058】
合流点から下流において、プロセス流体の流れは、弁38によってバイパス導管42または熱交換器40へ導かれる。熱交換器40は、第一冷却剤との熱交換によってタンク12からの流体の加熱を行う。任意の適切な冷却剤が選択されてよい。適切な冷却剤の例としては、プロピレングリコール、d−リモネン、または鉱物または植物油がある。弁38の位置(開閉%)は、熱交換器40の下流端に配置された温度センサ44によって測定されたプロセス流体の温度に基づいて、コントローラ76によって決定され得る。温度センサ44は、温度データをコントローラ76へ報告する。温度センサ44によって報告された温度データに基づいて、コントローラ76は、プロセス流体を熱交換器40またはバイパス導管42を通るように導くために弁38を選択的に操作する。バイパス導管42は、プロセス流体が、熱交換器40を通過せずに、直接、第一圧縮段14へ流入することを可能にする。この実施形態において、コントローラ76は、温度センサ44が設定値温度より低い温度を測定したとき、プロセス流体が熱交換器40を通過するように弁38を操作し、温度センサ44が設定値温度より高い温度を測定したときプロセス流体がバイパス導管42を通過するように弁を操作する。温度センサが設定値温度またはこれに非常に近い温度を測定した場合、コントローラは、プロセス流体が熱交換器40及び/またはバイパス導管42を通過するように弁38に対して指令できる。別の実施形態において、弁38の位置を決定するために、圧力などの他のプロセス流体パラメータが使用され得る。
【0059】
コントローラ76は、全ての温度センサ44、47、54及び全ての弁38、46、56、81と好適に信号通信する。そのような信号通信は、有線または無線接続を含む任意の適切な手段によることができる。図1においては混乱を抑えるために、コントローラ76と他の構成要素との間の信号接続は、点線で終わる矢印で表される。
【0060】
代わりに、弁28、46、56及び81の任意のものが、コントローラ76を使用せずに手で操作されてよい。
【0061】
この例示的実施形態において、弁38は、単一の三方弁として示される。第一位置において、弁38は、プロセス流体全部が熱交換器40を通過するように導き、第二位置において、弁38は、プロセス流体全部をバイパス導管42へ導く。同じ機能を、二つの二方弁など別の弁構成を用いて達成することができる。さらに、いくつかの実施例において、プロセス流体の熱交換器40とバイパス導管42との間での分配を可能にする比例弁を使用することが望ましい場合がある。特定の弁について特に明記しない限り、この段落において論じられる代替の弁構成が、装置10及び装置110の全ての弁に適用される。単数冠詞「ア(“a”)」は「一つまたはそれ以上」を意味するので、請求項において使用される場合、「弁」は、単一及び複数弁構成並びに比例弁を含むことが意図される。
【0062】
弁46は第一圧縮段14の下流に配置される。温度センサ47によって報告された温度データに基づいて、コントローラ76は、プロセス流体をもう一つの熱交換器48か、又は熱交換器48を迂回するバイパス導管50へ導くように弁46に対して指令する。冷却されたプロセス流体は、次に第二圧縮段16へ通じる導管52へ搬送される。
【0063】
第二圧縮段16を出ると、プロセス流体の別の温度の読みが、温度センサ54によって取得される。温度センサ54によって報告された温度データに基づいて、コントローラ76は、プロセス流体を別の熱交換器60へ、あるいは熱交換器60を迂回するバイパス導管58へ導くように弁56を選択的に操作する。次に、プロセス流体は第三圧縮段18へ移行する。第三圧縮段18を通過した後、プロセス流体は、装置を出る前に別の熱交換器62を通過する。
【0064】
別の実施形態において、コントローラ76、及び本明細書で説明された弁のいずれか(例えば、弁38または弁46)は、プロセス流体の一部をバイパス導管(例えば、バイパス導管42またはパイバス導管50)へ分配しかつプロセス流体の一部を熱交換器(例えば、熱交換器40または熱交換器48)へ分配するように構成され得る。例えば、コントローラ76を、比例積分微分(PID)コントローラとすることができる。
【0065】
また、この例示的実施形態は逆止め弁バイパス組立体も含んでおり、前記逆止め弁バイパス組立体は、一つの圧縮段を出るときのプロセス流体の圧力が次の圧縮段後のプロセス流体の圧力以上である場合、プロセス流体が圧縮段16、18の一つまたはそれ以上を迂回することを可能にする。この機能は、二つの逆止め弁66、72によって、並びにそれぞれ段間熱交換器48、60、62の下流端に及びバイパス導管50、58にそれぞれ流体流連通される導管64、70、74によって可能にされる。導管68は、逆止め弁66を逆止め弁72に流体流連通するように接続する。
【0066】
図1において、熱交換器40を通過して流れるプロセス流体は、閉鎖冷却剤ループ80の中を循環する冷却剤によって加温されるものとして示され、熱交換器48、60、62を通過して流れるプロセス流体は、同じ閉鎖冷却剤ループ80内の冷却剤に対して冷却されるものとして示される。閉鎖冷却剤ループ80の中で冷却剤を加圧し循環させるためにコンプレッサまたはポンプ85が設置される。さらに、閉鎖冷却剤ループには、外部ヒートシンク例えば周囲空気または水に対して冷却剤を冷却または加温する熱交換器82が設置される。弁81及びバイパス導管84は、望ましい場合には冷却剤が熱交換器82を迂回できるようにする。弁81は、冷却剤の温度を測定する温度センサ83及び装置10周辺の周囲温度を測定する温度センサ27からの入力に基づいて、コントローラ76によって制御される。
【0067】
装置が過渡期間中に作動しているとき、プロセス流体の温度は、各圧縮段14、16、18の後比較的高く、これは、閉鎖冷却剤ループ80内の冷却剤の温度を周囲温度よりも超過させる可能性がある。冷却剤の温度が設定された量だけ周囲温度を上回ったとき、コントローラ76は、熱交換器82を通して冷却剤を導くように弁81を操作し、前記熱交換器82は、外部ヒートシンク(例えば、周囲空気)に対して冷却剤を冷却する。コントローラ76は、温度センサ27を用いて周囲温度を測定するか、または周囲温度が比較的一定であるなら、コントローラ76は、設定平均周囲温度を使用するように構成され得る。同様に、装置10が定常状態に達したとき、各圧縮段14、16、18後のプロセス流体の比較的低い温度は、閉鎖冷却剤ループ80内の冷却剤の温度を周囲温度より下に下げることができる。冷却剤の温度が設定された量だけ周囲温度より下に低下したとき、コントローラ76は、周囲空気に対して冷却剤を加温する熱交換器82を通して冷却剤が流れるように弁81を操作する。
【0068】
代わりに、閉鎖冷却剤ループ80を省略して、熱交換器40、48、60、62が、直接、周囲温度と熱交換することができる。この構成の場合、複雑さが減少してコストが低下するが、作動できる周囲温度の範囲が狭くなる。さらに、これは、段間熱交換器48、60、62が熱交換器40からの冷却を利用することを不可能にする。
【0069】
図2を参照すると、圧縮装置110の別の例示的実施形態が示される。この例示的実施形態において、第一の実施形態(装置10)と共通の要素は、100を加えた参照番号で表される。例えば、装置10の貯蔵タンク12は、装置110の貯蔵タンク112に対応する。明確にするために、装置10と共通であり且つこれとほぼ同一の装置110のいくつかの特徴は、図2において番号が付けられるが、装置110に関しては明細書において具体的には言及されない。
【0070】
装置110は、圧縮段114、116、118の配置及び作動、並びに熱交換器140、148、160の配置及び作動を含むがこれに限定されない装置10の特徴の多くを含む。下にさらに詳しく説明するように、装置110は、装置110がより広い範囲の作動条件の下で作動できるようにする追加的な熱交換機能を含む。
【0071】
装置110は第二冷却剤ループ190を含み、冷却剤はコンプレッサ195によって前記第二冷却剤ループ190を循環する。さらに、任意選択的に、熱交換器194を冷却剤ループ190に設置でき、前記熱交換器194は、外部ヒートシンク例えば周囲空気または水に対して冷却剤を冷却または加温できる。弁及びバイパス導管(図示せず)は、必要に応じて冷却剤が熱交換器194を迂回できるようにする。この冷却剤ループ190内の冷却剤は、水より低い氷点を持つことが好ましい。適切な冷却剤の例には、プロピレングリコール、d−リモネン、鉱物油または植物油が含まれる。第二冷却剤ループ190は、特に、装置110にとって有利であり、このループがなければ、比較的高い周囲温度の場所において、冷却剤温度を下げるために冷却装置を必要とするかもしれない。
【0072】
装置110は、追加的な段間熱交換器191、193を含み、前記熱交換器191,193は、それぞれ、図1の装置10の熱交換器48及び60と同様に作動する段間熱交換器148、160の上流端に接続される。コントローラ176が、プロセス流体が第一圧縮段114と第二圧縮段116との間に配置された熱交換器191、148を通過して流れるように弁を作動したとき、第一熱交換器191は、通常、プロセス流体を周囲温度にまたはこれよりわずかに高い温度に冷却する。次いで、第二熱交換器148はプロセス流体をさらに冷却する。これは、冷却剤ループ180に加えられる熱量を最小限に抑えるので、それは可能な限り低い温度で作動できる。第二圧縮段116と第三圧縮段118との間に配置された熱交換器193、160は、第一圧縮段114と第二圧縮段116との間に配置された熱交換器191、148と同様に作動する。
【0073】
装置110に示されるように、各圧縮段114、116、118は、必要に応じて各圧縮段114、116、118を冷却する冷却ジャケット196、197、198を任意選択的に含むことができる。この実施形態において、冷却剤ループ180の冷却剤は、各シリンダジャケット196、197、198を通過して循環する。代わりに、二次流体がシリンダジャケット196、197、198を通して循環されて、冷却剤ループ180内の冷却剤に対して冷却されてよい。代わりにまたはこれに加えて、シリンダジャケット196、197、198は、冷却剤ループ180の代わりに冷却剤ループ190内の冷却剤に対して熱交換できる。
【0074】
装置の出口にある熱交換器62、162は、図1の冷却剤ループ80及び/または図2の冷却剤ループ190内の冷却剤に対して熱交換できる。
【0075】
図示する装置10、110の圧縮段の数は単なる例示的なものであることが理解されるはずである。圧縮装置が実現される用途の要求条件に応じて、任意の数の段を設置できる。
【0076】
図3及び4は、装置10の例示的方法を示す流れ図である。図3を参照すると、プロセス流体が第一圧縮段14へ流入する前にセンサ44においてプロセス流体の温度が測定されて(ステップ310)コントローラ76へ送られる。コントローラ76は、測定された温度を設定値温度と比較する(ステップ320)。プロセス流体の測定温度が設定値温度より低い場合、コントローラ76は、弁38によってプロセス流体が第一熱交換器40を通過するように誘導させ(ステップ330)、第一熱交換器40はプロセス流体を加温する。逆に、受け取ったプロセス流体の測定温度が設定値温度より高い場合、コントローラ76は、弁38によってプロセス流体をバイパス導管42へ誘導させ、前記バイパス導管42は、熱交換器40を迂回する(ステップ340)。この段落に記載するステップは、プロセス流体が第一圧縮段14に流れ込み続けるとき、周期的に繰り返される。
【0077】
図4を参照すると、第一圧縮段14を出て行くプロセス流体の温度が温度センサ47によって測定される(ステップ350)。次に、コントローラ76はプロセス流体の温度を設定値温度と比較する(ステップ360)。プロセス流体の測定温度が設定値温度より高い場合、コントローラ76は、プロセス流体が第二圧縮段16へ送られる前に冷却されるように、プロセス流体が熱交換器48を通過するように弁46によって誘導させる(ステップ380)。弁46が受け取ったプロセス流体の温度が設定値温度であるかまたはそれより低い場合(または、任意選択的に設定値温度より低い場合)、コントローラ76は、プロセス流体をバイパス導管50へ搬送するように弁46に対して指令し、前記バイパス導管50は熱交換器48を迂回する(ステップ370)。
【0078】
コントローラ79は、ステップ320またはステップ360の実行後、弁38の不必要に頻繁な作動を防止するよう好適にプログラムされている。例えば、コントローラ76は、プロセス流体の温度が前回の測定温度から設定された最小量で変化しない限り、弁38の位置を変化させないようにプログラムされ得る。多段装置(装置10のような)の場合、ステップ350、360、370及び380は、各圧縮段の間で実施される。さらに、図3及び4に図解されて本明細書において説明される方法は、装置110にも同様に適用できる。
【0079】
装置10、110及び装置10、110を作動する方法に関連して本明細書において説明する設定値温度は、プロセス流体を排気することなく過渡期間中に装置10、110を作動できるようにすると言う目的に沿って、プロセス流体を熱交換器とバイパス導管との間でどのように分配するかを決定するためにコントローラ76、176が使用する温度基準の一例であることが意図されていることが理解されるはずである。装置10の熱交換器48を例として使うと、装置10が定常作動状態に達するときの温度センサ47におけるプロセス流体の温度は−60℃だと仮定する。過渡期間中にプロセス流体を排気することなく装置10が機能することを可能にするために、コントローラ76は、プロセス流体の温度(センサ47によって測定された温度)が設定値温度−60℃より高い場合、弁46によって、プロセス流体全体が熱交換器48を通過するように誘導させ、測定温度が設定値温度に等しいかこれより低い場合、プロセス流体全部がバイパス導管50を通過するように誘導させるように構成され得る。この例において、温度基準は設定値温度に等しい。
【0080】
代わりに、コントローラ76はヒステリシス式に構成され得る。例えば、コントローラ76は、プロセス流体の温度(センサ47によって測定された温度)が−60℃の設定値より5度またはそれ以上高い場合、弁46によって、プロセス流体全部が熱交換器48を通過するように誘導させ、測定温度が設定値温度より5度またはそれ以上低い場合、プロセス流体全体がバイパス導管50を通過するように誘導させるように構成され得る。測定温度が設定値温度の10度(上下5度)の範囲内にある場合、コントローラ76は、弁46の既存の位置を維持する。この場合、温度基準は、設定値温度から少なくとも5度外れた温度である。
【0081】
上述したように、コントローラ76をPIDコントローラとすることもできる。例えば、コントローラ76は、プロセス流体の温度を所望の温度範囲に維持することが意図された様態でプロセス流体を熱交換器48とバイパス導管50との間に分配するように構成され得る。
【0082】
本発明の様相が、数枚の図面の好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、他の同様の実施形態を使用できること、または本発明から逸脱することなく本発明と同じ機能を果たすために上述の実施形態に対して修正及び追加を加えられることが理解されるはずである。従って、請求された発明は、単一の実施形態に限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲に従った範囲で解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0083】
12 貯蔵タンク
13 多段コンプレッサ
14 第一圧縮段
16 第二圧縮段
18 第三圧縮段
38 弁
40 熱交換器
44 温度センサ
42 バイパス導管
46 弁
47 温度センサ
48 熱交換器
50 バイパス導管
54 温度センサ
56 弁
58 バイパス導管
60 熱交換器
76 コントローラ
80 閉鎖冷却剤ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮するための流体圧縮装置であって、
(a)第一冷却剤と外部ヒートシンクとの間で熱交換を行う第一熱交換器と、
(b)前記第一冷却剤との熱交換によってタンクからの流体の加熱を行う第二熱交換器と、
(c)多段コンプレッサであって、
(c1)前記第二熱交換器から前記流体を受け取るように作用可能に配置された第一圧縮段と、
(c2)(i)前記第一冷却剤との熱交換によって、前記第一圧縮段を離れる前記流体の少なくとも一部の冷却を行う第三熱交換器、及び(ii)前記第一冷却剤との熱交換によって前記第一圧縮段において前記流体の冷却を行う第一冷却ジャケットの少なくとも一方と、
(c3)前記第一圧縮段から前記流体の少なくとも一部を受け取るように作用可能に配置された第二圧縮段と、を備える多段コンプレッサと、
(d)前記第一熱交換器と、前記第二熱交換器と、前記第三熱交換器及び前記第一冷却ジャケットの少なくとも一方とを通して前記第一冷却剤を循環させるように作用可能に配置された第一冷却剤ループと、を備える流体圧縮装置。
【請求項2】
(e)前記タンクから前記流体を受け取るための第一弁と、
(f)前記流体が前記第二熱交換器を通過することなく前記タンクから前記流体を選択的に搬送する第一バイパス導管と、をさらに備え、
前記第一弁が、前記第二熱交換器と前記第一バイパス導管へ前記流体を分配するように作用可能に配置されており、
(g)前記第一圧縮段へ流入する前記流体の温度を測定するように作用可能に配置された第一温度センサと、
(h)前記第一温度センサと信号通信するコントローラであって、該コントローラは、前記第一温度センサによって測定された温度が第一温度基準より低いことを前記第一温度センサが検出したとき、前記第一弁によって前記流体の少なくとも一部を前記第二熱交換器へ分配させ、前記第一温度センサによって測定された温度が前記第一温度基準より高いことを前記第一温度センサが検出したとき、前記第一弁によって前記流体の少なくとも一部を前記第一バイパス導管へ分配させるように構成される、コントローラと、
をさらに備える、請求項1に記載の流体圧縮装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第一温度センサによって測定された温度が前記第一温度基準より低いことを前記第一温度センサが検出したとき、前記第一弁によって前記流体全部を前記第二熱交換器へ誘導させ、前記第一温度センサによって測定された温度が前記第一温度基準より高いことを前記第一温度センサが検出したとき、前記第一弁によって前記流体全部を前記第一バイパス導管へ分配させるように構成される、請求項2に記載の流体圧縮装置。
【請求項4】
前記第一温度基準が第一設定値温度である、請求項2に記載の流体圧縮装置。
【請求項5】
前記第一圧縮段から前記流体を受け取るための第二弁と、
前記流体が前記第三熱交換器を通過することなく前記第一圧縮段から前記流体を選択的に搬送するための第二バイパス導管と、
前記第一圧縮段を離れる前記流体の温度を測定するように作用可能に配置された第二温度センサと、をさらに備える請求項2に記載の流体圧縮装置であって、
前記第二弁は、前記第三熱交換器と前記第二バイパス導管へ前記流体を分配するように作用可能に配置され、かつ
前記コントローラは、前記第二温度センサと信号通信して、前記第二温度センサによって測定された温度が第二温度基準より高いことを前記第二温度センサが検出したとき、前記第二弁によって前記流体の少なくとも一部を前記第三熱交換器へ分配させ、前記第二温度センサによって測定された温度が前記第二温度基準より低いことを前記第二温度センサが検出したとき、前記第二弁によって前記流体の少なくとも一部を前記第二バイパス導管へ分配させるように構成される、請求項2に記載の流体圧縮装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第二温度センサによって測定された温度が前記第二温度基準より高いことを前記第二温度センサが検出したとき、前記第二弁によって前記流体全部を前記第三熱交換器へ誘導させ、前記第二温度センサによって測定された温度が前記第二温度基準より低いことを前記第二温度センサが検出したとき、前記第二弁によって前記流体全部を前記第二バイパス導管へ誘導させるように構成される、請求項5に記載の流体圧縮装置。
【請求項7】
前記第二温度基準が第二設定値温度である、請求項5に記載の流体圧縮装置。
【請求項8】
前記多段コンプレッサが、
前記第二圧縮段から前記流体の少なくとも一部を受け取るように作用可能に配置された第三圧縮段と、
(i)前記第一冷却剤との熱交換によって前記第二圧縮段を離れる前記流体の少なくとも一部の冷却を行う第四熱交換器、及び(ii)前記第一冷却剤との熱交換によって前記第二圧縮段において前記流体の冷却を行う第二冷却ジャケット、の少なくとも一方と、をさらに備え、
前記第一冷却剤ループが、さらに、前記第四熱交換器及び前記第二冷却ジャケットの少なくとも一方を通過して前記第一冷却剤を循環させるように作用可能に配置される、請求項1に記載の流体圧縮装置。
【請求項9】
前記多段コンプレッサが、
前記流体が前記第四熱交換器を通過することなく前記第二圧縮段から前記第三圧縮段へ前記流体を選択的に搬送する第三バイパス導管と、
前記第二圧縮段から前記流体を受け取るための第三弁と、
前記第二圧縮段を離れる前記流体の温度を測定するように作用可能に配置された第三温度センサと、をさらに備え、
前記コントローラはさらに前記第三温度センサと信号通信しており、及び前記コントローラは、前記第三温度センサによって測定された温度が第三温度基準より高いことを前記第三温度センサが検出したとき、前記第三弁によって前記流体の少なくとも一部を前記第四熱交換器へ分配させ、前記第三温度センサによって測定された温度が前記第三温度基準より低いことを前記第三温度センサが検出したとき、前記第三弁によって前記流体の少なくとも一部を前記第三バイパス導管へ分配させるように構成される、請求項8に記載の流体圧縮装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記第三温度センサによって測定された温度が前記第三温度基準より低いことを前記第三温度センサが検出したとき、前記第三弁によって前記流体全部を前記第四熱交換器へ誘導させ、前記第三温度センサによって測定された温度が前記第三温度基準より高いことを前記第三温度センサが検出したとき、前記第三弁によって前記流体全部を前記第三バイパス導管へ分配させるように構成される、請求項9に記載の流体圧縮装置。
【請求項11】
前記第三温度基準が第三設定値温度である、請求項10に記載の流体圧縮装置。
【請求項12】
第二冷却剤と第二外部ヒートシンクとの間の熱交換を行う第五熱交換器をさらに備え、
前記多段コンプレッサが、前記第二冷却剤との熱交換によって前記第一圧縮段を離れる前記流体の少なくとも一部の冷却を行う第六熱交換器をさらに備え、
前記第五熱交換器及び前記第六熱交換器を通過して前記第二冷却剤を循環させるように作用可能に配置された第二冷却剤ループをさらに備える、請求項1に記載の流体圧縮装置。
【請求項13】
前記第一圧縮段を通過した前記流体の一部が前記第二圧縮段を迂回できるように作用可能に配置された第一圧力バイパスをさらに備える、請求項8に記載の流体圧縮装置。
【請求項14】
低温貯蔵容器から供給された流体を圧縮する方法であって、
該方法が、
(a)第一熱交換器と、第二熱交換器と、第三熱交換器及び第一冷却ジャケットの少なくとも一方とを通して第一冷却剤を循環させるステップと、
(b)前記第一冷却剤と熱交換することによって前記第一冷却剤を冷却するために前記流体の少なくとも一部を前記第二熱交換器へ送ることによって前記流体を加熱するステップと、
(c)多段コンプレッサの第一圧縮段においてステップ(b)からの前記流体を圧縮するステップと、
(d)前記多段コンプレッサの第二圧縮段(16)において前記第一圧縮段からの前記流体の少なくとも一部をさらに圧縮するステップと、を含み、
前記第一冷却剤が外部ヒートシンクと熱交換するために前記第一熱交換器へ循環させられ、かつ
(i)前記流体が、ステップ(c)において前記第一冷却ジャケットを通過して流れる前記第一冷却剤との熱交換によって冷却され、及び/又は(ii)ステップ(c)の後でかつステップ(d)前に前記流体の少なくとも一部が前記第三熱交換器へ送られて、前記第三熱交換器において前記第一冷却剤との熱交換によって冷却される、方法。
【請求項15】
前記多段コンプレッサの第三圧縮段において前記第二圧縮段からの前記流体の少なくとも一部をさらに圧縮するステップをさらに含み、
(i)前記流体がステップ(d)において第二冷却ジャケットを通過して流れる前記第一冷却剤との熱交換によって冷却され、及び/又は(ii)前記流体の少なくとも一部がステップ(d)後に第四熱交換器へ送られて、前記第四熱交換器において前記第一冷却剤との熱交換によって冷却され、前記第一冷却剤が前記第四熱交換器を通過して循環させられる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第一圧縮段へ流入する前に前記流体の温度を測定するステップと、
前記第一圧縮段へ流入する前の前記流体の測定温度が第一温度基準より低いときより多くの流体を加熱し、前記第一圧縮段へ流入する前の前記流体の測定温度が前記第一温度基準より高いときより少ない流体を加熱するように、前記第二熱交換器へ送られる前記流体の量を調節するステップと、をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第一圧縮段を通過した後に前記流体の温度を測定するステップと、
前記第一圧縮段を通過した後の前記流体の測定温度が第二温度基準より高いときより多くの流体を冷却し、前記第一圧縮段を通過した後の前記流体の測定温度が前記第二温度基準より低いときより少ない流体を冷却するように、前記第三熱交換器(48)へ送られる前記流体の量を調節するステップと、をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第二圧縮段を通過した後に前記流体の温度を測定するステップと、
前記第二圧縮段を通過した後の前記流体の測定温度が第三温度基準より高いときより多くの流体を冷却し、前記第二圧縮段を通過した後の前記流体の測定温度が前記第三温度基準より低いときより少ない流体を冷却するように、第四熱交換器へ送られる前記流体の量を調節するステップと、をさらに含み、
前記第一冷却剤が前記第四熱交換器も通過して循環させられる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
第五熱交換器及び第六熱交換通過して第二冷却剤を循環させるステップをさらに含み、
前記第二冷却剤が第二外部ヒートシンクと熱交換するために前記第五熱交換器へ循環させられ、かつ
ステップ(c)後でかつステップ(d)前に、前記流体が前記第六熱交換器へ送られて、前記第六熱交換器において前記第二冷却剤との熱交換によって冷却される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
流体を圧縮する方法であって、該方法が、
(a)請求項1に記載の流体圧縮装置を用意するステップと、
(b)前記第一熱交換器と、前記第二熱交換器と、前記第三熱交換器及び前記第一冷却ジャケットの少なくとも一方とを通して前記第一冷却剤を循環させるステップと、
(c)前記第一冷却剤と熱交換することによって前記第一冷却剤を冷却するために前記流体の少なくとも一部を前記第二熱交換器へ送ることによって前記流体を加熱するステップと、
(d)前記多段コンプレッサの前記第一圧縮段においてステップ(c)からの前記流体を圧縮するステップと、
(e)前記多段コンプレッサの前記第二圧縮段において前記第一圧縮段からの前記流体の少なくとも一部をさらに圧縮するステップと、を含み、
前記第一冷却剤が前記外部ヒートシンクと熱交換するために前記第一熱交換器へ循環させられ、かつ
(i)前記流体がステップ(d)において前記第一冷却ジャケットを通過して流れる前記第一冷却剤との熱交換によって冷却され、及び/又は(ii)ステップ(d)後でかつステップ(e)前に前記流体の少なくとも一部が前記第三熱交換器へ送られて、第三熱交換器において前記第一冷却剤との熱交換によって冷却される、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−108623(P2013−108623A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−251951(P2012−251951)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】