説明

媒体処理装置

【課題】外観品位を損なうことなく搬送路開放用の開閉カバーを取り付けることができ、搬送路開放時に開閉カバーの回転中心側の端部が搬送路内に突入することの無い小切手処理装置を提案すること。
【解決手段】小切手読取装置1では、上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を共通の支軸33を中心として左右に開くとU字状の小切手搬送路5が開放状態に切り替わる。双方の上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32の先端部31a,32aは、支軸33を中心とする上流側凸円弧面部分314,315、下流側凸円弧面部分326によって規定されている。搬送路を規定している内側側面部分311,321が、上流側凸円弧面部分314,315の端、下流側凸円弧面部分326の端に対して、それらの接線方向に延びる状態に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気インク文字が印刷されている小切手、手形、請求書(スタブ)などのシート状媒体から磁気インク文字や画像を読み取るために用いる小切手読取装置などの媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行などの金融機関においては、持ち込まれた小切手、手形、請求書などの小切手類を小切手処理装置に掛けて、それらの画像および磁気インク文字を読み取り、読取結果に応じて小切手類の仕分け作業などを行っている。小切手処理装置はデスク、カウンタなどに置いて使用されるので、小切手を搬送する搬送路を小切手供給側から小切手回収側に向けてU字状に湾曲して延びる状態に形成して、装置寸法の小型、コンパクト化が図られている。
【0003】
このような小切手処理装置では、U字状の搬送路内に小切手が詰まった場合や、搬送路に配置されている磁気ヘッド、スキャナのクリーニングなどのメンテナンスを行う場合には、装置ケースを外して搬送路を開放状態にして、磁気ヘッドなどを露出させるようにしている。
【0004】
特許文献1にはこのような構造を備えた銀行小切手類の読取装置が開示されている。ここに開示の小切手類の読取装置では、U字状の搬送路を覆っているケースのうち、スキャナが配置されている部分を覆っているケース上側部分が取り外し可能となっている。また、スキャナのセンサ部が垂直軸を中心として、固定側のスキャナユニットに対して開閉可能となっている。搬送路に小切手が詰まった場合などにおいては、ケース上側部分を取り外し、スキャナのセンサ部を開き、搬送路上にある小切手を取り除くことができる。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0257626号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ケース上側部分を取り外して搬送路を露出させて詰まっている小切手を取り出す際には、ケースによって覆われていた内部の回路基板、搬送機構の部品なども露出状態になるので、これらの部分に操作者の指先などが接触する危険性が高い。露出した部分に指先などが当ると、回路基板の短絡、部品損傷、あるいは指先に切り傷が付くなどのおそれがある。特に、スキャナ、磁気ヘッドのクリーニングなどのメンテナンス時には、メンテナンス用の工具が露出している部分に当って部品を破壊するおそれがある。さらに、取り外したケース上側部分を元の位置に取り付ける際には正確に位置決めして嵌め込む必要があり、ケース上側部分の取り付けをワンタッチ操作で行うことが困難である。
【0007】
そこで、搬送路が形成されている装置ケースの部分を開閉可能な開閉カバーによって規定し、開閉カバーを開けると搬送路が開放状態に切り替わるように構成することが考えられる。このようにすれば、開閉カバーを開けるというワンタッチの操作により搬送路を開放できるので、搬送路に詰まった小切手の取り出し作業、スキャナなどのメンテンナス作業を効率良く行うことが可能になる。
【0008】
ここで、装置ケースの一部を開閉カバーとした場合には、開閉カバーの開閉中心側の端部が、開閉時に装置ケースの側の部位に干渉しないように、開閉カバーの回転中心を規定している支軸の位置を装置ケースの外側のずらずことが必要である。また、開閉カバーを開けた際に、その回転中心側の端部が搬送路内に突入すると、例えばそこに詰まっている小切手が当該端部によって押し付けられてしまい、取り出すことが困難になってしまう。したがって、開閉カバーを開けた際に回転中心側の端部が搬送路内に突入しないように、支軸の位置を装置ケースの外側にずらすことが必要である。
【0009】
しかしながら、支軸を外側にずらすと、支軸を覆っている装置ケースの部分あるいは開閉カバーの側の部分を他のケース表面部分に対して外方に突出した突出形状にする必要がある。このため、装置の外観品位が損なわれるという問題が発生する。
【0010】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、外観品位を損なうことなく搬送路開放用の開閉カバーを取り付けることができると共に、搬送路開放時に当該開閉カバーの回転中心側の端部が搬送路内に突入することの無いように構成された媒体処理装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の媒体処理装置は、シート状媒体を搬送する媒体搬送路と、当該媒体搬送路が形成されている装置ケースと、当該装置ケースに開閉可能に取り付けた開閉カバーと、当該開閉カバーの開閉中心を規定している支軸とを有し、前記媒体搬送路の少なくとも一部の搬送路部分は、前記装置ケースと、閉じ位置にある前記開閉カバーとの間に形成されており、当該開閉カバーを前記閉じ位置から開くと、前記搬送路部分が開放状態に切り替わるようになっており、前記開閉カバーは、前記搬送路部分を規定している内側側面部分と、当該内側側面部分の前記支軸側の端に連続している支軸側端面部分と、当該支軸側端面部分に連続している外側側面部分とを備えており、前記支軸側端面部分は前記支軸を中心とする凸円弧面によって規定されており、前記内側側面部分は、前記凸円弧面の端から、前記凸円弧面の接線方向に延びていることを特徴としている。
【0012】
本発明の媒体処理装置では、開閉カバーの支軸側の端部の輪郭形状が、支軸を中心とする凸円弧面によって規定されており、内側側面部分は、前記凸円弧面の端から、当該凸円弧面の接線方向に延びて開閉カバー側の搬送路部分を規定している。したがって、開閉カバーを開けた際に、その支軸側の端部が、閉じ状態における当該端部よりも内側に突出することがない。換言すると、支軸側の端部が搬送路部分に突出することがない。よって、当該搬送路部分に詰まっているシート状媒体を取り出すために開閉カバーを開けた際に、開閉カバーの端部が搬送路部分に突出することによって装置ケース側にシート状媒体が押し付けられてしまうことがない。
【0013】
また、支軸側の端部には、支軸を覆う部分に外方に突出した突起などが形成されないので、開閉カバーを取り付けることによる外観品位の低下も防止できる。
【0014】
ここで、前記開閉カバーの前記支軸側端面部分に対峙している端面部分を形成し、当該端面部分を、前記支軸を中心とする前記凸円弧面よりも大きな半径の凹円弧面によって規定することが望ましい。
【0015】
このようにすれば、開閉カバーと装置ケースの間の隙間を小さくしても、開閉カバーの開閉時に当該開閉カバーが装置ケースに干渉しないようにできる。
【0016】
また、開閉カバーの外面部分と、装置ケース側の外面部分とを同一面上に位置させても、開閉カバーの開閉時に、当該開閉カバーが装置ケース側の部分に干渉することがない。したがって、開閉カバーが取り付けられている部分を外観上好ましい造形にすることができる。
【0017】
次に、本発明を、U字状に湾曲している媒体搬送路を共通の支軸を中心として開閉する上流側開閉カバーおよび下流側開閉カバーによって開放できる構造の媒体処理装置に適用する場合には、次のように構成することが望ましい。
【0018】
すなわち、前記上流側開閉カバーは、前記上流側搬送路部分を規定している内側側面部分と、当該内側側面部分の前記支軸側の端に連続している上流側端面部分と、当該上流側端面部分に連続している外側側面部分とを備え、前記下流側開閉カバーは、前記下流側搬送路部分を規定している内側側面部分と、当該内側側面部分の前記支軸側の端に連続している下流側端面部分と、当該下流側端面部分に連続している外側側面部分とを備え、前記上流側端面部分は、前記支軸の軸線方向に沿って、当該支軸を中心とする上流側凸円弧面部分と、当該支軸を中心とする上流側凹円弧面部分とを備え、前記下流側端面部分は、前記支軸の軸線方向に沿って、当該支軸を中心とする下流側凸円弧面部分と、当該支軸を中心とする下流側凹円弧面部分とを備え、前記上流側凸円弧面部分には前記下流側凹円弧面部分が対峙し、前記上流側凹円弧面部分には前記下流側凸円弧面部分が対峙していることを特徴とする。
【0019】
また、前記上流側凸円弧面部分と前記下流側凸円弧面部分はほぼ同一の凸円弧面であり、前記上流側凹円弧面部分と前記下流側凹円弧面部分はほぼ同一の凹円弧面であり、前記凹円弧面は前記凸円弧面よりも大きな半径の円弧面であることを特徴とする。
【0020】
また、前記上流側搬送路部分を規定している前記内側側面部分は、前記上流側凸円弧面部分の端から、当該上流側凸円弧面部分の接線方向に延びており、前記下流側搬送路部分を規定している前記内側側面部分は、前記下流側凸円弧部分の端から、当該下流側凸円弧部分の接線方向に延びていることを特徴としている。
【0021】
本発明の媒体処理装置では、U字状の媒体搬送路を規定している上流側開閉カバーおよび下流側開閉カバーを共通の支軸を中心として開くと媒体搬送路の上流側搬送路部分および下流側搬送路部分が開放状態に切り替わる。したがって、ワンタッチ操作により上流側および下流側搬送路部分を開放状態にでき、そこに詰まっているシート状媒体の除去作業などを行うことができる。
【0022】
また、作業終了後にも、共通の支軸を中心として上流側開閉カバーおよび下流側開閉カバーを閉じるというワンタッチ操作によって、上流側および下流側搬送路部分を元の状態に戻すことができる。さらに、上流側および下流側搬送路部分を開放状態に切り替える操作、および元の状態に戻す操作においては、上流側開閉カバーおよび下流側開閉カバーに触れるだけでよいので、内蔵部品に傷が付くことがなく、また、操作者が指を汚すなどのおそれもない。
【0023】
これに加えて、上流側開閉カバーおよび下流側開閉カバーにおける支軸側の端部の輪郭形状が上記のように形成されているので、これらを開けた場合に、双方の支軸側の端部が搬送路側に突出することがない。したがって、搬送路に詰まっているシート状媒体を取り出すためにこれらの開閉カバーを開けた際に、シート状媒体がこれらの開閉カバーの端部によって装置ケース側に押し付けられてしまうことがない。
【0024】
また、双方の開閉カバーの隙間を狭くしても、開閉時に双方の支軸側の端部が相互に干渉することがなく、双方の開閉カバーの支軸側の端部の外側側面部分は、他のケース表面部分から突出している部分も形成されておらず、共に同一面上に位置している。したがって、外観品位の点からも好ましい。
【0025】
次に、本発明の媒体処理装置は、小切手、手形、請求書などの読取を行う小切手読取装置として用いることができる。この場合には、媒体処理装置は、シート状媒体としての小切手を前記媒体搬送路に供給するための小切手供給部と、小切手に担持されている情報を読み取るために、前記媒体搬送路上に配置されている情報読取手段と、この情報読取手段によって情報が読み取られた後に前記媒体搬送路から排出される小切手を受け取るための小切手排出部とを備えた構成とされる。
【0026】
本発明の媒体処理装置では、開閉カバーの支軸側の端部の輪郭形状が、支軸を中心とする凸円弧面によって規定されており、内側側面部分は、前記凸円弧面の端から、当該凸円弧面の接線方向に延びて開閉カバー側の搬送路部分を規定している。したがって、開閉カバーを開けた際に、その支軸側の端部が、閉じ状態における当該端部よりも内側に突出することがない。換言すると、支軸側の端部が搬送路部分に突出することがない。よって、当該搬送路部分に詰まっているシート状媒体を取り出すために開閉カバーを開けた際に、開閉カバーの端部が搬送路部分に突出することによって装置ケース側にシート状媒体が押し付けられてしまうことがない。
【0027】
また、支軸側の端部には、支軸を覆う部分に外方に突出した突起などが形成されないので、開閉カバーを取り付けることによる外観品位の低下も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した小切手処理装置の実施の形態を説明する。
【0029】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係る小切手読取装置1の外観斜視図であり、図2は小切手読取装置1を反対側から見た場合の外観斜視図であり、図3は小切手読取装置1の平面図である。
【0030】
これらの図を参照して説明すると、小切手読取装置1は、装置ケース2と開閉カバー3を備えている。装置ケース2と開閉カバー3の間には、小切手4を搬送するための小切手搬送路5が形成されている。小切手搬送路5は、上から見た場合に略U字状に湾曲して延びている細幅の垂直溝によって規定されている。小切手搬送路5の小切手搬送方向の上流側の端は、細幅の垂直溝からなる小切手送り出し通路6を介して広幅の垂直溝からなる小切手供給部7に繋がっている。小切手搬送路5の下流端は、左右に分岐している細幅の垂直溝からなる左右の分岐通路8および分岐通路9を介して、左右の広幅の垂直溝からなる第1小切手排出部11および第2小切手排出部12に繋がっている。
【0031】
小切手4は、図1に示すように、その表面4aの下端部分に、その長辺方向に磁気インク文字列4Aが印刷されている。また、表面4aには、所定の模様の背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、裏面4bには裏書き欄などが設けられている。小切手4は、上下方向を揃え、表面4aがU形状の小切手搬送路5の外側を向くように、小切手供給部7に挿入される。
【0032】
小切手供給部7から小切手送り出し通路6を介して送り出された小切手4は、小切手搬送路5に沿って搬送されながら、その表面4aに印刷されている磁気インク文字列4A、その表面画像および裏面画像が読み取られる。これらの情報が正常に読み取られた小切手4は、その表面に「電子決済済み」などの印刷が行われた後に、第1小切手排出部11に振り分けられて、そこに排出され、読取不能、読取異常などが発生した小切手4については、印刷が行われることなく、第2小切手排出部12に振り分けられて、そこに排出されるようになっている。
【0033】
図4は、開閉カバー3を開けて搬送路を開放した状態の小切手読取装置1を図1と同一の方向から見た場合の外観斜視図である。図5は同状態での小切手読取装置1を反対側から見た場合(図2と同一の方向から見た場合)の外観斜視図である。図6は同状態での小切手読取装置1の平面図である。また、図7は開閉カバー3の開閉中心部分の形状を示す説明図である。
【0034】
これらの図も参照して説明すると、装置ケース2は、U字状の小切手搬送路5に沿った輪郭形状の垂直な外周側面部分21を備えた中央ケース部分22と、左右の側方ケース部分23,24と、中央ケース部分22および側方ケース部分24の間に配置されている仕切り用ケース部分25とを備えている。中央ケース部分22と側方ケース部分23の間には小切手供給部7が形成されている。中央ケース部分22と他方の側方ケース部分24の間は、仕切り用ケース部分25によって左右に仕切られて、第1小切手排出部11、第2小切手排出部12が形成されている。
【0035】
中央ケース部分22における左右の側方ケース部分23,24の間の外周側面部分21は左右から開閉カバー3によって覆われている。開閉カバー3は、側方ケース部分23の側に配置されている上流側開閉カバー31と、側方ケース部分24の側に配置されている下流側開閉カバー32とを備えている。中央ケース部分22と上流側開閉カバー31の間に、小切手搬送路5における上流側搬送路部分5aが形成されており、中央ケース部分22と下流側開閉カバー32の間に、小切手搬送路5における下流側搬送路部分5bが形成されている。
【0036】
上流側開閉カバー31の先端部31aと下流側開閉カバー32の先端部32aは支軸側の端部であり、装置ケース2の側に配置されている垂直な支軸33を中心として左右に開閉可能な状態で、当該支軸33に取り付けられている。支軸33は、U字状に湾曲している小切手搬送路5における搬送方向の中間点にほぼ対応する部位に配置されている。図4〜図6に示すように、上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を左右に開くと、上流側搬送路部分5aおよび下流側搬送路部分5bがそれぞれ開放状態に切り替わる。
【0037】
(搬送機構)
次に、図8は小切手読取装置1の搬送機構を示す説明図である。小切手供給部7には、ここに積層状態で挿入された小切手4を小切手搬送路5に向けて送り出すための繰り出しローラ41と、小切手4を繰り出しローラ41に押し付けるための押し付け部材42が配置されている。また、繰り出しローラ41によって繰り出された小切手4を小切手搬送路5に送り出すための小切手送り出し通路6には、小切手4を1枚ずつに分離して小切手搬送路5に送り出すための分離機構として、分離パッド43と、分離ローラ44およびリタードローラ45からなる分離ローラ対とが配置されている。繰り出しローラ41、分離ローラ44および押し付け部材42は、共通の送り出しモータ46によって駆動されるようになっている。
【0038】
繰り出しローラ41によって繰り出された小切手4を小切手搬送路5に沿って搬送する搬送機構は、搬送モータ47と、この搬送モータ47の回転軸に取り付けた駆動ローラ48と、小切手搬送路5に沿って配置されている搬送ローラ51〜57と、各搬送ローラ51〜57に押し付けられて連れ回りする押えローラ61〜67とを備えている。押えローラ67の回転は、伝達歯車68を介して、排出ローラ69に伝達されるようになっている。また、搬送モータ47の回転を各搬送ローラ51〜57に伝達するための無端ベルト49を備えており、無端ベルト49は、駆動ローラ48から、ガイドローラ71、搬送ローラ56、ガイドローラ72、搬送ローラ57、搬送ローラ51,52、ガイドローラ73,74、搬送ローラ53,54,55を経由して再び駆動ローラ48に戻る無限軌道に沿って移動する。
【0039】
搬送ローラ51〜54は、上流側搬送路部分5aにおける上流端、その中程の位置、および下流側の部分にそれぞれ配置されている。搬送ローラ55および搬送ローラ56は、下流側搬送路部分5bにおける上流側の部位および中程の部位に配置されており、搬送ローラ57は第2小切手排出部12の排出口部分に配置されている。排出ローラ69は第1小切手排出部11の排出口部分に配置されている。
【0040】
上流側搬送路部分5aにおける搬送ローラ51,52の間には、磁気インク文字着磁用の磁石81が配置されている。搬送ローラ52,53の間には、表面画像読取装置としての表面側コンタクトイメージスキャナ82および裏面画像読取装置としての裏面側コンタクトイメージスキャナ83が配置されている。搬送ローラ53,54の間には、磁気インク文字読取用の磁気ヘッド84、および当該磁気ヘッド84に小切手4を押さえ付けるための押さえローラ85が配置されている。
【0041】
下流側搬送路部分5bにおける搬送ローラ56の下流側には印刷機構86が配置されている。印刷機構86は小切手4を押圧する印刷位置と、この印刷位置から後退した待機位置の間を、駆動用モータ(図示せず)によって移動可能となっている。印刷機構86は、プランジャにより押されて小切手4に印刷するようなスタンプ機構でもよい。
【0042】
小切手搬送路5には、小切手搬送制御のために各種のセンサが配置されている。磁石81の近傍位置には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器91が配置されている。磁気ヘッド84による読取位置84Aの近傍には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器92が配置されている。搬送ローラ55の手前側の位置にはジャム検出器93が配置されており、このジャム検出器93によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、小切手搬送路5に小切手が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。搬送ローラ56の手前側の位置には、印刷機構86によって印刷される小切手4の有無を検出するための印刷検出器94が配置されている。さらに、小切手搬送路5から第1小切手排出部11、第2小切手排出部12に分岐している分岐通路8,9の位置には、これらに排出される小切手を検出するための排出検出器95が配置されている。
【0043】
分岐通路8,9の上流端には、不図示の駆動モータによって切り替え操作される切り替え板96が配置されている。切り替え板96は、第1小切手排出部11、第2小切手排出部12に対して、小切手搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くためのものである。
【0044】
なお、本例では、小切手搬送路5における磁気ヘッド84による読取位置84Aから印刷機構86による印刷位置86Aまでの長さは、読取対象の小切手4の長辺方向(搬送方向)の長さとほぼ同一である。したがって、小切手4の先頭が印刷位置86Aに達した時点では、その後端が丁度、磁気ヘッド84の読取位置84Aを通過し終わった状態になる。したがって、小切手4は、磁気ヘッド84により磁気インク文字が読み取られながら、搬送ローラ54および押えローラ64、並びに、搬送ローラ55および押えローラ65に、順次に送り込まれながら搬送されることにある。また、小切手4は、表面側コンタクトイメージスキャナ82、裏面側コンタクトイメージスキャナ83により画像が読み取られながら、搬送ローラ53および押えローラ63、搬送ローラ54および押えローラ64、並びに、搬送ローラ55および押えローラ65に、順次に送り込まれながら搬送されることになる。
【0045】
(制御系)
図9は小切手読取装置1の制御系を示す概略ブロック図である。小切手読取装置1の制御系は、ROM、RAMを備え、CPUを中心に構成された制御部100を有している。制御部100は通信ケーブル102を介して上位のコンピュータシステム103に接続される。コンピュータシステム103は表示部103a、キーボード、マウスなどの操作部103bなどの入出力機器を備えており、当該コンピュータシステム103の側から小切手読取動作の開始指令などが制御部100に入力される。
【0046】
制御部100は読取動作の開始指令を受け取ると、送り出しモータ46、搬送モータ47を駆動して小切手4を一枚ずつ小切手搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を小切手搬送路5に沿って搬送させる。制御部100には、表面側コンタクトイメージスキャナ82、裏面側コンタクトイメージスキャナ83および磁気ヘッド84によって読み取られた小切手4の表面画像情報、裏面画像情報および磁気インク文字情報が入力される。これらの情報は、コンピュータシステム103に供給され、画像処理、文字認識処理などが行われ、読取が正常に行われたか否かが判断され、判断結果が制御部100に供給される。制御部100は判断結果に基づき印刷機構86および切り替え板96の駆動を制御する。これらの処理は、コンピュータシステム103でなく、小切手読取装置1の制御部100で行うことも可能である。
【0047】
制御部100による小切手4の搬送制御は、小切手搬送路5に配置されている用紙長検出器91、重送検出器92、ジャム検出器93、印刷検出器94および排出検出器95からの検出信号に基づき行われる。なお、制御部100には、装置ケース2に形成された電源スイッチなどの操作スイッチを含む操作部105が接続されている。
【0048】
(小切手処理動作)
図10は小切手読取装置1の制御部100による処理動作を示す概略フローチャートである。このフローチャートに従って読み取り動作を説明する。まず、操作者が上位のコンピュータシステム103の操作部103bから読み取り開始指令を入力すると、送り出しモータ46によって繰り出しローラ41が回転すると共に押し付け部材42が移動して小切手4を繰り出しローラ41に押し付ける。この結果、小切手4が繰り出しローラ41によって送り出される。小切手送り出し通路6に繰り出された小切手4は、当該小切手送り出し通路6に配置されている分離機構(分離パッド43、並びに、分離ローラ44およびリタードローラ45)によって一枚ずつに分離されて小切手搬送路5に送り出される(ステップST1、ステップST2)。
【0049】
用紙長検出器91によって送り出された小切手4の先端が検出されると、搬送モータ47が駆動して、各搬送ローラ51〜57が回転駆動される。送り出された小切手4は、搬送ローラ51〜56に順次に引き渡されながら小切手搬送路5に沿って搬送される(ステップST3)。搬送される小切手4の表面画像および裏面画像、並びに磁気インク文字が、それぞれ、表面側コンタクトイメージスキャナ82、裏面側コンタクトイメージスキャナ83および磁気ヘッド84によって読み取られる(ステップST4)。
【0050】
読み取られた情報は、通信ケーブル102を介して上位のコンピュータシステム103に送信される(ステップST5)。コンピュータシステム103の側において読み取られた表面画像、裏面画像、および磁気インク文字情報を処理して、読取が正常に行われたか否かを判断する。小切手4が上下逆の状態で搬送された場合には、磁気インク文字を認識できないので、読取不良であると判断される。小切手4が表裏逆の状態で搬送された場合には、磁気インク文字情報が得られないので、読取不能であると判断される。また、小切手4が折れていたり、ちぎれていたり、搬送時にスキューするなどで、磁気インク文字の一部が読取不能の場合にも読取不良であると判断される。さらに、表裏の画像情報から、小切手4が折れていたり、ちぎれていたり、搬送時にスキューするなどで、金額情報などの所定の情報が認識できない場合などにおいても読取不良であると判断される。
【0051】
ここで、小切手読取装置1の側では、搬送される小切手4の先頭が印刷機構86による印刷位置86Aに到った時点で、搬送機構による当該小切手4の搬送を一時的に止める(ステップST6)。搬送される小切手4の先頭位置は、例えば、用紙長検出器91によって小切手4の先頭が検出された時点からの搬送モータ47のステップ数により管理される。小切手4の搬送を止めた状態で、読取の良否の判断結果をコンピュータシステム103の側から受信するのを待つ(ステップST7)。
【0052】
判断結果を受信した後は、それが正常な読取であると判断されている場合には、小切手4の搬送を再開し、同時に、印刷機構86を印刷位置に移動する(ステップST8、ステップST9)。小切手4は印刷機構86によって「電子決済済み」などの印刷が行われながら搬送され、切り替え板96によって第1小切手排出部11の側に排出される(ステップST10)。排出検出器95によって小切手4の後端が検出された後は、搬送機構の駆動を止める(ステップST11、ステップST12)。しかる後に、次の小切手4の送り出し、および搬送を開始する。
【0053】
これに対して、読取不良、読取不能などの判断結果が出た場合には(ステップST8)、小切手4の搬送を再開し(ステップST13)、同時に、切り替え板96の切り替え動作を行う。印刷機構86は待機位置に保持し、小切手4への印刷は行わない。小切手4は切り替え板96によって第2小切手排出部12に振り分けられ、そこに排出される(ステップST14)。排出検出器95によって小切手4の後端が検出された後は搬送機構の駆動を止め(ステップST11、ステップST12)、次の小切手4の読取のための動作を開始する。
【0054】
なお、重送検出器92によって小切手の重送状態が検出された場合には、割り込み処理が行われ、搬送を直ちに停止し、例えば、操作部105に配置されている警告ランプなどを介して異常搬送が発生した旨の警告を行うと共に、コンピュータシステム103に通知し、小切手が小切手搬送路5から取り除かれて初期状態に戻されるのを待つ。同様に、ジャム検出器93によって小切手が小切手搬送路5に詰まった状態に陥ったことが検出された場合にも同様な割り込み処理が発生し、その後、同様の処理をする。
【0055】
(開閉カバー)
次に、図1〜図7を参照して、開閉カバー3を構成している上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32の構成を詳細に説明する。
【0056】
まず、上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32は、それぞれ別個のロック機構によってそれらの閉じ位置にロックされている。図4、図6に示すように、上流側開閉カバー31のロック機構は、上流側開閉カバー31の下部の後端部31bに形成したカバー側係合突起34と、側方ケース部分23における後端部31bに対峙する端面23aに進退可能に取り付けた係合突起35とを備えている。係合突起35は不図示のばね力によって突出方向に付勢されている。側方ケース部分23の外側面部分にはロック解除用のスライドボタン36が取り付けられている。
【0057】
スライドボタン36をばね力に逆らってスライドさせると、係合突起35がカバー側係合突起34から外れ、上流側開閉カバー31を支軸33を中心として側方に開くことができる。開いている上流側開閉カバー31を閉じると、上流側開閉カバー31は、その後端部31bより突出するカバー側係合突起34の角によって係合突起35を押し込みながら移動する。その閉じ位置まで移動すると、係合突起35がカバー側係合突起34に係合し、ロック状態に戻る。他方の下流側開閉カバー32にも同様なロック機構(カバー側係合突起37、係合突起38およびロック解除用のスライドボタン39)が配置されている。
【0058】
次に、図4、図5、図6を参照して説明すると、上流側開閉カバー31には、上流側搬送路部分5aに配置されている表面側コンタクトイメージスキャナ82と、押えローラ61〜64とが搭載されている。下流側開閉カバー32には、下流側搬送路部分5bに配置されている押えローラ65および押えローラ66が搭載されている。上流側開閉カバー31を開くと、上流側搬送路部分5aが開放状態になると共に、表面側コンタクトイメージスキャナ82および裏面側コンタクトイメージスキャナ83の読取面が露出状態になる。また、装置ケース2の側に取り付けられている磁気ヘッド84が露出状態になる。同様に、下流側開閉カバー32を開くと、下流側搬送路部分5bが開放状態になると共に、装置ケース2の側に取り付けられている印刷機構86が露出状態になる。
【0059】
なお、本例では、磁気ヘッド84および押さえローラ85は、共に装置ケース2の側に搭載され、磁気ヘッド84は小切手4の磁気インク文字列4Aを走査できるように配置されている。押さえローラ85を上流側開閉カバー31側に搭載し、押さえローラ85に対峙するように磁気ヘッド84を装置ケース2の側に搭載するようにしてもよい。この場合、上流側開閉カバー31を開くと磁気ヘッド84をより露出した状態とすることができ、メンテナンス作業が一層容易になる。また、この場合には、表面側コンタクトイメージスキャナ82や裏面側コンタクトイメージスキャナ83、印刷機構86などは、小切手搬送路5に対して逆側に配置されることになる。
【0060】
この構成の開閉カバー3を備えている小切手読取装置1では、小切手4が小切手搬送路5内に詰まった場合には、左右のスライドボタン36,39を操作して、左右の上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を支軸33を中心として左右に開ける。ロック機構が解除されると、搬送ローラに押し付けられている押圧ローラの押圧力によって押されて、これら上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32が開く。勿論、これら上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を支軸33に取り付けた捻りばねなどの付勢部材によって開く方向に付勢しておいてもよい。いずれの場合においても、スライドボタン36,39を操作するというワンタッチ操作により、これらを開けることができる。
【0061】
上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32が開くと、図4〜図6に示すように、小切手搬送路5(上流側搬送路部分5aおよび下流側搬送路部分5b)が開放状態になる。したがって、ここに詰まっている小切手4を簡単に除去できる。除去後は上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32をワンタッチ操作で閉じることができる。
【0062】
また、磁気ヘッド84、表面側コンタクトイメージスキャナ82、裏面側コンタクトイメージスキャナ83、印刷機構86のクリーニング、消耗品交換などのメンテナンス作業においても、同様に、上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を開けることができる。これらを開けると、これらの、磁気ヘッド84、表面側コンタクトイメージスキャナ82、裏面側コンタクトイメージスキャナ83、印刷機構86が露出状態になる。したがって、メンテナンス作業を簡単に行うことができる。また、これらメンテナンス対象の部品以外の部品は、開閉カバー3により露出する部分ではなく、装置ケース2の内部に収納しておくことにより、作業時に損傷を受けることを回避できる。
【0063】
このように、上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を共通の支軸33を中心として開けるという簡単な操作によって小切手搬送路5を開放状態に切り替えることができ、これらを支軸33を中心として閉じるという簡単な操作によって開放状態の小切手搬送路5を元の状態に戻すことができる。したがって、小切手搬送路5を開放状態に切り替えて行われる作業を簡単に行うことができ、作業時に小切手読取装置1のメンテナンス対象外の部品を損傷してしまうことを防止でき、また、作業時に指先などを汚すおそれもない。
【0064】
さらに、上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を別個のロック機構によって閉じ位置にロックしているので、それらを精度良く閉じ位置に保持することができる。
【0065】
(開閉カバーの支軸側の端部の形状)
次に、図7を主に参照して、上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32の先端部31a,32a、すなわち、支軸33側の端部の輪郭形状を詳細に説明する。なお、図7においては、先端部31a,32aの形状を分かりやすく表示するために支軸33を省略してある。
【0066】
まず、上流側開閉カバー31は、上流側搬送路部分5aを規定している内側側面部分311と、当該内側側面部分311の支軸33側の端に連続している上流側端面部分312(支軸側端面部分)と、当該上流側端面部分312に連続している外側側面部分313とを備えている。同様に、下流側開閉カバー32も、下流側搬送路部分5bを規定している内側側面部分321と、当該内側側面部分321の支軸33側の端に連続している下流側端面部分322(支軸側端面部分)と、当該下流側端面部分322に連続している外側側面部分323とを備えている。
【0067】
上流側開閉カバー31における上流側端面部分312は、図2、図5、図7から分かるように、支軸33の軸線方向の上下の端に形成されている当該支軸33を中心とする上流側凸円弧面部分314および上流側凸円弧面部分315と、これらの間に形成されている支軸33を中心とする上流側凹円弧面部分316とを備えている。下流側開閉カバー32の下流側端面部分322は、上流側端面部分312と相補的な輪郭形状をしており、支軸33の軸線方向の上下の端に形成されている当該支軸33を中心とする下流側凹円弧面部分324および下流側凹円弧面部分325と、これらの間に形成されている支軸33を中心とする下流側凸円弧面部分326とを備えている。
【0068】
上下の上流側凸円弧面部分314,315はほぼ180度の角度を張る円弧面である。これら上下の上流側凸円弧面部分314,315には、それぞれ、下流側凹円弧面部分324,325が一定の間隔で対峙しており、上流側凹円弧面部分316には下流側凸円弧面部分326が同じく一定の間隔で対峙している。上流側凸円弧面部分314,315と下流側凸円弧面部分326は同一の凸円弧面によって規定されており、下流側凸円弧面部分326もほぼ180度の角度を張る円弧面である。
【0069】
上流側凹円弧面部分316と下流側凹円弧面部分324,325は同一の凹円弧面によって規定されている。また、当該凹円弧面は、上流側凸円弧面部分314,315と下流側凸円弧面部分326を規定している凸円弧面よりも僅かに大きな半径の円弧面である。さらに、これらの凹円弧面は、180度未満の角度を張る円弧面であり、本例では90度前後の角度を張る円弧面とされている。
【0070】
ここで、上流側開閉カバー31の先端部31aにおいて、上流側搬送路部分5aを規定している内側側面部分311は、上流側凸円弧面部分314,315の端に対して、それらの接線方向に延びる状態に接続されている。したがって、上流側凸円弧面部分314,315が支軸33を中心として内側に回転しても、それらが、上流側搬送路部分5aに突入することがない。同様に、下流側開閉カバー32の先端部32aにおいて、下流側搬送路部分5bを規定している内側側面部分321は、下流側凸円弧面部分326の端に対して、その接線方向に延びる状態に接続されている。したがって、下流側凸円弧面部分326が支軸33を中心として内側に回転しても、それが下流側搬送路部分5bに突入することがない。
【0071】
図3および図6から分かるように、このように先端部31a,32aの輪郭形状が設定されている上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32では、それらを開いた際に、先端部31a,32aが、閉じ状態における当該先端部31a,32aよりも内側に突出することがない。すなわち、先端部31aの上流側凸円弧面部分314,315、および先端部32aの下流側凸円弧面部分326は、支軸33を中心とする円弧面によって規定されている。また、上流側開閉カバー31の先端部31aにおいて、上流側搬送路部分5aを規定している内側側面部分311が、上流側凸円弧面部分314,315の端に対して、それらの接線方向に延びる状態に接続されている。したがって、上流側凸円弧面部分314,315が支軸33を中心として内側に回転しても、すなわち、上流側開閉カバー31を開いても、それらが、上流側搬送路部分5aに突入することがない。同様に、下流側開閉カバー32の先端部32aにおいて、下流側搬送路部分5bを規定している内側側面部分321が、下流側凸円弧面部分326の端に対して、その接線方向に延びる状態に接続されている。したがって、下流側凸円弧面部分326が支軸33を中心として内側に回転しても、すなわち、下流側開閉カバー32を開いても、それが下流側搬送路部分5bに突入することがない。
【0072】
このように、上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32を開いた場合に、先端部31a,32aが上流側搬送路部分5a、下流側搬送路部分5bに突入することがない。よって、当該上流側搬送路部分5a、下流側搬送路部分5bに詰まっている小切手4を取り出すために上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32を開けた際に、先端部31a,32aがそれぞれ上流側搬送路部分5a、下流側搬送路部分5bに突入することによって、小切手4が装置ケース側の外周側面部分21に押し付けられてしまうことがない。したがって、詰まっている小切手4の除去作業に支障を来たすことがない。
【0073】
また、双方の上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32を閉じた状態においては、それらの間の隙間が微小であるので、異物などが内部に侵入することがなく、また、外観品位が悪化することもない。さらに、双方の上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32の外側側面部分313,323はほぼ同一面上に位置しているので、当該部分が突出している場合等とは異なり、外観品位を良好な状態に維持できる。
【0074】
さらに、双方の上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32の先端部31a,32aが相互に入り組んだ状態にしてあり、相互に対峙している部分を同心状の上流側凸円弧面部分314,315および下流側凹円弧面部分324,325、並びに、上流側凹円弧面部分316および下流側凸円弧面部分326によって規定している。したがって、これらの隙間を狭くしても、双方の上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32の開閉時にこれらが干渉することもない。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態に係る小切手読取装置1においては、小切手4が小切手搬送路5内に詰まった場合に、左右のスライドボタン36,39を操作して、左右の上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を支軸33を中心として左右に開ける。ロック機構が解除されると、搬送ローラ51〜56に押し付けられている押えローラ61〜66の押圧力によって押されて、これら上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32が開く。勿論、これら上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を支軸33に取り付けた捻りばねなどの付勢部材によって開く方向に付勢しておいてもよい。いずれの場合においても、スライドボタン36,39を操作するというワンタッチ操作により、これらを開けることができる。
【0076】
これら上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32が開くと、図4〜図6に示すように、小切手搬送路5(上流側搬送路部分5aおよび下流側搬送路部分5b)が開放状態になる。したがって、ここに詰まっている小切手4を簡単に除去できる。除去後は上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32をワンタッチ操作で閉じることができる。
【0077】
また、磁気ヘッド84、表面側コンタクトイメージスキャナ82、裏面側コンタクトイメージスキャナ83、印刷機構86のクリーニング、消耗品交換などのメンテナンス作業においても、上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32を開けると、これらの部分の表面側コンタクトイメージスキャナ82、裏面側コンタクトイメージスキャナ83、磁気ヘッド84、印刷機構86が露出状態になる。したがって、メンテナンス作業を簡単に行うことができる。また、これらメンテナンス対象の部品以外の部品は、装置ケース2の内部に収納しておくことにより、作業時に損傷を受けることを回避できる。
【0078】
次に、上流側開閉カバー31および下流側開閉カバー32の先端部31a,32a(支軸側の端部)の輪郭形状が、支軸33を中心とする凸円弧面および凹円弧面によって規定されている。また、上流側開閉カバー31における上流側搬送路部分5aを規定している内側側面部分311は、上流側凸円弧面部分314,315の端から、それらの接線方向に延びている。同様に、下流側開閉カバー32における下流側搬送路部分5bを規定している内側側面部分321は、下流側凸円弧面部分326の端から、その接線方向に延びている。
【0079】
したがって、上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32を開けた際に、それらの先端部31a,32aが、閉じ状態における場合よりも内側に突出することがない。換言すると、支軸33側の先端部31a,32aが上流側搬送路部分5a、下流側搬送路部分5bに突入することがない。よって、当該上流側搬送路部分5a、下流側搬送路部分5bに詰まっている小切手4を取り出すために上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32を開けた際に、小切手4が上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32の先端部31a,32aによって装置ケース側の外周側面部分21に押し付けられてしまうことがない。
【0080】
これに加えて、双方の上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32の先端部31a,32aの外側側面部分313,323は平坦な同一面を規定しており、支軸33を覆う部分が外方に突出している場合に比べて外観品位に優れている。また、双方の先端部31a,32aでは、凸円弧面部分に対峙させて同心状の凹円弧面部分を対峙させてあるので、これらの隙間を狭くしても開閉時に干渉することがない。よって、本例によれば、小切手搬送路5を開放するために設けた上流側開閉カバー31、下流側開閉カバー32によって小切手読取装置1の外観品位が低下することがない。
【0081】
(その他の実施の形態)
なお、本発明は、小切手や手形、請求書などの小切手類を処理する小切手読取装置以外の媒体処理装置に対しても同様に適用可能である。たとえば、入場券などのチケットの読取装置として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明を適用した小切手処理装置の外観斜視図。
【図2】図1とは反対の側から見た場合の小切手処理装置の外観斜視図。
【図3】小切手処理装置の平面図。
【図4】開閉カバーを開けた状態を示す小切手処理装置の斜視図。
【図5】図4とは反対の側から見た場合の小切手処理装置の外観斜視図。
【図6】開閉カバーを開けた状態の小切手処理装置の平面図。
【図7】開閉カバの支軸側の端部の形状を示す説明図。
【図8】小切手処理装置の搬送機構を示す説明図。
【図9】小切手処理装置の制御系を示す概略ブロック図。
【図10】小切手処理装置の処理動作を示す概略フローチャート。
【符号の説明】
【0083】
1…小切手読取装置、2…装置ケース、3…開閉カバー、4…小切手、4A…磁気インク文字列、4a…表面、4b…裏面、5…小切手搬送路、5a…上流側搬送路部分、5b…下流側搬送路部分、6…小切手送り出し通路、7…小切手供給部、8,9…分岐通路、11…第1小切手排出部、12…第2小切手排出部、21…外周側面部分、22…中央ケース部分、23,24…側方ケース部分、23a…端面、25…仕切り用ケース部分、31…上流側開閉カバー、31a…先端部、31b…後端部、32…下流側開閉カバー、32a…先端部、33…支軸、34…カバー側係合突起、35…係合突起、36…スライドボタン、37…カバー側係合突起、38…係合突起、39…スライドボタン、41…繰り出しローラ、42…押し付け部材、43…分離パッド、44…分離ローラ、45…リタードローラ、46…送り出しモータ、47…搬送モータ、48…駆動ローラ、49…無端ベルト、51〜57…搬送ローラ、61〜67…押えローラ、68…伝達歯車、69…排出ローラ、71〜74…ガイドローラ、81…磁石、82…表面側コンタクトイメージスキャナ、83…裏面側コンタクトイメージスキャナ、84…磁気ヘッド、84A…読取位置、85…押さえローラ、86…印刷機構、86A…印刷位置、91…用紙長検出器、92…重送検出器、93…ジャム検出器、94…印刷検出器、95…排出検出器、96…切り替え板、100…制御部、102…通信ケーブル、103…コンピュータシステム、103a…表示部、103b…操作部、105…操作部、311…内側側面部分、312…上流側端面部分、313…外側側面部分、314,315…上流側凸円弧面部分、316…上流側凹円弧面部分、321…内側側面部分、322…下流側端面部分、323…外側側面部分、324,325…下流側凹円弧面部分、326…下流側凸円弧面部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状媒体を搬送する媒体搬送路と、
当該媒体搬送路が形成されている装置ケースと、
当該装置ケースに開閉可能に取り付けた開閉カバーと、
当該開閉カバーの開閉中心を規定している支軸とを有し、
前記媒体搬送路の少なくとも一部の搬送路部分は、前記装置ケースと、閉じ位置にある前記開閉カバーとの間に形成されており、
当該開閉カバーを前記閉じ位置から開くと、前記搬送路部分が開放状態に切り替わるようになっており、
前記開閉カバーは、前記搬送路部分を規定している内側側面部分と、当該内側側面部分の前記支軸側の端に連続している支軸側端面部分と、当該支軸側端面部分に連続している外側側面部分とを備えており、
当該支軸側端面部分は、前記支軸を中心とした凸円弧面によって規定されており、
前記内側側面部分は、前記凸円弧面の端から、前記凸円弧面の接線方向に延びていることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記開閉カバーの前記支軸側端面部分に対峙している端面部分は、前記支軸を中心とする前記凸円弧面より大きな半径の凹円弧面によって規定されていることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。

【請求項3】
前記媒体搬送路は、U字状に湾曲して延びている所定幅の媒体搬送路であり、
前記開閉カバーは、前記媒体搬送路の上流側搬送路部分を規定している上流側開閉カバーと、前記媒体搬送路の下流側搬送路部分を規定している下流側開閉カバーとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記上流側開閉カバーおよび前記下流側開閉カバーは、前記支軸を開閉中心として開閉し、
前記上流側開閉カバーは、前記上流側搬送路部分を規定している内側側面部分と、当該内側側面部分の前記支軸側の端に連続している上流側端面部分と、当該上流側端面部分に連続している外側側面部分とを備え、
前記下流側開閉カバーは、前記下流側搬送路部分を規定している内側側面部分と、当該内側側面部分の前記支軸側の端に連続している下流側端面部分と、当該下流側端面部分に連続している外側側面部分とを備え、
前記上流側端面部分は、前記支軸の軸線方向に沿って、当該支軸を中心とする上流側凸円弧面部分と、当該支軸を中心とする上流側凹円弧面部分とを備え、
前記下流側端面部分は、前記支軸の軸線方向に沿って、当該支軸を中心とする下流側凸円弧面部分と、当該支軸を中心とする下流側凹円弧面部分とを備え、
前記上流側凸円弧面部分には前記下流側凹円弧面部分が対峙し、前記上流側凹円弧面部分には前記下流側凸円弧面部分が対峙していることを特徴とする請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記上流側凸円弧面部分と前記下流側凸円弧面部分はほぼ同一の凸円弧面であり、
前記上流側凹円弧面部分と前記下流側凹円弧面部分はほぼ同一の凹円弧面であり、
前記凹円弧面は前記凸円弧面よりも大きな半径の円弧面であることを特徴とする請求項4に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記上流側搬送路部分を規定している前記内側側面部分は、前記上流側凸円弧面部分の端から、当該上流側凸円弧面部分の接線方向に延びており、
前記下流側搬送路部分を規定している前記内側側面部分は、前記下流側凸円弧部分の端から、当該下流側凸円弧部分の接線方向に延びていることを特徴とする請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記シート状媒体としての小切手を前記媒体搬送路に供給するための小切手供給部と、
前記媒体搬送路から排出される小切手を受け入れる小切手排出部とを有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−217758(P2008−217758A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292868(P2007−292868)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】