説明

媒体搬送方向切替機構および媒体発行回収装置

【課題】簡易な構成で、搬送される情報記録媒体の搬送方向を切り替えることが可能な媒体搬送方向切替機構を提供する。
【解決手段】搬送ローラ20に向かってピンチローラ21を付勢する付勢部材22の一端は、ピンチローラ21を支持する支持軸27に係合し、付勢部材22の他端は、支持軸27を保持する保持部材11に係合している。媒体搬送方向切替機構6では、第1対向位置P1と第2対向位置P2との間で、搬送ローラ20の回転中心C1を中心とするピンチローラ21の回動動作が可能であり、ピンチローラ21は、搬送ローラ20が正回転すると第1対向位置P1へ移動し、搬送ローラ20が逆回転すると第2対向位置P2へ移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される情報記録媒体の搬送方向を切り替える媒体搬送方向切替機構、および、この媒体搬送方向切替機構を備える媒体発行回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードスタッカに収納されたカードを発行するカード発行装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカード発行装置は、カードを搬送するための第1の搬送ローラおよび第2の搬送ローラを備えている。第1の搬送ローラと第2の搬送ローラとは、カードの搬送方向において所定のピッチで配置されている。また、このカード発行装置は、第1の搬送ローラに対向配置される第1の対向ローラと、第2の搬送ローラに対向配置される第2の対向ローラとを備えている。第1の対向ローラおよび第2の対向ローラは、プレートに固定された固定軸に回転可能に支持されている。また、プレートには、歯車列を介してモータが連結されており、プレートは、第2の搬送ローラの回転中心を中心に所定角度、回動可能となっている。
【0003】
特許文献1に記載のカード発行装置では、第1の搬送ローラと第1の対向ローラとが当接し、かつ、第2の搬送ローラと第2の対向ローラとが当接した状態で、第1、第2の搬送ローラが正回転すると、カードスタッカからカードが発行される。また、このカード発行装置は、カードを回収する機能を備えており、カードを回収するときには、第1の搬送ローラと第1の対向ローラとの間、および、第2の搬送ローラと第2の対向ローラとの間にカードが挟まれた状態で、プレートが回動する。プレートが回動すると、第2の搬送ローラの表面に沿って第2の対向ローラが移動し、かつ、第1の搬送ローラから第1の対向ローラが離れる。また、この状態で、第1、第2の搬送ローラが逆回転すると、第2の搬送ローラと第2の対向ローラとの間に挟まれたカードがカード発行装置の下側部分に回収される。このように、特許文献1に記載のカード発行装置は、プレートを回動させることで、搬送されるカードの搬送方向を切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4186033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のカード発行装置では、プレートを回動させることで、搬送されるカードの搬送方向を切り替えているため、プレートを回動させるための歯車列やモータ等が必要となる。すなわち、特許文献1に記載のカード発行装置では、搬送されるカードの搬送方向を切り替えるための構成が複雑である。
【0006】
そこで、本発明の課題は、簡易な構成で、搬送される情報記録媒体の搬送方向を切り替えることが可能な媒体搬送方向切替機構を提供することにある。また、本発明の課題は、かかる媒体搬送方向切替機構を備える媒体発行回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の媒体搬送方向切替機構は、搬送される情報記録媒体の搬送方向を切り替える媒体搬送方向切替機構において、情報記録媒体に当接して情報記録媒体を搬送する搬送ローラと、搬送ローラに対向配置され搬送ローラとの間に情報記録媒体を挟んで搬送ローラとともに情報記録媒体を搬送するピンチローラと、搬送ローラに向かってピンチローラを付勢する付勢部材と、ピンチローラとともに回転する回転軸を回転可能に支持する軸受またはピンチローラを回転可能に支持する支持軸と、付勢部材を保持する第1保持部材とを備えるとともに、所定の第1方向でピンチローラと搬送ローラとが対向する第1対向位置と、第1方向に対して傾斜する所定の第2方向でピンチローラと搬送ローラとが対向する第2対向位置との間で、搬送ローラの回転中心を中心とするピンチローラの回動動作が可能となるように、支持軸または軸受を保持する第2保持部材を備え、付勢部材の一端は、支持軸または軸受に係合し、付勢部材の他端は、第1保持部材に係合し、搬送ローラが正回転すると、第2対向位置にあるピンチローラは第1対向位置へ移動し、搬送ローラが逆回転すると、第1対向位置にある前記ピンチローラは第2対向位置へ移動することを特徴とする。
【0008】
本発明の媒体搬送方向切替機構は、搬送ローラとピンチローラと搬送ローラに向かってピンチローラを付勢する付勢部材とを備えている。また、本発明では、第1対向位置と第2対向位置との間で搬送ローラの回転中心を中心にピンチローラが回動可能となっている。さらに、本発明では、搬送ローラが正回転すると、第2対向位置にあるピンチローラが第1対向位置へ移動し、搬送ローラが逆回転すると、第1対向位置にあるピンチローラが第2対向位置へ移動する。
【0009】
すなわち、本発明では、搬送ローラ、ピンチローラおよび情報記録媒体の摩擦係数や付勢部材の付勢力等を適切に設定することで、搬送ローラが逆回転すると、第1対向位置にあるピンチローラが第2対向位置まで移動する。また、本発明では、搬送ローラ、ピンチローラおよび情報記録媒体の摩擦係数や付勢部材の付勢力等を適切に設定することで、搬送ローラが正回転すると、第2対向位置にあるピンチローラが第1対向位置まで移動する。また、本発明では、第1方向に対して第2方向が傾斜しているため、第1対向位置と第2対向位置との間でピンチローラが移動すると、搬送ローラとピンチローラとによって搬送される情報記録媒体の搬送方向が切り替わる。したがって、本発明の媒体搬送方向切替機構では、付勢部材を用いた簡易な構成で、搬送される情報記録媒体の搬送方向を切り替えることが可能になる。
【0010】
本発明において、第1対向位置と第2対向位置との間には、搬送ローラの回転中心と付勢部材の一端と付勢部材の他端とが略一直線状に配置されるようにピンチローラと搬送ローラとが対向する第3対向位置があることが好ましい。このように構成すると、付勢部材の付勢力によって、第1対向位置および第2対向位置でピンチローラを保持することが可能になり、第1対向位置および第2対向位置でピンチローラを安定させることが可能になる。なお、このように構成すると、搬送ローラ、ピンチローラおよび情報記録媒体の摩擦係数や付勢部材の付勢力等を適切に設定することで、搬送ローラが逆回転すると、搬送ローラと情報記録媒体との間の摩擦力およびピンチローラと情報記録媒体との間の摩擦力等、または、搬送ローラとピンチローラとの間の摩擦力等で、第1対向位置から第3対向位置までピンチローラが移動し、ピンチローラが第3対向位置を通過すると、主として付勢部材の付勢力で、第2対向位置までピンチローラが移動する。また、搬送ローラ、ピンチローラおよび情報記録媒体の摩擦係数や付勢部材の付勢力等を適切に設定することで、搬送ローラが正回転すると、搬送ローラと情報記録媒体との間の摩擦力およびピンチローラと情報記録媒体との間の摩擦力等、または、搬送ローラとピンチローラとの間の摩擦力等で、第2対向位置から第3対向位置までピンチローラが移動し、ピンチローラが第3対向位置を通過すると、主として付勢部材の付勢力で、第1対向位置までピンチローラが移動する。
【0011】
本発明において、第3対向位置は、第1対向位置と第2対向位置との略中間位置にあることが好ましい。このように構成すると、第1対向位置側または第2対向位置側に第3対向位置が偏っている場合と比較して、第1対向位置から第3対向位置までピンチローラを移動させるための搬送ローラ、ピンチローラおよび情報記録媒体の摩擦係数や付勢部材の付勢力等の設定、および、第2対向位置から第3対向位置までピンチローラを移動させるための搬送ローラ、ピンチローラおよび情報記録媒体の摩擦係数や付勢部材の付勢力等の設定が容易になる。したがって、第1対向位置と第2対向位置との間で、ピンチローラを移動させやすくなる。
【0012】
本発明において、たとえば、第2保持部材には、第1対向位置と第2対向位置との間で、搬送ローラの回転中心を中心とするピンチローラの回動動作が可能となるように、支持軸または軸受を案内するガイド部が形成され、第1保持部材は、第2保持部材に固定されている、または、第2保持部材と一体で形成されている。また、この場合には、ガイド部は、支持軸または回転軸の両端側に形成されていることが好ましい。このように構成すると、ガイド部によって、第1対向位置と第2対向位置との間で、支持軸または軸受を適切に案内することが可能になる。
【0013】
本発明において、媒体搬送方向切替機構は、搬送ローラの逆回転時に、搬送ローラとピンチローラとの間に挟まれた情報記録媒体の、搬送方向の端部が当接可能で、かつ、第2対向位置へピンチローラが移動するように情報記録媒体を案内する振分部材を備えることが好ましい。このように構成すると、振分部材を利用して、第1対向位置から第2対向位置へピンチローラを移動させやすくなる。
【0014】
本発明において、振分部材は、たとえば、搬送ローラが正回転しているときの情報記録媒体の搬送経路となる第1搬送経路を塞ぐ位置と第1搬送経路を開放する位置との間で回動可能であるとともに、第1搬送経路を塞ぐ方向に付勢され、搬送ローラが正回転しているときに情報記録媒体が振分部材に当接して、振分部材が第1搬送経路を開放する。
【0015】
本発明において、媒体搬送方向切替機構は、情報記録媒体が搬送される媒体搬送路を構成する搬送ガイドを備え、搬送ガイドには、搬送ローラとピンチローラとの間に情報記録媒体が挟まれた状態でピンチローラが第1対向位置と第2対向位置との間を移動したときに、情報記録媒体と搬送ガイドとの接触を防止するための逃げ部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、搬送ローラとの間に情報記録媒体を挟んだ状態のピンチローラを第1対向位置と第2対向位置との間で移動させる場合であっても、第1対向位置と第2対向位置との間でピンチローラを移動させやすくなる。
【0016】
本発明の媒体搬送方向切替機構は、媒体搬送方向切替機構に向かって送出される情報記録媒体が収納される媒体収納部と、情報記録媒体が回収される媒体回収部とを備える媒体発行回収装置であって、搬送ローラが正回転すると媒体収納部から送出された情報記録媒体が発行され、搬送ローラが逆回転すると媒体回収部に情報記録媒体が回収される媒体発行回収装置に用いることができる。この場合には、媒体発行回収装置は、たとえば、媒体収納部から送出される情報記録媒体への情報の記録および情報記録媒体に記録された情報の再生を行う記録再生部を備え、搬送ローラは、記録再生部での再生結果に基づいて正回転または逆回転する。この媒体発行回収装置では、媒体搬送方向切替機構の構成を簡素化できるため、媒体発行回収装置の構成を簡素化することが可能になる。したがって、媒体発行回収装置を小型化することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の媒体搬送方向切替機構では、簡易な構成で、搬送される情報記録媒体の搬送方向を切り替えることが可能になる。また、本発明の媒体発行回収装置では、媒体搬送方向切替機構の構成を簡素化できるため、装置の構成を簡素化して、装置を小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態にかかる媒体発行回収装置の斜視図である。
【図2】図1に示す媒体発行回収装置の要部の概略構成を側面から説明するための図である。
【図3】図2に示す媒体搬送方向切替機構の構成を説明するための斜視図である。
【図4】図1のE部の拡大図である。
【図5】図2のF部の拡大図である。
【図6】図5のG部の拡大図である。
【図7】本発明の他の実施の形態にかかる付勢部材を説明するための図である。
【図8】本発明の他の実施の形態にかかる付勢部材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(媒体発行回収装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる媒体発行回収装置1の斜視図である。図2は、図1に示す媒体発行回収装置1の要部の概略構成を側面から説明するための図である。
【0021】
本形態の媒体発行回収装置1は、情報記録媒体であるカード2を発行するカード発行機能と、カード2を回収するカード回収機能とを備えている。本形態では、図1、図2のX1方向側に、発行されたカード2が排出される。以下の説明では、図1等のX1方向側を媒体発行回収装置1の「手前(前)」側とし、X1方向側の反対側となるX2方向側を媒体発行回収装置1の「奥(後ろ)」側とする。
【0022】
媒体発行回収装置1は、図1、図2に示すように、カード2への情報の記録およびカード2に記録された情報の再生を行う記録再生部3と、記録再生部3に向かってカード2を送出するカード送出部4と、カード2を回収する媒体回収部としてのカード回収部5と、カード2を発行する際のカード2の搬送方向とカード2を回収する際のカード2の搬送方向とを切り替える媒体搬送方向切替機構としての搬送方向切替機構6とを備えている。
【0023】
記録再生部3、カード回収部5および搬送方向切替機構6は、媒体発行回収装置1の手前側に配置され、カード送出部4は、媒体発行回収装置1の奥側に配置されている。また、記録再生部3は、カード回収部5の上側に配置されている。媒体発行回収装置1の手前側部分の内部には、カード2が搬送される媒体搬送路としてのカード搬送路7が形成されている。
【0024】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。本形態のカード2は、非接触式のICカードであり、カード2には、通信用のアンテナが内蔵されている。なお、カード2の表面には、磁気ストライプが形成されても良いし、ICチップが固定されても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0025】
記録再生部3は、通信用のアンテナ9と、制御基板10とを備えている。アンテナ9および制御基板10は、媒体発行回収装置1の手前側部分を構成するフレーム11に固定されている。カード回収部5は、カード2を回収するための回収容器であり、フレーム11の下端側の一部がカード回収部5となっている。カード回収部5の内部には、空間が形成されており、この空間に回収されたカード2が積層されて収納される。カード搬送路7は、フレーム11の内部に形成されている。本形態のフレーム11は、カード搬送路7を構成する搬送ガイドである。
【0026】
カード送出部4は、発行前の複数のカード2が上下方向に積層されて収納される媒体収納部としてのカード収納部12と、カード収納部12に収納された複数のカード2の中で一番下に収納されているカード2をカード送出部4の前面側へ送り出す送出ローラ13と、送出ローラ13によって送り出されたカード2を媒体発行回収装置1の前側へさらに送り出す送出ローラ14と、送出ローラ14に対向配置されるとともに送出ローラ14に向かって付勢されるパッドローラ15と、カード収納部12から2枚のカード2が重なった状態で送出されるのを防止するためのカード分離ローラ16、17とを備えている。
【0027】
カード収納部12は、側面の一部および上面が開口する直方体の箱状に形成されている。カード収納部12の底面部12aと前側壁12bの下端との間には、カード収納部12に収納されるカード2が前側に向かって通過するゲートが形成されている。送出ローラ13は、偏心ローラであり、送出ローラ13の上端側は、底面部12aに形成される貫通孔の中に配置されている。送出ローラ13には、図示を省略するモータが連結されている。送出ローラ14には、図示を省略するモータが連結されている。パッドローラ15は、送出ローラ14の上端に対向するように配置されている。
【0028】
カード分離ローラ16、17は、送出ローラ14およびパッドローラ15と、カード収納部12との間に配置されている。また、カード分離ローラ16、17は、上下方向で互いに対向するように配置されている。本形態では、カード分離ローラ16が下側に配置され、カード分離ローラ17が上側に配置されている。カード収納部12からカード2が送出される際には、カード分離ローラ16は、カード2を手前側に送る方向(すなわち、図2の時計方向)に回転し、カード分離ローラ17は、カード2を奥側へ送る方向(すなわち、図2の時計方向)に回転する。このように、上下方向で対向配置されるカード分離ローラ16、17が同じ方向に回転するため、カード収納部12から2枚のカード2が重なった状態で送出されると、上側のカード2がカード収納部12の中へ戻される。
【0029】
(媒体搬送方向切替機構の構成)
図3は、図2に示す媒体搬送方向切替機構6の構成を説明するための斜視図である。図4は、図1のE部の拡大図である。図5は、図2のF部の拡大図である。図6は、図5のG部の拡大図である。
【0030】
搬送方向切替機構6は、カード2に当接してカード2を搬送する搬送ローラ20と、搬送ローラ20に対向配置されるピンチローラ21と、ピンチローラ21を搬送ローラ20に向かって付勢する付勢部材としての2個のネジリコイルバネ22と、カード2を奥側へ搬送する方向に搬送ローラ20が回転したときにカード2をカード収納部12へ案内する振分部材としてのフラッパ23とを備えている。
【0031】
搬送ローラ20は、前後方向において、記録再生部3よりも手前側に配置されている。図3に示すように、搬送ローラ20が固定される回転軸24には、歯車列25を構成する1つの歯車が固定されており、搬送ローラ20には、歯車列25を介してモータ26が連結されている。前後方向における搬送ローラ20と送出ローラ14との距離は、媒体発行回収装置1内のカード2の前後方向の長さよりも短くなっている。
【0032】
ピンチローラ21は、ネジリコイルバネ22の付勢力で、略上側から搬送ローラ20に向かって付勢されており、搬送ローラ20との間にカード2を挟んで搬送ローラ20とともにカード2を搬送する。また、ピンチローラ21は、支持軸27に回転可能に支持されている。
【0033】
支持軸27の両端側は、フレーム11に保持されている。フレーム11には、図4に示すように、支持軸27が挿通されるガイド部としてのガイド溝11aが形成されている。ガイド溝11aは、2箇所に形成されており、支持軸27の両端側のそれぞれがガイド溝11aに挿通されている。本形態のフレーム11は、支持軸27を保持する第2保持部材である。
【0034】
図5、図6の実線で示すように、上下方向で、ピンチローラ21と搬送ローラ20とが対向するときのピンチローラ21の位置を第1対向位置P1とし、図5、図6の二点鎖線で示すように、上下方向に対して図5、図6の反時計方向に角度θだけ傾斜する方向(すなわち、奥側に向かって角度θだけ傾斜する方向)で、ピンチローラ21と搬送ローラ20とが対向するときのピンチローラ21の位置を第2対向位置P2とすると、ガイド溝11aは、第1対向位置P1と第2対向位置P2との間で、搬送ローラ20の回転中心C1を中心とするピンチローラ21の回動動作が可能となるように、支持軸27を案内する機能を果たしている。ガイド溝11aは、略長方形状または搬送ローラ20の回転中心C1を中心とする略円弧状に形成されている。角度θは、鋭角である。また、角度θは、比較的小さな角度であり、たとえば、15°から20°程度である。
【0035】
ネジリコイルバネ22の一端(より具体的には、ネジリコイルバネ22の一方の腕の先端)は、円環状に形成される係合部22aとなっている。また、ネジリコイルバネ22の他端(より具体的には、ネジリコイルバネ22の他方の腕の先端)は、円環状に形成される係合部22bとなっている。本形態では、支持軸27の両端側のそれぞれが係合部22aに挿通されており、支持軸27の両端側のそれぞれに係合部22aが係合している。すなわち、本形態では、支持軸27の両端側のそれぞれにネジリコイルバネ22が配置されている。係合部22bには、フレーム11に固定される固定軸28が挿通されており、固定軸28に係合部22bが係合している。係合部22aは、支持軸27に対して相対回動可能となっており、係合部22bは、固定軸28に対して相対回動可能となっている。本形態の固定軸28は、ネジリコイルバネ22を保持する第1保持部材である。なお、固定軸28は、フレーム11と一体で形成されても良い。
【0036】
固定軸28は、ピンチローラ21よりも上側に配置されている。また、固定軸28は、図6に示すように、第1対向位置P1と第2対向位置P2との略中間位置にピンチローラ21があるときの支持軸27の中心C2が、搬送ローラ20の回転中心C1と固定軸28の中心C3とを結ぶ直線L上に配置されるように、フレーム11に固定されている。すなわち、第1対向位置P1と第2対向位置P2との間には、搬送ローラ20の回転中心C1と、ネジリコイルバネ22の係合部22aと、係合部22bとが略一直線状に配置されるように、ピンチローラ21と搬送ローラ20とが対向する第3対向位置があり、ネジリコイルバネ22の係合部22bは、上下方向に対して図6の反時計方向へ角度θ/2だけ傾いた直線L上に配置されている。なお、第3対向位置にピンチローラ21があるときに、ネジリコイルバネ22の付勢力は最大になる。
【0037】
フラッパ23は、送出ローラ14の前側に配置されている。フラッパ23は、フレーム11に固定される固定軸29に回動可能に支持されている。また、フラッパ23には、カード送出部4から前側へ向かうカード2の搬送経路R1を塞ぐ閉鎖部23aが、固定軸29から略斜め上方向に突出するように形成されている。本形態では、図5の実線で示すように、閉鎖部23aが搬送経路R1を塞ぐ位置と、図5の二点鎖線で示すように、閉鎖部23aが搬送経路R1を開放する位置との間でフラッパ23が回動可能となるように、フラッパ23は固定軸29に支持されている。また、フラッパ23は、図示を省略する付勢部材によって、あるいは、自重で、閉鎖部23aが搬送経路R1を塞ぐ方向へ(すなわち、図5の反時計方向へ)付勢されている。なお、本形態の搬送経路R1は、第1搬送経路である。
【0038】
本形態では、カード送出部4からカード2が送出されるときには、搬送ローラ20は、図5の時計方向に回転する。また、カード送出部4からカード2が送出されると、カード2が閉鎖部23aの上面側に当接して、図5の二点鎖線で示すように、閉鎖部23aが搬送経路R1を開放する位置へ回動する。すなわち、搬送ローラ20が図5の時計方向に回転しているときには、カード2が閉鎖部23aの上面側に当接して、フラッパ23が搬送経路R1を開放する。
【0039】
また、本形態では、第2対向位置P2にあるピンチローラ21と搬送ローラ20とが当接した状態で、搬送ローラ20が図5の時計方向に回転すると、ピンチローラ21が搬送ローラ20の外周面に沿って第1対向位置P1まで動くように、かつ、第2対向位置P2にあるピンチローラ21が第3対向位置を通過するための力、ピンチローラ21と支持軸27との間の摩擦力、および、搬送ローラ20とピンチローラ21との間の摩擦力が、この順で大きくなるように、搬送ローラ20およびピンチローラ21の摩擦係数や、ネジリコイルバネ22の付勢力、角度θ等が設定されている。
【0040】
第2対向位置P2にあるピンチローラ21が第1対向位置P1まで動くときには、搬送ローラ20とピンチローラ21との間の摩擦力等で、第2対向位置P2から第3対向位置までピンチローラ21が移動し、ピンチローラ21が第3対向位置を通過すると、主としてネジリコイルバネ22の付勢力で、第1対向位置P1までピンチローラ21が移動する。すなわち、ピンチローラ21は、第3対向位置をトグルポイントとするいわゆるトグルモーションを利用して第2対向位置P2から第1対向位置P1まで移動する。また、ピンチローラ21は、第2対向位置P2から第1対向位置P1まで移動する間は、支持軸27を中心とする回転をほとんどせず、第1対向位置P1まで移動した後は、支持軸27を中心とした回転をする。また、第1対向位置P1にピンチローラ21があるときには、ネジリコイルバネ22の付勢力で、ピンチローラ21は、第1対向位置P1に保持されており、カード2を発行する際のカード2の搬送方向である前後方向に対して略直交する方向(すなわち、上下方向)で、ピンチローラ21と搬送ローラ20とが対向している。
【0041】
また、本形態では、カード2の奥端が閉鎖部23aよりも前側に配置されているカード2が、第1対向位置P1にあるピンチローラ21と搬送ローラ20との間に挟まれた状態で、搬送ローラ20が図5の反時計方向に回転すると、ピンチローラ21が搬送ローラ20の外周面に沿って第2対向位置P2まで動くように、かつ、第1対向位置P1にあるピンチローラ21が第3対向位置を通過するための力、ピンチローラ21と支持軸27との間の摩擦力、および、搬送ローラ20とピンチローラ21との間の摩擦力が、この順で大きくなるように、搬送ローラ20およびピンチローラ21の摩擦係数や、ネジリコイルバネ22の付勢力、角度θ等が設定されている。
【0042】
第1対向位置P1にあるピンチローラ21が第2対向位置P2まで動くときには、搬送ローラ20とカード2との間の摩擦力およびピンチローラ21とカード2との間の摩擦力等で、第1対向位置P1から第3対向位置までピンチローラ21が移動し、ピンチローラ21が第3対向位置を通過すると、主としてネジリコイルバネ22の付勢力で、第2対向位置P2までピンチローラ21が移動する。すなわち、ピンチローラ21は、第3対向位置をトグルポイントとするトグルモーションを利用して第1対向位置P1から第2対向位置P2まで移動する。また、ピンチローラ21は、第1対向位置P1から第2対向位置P2まで移動する間は、支持軸27を中心とする回転をほとんどせず、第2対向位置P2まで移動した後は、支持軸27を中心とした回転をする。また、第2対向位置P2にピンチローラ21があるときには、ネジリコイルバネ22の付勢力で、ピンチローラ21は、第2対向位置P2に保持されており、カード回収部5へカード2を回収する際のカード2の搬送方向に対して略直交する方向で、ピンチローラ21と搬送ローラ20とが対向している。
【0043】
また、ピンチローラ21と搬送ローラ20との間に挟まれた状態で、搬送ローラ20が図5の反時計方向に回転すると、搬送経路R1を閉鎖する閉鎖部23aの下側面にカード2の奥端が当接する。閉鎖部23aの下側面にカード2の奥端が当接すると、カード2の弾性力によって、閉鎖部23aとカード2との当接部を支点とした図5の反時計方向へのモーメントがカード2の前端側に生じる。このカード2の前端側に生じるモーメントによって、搬送ローラ20との間にカード2を挟んでいるピンチローラ21の第2対向位置P2までの移動が補助される。すなわち、本形態のフラッパ23は、第2対向位置P2へピンチローラ21が移動するように、カード2を案内する機能を果たしている。なお、本形態では、ピンチローラ21が第2対向位置P2まで移動すると、カード2の奥端側が閉鎖部23aの下側面に当接しないように、フラッパ23が配置されている。
【0044】
このように、本形態では、搬送ローラ20の回転中心C1を中心にしてピンチローラ21が回動して、第1対向位置P1または第2対向位置P2へ移動すると、前後方向に対して傾斜した斜め方向と前後方向とに、カード2の搬送方向が切り替わる。
【0045】
なお、閉鎖部23aの下側面にカード2の奥端が当接した後にカード2の前端側に生じる図5の反時計方向へのモーメントを利用して、ピンチローラ21が第3対向位置を通過するように、搬送ローラ20およびピンチローラ21の摩擦係数や、ネジリコイルバネ22の付勢力、角度θ等が設定されても良い。すなわち、搬送ローラ20が図5の反時計方向へ回転したときに、搬送ローラ20とカード2との間の摩擦力およびピンチローラ21とカード2との間の摩擦力等のみよっては、ピンチローラ21は第3対向位置を通過できないが、カード2の前端側にモーメントが生じると、ピンチローラ21が第3対向位置を通過できるように、搬送ローラ20およびピンチローラ21の摩擦係数や、ネジリコイルバネ22の付勢力、角度θ等が設定されても良い。
【0046】
図5に示すように、カード搬送路7の、搬送ローラ20およびピンチローラ21よりも手前側の上面には、上側に向かって窪む凹部11bが形成されている。すなわち、フレーム11には、凹部11bが形成されている。この凹部11bは、搬送ローラ20とピンチローラ21との間にカード2が挟まれた状態で搬送ローラ20が図5の反時計方向に回転して、ピンチローラ21が第1対向位置P1から第2対向位置P2へ移動したときに、カード2とフレーム11との接触を防止するための逃げ部となっている。
【0047】
(媒体発行回収装置の概略動作)
以上のように構成された媒体発行回収装置1でのカード2の発行動作および回収動作の概略を以下に説明する。以下の説明では、図5の時計方向への搬送ローラ20の回転を正回転、図5の反時計方向への搬送ローラ20の回転を逆回転とする。
【0048】
媒体発行回収装置1では、カード収納部12に収納されたカード2を発行する際に、まず、送出ローラ13、14およびパッドローラ15によって、カード送出部4から記録再生部3および搬送方向切替機構6に向かってカード2が送出される。送出されたカード2は、記録再生部3の下方で一旦停止する。このとき、カード2の前端側は、搬送ローラ20とピンチローラ21との間に挟まれ、カード2の奥端側は、送出ローラ14とパッドローラ15との間に挟まれている。
【0049】
この状態で、カード2に内蔵されたアンテナとアンテナ9との間で通信が行われ、カード2に所定の情報が記録される。また、カード2に適切な情報が記録されたか否かを確認するため、カード2に内蔵されたアンテナとアンテナ9との間で通信が行われて、カード2に記録された情報が再生される。情報を再生した結果、カード2に記録された情報が記録されるべき情報であった場合には、搬送ローラ20が正回転して、カード2が発行される。
【0050】
一方、カード2に記録された情報が再生できない場合や、カード2に記録された情報と記録されるべき情報とが一致しない場合には、カード2を回収する。具体的には、カード2の奥端が閉鎖部23aよりも前側に配置されるまで、搬送ローラ20が正回転した後、搬送ローラ20が逆回転する。搬送ローラ20が逆回転すると、第1対向位置P1にあったピンチローラ21は、第2対向位置P2まで移動する。このときには、閉鎖部23aの下側面にカード2の奥端が当接して、ピンチローラ21の第2対向位置P2までの移動が補助される。
【0051】
また、第2対向位置P2までピンチローラ21が移動すると、搬送ローラ20とピンチローラ21との間からカード2の前端が抜けるまで、カード2が搬送され、搬送ローラ20とピンチローラ21との間からカード2の前端が抜けると、カード2がカード回収部5に回収される。カード回収部5にカード2が回収されると、次のカード2がカード送出部4から送出される。次のカード2が送出される際に、搬送ローラ20が正回転すると、第1対向位置P1にあったピンチローラ21は、第2対向位置P2まで移動する。
【0052】
このように、本形態では、記録再生部3での再生結果に基づいて、搬送ローラ20が正回転または逆回転する。なお、発行されたカード2をユーザが取り忘れた場合には、搬送ローラ20が逆回転して、このカード2は、カード回収部5に回収される。
【0053】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、搬送ローラ20が正回転すると、第2対向位置P2にあったピンチローラ21は第1対向位置P1へ移動し、ネジリコイルバネ22の付勢力によって、第1対向位置P1で保持される。また、搬送ローラ20が逆回転すると、第1対向位置P1にあったピンチローラ21は、第2対向位置P2へ移動し、ネジリコイルバネ22の付勢力によって、第2対向位置P2で保持される。また、本形態では、第1対向位置P1または第2対向位置P2へピンチローラ21が移動すると、搬送ローラ20とピンチローラ21とによって搬送されるカード2の搬送方向が切り替わる。したがって、本形態では、ネジリコイルバネ22を用いた簡易な構成で、搬送されるカード2の搬送方向を切り替えることができる。また、本形態では、搬送方向切替機構6の構成を簡素化できるため、媒体発行回収装置1の構成を簡素化することが可能になる。したがって、媒体発行回収装置1を小型化することが可能になる。
【0054】
本形態では、トグルポイントとなる第3対向位置は、第1対向位置P1と第2対向位置P2との略中間位置にある。そのため、第1対向位置P1側または第2対向位置P2側に第3対向位置が偏っている場合と比較して、第1対向位置P1から第3対向位置までピンチローラ21を移動させるための搬送ローラ20およびピンチローラ21の摩擦係数やネジリコイルバネ22の付勢力等の設定、および、第2対向位置P2から第3対向位置までピンチローラ21を移動させるための搬送ローラ20およびピンチローラ21の摩擦係数やネジリコイルバネ22の付勢力等の設定が容易になる。したがって、本形態では、第1対向位置P1と第2対向位置P2との間で、ピンチローラ21を移動させやすくなる。
【0055】
本形態では、フラッパ23は、第2対向位置P2へピンチローラ21が移動するように、カード2を案内する機能を果たしている。そのため、フラッパ23を利用して、第1対向位置P1から第2対向位置P2へピンチローラ21を移動させやすくなる。また、本形態では、搬送ローラ20とピンチローラ21との間にカード2が挟まれた状態で搬送ローラ20が逆回転してピンチローラ21が第1対向位置P1から第2対向位置P2へ移動したときに、カード2とフレーム11との接触を防止するための凹部11bがフレーム11に形成されている。そのため、第1対向位置P1から第2対向位置P2へピンチローラ21を移動させやすくなる。
【0056】
本形態では、搬送ローラ20の回転中心C1を中心にしてピンチローラ21が回動して、第1対向位置P1から第2対向位置P2へ移動すると、カード2の搬送方向が切り替わる。また、ピンチローラ21が第2対向位置P2まで移動すると、カード2の奥端側が閉鎖部23aの下側面に当接しないように、フラッパ23が配置されている。そのため、カード2の搬送方向を切り替える際、および、カード2の搬送方向が切り替わった後に、ピンチローラ21と搬送ローラ20との間に挟まれたカード2は、ほとんど、撓まない。したがって、本形態では、カード2に内蔵されるアンテナの、カード2の曲げ応力に起因する損傷を防止することが可能になる。
【0057】
本形態では、ガイド溝11aが支持軸27の両端側に形成されている。また、ネジリコイルバネ22が支持軸27の両端側のそれぞれに配置されている。そのため、支持軸27の両端側に配置されるガイド溝11aとネジリコイルバネ22とによって、第1対向位置P1と第2対向位置P2との間で、支持軸27をバランス良く移動させることが可能になり、支持軸27を移動させやすくなる。
【0058】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0059】
上述した形態では、ピンチローラ21を搬送ローラ20に向かって付勢する付勢部材は、ネジリコイルバネ22である。この他にもたとえば、ピンチローラ21を搬送ローラ20に向かって付勢する付勢部材は、図7に示すように、引張りコイルバネ32であっても良い。この場合には、引張りコイルバネ32の一端は、支持軸27に相対回動可能に取り付けられ、引張りコイルバネ32の他端は、搬送ローラ20よりも下側でフレーム11に固定される第1保持部材としての固定軸33に相対回動可能に取り付けられる。また、固定軸33は、第1対向位置P1と第2対向位置P2との略中間位置にピンチローラ21があるときの支持軸27の中心C2が、搬送ローラ20の回転中心C1と固定軸33の中心C13とを結ぶ直線L1上に配置されるように、フレーム11に固定されている。
【0060】
また、ピンチローラ21を搬送ローラ20に向かって付勢する付勢部材は、図8に示すように、圧縮コイルバネ42であっても良い。この場合には、圧縮コイルバネ42の一端は、支持軸27に当接し、圧縮コイルバネ42の他端は、ピンチローラ21よりも上側でフレーム11に固定される第1保持部材としての固定軸43に相対回動可能に取り付けられる。また、固定軸43は、第1対向位置P1と第2対向位置P2との略中間位置にピンチローラ21があるときの支持軸27の中心C2が、搬送ローラ20の回転中心C1と固定軸43の中心C23とを結ぶ直線L2上に配置されるように、フレーム11に固定されている。なお、付勢部材が圧縮コイルバネ42である場合には、圧縮コイルバネ42の座屈を防止するガイド部が必要となる。
【0061】
また、ピンチローラ21を搬送ローラ20に向かって付勢する付勢部材は、他のバネ部材であっても良いし、ゴム等の弾性部材であっても良い。
【0062】
上述した形態では、ピンチローラ21を支持する支持軸27は、フレーム11に保持されている。この他にもたとえば、支持軸27は、搬送ローラ20の回転中心C1を中心に回動可能なレバー部材に保持されても良い。この場合には、たとえば、レバー部材の一端側に支持軸27が固定され、レバー部材の他端側は、回転軸24に回動可能に保持される。この場合には、回転軸24とレバー部材との間の摩擦力を利用して、ピンチローラ21を第1対向位置P1と第2対向位置P2との間で移動させやすくなる。また、この場合には、レバー部材の側面と搬送ローラ20の側面とを押圧接触させても良い。このようにすると、レバー部材の側面と搬送ローラ20の側面との間の摩擦力を利用して、ピンチローラ21を第1対向位置P1と第2対向位置P2との間でさらに移動させやすくなる。
【0063】
なお、この場合には、上述した形態と同様に、ガイド溝11aに挿通される支持軸27とガイド溝11aとによって、第1対向位置P1と第2対向位置P2との間でこのレバー部材が回動するように、レバー部材の回動範囲が規制されても良いし、第1対向位置P1と第2対向位置P2との間でレバー部材が回動するようにレバー部材の回動範囲を規制するストッパ部材が設けられても良い。また、この場合には、レバー部材は、支持軸27を保持する第2保持部材となる。
【0064】
上述した形態では、第1対向位置P1と第2対向位置P2との略中間位置に、搬送ローラ20の回転中心C1と、ネジリコイルバネ22の係合部22aと、係合部22bとが略一直線状に配置されるように、ピンチローラ21と搬送ローラ20とが対向する第3対向位置がある。この他にもたとえば、第3対向位置は、第1対向位置P1側に偏っていても良いし、第2対向位置P2側に偏っていても良い。
【0065】
また、第3対向位置は、第1対向位置P1と一致しても良いし、第2対向位置P2と一致しても良い。第3対向位置が第1対向位置P1と一致する場合には、第1対向位置P1において、ピンチローラ21は、不安定な状態となり、第2対向位置P2へ戻りやすくなる。また、第3対向位置が第2対向位置P2と一致する場合には、第2対向位置P2において、ピンチローラ21は、不安定な状態となり、第1対向位置P1へ戻りやすくなる。しかし、これらの場合であっても、搬送ローラ20およびピンチローラ21の摩擦係数や、ネジリコイルバネ22の付勢力、角度θ等を適切に設定することで、上述した形態と同様に、ネジリコイルバネ22を用いた簡易な構成で、搬送されるカード2の搬送方向を切り替えることができるといった効果を得ることが可能になる。
【0066】
さらに、搬送ローラ20の回転中心C1と固定軸28の中心C3を結ぶ直線Lが、ピンチローラ21が第1対向位置P1にあるときの支持軸27の中心C2と搬送ローラ20の回転中心C1とを結んだ線よりも、図6の時計方向側に配置されるように、固定軸28がフレーム11に固定されても良い。この場合には、ピンチローラ21は、ネジリコイルバネ22の付勢力によって、第2対向位置P2側へ付勢されている。また、この場合には、搬送ローラ20が正回転すると、第2対向位置P2にあるピンチローラ21は、第1対向位置P1へ移動する。また、搬送ローラ20の回転中心C1と固定軸28の中心C3を結ぶ直線Lが、ピンチローラ21が第2対向位置P2にあるときの支持軸27の中心C2と搬送ローラ20の回転中心C1とを結んだ線よりも、図6の反時計方向側に配置されるように、固定軸28がフレーム11に固定されても良い。この場合には、ピンチローラ21は、ネジリコイルバネ22の付勢力によって、第1対向位置P1側へ付勢されている。また、この場合には、搬送ローラ20が逆回転すると、第1対向位置P1にあるピンチローラ21は、第2対向位置P2へ移動する。これらの場合であっても、搬送ローラ20およびピンチローラ21の摩擦係数や、ネジリコイルバネ22の付勢力、角度θ等を適切に設定することで、上述した形態と同様に、ネジリコイルバネ22を用いた簡易な構成で、搬送されるカード2の搬送方向を切り替えることができるといった効果を得ることが可能になる。
【0067】
上述した形態では、搬送方向切替機構6は、フラッパ23を備えているが、搬送ローラ20が逆回転したときにピンチローラ21が確実に第2対向位置P2へ移動して、カード2をカード回収部5へ確実に回収できるのであれば、搬送方向切替機構6は、フラッパ23を備えていなくても良い。
【0068】
上述した形態では、ピンチローラ21は、支持軸27に回転可能に支持されている。この他にもたとえば、ピンチローラ21とともに回転する回転軸にピンチローラ21が固定されても良いし、ピンチローラ21とともに回転する回転軸とピンチローラ21とが一体で形成されても良い。この場合には、たとえば、回転軸を回転可能に支持する軸受がフレーム11に保持される。また、この場合には、この軸受に、ネジリコイルバネ22の一端が係合し、フレーム11に、第1対向位置P1と第2対向位置P2との間で軸受を案内するガイド部が形成される。
【0069】
上述した形態では、媒体発行回収装置1は、カード送出部4から送出されたカード2を必要に応じて回収している。この他にもたとえば、媒体発行回収装置1は、外部から挿入されたカード2を必要に応じて回収しても良い。また、上述した形態では、記録再生部3は、通信用のアンテナ9を備えているが、記録再生部3は、アンテナ9に代えて、または、アンテナ9に加えて、磁気ヘッドおよび/またはIC接点を備えていても良い。
【0070】
上述した形態では、カード2の発行機能と回収機能とを有する媒体発行回収装置1を例に本発明の実施の形態にかかる搬送方向切替機構6の構成を説明したが、搬送方向切替機構6は、カード2の搬送方向の切替が必要な各種の装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 媒体発行回収装置
2 カード(情報記録媒体)
3 記録再生部
5 カード回収部(媒体回収部)
6 搬送方向切替機構(媒体搬送方向切替機構)
7 カード搬送路(媒体搬送路)
11 フレーム(第2保持部材、搬送ガイド)
11a ガイド溝(ガイド部)
11b 凹部(逃げ部)
12 カード収納部(媒体収納部)
20 搬送ローラ
21 ピンチローラ
22 ネジリコイルバネ(付勢部材)
23 フラッパ(振分部材)
27 支持軸
28、33、43 固定軸(第1保持部材)
32 引張りコイルバネ(付勢部材)
42 圧縮コイルバネ(付勢部材)
C1 搬送ローラの回転中心
P1 第1対向位置
P2 第2対向位置
R1 搬送経路(第1搬送経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される情報記録媒体の搬送方向を切り替える媒体搬送方向切替機構において、
前記情報記録媒体に当接して前記情報記録媒体を搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに対向配置され前記搬送ローラとの間に前記情報記録媒体を挟んで前記搬送ローラとともに前記情報記録媒体を搬送するピンチローラと、前記搬送ローラに向かって前記ピンチローラを付勢する付勢部材と、前記ピンチローラとともに回転する回転軸を回転可能に支持する軸受または前記ピンチローラを回転可能に支持する支持軸と、前記付勢部材を保持する第1保持部材とを備えるとともに、
所定の第1方向で前記ピンチローラと前記搬送ローラとが対向する第1対向位置と、前記第1方向に対して傾斜する所定の第2方向で前記ピンチローラと前記搬送ローラとが対向する第2対向位置との間で、前記搬送ローラの回転中心を中心とする前記ピンチローラの回動動作が可能となるように、前記支持軸または前記軸受を保持する第2保持部材を備え、
前記付勢部材の一端は、前記支持軸または前記軸受に係合し、前記付勢部材の他端は、前記第1保持部材に係合し、
前記搬送ローラが正回転すると、前記第2対向位置にある前記ピンチローラは前記第1対向位置へ移動し、前記搬送ローラが逆回転すると、前記第1対向位置にある前記ピンチローラは前記第2対向位置へ移動することを特徴とする媒体搬送方向切替機構。
【請求項2】
前記第1対向位置と前記第2対向位置との間には、前記搬送ローラの回転中心と前記付勢部材の一端と前記付勢部材の他端とが略一直線状に配置されるように前記ピンチローラと前記搬送ローラとが対向する第3対向位置があることを特徴とする請求項1記載の媒体搬送方向切替機構。
【請求項3】
前記第3対向位置は、前記第1対向位置と前記第2対向位置との略中間位置にあることを特徴とする請求項2記載の媒体搬送方向切替機構。
【請求項4】
前記第2保持部材には、前記第1対向位置と前記第2対向位置との間で、前記搬送ローラの回転中心を中心とする前記ピンチローラの回動動作が可能となるように、前記支持軸または前記軸受を案内するガイド部が形成され、
前記第1保持部材は、前記第2保持部材に固定されている、または、第2保持部材と一体で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の媒体搬送方向切替機構。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記支持軸または前記回転軸の両端側に形成されていることを特徴とする請求項4記載の媒体搬送方向切替機構。
【請求項6】
前記搬送ローラの逆回転時に、前記搬送ローラと前記ピンチローラとの間に挟まれた前記情報記録媒体の、搬送方向の端部が当接可能で、かつ、前記第2対向位置へ前記ピンチローラが移動するように前記情報記録媒体を案内する振分部材を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の媒体搬送方向切替機構。
【請求項7】
前記振分部材は、前記搬送ローラが正回転しているときの前記情報記録媒体の搬送経路となる第1搬送経路を塞ぐ位置と前記第1搬送経路を開放する位置との間で回動可能であるとともに、前記第1搬送経路を塞ぐ方向に付勢され、
前記搬送ローラが正回転しているときに前記情報記録媒体が前記振分部材に当接して、前記振分部材が前記第1搬送経路を開放することを特徴とする請求項6記載の媒体搬送方向切替機構。
【請求項8】
前記情報記録媒体が搬送される媒体搬送路を構成する搬送ガイドを備え、
前記搬送ガイドには、前記搬送ローラと前記ピンチローラとの間に前記情報記録媒体が挟まれた状態で前記ピンチローラが前記第1対向位置と前記第2対向位置との間を移動したときに、前記情報記録媒体と前記搬送ガイドとの接触を防止するための逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の媒体搬送方向切替機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の媒体搬送方向切替機構と、前記媒体搬送方向切替機構に向かって送出される前記情報記録媒体が収納される媒体収納部と、前記情報記録媒体が回収される媒体回収部とを備え、
前記搬送ローラが正回転すると前記媒体収納部から送出された前記情報記録媒体が発行され、前記搬送ローラが逆回転すると前記媒体回収部に前記情報記録媒体が回収されることを特徴とする媒体発行回収装置。
【請求項10】
前記媒体収納部から送出される前記情報記録媒体への情報の記録および前記情報記録媒体に記録された情報の再生を行う記録再生部を備え、
前記搬送ローラは、前記記録再生部での再生結果に基づいて正回転または逆回転することを特徴とする請求項9記載の媒体発行回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−12203(P2012−12203A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152606(P2010−152606)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】