説明

孔あき部品の供給装置および供給方法

【課題】孔あき部品の孔に、ガイドピンを確実に合致させることができる孔あき部品の供給装置
【解決手段】孔あき部品1に開口表面5が形成され、保持部16に保持された孔あき部品1の開口表面5が、電極ガイドピン39の軸線O−Oに対して傾斜するように保持部16の形状が設定され、供給ロッド11が、孔3の空間を孔3の軸線X−X方向に延長した仮想空間44内にガイドピン39の先端部が位置する箇所で停止し、停止状態にある開口表面5からガイドピン先端部45までの間に孔3の軸線X−X方向に孔あき部品1を飛翔させる飛翔空間Lが設置され、送出手段29によって孔あき部品1が飛翔したとき、孔3の開口縁8がガイドピン外周面の回動中心点Pに当たり、これによって孔あき部品1が回動することにより、ガイドピン39が相対的に孔3内に進入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、孔あき部品を所定の方向へ飛翔させて、所定の回動中心点を中心にして回動するようにした、孔あき部品の供給装置および供給方法に関している。
【背景技術】
【0002】
特許第2547593号公報には、供給ロッドの先端に磁石などで保持したナットを、固定電極のガイドピンの手前で停止し、前記磁力を解除することによってナットの自重で回動してガイドピンに合致させることが記載されている。また、特許第3878081号公報にも同様なことが記載されている。
【0003】
一方、特許第2824739号公報には、部品を供給ロッドの保持部から送出するための構造として、空気噴射を活用し、電極のガイドピンの軸線方向にナットを送出移動させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2547593号公報
【特許文献2】特許第3878081号公報
【特許文献3】特許第2824739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1や特許文献2に記載されている技術は、ナットがガイドピンの上方箇所で停止し、その位置からナットの自重で転倒落下、すなわち回動落下をさせてガイドピンに合致させるものである。したがって、ナットの落下移動速度が低く、転倒落下に要する時間が長くなり、生産性向上の面で不利である。さらに、自然落下に依存するものであるから、ナット保持部とナットの間に鉄くずのような不純物が介在して、ナット保持部とナットとの相対位置に狂いが生じると、ナットの落下軌跡が正常な軌跡からずれる現象が発生し、ねじ孔がガイドピンに正しく到達しないという問題がある。
【0006】
また、引用文献3に記載されている技術は、供給ロッドの保持部からナットを空気噴射で強制的にガイドピンに到達させるものであり、ねじ孔の軸線とガイドピンの軸線が同軸になった一直線の状態で強制移動がなされる。このため、電極の軸線に対してねじ孔の軸線が交差した位置関係となっているような場合には、供給が不可能となる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、孔あき部品を強制的に飛翔させて、孔あき部品を電極ガイドピンの回動中心点を中心にして回動させ、確実に孔あき部品の孔にガイドピンを合致させることができる孔あき部品の供給装置および供給方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、供給装置の発明であって、孔あき部品を供給の対象とし、これを電極のガイドピンに供給するものであり、この孔あき部品には円形の孔が開口している開口表面が形成され、供給ロッドの保持部または保持ヘッドの保持部に保持された孔あき部品の前記開口表面が電極のガイドピンの軸線に対して傾斜するように前記保持部の形状が設定され、前記供給ロッドの進出動作が、孔の空間を孔の軸線方向に延長した仮想空間内にガイドピンの先端部が位置する箇所で停止するように設定され、前記停止状態にある前記開口表面からガイドピンの先端部までの間に孔の軸線方向に孔あき部品を飛翔させる飛翔空間が設置され、前記保持部に配置された送出手段によって孔あき部品が孔の軸線方向に飛翔したとき孔の開口縁がガイドピンの外周面に当たる箇所が孔あき部品の回動中心点とされ、この回動中心点を中心にして孔あき部品が回動することにより、ガイドピンが相対的にその先端部から孔内に進入することを特徴とする孔あき部品の供給装置である。
【発明の効果】
【0009】
孔あき部品の開口表面が電極のガイドピンの軸線に対して傾斜しており、供給ロッドの進出動作が、孔の空間を孔の軸線方向に延長した仮想空間内にガイドピンの先端部が位置する箇所で停止するように設定され、上記停止状態にある開口表面からガイドピンの先端部までの間に孔の軸線方向に孔あき部品を飛翔させる飛翔空間が設置され、前記保持部に配置された送出手段によって孔あき部品が孔の軸線方向に飛翔したとき、孔の開口縁がガイドピンの外周面に当たる箇所が孔あき部品の回動中心点とされ、この回動中心点を中心にして孔あき部品が回動することにより、ガイドピンが相対的にその先端部から孔内に進入するものである。
【0010】
このため、孔あき部品の孔の軸線とガイドピンの軸線が交差した位置関係の下で孔あき部品が孔の軸線方向に強制的に飛翔させられるので、孔の開口縁が常にガイドピンの一定箇所に当てられ、この点が回動中心点となる。孔あき部品の開口縁が回動中心点に当たると、孔あき部品は飛翔時の慣性力によって回動中心点を中心にして、孔あき部品の回動中心点から遠い部位が回動運動、すなわち円弧運動をして、ガイドピンが相対的にその先端部から孔内に進入する。このようにして定められた正確な位置である回動中心点を中心にして孔あき部品が回動し、孔あき部品は常に均一な回動動作をして、正確な信頼性の高い孔あき部品供給が果たされる。
【0011】
孔の空間を孔の軸線方向に延長した仮想空間内にガイドピンの先端部が位置する箇所で供給ロッドの進出が停止するものであるから、仮想空間がガイドピン先端部に対して偏倚しても、それが許容範囲内であれば、すなわち仮想空間がガイドピンの軸線からずれた位置関係であっても、回動中心点を中心にした孔あき部品の回動がえられる。つまり、孔あき部品の孔の軸線とガイドピンの軸線とが交差することなく、上記偏倚許容量の範囲内の交差ずれであっても、正常な回動とガイドピンの孔への進入がえられる。換言すると、ガイドピン先端部が孔に進入した状態で開口縁が回動中心点に当たっていれば、仮想空間がガイドピン中心線からずれていても、回動過渡期にガイドピン中心線と孔の中心線が交差状態になって、中心合わせがなされるのである。したがって、上記軸線の交差ずれに対しても、柔軟に対応することができる。
【0012】
孔あき部品の開口表面が電極のガイドピンの軸線に対して傾斜しているので、すなわち、孔あき部品の孔の軸線とガイドピンの軸線とが交差した位置関係となっているので、供給ロッドの配置姿勢選定の自由度が拡大され、狭い制約のある工場環境であっても、装置の設置が行いやすくなる。
【0013】
孔あき部品は飛翔空間を送出手段によって飛翔するものであるから、飛翔に要する時間は、前述のような落下速度よしも大幅に短縮されて、生産性向上にとって効果的である。
【0014】
さらに、孔あき部品の保持部において、孔あき部品と保持部との間に鉄くずのような不純物が介在して孔あき部品と保持部との相対位置が狂っていても、孔あき部品は強制的に高速で飛翔に移行するものであるから、相対位置の狂いが存在していても、その狂いは高速移動開始によって消去され、孔あき部品の飛翔姿勢が異常になることがない。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記ガイドピンが下向きに突出しており、このガイドピンに孔あき部品の落下を防止する吸引手段が設けられている請求項1記載の孔あき部品の供給装置である。
【0016】
孔あき部品は強制的に飛翔してガイドピンが合致するのであるが、ガイドピンが下側に突出した電極の場合には、孔あき部品がガイドピンから落下しないようにしなければならない。上記吸引手段によって孔あき部品がガイドピンに吸引されるので、このような落下が防止できる。
【0017】
請求項3記載の発明は、供給方法の発明であって、孔あき部品を供給の対象とし、これを電極のガイドピンに供給するものであり、この孔あき部品には円形の孔が開口している開口表面が形成され、供給ロッドの保持部または保持ヘッドの保持部に保持された孔あき部品の前記開口表面が電極のガイドピンの軸線に対して傾斜するように前記保持部の形状が設定され、前記供給ロッドの進出動作を、孔の空間を孔の軸線方向に延長した仮想空間内にガイドピンの先端部が位置する箇所で停止し、前記停止状態にある前記開口表面からガイドピンの先端部までの間に孔の軸線方向に孔あき部品を飛翔させる飛翔空間が設置され、前記保持部に配置された送出手段によって孔あき部品を孔の軸線方向に飛翔させて孔の開口縁をガイドピンの外周面の回動中心点に当て、この回動中心点を中心にして孔あき部品を回動させて、ガイドピンを相対的にその先端部から孔内に進入させることを特徴とする孔あき部品の供給方法である。
【0018】
また、請求項4記載の発明は、前記ガイドピンが下向きに突出しており、このガイドピンに孔あき部品の落下を防止する吸引手段が設けられている請求項3記載の孔あき部品の供給方法である。
【0019】
請求項3および請求項4に記載した供給方法の発明の作用効果は、上記供給装置の発明の作用効果と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】装置の全体的な側面図と要部の断面図である。
【図2】保持ヘッドの各部を示す平面図、断面図である。
【図3】作動時におけるナットの向きを示す断面図である。
【図4】他の形態を示す断面図である。
【図5】さらに、他の形態を示す断面図である。
【図6】他の送出手段を示す断面図のである。
【図7】孔あき部品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明の孔あき部品の供給装置および供給方法を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1〜図7は、本発明の実施例1を示す。
【0023】
最初に、供給される部品について説明する。
【0024】
図7は、供給される孔あき部品の斜視図であり、同図(A)は鉄製のプロジェクションナットであり、符号1で示されている。所定の厚さを有する本体部2は正方形の形状とされ、その中心部にねじ孔3が開けられている。本体部2の片側の四隅に溶着用突起4が形成されている。本体部2の上側が平坦な上端面であり、この面が開口表面5とされている。また、図7(A)には現れていないが、下側が平坦な下端面であり、この面が開口表面6とされている。そして、開口表面5に開口しているねじ孔3の開口周縁部が、開口縁8とされている。
【0025】
各部の寸法は、本体部2の一辺が12mm、本体部2の厚さが7mm、ねじ孔3の内径が6mmである。本実施例では、図7(A)に示したナット1を供給の対象として説明する。以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【0026】
また、図7(A)に示したナット以外に、図7(B)に示すような鉄製のナット1を供給の対象とすることもできる。これは、本体部2が六角形で、下側に円形のフランジ7が形成されている。(A)図と同じ部位には同じ符号が記載されている。図示していないが、フランジ7の下面に3つの溶着用突起が120度間隔で形成してある。このような六角形ナット1以外に、孔の開いたディスタンスピースのような形状の部品を供給の対象とすることも可能である。また、同図(C)に示すように、本体部2を円形にしたナット1を供給の対象とすることもできる。
【0027】
つぎに、部品供給装置について説明する。
【0028】
部品供給装置全体は、符号100で示されている。静止部材10は、装置の機枠や壁板などで構成されている。この静止部材10を定置式電気抵抗溶接機のアーム部材や、ロボット装置で動作するXガン、Cガンタイプの溶接機のアーム部材に置き換えることができる。
【0029】
図1(A)のB−B断面は同図(B)に示され、図1(A)のC矢視図は同図(C)に示されている。
【0030】
進退動作をする供給ロッド11が外筒12内に進退可能な状態で収容され、この外筒12に結合した進退駆動手段であるエアシリンダ13のピストンロッド14が供給ロッド11に結合されている。外筒12を静止部材10に固定することによって、部品供給装置100の取付けがなされている。供給ロッド11は、ステンレス鋼などの非磁性材料で作られている。
【0031】
供給ロッド11の先端部に、保持部である保持凹部16が形成されている。保持凹部16は四角いナット1を受け入れるのに適した四角い形状であり、保持凹部16には、供給ロッド11の横側に開放した導入開放部17と、図2(B)に示すように、ナット1を送出する送出開放部18が形成されている。パーツフィーダ19から延びてきている供給通路20が導入開放部17に連通しており、ナット1はこの供給通路20から導入開放部17を経て保持凹部16内に進入するようになっている。この進入動作を助成するために、永久磁石25が保持凹部16の前方下側に配置してある。
【0032】
外筒12にボルトなどで固定したアーム部材21に、導入開放部17に連通する通路22が形成され、この通路22に連通した状態で供給管23が溶接などで結合されている。供給通路20はこのようにして通路22と供給管23によって構成されている。供給管23の上側から庇板24が延ばしてあり、これで保持凹部16を覆うことによって、進入時の衝突反発などでナット1が保持凹部16から飛び出すことを防止している。なお、図1(C)では、庇板24を理解しやすくするために、2点鎖線で図示してある。
【0033】
つぎに、送出手段について説明する。
【0034】
ナット1を後述のように飛翔させるために、送出手段が設けられている。この送出手段としては、空気噴射を利用したもの、ナット1を衝撃的に叩き出すようにしたもの等、色々なものが採用できる。ここでの最初の事例は、空気噴射によるものである。
【0035】
送出手段を構成するために、空気噴射通路構造が採用されている。この空気噴射通路構造を形成するために、各部の加工や組立の事情で、供給ロッド11の先端部を上部材26と下部材27に分割してある。上部材26は供給ロッド11の先端部下側を切り取って形成したものであり、上記のようにステンレス鋼製とされている。この上部材26に上記保持凹部16が形成されている。また、下部材27も非磁性材料で作られ、ここではステンレス鋼製である。
【0036】
保持凹部16の底面28は平面とされ、ここに4個の空気噴射口29が開けられ、各空気噴射口29からの噴流がナット1の開口表面5または開口表面6の4箇所に吹き付けられるようになっている。この吹きつけ箇所は複数であり、ナット1が傾いたりしないように空気噴射口29の位置が選定されている。つまり、噴射空気の動圧がナット1の開口表面5または開口表面6に均一に作用するようになっている。ここでは、図2(C)に示すように、開口表面5または開口表面6の四隅に近い箇所を狙って空気噴射がなされる。
【0037】
4つの空気噴射口29から均一に空気噴射を行わせるために、下部材27に空気通路30が形成してある。図2に示すように、下部材27に設けた空気通路30が分配室31に開口しており、この分配室31から4方に延びる分配通路32が形成されている。分配室31は円形で保持凹部16の底面28の中心部に一致する箇所に形成されている。また、分配通路32の先端部は空気噴射口29に合致する位置に形成されている。
【0038】
空気噴射口29と分配通路32の位置関係が上記のように設定されているので、上部材26と下部材27を図2(B)や(D)に示すように重ね合わせて、両者を溶接あるいはボルト付けなどで一体化すると、噴射空気は空気通路30から分配室31を通って空気噴射口29から噴射される。すなわち、前述の空気噴射通路構造が形成される。
【0039】
前記した部材の空気通路30は、供給ロッド11の長手方向に設けた空気通路33に連通しており、この空気通路33の端部にジョイント34が接続され、このジョイント34に伸縮式の空気ホース35が接続されている。空気ホース35の他端は、空気切換弁(図示していない)に接続されている。
【0040】
供給ロッド11の進退によってジョイント34が進退するので、外筒12に進退方向に延びる長孔36を設けて、この長孔36内をジョイント34が進退できるようにしてある。
【0041】
ナット1が供給される目的箇所は、可動電極38から下方に突出しているガイドピン39である。可動電極38と同軸状態で固定電極40が配置され、その上に鋼板部品41が載置してある。符号O−Oは、両電極の電極軸線を示している。この電極軸線O−Oはガイドピン39の軸線と共通のものである。したがって、「ガイドピン軸線O−O」なる記載をしている。
【0042】
図3(E)に示すように、ガイドピン39には、ナット1の落下を防止する吸引手段が設けてあり、ここでは磁石42がガイドピン内に埋設してある。この磁石を空気吸引式に換えてもよい。
【0043】
つぎに、保持部について説明する。
【0044】
ナット1を保持する保持部としては凹部にナット1をはめ込むところの上記保持凹部16のような形式や、供給ロッド先端部の平面に位置決めピンを設けて、ここにねじ孔3を合致させて磁石で吸引保持をする形式などが採用できる。この保持部の設置状態でナットの保持姿勢が設定される。ここでは、傾斜した配置姿勢の供給ロッド11にナット1が保持凹部16によって保持されるので、この保持凹部16が保持部を形成していることとなる。したがって、符号16は、保持凹部であるとともに、保持部を示している。
【0045】
保持凹部16の底面28の傾きを選定することによって、ナット1の開口表面5の傾斜角度が設定される。つまり、保持部16の形状、すなわち底面28の供給ロッド11に対する傾き角度を設定することにより、ガイドピン軸線O−Oに対する開口表面5の傾斜角度が設定される。本実施例では、保持凹部16の底面28が供給ロッド11の傾斜角度と同じになっているので、底面28や開口表面5の傾斜角度は、供給ロッド11の傾斜角度で決定される。この傾斜角度は、図中、符号θ1で示されている。ここでの傾斜角度θ1は、47度である。
【0046】
傾斜角度θ1は、20度〜70度の範囲内に設定される。傾斜角度が20度未満であると、図3に示すような供給ロッド11の場合、可動電極38の先端角部に供給ロッド11が干渉する虞がある。また、70度を超えると、回動中心点Pにおいてスリップ現象が発生し、高速でガイドピン先端部45がねじ孔3内に入り込むので、弾性反発現象が発生してナット1がガイドピン先端部45から跳ね返される虞がある。つまり、回動中心点Pに当たって所定の回動運動が行われると、このような跳ね返される現象が発生しないのであるが、70度を超えると異常なナット挙動が発生する虞がある。
【0047】
つぎに、供給ロッドの停止位置について説明する。
【0048】
供給ロッド11の進出動作は、ねじ孔3の空間をねじ孔3の軸線X−X方向に延長して形成された仮想空間44内に、ガイドピン39の先端部45が位置する箇所で停止するように設定されている。ガイドピン39には、可動電極38の受入孔に摺動する円筒状の摺動部46が形成され、その先端側が先端部45とされている。この先端部45は、先端側に向かって次第に小径となり、先端は球形とされている。
【0049】
また、停止状態にある開口表面5からガイドピン39の先端部45までの間に、ねじ孔3の軸線X−X方向にナット1を飛翔させる飛翔空間Lが設置されている。
【0050】
したがって、供給ロッド11の進出が停止すると、前記仮想空間44内にガイドピン39の先端部45が位置しているので、ナット1が軸線X−X方向に飛翔すると、開口縁8がガイドピン39の外周面に当たる。この当たった点が、回動中心点Pである。開口縁8が回動中心点Pに当たっている状態を静的に見ると、回動中心点Pの反対側に先端部45と仮想空間44の外側部分の間に回動空間Cが形成されている。
【0051】
なお、図3(F)に示したものは、ガイドピン39は回動中心点Pの箇所における直径方向の断面を示しており、この部分の直径方向の中心線Y−Yに対してねじ孔3の軸線X−Xがずれている場合である。このずれは符号Mで示されている。このようなずれMが発生しても、開口縁8がずれて回動中心点Pに当たり、その後、開口縁8に沿って回動中心点Pが滑動するので、自動的にセンタリングが果たされて、円滑なナット回動がえられる。
【0052】
つぎに、保持部の変型例を説明する。
【0053】
前述の保持部16は、供給ロッド11の先端部に保持凹部16を形成したものであるが、この変型例は、図5に示すように、供給ロッド11の先端に保持ヘッド47が取り付けられ、そこに保持凹部16が設けられたものである。保持ヘッド47の先端面が斜めに切断され、そこに保持凹部16が形成してある。
【0054】
保持凹部16の底面28が傾斜させてあるので、保持凹部16に入ったナット1の開口表面5も傾斜しており、これによってガイドピン軸線O−Oに対して開口表面5が傾斜している。この傾斜角度が前述のθ1である。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の供給ロッド11に設けた保持凹部16の場合と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0055】
なお、図2(E)に示された保持凹部16は、前述のような導入開放部17がなくて、真四角な送出開放部18が形成されている場合である。このような場合には、ナット1は、同図の紙面に垂直な方向からナット供給をする必要がある。このような保持凹部16であっても、図3に示すナット挙動と同じ挙動がなされる。
【0056】
つぎに、送出手段の変型例を説明する。
【0057】
前述の送出手段は空気噴射に基づくものであるが、この変型例は、押出し部材を採用したものである。保持凹部16の底面28に開口するガイド孔48が設けられ、ここに押出し部材49が進退可能な状態で挿入してある。押出し部材49は円形であり、その直径はねじ孔3の内径よりも僅かに大きく設定してある。ガイド孔48も円形の孔で、その内径はねじ孔3の内径よりも僅かに大きく設定してある。供給ロッド11の下側に押出し部材49を押し出す駆動手段50が取り付けてある。この駆動手段50は進退出力をするものであればよく、エアシリンダや電磁ソレノイドなどが採用される。押出し部材49は高速で進出するものであり、押出し部材49の表面がナット1の開口表面6に高速で当たり、それによる衝撃的な押し出しによってナット1が飛翔空間Lを飛翔する。つまり、ナット1が叩き出される。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の空気噴射によるものと同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0058】
つぎに、ナットの飛翔動作を説明する。
【0059】
図3(A)は、供給ロッド11の進出が所定の位置で停止した状態を示す。これを拡大した図が同図(D)である。空気噴射口29からの空気噴射または押出し部材49からの衝撃的な高速押し出し、すなわち叩き出しによって、ナット1がねじ孔3の軸線X−X方向に飛び出し、飛翔空間Lを飛翔する。この飛び出しによってねじ孔3の開口縁8が図3(B)に示すように、ガイドピン39の外周面に当たる。
【0060】
この当たった箇所がナット1の回動中心点Pとされ、図3(C)の矢線で示すように、ナット1は飛翔時の慣性力によって回動中心点Pから遠い部位が回動空間Cを通過して回動運動、すなわち円弧運動をする。このように回動中心点Pを中心にしてナット1が回動することにより、ガイドピン39が相対的にその先端部からねじ孔3内に進入する。この進入し切った状態が同図(E)である。
【0061】
図3(E)や図1(A)の状態から可動電極38が進出してナット1の溶着用突起4が鋼板部品41に加圧され、ついで溶接電流が通電されて溶接が完了する。なお、溶着用突起4が鋼板部品41に加圧されるときには、ガイドピン39を可動電極38内に後退させる必要がある。そのために図示していないが、一般的に採用されている構造として、ガイドピン39が可動電極38に進退可能な状態で保持され、ガイドピン39に進出方向のばね力を作用させてある。
【0062】
上記のような飛翔動作は、開口縁8が回動中心点Pに当たるまで継続される。したがって、開口縁8が回動中心点Pに当たった状態で、ナット1の溶着用突起4が送出開放部18から離れている必要がある。こうすることによって、回動中心点Pを中心にしたナット回動が送出開放部18に干渉することなく円滑に果たされる。
【0063】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、上記各種の永久磁石を電磁石に置き換えることも可能である。
【0064】
上述の供給ロッドの進退動作や空気噴射などの動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行うことが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0065】
上記実施例では、供給装置に重点をおいて説明しているが、供給方法としての構成や作用の説明も同時になされている。
【0066】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0067】
ナット1の開口表面5が固定電極38のガイドピン軸線O−Oに対して傾斜しており、供給ロッド11の進出動作が、ねじ孔3の空間をねじ孔3の軸線X−X方向に延長した仮想空間44内にガイドピン39の先端部45が位置する箇所で停止するように設定され、上記停止状態にある開口表面5からガイドピンの先端部45までの間にねじ孔3の軸線X−X方向にナット1を飛翔させる飛翔空間Lが設置され、前記保持部16に配置された空気噴射や押出し部材などの送出手段によってナット1がねじ孔3の軸線X−X方向に飛翔したとき、ねじ孔3の開口縁8がガイドピン39の外周面に当たる箇所がナット1の回動中心点Pとされ、この回動中心点Pを中心にしてナット1が回動することにより、ガイドピン39が相対的にその先端部45からねじ孔3内に進入するものである。
【0068】
このため、ナット1のねじ孔3の軸線X−Xとガイドピン39の軸線O−Oが交差した位置関係の下でナット1がねじ孔3の軸線X−X方向に強制的に飛翔させられるので、ねじ孔3の開口縁8が常にガイドピン39の一定箇所に当てられ、この点が回動中心点Pとなる。ナット1の開口縁8が回動中心点Pに当たると、ナット1は飛翔時の慣性力によって回動中心点Pを中心にして、ナット1の回動中心点Pから遠い部位が回動運動、すなわち円弧運動をして、ガイドピン39が相対的にその先端部45からねじ孔3内に進入する。このようにして定められた正確な位置である回動中心点Pを中心にしてナット1が回動し、ナット1は常に均一な回動動作をして、正確な信頼性の高いナット供給が果たされる。
【0069】
ねじ孔3の空間をねじ孔3の軸線X−X方向に延長した仮想空間44内にガイドピン39の先端部45が位置する箇所で供給ロッド11の進出が停止するものであるから、仮想空間44がガイドピン先端部45に対して偏倚しても、それが許容範囲内であれば、すなわち仮想空間44がガイドピン39の直径方向の軸線Y−Yからずれた位置関係であっても、回動中心点Pを中心にしたナット1の回動がえられる。つまり、ナット1のねじ孔3の軸線X−Xとガイドピン軸線O−Oとが交差することなく、上記偏倚許容量の範囲内の交差ずれであっても、正常な回動とガイドピン39のねじ孔3への進入がえられる。この交差ずれは、図3(F)に符号Mで示してある。
【0070】
換言すると、ガイドピン先端部45がねじ孔3に進入した状態で開口縁8が回動中心点Pに当たっていれば、仮想空間44がガイドピン中心線O−Oからずれていても、回動過渡期にガイドピン中心線O−Oとねじ孔3の中心線X−Xが交差状態になって、中心合わせがなされるのである。したがって、上記軸線X−XとO−Oの交差ずれに対しても、柔軟に対応することができる。
【0071】
ナット1の開口表面5が可動電極38のガイドピン軸線O−Oに対して傾斜しているので、すなわち、ナット1のねじ孔3の軸線X−Xとガイドピン軸線O−Oとが交差した位置関係となっているので、供給ロッド11の配置姿勢選定の自由度が拡大され、狭い制約のある工場環境であっても、装置の設置が行いやすくなる。
【0072】
ナット1は飛翔空間Lを送出手段によって飛翔するものであるから、飛翔に要する時間は、前述のような落下速度よしも大幅に短縮されて、生産性向上にとって効果的である。
【0073】
さらに、ナット1の保持部16において、ナット1と保持部(保持凹部)16との間に鉄くずのような不純物が介在してナット1と保持部(保持凹部)16との相対位置が狂っていても、ナット1は強制的に高速で飛翔に移行するものであるから、相対位置の狂いが存在していても、その狂いは高速移動開始によって消去され、ナット1の飛翔姿勢が異常になることがない。
【0074】
前記ガイドピン39が下向きに突出しており、このガイドピン39にナット1の落下を防止する吸引手段である磁石42が設けられている。
【0075】
ナット1は強制的に飛翔してガイドピン39が合致するのであるが、ガイドピン39が下側に突出した電極の場合には、ナット1がガイドピン39から落下しないようにしなければならない。上記永久磁石42によってナット1がガイドピン39に吸引されるので、このような落下が防止できる。
【0076】
供給方法においても、上述の供給装置の作用効果と同じ作用効果がえられる。
【0077】
上述の空気噴射のための前記空気噴射通路構造を成立させるために、供給ロッド先端部を上部材26と下部材27に分割し、上部材26に保持凹部16と複数の空気噴射口29が形成され、下部材27に分配室31や分配通路32などを形成し、上部材26と下部材27を一体化することによって、空気噴射口29から空気噴射がなされるように構成してある。なお、分配室31の直径を大きくして、分配通路32の形成を止めることができる。このような構成によって、分配室31における空気圧の均一な分布の形成や、各空気噴射口29から均一に空気噴射がなされることなどの利点がえられる。また、上部材26と下部材27の二分割構造とすることによって、分配室31や分配通路32などの通路構造の加工が簡単に行えるようになる。
【0078】
供給ロッド11の横側面を供給ロッドの進退長さ全域にわたって平面51とし、保持凹部16が供給通路20の箇所から前進すると、前記平面51が供給通路20を閉塞してつぎのナットの進入を防止するようにしている。したがって、後続のナットが保持凹部16内に進入したりして、供給ロッド11の進出動作に障害をもたらすことが回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
上述のように、本発明の装置や方法によれば、孔あき部品を強制的に飛翔させて、孔あき部品を電極ガイドピンの回動中心点を中心にして回動させ、確実に孔あき部品の孔にガイドピンを合致させることができる。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 プロジェクションナット
2 本体部
3 ねじ孔、孔
4 溶着用突起
5 開口表面
6 開口表面
8 開口縁
11 供給ロッド
16 保持凹部、保持部
17 導入開放部
18 送出開放部
26 上部材
27 下部材
28 底面
29 空気噴射口
38 可動電極
39 ガイドピン
40 固定電極
44 仮想空間
45 先端部
47 保持ヘッド
49 押出し部材
50 駆動手段
O−O 電極軸線、ガイドピン軸線
X−X ねじ孔軸線
P 回動中心点
L 飛翔空間
C 回動空間
M ずれ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔あき部品を供給の対象とし、これを電極のガイドピンに供給するものであり、
この孔あき部品には円形の孔が開口している開口表面が形成され、
供給ロッドの保持部または保持ヘッドの保持部に保持された孔あき部品の前記開口表面が電極のガイドピンの軸線に対して傾斜するように前記保持部の形状が設定され、
前記供給ロッドの進出動作が、孔の空間を孔の軸線方向に延長した仮想空間内にガイドピンの先端部が位置する箇所で停止するように設定され、
前記停止状態にある前記開口表面からガイドピンの先端部までの間に孔の軸線方向に孔あき部品を飛翔させる飛翔空間が設置され、
前記保持部に配置された送出手段によって孔あき部品が孔の軸線方向に飛翔したとき孔の開口縁がガイドピンの外周面に当たる箇所が孔あき部品の回動中心点とされ、
この回動中心点を中心にして孔あき部品が回動することにより、ガイドピンが相対的にその先端部から孔内に進入することを特徴とする孔あき部品の供給装置。
【請求項2】
前記ガイドピンが下向きに突出しており、このガイドピンに孔あき部品の落下を防止する吸引手段が設けられている請求項1記載の孔あき部品の供給装置。
【請求項3】
孔あき部品を供給の対象とし、これを電極のガイドピンに供給するものであり、
この孔あき部品には円形の孔が開口している開口表面が形成され、
供給ロッドの保持部または保持ヘッドの保持部に保持された孔あき部品の前記開口表面が電極のガイドピンの軸線に対して傾斜するように前記保持部の形状が設定され、
前記供給ロッドの進出動作を、孔の空間を孔の軸線方向に延長した仮想空間内にガイドピンの先端部が位置する箇所で停止し、
前記停止状態にある前記開口表面からガイドピンの先端部までの間に孔の軸線方向に孔あき部品を飛翔させる飛翔空間が設置され、
前記保持部に配置された送出手段によって孔あき部品を孔の軸線方向に飛翔させて孔の開口縁をガイドピンの外周面の回動中心点に当て、
この回動中心点を中心にして孔あき部品を回動させて、ガイドピンを相対的にその先端部から孔内に進入させることを特徴とする孔あき部品の供給方法。
【請求項4】
前記ガイドピンが下向きに突出しており、このガイドピンに孔あき部品の落下を防止する吸引手段が設けられている請求項3記載の孔あき部品の供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86255(P2013−86255A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243905(P2011−243905)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000196886)
【Fターム(参考)】