説明

孔開きヘッドレストの製造方法

【課題】 本発明は貫通孔の形状如何に関係なく孔開きヘッドレストを製造できるようにする。
【手段】 乗員の頭部が当接する前側表皮材21と、この前側表皮材21と別体で前側表皮材側を開放状に形成した軟質合成樹脂製スキンよりなる後側表皮材11とを有し、該後側表皮材11内にステーと一体のフレーム30を挿入配置した後、後側表皮材11と前記前側表皮材21とをパッド成形用の成形型Uにセットした後、後側表皮材11、前側表皮材内21内にパッド成形用発泡液を注入して、パッド10をフレーム、後側表皮材、前側表皮材と一体成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用シートに備える孔開きヘッドレストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中央部に前後方向に貫通する貫通孔を有する従来のヘッドレストは通孔を有するため、多数の表皮片を接ぎ合わせて筒状の前側表皮材を縫製し、この前側表皮材内にシートバック側に支持されるステーと一体で芯材を架設したU形状のフレームを前記通孔を形成する部分のスリットより挿入した後、スリットをホックで閉口し、然る後、これをパッド成形用の成形型に配設して、前側表皮材内にパッド成形用の発泡液を注入して、前側表皮材と一体にパッドを発泡成形している(例えば特開2001-314271号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-314271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、前記製造方法によるヘッドレストは、前側表皮材内に対するフレームの挿入が容易になるが、多数の表皮片を縫製により接ぎ合わせで形成するため、接ぎ合わせた部分がハギラインになり、ヘッドレストの外観品質が損なわれる。
【0005】
また、貫通孔が例えば上下二個を有するものの如く、複雑な形状のものは製造できない。
【0006】
そこで、本発明は孔開きヘッドレストの製造方法において、貫通孔の形状に関係なくフレームの挿入が容易で、ヘッドレストの外観品質に優れた孔明きヘッドレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前後方向に貫通する貫通孔を略中央に有する孔開きヘッドレストの製造方法であって、
乗員の頭部が当接する前側表皮材と、前記貫通孔を装飾孔部としてその内部域に有する正面略U形状であり、前側表皮材と別体で前側表皮材側を開放状に形成した軟質合成樹脂製スキンよりなる後側表皮材とを有し、
該後側表皮材内にステーと一体のフレームを挿入配置し、前側表皮材と後側表皮材との周縁を一体的に連結した後にパッド成形用の成形型にセットし、この後側表皮材と前側表皮材とにより形成された空間内にパッド成形用発泡液を注入して、パッドおよびフレームを前側表皮材と後側表皮材と一体に成形することを特徴とする。
【0008】
このヘッドレストの製造方法によれば、前側表皮材と、スキンよりなる後側表皮材とで、ヘッドレストの外面は構成されているため、従来の如く、多数の表皮片を接ぎ合わせる必要がない。従って、縫製作業が不要となるし、ハギラインがヘッドレストの外面に現れない。
【0009】
また、軟質合成樹脂製スキンよりなる後側表皮材側が開放状であるから、表皮内にステーと一体のフレームが簡単、容易に挿入できる。
【0010】
そして、後側表皮材と前側表皮材と一体にパッド、フレームを一体発泡できるため、孔開きヘッドレストの製造が容易になる。
【0011】
更に、前記貫通孔が、左右間に架設された梁を複数本有することにより、複雑な形状を有する貫通孔を有する孔開きヘッドレストが製造できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、貫通孔の形状の如何によらず、関係なく製造が簡易な孔開きヘッドレストを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る製造方法によって製造した孔開きヘッドレストの斜視図である。
【図2】パッド成形前の分解斜視図である。
【図3】図2のX―X線端面図である。
【図4】図2のY―Y線端面図である。
【図5】成形型内に表皮等をセットした状態を示す断面図である。
【図6】成形型内でパッドを成形した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る孔開きヘッドレストの製造方法の好適な実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明に係る製造方法によって製造した孔開きヘッドレストAは、その外面を構成する外面材が乗員の頭部が当接する前側表皮材21とヘッドレストAの後面側の後側表皮材11とから構成され、略中央の上下には前後方向に貫通する貫通孔H、Hが設けてある。図中31、31はシートバックに支持されるステーで、このステー31、31はヘッドレストA内部のフレームと一体に形成されている。
図中1A、1Bは通孔H、Hを形成する梁を示し、この梁1A、1Bが左右間に架設されている。
【0016】
図2、3、4はパッドを発泡成形する前の状態の前側表皮材21、後側表皮材11などを示し、後側表皮材11は例えばP、V、Cなどの軟質合成樹脂製スキンで前側表皮材21側を開放状に成形し、前記貫通孔H、Hを装飾孔部としてその内部域に有する略正面逆U形状の略皿状体で、その湾曲状内面には前記梁1A、1Bを構成する梁表皮1A´、1B´が一体に設けてあり、この梁表皮1A´、1B内にはあらかじめウレタンフォームなどの芯材を充填しても良いが、図6に示すように、パッドを成形時に、パッド成形用発泡液を注入してパッド10A´を発泡成形するようにしても良い。
【0017】
図2において、図中11A、11Aは後側表皮材11の開口端縁を示す。
この後側表皮材11内に前記フレーム30を開放部側から挿入、配置する。従って、フレーム30の装着が簡単且つ容易にできる。
【0018】
なお、前記後側表皮材11は、例えば、スラッシュ成形、ブロー成形、インテグラルスキン法などの中空成形方法によって成形する。
【0019】
前側表皮材21は正面略逆U形状に裁断した織物地など従来ヘッドレストの表皮材として使用しているものである。図中21Aはその端末を示す。
【0020】
次に、孔開きヘッドレストAの製造方法について説明する。
【0021】
図2に示すように、後側表皮材11の開放部よりステー31、31と一体のフレーム30を後側表皮材11内に挿入配置してステー31、31を後側表皮材11の底部側より外部に突出させる。
【0022】
次に、前記前側表皮材21と後側表皮材11の周縁11A、21Aを一体的に連結する。然る後、図5に示すように、パッド成形用の成形型(上、下型)U内にフレーム30付の後側表皮材11と前側表皮材21をセットする。
なお、成形型U内で後側表皮材11の開口端縁11A、11Aと、前側表皮材21の端末21A、21Aとを位置決めして重ね合わせるか、又は、成形型Uの内面に設けた係止部材(不図示)に係止させるように結合させてもよい。図中、10´、10A″はパッド成形用空間部を示す。
【0023】
然る後、成形型Uに設けた注入孔より、前、後側表皮材11、21とにより形成したパッド成形用空間部10´、10A″内に、パッド成形用の発泡液を注入して、パッド10、10A´を発泡成形して脱型すると、図6に示すように、後側表皮材11、前側表皮材21、フレーム30と一体成形されたパッド10を有する孔開きヘッドレストAが製造される。
【0024】
この製造方法によれば、後側表皮材11を軟質合成樹脂製スキンで形成しているため、従来の如く、多数の表皮片を筒状、環状など複雑な立体形状に縫製する必要がないし、複雑な貫通孔H、H形状のものにも対応できる。また、意匠的に優れた装飾孔部を有するヘッドレストを提供できる。
【0025】
後側表皮材11の前側表皮材21側が開放状に形成されているため、フレーム30の後側表皮材11内への挿入が簡単、容易になる。
【符号の説明】
【0026】
A…孔開きヘッドレスト、H、H…貫通孔、10…パッド、11…後側表皮材、21…前側表皮材、30…フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に貫通する貫通孔を略中央に有する孔開きヘッドレストの製造方法であって、
乗員の頭部が当接する前側表皮材と、前記貫通孔を装飾孔部としてその内部域に有する正面略U形状であり、前側表皮材と別体で前側表皮材側を開放状に形成した軟質合成樹脂製スキンよりなる後側表皮材とを有し、
該後側表皮材内にステーと一体のフレームを挿入配置し、前側表皮材と後側表皮材との周縁を一体的に連結した後にパッド成形用の成形型にセットし、この後側表皮材と前側表皮材とにより形成された空間内にパッド成形用発泡液を注入して、パッドおよびフレームを前側表皮材と後側表皮材と一体に成形することを特徴とする孔開きヘッドレストの製造方法。
【請求項2】
前記貫通孔が、左右間に架設された梁を複数本有してなる請求項1記載の孔開きヘッドレストの製造方法。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245750(P2011−245750A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121469(P2010−121469)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】