説明

宅配便用物品梱包袋

【課題】 依頼者側が、修理依頼の物品を梱包する手数をなくす。
【解決手段】マット1と外層シート2と緩衝体4との組み合わせである。マット1は、気密性を有する方形のシートであり、気密に封止され、外層シート2に積層一体化され、梱包領域Waを構成する。梱包領域Waは、物品Mをはさんで2つ折に折り重ねる部分であり、その延長部分に形成された外層シート2のフラップ5は、マット1の折り曲げ部分の隙間を塞ぐカバー形成領域Caとなる。緩衝体4は、マット1内の空気が抜き取られて袋体の容積が減少したときに、マット1に梱包された物品の形状になじんで充填密度が増大し、物品Mの表面に密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の梱包袋、特に修理依頼物品の宅配に好適な物品梱包袋に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を輸送する際には、輸送中に受けるかもしれない衝撃や振動などから物品を有効に保護するため、通常は緩衝性を有する紙やプラスチックシートその他の緩衝材を用いて梱包し、更に、必要に応じて物品が動かないよう詰め物をして外箱内に梱包される。
【0003】
最近、宅配業務において、ノートパソコン、デジタルカメラといった電子機器類をメーカーや量販店の修理センターに配送する依頼が急増している。ノートパソコン、デジタルカメラといった製品は、量販店、小売店から購入する際には、専用の包装箱内に梱包されているのが通例であり、その箱を廃棄せずに残しておけば、修理依頼の時にも利用できるが、現実にはほとんどが製品の購入直後に廃棄されるので、修理依頼の場合には有り合わせの箱を利用される。
【0004】
もっとも、宅配業者においては、種々の大きさの箱を用意して顧客の要求に対応してはいるものの、製品の大きさ、形状は多種多様であって、宅配業者が用意する箱ですべてに対応することは難しい。
【0005】
包装とは、日本工業規格(JIS Z 101)によれば、「物品の輸送、保管などにあたって、価値及び状態を保護するために適切な材料、容器などを物品に施す技術及び施した状態をいい、これを個装、内装及び外装の3種に分ける。」とあり、製品の販売時には、「個装」つまり、物品個々を包装し、物品の商品価値を高めるため、又は物品を保護するために適切な材料容器などを物品に施すことが必要であるが、修理のために、製品の運送を宅配業者に依頼するようなときには、製品販売時のような「個装」は必要ではなく、要するに輸送中に受けるかもしれない衝撃や外力から製品を有効に保護できればよいのであって、必ずしも、包装箱を使用しなければならないというものでもない。
【0006】
したがって、物品をメーカーや量販店の修理センターに配送する場合には、その物品を袋に入れてそのまま運送できれば便利である。とはいえ、単なる紙袋やビニール袋では衝撃などに対する安全を確保できないため、袋を使用するときには、衝撃から製品を守るための特別の工夫が必要である。たとえば、特許文献1には、物品を収納する袋状の物品収納部と、この周辺部の少なくとも1部に連接され、緩衝剤を封入して物品収納部に対する外部からの衝撃を和らげる袋状の緩衝部とからなる包装体が記載されている。
【0007】
また、物品運送用の袋ではないが、買い物袋などとして使用することを目的とした保温袋として、特許文献2には、発泡粒状体の断熱効果を利用した袋が記載されている。この保温袋は、相互間に粒状体収容部を形成して自在に変形可能な内側袋部及び外側袋部を有する2重袋で、保温物を収納可能に形成され、かつ前記両袋部の内の少なくとも外側袋部が非通気性をなす袋本体と、前記粒状体収容部に収容されこの収容部が脱気されるにつれて互いに密着状態に集合して固化状態となる無数の発泡粒状体と、前記粒状体収容部に連通して前記袋本体に設けられ、前期粒状体収容部が脱気した状態を保持する吸気弁を有する給排気口とを具備したことを特徴とする保温袋である。
【0008】
特許文献2に記載された保温袋によれば、粒状体収容部内に収容されている無数の発泡粒状体を被保温物の形状に沿うように固化状態とすることによって、袋本体内で被保温物の周囲の空気の対流による熱損失をなくすとともに、発泡粒状体群で断熱ができるから、被保温物の温度変化を長時間にわたり抑制できるとともに、前記固化状態の発泡粒状体で被保温物を袋本体内で動かないように位置決めすることによって、被保温物が動くことに基づく被保温物の品質劣化を防止できるという効果が強調されている。
【0009】
特許文献2に記載の保温袋は、被保温物の形状に沿うように固化状態として発泡粒状体群の断熱効果を被保温物の保温に利用したものであるが、前記固化状態の発泡粒状体で被保温物を袋本体内で動かないように位置決めできることは、固化状態とした発泡粒状体群は断熱効果だけでなく、緩衝効果を期待でき、また、物品を定位置に安定に保持できることは、宅配便として輸送される物品を梱包する上にも大きな効果が期待できる。
【0010】
特許文献2に記載の保温袋は買い物袋としての使用が想定されたものではあるが、物品を保温状態に保持して運ぶことが可能であることから、特許文献2に記載された袋のままでも、宅配便用物品収納袋として利用できないわけではない。とはいえ、このままでは単なる袋であって、その活用の仕方が問題となる。たとえば、顧客が宅配便のためにこの袋を保管していなければならないというのは現実的ではないし、逆に梱包宅配業者が袋を顧客に提供するとしても、製品の種類に応じて各種の大きさのものを準備しておくことは難しく、使い切りの袋としてはコスト高となって現実的ではない。
【0011】
さらに、問題なのは従来の物品の宅配を宅配業者に依頼するときには、そのほとんどの場合が依頼者が物品を梱包して業者に配送を依頼するという構想であったということである。また、特許文献2の保温袋においては、前記粒状体収容部に連通して前記袋本体には、給排気口が設けられ、給排気口には、前記粒状体収容部が脱気した状態を保持する吸気弁が取付けられている。特許文献2の記載によれば、この吸気弁は、小児用浮き袋に使用されているものと同様のものであり、無負荷状態では閉弁状態を維持し、外側から指でつままれて押されることによって、開弁状態となるというものである。
【0012】
さらに、前記袋本体内を脱気するための排気ポンプは、手動または電動式のものであって、買い物袋を所持する消費者が携帯し、あるいは食品販売店に備え付けられているものを使用するというのである。使用の際には、給排気口に、排気ポンプを接続するとともに、給排気口の排気弁を外側から抑えてこの吸気弁を開いた状態に保持して、前記排気ポンプを動作させることにより袋体が有する二重袋の粒状体収容部の空気を抜き取るというのであるが、その操作の点に改善の余地がありそうである。
【0013】
すなわち、開閉弁に小児用浮き袋に使用されているものと同じように外側から抑えて吸気弁を開いた状態に保持して真空ポンプで袋体内を脱気すると言うのではあまりにも使いづらく、また信頼性にも劣るといわざるをえない。さらに排気ポンプについては、商店での買い物を想定したときに、消費者がポンプを携帯し、あるいは食品販売店に備え付けられているポンプを使用するというのはやむを得ないが、物品の宅配を宅配業者に依頼するための宅配業務については、買い物と同じ扱いでよいはずはない。
【特許文献1】特開2008−74451
【特許文献2】特開2001−321217
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
解決しようとする問題点は、収納物品の形状に沿うように固化状態として発泡粒状体群の断熱効果を被保温物の保温に利用するという特許文献2に記載の構想を宅配便として輸送される物品の梱包に活用する場合に、前記粒状体収容部を脱気するために使用する開閉弁として小児用浮き袋に使用されているものと同様のものというのは実用的ではく、またより根本的な問題として脱気するためのポンプを消費者、つまり宅配業者の顧客にその装備を期待することは難しいという点である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、外層シートと、マットと、マット内に充填された緩衝体との組み合わせからなる宅配便用物品梱包袋である。外層シートは、マットの表面保護カバーであり、マットは、外層シートと一体に積層されている。このマットを外層シートとともに2つ折りに折り曲げてホルダーとし、ホルダーに物品を挟み、さらに梱包袋に付設されたフラップをマットの上に折り重ねてマットの端縁開口を塞いで物品を梱包する。
【0016】
本発明において、バルブは、逆止弁と吸気弁との組み合わせであり、マットの一部に取り付けられ、梱包時には、ポンプの吸引力を作用させることにより、マット内は脱気され、緩衝体が固化し、脱気後は逆止弁が機能して脱気状態を維持し、開梱時には、手動操作によって吸気弁を開弁し、マット内に外気を吸引して緩衝体を軟化させる点を主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明による梱包袋によれば、宅配業者が依頼先に梱包袋およびポンプを持参し、配送依頼を受けた物品を梱包袋内に格納し、バルブの給排気口に専用ポンプの吸引口を挿し込み、ポンプを操作してマット内を脱気すると、マット内の緩衝体が物品の形状を象って固化し、物品の表面各部がマットに保護された状態で梱包される。
【0018】
バルブは逆止弁のため、そのままで外気が吸引されないが、安全のため、ノブを回転操作して吸気弁の開弁を阻止したうえで、フラップを折り曲げて袋の開口を塞ぐとともにバルブの表面を覆ってそのまま車両に積み込んで運送することができる。
【0019】
また、配送先では、フラップを開いてバルブを露出させ、ノブを回転操作することによって、吸気弁の固定を解除し、弁棒を押し下げて吸気弁の弁口を開弁するだけで外気が吸引されて緩衝体が軟化するため、ホルダーからの物品の脱着は容易である。
【0020】
本発明によれば、宅配業者が所持し、依頼先に持参し、配送先から回収して繰返し使用する梱包袋として活用することができ、使い切りの段ボール箱などと違って、使用後に廃棄物を出さないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ノートパソコンその他の物品の修理を補修センターに依頼する際に依頼者側において、修理依頼の物品を梱包する必要をなくすという目的をマット内に緩衝体が充填された梱包袋を用い、マット間に物品を挟み、マット内を脱気し、緩衝体を固化させ、マットを物品表面に定着させることによって実現した。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明による梱包用梱包袋の構成部材の展開図である。梱包用梱包袋は、マット1と、外層シート2との組み合わせからなり、マット1には、図1(a)のようにバルブ6が取り付けられている。マット1は気密性を有する長方形の表面シート1aと裏面1bとを重ね合わせ、その周縁を封止した気密性を有する袋に、緩衝体4を充填したものであり、バルブ6は、マット1内の空気を脱気あるいは外気を内部に吸気させるものであり、マット1の一部に取り付けられている。
【0023】
この実施例においては、外層シート2は、図1(b)に示すようにマット1の一面を覆う単なるカバーであり、そのシート面の一部には、前記マットに取り付けたバルブ6を臨ませる小孔Hが開口されている。
【0024】
外層シート2およびマット1は、横長(縦置きにしたときには縦長)の方形のシートであり、外層シート2は、マット1より長く、マット1と外層シート2とは、図2に示すように各々の一端をそろえて上下に重ね合わされ、その重ね合わせ部分は、物品の梱包領域Waとなり、外層シート2の延長部分Wcは、後述するようにマット1を外層シート2とともに2つ折りに折り曲げることによって形成されるホルダー3の開口を塞ぐフラップ5となる。
【0025】
緩衝体4は、マット1の袋体内の空気が抜き取られてその内容積が減少したときに、マット1に梱包された物品の形状になじんで充填密度が増大し、マット1を物品の表面に密着させ、外部から受ける衝撃を緩和させる機能を有するものである。このような機能を有するものは、例えば合成樹脂発泡体のビーズであり、マット1内に充填されている。前記バルブ6は、梱包領域Waの外層シート2のシート面の一部、特に外層シート2の端縁付近にその給排気口を位置させる。
【0026】
図3(a)において、マット1は、その全長の中間部位O−Oを基点として外層シート2とともに内側に2つ折に折り曲げられて図3(b)のようにホルダー3の底部Bと表部Cとを形成し、物品の梱包領域Waを形成するホルダー3の両側縁には、中間部位O−Oを基点として梱包領域Waを2つ折に折り曲げたときにその一側縁は、縫い目Sにて縫製する。なお、他側縁には、その隙間を開閉するファスナー7を取り付けている。
【0027】
さらに、外層シート2のフラップ5の端縁と、梱包領域Waの表部Cを形成する外層シート2のシート面の対応する箇所とには、梱包領域Waを2つ折に折り曲げたときの底部Bと表部C間を閉じる面ファスナー8をそれぞれ取り付けている。なお、外層シートの延長部分Wcであるフラップ5の外面一部には、宅配用の伝票入れ5aが取り付けられている。伝票入れ5aは、内部に収容した伝票の文字を透視させる透明シートを有するポケットである。
【0028】
この実施例において、マット1には熱可塑性ポリウレタンシート又は塩化ビニルシートを用い、外層シート2には熱可塑性ポリウレタンシート、塩化ビニルシート、柔軟性があるメタロセン系ポリエチレンとEVOH/ポリエチレンのラミフィルムまたは、メタロセン系ポリエチレンとガスバリアナイロンのラミフィルム、ナイロン6、ナイロン66基布/熱可塑性ウレタンターポリン、ナイロン6、ナイロン66基布/塩化ビニルターポリン又はポリエステル基布/熱可塑性ウレタンターポリン、ポリエステル基布/塩化ビニルターポリンを用いている。
【0029】
緩衝体4にビーズを用いたときには、マット1内で部分的な偏りが生じないように充填することが必要である。この実施例においては、多数のビーズを全面に渡って偏りがないように、ポリエステルスパンボンド不織布又はナイロンスパンボンド不織布を用いた通気性を有する袋をいくつかの細長い袋状に区画し、各区画内には、それぞれ同量ずつ定量のビーズを充填し、これを表面シート1aと裏面シート1b間に差し込んで外観を平坦なマットに仕上げることもできる。
【0030】
ビーズは、発泡ポリエチレンあるいは発泡ポリスチレンの粒状体であり、その粒径の大きさは問わないが、粒径が小さいほど物品の形状によくなじませることができる。
【0031】
図4にバルブ6の構造を示す。バルブ6は、逆止弁9と吸気弁10との組み合わせからなり、底に鍔11aを有する円筒状の弁箱11の内部中心に吸気弁10が組み込まれ、吸気弁10の周囲に逆止弁9が組み込まれている。鍔11aは、弁箱11をマット1の内側から気密に支持する支えである。逆止弁9は、マット1内の脱気に際し、ポンプの吸引力が作用したときに開弁し、脱気後は閉弁してマット1内への外気の導入を阻止するものであり、吸気弁10は、押しボタン操作により開弁し、脱気されたマット1内への外気の導入を可能にするものである。
【0032】
弁箱11は、ポンプ(またはポンプに接続されたホースの吸い口)に装着されたカプラー12と脱着可能に結合されるものである。後述するように、図4(a)は、ポンプで吸引して逆止弁を開き、マット内の空気を脱気している状態、図4(b)は、吸気弁10を開いてマット内に空気を導入している状態、図4(c)は、吸気弁10が開かないように開弁操作を阻止している状態を示している。図5(a)、(b)に逆止弁9と吸気弁10との構成部材を示す。吸気弁10は、弁箱11の中央に突出形成された筒状部10aと、筒状部10a内の弁口10bを開閉する弁棒10cとの組み合わせであり、弁棒10cには、コイルスプリング10dが外装され、その頸部にゴムパッキング10eをはめ合わせたもので、コイルスプリング10dのばね力を弁棒10cに作用させてばね押さえ10fを筒状部10aの内壁に支え、ゴムパッキング10eを弁口10bの口縁に圧接させ、常時弁口10bを閉弁状態に保持させたものである。
【0033】
弁箱11の外壁には、カム溝13が立ち上がり方向にらせん状に開口されている(図6参照)。弁箱11には、前記カム溝13内に係合する突子14を備えたノブ15が転回可能に嵌め込まれている。ノブ15は、材質の有する弾力性を利用して押し下げ可能な操作用押ボタン16を頭部に有し、押ボタン16の下面には、弁棒10cを挿し込んだ前記筒状部10aの頂部に当接させるステー17を突設している。一方、前記筒状部10aは頂部に凹部18を有している。図6(a)は、突子14が図上右上がりのカム溝13の右端(突子14が最も持ち上げられた位置)にあって、押しボタン16による吸気弁の開弁が可能な状態を示している。叉、図6(b)は、突子14が図上カム溝13の左端(突子14が押し下げられた位置)にあって、吸気弁の開弁不能の位置を示している。カム溝13と押しボタン16との関係を図7に示す。
【0034】
図7にノブ15に備えた操作用押しボタン16と、筒状部10aとの関係を模式的に示した図である。前記ノブ15は、前記カム溝13の螺旋に沿う回転角の変位に応じて上下に変位し、図7(a)のようにステー17が筒状部10aの凹部18に向き合った位置で、図7(b)のように凹部18の深さの範囲内で前記操作用ボタンの押し下げが可能となり、図7(c)のように前記ステー17が凹部18から外れた位置では、ステー17は、筒状部10aの頂部に支えられ、かつ頂部に押し付けられて前記操作用押ボタン16の押し下げは不能となる。
【0035】
したがって前記ステー17が凹部18から外れた位置では吸気弁10を開弁することができない。給気時以外には、ノブ15を回転操作してステー17を筒状部10aの頭部に当接させ、押しボタン16の押し下げができないようにしておく。一方、図5において、逆止弁9は、フィルター9aと、放射状のリブの間に弁口が形成されたリング9bと、柔軟な材質からなる弁板9cとの組み合わせからなり、筒状部10aを軸として吸気弁10の外周に組み込まれたものである。
【0036】
逆止弁9の組み立てに際しては、まず筒状部10aの周囲に形成された環状の開口の口縁に支えてフィルター9aを設置し、次いでリング9bをはめ、さらに弁板9cを挿し込み、その上からホルダー9dで抑えて筒状部10aに保持させている。マット1に取り付けられた弁箱11は、外層シート2に開口した小孔Hから外層シート2の表面に引き出し、上方からリング20をはめ合わせて弁箱11を外層シート2とマット1との積層に気密にシールした状態で定位置に保持させる。
【0037】
次に本発明による梱包袋の使用例について説明する。たとえば、ノートパソコンが故障し、その使用者が修理をメーカーの修理センターに依頼する場合を考える。通常ノートパソコン(以下物品Mと略称する)の修理依頼のための運送は宅配業者に依頼される。依頼者は、自らはノートパソコンの輸送のための梱包は不要である。依頼者(宅配業者の顧客)が宅配業者に物品Mの運送を依頼すると、宅配業者は、本発明による梱包袋と脱気用ポンプとを持参して依頼者の指定する場所(自宅、事務所など)を訪問し、依頼者から物品Mを受け取る。
【0038】
図8(a)において、宅配業者は、その訪問先で持参した包装袋を床あるいは卓上に置き、一側のファスナー7を開いた状態でホルダー3内に物品Mを差し込み、図8(b)のようにファスナー7を閉じる。
【0039】
この状態で、図9(a)に示すようにポンプ19のホース先端に取り付けられたカプラー12を弁箱11にはめ込み、ポンプ19をピストン操作してそのシリンダー19a内に空気を吸引すると、弁箱11に組み込まれた逆止弁9の弁板9cが開いてマット1内の空気が抜き取られる(図4(a)参照)。マット1内が脱気されるにしたがって、図9(b)に示すようにその容積が減じ、物品Mに接する側のシート面が物品Mの表面に押し付けられ、この間に緩衝体4が互いに密に集合して自由な動きが阻止され、マット1は、物品Mに密着し、これを定位置に保持した状態で固化状態となる。この状態でノブ15を回転させ、押しボタン16のステー17を筒状部の頭部で支えて吸気弁10が開弁できないようにしておく(図4(c)参照)。
【0040】
その後、図8(c)のように、フラップ5を物品Mの表面を覆う外層シート2の表部C上に折り返し、伝票入れ5aに配送伝票を挿入し、宅配便として預かり、配送先であるパソコンの修理センターに宅配貨物として運送する。
【0041】
マット1の袋体内に空気が送入されない限り、マットは物品Mに密着して物品Mを安定に支え、袋体内に充填された多数のビーズその他の緩衝体の緩衝作用によって、外部から受けた衝撃、振動は緩和される。
【0042】
配送先で貨物を開梱するときには、まず面ファスナー8によって接合されているフラップ5を表部Cから引き剥がし、バルブ6の弁箱11を外部に露出させる。次に弁箱11にはめ合わせたノブ15を回転させると、カム溝13内に係合させた突子14がカム溝13に沿って誘導され、ノブ15の転回によって、図7(a)のように押ボタン16の下面に突設した突子14が筒状部頭部に形成された凹部18に向き合い、押ボタン16の押し下げが可能となる。ここで手指で押ボタン16を押し下げると、筒状部10aに差し込まれた弁棒10cが一体に押し下げられて弁口10bを開き、負圧になっているマット1内には外気が吸引され、緩衝体の密着状態が解消されて、マット1は柔らかくなり、梱包の包みを自由に開くことができる(図4(b)参照)。
【0043】
マット1を開梱して中から取り出だした物品Mを配送伝票とともにパソコンの修理センター側に引き渡し、梱包袋は回収して次の物品の運送に備える。あるいは、梱包袋を回収センターに預け、物品の修理が終わったのち、顧客に返送するときにそのマット1で物品Mを梱包し、これを宅配便として預かり、顧客に返送後、マット1を引き取る形で回収することもできる。なお、マット1を開梱して中から物品を取り出した後は、次の配送に備え、この段階でノブ15を回転させ、図4(c)に示すように押しボタン16のステー17を筒状部の頭部で支えて吸気弁10が開弁できないようにしておくことが望ましい。
【0044】
以上実施例においては、2つ折に折り曲げられたマットの梱包領域の両側縁のうち、片側を逢着し、他側を開閉可能とした例を説明した。このように、袋の正面と一側縁が開いていれば、物品の包装には実質的に支障はなく、物品収納後、他方の側縁のファスナーを閉じるだけで済むために、梱包作業を短縮できる。もっとも、マットの梱包領域を2つ折に折りたたんだ後にその両側縁をファスナー等で閉じることによって、袋状に構成することももちろんできる。さらに、図10に示すようにマット1の梱包領域を2つ折に折りたたんだ状態でその両側縁を折り返し付のシート21でつないで正面が開放された袋状に予め加工されていてもよい。両側縁をつなぐシート21に中折れの折り返しをつけておくことによって、マットを収縮固化したときに側方へのシートの張り出しを極力防止できる。また、2つ折に折りたたんで形成されるホルダーの両側縁を閉じることによって、ホルダーの開き角度が制限され、袋内に収容された物品に対するマットの密着度を高めることができる。なお、以上実施例においては、表面シート1aと裏面1bとによって形成されたマットを外層シートに積層した例を説明したが、必ずしも、マットを外層シートに積層する場合に限らず、外層シートに気密シートを用いたときには、外層シートとその裏側に気密シートを張り渡し、その内部に緩衝体を充填して外層シートとマットとを一体に構成することもできる。
【0045】
また、本発明において、緩衝体は、要するにマット内に充填され、マット内の脱気によって密に圧接され、2つ折にしたマットの梱包領域に挟まれた物品表面を圧接するとともに、物品の横ずれを防止するに必要な摩擦抵抗が得られればよい。この点、ビーズのような粒状の単体は、マット内の脱気によって個々の互いに密着して一体化して物品を加圧し、物品の横ずれを防止しているのである。
【0046】
このような機能は、ビーズに限らず、ポリスチレン製の不定形の小片(ピース)(この小片は、通常荷物の梱包の際に物品とともに箱詰めする緩衝材料に用いられているものである。)でもよく、さらには、シート状あるいはネット状に加工されたものであってもよい。
【0047】
本発明によれば、緩衝体を充填したマットによって構成される包装用袋内の空気を抜き取るだけで、2つ折にされたマット間で物品を安定に保持させることができ、バルブには、逆止弁と吸気弁を組み合わせ、物品の梱包時には必ずしも2つ折りにしたマットの両側縁を閉じる必要がないが、宅配便としての信頼性を高めるためには、縫製あるいはファスナーによって封止することが望ましい。もっとも、本発明によるマットで梱包した物品を外箱内にさらに格納するときには、2つ折りにしたマットの両側縁を閉じないままで物品をマット間に保持させたままでも何ら問題は生じない。
【0048】
本発明の梱包袋によって梱包する物品は、もちろんノートパソコンに限るものではなく、デジタルカメラその他の電子機器類の宅配運送用として、また、CDやDVDのような薄物の物品を2以上重ね合わせて梱包して運送するような場合にも活用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による梱包袋は、顧客から修理センター間の物品の宅配に用いるだけに限らず、引越しや宅配便による商品の運送、デパート、小売店からの商品の配送、工場や事務所間の物品、書類の輸送に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による宅配便用物品梱包袋に用いるマットと、外層シートとの組み合わせを示し、(a)はマットの平面図、(b)は外層シートの平面図である。
【図2】宅配便用物品梱包袋に用いるマットを外層シートに重ねて縫製した状態を示す図であり、(a)は底面図、(b)は平面図、(c)は(a)のX−X線断面図である。
【図3】(a)は宅配便用物品梱包袋の展開図、(b)は梱包袋を折り曲げてホルダーの底部と表部とを形成した状態を示す図である。
【図4】バルブの構造を示すもので、(a)は、逆止弁の開弁時、(b)は吸気弁の開弁時、(c)は吸気弁の開弁を不能にした状態を示す図である。なお、(a)、(b)はバルブの正面中央縦断面、(c)は同側面中央縦断面を示している。
【図5】バルブの構成を示す図であり、(a)は断面側面図、(b)は平面図である。
【図6】バルブの斜視図であり、(a)は弁箱にノブを差込んだ直後の状態であり吸気弁が開弁可能な位置を示す図、(b)はノブを転回させて吸気弁を開弁不能にした状態を示す図である。
【図7】操作用押しボタンと、筒状部との関係を模式的に示す図であり、(a)は、ステーが筒状部の凹部に向き合った位置を示し、(b)は押ボタンを押し下げた状態、(c)は押ボタンの押し下げが不能となる状態を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は宅配便用物品梱包袋の組み立て要領を示す図である。
【図9】(a)はマット内を脱気する前の状態を示す図、(b)は脱気後の状態を示す図である。
【図10】マットの両側縁を折り返し付のシートでつないだ例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 マット
2 外層シート
3 ホルダー
4 緩衝体
5 フラップ
5a 伝票入れ
6 バルブ
7 ファスナー
8 面ファスナー
9 逆止弁
10 吸気弁
10a 筒状部
10b 弁口
10c 弁棒
10d コイルスプリング
10e ゴムパッキング
11 弁箱
11a 鍔
12 カプラー
13 カム溝
14 突子
15 ノブ
16 操作用押ボタン
17 ステー
18 凹部
19 ポンプ
20 リング
M 物品
B 底部
C 表部
Wa 梱包領域
Wc 延長部分
S 縫い目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層シートと、マットと、マット内に充填された緩衝体との組み合わせにバルブを有する宅配便用物品梱包袋であって、
前記外層シートは、マットの表面保護カバーであり、
前記マットは、2つ折りに折曲して少なくとも1面が開放されたホルダーを形成するものであり、マット内には緩衝体が充填され、
前記緩衝体は、マット内の空気が抜き取られてマットの容積が減少したときに、ホルダーに格納された物品の形状になじんで充填密度が増大し、物品の表面形状を象って固化し、外部から受ける衝撃を緩和させる機能を有するものであり、
前記バルブは、逆止弁と吸気弁との組み合せであり、
前記逆止弁は、マット内の脱気に際し、ポンプの吸引力が作用したときに開弁し、脱気後は閉弁してマット内への外気の導入を阻止するものであり、
前記吸気弁は、押しボタン操作により開弁し、脱気されたマット内への外気の導入を可能にするものであり、
逆止弁と吸気弁とは、マットに取付けられた弁箱内に組み込まれ、
弁箱は、ポンプまたはポンプに接続されたホースの吸い口に装着されたカプラーと脱着可能に結合されるものであることを特徴とする宅配便用物品梱包袋。
【請求項2】
前記マットは、長方形の表面シートと裏面シートとの周縁を封止した気密性を有する袋に、緩衝体を充填したものであり、
前記弁箱は、マットの表面シートの一部に取り付けられ、
前記外層シートは、マットに重ね合わせる物品の梱包領域のほかに延長部分を有し、
前記外層シートの梱包領域は、マットと一体化され、マットとともに2つ折に折り重ねてホルダーを形成し、
前記弁箱は、外層シートの梱包領域の外面に引き出され、
前記外層シートの延長部分は、フラップとして折り返されてホルダーの開口を塞ぐとともに外層シートの表面に引きだされた弁箱の表面を覆うものであることを特徴とする請求項1に記載の宅配便用物品梱包袋。
【請求項3】
前記吸気弁と、逆止弁とは、吸気弁を中心側、逆止弁を外周側として弁箱内に同心上に組み込まれ、
前記吸気弁は、弁箱内に形成された筒状部と、筒状部内に挿入された弁棒とを有し、前記筒状部の弁口は、常時一方向に付勢された弁棒によって閉弁され、弁箱に組み付けられた操作用ボタンが押し下げられることによって開弁するものであり、
前記逆止弁は、前記筒状部の周囲に形成された弁口と、マット内の空気の吸引時に該弁口を開弁する弁板との組み合わせ有するものであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1に記載の宅配便用物品梱包袋。
【請求項4】
前記弁箱は、ノブを有し、
前記ノブは、弁箱の円筒状の外壁に開口されたカム溝に沿って回転可能であり、
前記操作用ボタンはノブに取り付けられ、ノブの材質の有するたわみ変形を利用して押し下げが可能であり、ステーを有し、
前記ステーは、ノブの回転角の調整により筒状部の頭部に支えられ、前記操作用ボタンの押し下げを不能にするものであることを特徴とする請求項3に記載の宅配便用物品梱包袋。
【請求項5】
前記筒状部は頂部に凹部を有し、
前記ノブは、前記カム溝の螺旋に沿って回転角の変位に応じて上下に変位し、
ステーが筒状部の凹部に向き合った位置で凹部の深さの範囲内で前記操作用ボタンの押し下げが可能となり、前記ステーが凹部から外れた位置では、筒状部の頂部に支えられ、かつ頂部に押し付けられて前記操作用ボタンの押し下げを不能にするものであることを特徴とする請求項4に記載の宅配便用物品梱包袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−132323(P2010−132323A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310722(P2008−310722)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(507022983)ヤマト包装技術研究所株式会社 (19)
【Fターム(参考)】