説明

宇宙服の手首部着脱回転装置

【課題】ロックが確実で着脱が容易であり、メンテナンス性が良く、外径が小形で軽量な宇宙服の手首着脱回転装置を提供すること。
【解決手段】大気圧より気圧が著しく低い環境において着用する宇宙船内及び宇宙船外用スーツにおける、手袋部とスーツ腕部との接続に用いる着脱回転機構において、手首の回転機構部と着脱機構部の双方を同軸上に配し、それぞれに気密シール部を持ち、着脱機構においては手袋部の着脱ロック機構が作用しないロック部材の非突出状態と、同ロック機構が手袋装着動作のみ可能で外す事が出来ないロック爪突出かつ同ロック爪の一方向のみの可動状態と、装着された手袋が不用意に外れないための同ロック爪突出固定状態の3状態を持ち、その3状態の切り替えには着脱機構部及び回転機構部と同軸に配置したリング状の回転カム3を使用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧より気圧が著しく低い環境において着用する宇宙船内及び宇宙船外用スーツにおける、手袋部とスーツ腕部との接続に用いる着脱回転機構に関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されているのは米国NASAによる物、ロシアによる物、中国による物が挙げられる。これらにおいては、実用スーツ内圧の設定値が約30kPaと大気圧の30%ほどでしかなく、宇宙船内環境である約100kPaとの差が大きいために、生理的順応時間を必要としたり、酸素分圧を上げた空気をスーツ内に循環させる等の必要があった。それを回避すべく、スーツ内圧を従来の2倍程度で常用する宇宙服の開発が求められている。
【0003】
また、手袋とスーツ本体の着脱機構においては、飛行士単独で着脱できる事が求められ、なおかつ確実な気密性の維持と不用意には外れないロック機構の確実性が求められている。同時に、手首は宇宙服装着時での船内外作業において、回転する必要がある。内径が最細部でもφ93mm程度あるため、スーツの設定内圧を大きくした分の荷重がかかり、従来以上に摩擦抵抗を極力減らす必要が生じた。
【0004】
また、月面など重力環境での使用を考慮した場合、重量が重くなると活動に支障が出るばかりか、必要酸素量や二酸化炭素吸着剤量が増え、結果として連続活動時間が短くなるため、重量は可能な限り軽くしなければならない。そのため必要強度を維持しかつ、外形や厚みを極力小さくする必要がある。
また、分解・清掃・部品交換などのメンテナンスを宇宙船及び宇宙ステーションにて行う必要があるため、分解・組立が容易でなければならない。
【0005】
一方、気密性を持ったワンタッチ式管継手として、圧縮空気用ワンタッチ継手などでは、差し込むだけで継手外周のロックリングが作動してロックされる機構の物がすでに多く実用化されている。また、そのロックリングをさらに一定角度回転させる事により動きを阻止するように構成され、不用意に外れないようにした物も実用化されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−193172号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の機構では手首部分に配するにはロックリング自体が大きくなりすぎ、軸方向へのスライドと回転の2動作であるため、機構上寸法が軸方向に長くなるなどの問題がある。さらに、外形が大きく薄いリングを傾かず均一にスライドさせる操作は困難を極める。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために次の構成を備える。
本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、大気圧より気圧が著しく低い環境において着用する宇宙船内及び宇宙船外用スーツにおける、手袋部とスーツ腕部との接続に用いる着脱回転機構において、手首の回転機構部と着脱機構部の双方を同軸上に配し、それぞれに気密シール部を持ち、着脱機構においては手袋部の着脱ロック機構が作用しないロック部材の非突出状態と、同ロック機構が手袋装着動作のみ可能で外す事が出来ないロック爪突出かつ同ロック爪の一方向のみの可動状態と、装着された手袋が不用意に外れないための同ロック爪突出固定状態の3状態を持ち、その3状態の切り替えには着脱機構部及び回転機構部と同軸に配置したリング状の回転カムを使用している。
【0009】
また、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、内装された回転カムのロック爪状態切り替えにおいて、回転カムに接続されたレバー部と、そのレバー部に隣接若しくは併設された、レバーの移動を許容するロック解除ボタンを少なくとも1箇所以上配し、そのボタンを操作する事でレバーの操作を可能とするロック機構を有し、そのロック機構はロック爪が突出し固定した状態、ロック爪がバネにより規定位置まで押し出された状態、ロック爪が引き込まれた状態の少なくとも3つの状態においてロックできる事を特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、内装された回転カムの端面には、ロック爪から突出したピンが勘合し、ロック爪は中心軸に対し放射方向のみ移動できるように外装リングの溝等へ配置され、回転カムの回転によってロック爪の位置が中心軸に対し放射方向に規制制御されるような溝が回転カムの端面に形成されていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、内装された回転カムがフッ素樹脂あるいはポリアセタール樹脂で形成されている事を特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、着脱機構部のロック時に突出するロック爪が気密シールと同軸円周上に少なくとも3箇所以上配置されることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、着脱機構部のロック時に突出するロック爪は宇宙服の内圧により過大な荷重がかかるため、他の部材より硬質な材料で形成されることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、宇宙服及び手袋が、スーツ内圧で膨張し手袋がスーツの許す限り伸展するのを防止するための吊バンドを通す穴部を着脱機構の手袋側部材及びスーツ側部材に夫々一体として設けた事を特徴とすることができる。
【0015】
また、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、回転機構部のしゅうどう部分を気密シールより外周に配し、同部接触面にはリング状低摩擦係数部材を配し油脂類を排除した事を特徴とすることができる。
【0016】
また、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、回転機構部のしゅうどう部分を気密シールより外周に配し、同部しゅうどう部にはボールベアリング状部材を配し油脂類を排除した事を特徴とすることができる。
【0017】
また、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の一形態によれば、各部材をアルミ合金で構成し、フッ素を分散させた無電解ニッケルメッキを施す事を特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置によれば、ロックが確実で着脱が容易であり、メンテナンス性が良く、外径が小形で軽量にすることができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の形態例を示す縦断面図である。
【図2】図1の形態例の横断面図である。
【図3】図1の形態例の作動状態を示す説明図である。
【図4】図1の形態例のロック機構を示す縦断面図である。
【図5】図1の形態例のロック機構を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
宇宙飛行士が自らワンタッチで着脱可能とし、さらには全体を小型化し、なおかつ使用状態に於けるロックが不用意に解除されないための手段として、ロック爪部材を中心軸に対し放射方向に移動させる方式とし、その移動には、ロック爪部の円周方向に配したリング状カムを使い、そのカム溝とロック爪に配した突起とのかみ合いとリング状カムの回転で行うようにした。これによると、リング状の回転カムの回転角とカム溝形状によって、ロック爪は、A突出し動かないロック状態、B突出しているが、引き込み方向へ動作可能なフリー状態、C引き込んだ状態で固定された状態、の三態を作る事が出来る。
【0021】
さらには、ロック爪を外径方向から内径方向へバネ部材で押すことで、Bの状態において例えば手袋側リングが入ってきた時のみバネ部材を圧縮してロック爪が動き、規定位置まで手袋側リングが入った時にはそのバネによってロック爪がロック位置へ戻るという動作をし、いわゆるワンタッチ管継手の動作を実現する。
【0022】
この状態で回転カムをロック側へまわすと、ロック爪はAの状態となり、手袋側リングは抜く事が出来ないばかりか、ロック爪も突出したままロックされ動かないので手袋側リングは確実に保持され外れることがない。
【0023】
手袋側リングを外すためには、回転カムをCの位置に回せば良く、この状態ではロック爪は完全に引き込まれた状態であるため、手袋は容易に外す事ができる。
【0024】
回転カムを操作するためには、リング状カムから操作レバーが一体となって外部から操作可能となっていなければならない。さらに、このレバーを不用意に動かしてしまうと、回転カムが回転してしまい、ロックが外れ、最悪の場合手袋がスーツ内圧で外れて飛び出してしまうという事となる。そのため、ロックリングを回すためには解除ロックボタンを押しながら操作するようにしている。
【0025】
この機構は操作が複雑であれば安全性は上がるが、逆に操作性は著しく悪くなる。宇宙服の手袋は、強度保持のため厚く細かい操作は難しいため、ボタンを押すなどの単純動作に限られる。これらにより、確実で操作が簡単な着脱機構を実現している。
【0026】
手首は回転機構が無いと実際の使用では掌の向きが変えにくく活動に支障が出る。そのため、気密性を保った回転機構が必要となる。スーツ内圧によって、回転部分にはしゅうどう抵抗がかかる。スーツ内圧によりしゅうどう部を押す力の値は、気密シール直径がφ100mm、スーツ内圧が約60kPaにおいて471Nとなり、摩擦部の摩擦係数によっては手首を動かし難いものとしてしまう。
【0027】
しゅうどう部及び気密シール部において、宇宙空間での高真空環境での使用では、油脂類は蒸発してしまい使用できない。そのため、各部は全て固形潤滑とする必要がある。そのため、同部のしゅうどう面に4フッ化エチレン製リング、あるいはボールベアリング部材を配する等して、その回転抵抗を小さくする事が必要であり、これにより快適な動作を実現している。
【0028】
また、しゅうどう部を押す力と同じ力は着脱部にもかかる。具体的にはロック爪および着脱部オス側のロック爪の係り代にかかる事になる。そのため、ロック爪の本数が少なかったり、ロック爪自体の幅が狭いと、ロック爪自体や着脱部オス側のロック爪係り代に変形等のダメージを生じることがあるため、必要に応じてロック爪の本数を増やしたり、ロック爪自体の幅を広くするなどが必要である。この場合、回転カムにおいてはその溝配置を変える事により容易にロック爪の数量を増やす事が出来る。
【0029】
ロック爪には、宇宙服の内圧により過大な荷重がかかり、それに十分な耐力を持つ材料が使用される。さらに、着脱時にロック爪先端部が接触し、傷をつける事があるが、それを防止すべく接触する部材の表面は表面処理により高硬度化されている。
【0030】
宇宙服及び手袋は、その内圧で膨らんだ状態で使用することになる。そのため、手袋はその生地の許す限り肩から遠くへ位置しようとする。それを、着用者のサイズに合わせてバンド部材で引っ張り調整する必要がある、このバンド部材の一端は腕部であれば着脱部のスーツ固定リングの一部へ、手袋であれば回転機構部の手袋固定リングの一部へ締結するのが望ましい。
【0031】
現在実用化されている船外活動用宇宙服では、このバンド固定部材をステンレス製の金具で構成し、別体としてスーツあるいは手袋固定リング部へネジ止めしていたが、部品点数の削減と小型軽量化の実現のために、スーツ固定リングあるいは手袋固定リングと一体化して形成することとした。これにより部品点数・重量・コストの削減と、メンテナンス部の削減を実現している。
【0032】
気密シールはスーツ外側が高真空である事を考慮し、油脂類を使わない固形潤滑とする必要がある。また、気密シールの当り面は十分な面精度を保持していないと、同部より漏れが生じる。さらに、気密シールのシール直径が大きくなると、スーツ内圧による着脱部への荷重が大きくなるため、できるだけ小さくする事が望ましい。
【0033】
気密シールを可能な限り小径とし、回転機構や着脱機構はその外側に配置することで実現しているが、この場合、回転機構部や着脱機構部が真空中に暴露される事となり、気密シール同様油脂類による潤滑が使用できなくなる。そのような場合でも十分なしゅうどう性能を確保するために必要な金属部材にフッ素を含有させた無電解ニッケルメッキを施し、潤滑性と表面硬度の上昇を実現している。さらには、回転カムの素材をフッ素樹脂やポリアセタール樹脂などの自己潤滑性樹脂材料で形成し、回転カム自体のしゅうどう性と、ロック爪に連接したピンとのしゅうどう性を確保している。
【実施例1】
【0034】
以下、本発明に係る宇宙服の手首部着脱回転装置の実施例を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の縦断面図、図2は実施例の横断面図である。15は手袋側の布地層、12は手袋側のバンド部材、15aはスーツ腕側の布地層、12aはスーツ腕側のバンド部材である。着脱部はプラグ7をスーツ腕側リング1およびカバー6で構成されるソケット部に挿入しロック爪4がプラグ7にかみ合うことで抜けなくなる。
【0035】
気密シール2は、プラグ7とスーツ腕側リング1の間をシールするための物である。また、ロック爪4と一体となって形成される突起部4aは回転カム3に設けられたカム溝3aによって動きを規制される。
【0036】
図3Aはロック爪4が内径方向へ突出したまま固定される状態時のカム溝3aとロック爪4及びロック爪の突起4aの状態図である。図3Bはロック爪4がバネ5によって押されているために、内径方向へ突出しているが、カム溝3aはロック爪4の外周方向への移動を規制していない状態である。図3Cはロック爪4が外周方向へ移動しカバー6より内径方向へ突出していない位置で規制された状態である。
【0037】
図4及び図5は回転カム3を外部より操作し回転させるためのレバー及びレバーが不用意に動いてしまわないためのロック機構の図である。操作レバー16は回転カム3に2本のネジ19で接続されている。ロックボタン17は、操作レバー16を貫通し回転カム3において、バネ部材18で外周方向へ押されている。ロックボタン17の一部がカバー6の端面に形成されたロック溝6aとかみ合うように構成されており、ロックボタン17の先端部を押し下げる事でロック溝6aとのかみ合いが外れ、操作レバー16及び回転カム3は回転可能となる。
【0038】
図5の位置Aにロックボタン17がかみ合った時は、カム溝3aとロック爪4は図3Aの状態となる。同様に図5の位置Bにロックボタン17がかみ合った時は、カム溝3aとロック爪4は図3Bの状態に、図5の位置Cでは図3Cの状態となる。
【0039】
手袋装着時は図3Bの状態としておき、プラグ7に連接した手袋部を挿入する事で、ロック爪4はバネ部材5を押し付けて外形方向へ移動し所定の位置まで入ったところでロック爪が今度はバネ部材5により内径方向へ押し出され、プラグの凸部7aより内径方向へロック爪4の先端が入り手袋部は抜けなくなる。この状態で操作レバー16を図4の位置Aにすることで、ロック爪4は移動を規制され、手袋部は安易には抜けない状態となる。
【0040】
ロック爪は宇宙服の内圧によってせん断荷重を受けると同時にしゅうどう動作をする。そのため、他の部材より高硬度な真鍮等の素材で形成されている。
ロック爪4の先端突出部がプラグの凸部7aに接触し押し込まれる動きの後に、ロック爪がプラグの凸部7aと嵌合するため、プラグの凸部7aの表面硬度がロック爪より著しく低い場合、同部は容易に磨耗してしまう。これを回避すべくプラグ7はアルマイト処理もしくはフッ素化合物を分散させた無電解ニッケル等で表面を高硬度化することが好ましい。
【0041】
手袋部を外す場合には、操作レバー16を図5の位置Cにすることで、ロック爪4は外形方向へ移動しプラグ7の凸部7aよりロック爪4の先端は外周方向に位置するようになる。そのため、手袋部を引き抜く事が可能となる。
【0042】
回転カム3は、カバー6内で回転するばかりかカム溝3aにロック爪4の突起4aがしゅうどうするため、潤滑性が求められる。しかしながら、同部は気密シール2によりシールされるスーツ内領域の外に位置するため、高真空環境となる。それゆえに油脂類による潤滑は油脂の蒸発のため使用できない。従って、各しゅうどう面は、固形潤滑が求められる。これを実現するためには、回転カム3を自己潤滑性のある素材で形成することが好ましい。具体的にはポリアセタール樹脂あるいはフッ素樹脂などである。また、同様にカバー6やロック爪4など、しゅうどう部分を持つ構成部品においてはフッ素化合物を分散させた無電解ニッケルメッキを施す事が望ましい。これにより、好適な潤滑性を維持し、好適な操作性を実現できる。
【0043】
手首の回転機構はプラグ7の端部が手袋側リング11と押さえ環8により回転可能に保持され、そのしゅうどう面にはスリップリング9が配置される。気密シール10はプラグ7と手袋側リング11の間をシールする物である。スーツ内の内圧によって、スリップリング9は特に押さえ環8側へ荷重を受ける。そのため、スリップリングには低摩擦係数の4フッ化エチレン等の素材、あるいはボールベアリング等が好ましい。
【0044】
また同時に、手首の回転による回転抵抗は気密シール10でも発生するため、この部材の表面をフッ素化合物などの固形潤滑材でコーティングしたり、同様にプラグ7の表面をフッ素化合物などの固形潤滑成分を含んだ表面処理とする等の必要がある。具体的には、フッ素化合物の粒子を分散させた無電解ニッケルメッキなどが好ましい。
【0045】
手袋の布地層15は手袋側固定リングに布地押さえ環14を介してバンド部材13で締め付けて固定される。手袋側リング11と手袋の布地層15の接触部には、気密を保つために接着剤等を塗布する事が望ましい。また、スーツ腕側の布地層15aとスーツ腕側リング1との接続も同様である。
【0046】
手袋側バンド12は手袋固定リング11の一部に形成された溝11aを通す事で追加部品無しにその機能を満足できる。同様に、スーツ腕側バンド12aは、スーツ固定リング1に設けられた溝1aに通す事で、その機能を満足できる。
【0047】
以上の構成により、ロックが確実で着脱が容易であり、メンテナンス性が良く、外径が小形で軽量な宇宙服用の手首着脱回転装置を実現できるものである。
【0048】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0049】
1 スーツ腕側リング
2 気密シール
3 回転カム
4 ロック爪
5 バネ部材
6 カバー
7 プラグ
8 押さえ環
9 スリップリング
10 気密シール
11 手袋側リング
12 手袋側バンド
12a スーツ腕側バンド
13 バンド部材
14 布地押さえ環
15 手袋の布地層
15a スーツ腕側の布地層
16 操作レバー
17 ロックボタン
18 バネ部材
19 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧より気圧が著しく低い環境において着用する宇宙船内及び宇宙船外用スーツにおける、手袋部とスーツ腕部との接続に用いる着脱回転機構において、手首の回転機構部と着脱機構部の双方を同軸上に配し、それぞれに気密シール部を持ち、着脱機構においては手袋部の着脱ロック機構が作用しないロック部材の非突出状態と、同ロック機構が手袋装着動作のみ可能で外す事が出来ないロック爪突出かつ同ロック爪の一方向のみの可動状態と、装着された手袋が不用意に外れないための同ロック爪突出固定状態の3状態を持ち、その3状態の切り替えには着脱機構部及び回転機構部と同軸に配置したリング状の回転カムを使用していることを特徴とする宇宙服の手首部着脱回転装置。
【請求項2】
内装された回転カムのロック爪状態切り替えにおいて、回転カムに接続されたレバー部と、そのレバー部に隣接若しくは併設された、レバーの移動を許容するロック解除ボタンを少なくとも1箇所以上配し、そのボタンを操作する事でレバーの操作を可能とするロック機構を有し、そのロック機構はロック爪が突出し固定した状態、ロック爪がバネにより規定位置まで押し出された状態、ロック爪が引き込まれた状態の少なくとも3つの状態においてロックできる事を特徴とする請求項1記載の宇宙服の手首部着脱回転装置。
【請求項3】
内装された回転カムの端面には、ロック爪から突出したピンが勘合し、ロック爪は中心軸に対し放射方向のみ移動できるように外装リングの溝等へ配置され、回転カムの回転によってロック爪の位置が中心軸に対し放射方向に規制制御されるような溝が回転カムの端面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の宇宙服の手首部着脱回転装置。
【請求項4】
内装された回転カムがフッ素樹脂あるいはポリアセタール樹脂で形成されている事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の宇宙服の手首部着脱回転装置。
【請求項5】
着脱機構部のロック時に突出するロック爪が気密シールと同軸円周上に少なくとも3箇所以上配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の宇宙服の手首部着脱回転装置。
【請求項6】
宇宙服及び手袋が、スーツ内圧で膨張し手袋がスーツの許す限り伸展するのを防止するための吊バンドを通す穴部を着脱機構の手袋側部材及びスーツ側部材に夫々一体として設けた事を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の宇宙服の手首部着脱回転装置。
【請求項7】
回転機構部のしゅうどう部分を気密シールより外周に配し、同部接触面にはリング状低摩擦係数部材を配し油脂類を排除した事を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の宇宙服の手首部着脱回転装置。
【請求項8】
回転機構部のしゅうどう部分を気密シールより外周に配し、同部しゅうどう部にはボールベアリング状部材を配し油脂類を排除した事を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の宇宙服の手首部着脱回転装置。
【請求項9】
各部材をアルミ合金で構成し、フッ素を分散させた無電解ニッケルメッキを施す事を特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の宇宙服の手首部着脱回転装置。
【請求項10】
着脱機構部のロック爪が、他の部材より硬質な素材で形成されており、ロック爪との接触部位には表面硬度を上げる表面処理が為されていることを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の宇宙服の手首部着脱回転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−208617(P2010−208617A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17373(P2010−17373)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(308028016)日本潜水機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】