説明

安全柵装置

【課題】第1可動扉に連係して第2可動扉をより大きく昇降させる安全柵装置を提供する。
【解決手段】支柱2、3間に昇降可能に設けられた第1可動扉4及び第2可動扉5と、第1可動扉4を閉位置と開位置との間で駆動する駆動機構20と、第1可動扉4が閉位置のときは第2可動扉5が第1可動扉4よりも下方に突出し、第1可動扉4の上昇に伴って第2可動扉5も上昇するように第2可動扉5を第1可動扉4に連係させる連係機構30とを具備する安全柵装置1において、支点軸31を介して支柱3に連結された連動杆32と、第1可動扉4の昇降が連動杆32の支点軸31を中心とした回転に変換されるように第1可動扉4と連動杆32とを連結する第1連結機構33と、連動杆32の回転が第2可動扉5の昇降動作に変換されるように第1連結機構33よりも支点軸31に対して遠方で連動杆32と第2可動扉5とを連結する第2連結機構34とを、連係機構30に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降可能な可動扉を備えた安全柵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の可動扉を上下に連なるように並べ、上側の可動扉を駆動装置と連結し、上側の可動扉の両側に回転プレートを回転可能に取り付け、それらの回転プレートの一端側に下側の可動扉を吊り下げ、上側の可動扉の上昇時に、回転プレートの他端側をストッパプレートに突き当てて、回転プレートを回転させることにより下側の可動扉を上側の可動扉と重なり合うように上昇させる安全柵装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−32338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した安全柵装置は、一枚の可動扉を駆動装置にて昇降駆動すれば、他の可動扉を連係してより大きく昇降させることができて都合がよい。しかし、安全柵装置の設置箇所、使用態様等によっては、例えばストッパプレートが設置困難であるといった不都合が生じるおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は従来とは異なる構成により第1可動扉に連係して第2可動扉をより大きく昇降させることが可能な安全柵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の安全柵装置(1)は、設置面(F)から鉛直上方に延ばされた一対の支柱(2、3)と、前記支柱間に昇降可能に設けられた第1可動扉(4)と、前記第1可動扉を、該第1可動扉の下端と前記設置面との間に隙間が残る閉位置(図1及び図2)と該閉位置よりも上方の開位置(図3及び図4)との間で駆動する駆動機構(20)と、前記支柱間にて前記第1可動扉のいずれか一方の側にずらして設けられた第2可動扉(5)と、前記第1可動扉が前記閉位置にあるときは前記第2可動扉が前記第1可動扉の下端よりも下方に突出し、かつ前記第1可動扉の前記閉位置から前記開位置への上昇に伴って第2可動扉も上昇するように前記第2可動扉を前記第1可動扉に対して連係させる連係機構(30)と、を具備し、前記連係機構は、一方の支柱に支点軸(31)を中心として回転可能に連結された連動杆(32)と、前記第1可動扉の昇降動作が前記連動杆の前記支点軸を中心とした回転動作に変換されるように前記第1可動扉と前記連動杆とを連結する第1連結手段(33)と、前記連動杆の前記回転動作が前記第2可動扉の昇降動作に変換されるように前記第1連結手段よりも前記支点軸に対して遠方の領域で前記連動杆と前記第2可動扉とを連結する第2連結手段(34)とを備えたものである。
【0007】
本発明の安全柵装置によれば、第1可動扉を閉位置と開位置との間で昇降動作させると、その動作が第1連結手段によって連動杆に伝えられて連動杆が支点軸の回りに回転動作する。その回転動作が第2連結手段によって第2可動扉に伝えられ、それにより第2可動扉が第1可動扉に連係して昇降する。第2連結手段が、支点軸に対して第1連結手段よりも遠方の領域で連動杆と連結されているので、連動杆と第1連結手段との連結位置よりも連動杆と第2連結手段との連結位置の方が鉛直方向により大きく変位する。その性質を利用すれば、第1可動扉の昇降動作に連係して第2可動扉をより大きく鉛直方向に昇降させることができる。
【0008】
本発明の一形態において、前記第1連結手段は、前記第1可動扉及び前記連動杆のそれぞれと回転自在に連結される中間連結杆(35)を有していてもよい。また、前記第2連結手段は、前記第2可動扉及び前記連動杆のそれぞれと回転自在に連結される先端連結杆(38)を有していてもよい。これらの形態によれば、第1可動扉の昇降動作を中間連結杆を介して連動杆の支点軸を中心とした回転動作に変換し、あるいは連動杆の回転動作を先端連結杆を介して第2可動扉の昇降動作へと変換することができる。
【0009】
また、本発明の一形態においては、前記第1可動扉が前記開位置にあるときに前記第2可動扉の下端が前記第1可動扉の下端位置又はそれよりも高い位置にあるように前記連係機構が構成されてもよい。これによれば、第1可動扉が開位置にあるときにその下端から第2可動扉が下方に突出せず、第2可動扉が通行の妨げにならない。
【0010】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
以上に説明したように、本発明の安全柵装置によれば、支柱に回転自在に取り付けられた連動杆を第1及び第2連結手段を介して第1可動扉及び第2可動扉とそれぞれ連結し、しかも、第1連結手段と連動杆との連結位置よりも第2連結手段と連動杆との連結位置を連動杆の支点軸よりも遠方に設定しているため、第1可動扉の昇降動作に連係して、第2可動扉をより大きく鉛直方向に昇降させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び図2は本発明の一形態に係る安全柵装置を示している。図示の安全柵装置1は、工場内の機械設備への作業員等の立入を制限することを目的としてその機械設備を取り囲むように設けられた安全柵設備の少なくとも一箇所に設置されている。安全柵装置1は、工場の床面(設置面)Fから鉛直方向に延ばされた一対の支柱2、3と、それらの支柱2、3間に挟み込まれるように配置された第1可動扉4及び第2可動扉5、第1可動扉4を昇降させる駆動機構20と、第1可動扉4の昇降動作に伴って第2可動扉5を昇降させる連係機構30とを備えている。
【0013】
支柱2、3は、例えば角形鋼を利用して製造され、それらの下端は床面Fに固定されている。第1可動扉4は、ステンレス製のフレーム10と、そのフレーム10の隙間を埋めるように設けられたアクリル製の窓板11とを備えている。フレーム10は、矩形状の外枠12と、その外枠12の内部に配置された鉛直方向の補強材13とを備えている。第1可動扉4は、鉛直方向に移動自在な状態で支柱2、3に取り付けられている。第2可動扉5も、ステンレス製のフレーム14と、そのフレーム14の隙間を埋めるように設けられたアクリル製の窓板15とを備えている。フレーム14は、矩形状の外枠16と、その外枠16の内部に配置された鉛直方向の補強材17とを備えている。補強材17は第1可動扉4の補強材13と左右方向に位置を合わせて設けられている。図2から明らかなように、第2可動扉5は第1可動扉4の前面側(一方の側)にずらして設けられている。補強材13、17の間には、第1可動扉4に対して第2可動扉5を鉛直方向に案内する直線案内機構18が設けられている。
【0014】
駆動機構20は、右側の支柱3の内部に設けられている。駆動機構20は例えば空圧シリンダをアクチュエータとして内蔵し、そのアクチュエータの動作により第1可動扉4を図1及び図2の閉位置と、図3及び図4の開位置との間で昇降させる。第1可動扉4が閉位置にあるとき、第1可動扉4の下端と床面Fとの間には隙間が存在する。第2可動扉5はその隙間をほぼ完全に閉じることができるように、その大きさが設定されている。第1可動扉4が閉位置にあるとき、第1可動扉4の上端と支柱3、4の上端とは略同一の高さである。なお、駆動機構20には、アクチュエータの負荷を軽減するためのカウンタウエイトが設けられてもよい。そのカウンタウエイトの重量は、第1可動扉4の自重及び第2可動扉5の自重の合計値を目安として設定するとよい。
【0015】
連係機構30は、右側の支柱3に支点軸31を中心として回転可能に連結された連動杆32と、その連動杆32と第1可動扉4とを連結する第1連結機構(第1連結手段)33と、連動杆32と第2可動扉5とを連結する第2連結機構(第2連結手段)34とを備えている。連動杆32は、支点軸31から第1可動扉4の表面に沿って直線的に延ばされている。第1連結機構33は、第1可動扉4と連動杆32との間に渡される中間連結杆35と、その中間連結杆35の一端部を第1可動扉4の上端部と回転自在に連結する第1扉連結軸36と、中間連結杆35の他端部を連動杆32の中間部と回転自在に連結する中間連結軸37とを備えている。第2連結機構34は、第2可動扉5と連動杆32との間に渡される先端連結杆38と、その先端連結杆38の一端部を、支点軸31に対して連動杆32の中間連結軸37よりも遠方の領域、一例として連動杆32の先端部、と回転自在に連結する先端連結軸39と、先端連結杆38の他端部を第2可動扉5の上端部と回転自在に連結する第2扉連結軸40とを備えている。
【0016】
上記の連係機構30においては、第1可動扉4が昇降すると、その昇降動作が第1連結機構33を介して連動杆32の支点軸31を中心とした回転動作に変換される。また、連動杆32の回転動作は、第2連結機構34を介して第2可動扉5の昇降動作へと変換される。中間連結軸37よりも先端連結軸39が支点軸31に対して遠方に位置しているので、連動杆32が支点軸31を中心として回転した場合、中間連結軸37の鉛直方向の変位よりも先端連結軸39の同一方向の変位量が大きい。よって、第1可動扉4の閉位置と開位置との間の昇降量よりも第2可動扉5の昇降量を大きく確保することができる。このような性質を利用して、第1可動扉4の位置と第2可動扉5の位置とが次のように関連付けられるように連係機構30が構成されている。すなわち、第1扉連結軸36及び中間連結軸37のそれぞれの位置は、第1可動扉4が図1の閉位置にあるときに中間連結杆35がほぼ鉛直方向に延びるように設定されている。一方、先端連結軸39及び第2扉連結軸40のそれぞれの位置は、第1可動扉4が図1の閉位置にあるときに第2可動扉5が第1可動扉4の下方の隙間をほぼ完全に埋める位置にあり、第1可動扉4が図3の開位置にあるときには第2可動扉5の下端が第1可動扉4の下端位置又はそれよりも高い位置にあるように設定されている。
【0017】
以上の安全柵装置1においては、第1可動扉4の昇降動作に連係して第2可動扉5が昇降するように両可動扉4、5の昇降動作を連係機構30にて連係させているので、2枚の可動扉4、5を共通の駆動機構20で駆動することができる。しかも、第1可動扉4の昇降量よりも第2可動扉5の昇降量が大きくなるように連係機構30を構成しているので、第1可動扉4が閉位置にあるときにはその第1可動扉4の下方の隙間を塞ぐように第2可動扉5を第1可動扉4の下方に突出させて作業者等が立ち入るおそれを完全に排除し、その一方で、第1可動扉4が開位置まで上昇したときには、第2可動扉5が作業者等の通行の妨げとならないように、第2可動扉5をその下端が第1可動扉4の下端位置又はそれよりも高い位置にあるように上昇させることができる。
【0018】
さらに、本形態では、第2可動扉5及び連係機構30が第1可動扉4の前面側に配置されているので、第1可動扉4のみが設けられている既設の安全柵装置に対して、第2可動扉5及び連係機構30を容易に追加施工することができる。特に、第1可動扉4が左右の支柱2、3に対して鉛直方向に昇降自在に連結されている場合には、第1可動扉4の両側にレバー等を設置することが不可能である。このような状況でも、本形態の安全柵装置1では連係機構30を問題なく追加施工することができる。なお、既設の安全柵装置において、駆動機構20に第1可動扉4の自重に合わせたカウンタウエイトが設けられている場合には、第2可動扉5及び連係機構30の追加施工に伴う負荷の増加量に見合ったカウンタウエイトを駆動機構20に追加すれば、扉の枚数が増加しても駆動機構20は同一で足りる。
【0019】
本発明は上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。連動杆32の支点軸31は左側の支柱2に連結してもよい。この場合、連係機構は、図示の連係機構30に対して左右対称的に構成すればよい。第1連結手段は、第1可動扉の昇降動作が連動杆の支点軸を中心とした回転動作に変更できるように構成されている限りにおいて適宜に変更可能である。例えば、上記の形態では、第1扉連結軸36又は中間連結軸37に代え、左右方向のスライド機構を介して中間連結杆35と第1可動扉4又は連動杆32とを連結してもよい。中間連結杆35を省略して、連動杆32の中間部にローラを設け、そのローラを第1可動扉4のフレーム10に対して左右にスライド可能に嵌め合わせて第1連結手段を構成してもよい。第2連結手段も、連動杆の回転動作が第2可動扉の昇降動作に変換されるように第1連結手段よりも支点軸に対して遠方の領域で連動杆と第2可動扉とを連結する限りにおいて適宜に変更可能である。例えば、上記の形態では、先端連結軸39又は第2扉連結軸40に代え、左右方向のスライド機構を介して先端連結杆38と連動杆32又は第2可動扉5とを連結してもよい。連動杆32の先端部にローラを設け、そのローラを第2可動扉5のフレーム14に対して左右にスライド可能に嵌め合わせて第2連結手段を構成してもよい。駆動機構は、第1可動扉を昇降させることができる限りにおいて適宜に変更可能である。本発明の安全柵装置は、工場の機械設備への立ち入りを制限する目的に限らず、作業者等の立ち入りを制限する状態と許容する状態との間での切り替えが要求される各種の安全柵装置として使用されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1可動扉が閉位置にあるときの安全柵装置の正面図。
【図2】第1可動扉が閉位置にあるときの安全柵装置の斜視図。
【図3】第1可動扉が開位置にあるときの安全柵装置の正面図。
【図4】第1可動扉が開位置にあるときの安全柵装置の斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 安全柵装置
2、3 支柱
4 第1可動扉
5 第2可動扉
20 駆動機構
30 連係機構
31 支点軸
32 連動杆
33 第1連結機構(第1連結手段)
34 第2連結機構(第2連結手段)
35 中間連結杆
36 第1扉連結軸
37 中間連結軸
38 先端連結杆
39 先端連結軸
40 第2扉連結軸
F 床面(設置面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面から鉛直上方に延ばされた一対の支柱と、
前記支柱間に昇降可能に設けられた第1可動扉と、
前記第1可動扉を、該第1可動扉の下端と前記設置面との間に隙間が残る閉位置と該閉位置よりも上方の開位置との間で駆動する駆動機構と、
前記支柱間にて前記第1可動扉のいずれか一方の側にずらして設けられた第2可動扉と、
前記第1可動扉が前記閉位置にあるときは前記第2可動扉が前記第1可動扉の下端よりも下方に突出し、かつ前記第1可動扉の前記閉位置から前記開位置への上昇に伴って第2可動扉も上昇するように前記第2可動扉を前記第1可動扉に対して連係させる連係機構と、を具備し、
前記連係機構は、
一方の支柱に支点軸を中心として回転可能に連結された連動杆と、
前記第1可動扉の昇降動作が前記連動杆の前記支点軸を中心とした回転動作に変換されるように前記第1可動扉と前記連動杆とを連結する第1連結手段と、
前記連動杆の前記回転動作が前記第2可動扉の昇降動作に変換されるように前記第1連結手段よりも前記支点軸に対して遠方の領域で前記連動杆と前記第2可動扉とを連結する第2連結手段と、
を備えている安全柵装置。
【請求項2】
前記第1連結手段は、前記第1可動扉及び前記連動杆のそれぞれと回転自在に連結される中間連結杆を有している請求項1に記載の安全柵装置。
【請求項3】
前記第2連結手段は、前記第2可動扉及び前記連動杆のそれぞれと回転自在に連結される先端連結杆を有している請求項1又は2に記載の安全柵装置。
【請求項4】
前記第1可動扉が前記開位置にあるときに前記第2可動扉の下端が前記第1可動扉の下端位置又はそれよりも高い位置にあるように前記連係機構が構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の安全柵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−156147(P2010−156147A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334909(P2008−334909)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(392032100)キリンエンジニアリング株式会社 (54)
【Fターム(参考)】