説明

安定化免疫調節RNA(SIMRA)化合物

本発明は、新規安定化オリゴリボヌクレオチドの免疫調節剤としての、免疫治療用途のための治療的使用に関する。特に、本発明は、改善したヌクレアーゼおよびRNAse安定性を備え、TLR7および/またはTLR8を介した免疫調節活性を有する新規RNAベースオリゴリボヌクレオチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
関連出願
本願は2007年7月9日出願の米国仮出願出願番号60/948,529、2007年8月22日出願の米国仮出願出願番号60/957,195、2007年10月19日出願の米国仮出願出願番号60/981,161、2007年12月20日出願の米国仮出願出願番号61/015,284の利益を主張する。これら出願の内容は、その全体が参照により本明細書中に組込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般的にオリゴリボヌクレオチドを免疫調節剤として用いた免疫学および免疫療法用途の分野に関する。特に、本発明は免疫調節RNA組成物およびトール様受容体8(TLR8)、トール様受容体7(TLR7)ならびにTLR7およびTLR8を介した免疫応答の調節のためのその使用方法に関する。
【0003】
関連技術の要約
免疫応答は、応答に関係する細胞サブセットに基づく先天性および適応応答の両方を伴う。例えば、遅延型過敏症および細胞傷害性Tリンパ球(CTLs)の活性化などの古典的細胞媒介性機能に関わるヘルパーT(Th)細胞はTh1細胞であり、それに対し、B細胞活性化のためにヘルパー細胞として関与するTh細胞はTh2細胞である。免疫応答のタイプは、抗原曝露に応答して産生されるサイトカインおよびケモカインに影響される。サイトカインは、生じる免疫応答のタイプに直接的に影響するヘルパーT細胞1(Th1)およびヘルパーT細胞2(Th2)の細胞のバランスに影響することにより、免疫応答を制御するための手段を提供する。バランスが、Th1細胞の数がより多い側に向かった場合、細胞傷害性T細胞(CTLs)の活性化を含む、細胞媒介性免疫応答が生じる。バランスが、Th2細胞の数がより多い側に向かった場合、体液性または抗体免疫応答が生じる。これら免疫反応のそれぞれは、Th1およびTh2から分泌される異なるセットのサイトカインをもたらす。Th1およびTh2細胞により分泌されるサイトカインにおける差異は、これら2つのT細胞サブセットの異なる生物学的機能の結果であり得る。
【0004】
Th1細胞は、抗原への身体の先天性応答に関わっている(例えば、ウイルス感染、細胞内病原体および腫瘍細胞)。抗原に対する最初の応答は抗原提示細胞からのIL−12の分泌(例えば、活性化されたマクロファージおよび樹状細胞)およびTh1細胞の同時活性化であり得る。Th1細胞の活性化の結果は特定のサイトカイン(例、IL−2、IFN−ガンマおよび他のサイトカイン)の分泌および抗原特異的CTLsの同時活性化である。Th2細胞はバクテリア、寄生生物、抗原およびアレルゲンに応答して活性化することが知られ、身体の適応免疫応答(例、免疫グロブリン産生および好酸球活性化)を特定のサイトカイン(例、IL−3、IL−4、IL−5、IL−9、IL−10、IL−13および他のサイトカイン)およびケモカインの分泌を通じて媒介し得る。
特定のこれらサイトカインの分泌は、B細胞増殖、および抗体産生における増加をもたらし得る。加えて、特定のこれらサイトカインは、他のサイトカインの放出を刺激または阻害し得る(例えば、IL−10はTh1細胞からのIFN−γ分泌および樹状細胞からのIL−12を阻害する)。究極的に、Th1およびTh2細胞の間のバランスならびに選択された刺激に応答して放出されたサイトカインおよびケモカインは、身体の免疫系が疾患にどのように反応するかにおいて重要な役割を有し得る。例えば、IFN−αはC型肝炎を阻害し得、また、MIP−1αおよびMIP−1β(CCL3およびCCL4としてもそれぞれ知られる)は、HIV−1の感染を阻害し得る。Th1/Th2免疫応答の最適なバランスは、免疫系を用いて多様な疾患を処置および防止するために免疫機構を用いる機会を提示する。
【0005】
Th1免疫応答は、例えば、非メチル化CpGジヌクレオチドを含む細菌のまたは合成DNAの導入によって、哺乳動物において誘導され得、免疫応答は、パターン認識受容体(pattern recognition receptors;PRR)として知られるある免疫細胞の受容体に対する特異的なオリゴヌクレオチド配列(例えば、非メチル化CpG)の提示をもたらす。これらのうち、あるPRRは、Toll様受容体(TLR)である。
【0006】
TLRsは、微生物感染に対する応答における先天性免疫応答の誘導に密接に関与する。脊椎動物において、TLRsは、病原体関連分子パターンを認識することが知られている、10種のタンパク質のファミリー(TLR1〜TLR10)からなる。10種のうち、TLR3、7、8および9は、細胞内のエンドソーム内に限局化し、核酸(DNAおよびRNA)ならびにヌクレオシドおよび核酸代謝産物などの小分子を認識することが知られている。TLR3およびTLR9は、それぞれウィルスおよび細菌ならびに合成DNAに存在するdsRNAおよび非メチル化CpGジヌクレオチドなどの核酸を認識することが知られている。細菌DNAは、免疫システムを活性化し、抗腫瘍活性を起こすことが示されている(Tokunaga T et al., J. Natl. Cancer Inst. (1984) 72:955-962; Shimada S, et al., Jpn. H cancer Res, 1986, 77, 808-816; Yamamoto S, et al., Jpn. J. Cancer Res., 1986, 79, 866-73; Messina, J, et al., J. Immunolo. (1991) 147:1759-1764)。CpGジヌクレオチドを含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する他の研究では、免疫応答の刺激が示された(Zhao Q, et al., Biochem.Pharmacol. 1996, 26, 173-82)。続く研究により、TLR9が細菌および合成DNAに存在する非メチル化CpGモチーフを認識することが示された(Hemmi H, et al., Nature. (2000) 408:740-5)。CpG含有ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの他の修飾はまた、TLR9を介して作用するその能力に影響を及ぼし得、免疫応答を調節することができる(例えば、Zhao et al., Biochem. Pharmacol. (1996) 51:173-182; Zhao et al., Biochem Pharmacol. (1996) 52:1537-1544; Zhao et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev. (1997) 7:495-502; Zhao et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (1999) 9:3453-3458; Zhao et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2000) 10:1051-1054; Yu et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2000) 10:2585-2588; Yu et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2001) 11:2263-2267; and Kandimalla et al., Bioorg. Med. Chem. (2001) 9:807-813参照)。加えて、構造活性相関研究により、合成モチーフおよび非メチル化CpGジヌクレオチドから生じるものとは明白に異なる、特異的免疫応答プロフィールを誘発する新規のDNAに基づく化合物の同定を可能にしてきた(Kandimalla ER, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (2005) 102:6925-30. Kandimalla ER, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (2003) 100:14303-8. Cong YP, et al., Biochem Biophys Res Commun. (2003) 310:1133-9. Kandimalla ER, et al., Biochem Biophys Res Commun. (2003) 306:948-53. Kandimalla ER, et al., Nucleic Acids Res. (2003) 31:2393-400. Yu D, et al., Bioorg Med Chem. (2003) 11:459-64. Bhagat L, et al., Biochem Biophys Res Commun. (2003) 300:853-61. Yu D, et al., Nucleic Acids Res. (2002) 30:4460-9. Yu D, et al., J Med Chem. (2002) 45:4540-8. Yu D, et al., Biochem Biophys Res Commun. (2002) 297:83-90. Kandimalla ER, et al., Bioconjug Chem. (2002) 13:966-74. Yu D, K et al., Nucleic Acids Res. (2002) 30:1613-9. Yu D, et al., Bioorg Med Chem. (2001) 9:2803-8. Yu D, et al., Bioorg Med Chem Lett. (2001) 11:2263-7. Kandimalla ER, et al., Bioorg Med Chem.( 2001) 9:807-13. Yu D, et al., Bioorg Med Chem Lett. (2000) 10:2585-8, Putta MR, et al., Nucleic Acids Res. (2006) 34:3231-8)。しかしながら、最近まで、TLR7およびTLR8に対する天然のリガンドは知られていなかった。
【0007】
TLR7およびTLR8が、ウイルスおよび合成の一本鎖RNA、および多くのヌクレオシドを含む、小さな分子を認識することが示されてきた(Diebold, S.S., et al., Science v: 303, 1529-1531 (2004))。Diebold et al. (Science, v303: 1529-1531 (2004))には、インフルエンザウイルスに対するIFN−α応答が、インフルエンザのゲノムRNAのエンドソーム認識およびTLR7およびMyD88によるシグナリングを要求することが示されていて、ssRNAをTLR7に対するリガンドであると同定している。ある合成化合物、イミダゾキノロンイミキモド(R−837)およびレシキモド(R−848)は、TLR7およびTLR8のリガンドである(Hemmi H et al., (2002) Nat Immunol 3:196-200; Jurk M et al., (2002) Nat Immunol 3:499)。加えて、7−デアザ−G、7−チア−8−オキソ−G(TOG)および7−アリル−8−オキソ−G(ロキソリビン)などのグアノシン類縁体は、高濃度において、TLR7を活性化することが示されている(Lee J et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003, 100:6646-51)。しかしながら、例えば、イミキモドなどのこれら小分子はまた、他のレセプターを介して作用することが知られている(Schon MP, et al., (2006) J. Invest Dermatol., 126, 1338-47)。
【0008】
TLR7またはTLR8の認識のための既知の特異的ssRNAモチーフの欠損並びに潜在的に広い範囲の刺激性ssRNAによって、TLR7およびTLR8が自己のおよびウイルスのRNAの両方を認識し得ることが示唆されている。近年、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)または他の脂質剤と複合された場合、あるGU−リッチなオリゴリボヌクレオチドが、免疫刺激性であり、TLR7およびTLR8を介して作用することが示された(Heil et al. Science, 303: 1526-1529 (2004); Lipford et al. WO03/086280; Wagner et al. WO98/32462)。しかしながら、RNA分子は長年、例えば、リボザイムおよび、より最近ではsiRNAおよびマイクロRNAとして使用され、リボザイム、siRNAおよびマイクロRNAとして用いられたRNAは、GUジヌクレオチドを含む。さらに、多くのこれらRNA分子は、脂質の存在下で、TLRの刺激を介して免疫応答を誘発することが示されてきた(Kariko et al., Immunity (2005) 23:165-75; Ma Z et al., Biochem Biophys Res Commun., (2005) 330, 755-9)。しかしながら、これらのRNA分子の不安定さによって、多くの領域(例えば、ヒトの疾患の予防や処置など)において、これらの分子を用いることおよび適用することの発展が妨げられた。
【0009】
リボースまたはデオキシリボースの糖を含むオリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチドは、様々な分野で使用されており、診断精査、PCRプライミング、遺伝子発現のアンチセンス阻害、siRNA、マイクロRNA、アプタマー、リボザイム、およびトール様受容体(TLR)をベースとした免疫療法剤が含まれるがこれらに限定されない。より最近では、多くの刊行物は、オリゴデオキシヌクレオチドの免疫調節剤としての使用や、アレルギー、喘息、自己免疫、癌、および感染症などの多くの疾患への免疫療法用途におけるそれらの単独でのまたはアジュバントとしての使用を実証している。
【0010】
DNAオリゴヌクレオチドがTLR9によって認識され、一方でRNAオリゴヌクレオチドがTLR7および/またはTLR8によって認識されているという事実は、DNAおよびRNAの間の構造的な配座の差によるものであろう。しかしながら、DNAおよびRNAの間の化学的な差にもよって、DNAは化学的および酵素的にRNAよりもはるかに安定である。
【0011】
RNAは、遍在する細胞外リボヌクレアーゼ(RNase)によって急速に分解し、このことが、殆どの(あったとしても)自己のssRNAが抗原提示細胞に辿り着かないことを保証する。核酸のエキソヌクレアーゼ分解は、圧倒的に3’−ヌクレアーゼの消化であり、よりわずかな割合で5’−エキソヌクレアーゼ作用を介する。エキソヌクレアーゼの消化に加えて、RNAはRNaseのエンドヌクレアーゼ作用によっても分解し得る。RNAをベースとする分子は、ヌクレアーゼに対する安定性を提供するために、脂質と複合化しなければならなかった。
【0012】
自己免疫反応を防ぐ本質的な機能を提供している間、これらのリボヌクレアーゼはまた、合成および天然の両方のssRNAを急速に分解するから、免疫療法のために開発されるべく意図された任意の合成ssRNA分子の本質的な問題を示す。このハードルを克服するため、ssRNA分子の分解からの保護は、ssRNAのリポソームでのカプセル化、ポリエチレンイミンでの凝集、または、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)などの分子との複合化が試みられてきた。しかしながら、これらの保護手段は、まだ不安定なssRNAに適用された二次的な手段であり、ssRNA(天然または合成)のインビボでのこれらの保護手段の効能および免疫調節作用の影響は、不明なままである。
【0013】
Agrawal et al.(11/697,422)は、SIMRA組成物の新規なクラスを記載している。しかしながら、TLR7および/またはTLR8に対するリガンドとして認識され続けるように、一方で、有用なin vivo分子となり得るように安定性を改善されるように、裸のRNAをそのままにしておくさらなる化合物を開発することが挑戦されている。理想的には、新しい免疫治療剤として作用することができる本質的に安定なRNAをベースとした分子の設計を介して、この挑戦に対峙するかもしれず、かかる剤は、併用時のワクチンの効果を改善すること、または、免疫応答を引き起こすことや増強することが有益である場合に、例えば、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原体による疾患などの疾患を処置および/または予防することのように、多くの臨床的に関連ある適用における使用を見出すであろう。
【0014】
本発明の簡単な概要
第一の側面において、本発明は、新規な安定化免疫調節RNA(SIMRA)化合物、さらに以下に定義するもの、およびそれらの免疫応答の誘導および/または増強への使用を提供する。本発明による新規な化学物質は、免疫応答を誘導することに実質的により効果的であり、分解に対して実質的により感受性が低い免疫反応誘導および/または増強化合物を提供する。本発明による方法は、免疫治療の適用に対し、SIMRAによって産生するサイトカインおよび/またはケモカインプロフィールを改変するためにSIMRAを用いることを可能にする。
【0015】
第一の側面の1つの態様において、本発明は、TLR8に対するアゴニストとしてのSIMRA化合物を提供する。
【0016】
第一の側面の他の態様において、本発明は、TLR7およびTLR8に対するアゴニストとしてのSIMRA化合物を提供する。
【0017】
第一の側面のさらなる態様において、本発明は、TLR7に対するアゴニストとしてのSIMRA化合物を提供する。
【0018】
第一の側面のさらなる態様において、本発明は、アジュバントとしてのSIMRA化合物を提供する。
【0019】
第二の側面において、本発明は医薬組成物を提供する。これらの組成物は、本発明のSIMRA組成物の任意のものおよび生理学的に許容し得るまたは薬学的に許容し得る担体を含む。
【0020】
第三の側面において、本発明は、脊椎動物において免疫応答を惹起する方法を提供し、該方法は、少なくとも1つの本発明のSIMRA化合物を薬学的に有効な量で脊椎動物に投与することを含む。
【0021】
第四の側面において、本発明は、例えば、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原体による疾患などの免疫応答を誘導することおよび/または増強することが有益である疾患または障害を治療的に処置する方法を提供し、かかる方法は、このような疾患または障害を有する患者に、薬学的に有効な量で少なくとも1つの本発明のSIMRA化合物を投与することを含む。
【0022】
第五の側面において、本発明は、例えば、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原体による疾患などの免疫応答を誘導することおよび/または増強することが有益である脊椎動物における疾患または障害を予防する方法を提供し、かかる方法は、このような障害または疾患に感受性である脊椎動物に少なくとも1つの本発明のSIMRA化合物を薬学的に有効な量を投与することを含む。
【0023】
第六の側面において、本発明は、サイトカインまたはケモカインを産生することができる細胞(例えば、免疫細胞、PBMC)を単離する方法、かかる細胞を標準の細胞培養条件下で培養する方法、かかる細胞を、単離細胞が増大したレベルのサイトカインまたはケモカインを産生または分泌するように少なくとも1つの本発明のSIMRA化合物でex vivo処置する方法、および疾患の予防または処置のため、処置した細胞をサイトカインまたはケモカイン治療の必要な患者に投与または再投与する方法を提供する。
【0024】
本発明のこの側面のさらなる態様において、疾患の予防または処置のためサイトカインまたはケモカイン治療の必要な患者に、単離され、SIMRA処置された細胞を1種または2種以上のSIMRA化合物と組み合わせて投与する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は,本発明のSIMRA化合物のパラレル合成のための合成スキームである。
【図2A】図2Aは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2B】図2Bは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2C】図2Cは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2D】図2Dは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2E】図2Eは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2F】図2Fは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2G】図2Gは、ヒトTLR7を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2H】図2Hは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2I】図2Iは、ヒトTLR7を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2J】図2Jは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2K】図Kは、ヒトTLR7を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2L】図2Lは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図2M】図2Mは、ヒトTLR7を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表す。
【図3A】図3Aは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図3B】図3Bは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図3C】図3Cは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図4A】図4Aは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図4B】図4Bは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図4C】図4Cは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図4D−4I】図4D〜4AAは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図4J−4O】図4J〜4Oは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図4P−4U】図4P〜4Uは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図4V−4AA】図4V〜4AAは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図5A】図5Aは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図5B】図5Bは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図5C】図5Cは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図5D】図5Dは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図6A】図6Aは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図6B】図6Bは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図6C】図6Cは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図6D】図6Dは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図6E】図6Eは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図6F】図6Fは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図7A】図7Aは、骨髄樹状細胞(mDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図7B】図7Bは、骨髄樹状細胞(mDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図7C】図7Cは、骨髄樹状細胞(mDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表す。
【図8A】図8Aは、例4に従って処置および分析された2時間後のC57BL/6マウス(n=3)における血清サイトカイン誘導を表す。
【図8B】図8Bは、例4に従って処置および分析された2時間後のC57BL/6マウス(n=3)における血清サイトカイン誘導を表す。
【図9A】図9Aは、例4に従って処置および分析された2時間後のBALB/cマウス(n=3)における、血清サイトカイン誘導を表す。
【図9B】図9Bは、例4に従って処置および分析された2時間後のBALB/cマウス(n=3)における、血清サイトカイン誘導を表す。
【図9C】図9Cは、例4に従って処置および分析された2時間後のBALB/cマウス(n=3)における、血清サイトカイン誘導を表す。
【図9D】図9Dは、例4に従って処置および分析された2時間後のBALB/cマウス(n=3)における、血清サイトカイン誘導を表す。
【図9E】図9Eは、例4に従って処置および分析された2時間後のBALB/cマウス(n=3)における、血清サイトカイン誘導を表す。
【図9F】図9Fは、例4に従って処置および分析された2時間後のBALB/cマウス(n=3)における、血清サイトカイン誘導を表す。
【図10A】図10Aは、表2からの代表的なSIMRA化合物の血清安定性を表す。
【図10B】図10Bは、表2からの代表的なSIMRA化合物の血清安定性を表す。
【図10C】図10Cは、表2からの代表的なSIMRA化合物の血清安定性を表す。
【図10D】図10Dは、表2からの代表的なSIMRA化合物の血清安定性を表す。
【図10E】図10Eは、表2からの代表的なSIMRA化合物の血清安定性を表す。
【図10F】図10Fは、表2からの代表的なSIMRA化合物の血清安定性を表す。
【図10G】図10Gは、表2からの代表的なSIMRA化合物の血清安定性を表す。
【図10H】図10Hは、表2からの代表的なSIMRA化合物の血清安定性を表す。
【0026】
発明のSIMRA化合物は、例1にしたがって合成された。図1は本発明のSIMRA化合物のパラレル合成のための合成スキームである。DMTr=4,4’−ジメトキシトリチル;CE=シアノエチル。
図2Aは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表し、細胞は例2に従い処置および分析された。簡潔には、HEK293細胞を150μg/mlのTLR8のアゴニストで18時間刺激し、NF−κBのレベルを、SEAP(分泌型ヒト胎盤由来アルカリホスファターゼ)アッセイを用いて決定した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性免疫応答プロファイルを発生することを実証する。
【0027】
図2Bは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表し、細胞は例2に従い処置および分析された。簡潔には、HEK293細胞を150μg/mlのTLR8のアゴニストで20時間刺激し、NF−κBのレベルを、SEAPアッセイを用いて決定した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性免疫応答プロファイルを発生することを実証する。
【0028】
図2C〜2Eは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表し、細胞は例2に従い処置および分析された。簡潔には、HEK293細胞を150μg/mlのTLR8のアゴニストで18時間刺激し、NF−κBのレベルは、SEAPアッセイを用いて決定した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性免疫応答プロファイルを発生することを実証する。
【0029】
図2Fは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表し、細胞は例2に従い処置および分析された。簡潔には、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞を、0、20、50、100、200または300μg/mlのアゴニストで18時間刺激した。NF−κBのレベルはSEAPアッセイを用いて決定した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性免疫応答プロファイルを発生することを実証する。
【0030】
図2Gは、ヒトTLR7を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表し、細胞は例2に従い処置および分析された。簡潔には、ヒトTLR7を発現しているHEK293細胞を、0、20、50、100、200または300μg/mlのアゴニストで18時間刺激した。NF−κBのレベルを、SEAPアッセイを用いて決定した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性免疫応答プロファイルを発生することを実証する。
【0031】
図2H、2Jおよび2Lは、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表し、細胞は例2に従い処置および分析された。簡潔には、ヒトTLR8を発現しているHEK293細胞を、0、20、50、100、200または300μg/mlのアゴニストで18時間刺激した。NF−κBのレベルを、SEAPアッセイを用いて決定した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性免疫応答プロファイルを発生することを実証する。
【0032】
図2I、2Kおよび2Mは、ヒトTLR7を発現しているHEK293細胞におけるNF−κB活性を表し、細胞は例2に従い処置および分析された。簡潔には、ヒトTLR7を発現しているHEK293細胞を、0、20、50、100、200または300μg/mlのアゴニストで18時間刺激した。NF−κBのレベルを、SEAPアッセイを用いて決定した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性免疫応答プロファイルを発生することを実証する。
【0033】
図3A〜3Cは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表し、ヒト末梢血単核球は、例3に従い処置および分析された。簡潔には、ヒト末梢血単核球は、新たに採取したヒトの健康なボランティアの血液から単離され、50μg/mlのTLR7/8アゴニスト投与で24時間培養し、上清を収集し、Luminexマルチプレックスアッセイによりサイトカインおよびケモカインレベルを分析した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0034】
図4A〜4Cは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表し、ヒト末梢血単核球は例3に従い処置および分析した。簡潔には、ヒト末梢血単核球を、新たに採取したヒトの健康なボランティアの血液から単離し、200μg/mlのTLR7/8アゴニスト投与で24時間培養し、上清を収集し、Luminexマルチプレックスアッセイによりサイトカインおよびケモカインレベルを分析した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0035】
図4D〜4AAは、ヒト末梢血単核球からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表し、ヒト末梢血単核球は例3に従い処置および分析した。簡潔には、
ヒト末梢血単核球を、新たに採取したヒトの健康なボランティアの血液から単離し、増大する濃度のTLR7/8アゴニストで24時間培養し、上清を収集し、Luminexマルチプレックスアッセイによりサイトカインおよびケモカインレベルを分析した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異な、投与量に依存したTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0036】
図5A〜5Cは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表し、細胞は例3に従い単離、処置および分析された。簡潔には、pDCsを、新たに採取したヒトの健康なボランティアの血液末梢血単核球から単離し、50μg/mlのTLR7/8アゴニスト投与で24時間培養し、上清を収集し、Luminexマルチプレックスアッセイによりサイトカインおよびケモカインレベルを分析した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0037】
図5Dは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表し、細胞は例3に従い単離、処置および分析された。簡潔には、pDCsを、新たに採取したヒトの健康なボランティアの血液末梢血単核球から単離し、50μg/mlまたは200μg/mlのTLR7/8アゴニスト投与で24時間培養し、上清を収集し、Luminexマルチプレックスアッセイによりサイトカインおよびケモカインレベルを分析した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0038】
図6A、6B、6C,6Eおよび6Fは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表し、細胞は例3に従い単離、処置および分析された。簡潔には、pDCsを、新たに採取したヒトの健康なボランティアの血液末梢血単核球から単離し、200μg/mlのTLR7/8アゴニスト投与で24時間培養し、上清を収集し、Luminexマルチプレックスアッセイによりサイトカインおよびケモカインレベルを分析した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0039】
図6Dは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表し、細胞は例3に従い単離、処置および分析された。簡潔には、pDCsを、新たに採取したヒトの健康なボランティアの血液末梢血単核球から単離し、100μg/mlのTLR7/8アゴニスト投与で24時間培養し、上清を収集し、Luminexマルチプレックスアッセイによりサイトカインおよびケモカインレベルを分析した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0040】
図7A〜7Cは、骨髄樹状細胞(mDCs)からのサイトカインおよびケモカイン濃度を表し、細胞は例3に従い単離、処置および分析された。簡潔には、mDCsを、新たに採取したヒトの健康なボランティアの血液末梢血単核球から単離し、50μg/mlのTLR7/8アゴニスト投与で24時間培養し、上清を収集し、Luminexマルチプレックスアッセイによりサイトカインおよびケモカインレベルを分析した。データは、本発明のSIMRAの投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0041】
図8Aおよび8Bは、例4に従って処置および分析された2時間後のC57BL/6マウス(n=3)における血清サイトカイン誘導を表す。簡潔には、C57BL/6マウスに25mg/kg用量のTLR7/8アゴニストを皮下注射し、アゴニストの投与の2時間後、血清をサイトカインおよびケモカインレベルについて分析し、IL−12レベルを提示した。データは本発明のSIMRAの生体内投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0042】
図9Aおよび9Bは、例4に従って処置および分析された2時間後のBALB/cマウス(n=3)における、血清サイトカイン誘導を表す。簡潔には、BALB/cマウスに25mg/kg用量のTLR7/8アゴニストを皮下注射し、アゴニストの投与の2時間後、血清をサイトカインおよびケモカインレベルについて分析し、IL−12レベルを提示した。データは本発明のSIMRAの生体内投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0043】
図9C〜9Fは、例4に従って処置および分析された2時間後のBALB/cマウス(n=3)における、血清サイトカイン誘導を表す。簡潔には、BALB/cマウスに10mg/kgまたは25mg/kg用量のTLR7/8アゴニストを皮下注射し、アゴニストの投与の2時間後、血清をサイトカインおよびケモカインレベルについて分析し、IL−12レベルを提示した。データは本発明のSIMRAの生体内投与が特異なTLR媒介性サイトカインおよびケモカインプロファイルを発生することを実証する。
【0044】
図10A〜10Hは表2からの代表的なSIMRA化合物の血清安定性を表し、化合物は例5に従い処置された。簡潔には、約0.5ODの代表的なSIMRA化合物を個別に1%ヒト血清入りのPBS中で、30分間37℃でインキュベートした。30分のインキュベートの最後に、SIMRA化合物をアニオン交換HPLCで分析し、血清処置前に存在するSIMRA化合物の量と比較して、残っている完全長のSIMRA化合物のパーセンテージを決定した。
【0045】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、免疫治療用途のための免疫調節剤としての、オリゴリボヌクレオチドの治療的使用に関する。特に、本発明は、TLR7単独、TLR7およびTLR8、またはTLR8単独を通じて免疫応答を調節する、改善されたin vivo安定性を有するRNAベースのオリゴヌクレオチド(SIMRA化合物)を提供する。例えば、樹状細胞および他の抗原提示細胞のTLR7および/もしくはTLR8の安定なアゴニストまたはSIMRA化合物による活性化を通じて、多様な先天性および獲得免疫応答機構を始動することにより、得られたサイトカインプロファイルは病原体、感染細胞または腫瘍細胞の破壊ならびに抗原特異性抗体およびCTL応答の発達につながる。したがって、本発明は多様なセットのSIMRA化合物を提供し、それぞれがそれ自身特有の免疫制御特性を有する。このように、免疫応答の範囲と性質は、その適用のための所望の免疫調節特性セットを有するSIMRA化合物を提供することにより、特異な医療適用のためにカスタマイズ可能である。本明細書中引用される付与済特許、特許出願および参考文献は、それぞれが特別および個別に参照として組込まれることを示されたものとして、本明細書に参照として組込まれる。本明細書で引用されたいずれの参考文献のいずれの教示と本明細書との間で矛盾が起こった場合、本発明の目的のために後者を優先するものとする。
【0046】
本発明は、SIMRA化合物を用いて免疫応答を増強する方法を提供する。かかる方法は、成人および小児ならびに獣医学的用途における、限定されずに、癌、自己免疫障害、喘息、呼吸器アレルギー、食物アレルギー、皮膚アレルギーならびに細菌性、寄生性およびウイルス性感染などの免疫治療用途における使用を見出すであろう。したがって、本発明はさらに、免疫治療のための最適レベルの免疫調節効果を有する新規SIMRA化合物ならびにかかる化合物を製造および使用するための方法を提供する。加えて、発明のSIMRA化合物はアジュバントとして、または疾患の予防および処置のためのSIMRA化合物の免疫調節効果を減じない、疾患または病状を処置するために有用な剤との組み合わせにおいて有用である。
【0047】
定義
用語「2’−置換リボヌクレオシド」または「2’−置換アラビノシド」は、一般的にリボヌクレオシドまたはアラビノヌクレオシドであって、リボヌクレオシドまたはアラビノヌクレオシド中のペントース部分の2’位のヒドロキシル基が置換されて、2’−置換または2’−O−置換リボヌクレオシドを生成しているものを含む。ある態様において、かかる置換は、1〜6個の飽和または不飽和炭素原子を含む低級ヒドロカルビル基によるもの、ハロゲン原子によるもの、または6個〜10個の炭素原子を有するアリール基によるものであり、かかるヒドロカルビル、またはアリール基は非置換であってもよいし、例えばハロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボアルコキシまたはアミノ基などにより置換されていてもよい。本発明のアラビノヌクレオシドは、これに限定するものではないが、アラビノ−G、アラビノ−C、アラビノ−U、アラビノ−Aを含む。2’−O−置換リボヌクレオシドまたは2’−O−置換アラビノシドは、限定されずに、2’−アミノ、2’−フルオロ、2’−アリル、2’−O−アルキルおよび2’−プロパルギルリボヌクレオシドまたはアラビノシド、2’−O−メチルリボヌクレオシドまたは2’−O−メチルアラビノシドならびに2’−O−メトキシエトキシリボヌクレオシドまたは2’−O−メトキシエトキシアラビノシドを含む。
【0048】
用語「3’」は、方向的に用いられる時、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド3’の領域または位置へ、(糖の3’位に向かって)同一ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドにおける別の領域または位置から、を一般的にいう。
【0049】
用語「5’」は、方向的に用いられる時、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド5’の領域または位置へ、(糖の5’位に向かって)同一ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドにおける別の領域または位置から、を一般的にいう。
【0050】
用語「約」は、正確な数字が肝要ではないことを一般的に意味する。したがって、オリゴリボヌクレオチドにおけるリボヌクレオシド残基の数が肝要ではなく、そして、1個または2個のより少ないリボヌクレオシドもしくはアラビノヌクレオシド残基、または1個から数個の付加的なリボヌクレオシドもしくはアラビノヌクレオシド残基を有するオリゴリボヌクレオチドは、上述の態様のそれぞれの均等物として考慮される。
【0051】
用語「アジュバント」は、一般的に、ワクチンまたは抗原などの免疫原に添加されたとき、混合物への曝露においてレシピエントホストの剤に対する免疫応答を増強または強化する物質をいう。
【0052】
用語「気道炎症」は、一般的に、限定されずに、喘息を含む感染性アレルゲンに起因する気道における炎症を含む。
【0053】
用語「アレルゲン」は、一般的に、抗原または分子、通常はタンパク質、の抗原性部分をいい、対象に対する曝露時にアレルギー性応答を誘発する。典型的には、対象はアレルゲンに対し、例えば、膨疹および発赤試験または当該技術分野で知られたいずれかの方法によって示されるように、アレルギー性である。分子は、たとえ少数のサブセットの対象のみが分子への曝露時にアレルギー性(例、IgE)免疫応答を示す場合でも、アレルゲンと言われる。
【0054】
用語「アレルギー」は、限定されずに、食物アレルギー、呼吸器アレルギーおよび皮膚アレルギーを一般的に含む。
【0055】
用語「抗原」は、一般的に、抗体またはT細胞抗原受容体により認識および選択的に結合される物質をいう。抗原は、これに限定されるものではないが、ペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの組み合わせを含む。抗原は天然または合成であってよく、抗原に特定的な免疫応答を一般的に誘導する。
【0056】
用語「自己免疫障害」は、「自己」抗原が免疫系により攻撃を受ける障害を一般的にいう。
【0057】
3’または5’分解のブロックまたは「キャップ」もしくは「キャッピング」は、オリゴリボヌクレオチドの3’または5’末端が別の分子(例、リンカーまたは他の非RNAヌクレオチド)と結合して、十分にヌクレアーゼ分解(例、3’エクソヌクレアーゼ分解)を阻害することを意味する。
【0058】
用語「担体」は、あらゆる賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、オイル、油脂、ベシクルを含有する油脂、ミクロスフェア、リポソーム被包または医薬製剤において用いられるための他の当該技術分野で周知の他の材料を一般的にいう。担体、賦形剤または希釈剤の特性は、特定の用途のための投与ルートに依存することが理解されるであろう。これらを含む薬学的に許容可能な製剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990に記載されている。
【0059】
用語「共投与」は、免疫応答を調節するために少なくとも2種の異なる物質を十分に近い時間で投与することを一般的にいう。共投与は少なくとも2種の異なる物質の同時投与を含む。
【0060】
用語「相補性」は、核酸とハイブリダイズする能力を有することを典型的に意味する。かかるハイブリダイゼーションは通常相補鎖間の水素結合の結果であり、好ましくは、ワトソン−クリックまたはフーグスティーン塩基対を形成するが、水素結合の他の様式および塩基のスタッキングもまたハイブリダイゼーションをもたらすことが出来る。
【0061】
用語「免疫調節オリゴリボヌクレオチド」は、魚類、鳥類または哺乳類等の脊椎動物に投与されたとき、免疫応答を誘起または抑制するオリゴリボヌクレオチドを一般的にいう。
【0062】
用語、「組み合わせて」は、同じ患者における同じ病気の処置のを一般的に意味し、それは疾患または病状を処置するために有用であるSIMRA化合物および剤がSIMRA化合物の免疫調節効果を、一括投与または共投与、2〜3秒から数日の時間的間隔を空けた投与を含む、あらゆる順序で投与することを含む。かかる組み合わせ処置は1種以上のSIMRA化合物および/または個々の剤の単一投与を含んでもよい。SIMRA化合物および剤の投与は、同じかまたは異なるルートによってよい。
【0063】
用語「個体」または「対象」は、ヒト等の哺乳類を一般的にいう。哺乳類は、これに限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、畜牛、ウシ、ブタ、ヒツジおよびウサギを一般的に含む。
【0064】
用語「リニア合成」は、免疫調節オリゴリボヌクレオチドの一端から始まり、他端へ線形的に進む合成を一般的にいう。リニア合成は(鎖長、塩基組成および/または組み込まれた化学修飾に関して)同一または非同一のどちらかのモノマー単位の免疫調節オリゴリボヌクレオチドへの組込を可能にする。
【0065】
用語「リンカー」は、糖、塩基または骨格を介した共有または非共有結合を通じて、オリゴリボヌクレオチドに結合し得るあらゆる部分を一般的にいう。リンカーは2個もしくは3個以上のヌクレオシドを取り付けるために用いられ得、またオリゴリボヌクレオチドの5’および/または3’末端ヌクレオチドに結合し得る。かかるリンカーは非ヌクレオチドリンカーまたはヌクレオチドリンカーのどちらかであり得る。
【0066】
用語「修飾ヌクレオシド」は一般的に、修飾ヘテロ環塩基、修飾糖残基またはあらゆるその組み合わせを含むヌクレオシドである。いくつかの態様において、修飾ヌクレオシドは、本明細書中に記載されたように、非天然ピリミジンまたはプリンである。本発明の目的のため、修飾ヌクレオシド、ピリミジンもしくはプリン類縁体または非天然のピリミジンもしくはプリンは互換的に用いられ得、そして、非天然の塩基および/または非天然の糖部分を含むヌクレオシドをいう。本発明の目的のため、グアニン、シトシン、アデニンまたはウラシルではない場合は、塩基は非天然であると考えられる。いくつかの態様において、修飾ヌクレオシドは、2’−置換リボヌクレオシド、アラビノヌクレオシドまたは2’−デオキシ−2’−置換−アラビノシドであって、TLR7またはTLR8活性を妨げることなく安定性を向上するために、オリゴリボヌクレオシドの選択された位置に置換し得るものである。
【0067】
用語「調節」または「刺激」は、応答よる増加または応答よる定性的差異などの変化を一般的にいい、それは応答の誘発および/または増強から生じ得る。
【0068】
用語「非ヌクレオチドリンカー」は、共有または非共有結合を通じてオリゴリボヌクレオチドに結合し得る、ヌクレオチド結合以外の化学部分を一般的にいう。好ましくは、かかる非ヌクレオチドリンカーは長さが約2オングストロームから約200オングストロームであり、シスまたはトランス配置のどちらかであってもよい。
【0069】
用語「ヌクレオチド結合」は、隣接するヌクレオシド間のリン酸、非リン酸、荷電または中性基(例、リン酸ジエステル、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート)からなる、2個のヌクレオシドがそれらの糖を介して(例、3’−3’、2’−3’、2’−5’、3’−5’)一緒になり、化学的結合を一般的にいう。
【0070】
用語「ペプチド」は、該ペプチドがハプテンであろうと無かろうと、十分な長さを有し、例えば抗体産生またはサイトカイン活性など、生物学的応答に影響する組成を有するポリペプチドを一般的にいう。用語「ペプチド」は、修飾アミノ酸(天然または非天然であるかどうかにかかわらず)を含んでもよく、かかる修飾は、これに限定されるものではないが、リン酸化、グリコシル化、PEG化、脂質化およびメチル化を含む。
【0071】
用語「薬学的に許容可能な」または「生理学的に許容可能な」は、本発明の化合物の有効性を妨げず、細胞、細胞培養物、組織または生命体などの生物系と適合する材料を一般的にいう。好ましくは、生物系は脊椎動物などの生体である。
【0072】
用語「薬学的有効量」は、有益な結果など、所望の生物学的効果を奏するのに十分な量を一般的にいう。したがって、「薬学的有効量」は投与されている背景に依存するであろう。薬学的有効量は1回または2回以上の予防的または治療的投与において投与されてよい。
【0073】
用語「SIMRA」は、TLR7および/またはTLR8にリガンドとして認識される、安定化免疫調節RNA化合物を一般的にいい、ここで該化合物は、SIMRAがin vivoで未修飾のオリゴリボヌクレオチドより安定であるかまたはより安定であろうとし、したがってその免疫調節能力に影響するという条件で、一本鎖RNA(ssRNA)および/または二本鎖RNA(dsRNA)、ならびにその3’末端を保護または安定化するための修飾(例えば、3’分解をブロックすることで、または3’末端をキャップすることで、または2または3以上のオリゴリボヌクレオチドの3’末端を結合することで、など)を含み得る。SIMRAは修飾オリゴリボヌクレオチドを含んでよい。SIMRA化合物は、オリゴリボヌクレオチドの安定性をさらに改善するために、その5’末端を保護するための修飾(5’分解をブロックすることまたは5’末端をキャップすることにより)もまた含んでよい。SIMRAは、核酸が例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオエートまたは代替的架橋などを通じて連結したリボヌクレオシドのポリマーであることにより、直鎖または分岐であり得る。SIMRAは、リボース糖残基またはその誘導体に共有結合したプリン(アデニン(A)またはグアニン(G)あるいはその誘導体(例、7−デアザ−G,アラビノ−Gおよびアラビノ−A))またはピリミジン(シトシン(C)またはウラシル(U)あるいはそれらの誘導体(例、アラビノ−Cおよびアラビノ−U))塩基からなっていてよい。
【0074】
用語「処置」は、有益なまたは所望の結果を得ることを意図したアプローチを一般的にいい、それは症状の緩和または疾患の進行の遅延もしくは改善を含んでもよい。
【0075】
用語「ウイルス性疾患」は、その病原因子としてウイルスを有する疾患を一般的にいい、これに限定されるものではないが、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、後天性免疫不全症候群(AIDS)および帯状疱疹を含む。
【0076】
第1の側面において、本発明は新規のSIMRA化合物を提供する。本発明者らは、その3’末端を保護する(例、3’分解をブロックすることにより、または3’末端をキャップすることにより、または2または3以上のオリゴリボヌクレオチドの3’末端を連結することにより)ための免疫調節オリゴリボヌクレオチドの修飾が、驚くべきことにその免疫調節能力に影響することを見出した。加えて、この保護が驚くべきことにオリゴリボヌクレオチドの安定性を改善し、保護のための脂質会合または他の方法の必要性を除くことを決定した。さらに、3’末端の保護に加えて、またはそれと組み合わせて、5’分解をブロックすることまたは5’末端をキャップすることもオリゴリボヌクレオチドの安定性を改善することが出来る。
【0077】
本発明において、新規SIMRA化合物によるTLR8の活性化および固有の免疫応答の誘導(例、サイトカインおよび/またはケモカインプロファイル)が実証される。さらには、かかるヒトTLR8活性化RNAにおける特定の化学修飾の取り込みが、TLR7もまた活性化し得、特異な免疫応答およびサイトカインおよび/またはケモカインにおける変化をもたらす。したがって、本発明者らは驚くべきことに、TLR8および/またはTLR7の活性化を介して、免疫調節オリゴリボヌクレオチドの一部として修飾された塩基、修飾された糖、骨格、リンカー、連結および/またはキャップを含む修飾された化学構造を使用して、それに付随するサイトカインおよび/またはケモカインプロファイルを調節し得ることを見出した。
【0078】
一つの態様において、本発明は、その3’末端あるいはヌクレオシド間連結または非ヌクレオチドリンカーに官能化された核酸塩基もしくは糖で連結した、少なくとも2個のRNAベースのオリゴリボヌクレオチドを含む免疫調節化合物を提供する。本発明のかかる態様は、少なくとも1つのアクセス可能な(accessible)5’末端を有してもよく、それはキャップされていてもキャップされていなくてもよい。この構造が、脂質会合または他の保護の必要なしで、さらなる安定性(例えばエクソヌクレアーゼ活性の阻害)をSIMRA化合物に提供することを決定した。「アクセス可能な5’末端」は、SIMRA化合物がTLR7および/またはTLR8を介して免疫応答を調節することを妨げるような方法によって、SIMRAの5’末端が修飾されていないことを意味する。
【0079】
本発明のこの側面の別の態様は、少なくとも2個のオリゴリボヌクレオチドを含み、ここで免疫調節化合物は、これに限定されるものではないが、表1の式I〜Xで詳説されるものを含む。
【表1】

【0080】
ドメインA、B、CおよびDは、独立して約2〜約35個のリボヌクレオチドであってもよく、いくつかの態様において、長さが約2個〜約20個、または約2個〜約12個、または約2個〜約11個、または約2個〜約8個のリボヌクレオチドである。ドメインA、B、Cおよび/またはDは同一であっても同一でなくてもよい。ドメインA、B、C、および/またはDは独立して、自己相補的ドメイン、ホモもしくはヘテロリボヌクレオチド配列またはリンカーを有するかまたは有しない、5’−3’または2’−5’RNAであってよい。「n」は1個から無制限の個数であってもよい。
【0081】
「X」は、3’または5’連結、リン酸基、核酸塩基、非RNAヌクレオチドまたは、脂肪族、芳香族、アリール、環状、キラル、アキラル、ペプチド、炭化水素、脂質、脂肪酸、モノ、トリもしくはヘキサポリエチレングリコールまたは複素環部分あるいはその組み合わせであってもよい非ヌクレオチドリンカーを介してよい、ドメインA、B、Cおよび/またはDを結合するまたはキャップするリンカーである。
【0082】
さらなる態様において、本発明は、非ヌクレオチドリンカーにより連結された少なくとも2個のオリゴリボヌクレオチドを含み、ここで免疫調節オリゴリボヌクレオチドの配列が少なくとも部分的に自己相補的であってよいSIMRA化合物を提供する。当業者により認識されるであろうように、オリゴリボヌクレオチドの相補的配列は分子間水素結合を可能にし、それによりオリゴリボヌクレオチドの2次構造を与える。追加的オリゴリボヌクレオチドが共に結合し得、それにより本発明のオリゴリボヌクレオチドの鎖、または多量体を作り出す。
【0083】
同様の考慮が、異なる塩基配列の免疫調節オリゴリボヌクレオチド間の分子間塩基対形成に適用される。したがって、複数の免疫調節オリゴリボヌクレオチドが共に用いられる場合、複数の免疫調節オリゴリボヌクレオチドは少なくとも部分的に互いに相補的である配列を含んでもよいが、しかし必要ではない。1つの態様において、複数の免疫調節オリゴリボヌクレオチドは第1の配列を有する免疫調節オリゴリボヌクレオチドおよび第2の配列を有する免疫調節オリゴリボヌクレオチド、ここで第1の配列と第2の配列が、少なくとも50パーセント相補的である、を含む。例えば、少なくとも50パーセント相補的である2個の8量体間では、それらは4、5、6、7または8個のG−C、A−Uおよび/またはG−Uゆらぎ塩基対を形成してもよい。かかる塩基対は、相補的免疫調節オリゴリボヌクレオチドのどちらかの末端に位置する塩基対に関連してもよいが、しかし必ずしも必要ではない。相補性の程度は免疫調節オリゴリボヌクレオチド間のアラインメントに依存してもよく、そしてかかるアラインメントは単一または複数のヌクレオシドオーバーハングを含んでも含まなくてもよい。他の態様において、相補性の程度は少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセントまたはちょうど100パーセント、である。
【0084】
当業者により認識されるであろうように、ドメインの配列が相補的であって分子間水素結合を可能にするため、描写された免疫調節化合物は、2次構造を有してもよい。さらには、式IからXから想像できるように、追加の連結したRNAベースオリゴリボヌクレオチドが分子間水素結合を通じて結合でき、それにより鎖、または多量体を創出し、ここであらゆる数の連結したRNAベースオリゴリボヌクレオチドが組み込まれてもよい。
【0085】
もう1つの態様において、本発明は免疫調節化合物であって、その3’もしくは5’末端で、あるいはヌクレオシド間連結または非ヌクレオチドリンカーに官能化された核酸塩基もしくは糖を通じて連結した、少なくとも2個のRNAベースオリゴヌクレオチドを含み、ここで(例、キャップ)が少なくとも1つの5’末端に取り付けられている化合物を提供する。
この構造は、SIMRA化合物に対しさらなる安定性(例:エクソヌクレアーゼ活性の阻害)を提供することが決定されている。SIMRAの5’終端はSIMRA化合物がTLR7および/またはTLR8を介した免疫応答を調節することを妨げる方法で修飾されていない。
【0086】
いくつかの態様において、オリゴリボヌクレオチドはそれぞれ独立して、約2個から約35個のリボヌクレオシド残基を有する。したがって、ある態様においてオリゴリボヌクレオチドは独立して2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35個のリボヌクレオチド長を有し得る。好ましくは、オリゴリボヌクレオチドは約4個〜約30個のリボヌクレオシド残基であり、より好ましくは約4個〜約20リボヌクレオシド残基または約4〜約11リボヌクレオシド残基である。いくつかの態様において、免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、約1個〜約18個または約1個〜約11個または約5個〜約14個リボヌクレオシド残基を有するオリゴリボヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、1個または2個以上のオリゴリボヌクレオチドは、11個のリボヌクレオチドまたは約8個〜約14個のリボヌクレオチドまたは約10個〜約12個のリボヌクレオチドを有する。免疫調節オリゴリボヌクレオチドに照らして、好ましい態様は約1個〜約35個のリボヌクレオチド、好ましくは、約5個〜約26個のリボヌクレオチド、より好ましくは約13〜約26個のリボヌクレオチドを有する。好ましくは、免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホジエステル、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートのリボヌクレオシド間連結を含む。
【0087】
代表的態様において、各リボヌクレオシド単位は、複素環塩基およびペントフラノシル、トレハロース、アラビノース、2’−デオキシ−2’−置換アラビノース、2’−O−置換リボースもしくはアラビノースまたはヘキソース糖基を含む。リボヌクレオシド残基は、数ある知られたリボヌクレオシド間連結のいずれかにより互いに結合し得る。かかるリボヌクレオシド連結は、限定されずに、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カルボネート、カルボアルコキシ、アセトアミデート、カルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエートおよびスルホンリボヌクレオシド間連結を含む。リボヌクレオチドの可能な抱合(conjugation)の部位は、下記式XIにおいて示され、式中、Bは複素環塩基を表す。
【化1】

【0088】
本発明のSIMRA化合物は、天然のリボヌクレオシド、修飾リボヌクレオシドまたはその混合物を含み得る。
【0089】
本発明において、新規SIMRA化合物はヒトTLR8により認識され、そして、かかるヒトTLR8活性化RNAにおける特定の化学修飾の取り込みは、それらがヒトTLR7により認識され、そして免疫応答を誘導する原因となり得る。かかる化学修飾は、これに限定するものではないが、7−デアザ−G、アラ−G、6−チオ−G、イノシン、イソ−G、ロキソリビン、TOG(7−チオ−8−オキソ)−G、8−ブロモ−G、8−ヒドロキシ−G、5−アミノホルミシンB、オキソホルミシン、7−メチル−G、9−p−クロロフェニル−8−アザ−G、9−フェニル−G、9−ヘキシル−グアニン、7−デアザ−9−ベンジル−G、6−クロロ−7−デアザグアニン、6−メトキシ−7−デアザグアニン、8−アザ−7−デアザ−G(PPG)、2−(ジメチルアミノ)グアノシン、7−メチル−6−チオグアノシン、8−ベンジルオキシグアノシン、9−デアザグアノシンおよび1−(B−D−リボフラノシル)−2−オキソ−7−デアザ−8−メチル−プリン等のグアニン類縁体を含む。化学修飾は、これに限定されるものではないが、9−ベンジル−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)アデニン、2−アミノ−N2−O−、メチルアデノシン、8−アザ−7−デアザ−A、7−デアザ−A、アラ−A、ビダラビン、2−アミノアデノシン、N1−メチルアデノシン、8−アザアデノシン、5−ヨードツベルシジン等のアデニン類縁体もまた含む。化学修飾は、これに限定されるものではないが、プソイドウリジン、アラ−C、アラ−U、5−メチルシチジン、4−チオウリジン、N4−エチルウリジン、ゼブラリン、5−アミノアリルウリジン、N3−メチルウリジン、5−フルオロウリジン等のシトシンおよびウラシル類縁体もまた含む。
【0090】
本発明の「免疫調節オリゴリボヌクレオチド」は、共有または非共有結合で、それらの3’−または2’−末端あるいは非ヌクレオチドリンカーまたはヌクレオチドリンカーを介して官能化されたリボースまたは官能化されたリボ核酸塩基で共有的にまたは非共有的に連結した少なくとも2個のオリゴリボヌクレオチドを含むSIMRA化合物である。いくつかのリンカーの例は以下に説明されている。非共有的連結は、これに限定されるものではないが、静電気的相互作用、疎水性相互作用、πスタッキング相互作用および水素結合を含む。
【0091】
さらに他の態様において、非ヌクレオチドリンカーは、オリゴリボヌクレオチドに対して取り付けが可能な官能基を有する有機部分である。かかる取り付けは、好ましくは安定な共有結合によるものである。非限定的な例として、リンカーは、ヌクレオチド上のあらゆる適した位置に取り付けられてよい。いくつかの好ましい態様においてリンカーは3’−ヒドロキシルに取り付けられる。かかる態様において、リンカーは好ましくはヒドロキシル官能基を含み、該官能基は好ましくは3’−ヒドロキシルに、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネートなどのホスフェートベースの連結または非ホスフェートベースの連結により取り付けられている。
【0092】
いくつかの態様において、非ヌクレオチドリンカーは、限定されないが、ポリペプチド、抗体、脂質、抗原、アレルゲンおよびオリゴ糖を含む小分子、マクロ分子または生体分子である。いくつかの他の態様において、非ヌクレオチドリンカーは小分子である。本発明の目的のため、小分子は、1000Daよりも小さな分子量を有する有機部分である。いくつかの態様において、小分子は、750Daよりも小さな分子量を有する。
【0093】
いくつかの態様において、小分子は、脂肪族または芳香族の炭化水素であり、オリゴリボヌクレオチドに接続する直鎖か、それに追加される、限定されないが、ヒドロキシ、アミノ、チオール、チオエーテル、エーテル、アミド、チオアミド、エステル、ウレアまたはチオウレアを含む1つまたは2つ以上の官能基を任意に含み得る。小分子は、環状または非環状であり得る。小分子リンカーの例は、限定されないが、アミノ酸、炭化水素、シクロデキストラン、アダマンタン、コレステロール、ハプテンおよび抗生物質を含む。しかしながら、非ヌクレオチドリンカーを記載する目的のため、用語「小分子」はヌクレオシドを含むことを意図しない。
【0094】
いくつかの態様において、非ヌクレオチドリンカーは、アルキルリンカーまたはアミノリンカーである。アルキルリンカーは、分枝状または非分枝状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和、キラル、アキラルまたはラセミ混合物であってもよい。アルキルリンカーは、約2個〜約18個の炭素原子を有し得る。いくつかの態様において、かかるアルキルリンカーは、約3個〜約9個の炭素原子を有する。いくつかのアルキルリンカーは、限定されないが、ヒドロキシ、アミノ、チオール、チオエーテル、エーテル、アミド、チオアミド、エステル、ウレアおよびチオウレアを含む1つまたは2つ以上の官能基を含む。かかるアルキルリンカーは、限定されないが、1−プロパノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ポリエチレングリコールリンカー(例えば、[−O−CH2−CH2−](n=1〜9))、メチルリンカー、エチルリンカー、プロピルリンカー、ブチルリンカーまたはヘキシルリンカーを含み得る。いくつかの態様において、かかるアルキルリンカーは、ペプチドまたはアミノ酸を含み得る。
【0095】
いくつかの態様において、非ヌクレオチドリンカーは、限定されないが、表2にリストされているものを含み得る。
【0096】
【表2】

【0097】
【表2−2】

【0098】
【表2−3】

【0099】
【表2−4】

【0100】
【表2−5】

【0101】
【表2−6】

【0102】
いくつかの態様において、小分子リンカーは、グリセロールまたは式HO−(CH−CH(OH)−(CH−OHのグリセロール類似体であり、式中、oおよびpは、独立して、1〜約6、1〜約4、または1〜約3の整数である。いくつかの態様において、小分子リンカーは、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンの誘導体である。いくつかのかかる誘導体は、式HO−(CH−C(O)NH−CH−CH(OH)−CH−NHC(O)−(CH−OHを有し、式中、mは、0〜約10、0〜約6、2〜約6、または2〜約4である。
【0103】
本発明のいくつかの非ヌクレオチドリンカーは、表1に記載したように2つを超えるオリゴヌクレオチドの付着を許容する。例えば、小分子リンカーグリセロールは、オリゴリボヌクレオチドが共有結合し得る3つの水酸基を有する。したがって、本発明のいくつかの免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、3’末端で非ヌクレオチドリンカーと結合する2つを超えるオリゴリボヌクレオチド(例えば、ドメインCなど、付加的なドメインがドメインA、B、CおよびDについて前記に定義したようなオリゴリボヌクレオチドを含む)を含む。
【0104】
本発明のこの面のさらなる態様において、SIMRAは、3’または5’末端で、または、ヌクレオシド間結合または官能化核酸塩基または糖を介して、表1に示した2つまたは3つ以上のリンカーと結合した3つまたは4つ以上のオリゴリボヌクレオチドを含み得る。本発明のこの面のオリゴリボヌクレオチドは、同一または異なる配列を有し得る。本発明のこの面のリンカーは、同一または異なっていてもよい。
【0105】
本発明の免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、自動合成およびホスホルアミダイトアプローチを用いて簡便に合成され得る。いくつかの態様において、免疫調節オリゴリボヌクレオチドはリニア合成アプローチによって合成される。
【0106】
合成の代替的方法は、「パラレル合成」であり、該合成は、中央のリンカー部分から外側へ進行する(図1参照)。リンカーが付着した固体支持体は、米国特許第5,912,332号に記載されているようなパラレル合成のために用いることができる。代替的に、汎用固体支持体(ホスフェート付着制御多孔ガラス支持体など)を用いることができる。
【0107】
免疫調節オリゴリボヌクレオチドのパラレル合成は、リニア合成に対していくつかの利点を有する:(1)パラレル合成は、同一のモノマーユニットの組み込みを許容する;(2)リニア合成と異なり、両方(または全て)のモノマーユニットは、同時に合成され、それにより合成工程の数および合成に必要な時間がモノマーユニットのそれと同じである;および(3)合成工程の低減は、最終的な免疫調節オリゴリボヌクレオチド産物の純度および収率を改善する。
【0108】
リニア合成またはパラレル合成プロトコルのいずれかによる合成の終わりに、免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、修飾ヌクレオシドが組み込まれる場合、濃縮アンモニア溶液により、またはホスホルアミダイト供給者が推奨するとおりに、簡便に脱保護され得る。免疫調節オリゴリボヌクレオチド産物は、好ましくは、逆相HPLC、脱トリチル化(detritylated)、脱塩および透析によって精製される。
【0109】
表3は、本発明のRNAをベースとした免疫調節オリゴリボヌクレオチドを示す。他に特定されない限り、全てのヌクレオシドはリボヌクレオシドである。
【0110】
【表3】

【0111】
【表3−2】

【0112】
【表3−3】

【0113】
【表3−4】

【0114】
【表3−5】

【0115】
【表3−6】

【0116】
=7−デアザ−rG、G=アラ−G、G=7−デアザ−アラG、C=アラ−C、C=2’−F−C、C=5−メチル−C、A=アラ−A、U=アラ−U、U=2’−F−U、M=cis,cis−シクロヘキサントリオールリンカー、m=cis,trans−シクロヘキサントリオール、Z=1,3,5−ペンタントリオールリンカー、X=グリセロールリンカー、X=1,2,4−ブタントリオールリンカー、X=シアヌル酸、X=イソブタントリオールリンカー、Y=1,3−プロパンジオール、L=1,5−ペンタンジオール、L=1’,2’−ジデオキシリボース、6Eg=ヘキサエチレングリコールリンカー、3Eg=トリエチレングリコールリンカー、4Eg=テトラエチレングリコールリンカー、P=ホスホロチオエート、E=エタンジオール。
【0117】
第二の側面において、本発明は、本発明のSIMRA化合物および薬学的に許容し得る担体を含む薬学的処方を提供する。
第三の側面において、本発明は、脊椎動物の免疫応答を調節するTLR7および/またはTLR8を発生する方法を提供し、かかる方法は、脊椎動物に本発明のSIMRA化合物を投与することを含む。いくつかの態様において、脊椎動物は哺乳動物である。好ましい態様において、SIMRA化合物は、免疫調節の必要な脊椎動物に投与される。
【0118】
第四の側面において、本発明は、疾患または障害を有する患者を治療的に処置する方法を提供し、かかる方法は、患者に本発明のSIMRA化合物を投与することを含む。種々の態様において、処置すべき疾患または障害は、免疫調節が所望されるものである。例えば、これに限定されるものではないが、癌、自己免疫疾患、感染症、気道炎症、炎症性障害、アレルギー、喘息または病原体によって引き起こされた疾病である。病原体は、細菌、寄生生物、糸状菌、ウイルス、ウイロイドおよびプリオンを含む。
【0119】
第五の側面において、本発明は、疾病または障害を予防する方法を提供し、かかる方法は、本発明のSIMRA化合物を患者へ投与することを含む。種々の態様において、予防すべき疾病または障害は、免疫調節が所望されるものである。例えば、これに限定されるものではないが、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性障害、感染症、アレルギー、喘息または病原体によって引き起こされた疾病である。病原体は、細菌、寄生生物、糸状菌、ウイルス、ウイロイドおよびプリオンを含む。
【0120】
第六の側面において、本発明は、障害を予防または処置する方法を提供し、かかる方法は、限定されないが、免疫細胞、B細胞、制御性T細胞、PBMC、pDCおよびリンパ球様細胞を含む、サイトカインまたはケモカインを産生できる細胞を単離すること、かかる細胞を標準の細胞培養条件下で培養すること、単離細胞がサイトカインまたはケモカインの増大したレベルを産生または分泌するために、かかる細胞をエクスビボでSIMRAで処置すること、および、障害を予防または処置するためにサイトカインまたはケモカイン治療の必要な患者に処置した細胞を投与または再投与することを含む。本発明のこの面は、活性化された免疫細胞を産生するための標準の養子細胞免疫治療法である。
【0121】
本発明のこの側面のいくつかの態様において、サイトカインまたはケモカインを産生することができる細胞は、疾病または障害を有するまたは有しない対象から単離され得る。かかる単離は、同定および選択を含んでもよく、以下の具体例に記載のものを含む標準の細胞単離方法を用いることを行うことができる。かかる単離された細胞は、以下の具体例に記載の培養方法および条件を含んでもよい標準の細胞培養方法に従い、標準の細胞培養条件を用いて培養される。本発明のこの態様のさらなる側面において、単離細胞は、少なくとも1つのSIMRAの存在下で、かかる1つまたは2つ以上のSIMRAが存在せずに培養された単離細胞と比較して、サイトカインおよび/またはケモカインの産生および/または分泌を誘導、増大または増強に十分な量および時間で培養される。かかる時間は、数分から数時間、数日であってもよい。かかる単離されたSIMRA処置細胞は、ドナーへの再投与または組織学的に相性の良い第二の患者への投与に続く使用を見出すことができ、ここでかかるドナーまたは第二の患者はサイトカインおよび/またはケモカインの産生および/または分泌を誘導、増大または増強する必要がある。例えば、ドナーへの再投与または癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、アレルギー、喘息または病原体による疾病を有する第二の患者への投与である。かかる再投与または投与は、カテーテルまたは注射投与または任意の他の効果的なルートを含む種々の方法を用いて遂行され得る。本発明のこの面は、免疫反応を高める制限または不完全な能力を有し得るまたは免疫が弱化している患者(例えば、HIVに感染した患者および骨髄移植患者)における使用をも見出し得る。本発明のこの側面は、単離されたSIMRA処置細胞が投与または再投与された患者に対する、SIMRA投与と組み合わせた使用もまた見出し得る。
【0122】
本発明による任意の方法において、SIMRA化合物は、直接の免疫調節効果を単独でまたは疾病またはSIMRA化合物の免疫調節効果を減じない疾病または症状を処置または予防するのに有益な任意の他の剤との組み合わせにおいて作用する。本発明の任意の方法において、疾病または症状を処置または予防するのに有用な剤は、限定されないが、ワクチン、抗原、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、細胞傷害性の剤、アレルゲン、抗生物質、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト(例えば、TLR9のアゴニストおよび/またはTLR7のアゴニストおよび/またはTLR8のアゴニスト)、化学療法剤(伝統的な化学療法および現代の標的治療の両方)、標的治療剤、活性化細胞、ペプチド、タンパク質、遺伝子治療ベクター、ペプチドワクチン、タンパク質ワクチン、DNAワクチン、アジュバントおよび共刺激分子(例えば、サイトカイン、ケモカイン、タンパク質リガンド、転写活性因子、ペプチドまたは修飾アミノ酸を含むペプチド)、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、癌の処置において、SIMRA化合物は、1つまたは2つ以上の化学療法化合物、標的治療剤および/またはモノクローナル抗体との組み合わせで投与され得ることが意図される。代替的に、剤は、抗原またはアレルゲンをコードするDNAベクターを含むことができる。代替的に、SIMRA化合物は、SIMRA化合物への免疫応答の特異性または大きさを増強するために他のアジュバントと組み合わせて投与できる。
【0123】
本発明による任意の方法において、単独または他の任意の剤との組み合わせでのSIMRA化合物の投与は、限定されないが、非経口的、粘膜送達、経口、舌下、経皮、局所、吸入、経鼻、エアゾール、眼内、気管内、直腸内、膣、遺伝子銃によって、経皮パッチまたは点眼または口腔洗浄の形態を含む任意の好適なルートによって可能である。SIMRA化合物の治療組成物の投与は、疾病の病徴または代理マーカーの低減に効果的な薬学的に有効な量および期間で、既知の手法を用いて行うことができる。例えば、疾病および/または障害の処置のためのSIMRA化合物の薬学的に有効な量は、病徴を緩和または低減するか、または、腫瘍、癌または細菌、ウイルスまたは糸状菌の感染を遅らせるか改善するために必要な量であることができる。ワクチンアジュバントとして使用する薬学的に有効な量は、ワクチンまたは抗原に対する対象の免疫応答を強化することに有益な量であり得る。抗原の共投与に対する免疫応答を調節する組成物の投与の状況において、SIMRA化合物および抗原の薬学的に有効な量は、抗原を単独で投与した場合に得られる免疫応答に比較して所望の調節を達成するのに十分な量である。任意の特定の適用のための有効な量は、標的の疾病または症状、投与する特定のオリゴヌクレオチド、対象のサイズ、または疾病または症状の重篤さなどの因子に依存して変化する可能性がある。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定のオリゴヌクレオチドの薬学的に有効な量を経験的に決定することができる。
【0124】
全身に投与する場合、治療組成物は、好ましくは、SIMRA化合物の血中レベルが、約0.0001マイクロモル〜約10マイクロモルになるような十分な投与量で投与される。局所投与のためには、これよりもより低い濃度で効果がある可能性があり、より高い濃度で耐性となり得る。好ましくは、SIMRA化合物の総投与量は、患者1日あたり約0.001mgから、体重1kg1日あたり200mgである。単一の処置エピソードとして、個体へ本発明の1つまたは2つ以上の治療組成物の治療的に有効な量を同時または連続して投与することが望まれ得る。
【0125】
SIMRA化合物は、任意に、1つまたは2つ以上のアレルゲンおよび/または抗原(自己または外来)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、コレラ毒素Bサブユニットなどの免疫原性タンパク質またはペプチド、または任意の他の免疫原性担体タンパク質と結合し得る。SIMRAはまた、限定されないが、TLRアゴニスト(例えば、TLR2アゴニストおよびTLR9アゴニスト)、フロイント不完全アジュバント、KLH、モノホスホリル脂質A(MPL)、ミョウバンおよび、QS−21を含むサポニン、イミキモドまたはそれらの組み合わせを含む他の化合物との組み合わせで用いることができる。
【0126】
本発明のこの側面による方法は、免疫系のモデル研究に有用である。該方法はまた、ヒトまたは動物の疾病の予防または治療的処置に有用である。例えば、該方法は、小児および獣医のワクチンの適用に有用である。
【0127】
以下の例は、本発明の代表的態様をさらに示すことを意図し、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0128】
例1.
免疫調節オリゴリボヌクレオチド合成
免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、自動DNA/RNA合成でホスホルアミダイト化学を用いて化学的に合成される。N−アセチル保護された(U以外の)2’−O−TBDMS RNAモノマー、A、G、CおよびUは、Sigma-Aldrichから購入した。7−デアザ−G、イノシンは、ChemGenes Corporationから購入した。0.25Mの5−エチルチオ−1H−テトラゾール、PAC−無水物Cap AおよびCap Bは、Glen Researchから購入した。ジクロロメタン(DCM)中3%のトリクロロ酢酸(TCA)および5%の3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシド(Beaucage試薬)は自社製であった。
【0129】
免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、標準のRNA合成プロトコールを用いて、1〜2μMのスケールで合成した。
【0130】
開裂および塩基脱保護
免疫調節オリゴリボヌクレオチドを固体支持から開裂し、エキソ環状アミンの保護基はメチルアミンおよび水酸化アンモニウム溶液中で除去した。得られた溶液をSpeedVacで完全に乾燥した。
【0131】
IE HPLC 精製
免疫調節オリゴリボヌクレオチドを、イオン交換HPLCで精製した。
Dionex DNAPac 100カラムを使用。粗製免疫調節オリゴリボヌクレオチド溶液をHPLCに注入した。上記の勾配を行い、フラクションを集めた。90%を超える所望の産物を含有する全てのフラクションを混合し、次いで、溶液をRotoVapによってほとんど乾燥し濃縮した。RNaseフリーの水を加え、終体積を10mlにした。
【0132】
C−18逆相脱塩
Watersから購入したtC-18 Sep-Pakカートリッジを、10mlのアセトニトリル、続いて10mlの0.5M酢酸ナトリウムをカートリッジに通すことにより洗浄した。10mlの免疫調節オリゴリボヌクレオチド溶液をカートリッジに装填した。次いで、15mlの水を塩の洗浄に用いた。免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、最終的に、1mlの水中50%アセトニトリルを用いて溶出した。溶液は、30分間SpeedVacに入れた。残りの溶液を、0.2ミクロンフィルターを通してろ過し、次いで凍結乾燥した。次いで、溶液をRNAseフリーの水に再溶解し、所望の濃度にした。最終溶液を0℃以下で貯蔵した。
オリゴリボヌクレオチドは、純度について、キャピラリー電気泳動法、イオン交換HPLCおよびPAGE解析により、ならびに分子量についてMALDI−ToFマススペクトルにより分析した。
【0133】
例2.
TLRを発現するHEK293細胞での試料分析のためのプロトコール
HEK293もしくはHEK293XL/ヒトTLR7またはHEK293もしくはHEK293XL/ヒトTLR8細胞(Invivogen, San Diego, CA)を5%COインキュベーター中、250μl/ウェルの10%熱不活性化FBS添加DMEMで48ウェルプレートで培養した。
【0134】
レポーター遺伝子のトランスフェクション
ヒトTLR7またはTLR8を安定的に発現するHEK293またはHEK293XL細胞(Invivogen, San Diego, CA)を5%COインキュベーター中、250μl/ウェルの10%熱不活性化FBS添加DMEMで48ウェルプレートで培養した。80%のコンフルエンスで、培養物は、培養培地中、4μl/mlのlipofectamine(Invitrogen, Carlsbad, CA)の存在下、400ng/mlのSEAP(ヒト胚性アルカリホスファターゼの分泌型)レポータープラスミド(pNifty2-Seap)(Invivogen)で一過性にトランスフェクトした。プラスミドDNAおよびlipofectamineを無血清培地で分けて希釈して、5分間室温でインキュベートした。インキュベーションの後、希釈したDNAおよびlipofectamineを混合し、混合物を20分間室温でインキュベートした。100ngのプラスミドDNAおよび1μlのlipofectamineを含むDNA/lipofectamine混合物の25μlのアリコートを細胞培養プレートの各ウェルに添加し、培養を4時間継続した。
【0135】
IMO−処置
トランスフェクションの後、培地をフレッシュな培養培地に置き換えた。ヒトTLR7またはTLR8を発現しているHEK293またはHEK293XL細胞を、0、20、50、100、150、200または300μg/mlのTLR7またはTLR8アゴニスト、SIMRAで刺激し、培養を18時間〜20時間継続した。SIMRA処置の終わりに、30μlの培養上清を各処置から取り、製造者のプロトコール(Invivogen)に従ってSEAPアッセイに用いた。
【0136】
SEAP(分泌型ヒト胎盤由来アルカリホスファターゼ)アッセイ
簡単に、培養上清をp−ニトロフィニルホスフェート基材でインキュベートし、発生した黄色の色を405nmでプレートリーダーで測定した。データをPBS対照に対するNF−κB活性の倍数増加として示す。(Putta MR et al, Nucleic Acids Res., 2006, 34:3231-8)
【0137】
例3.
ヒト細胞培養プロトコール
ヒトPBMCの単離
新たに採血された健康なボランティアの血液(CBR Laboratories, Boston, MA)由来の末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll密度勾配遠心分離法(Histopaque-1077, Sigma)によって単離した。
【0138】
ヒトpDC単離
新たに採血された健康なボランティアの血液(CBR Laboratories, Boston, MA)由来の末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll密度勾配遠心分離法(Histopaque-1077, Sigma)によって単離した。pDCは、使用説明書に従い、BDCA4細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を用いてポジティブ選択によってPBMCから単離した。
【0139】
ヒトmDC単離
末梢血単核細胞(PBMC)を新鮮に採血された健康なボランティアの血液(CBR Laboratories, Boston, MA)由来の末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll密度勾配遠心分離法(Histopaque-1077, Sigma)によって単離した。骨髄樹状細胞(mDCs)を、使用説明書に従い、BDCA4細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を用いてポジティブ選択によってPBMCから単離した。
【0140】
マルチプレックスサイトカインアッセイ
ヒトPBMCを5×10細胞/mlを用いて48ウェルプレートに静置した。pDCを1×10細胞/mlを用いて96ウェルディッシュに静置した。DPBS(pH7.4;Mediatech)に溶解したSIMRAを終濃度20、50、100、200または300μg/mlで、あるいは図に示されたように、細胞培養物に添加した。次いで、細胞を37℃、24時間インキュベートし、懸濁液をluminex multiplexまたはELISAアッセイのために集めた。実験は三連のウェルで行った。IFN−α、IL−6またはTNF−αのレベルは、サンドウィッチELISAで測定した。サイトカイン抗体および標品を含む必要な試薬は、PharMingenから購入した。
【0141】
Luminexマルチプレックスアッセイを、Luminex 100/200装置上でBiosourceヒトマルチプレックスサイトカイニン分析キットを使って行い、データを、Applied Cytometry Systems(Sacramento, CA)によって供給されたStarStationソフトウェアを使用して分析した。
【0142】
例4
TLR9アゴニスト化合物で処置したマウスモデルにおけるin vivoサイトカイン分泌
C57BL/6マウスおよびBALB/cマウス、5〜6週齢をTaconic Farms, Germantown, NYから取得し、Idera Pharmaceutical’s IACUC 承認動物プロトコールに従い維持した。マウス(n=3)に、表3からの個々の安定化免疫調節RNAベースオリゴヌクレオチドを25mg/kg(単一投与)で皮下(s.c)注射した。血清は免疫調節オリゴヌクレオチド投与の2時間後、後眼窩出血により採集し、サイトカインおよびケモカインレベルをサンドイッチELISAまたはLuminexマルチプレックスアッセイにより決定した。結果は図8A、8B、9Aおよび9Bに示され、本発明のSIMRAオリゴヌクレオチドのin vivo投与が、独特のサイトカインおよびケモカインプロファイルを起こすことを実証する。サイトカインおよびケモカイン抗体および標準を含む全ての試薬は、PharMingen. (San Diego, CA)から購入した。
【0143】
血清安定性アッセイ
表3からの代表的なSIMRA化合物約0.5ODを、PBS中1%ヒト血清中で、37℃で30分間個別にインキュベートした。30分間の1%ヒト血清中でのインキュベーションに続き、SIMRA化合物をアニオン交換HPLCで分析し、血清処理前に存在したSIMRA化合物の量と比べて残存した完全長のSIMRA化合物の割合を決定した。結果は図10A〜10Hに示され、RNAベース化合物に対してなされた本発明の化学修飾が、それらの安定性を増強し得ることを実証する。
【0144】
均等物
前述の発明が、明確化および理解を目的として詳細に記載されている一方、当然のことながら、当業者であれば、本発明の開示を読むことにより、形態および詳細のさまざまな変形を、本発明の真の範囲および特許請求の範囲から逸脱することなく想到することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIMRA#1ないし#189からなる群から選択される、SIMRA化合物。
【請求項2】
請求項1に記載のSIMRA化合物および生理学的に許容可能な担体を含む、組成物。
【請求項3】
脊椎動物における免疫応答を発生する方法であって、該方法が、脊椎動物に対し請求項1に記載のSIMRA化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
免疫応答を調節することが有益である疾患または障害を有する脊椎動物を治療的に処置する方法であって、かかる方法が、該脊椎動物に請求項1に記載のSIMRA化合物を薬学的有効量で投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
疾患または障害が、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原体に起因する疾患である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1種または2種以上の化学療法用化合物を投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
標的治療剤を投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
抗体を投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
DNAワクチンを投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質ワクチンを投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
ペプチドワクチンを投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
抗原を投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
アジュバントをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
免疫応答の調節が有益である疾患または障害を有する脊椎動物を予防的に処置する方法であって、かかる方法が、脊椎動物に対して請求項1に記載のSIMRA化合物を薬学的有効量で投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
疾患または障害が、脊椎動物における、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原体に起因する疾患である、請求項14に記載の方法
【請求項16】
1種または2種以上の化学療法用化合物を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
標的治療剤を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
抗体を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
DNAワクチンを投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
タンパク質ワクチンを投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
ペプチドワクチンを投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
抗原を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
アジュバントを投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図2K】
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【図2L】
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【図2M】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D−4I】
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【図4J−4O】
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【図4P−4U】
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【図4V−4AA】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【公表番号】特表2010−532996(P2010−532996A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516176(P2010−516176)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/069335
【国際公開番号】WO2009/014887
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(398032717)イデラ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】Idera Pharmaceuticals, Inc.
【Fターム(参考)】