説明

安定性の高いポリイオン液体塩

ポリカチオン分子またはポリアニオン分子を含むポリイオン液体塩を提供する。さらに、1種または2種以上のポリイオン液体塩を含む溶媒、ならびに、このようなポリイオン液体塩の、ガスクロマトグラフィーにおける固定相としての使用、およびエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)における試薬としての使用、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2007年1月31日出願の米国仮特許出願第60/898,843号に基づく優先権を主張する。
益々急速に成長している化学研究分野の一つが、イオン液体(ionic liquid:IL)および室温イオン液体(RTIL)の研究である。カチオンとアニオンの組み合わせの可能性は幅広く、調節可能な相互作用と用途に関しても多岐にわたっている。室温イオン液体の使途および用途は、多くの化学分野、さらにはバイオ化学の分野にわたっている。いくつかのケースでは300℃の範囲の熱安定性が報告されており、様々な異種分子を可溶化するイオン液体の能力、ならびに水および非極性の有機溶媒のどちらとも混和しないイオン液体を合成することができるという事実により、イオン液体はさらに有用なものとなっている。多くの研究において、室温イオン液体の使用が有機合成における「環境に優しい」溶媒として取り扱われており、室温イオン液体の特性およびその独特の物理化学的および溶媒和特性への理解が、進行中の研究の重要な領域となっている。イオン液体の研究分野におけるいくつかの研究において、どのようなカチオン/アニオンの組み合わせから特定のおよび/または所望の性質が生じるのかを明らかにするため、イオン液体の基本的な特性が探求されている。これまでのところ、この取り組みはそれほど成功していない。
【背景技術】
【0002】
初期の研究は、イオン液体のアニオン成分が、イオン液体の物理的性質および化学的性質により大きな影響を与えることを示唆しているように思われた。ただし、この概念は、研究されたイオン液体が様々な異種アニオンを含むばかりでなく、構造的に類似するカチオンとも密接に関係しているという事実が一因であると考えられる。実際に、ハロゲンアニオンのようなアニオンは、より高い水素結合塩基性(Cl>Br>I)を有し、容易に水素結合を形成して、一般に粘性液体を形成する。これは、配位アニオンのみが粘性液体を生成することをいうものではなく、1−アルキル−3−メチルイミダゾリウムのイオン液体の粘度は、ヘクサフルオロホスファート(PF)およびビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(NTf)のような非配位アニオンと対になっているときでさえも、アルキル鎖長とともに増加することがよく知られている。カチオンの種類とその構造は、表面張力、融点、粘度、密度、および熱安定性に確実に影響するだけでなく、双極子、π−π、およびη−π相互作用により溶解した分子と相互作用するが、その影響範囲については、アニオンに対しての研究に比べさほど熱心には研究されてきていない。
【0003】
イオン液体の安定性が大げさにいわれているが、より一般的なイオン液体の多くは化学分解および熱分解しやすい。近年、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMIM−Cl)を空気にさらし加熱すると、120℃で淡黄色から琥珀色に変色し始めることが報告された。さらに加熱すると、このイオン液体は、150℃より高温で明らかに分解の兆候を示し始める。より近年、嵩高のカチオンとトリフラートアニオンに基づく新種の「安定性の高いイオン液体」が発表され、いくつかの従来のイオン液体の頑健性は、以前に考えられていたよりも(熱安定性の低さと揮発性の高さの両方において)弱いと考えられることが報告された。MacFarlaneとその共同研究者たちは、熱重量分析(thermogravimetric analysis:TGA)に「ステップ・タンジェント法(step tangent method)」を用いて同様の結論に達し、イミダゾリウム系のカチオンの分解温度をより正確に決定した。MacFarlenらは、以前に報告されていた分解温度よりも低い温度でも、揮発性分解生成物の発生が著しいことを指摘している。TGAを用いてより適切に熱安定性を測定するため、操作温度の最高温度のパラメータが提唱された。
【0004】
固相抽出および固相微量抽出の技術は公知である。イオン液体は、水からHg2+とCd2+を抽出するのに用いる特定課題向けの液−液抽出技術に用いられてきた。米国特許出願公開第2006/0025598号では、固相抽出のための二イオン液体塩および固定化イオン液体の使用が報告されている。米国特許第6,531,241号では、スペーサー基と結合した環状非局在化カチオンが報告されている。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、ポリイオン液体塩が提供される。該ポリイオン液体塩は、構造的に式(I)に相当するポリイオン種および少なくとも1つの対イオンを含んでなる:
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Gcは、窒素原子、リン原子、ケイ素原子、アルキル、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選ばれる無電荷の置換可能な中心基であり;該窒素原子は、アルキルおよびアルキルカルボニルアミノアルキルからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよい;
Gcは、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上のRc置換基でさらに置換されていてもよい;
各Aは独立に選ばれるモノイオン基であり;
該モノイオン基は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、(−CH−カルボシクリル−CH−)、およびポリシロキシルからなる群から選ばれ;アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレンは、O、N、S、およびSiからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい;
該モノイオン基は、ヘテロシクリル、アンモニウム、およびホスホニウムからなる群から選ばれるカチオン基で置換されていて;該カチオン基は、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;該アルキルは、ヒドロキシおよびフェニルからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよい;または、
該モノイオン基は、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートからなる置換基の群から選ばれるアニオン基であり;このような各置換基は、アルキル、カルボシクリルおよびヘテロシクリルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよい;
nは1〜20(両端の数値を含む)から選ばれ;かつ、
mは3、4、5、および6から選ばれる)。
【0008】
他の態様において、更なるポリイオン液体塩が提供される。該ポリイオン液体塩は、式(III)、式(IV)、または式(V)を有するポリイオン種、および少なくとも1つの対イオンを含む:
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、各Bは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、(−CH−カルボシクリル−CH−)、およびポリシロキシルからなる群から独立に選ばれ;
アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレンは、O、N、S、またはSiからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく;
Bは、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアルコキシからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;
各Aはモノイオン基から独立に選ばれ;
該モノイオン基は、ヘテロシクリル、アンモニウム、およびホスホニウムからなる群から選ばれるカチオン基であり;該カチオン基は、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;該アルキルは、ヒドロキシおよびフェニルからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の置換基と置換されていてもよい;または、
該モノイオン基は、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートからなる置換基の群から選ばれるアニオン基であり;このような各置換基は、アルキル、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;
nは1〜20(両端の数値を含む)から選ばれる)。
【0011】
更なる態様において、本明細書で定義される1種または2種以上のポリイオン液体塩を含んでなる溶媒が提供される。
更なる一態様において、固体支持体および本明細書で定義される1種または2種以上のポリイオン液体塩を含んでなり、該1種または2種以上のポリイオン液体塩が該固体支持体上に吸着、吸収または固定化されている、化学的分離または分析のための装置が提供される。
【0012】
更なる一態様において、化学物質の混合物から1種の化学物質を分離する方法を提供する。該方法は:
少なくとも1種の第1の化学物質と少なくとも1種の第2の化学物質との混合物を準備すること;および、
該混合物を、本明細書で定義される1種または2種以上のポリイオン液体塩(該1種または2種以上のポリイオン液体塩は、該固体支持体上に吸着、吸収または固定化されている)を含む固体支持体に接触させて、該第1の化学物質の少なくとも一部を該固体支持体上に保持すること、を含む。
【0013】
更なる一態様において、ESI−MSによりアニオンを検出する方法が提供される。該方法は、本明細書で定義される1種または2種以上のポリカチオン液体塩の使用を含む。
他の態様は、上に要約された態様の特定の側面も含め、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、SPMEおよびSPME/MALDI質量分析に有用なシリンジの一態様を示す。
【図2】図2は、SPMEおよびSPME/MALDI質量分析に有用なシリンジの他の態様を示す。
【図3】図3は、2種のアニオン(六塩化白金酸アニオンおよびo−ベンゼンジスルホン酸アニオン)の検出のための正イオンモード(I、II)および負イオンモード(III,IV)における、信号対雑音比の比較を示すグラフである。正イオンモードでは、アニオンを噴射した後にトリカチオン試薬(A6(I)およびB1(II))の水溶液をキャリアー流に導入し、負イオンモード(III,IV)では水のみを用いた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書は、本発明を特別に指摘し明白に保護を要求する特許請求の範囲により結論付けられるが、本発明は、以下の説明によりさらに理解が深まるであろう。
【0016】
A.定義
「カルボシクリル」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わされて、3〜14個の炭素環原子(「環原子」は、互いに結合して環状置換基の単環または多環を形成する原子である)を含む、飽和環状(すなわちシクロアルキル)、部分飽和環状(すなわちシクロアルケニル)、または完全不飽和(すなわちアリール)のヒドロカルビル置換基を意味する。カルボシクリルは、環一個の(単環)構造でも多環構造でもよい。
【0017】
カルボシクリルは、単環構造でもよく、一般には3〜7個の環原子、より一般には3〜6個の環原子、さらに一般には5〜6個の環原子を含む。このような単環カルボシクリルの例としては、シクロプロピル(シクロプロパニル)、シクロブチル(シクロブタニル)、シクロペンチル(シクロペンタニル)、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル(シクロヘキサニル)、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、およびフェニルが挙げられる。
【0018】
あるいは、カルボシクリルは多環式、すなわち2環以上の環を含んでいてもよい。多環カルボシクリルの例としては、架橋カルボシクリル、縮合カルボシクリル、スピロ環カルボシクリル、および分離カルボシクリルが挙げられる。スピロ環カルボシクリルでは、1個の原子が異なる2つの環に共有される。スピロ環カルボシクリルの例としては、スピロペンタニルがある。架橋カルボシクリルでは、環は少なくとも2個の隣接しない共通原子を共有する。架橋カルボシクリルの例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エニル、およびアダマンタニルが挙げられる。縮合環カルボシクリル系では、2つの環が1つの共通結合を共有するように、複数の環が互いに縮合される。2重縮合または3重縮合環カルボシクリルの例としては、ナフタレニル、テトラヒドロナフタレニル(テトラリニル)、インデニル、インダニル(ジヒドロインデニル)、アントラセニル、フェナントレニル、およびデカリニルが挙げられる。分離カルボシクリルでは、環が分離されて独立し、共通原子を共有しないが、環の間にリンカーが存在する。
【0019】
「カルボシクリル」という用語は、次式:
【0020】
【化3】

【0021】
のようなプロトン化カルボシクリルを包含する。
「ヘテロシクリル」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わされて、合計3〜14個の環原子を含む、飽和環状構造(すなわちヘテロシクロアルキル基)、部分飽和環状構造(すなわちヘテロシクロアルケニル基)、または完全不飽和環状構造(すなわちヘテロアリール基)を意味する。これらの環原子の少なくとも1個は、ヘテロ原子(すなわちN、P、As、O、S、およびSi)であり、残りの環原子は、炭素、酸素、窒素、および硫黄からなる群から独立に選ばれる。ヘテロシクリルは環一個の(単環)構造でも多環構造でもよい。
【0022】
ヘテロシクリルという用語は、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、およびトリアゾリウムのようなプロトン化ヘテロシクリルを包含する。
【0023】
ヘテロシクリルは、単環でもよく、一般には3〜7個、より一般には3〜6個、さらに一般には5〜6個の環原子を含む。単環ヘテロシクリルの例としては、フラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、チオフェニル(チオフラニル)、ジヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリニル、イソチアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、チオジアゾリル、オキサジアゾリル(1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル(フラザニル)、または1,3,4−オキサジアゾリルを含む)、オキサトリアゾリル(1,2,3,4−オキサトリアゾリルまたは1,2,3,5−オキサトリアゾリルを含む)、ジオキサゾリル(1,2,3−ジオキサゾリル、1,2,4−ジオキサゾリル、1,3,2−ジオキサゾリル、または1,3,4−ジオキサゾリルを含む)、オキサチアゾリル、オキサチオリル、オキサチオラニル、ピラニル、ジヒドロピラニル、チオピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピリジニル(アジニル)、ピペリジニル、ジアジニル(ピリダジニル(1,2−ジアジニル)、ピリミジニル(1,3−ジアジニル)、またはピラジニル(1,4−ジアジニル)を含む)、ピペラジニル、トリアジニル(1,3,5−トリアジニル、1,2,4−トリアジニル、および1,2,3−トリアジニルを含む)、オキサジニル(1,2−オキサジニル、1,3−オキサジニル、または1,4−オキサジニルを含む)、オキサチアジニル(1,2,3−オキサチアジニル、1,2,4−オキサチアジニル、1,2,5−オキサチアジニル、または1,2,6−オキサチアジニルを含む)、オキサジアジニル(1,2,3−オキサジアジニル、1,2,4−オキサジアジニル、1,4,2−オキサジアジニル、または1,3,5−オキサジアジニルを含む)、モルホリニル、アゼピニル、オキセピニル、チエピニル、およびジアゼピニルが挙げられる。
【0024】
あるいは、ヘテロシクリルは、多環式、すなわち2環以上の環を含んでいてもよい。多環ヘテロシクリルの例としては、架橋ヘテロシクリル、縮合ヘテロシクリル、およびスピロ環ヘテロシクリルが挙げられる。スピロ環ヘテロシクリルでは、1個の原子が2つの異なる環に共有される。架橋ヘテロシクリルでは、環は少なくとも2個の隣接しない共通原子を共有する。縮合環ヘテロシクリルでは、2つの環が1つの共通結合を共有するように、複数の環が互いに縮合される。2重環または3重環を含む縮合環ヘテロシクリルの例としては、インドリジニル、ピラノピロリル、4H−キノリジニル、プリニル、ナフチリジニル、ピリドピリジニル(ピリド[3,4−b]−ピリジニル、ピリド[3,2−b]−ピリジニル、またはピリド[4,3−b]−ピリジニルを含む)、およびプテリジニルが挙げられる。縮合環ヘテロシクリルの他の例としては、インドリル、イソインドリル(イソベンゾアゾリル、プソイドイソインドリル)、インドレニニル(プソイドインドリル)、イソインダゾリル(ベンゾピラゾリル)、ベンゾアジニル(キノリニル(1−ベンゾアジニル)またはイソキノリニル(2−ベンゾアジニル)を含む)、フタラジニル、キノキサジニル、キナゾキニル、ベンゾジアジニル(シンノリニル(1,2−ベンゾジアジニル)またはキナゾリニル(1,3−ベンゾジアジニル)を含む)、ベンゾピラニル(クロマニルまたはイソクロマニルを含む)、ベンゾオキサジニル(1,3,2−ベンゾオキサジニル、1,4,2−ベンゾオキサジニル、2,3,1−ベンゾオキサジニル、または3,1,4−ベンゾオキサジニルを含む)、およびベンゾイソオキサジニル(1,2−ベンゾイソオキサジニルまたは1,4−ベンゾイソオキサジニルを含む)等のベンゾ縮合ヘテロシクリルが挙げられる。
【0025】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わされて、アルカン由来の基を表し、1〜20個の炭素原子を含む。アルキルは、直鎖アルキル、分枝アルキル、およびシクロアルキルを含む。メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル等の、直鎖状または分枝状アルキル基は、1〜15個の炭素原子を含む。アルキルは、1箇所または2箇所以上のシクロアルキル部分を含むか、1箇所または2箇所以上のシクロアルキル部分が割り込んだ、直鎖状または分枝状アルキル基も含む。この例としては、4−(イソプロピル)−シクロヘキシルエチル、または2−メチル−シクロプロピルペンチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このアルキル基は、任意の置換可能な箇所に結合されて、安定した化合物を生成する。アルキルという用語は、完全に置換された炭素も包含する。
【0026】
「アルキレン」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わされて、1〜20個、好適には1〜15個の炭素原子を含み、2個の水素原子が同じ炭素原子または異なる炭素原子から除かれているアルカン由来の2価の基を表す。アルキレンの例としては、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
「ポリシロキシル」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わされて、1〜20個の原子を含む、酸素とケイ素からなる2価の基を表す。例としては、(−Si−O−Si−)が挙げられ、nは1〜20である。
【0028】
「アミノ」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わされて、−NHを意味する。アミノという用語は、単独で、または他の用語と組み合わされて、「1置換アミノ」を包含し、1置換アミノでは、1個の水素基が非水素の置換基と置換されている。さらに、単独で、または他の用語と組み合わされて、「2置換アミノ」を包含し、2置換アミノでは、どちらの水素原子も非水素の置換基と置換されていて、この置換基は同じものでも異なるものでもよい。
【0029】
「アルコキシ」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わされて、アルキルエーテル、すなわち−O−アルキルを意味する。このような置換基の例としては、メトキシ(−O−CH)、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。
【0030】
「アラルキル」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わされて、基「−R−Ar」を表し、Arはアリール基であり、Rは低級アルキレン基または置換低級アルキレン基である。アラルキルのアリール基官能基は、置換されていなくてもよく、または、たとえば、ハロゲン、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、置換ヘテロ環、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミド等の基で置換されていてもよい。
【0031】
「アンモニウム」という用語は、化学式:NH4+で表される正に帯電した多原子カチオンを表す。アンモニウムは、正に帯電した、またはプロトン化した置換アミン(プロトン化第3級アミンなど)、および、1個または2個以上の水素原子が有機ラジカル基(上のRで表される)で置換されている第4級アンモニウムカチオン(N)も包含する。
【0032】
同様に、「ホスホニウム」という用語は、化学式:PHを有する正に帯電した多原子イオンを表す。ホスホニウムは、1個または2個以上の水素原子が有機ラジカル基に置換されていてもよい。
【0033】
別に規定のない限り、本明細書で用いられるすべての割合および比は、組成物全体の重量によるものであり、すべての測定は、25℃、常圧で行われる。別に規定のない限り、すべての温度は摂氏温度である。本発明は、本発明の構成要素を含む(comprising:オープン・エンド)か、本質的に本発明の構成要素からなる(consisting essentially of)だけでなく、本明細書に記載の他の成分または要素をも含むことができる。本明細書で用いられる「含む(comprising)」は、列挙された要素、あるいはそれらの構造的または機能的均等物、更には列挙されていない任意の他の1つまたは2つ以上の要素を含むことを意味する。「有する(having)」および「含む(including)」の用語も、文脈上別に示唆されない限り、オープン・エンドであると解釈されるべきである。本明細書で用いられる「から本質的になる(consisting essentially of)」は、本発明が、特許請求の範囲で列挙された成分の他にも成分を含んでもよいことを意味するが、その付加成分が、特許請求の範囲に記載されている発明の基本特性および新規性のある特性を実質的に変更しない場合に限られる。このような付加成分は、全く存在しないか、ごく僅かしか存在しないことが好ましい。しかし、組成物の利用性(利用性の程度ではない)が維持される限り、本発明の基本特性および新規性のある特性を実質的に変える物質を、約10重量%まで含んでもよい。本明細書で挙げられるすべての範囲は、2つの値の「間」の範囲を挙げるものを含め、両端を含む。「約(about)」、「一般に(generally)」、「実質的に(substantially)」等の用語は、用語または値を修飾し、絶対的なものではないが従来技術の範囲内にあるものではないことを表すと解釈されるべきである。このような用語は、状況や、これらの用語を当業者に理解されるように修正した用語によって明確になるであろう。このことは、少なくとも、値を測定するために用いられる所定の技術における予期される程度の実験誤差、操作による誤差、および器差にいえる。
【0034】
最も広い意味において、「ポリイオン塩(polyionic salt)」すなわち「PSI」は、本明細書に記載のポリイオン種すなわち「ポリオン(polyon)」と、等しい全電荷を持つ1つまたは2つ以上の対イオンとの間に形成される塩である。ポリオンが3つのカチオン基を有する場合、1つまたは2つ以上の対イオンは、電荷平衡、たとえば−3の電荷平衡を提供する必要がある。これは、3つのモノアニオン種、1つのモノアニオン種と1つのジアニオン種、または1つのトリアニオン種によって達成される。本発明に従って得られる塩は、好適には約100℃以下、より好適には25℃以下の温度で液体である。本明細書で用いられるポリオンは、イオン、すなわちカチオンまたはアニオンのいずれかを意味し、n個の電荷を有し、nは少なくとも3、すなわち3、4、5または6以上の整数である。本明細書で用いられるポリオンという用語は、特定の全電荷を有する一つの荷電イオン種、たとえばAl+3のような+3のイオン、またはPO−3のような−3のイオンは包含しない。むしろ、少なくとも3つの別々のモノイオン基を有し、各イオン基が独立に中心基に共有結合している単一の分子を意図している。本明細書で用いられる「共有結合」という用語は、分子の2つの部分、たとえば、モノイオン基と中心基とが、共有結合していることを意味する。好適には、モノイオン基は、互いには直接共有結合を形成しない。好適には、中心基は電荷を持たない。
【0035】
ポリオン中のモノイオン基は、同じ電荷のはずである。ポリオン中のモノイオン基は異なる種類の基であってもよく、ポリイオン液体塩は「ジェミナル(geminal))であってもよい。「ジェミナル」とは、全イオン基が同じ電荷であるだけでなく、同じ構造でもあることを意味する。対イオンは同じものである必要はない。一態様において、ポリオンまたは塩を形成する種のどちらかはキラルであり、少なくとも1つの立体中心を有する。モノイオン基は、それ自体がキラルである置換基を含んでいてもよい。中心基もキラルであってもよく、あるいは、1つまたは2つ以上のキラル置換基を含んでいてもよい。このような例において、ポリイオン液体塩は、ラセミ体であってもよく(または、ジアステレオマーの場合には、それぞれ対になったエナンチオマーが同量存在する)、光学的に富化されてもよい。「光学的に富化される」とは、エナンチオマーの場合、一方のエナンチオマーが他方のエナンチオマーよりも多量存在することを意味する。ジアステレオマーの場合、少なくとも1対のエナンチオマーが、1:1以外の比で存在する。実際に、ポリイオン液体塩は、「実質的に光学的に純粋」であってもよく、一方のエナンチオマー、または、2以上の立体中心が存在する場合には、エナンチオマーの対のうちの少なくとも1対の一方のエナンチオマーは、他方のエナンチオマーに対して、少なくとも90%の量で存在する。本発明の塩のポリイオン液体は、光学的に純粋であってもよく、すなわち、一方のエナンチオマーが、他方のエナンチオマーに対して、少なくとも約98%の量で存在する。
【0036】
通常は、ポリイオン塩という用語は塩分子の記述に用いられるが、文脈より示唆されるように、「ポリイオン液体(polyionic liquid:PIL)」および「ポリイオン液体塩(polyionic liquid salt:PILS)と同義である。本発明による「ポリイオン液体」すなわち「PIL」は、ポリイオン塩で構成される液体である。このように、十分な数のポリイオン塩分子が、本明細書で示される温度で液体の形態をとるように存在する。このことから、個々のポリイオン塩分子は液体ではないと考えられる。ポリイオン液体は、ポリカチオン液体またはポリアニオン液体(本明細書に記載のポリカチオン塩かポリアニオン塩のどちらかを含む液体)、あるいはこれらの混合物のいずれかである。ポリイオン液体塩をポリイオン液体塩以外の溶媒と混合してもよい。安定で、固体/液体変態温度が約500℃以下、より好適には約400℃以下であるポリカチオン液体ならどれでもよい。これは「ポリアニオンの液体塩」としても知られている「ポリアニオン液体」にも当てはまるが、電荷は逆である。ポリカチオン液体およびポリアニオン液体は、本明細書において、ポリイオン液体塩(「PILS」、または電荷により「PCLS」や「PALS」)と呼ぶこともできる。3つのモノイオン基を含むポリオンはトリイオンと呼ばれる。
【0037】
B.ポリイオン液体塩
本発明は、一つには、ポリイオン種および少なくとも1つの対イオンを含むポリイオン液体塩を対象とする。
【0038】
いくつかの態様において、ポリイオン液体種は、少なくとも1種のポリアニオンまたはポリカチオン液体塩分子を含む。
いくつかの態様において、ポリイオン液体塩は、少なくとも3つの別々のモノイオン基を有するポリイオン種および適切な数の対イオンを含む。ポリイオン液体塩は、約200℃以下の温度で実質的に分解も揮発もせず、約100℃以下の固体/液体変態温度、および/または少なくとも約200℃の液体範囲を有する。特定の一態様において、ポリイオン液体塩は、約25℃以下の固体/液体変態温度を有する。
【0039】
Bl.中心基ポリイオン塩と非中心基ポリイオン塩
一態様において、ポリイオン種中のモノイオン基は、電荷を持たない中心基に個々に共有結合している。このようなポリイオン液体塩は、中心基ポリイオン液体塩(central group polyionic liquid salt:CGP)と呼ばれる。このポリイオン液体塩は、ポリアニオン性であってもポリカチオン性であってもよい。
【0040】
いくつかの態様において、中心基ポリイオン塩は、式:Gc(A)の構造を有する(式中、Gcは中心基であり、各Aはモノイオン基であり、mは、ポリイオン種中のモノイオン基の数を表し、少なくとも3である)。
【0041】
いつくかの態様において、ポリイオン種は構造的に式(I)に相当する:
【0042】
【化4】

【0043】
(式中、Gc、m、および各Aは、以下に定義するものであってもよい)。
いつくかの態様において、ポリイオン種は構造的に式(II)に相当する:
【0044】
【化5】

【0045】
(式中、Gcおよび各Aは、以下に定義するものであってもよい)。
いつくかの態様において、ポリイオン種は構造的に式(VI)に相当する:
【0046】
【化6】

【0047】
(式中、Gcおよび各Aは、以下に定義するものであってもよい)。
別の態様において、ポリイオン種は中心基を含まない。これらのポリイオン種は、非中心基ポリオン(Non-central Group Polyon)すなわち「NCGP」と呼ばれる。一般に、これらのポリオンは、直鎖状、分枝状、さらには環状の構造を有していてもよい。モノイオン基Aは、架橋基Bによって分離される。各NCGPは、CGPに関連して既に定義された少なくとも3つのモノイオン基を含み、各モノイオン基は、(A)に関して既に定義されたものであってもよい。
【0048】
各AおよびBは、存在する場合、同じものでも異なるものでもよい。
いくつかの態様において、ポリイオン種は構造的に式(III)に相当する:
【0049】
【化7】

【0050】
(式中、各AおよびBは、同じものでも異なるものでもよく、以下に定義するものであってもよい)。
いくつかの態様において、ポリイオン種は構造的に式(IV)に相当する:
【0051】
【化8】

【0052】
(式中、各AおよびBは、同じものでも異なるものでもよく、以下に定義するものでもよい)。
いくつかの態様において、ポリイオン種は構造的に式(V)に相当する:
【0053】
【化9】

【0054】
(式中、各AおよびBは、同じものでも異なるものでもよく、以下に定義するものでもよい)。
【0055】
B2.ポリイオン液体塩の安定性と揮発性
いくつかの態様において、ポリイオン液体塩は、安定で、本明細書に記載されている通りの測定では、約200℃以下の温度で実質的に分解も揮発もせず、約100℃以下の固体/液体変態温度、または少なくとも約200℃の液体範囲を有する。
【0056】
他の態様において、ポリイオン液体塩は、約100℃以下の固体/液体変態温度、および少なくとも約200℃の液体範囲を有する。特定の一態様において、式(I)のポリイオン種を含むポリイオン液体塩は、約100℃以下の固体/液体変態温度および/または200℃以上の液体範囲を有し、かつ/または200℃未満の温度で実質的に不揮発性かつ非分解性である。
【0057】
特定の一態様において、ポリカチオン液体またはポリアニオン液体は、本明細書に記載されている通りに、溶融シリカキャピラリー内またはシリカ固体支持体の表面に薄膜として固定して測定すると、約200℃以下の温度で実質的に分解も揮発もしない(または実質的に不揮発性のままである)。珪藻土(一般にGCカラム充填に用いられる)、活性炭(たとえばCarbopackやCarboxen)、金属微粒子(ジルコニア、チタニア等)、ポリマー粒子(たとえば、スチレン−ジビニルベンゼン、すなわちSDVB)等の他のタイプの固体支持体を、シリカ担体の代わりに用いてもよい。これは本明細書に記載の微粒子以外にも当てはまる。実際に、クロマトグラフ測定において有用な任意の媒体を用いることができる。「実質的に(substantially)」という語は、この文脈においては、約10重量%未満の量が、約200℃で、キャピラリー内で約1時間にわたって分解または揮発することを意味する。さらに、本発明によるポリカチオン液体は、好適には、約100℃以下の固体/液体変態温度か、少なくとも約200℃の液体範囲(燃焼も分解もせずに液体の形態でいる温度範囲)のどちらかを有する。
【0058】
他の特定の態様において、ポリカチオン液体は、約100℃以下の固体/液体変態温度と、少なくとも200℃の液体範囲の両方を有する。
他の特定の態様において、ポリカチオン液体は、本明細書で考察されているように、約300℃未満の温度で実質的に揮発も分解もしない。「実質的に」という語は、この文脈においては、約10重量%未満の量が、約300℃で、キャピラリー内で約1時間にわたって分解または揮発することを意味する。さらに、本態様によるポリカチオン液体は、好適には、25℃以下の固体/液体変態温度を有する。
【0059】
他の特定の態様において、ポリカチオン液体は、少なくとも約200℃の液体範囲をも有する。さらに特定の一態様において、液体範囲は、約300℃以上である。
特定の一態様において、ポリアニオン液体は、本明細書に記載されている通りに、溶融シリカキャピラリー内に薄膜として固定して測定すると、約200℃以下の温度で実質的に分解も揮発もしない。さらに、この態様によるポリアニオン液体は、約100℃以下の固体/液体変態温度か、少なくとも約200℃の液体範囲のどちらかを有する。
【0060】
他の態様において、これらのポリアニオン液体は、約100℃以下の固体/液体変態温度と、少なくとも約200℃の液体範囲(ポリイオン分子がその全温度範囲にわたって安定している範囲)の両方を有する。
【0061】
他の態様において、本発明は、約−10〜約−20℃の間に融点を有するポリイオン液体塩を提供する。
本発明の別の側面において、ポリアニオン液体は、本明細書で考察されているように、約300℃未満の温度で実質的に揮発も分解もしない。さらに、この態様によるポリアニオン液体は、好適には、約25℃以下の固体/液体変態温度を有する。他の態様において、このポリアニオン液体は、少なくとも200℃の液体範囲をも有する。本発明のさらに好適な側面において、液体範囲は約300℃以上である。
【0062】
したがって、一態様において、ポリカチオン液体塩またはポリアニオン液体塩のどちらかであるポリイオン液体塩が提供され、これらは、本明細書に記載されているように、約200℃以下の温度で実質的に分解も揮発もせず、約100℃以下の固体/液体変態温度、または少なくとも約200℃の液体範囲を有する。
【0063】
本発明の他の側面において、これらのポリイオン液体塩は、約100℃以下の固体/液体変態温度と、少なくとも約200℃の液体範囲の両方を有する。
本発明による他の態様において、ポリイオン液体塩は、ポリカチオン性又はポリアニオン性のいずれでも安定で、本明細書で考察されているように、約300℃未満の温度で実質的に揮発も分解もせず、約25℃以下の固体/液体変態温度を有する。本発明のこの側面による特定の一態様において、ポリイオン液体塩は、少なくとも約200℃、さらに好適には、少なくとも約300℃の液体範囲を有する。最も広範囲の条件を満たす安定した液体塩を形成し得る任意のポリイオン化合物が意図されている。
【0064】
B3.ポリイオン種の対称性
本発明のポリイオン種は、対称か非対称かに分類される。
いくつかの態様において、ポリイオン種は対称である。
【0065】
「対称(symmetric)」という語の意味するところは、ポリイオン種が対称中心基および同じイオン基(A)を有することである。たとえば、ある対称トリイオン種では、3つの同じモノイオン基が、中心のフェニル基の1、3、および5位の炭素に結合している。このようなトリイオン種は、3つのモノイオン基に関してC対称を有する。対イオンが異なる場合も、このようなトリイオン種はなお対称であるとみなされる。Gcがシクロヘプタンの場合は、3つのモノイオン基は完全に対称に結合することができないので対称ではない。
【0066】
ポリイオン種は中心対称であってもよい。「中心対称(center-symmetric)」という語の意味するところは、複数のイオン基(A)が同じものであるかどうかにかかわらず、ポリイオン種が対称中心基を有することである。たとえば、中心対称のトリイオン種は、中心のフェニル基に結合した3つの異なるモノイオン基を含む。
【0067】
他の態様において、ポリイオン種は非対称である。
「非対称(unsymmetric)」という語の意味するところは、モノイオン基Aが構造的に異なること、または中心基が非対称であること、またはポリイオン種が対称にならないような方法でモノイオン基が中心基に結合していることである。本発明は、任意の組成的または構造的配置により非対称のポリイオン種を包含する。
【0068】
いくつかの態様において、本発明の非対称ポリイオン種は、異なるモノイオン基を含む。
たとえば、(A)は、置換または非置換で飽和または不飽和の直鎖状または分枝状脂肪族鎖、環状基、芳香族基、第4級アンモニウムおよびプロトン化第3級アミンのようなアンモニウム基、ホスホニウム基、またはアルソニウム基のような異なるカチオン基であってもよく、あるいは、置換または非置換で飽和または不飽和状の直鎖状または分枝状脂肪族鎖、環状基、芳香族基、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートのような異なるアニオン基であってもよい。いくつかの他の態様において、中心基は非対称である。たとえば、中心基は4員環であってもよい。さらにいくつかの他の態様において、モノイオン基は、ポリイオン種が対称にならないような方法で中心基に共役している。たとえば、トリイオン種は、ベンゼン環の1、2、および4位炭素に結合している3つの同じモノイオン基を含んでいてもよい。
【0069】
上記の個々のタイプの非対称構造は、それぞれポリイオン種が非対称になるのに十分なものであるが、2種以上の非対称構造の組み合わせも考えられる。
本発明の非対称ポリイオン塩は、任意の用途、たとえば本出願において開示されている用途において、実質的に純粋な形で使用することができる。同じモノイオン基を有していない、または非対称中心基を含むポリイオン塩は、対応する対称ポリイオン塩と比べて、一般に融点がより低く、「液体」塩になるのにより好都合である。さらに、対応する対称ポリイオン塩と比べて、内部構造の相違の程度が大きくなるにつれて、対応する対称ポリイオン塩の融点と比べて、一般に融点がより低くなる。一端の対称分子から、すべての異なる対イオン、すべての異なるイオン、異なる置換基、かつ非対称中心基を有するもう一端の群まで、この傾向は連続的に変化していると考えられる。前者は最も高い融点を、後者は比較的低い融点を有するはずである。言うまでもなく、この傾向には変動があり得る。たとえば、ある特定の対イオンを使用すると、他の異なるイオンを使用する場合よりも融点の低下により大きく影響することがある。
【0070】
本発明の非対称ポリイオン塩は、溶媒としての使用にも好都合な場合がある。たとえば、対称トリイオン種が、溶液中で他の分子と相互反応可能な部分をわずか1組しか提供しないのに比べて、3つの異なるA基を有するトリイオン種は3組提供する。実際に、非対称であればあるほど、より様々な相互作用が起こり得る。このように、本発明は、上記のように、実質的に純粋な「非対称」ポリイオン塩を溶媒として使用することを提供する。
【0071】
本発明の非対称ポリイオン塩は、任意の用途、たとえば本出願において開示されている用途に、実質的に純粋な形で使用することができる。本発明の非対称ポリイオン塩は、任意の対称ポリイオン塩と組み合わせて混合物として利用することもできる。このように一態様において、本発明は、上記のように実質的に純粋な非対称ポリイオン塩のポリイオン液体を提供する。他の態様において、本発明は、本発明による上記のような少なくとも1種の非対称ポリイオン塩、および少なくとも1種の対称ポリイオン塩を含むポリイオン液体を提供する。当業者は、特定の用途に従って混合物として使用される場合の、対称および非対称ポリイオン液体塩の割合を決定できる。
【0072】
B4.(A)置換基
(A)中、各Aはモノイオン基であり、mは本発明のポリイオン液体塩中のモノイオン基の数である。したがって、Aは3つのモノイオン基が存在することを意味し、同様に、Aは5つのモノイオン基が存在することを意味する。各Aは、それぞれに見合ってすべてアニオンまたはすべてカチオンである限り、同じものでも異なるものでもよい。
【0073】
いくつかの態様において、mは3、4、5、および6からなる群から選ばれる。
いくつかの態様において、Aはキラルであるため、少なくとも1つの立体中心を含んでいる。
【0074】
いくつかの態様において、各Aはカチオン基またはアニオン基である。
いくつかの態様において、各Aはカチオン基である。
いくつかのこのような態様において、各Aはカチオン基であり、カルボシクリル、ヘテロシクリル、第4級アンモニウム、プロトン化第3級アミン、ホスホニウム、またはアルソニウム基であるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
いくつかの態様において、各Aは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、(−CH−カルボシクリル−CH−)、およびポリシロキシルからなる群から選ばれるモノイオン基であり;アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレンは、O、N、S、およびSiからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく;
モノイオン基は、ヘテロシクリル、第4級アンモニウム、プロトン化第3級アミン、およびホスホニウムからなる群から選ばれるカチオン基で置換されていて;カチオン基は、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;アルキルは、ヒドロキシおよびフェニルからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;かつ
nは1〜20(両端の数値を含む)から選ばれる。
【0076】
いくつかのこのような態様において、各Aは次式からなる群から独立に選ばれる:
【0077】
【化10】

【0078】
(式中、R、R、R、およびRは、同じものでも異なるものでもよく、各R、R、R、およびRは、水素、置換または非置換で飽和または不飽和の直鎖状または分枝状(アルキルのような)脂肪族鎖、(シクロアルキルまたはフェニルのような)カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、またはアラルキルであってもよい)。
【0079】
他の態様において、各Aはアニオン基である。
いくつかの他のこのような態様において、各Aはアニオン基であり、置換または非置換で飽和または不飽和の直鎖状または分枝状脂肪族基、環状基、または芳香族基、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートであるが、これらに限定されず;このような各置換基は、アルキル、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0080】
一般に、構造的に考察すると、ポリイオン液体はポリアニオン液体かポリカチオン液体かにかかわらず同じものである。第一に、ポリイオン液体は、ポリアニオン分子またはポリカチオン分子のどちらかのポリイオン種を含む。ポリイオン種は、本明細書で考察されているように中心または中心部分により分離された、式(I)中で(A)、および式(II)中で(A)として示されている3つ以上のモノイオン基を含む。中心基に結合可能で、ポリアニオン液体塩またはポリカチオン液体塩をもたらすアニオンまたはカチオンなら、どれでもよい。これらのアニオンまたはカチオンは、上に特定された要素を含む。適切なカチオンとしては、第4級アンモニウム(−NI、プロトン化第3級アミン(−NIH)、 ホスホニウム、および/またはアルソニウム基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの基は、脂肪族基、環状基、または芳香族基であってもよい。適切なアニオンとしては、たとえば、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートが挙げられる。ジカルボン酸基ポリアニオンの例としては、コハク酸、ノナン二酸、およびドデカン二酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
さらに、混成ポリアニオンおよびポリカチオンが含まれる。あくまで例示であるが、ポリカチオンは、3つの異なる第4級アンモニウム基の組み合わせ、または、1つの第4級アンモニウム基と、1つのホスホニウム基と、1つのアルソニウム基との組み合わせで構成されていてもよい。ポリアニオンは、3つの異なるカルボキシラート基の組み合わせ、または、カルボキシラート基とスルホナート基の組み合わせで構成されていてもよい。
【0082】
B5.対イオン
本発明のポリイオン液体は、特定の環境によってはイオン(+3、−3、+4、−4等)として存在することもあるが、一般に塩である。大抵の例において、各イオンは、各アニオンまたはカチオンごとに1つずつ対イオンを有している。大抵の場合、電荷は保持されている。ポリアニオン液体の場合、カチオンが必要とされ、ポリカチオン液体の場合、アニオンが必要とされる。どのアニオンを用いるかによって、得られる化合物の特性およびその溶媒としての有用性に影響がある場合がある。さらに、アニオンおよびカチオンは、単一の種の使用という状況で記載されるが、カチオンの混合物をポリアニオン種とともに用いて塩を形成し、ポリアニオン液体を形成することができる。この逆がポリカチオンについてもに当てはまる。明瞭にするため、本明細書においては、塩を形成するイオンを対イオンと称する。
【0083】
式I〜Vのポリオンは、置換基Aと逆の電荷を有する対イオンとともに、ポリイオン塩を形成する。
いくつかの態様において、対イオンはカチオン性である。
【0084】
カチオン対イオンは、ポリカチオン液体の製造に用いる既に特定されたポリカチオン化合物のいずれを含んでもよい。さらに、これらに対応するモノイオン性の相手を用いてもよい。たとえば、第4級アンモニウム、プロトン化第3級アミン、ホスホニウム、およびアルソニウム基は、ポリアニオン分子が本発明によるポリアニオン液体を形成するのに、対イオンとして役立つ。
【0085】
Aがアニオン性である場合、その対イオンはカチオン性であり、第4級アンモニウム、プロトン化第3級アミン、ホスホニウム、またはアルソニウム基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0086】
他の態様において、対イオンはアニオン性である。
アニオン性の対イオンは、本明細書で考察されているポリアニオン液体の形成に有用な任意のポリアニオン分子から選ばれる。これらは、ジカルボキシラート、ジスルホナート及びジスルファートを含む。カルボキシラート、スルホナート、スルファート及びホスホナートを含む対応するモノイオン化合物を用いてもよい。用いることができるハロゲン基およびハロゲン基を含む化合物には、トリフラート、NTf、PF、BF等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。対イオンは、ポリイオン液体が、本明細書に記載されているような良好な熱安定性および/または化学的安定性、および/または固体/液体変態温度、および/または液体範囲を有するように選ばれるべきである。最後になるが、本発明のイオン基は、置換されていても置換されていなくてもよい。本発明のイオン基は、ハロゲン基、アルコキシ基、脂肪族、芳香族、または環状基、窒素含有種、ケイ素含有種、酸素含有種、および硫黄含有種で置換されていてもよい。架橋および鎖の性質を考察する際に既述のように、置換の程度や置換基の種類が、得られる物質の特性に影響する場合がある。したがって、立体障害が過度に起こったり分子量が大きくなりすぎたりせず、得られた物質が全体的に柔軟性を失わず、さらにこの2種のイオン種のイオン性質が何によっても妨げられることがないように、注意すべきである。
【0087】
Aがカチオン性である場合、その対イオンはアニオンであり、ハロゲン、モノカルボキシラート、モノスルホナート、モノスルファート、NTf、BF、トリフラートアニオン、またはPFを含むが、これらに限定されず、さらには、それぞれカルボキシラート、スルホナートまたはスルファート(これらに限定されるものではない)から選ばれるアニオン基を有する分子を含む。他の対イオンは、次式のものを含むが、これらに限定されるものではない:
【0088】
【化11】

【0089】
(式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および
【0090】
【化12】

【0091】
からなる群から選ばれ;
式中、XはC〜C10アルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ
はC〜C10アルキレンである)。
【0092】
対イオンは、モノイオン性、ジイオン性、またはポリイオン性のイオン、またはこれらの混合物であってもよい。これらは、すべて同じタイプの電荷(正または負)を有し、全電荷がmである限り、同じものでも異なるものでもよい。たとえば、ポリイオン液体は、ポリカチオン液体とポリアニオン液体の混合物であってもよい。
【0093】
NCGPの各モノイオン基に有用な対イオンは、既に定義されたように、CGPと一緒に用いてもよい対イオンと同じものである。
【0094】
B6.中心基Gc
Gcは、中心基(中心または中心部分とも呼ばれる)であり、置換または非置換で、飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状脂肪族基、環状基、または芳香族基を含み、さらに、炭素原子および水素に加えて、またはそれらの代わりに、N、P、As、O、S、およびSi原子を含んでもよい。CGP中の中心基は、荷電(イオン)基ではない。
【0095】
いくつかの態様において、Gcはフェニル基である。
いくつかの態様において、Gcはシクロアルキル基である。
いくつかの態様において、GcはCである。
【0096】
いくつかの態様において、GcはSiである。
いくつかの態様において、GcはNである。
いくつかの態様において、GcはPである。
【0097】
中心基(式(I)および(II)中のGc)、またはイオン種の間に挟まれた中心は、適切な特性のポリイオン液体塩を生成することのできる任意の鎖長または組成のものでもよい。これらは、上でGcとして特定された基を含む。このような中心部分を選ぶ際に、考慮すべき要因がいくつかある。第一に、ポリイオン分子が大きくなるほど、一般に、融点すなわち固体/液体変態温度が上昇する可能性が大きくなる。このことは、液体範囲が広範囲でなくてもよい場合、および/または、固体/液体変態温度がそれほど低くなくてもよい場合にはさほど問題ではない。しかし、よくあることだが、約200℃以上の液体範囲、および/または、100℃以下の固体/液体変態温度を望む場合は、分子全体の大きさが益々大きな要因となる。一方、分子の大きいほうが特定の質量分析の用途に適していることがある。第二に、いくつかの態様において、中心基は多少の柔軟性を有していることが好ましい。このような態様では、通常は飽和している直鎖状分子、あるいは部分飽和の単環または多環基を中心基として用いることができる。いくつかの他の態様においては、より剛直なポリイオン分子が望ましい。このような態様では、不飽和度の高い基、たとえばコレステロールで見られる基のような非常に剛直および/または立体的に嵩高い基、および広範囲に不飽和部分を有する多環式不飽和脂肪族基、アクリル基、および複数の縮合環構造を含む環状基を中心基として用いることができる。さらに他の態様において、中心基は、C、Si、N、およびPのような単一の原子でもよい。
【0098】
中心基は、脂肪族基、環状基、または芳香族基、あるいはそれらの混合物であってもよい。中心基は、飽和または不飽和の炭素原子、あるいは、これらの炭素原子とたとえばアルコキシ基(エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ等)との混合物を含んでいてもよい。中心基は、アルコキシ基、グリセリド、グリセロール、およびグリコールを含んでいても、完全にこれらで構成されていてもよい。中心基は、O、N、S、またはSiのようなヘテロ原子、および、シロキサン、非プロトン化第3級アミン等のような誘導体を含んでいてもよい。中心基は、シクロヘキサン、イミダゾール、ベンゼン、ジフェノール、トルエン、またはキシレン基のような、1つまたは2つ以上の環状基または芳香族基、あるいは、ビスフェノール基またはベンジジン基のようなより複雑な環を含む基で構成されていてもよい。これらは単に代表的な例示であり、これらに限定されるものではない。ただし、一般に中心基は、ポリアニオン種またはポリカチオン種以外のイオン的に帯電した種を含まない。また、たとえば、それぞれが同じカチオン種および同じ対イオンを有するが中心基のみが異なるようなポリイオン液体塩の混合物を生成することが可能である。他の変形種を生成することもできる。
【0099】
いくつかの態様において、本発明は、中心基が約2〜約40個の炭素原子数(たとえば、中心基が炭素で構成される場合、n=C〜C40)の飽和脂肪族の炭素鎖と等しい範囲の鎖長を有する直鎖状中心基であるポリオイオン液体塩を提供する。このようなポリイオン液体塩は、直鎖状Gc系ポリイオン液体塩と呼ばれる。より好適には、中心基の鎖長は、約3〜30個の炭素原子数の鎖長を有する飽和脂肪族の炭素鎖から得られるものと同じ程度である。
【0100】
いくつかの他の態様において、本発明は、中心基が少なくとも3員の環を有する環状中心基であるポリイオン液体塩を提供する。このようなポリイオン液体塩は、環状Gc系ポリイオン液体塩と呼ばれる。環状中心基を含む態様において、中心基中の炭素原子および/または任意のヘテロ原子の数は、3〜40個の間(たとえば、中心基が炭素で構成される場合、n=C〜C40)であってもよい。より好適には、中心基中の炭素原子および/またはヘテロ原子の数は、5〜約30個である。環状中心基は、3、4、5、6、または7員環を有してもよいが、これらに限定されるものではない。環状中心基は、縮合多環を有してもよい。
【0101】
環状中心基は、1つまたは2つ以上の全炭素環を含む脂環基であってもよく、この全炭素環は飽和でも不飽和でも、置換されていても置換されていなくてもよい。典型的な脂環基としては、シクロプロパン、シクロブタン、およびシクロヘキサン、シクロヘプタンのようなシクロアルカン、ノルボルネンおよびノルボルナジエンのような二環式アルカン、ならびに、デカリン、スピロ基(2環が1個の炭素原子を介して結合されている)のような多環式シクロアルカン、シクロブテン、シクロプロペン、およびシクロヘキセンのようなシクロアルケンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
環状中心基は、1つまたは2つ以上の全炭素環を含む芳香族基であってもよく、この全炭素環は置換されていても置換されていなくてもよい。典型的な芳香族基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[ghi]ピレン、クリセン、コロネン、フルオランテン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、ピレン、およびトリフェニレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
環状中心基は、炭素の他に硫黄、酸素、または窒素のような原子を環の一部として含むヘテロ環基であってもよい。ヘテロ環基は、飽和でも不飽和でも、置換されていても置換されていなくても、芳香族でも芳香族以外でも、単一環でも縮合環でもよい。ヘテロ環基は、3、4、5、6、または7員環を有してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0104】
環状基は、縮合多環を有していてもよい。縮合多環の例としては、ベンゾシクロブテン、ペンタレン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、ベンゾチオフェン、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾイミダゾール、プリン、インダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ナフタレン、アントラセン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、アクリジン、キナゾリン、およびシンノリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
中心基が直鎖状基と環状基との混合物を含む態様において、モノイオン基は、任意の方法で中心基全体に分布させることができる。たとえば、モノイオン基Aのいくつかは中心基の環状部分に、他のモノイオン基は直鎖状部分に結合していてもよい。
【0106】
Gcは、プロトン、置換または非置換で飽和または不飽和の(アルキルのような)直鎖状または分枝状脂肪族鎖、(シクロアルキルのような)環状基、(フェニルまたは置換フェニルのような)芳香族基、ハロ、アルコキシ、あるいはヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上のRc置換基で置換されていてもよい。
【0107】
B7.置換基B
各Bは架橋基である。
各Bは、存在する場合、同じものでも異なるものでもよい。
【0108】
いくつかの態様において、各Bは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、(−CH−O−CH−)、(−CH−カルボシクリル−CH−)、およびポリシロキシルからなる群から選ばれ;アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレンは、O、N、S、またはSiからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0109】
他のこのような態様において、Bは、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアルコキシからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0110】
C.式(I)〜(VI)のポリイオン種の態様
置換基A、Gc、Rc、RA、、R、R、およびRの様々な態様を上に考察してきた。これらの置換基の態様を組み合わせて、式(I)〜(V)の種の様々な態様を形成することができる。上に考察した置換基の態様を組み合わせることにより形成される式(I)〜(V)の種のすべての態様は、本発明の範囲内に含まれる。
【0111】
このような態様は、以下の式に例示されているが、これらに限定されるものではない。
Cl.トリイオン種(Gc=フェニル)
いくつかの態様において、Gcはフェニルであり、3つのRc基で置換されていて、mは3である。これらの態様において、式(II)の種は構造的に式(IIA)〜(IIC)に相当する:
【0112】
【化13】

【0113】
(式中、各AおよびRcは、同じものでも異なるものでもよく、上に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、少なくとも1つのRcはアルキル基である。いくつかのこのような態様において、少なくとも2つのRcはアルキル基である。いくつかのこのような態様において、3つのRcはすべてアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびペンチル基が挙げられる。
【0114】
いくつかのこのような態様において、Rcはアルキルであり、Aはイミダゾリウムである。このようなトリイオン液体塩は、表1に例示されているが、これらに限定されるものではない。上の各トリカチオン液体塩は、それぞれ約−10〜−20℃の融点を有する。
【0115】
いくつかの態様において、3つのRc基はすべて水素である。いくつかのこのような態様において、Aはイミダゾリウムである。このようなイミダゾリウムを有する不飽和のフェニル系トリイオン液体塩は、表2に例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0116】
式(IIA)
いくつかの態様において、式(II)の種は構造的に式(IIA)に相当する:
【0117】
【化14】

【0118】
(式中、各Aは同じものであり、上に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、A基はすべて同じものである。
いくつかのこのような態様において、A基は、イミダゾリウム基、アンモニウム基、ホスホニウム基、ピリジニウム基、およびピロリジニウム基からなる群から選ばれる。
【0119】
いくつかのこのような態様において、Aはイミダゾリウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0120】
【化15】

【0121】
(式中、各Rc、R、R、およびアニオンは、既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、Aはアンモニウムである。いくかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0122】
【化16】

【0123】
(式中、各Rc、R、R、R、R、およびアニオンは、既に定義された通りである)。
他の態様において、ポリイオン液体塩は、アンモニウム基が、1つまたは2つ以上のキラル中心を有する少なくとも1つのアルキル基で置換された、光学的に活性なトリカチオン種を含む。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0124】
【化17】

【0125】
(式中、各RaおよびRcならびにアニオンは、既に定義された通りである)。上記のキラルトリイオン種は、実施例10に記載の手順により合成することができる。
他の態様において、ポリイオン液体塩は、アンモニウム基が、1つまたは2つ以上のキラル中心を有するアリール基を含む基で置換された、光学的に活性なトリカチオン種を含む。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0126】
【化18】

【0127】
(式中、各Rcおよびアニオンは、既に定義された通りである)。上記のキラルトリイオン種は、実施例11に記載の手順により合成することができる。
いくつかのこのような態様において、Aはホスホニウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0128】
【化19】

【0129】
(式中、各Rc、R、R、R、およびアニオンは、既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、少なくとも1つのAはホスホニウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0130】
【化20】

【0131】
(式中、各Rcは、既に定義された通りである)。
上記の中心フェニル基系のトリイオン種は、実施例1および2に記載の手順により合成することができる。なお、式中では水素のみで置換されているように図示されている1個または2個以上の環炭素原子に、1つまたは2つ以上の基をさらに結合させることも可能である。
【0132】
ホスホニウム基を含むフェニル系トリイオン種は表4に例示されているが、これらに限定されるものではない。
いくつかのこのような態様において、Aはピリジニウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0133】
【化21】

【0134】
(式中、各Rc、およびR、およびアニオンは、既に定義された通りである)。
本明細書に記載されている式(II)の全態様において、任意のR、R、R、R、またはRc基が異なる場合、たとえば、上記の分子中、Rが、1つの基ではBrで、2つの基ではClの場合は、もはや対称性がない。直前の式中の3つのRc基のうちの1つが他の基と異なっているが、R基がすべて同じものである場合には、このトリイオン分子は対称でも中心対称でもないが、それでも本発明の一態様である。
【0135】
いくつかのこのような態様において、Aはピロリジニウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0136】
【化22】

【0137】
(式中、各Rc、およびR、ならびにアニオンは、既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、少なくとも1つのAはピロリジニウムである。いくつかのこのような態様において、3つのA基はすべてピロリジニウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0138】
【化23】

【0139】
(式中、各Rcは上に定義された通りである)。
このようなトリイオン液体塩は表3に例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0140】
いくつかの態様において、ポリイオン液体塩は、1つまたは2つ以上のキラル中心を持つピロリジウムを有する光学的に活性なトリイオン種を含む。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0141】
【化24】

【0142】
(式中、各Rcおよび対アニオンは、既に定義された通りである)。(R)−または(S)−は、アステリスク(*)で表されている。上記のキラルトリイオン種は、実施例9に記載の手順により合成することができる。
【0143】
適切な対アニオンは上に定義されたものの中から選ばれる。
いくつかの態様において、トリイオン種は3種の異なるA基を含む。
いくつかの態様において、第1のAは第4級アンモニウムまたはプロトン化第3級アミンであり、第2のAはイミゾダリウム(IM)または置換イミゾダリウムであり、第3のAはピリジニウムまたは置換ピリジニウムである。
【0144】
いくつかの態様において、A基は、イミゾダリウム、アンモニウム、およびホスホニウムから選ばれる。いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0145】
【化25】

【0146】
(式中、各Rc、R、R、R、R、およびR、ならびにアニオンは、既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、式(IIA)の種は構造的に次式に相当する:
【0147】
【化26】

【0148】
(式中、各Rcは既に定義された通りである)。
式(IIB)
いくつかの態様において、ポリイオン液体塩は式(IIB)の対称トリイオン種を含む:
【0149】
【化27】

【0150】
(式中、各Aは同じものであり、既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、A基は同じものである。
いくつかのこのような態様において、A基は、イミダゾリウム、アンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、およびピロリジニウムからなる群から選ばれる。
【0151】
いくつかのこのような態様において、Aはイミダゾリウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIB)の種は構造的に次式に相当する:
【0152】
【化28】

【0153】
(式中、R、R、およびアニオンは、既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、Aはアンモニウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIB)の種は構造的に次式に相当する:
【0154】
【化29】

【0155】
(式中、R、R、R、およびアニオンは、既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、Aはホスホニウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIB)の種は構造的に次式に相当する:
【0156】
【化30】

【0157】
(式中、R、R、R、およびアニオンは、既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、Aはピリジニウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIB)の種は構造的に次式に相当する:
【0158】
【化31】

【0159】
(式中、Rおよびアニオンは、既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、Aはピロリジニウムである。いくつかのこのような態様において、式(IIB)の種は構造的に次式に相当する:
【0160】
【化32】

【0161】
(式中、Rおよびアニオンは、既に定義された通りである)。
上記のC対称中心フェニル系トリイオン種は、実施例12に記載の手順により合成することができる。なお、上記の式中では水素のみで置換されているように図示されている1個または2個以上の環炭素原子に、1つまたは2つ以上の基をさらに結合させることも可能である。
【0162】
式(IIC)
いくつかの態様において、ポリイオン種がイオン基に沿った対称性を有しないように、Gcは非対称である。
【0163】
たとえば、いくつかの態様において、A基は、イオン種がイオン基の間に対称性を有しないような方法でGcに結合している。いくつかのこのような態様において、A基は、環の1、2、および4位の炭素に結合している。
【0164】
いくつかのこのような態様において、ポリイオン液体塩は次式の対称トリイオン種を含む:
【0165】
【化33】

【0166】
(式中、各Aは同じものであり、上に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、すべてのA基が同じものとは限らない。
他のこのような態様において、各Aは同じモノイオン基である。このような式(IIC)の種の例は、構造的に次式に相当する:
【0167】
【化34】

【0168】
(式中、R、R、R、およびR、ならびにアニオンは、既に定義された通りである)。上記の非対称中心フェニル系トリイオン種は、実施例13に記載の手順により合成することができる。
【0169】
C2.テトライオン種(Gc=フェニル)
いくつかの態様において、ポリイオン液体塩はテトライオン種を含み、mは4である。
いくつかの態様において、ポリイオン液体塩はテトライオン種を含み、Gcはフェニルであって1つまたは2つ以上のRc置換基で置換されていてもよく、mは4である。
【0170】
いくつかのこのような態様において、テトライオン種は構造的に式(VIA)〜(VIC)に相当する:
【0171】
【化35】

【0172】
(式中、各Aは上に定義された通りである)。
ポリイオン液体塩は表5に例示されているが、これらに限定されるものではない。
上記の中心フェニル系テトライオン種は、実施例14に記載の手順により合成することができる。
【0173】
いくつかの態様において、テトライオン種は構造的に式(VID)に相当する:
【0174】
【化36】

【0175】
(式中、各Aは既に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、zは1〜20(両端の数値を含む)から選ばれる。
【0176】
いくつかの態様において、少なくとも1つのRcはアルキルである。いくつかのこのような態様において、少なくとも2つのRc基はアルキルである。他のこのような態様において、3つのRc基はアルキルである。さらに他のこのような態様において、4つのRc基はすべてアルキルである。
【0177】
いくつかのこのような態様において、式(VID)の種は構造的に次式に相当する:
【0178】
【化37】

【0179】
上記の中心ピロール系テトライオン種は、実施例15に記載の手順により合成することができる。
【0180】
C2.トリイオン種(Gc=シクロアルキル)
いくつかの態様において、ポリイオン液体塩はトリイオン種を含み、Gcは1つまたは2つ以上のRc置換基で置換されているシクロアルキルで、Rc置換基は既に定義された通りである。
【0181】
いくつかのこのような態様において、3つのモノイオン基Aは同じものである。
いくつかのこのような態様において、Gcはシクロヘキサンで、1つまたは2つ以上のRc置換基で置換されていてもよい。
【0182】
いくつかの態様において、モノイオン基Aは、イミダゾリウム、アンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、またはピロリジニウムであり、Gcは、シクロヘキサンまたは置換シクロヘキサンである。
【0183】
いくつかのこのような態様において、中心シクロヘキサン系トリカチオン塩は、分子構造の骨格として有用であることがわかっている1,3,5−三置換シクロヘキサンを用いて構成されている。
【0184】
いくつかの態様において、ポリイオン種は構造的に次式に相当する:
【0185】
【化38】

【0186】
(式中、各Rcは、既に定義されたRc基のうちのいずれでもよく、Aは既に定義された通りのモノイオン基である)。さらに、2、4、および6位の炭素の位置で既に定義された基のうちのいずれかの基による置換を含むシクロヘキサンでもよい。
【0187】
いくつかの態様において、式(II)の種は構造的に式(IID)に相当する:
【0188】
【化39】

【0189】
(式中、各RcおよびAは、上に定義された通りである)。
いくつかの態様において、式(II)の種は構造的に式(IIE)に相当する:
【0190】
【化40】

【0191】
(式中、各RcおよびAは、上に定義された通りである)。
いくつかの態様において、式(IIE)の種は構造的に次式に相当する:
【0192】
【化41】

【0193】
【化42】

【0194】
(式中、Rc、R、R、R、R、およびアニオンは、既に定義された通りである)。上記の中心シクロヘキサン系トリイオン種は、実施例3および4に記載の手順で合成することができる。なお、上記の式ではHのみで置換されているように図示されている1個または2個以上の環炭素原子に、1つまたは2つ以上の基をさらに結合させることも可能である。このような中心シクロヘキサン系トリカチオン種を含むトリイオン液体塩は、表6に例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0195】
C3.トリイオン種(Gc=CまたはSi)
いくつかの態様において、ポリイオン液体はトリイオン種を含み、GcはCおよびSiからなる群から選ばれる。このような種はC−Gc系またはSi−Gc系トリイオン種と呼ばれる。
【0196】
いくつかのこのような態様において、3つのA基は同じものであり、既に定義された通りである。
いくつかの態様において、式(II)の種は構造的に式(IIF)のC−Gc系トリイオン種に相当する:
【0197】
【化43】

【0198】
(式中、各Aは、上に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、Aは、イミダゾリウム、アンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、およびピロリジニウムからなる群から選ばれる。いくつかのこのような態様において、式(IIF)の種は構造的に次式に相当する:
【0199】
【化44】

【0200】
(式中、R、R、R、R、およびアニオンは、既に定義された通りである)。上記の中心炭素系トリイオン種は、実施例5および6に記載の手順により合成することができる。なお、メチル基(−CH)の存在は、上記のトリイオン種が対称でも中心対称でもないことを意味する。このようなC−Gc系トリイオン種を含むポリイオン液体塩は、表7に例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0201】
C4.トリイオン種(Gc=NまたはP)
いくつかの態様において、ポリイオン液体はトリイオン種を含み、GcはNおよびPからなる群から選ばれる。このような種は、N−Gc系またはP−Gc系トリイオン種と呼ばれる。
【0202】
いくつかの態様において、GcはPである。
いくつかの態様において、GcはNである。
いくつかのこのような態様において、3つのA基はすべて同じものであり、既に定義されたモノイオン基のいずれでもよい。
【0203】
いくつかの態様において、式(II)の種は構造的に式(IIG)のN−Gc系トリイオン種に相当する:
いくつかの態様において、式(II)の種は構造的に式(IIG)に相当する:
【0204】
【化45】

【0205】
(式中、各Aは上に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、A基は同じものである。
いくつかのこのような態様において、モノイオン基Aは、イミダゾリウム、アンモニウム、ホスホニウム、およびピリジニウムからなる群から選ばれる。
【0206】
いくつかのこのような態様において、式(IIG)の種は構造的に次式に相当する:
【0207】
【化46】

【0208】
(式中、R、R、R、R、およびアニオンは、既に定義された通りである)。上記の中心炭素系トリイオン種は実施例7および8に記載の手順により合成することができる。各イオン中の置換基がすべて同じものだとすると、これらのトリイオン種は対称および中心対称のどちらでもあると考えられる。このようなN−Gc系種は表8に例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0209】
いくつかの態様において、式(II)の種は構造的に式(IIH)に相当する:
【0210】
【化47】

【0211】
(式中、各tは1〜20(両端の数値を含む)から独立に選ばれ;各Aは既に定義された通りである)。このようなトリイオン種は表9に例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0212】
C5.トリイオン種(Gc=アルキル)
いくつかの態様において、式(II)の種は構造的に式(IIJ)に相当する:
【0213】
【化48】

【0214】
(式中、各Aは上に定義された通りである)。
いくつかのこのような態様において、Aはアニオン基である。
いくつかのこのような態様において、各Aは、カルボキシラート基、スルホナート基及びスルファート基からなる群から独立に選ばれ;このような各置換基は、アルキル、カルボシクリルおよびヘテロシクリルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基と置換されていてもよい。このようなトリアニオン種は表10に例示されているが、これらに限定されるものではない。このトリアニオン種は実施例16に記載の手順により合成することができる。
【0215】
他のこのような態様において、Aはカチオン基である。これらの態様において、カチオン基は、既に定義されたもののいずれでもよい。
【0216】
C6.非中心基種
典型的な式(III)の種は、実施例17および18に記載の手順により合成することができる。このようなトリイオンNCGP種は、表11に例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0217】
いくつかの態様において、式(V)の種は構造的に次式の1つに相当する:
【0218】
【化49】

【0219】
(式中、各vは、1〜20(両端の数値を含む)から独立に選ばれる)。
式(V)の種は、実施例19に記載の手順により合成することができる。2つの遊離第4級基が結合して環を形成する、環化したものも合成することができる。
【0220】
C7.種の例
式(I)〜(VI)の例は、以下の表1〜11に示されている。以下の合成例は、これらの種のうちのいくつかについての段階的な調製方法に関する説明である。
【0221】
【表1】

【0222】
【表2】

【0223】
【表3】

【0224】
【表4】

【0225】
【表5】

【0226】
【表6】

【0227】
【表7】

【0228】
【表8−1】

【0229】
【表8−2】

【0230】
【表9】

【0231】
【表10】

【0232】
【表11】

【0233】
C.溶媒としてのポリイオン液体塩
本発明は、本発明による1種または2種以上のポリイオン液体を含む溶媒も対象とする。
【0234】
いくつかの態様において、溶媒は1種のポリイオン液体塩を含む。
他の態様において、溶媒は2種以上のポリイオン液体塩を含む。
本発明のポリイオン液体塩は、担体または溶媒として、純粋なまたは実質的に純粋な形で用いることができる。この文脈において「実質的」は、不都合な不純物がわずか約10%以下しか含まれないことを意味する。状況からわかるように、このような不純物は、他の不都合なポリイオン塩、反応の副産物、汚染物質等の場合もある。2種以上のPILSを意図的に混合したものの場合は、どちらのPILSも不純物とみなさない。ポリイオン液体塩は不揮発性で安定なため、回収再利用され、揮発性の有機溶媒の場合のような不都合はほとんど起こらない。広い液体範囲(いくつかの例では400℃を超える)に渡る安定性のため、ポリイオン液体塩は、加熱と冷却の両方を必要とする化学合成で用いることができる。実際に、これらの溶媒は、ある種の化学合成の複数の反応工程のすべてに適応することができる。言うまでもなく、これらのポリイオン液体は、共溶媒およびグラジエント溶媒を用いる溶媒系で用いてもよく、これらの溶媒としては、キラルイオン液体、キラル非イオン液体、揮発性有機溶媒、不揮発性有機溶媒、無機溶媒、水、油等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリイオン液体を用いて、溶液、懸濁液、エマルジョン、コロイド溶液、ゲル溶液、および分散液を調製することも可能である。本発明によるポリイオン塩は、異なるポリカチオン種同士、異なるアニオン種同士、およびポリカチオン種とポリアニオン種との混合物を含む任意の混合物で用いてもよい。さらに、本発明の1種または2種以上のポリイオン液体塩は、その本文を参照により本明細書に組み込む米国特許公開公報第2006/0025598号に記載のジイオン液体塩と混合してもよい。
【0235】
個々のポリイオン液体塩に加えて、これらの物質のポリマーを生成することが可能である。ポリマーは、骨格内にまたはペンダント基としてポリイオン液体塩を含んでいてもよく、架橋されていても非架橋でもよい。
【0236】
溶剤および反応の溶媒として有用であるほか、本発明のポリイオン液体塩を、たとえばガス−液体クロマトグラフ測定の固定相として用いて、分離を行うことができる。不飽和基を有するポリイオン液体塩は、架橋および/または固定化されていてもよい。たとえば、ポリイオン液体塩は、キャピラリー(または固体支持体)を被覆していてもよく、さらに、後で重合および/または架橋されてもよい。
【0237】
実際に、本発明の一側面において、1種または2種以上の安定性の高いポリイオン液体塩を含む固定化イオン液体が、(モノイオン物質なしにあるいはモノイオン物質と一緒に)特にガスクロマトグラフ測定における固定相として提供される。これらの固定相は、高選択性、高安定性で、温度分解に対して高い耐性を持つ。これらの物質は、非架橋(固体支持体またはカラム表面に吸着または吸収されていることを意味する)でもよく、「部分的に」架橋、または「より高度に」架橋(固体支持体またはカラムに「固定化」されていることを意味する)されていてもよく、ポリイオン液体塩とジイオン物質および/またはモノイオン物質との混合物で構成されていても、完全に本発明によるポリイオン液体塩で構成されていてもよい。非架橋固定相の場合、用いられるポリイオン塩は、飽和分子でも不飽和分子でも、または両方の混合物でもよい。ただし、特にいくらかの量の不飽和ポリイオン液体塩を用いる場合や、とりわけ加熱して固定相を固定する場合、または使用中に固定相を加熱する場合には、GC操作中などにある程度の架橋が起こり得ると考えられる。本発明による「部分的に」架橋された固定相により、より高安定性で高選択性の固定相が製造でき、約280℃までの温度で高効率の分離が可能になる。「部分的に架橋された」固定相においては、モノイオン種とポリイオン種の混合物が存在していてもよく、用いられるポリイオン液体塩の量は用いられるモノイオン種の量以下である。本発明による「より高度に」架橋された固定相により、350℃まで、さらに350℃を超える温度でさえ、優れた効率および安定性が得られる。「より高度に架橋された」固定相においては、ポリイオン種(ポリイオン液体/塩)の量は、いかなるモノイオン種の量よりも多くなる。実際に、より高度に架橋された固定相は、実質的に排他的に(90%以上)本発明による固定化ポリイオン液体塩で構成されることが好ましい。実際に、より高度に架橋された固定相は、純粋にポリイオン液体塩であることが好ましい。どちらの場合でも、用いられるモノイオン種、ジイオン種、およびポリイオン種は、不飽和部分を含むことが好ましい。モノイオン種は、一般に単一の多重結合を有し、ジイオン液体塩は、一般に2つ以上の多重結合(2重結合/3重結合)を有し、ポリイオン液体塩は、一般に3つ以上の多重結合(2重結合/3重結合)を有する。言うまでもなく、ポリイオン種またはジイオン種は、単一の不飽和結合だけを有する場合もある。これらの不飽和結合により、架橋が可能になるだけでなく、固定化も容易になる。特に非架橋固定相の場合には、飽和種および不飽和種の混合物も用いることができる。
【0238】
特定の一態様において、固定相は、キラルであり光学的に富化されているポリイオン種で構成されている。さらに、イオン液体がカラム中で固定相として架橋および/または固定化しても、または、SPE、SPME、特定課題向けSPEまたはSPME、SPME/MALDI、イオン交換分析およびヘッドスペース分析、あるいは他の分析または分離方法用の固体支持体に架橋および/または固定化しても、固定相の選択性には影響しないようであり、このため、その二面性のある保持挙動が保たれている。
【0239】
また、ガスクロマトグラフ測定、特にキャピラリーGCのための固定相は、本発明の特定の一側面であるが、また、ポリイオン液体塩は、単独で、あるいはモノイオン液体塩および/またはジイオン液体塩と組み合わせて、たとえば液体クロマトグラフ(LC)および高速液体クロマトグラフ(HPLC)を含む他の形態のクロマトグラフ測定で固定相として用いることができる。固定相、この固定相を含む固体支持体および/またカラムの形成方法が意図されているだけでなく、固定相、固体支持体、およびカラムそれ自体、ならびにクロマトグラフ測定、他の分析または分離方法での、これらの固定相を含むカラムおよび固体支持体の使用も、本発明の特定の側面といえる。
【0240】
このように、本発明による1種または2種以上のポリイオン液体塩は、クロマトグラフ以外にも分析および分離技術で用いることができ、これらの技術のすべては、本発明の応用の一部であるとみなされる。たとえば、本発明によるポリイオン液体塩は、固相抽出(SPE)、固相マイクロ抽出(SPME)、特定課題向けSPME(task-specific SPME:TSSPME)、および固相マイクロ抽出/MALDIとして知られる特定の質量分析、さらにイオン交換およびヘッドスペース分析で用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明は、イオン液体塩の使用、特にこれらの技術でのポリイオン液体塩の使用を含むだけでなく、イオン液体塩、特にポリイオン液体塩が吸着、吸収または固定化されている固体支持体、さらに、ポリイオン液体塩などのイオン液体塩を取り込むピペット、自動ピペット、シリンジ、マイクロシリンジ等の、分析または分離技術で用いることができる抽出装置を含む。固体支持体としては、イオン液体塩で被覆された混合粒子床が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらは、SPE、SPME、SPME/MALDI、およびイオン交換分析のためのクロマトグラフ測定の媒体として用いることができる。粒子は、たとえば、シリカ、炭素、複合粒子、金属粒子(ジルコニア、チタニア等)、ならびに、たとえば、チューブ、ピペットチップ、ニードル、バイアル、および他の一般的な容器に収容された機能化粒子等からなる。
【0241】
さらに他の態様において、本発明は、約400℃以下の固体/液体変態温度を有するポリイオン液体塩(他に指示がないない限り、「液体」は、室温(25℃)または固体/液体変態温度(400℃以下)を超える温度のいずれかにおける液体塩を意味する)を提供し、このポリイオン液体塩は、架橋基で分離された2つのモノイオン基、および2つのモノイオン対イオンまたは少なくとも1つのポリイオン対イオンのいずれかを含む。一態様において、2つのモノイオン基は、両方ともカチオン性またはアニオン性であり、他の態様において、これらはジェミナル(同じもの)である。カチオン性の場合には、これらの基は、第4級アンモニウム、プロトン化第3級アミン、チオニウム、ホスホニウム、またはアルソニウム基であり、置換または非置換で飽和または不飽和の直鎖状または分枝状、環状または芳香族基であることが好ましい。アニオン性の場合には、これらの基は、カルボキシラート基、スルファート基またはスルホナート基であり、置換または非置換で飽和または不飽和の直鎖状または分枝状、環状または芳香族基であることが好ましい。特定の一態様において、これらのポリイオン液体塩は、少なくとも1つの不飽和結合を含み、この不飽和結合により、架橋および/または固定化が容易になる。
【0242】
他の態様において、1種または2種以上のポリイオン液体塩は、この塩と混合される固体または液体の溶解、懸濁、または分散のための溶媒として、または化学反応の反応溶媒として用いることができる。どちらも溶媒という語で表される。特定の一態様において、溶媒は、上に述べたような、約500℃以下、より好適には約400℃以下の固体/液体変態温度を有するポリイオン液体塩、および約200℃以上の液体範囲を有するポリイオン液体を含み、他の態様において、安定性は、約200℃以下の温度で実質的に不揮発性であることで評価される。ポリイオン液体塩とこれらから形成された溶媒はいずれも、キラルであってもよく、光学的に富化されていてもよい。
【0243】
D.装置
本発明は、一つには、固体支持体およびこの固体支持体上に吸着、吸収または固定化されている本発明による1種または2種以上のポリイオン液体塩を含む化学的分離または分析のための装置も対象とする。特定の一態様において、本発明の装置は、シリンジ、中空ニードル、プランジャー、およびシリンジに取り付けられている固体支持体を含む。
【0244】
本発明の他の態様は、化学的分離または分析に有用な装置であり、この装置は固体支持体、および上記のようにこの固体支持体上に吸着、吸収、または固定化されている1種または2種以上のポリイオン液体塩を含む。この装置は、HPLC、GC、または超臨界流体クロマトグラフ測定(SFC)で用いられるカラムであってもよく、固体支持体は、クロマトグラフカラムに充填されるか、ガスクロマトグラフ測定に有用なキャピラリーカラムである。
【0245】
この装置は、内部空間を画定する中空ニードルを有するシリンジであってもよく、このニードルは円筒部の一端にあり、プランジャーは円筒部内にあり、固体支持体はシリンジに取り外し可能あるいは不可能な状態に取り付けられ、組み込まれ、または貼り付けられ(まとめて「取り付けられ」と称する)て、プランジャーが円筒部から後退すると固体支持体がニードルの内部空間に後退し、プランジャーが円筒部中に挿入されると固体支持体がニードル内から露出するようにする。一態様において、このシリンジはマイクロシリンジである。いくつかの態様において、これらの装置で用いられる1種または2種以上のポリイオン液体塩は、本発明のポリイオン液体塩と単に混合された、または本発明のポリイオン液体塩に架橋されたモノイオン物質および/またはジイオン物質も含む。これらは、固体支持体上に吸着、吸収、または固定化されていてもよい。固定化される場合、これらのイオン種は不飽和基を含むことが好ましい。
【0246】
E.使用方法
本発明は、一つには、本発明の1種または2種以上のポリイオン液体塩を分析および分離技術で用いる方法も対象とし、これらの技術には、液体クロマトグラフ測定(LC)、高速液体クロマトグラフ測定(HPLC)、固相抽出(SPE)、固相マイクロ抽出(SPME)、特定課題向けSPME(TSSPME)、および固相マイクロ抽出/MALDIとして知られる質量分析、ならびにイオン交換およびヘッドスペース分析などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0247】
他の一態様において、1種の化学物質を複数の化学物質混合物から分離する方法が提供され、この方法は、少なくとも1種の第1の化学物質と少なくとも1種の第2の化学物質との混合物を準備すること、この混合物を、上記のような装置を使用して、上記のような1種または2種以上のポリイオン液体塩を含む少なくとも1種の固体支持体に接触させて、第1の化学物質の少なくとも一部を固体支持体上にしばらくの間保持すること、を含む。この文脈において「保持(retention)」とは、恒久的であることを意味しない。分離は、シリンジ装置中で試料を装置から除去すること、または第2の化学物質を排出することにより起こる。クロマトグラフ測定カラムの場合、第1の化学物質は第2の化学物質とは異なる比率で吸着または吸収され、より大きい比率でもより小さい比率でもよく、こうして分離が起こる。両方の物質とも移動相によりカラムを通過移動し、移動相は液体でもガスでもよく、固定相(固体支持体上のイオン液体物質)と異なる比率で相互作用することにより分離が起こる。このことが、クロマトグラフ測定に関する文脈において「保持」の意味することである。ただし、特定のタイプのクロマトグラフ測定では、第1の化学物質は固定相に結合するが、第2の化学物質は固定相に結合せずに、移動相によりカラムの中を移動して溶離する可能性もある。第1の化学物質は別々に溶離または除去されてもよく、このことも「保持」の語に包含される。
【0248】
塩化メチレン、アセトン、酢酸エチル、ペンタン、クロロホルム、メタノール、およびこれらの混合物の溶剤を用いた0.15〜0.45%(w/w)の範囲の濃度のコーティング溶剤を用いて、イオン液体を静電コーティング法(static coating)により40℃で被覆することができる。イオン液体の被覆の完了後、カラムをヘリウムで洗浄し、100℃まで焼く。次いで、ナフタレン(n−炭化水素またはGrob試験用混合物のような他の分子もこの目的のために使用できる)の効率を評価して、単量体イオン液体の固定相の被覆効率を調べる。被覆効率が十分であると考えられる場合は、次いで、常温でカラムをアゾ−tert−ブタン(フリーラジカル開始剤)の蒸気で洗浄する。蒸気で洗浄後、カラムを両端で融合し、炉中で温度勾配を用いて200℃まで5時間加熱する。カラムを徐々に冷却し、次いで両端を再び開け、ヘリウムガスで洗浄する。一晩中ヘリウムガスで洗浄した後、カラムを200℃まで加熱し調整する。調整後、ナフタレンを用いて100℃でカラム効率を調べ、薄膜で被覆された固定相を顕微鏡で調べる。なお、架橋の過程でもしばしば固定化が起こる場合がある。本発明の文脈において、「固定化」は、支持体、または他のイオン液体(ポリイオン液体塩を含む)、あるいはその両方に、共有結合またはイオン結合していることを意味する。このことは、固体支持体上に吸着または吸収しているイオン液体と比較される。これらの特定例における固体支持体は、カラム(たとえば、カラムの壁)を含むことを意味した。
【0249】
ただし、これらの物質をGCで使用する前に架橋しておく必要はない。これらの物質は、カラム中または実際に任意の固体支持体に吸着または吸収されていてもよい。ただし、高温ではこれら物質の粘性が減少することがあり、いくつかの例においては、これらの物質は液滴として流れて採集され、このことがカラムの特性を変化させる場合がある。固定化または部分的な架橋は、固定相被覆膜の蒸気圧も減少させ、このことによりカラムからの液体流出が低下するため、固定相およびカラムの有効温度の上限が上昇する。
【0250】
他の方法は、単量体重量の2%までの量の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)フリーラジカル開始剤を単量体のコーティング溶剤に加えることを含む。次いで、キャピラリーカラムをこの溶剤で充填し、静電コーティング法により被覆する。被覆後、キャピラリーカラムの両端を密封し、炉に入れて200℃までの温度で5時間調整する。カラムを徐々に冷却し、両端を再び開けて、ヘリウムガスで洗浄する。ヘリウムガスで一夜洗浄した後、カラムを200℃まで加熱し調整する。調整後、ナフタレンを用いて100℃でカラム効率を調べ、固定相被覆膜を顕微鏡で調べる。
【0251】
アルケンのフリーラジカル重合だけでなく、カチオンの芳香環、2個のカチオンをつなぐ(ジカチオンを形成する)結合鎖、あるいはアニオンに結合する他の官能基が関与する他の重合反応も実現できる。このような反応例としては、カチオン性およびアニオン性連鎖成長重合反応、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒重合、および逐次反応重合が挙げられる。2つの異なる単量体を用いて付加共重合反応およびブロック共重合反応による共重合体を形成することもできる。さらに、縮重合を用いてアミンおよびアルコールのような官能基の間を結合することもできる。以下の2つの参考文献で考察されている共重合および架橋反応はすべて用いることができる:"Comprehensive Polymer Science - The Synthesis, Characterization, Reactions and Applications of Polymers" by Sir Geoffrey Allen, FRS; 及び "Comprehensive Organic Transformations: a guide to functional group preparations" by Richard C. Larock. 2nd Edition. Wiley-VCH, New York. Copyright, 1999。
【0252】
本発明の別の側面に従い、イオン液体単量体のフリーラジカル反応により、架橋および/または固定化された固定相および同じ固定相を含むカラムだけでなく、より耐久性があり頑健な固定相を提供することを含む処理工程を提供する。少量のフリーラジカル開始剤を用いてイオン液体固定相を部分的に架橋させることにより、高温に耐えることができ、カラム流出が少ない高効率のキャピラリーカラムが生成される。特に一部が架橋されたイオン液体固定相混合物を用いて、低い温度から中度の温度(30℃〜280℃)で高選択性および高効率の分離を行うことができることがわかった。これらの固定相は、「ゼリー状」で「半液体」の無定形な状態を保持している。より高温(300℃〜400℃)で行われる分離では、高選択性および高効率でカラム流出の少ない分離を行うため、より高度に架橋/固定化された固定相が適切である。これらの2つの固定相タイプについて、異なる官能基を有するイオン液体塩の混合物および開始剤の濃度の効果が研究されている。固定相の固有の選択性を損なうことなく、これらの分離効率、熱安定性、およびカラムの耐用寿命を最大限にするという目標が達成された。
【0253】
以下の物質を用いて、本発明によるポリイオン液体塩を含む架橋された固定相を調製することができる:1−ビニルイミダゾール、1−ブロモヘキサン、1−ブロモノナン、1−ブロモドデカン、1,9−ジブロモノナン、1,12−ジブロモドデカン、1−ブロモ−6−クロロヘキサン、1−メチルイミダゾール、N−リチオトリフルオロメタンスルホンイミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジクロロメタン、および酢酸エチル。
【0254】
室温イオン液体塩は応用範囲の広い優れたガスクロマトグラフ測定の固定相として二面性のある保持挙動を示すことが既に説明されている。つまり、イオン液体の固定相は、極性分子と非極性分子の両方を単一のカラムで効率よく分離することが示されている。部分架橋された、またはより高度に架橋された固定相のどちらかを生成することにより、興味深いことに、これらの固定化された類似体によってもイオン液体に固有の溶媒和熱力学的挙動および溶媒和相互作用がなお保持されていることが確かめられる。
【0255】
もちろん、本発明のイオン液体および特にポリイオン液体塩は、他の分離および分析技術にも用いることができる。これらの応用範囲は決してクロマトグラフ測定に限定されるものではない。これらの物質を用いることができる技術の一つが固相抽出(Solid Phase Extraction(SPE)である。SPEにおいて、試料は、分離、同定および/または定量すべき不純物もしくは何らかの他の化合物、または分析物を含む。この試料を、本発明のポリイオン液体塩、より広義には固定化された形態のイオン液体の存在する容器に入れる。イオン液体物質は、容器の壁に結合(固定化)されるか、または、容器の底部に置かれるか液体クロマトグラフ測定カラムが固定相で充填される場合と同じように容器全体に充填されるビーズまたは他の構造を形成するように、ビーズあるいは他の構造の表面に吸着または吸収される。あるいは、本発明のイオン液体、特にポリイオン液体塩は、本明細書に記載の架橋または類似の固定化反応により、ビーズ、粒子および/または既述のクロマトグラフ測定で用いられる他のクロマトグラフ媒体のようないくつかの種類の他の固体支持体に固定化されてもよい。これらのビーズも、液体クロマトグラフ測定に用いられる充填カラムと同様に、容器の底部にあっても、または容器を満たしていてもよい。言うまでもなく、固体支持体は任意の構造で容器内のどこにあってもよい。
【0256】
特定の一態様において、容器は実際にはシリンジであり、イオン液体および/またはポリイオン液体塩は、フィルターと同様に、何らかの方法でシリンジの底部に貼り付けられ、または配置されている。シリンジのニードルが試料中にあるとき、プランジャーが引き出されると真空が形成されて、試料がシリンジの円筒部中に吸い出される。この物質は、本発明による少なくとも1種のイオン液体、特にポリイオン液体塩の薄膜を通過して、少なくとも1種の液体の構成要素と結合する。次いで、この液体試料は、あふれ出し、またはプランジャーで押し出されて、後者の場合には円筒部の底部にあるイオン液体またはポリイオン液体塩を通過して戻される。
【0257】
この液体に関して、本発明のイオン液体またはポリイオン液体塩によって保持される特定の物質の存在、または不存在のいずれかを分析する。あるいは、(物質を異なる溶媒中に入れるような方法により)保持された物質を取り除いても取り除かなくてもよく、あるいは、他の手段により分析的に検討してもよい。同じ技術を、分取的な方法および/または大量精製の手段として同様に用いてもよい。
【0258】
本発明の固定化されたイオン液体およびポリイオン液体を用いる他の技術として、固相マイクロ抽出すなわちSPMEがある。おおまかにいえば、これらの技術において、分離物質(この場合、本発明によるイオン液体、または特にポリイオン液体塩、あるいは吸着剤、粒子、および他のクロマトグラフ媒体と混合されたイオン液体)は、様々な方法で、ファイバー(たとえば、ポリジメチルシロキサン/ジビニルベンゼン(PDMS/DVB)ファイバー)、または何らかの他の固体支持体(通常ガスクロマトグラフ測定で用いられるようなマイクロシリンジのプランジャーに一般に塗布される被覆剤または薄膜として、プランジャーに塗布される)上に、吸着、吸収または固定化される。本発明のジイオン液体塩は、プランジャー以外に何も分離固体支持体がなくても、直接固定化させ付着することができる。これは、たとえば直接薄膜を用いて行うことができる。本発明の場合、固定化されたイオン液体、ならびに吸着、吸収、および固定化されたポリイオン液体塩を用いてもよい。プランジャーを押し下げ、ファイバーを露出させ、対象とする試料に浸す。次いで、プランジャーを引込めて、ファイバーを、シリンジの円筒内か、あるいは少なくとも保護または輸送のためのニードルの筒内に引き戻す。次いで、ガスクロマトグラフ装置のセプタムまたは他の装置からシリンジで試料を注入し、このとき、マイクロシリンジのプランジャーを再び押し戻すことによりファイバーをカラム内に挿入する。GCで用いられる熱により、閉じ込められた試料が揮発または放出されて、移動相によりGCカラム中を運ばれ、分離および/または同定が可能になる。試料は、HPLCの注射器または非緩衝式キャピラリー電気泳動装置における移動相によっても溶離する。本発明の固定化イオン液体およびジイオン液体塩は、より高性能なSPMEである被覆撹拌棒抽出技術とともに用いてもよい。この被覆撹拌棒抽出技術のいくつかの態様は、TWISTERという商標のもとで販売されている。
【0259】
より具体的には、固相マイクロ抽出は、少量の抽出相(この場合、本発明によるイオン液体、好適にはポリイオン液体塩)を固体支持体上に配置し、しばらくの間試料に接触させる技術である。試料を撹拌しない場合には、試料基質と抽出相との間の分配は平衡に達している。対流が一定の場合、短時間の平衡前抽出が起こり、抽出された分析物の量は時間と相関がある。次いで、被覆剤中の分析の時間的な累積に基づいて定量する。これらの技術は、通常、被覆ファイバー(たとえば、キャピラリーGCまたはキャピラリー電気泳動装置で用いられるものと類似する溶融シリカ、ガラスファイバー、ワイヤー、金属または合金ファイバー、ビーズ等)、容器、撹拌円板等を用いる方法のような開放床の抽出概念を用いて行われる。ただし、管内(in-tube)抽出方法も示されている。管内抽出法では、抽出相でキャピラリーの内壁を被覆することが必要であり、対象とする分析物を含む試料はキャピラリーに導入され、分析物は抽出相に分配される。このように、物質は、ニードルの内壁を被覆してもよく、たとえば、別個の固体支持体の必要なしにニードルに注入できる。
【0260】
図1は、SPME装置1の一例である。たとえば溶融シリカロッド60の外径よりもわずかに大きい内径を有するステンレス製マイクロチューブ40を用いる。ステンレスの代わりに、ニチノール(Nitinol:ニッケル/チタン合金)のような他の不活性金属もSPMEで用いることができる。典型的には、1.5cmの長さのファイバーから最初の5mmを取り除き、マイクロチューブに挿入する。高温のエポキシ樹脂接着剤を用いてファイバーを恒久的に組み込む。接着剤を用いずにファイバーをシリンジのプランジャーに圧着させてもよい。次いで、標準的なシリンジによる注入と全く同様に、試料の注入を行う。プランジャー30の動作により、ファイバー60は抽出および脱着中に露出され、貯蔵中及びセプタムを貫通する間はニードル20中で保護される。10はマイクロシリンジの円筒部を示し、50はシリコンファイバーを組み込んだステンレス製マイクロチューブの最端部を示す。
【0261】
本発明によるSPMEに有用なシリンジの他の態様は、図2に示されている。シリンジ2は、短いステンレス製マイクロチューブ130で形成されてもよく、ファイバーを担持する。もう一つのより大きなチューブ120は、ニードルとして働く。セプタム110は、マイクロチューブ130とニードル120との間の接合部の密閉に用いられる。シリカファイバー140は、マイクロチューブ130の一端から露出し、他端はプランジャー100で塞がれている。プランジャー100を引き出すと、マイクロチューブ130とファイバー140が装置の円筒部のニードル120中に引っ込む。プランジャー100を押し込めると、この過程が逆転する。これらは典型的な構造であり、内部表面にイオン液体が固定化されたニードルまたはチューブを含む任意のシリンジ装置であってもよい。
【0262】
さらに、本発明による1種または2種以上のポリイオン液体塩は、キャピラリーGCカラムの製造に関連して既に考察されたように、それら自体で、および/または固定担体に結合または架橋することにより、固定化され得る。ただし、このように固定化するためには、用いられる種は固定化をもたらす反応のための少なくとも1つの不飽和基を有するべきである。
【0263】
もう一つのSPME技術は、特定課題向けSPMEすなわちTSSPMEとして知られている。特定課題向けSPMEにより、分離または除去が可能になり、特定の種が検出できる。これらの特定の種としては、たとえば水銀およびカドミウムが挙げられるが、この技術は他の物質にも同様に適用できる。この概念は、SPMEに関して既述のものとまったく同じである。ただし、この例において、用いられるイオン液体またはポリイオン液体は、特定の種と特異的に相互作用するように、さらに改質される。後に示されるものは、たとえば、カドミウム(Cd2+)および/または水銀(Hg2+)の検出に用いることができる。第1のモノカチオン物質は、既述のように、ファイバーの表面に被覆、吸着または吸収される。ポリカチオン液体塩も、公知の方法で吸着または吸収されてもよい。
【0264】
最後に、特定の試料は、本発明によるイオン液体、および好適にはポリイオン液体塩を含む基質中に懸濁されてもよい。この基質は、上記のようにSPMEシリンジのファイバーに充填または固定化されてもよく、次いで質量分析装置に注入され、SPME/MALDI質量分析法[参考文献55]として知られる技術が行われる。この基質は、UVレーザーに暴露される。これにより、GC内で熱処理が行われる場合のように、試料が揮発または放出する。こうして試料が質量分析装置中に入り、分析される。
【0265】
ポリイオン性アニオンも、モノカチオンまたはポリカチオンのどちらかと一緒に用いて種々の異なるイオン液体の組み合わせを形成することができる。ポリカチオンを用いる場合、いずれを用いても電荷平衡が保たれなくてはならない。ポリアニオン性アニオンは、ジカルボン酸型(すなわち、コハク酸、ノナン二酸、ドデカン二酸等)のものであってもよい。
【0266】
更なる一態様において、本発明は、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)を用いて荷電分子を検出する方法を提供する。1種または2種以上のポリイオン液体塩を試薬として用いて、ESI−MSによる正モードで、荷電アニオンを検出することができる。この方法では、反対の電荷を有する適切な量の本発明のポリイオン種を試料に加える。試料中の検出すべき荷電種は、同様にたとえば+2または−2の電荷を有するポリイオン種であってもよいが、そうである必要もない。ポリイオン種および荷電分子は、塩錯体を形成する。この塩錯体は一般に固体である。ポリイオン種は、錯体が純電荷を有するように、検出すべき荷電分子よりも少なくとも1価以上の反対の電荷を含む。好適には、ポリイオン種は、錯体が+1または−1の純電荷を有するように、検出すべき荷電分子よりもわずかに1価だけ大きい反対の電荷を含む。ただし、+2、または−2、あるいはさらに大きな電荷の差でも用いることができる。次いで、ESI−MSを用いて錯体を検出する。錯体の形成により、荷電分子はより大きな質量電荷比m/zを有するイオンに転換され、電荷比はESIによる質量識別のためにより高効率に変化され得る。このような試薬としてポリイオン液体塩を用いることの利点としては、(a)アニオンが化学的ノイズに左右される低質量領域を脱して高質量領域に移動すること、(b)四重極計器(たとえばトラップ類)の低質量カットオフ域付近の質量を有するアニオンの反応性が増加すること、および(c)同じ質量電荷比を有する干渉物質から識別するのに役立つこと、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ESI−MSは、単独で、または上に述べたような分離方法と組み合わせて用いることができる。
【0267】
他の特定の態様において、この方法は、所望の組成および構造、たとえば所望の数の荷電基、所望の荷電基の構造および所望の質量、またはそれらの組み合わせを有するポリイオン種を選択することを含む。ポリイオン種中の荷電基は、検出すべき荷電分子の組成および構造に基づいて選択できる。好適には、ポリイオン種は、検出すべき荷電分子に対して特異的である。したがって、ポリイオン種の荷電基は、検出すべき荷電分子と強く結合するようなものが好ましい。より好適には、ポリイオン種の荷電基は、試料中の他の荷電分子とは強く結合しないようなものがよい。対象とする荷電分子に対して特異的なポリイオン種を用いることにより、荷電分子を高い選択性で検出できる。2種以上の異なるイオン基を有するポリイオン種を用いると、検出のために異なる複数の分子への親和性を調整するという点で特に有利である。
【0268】
ポリイオン種の質量を選択して、質量分析による最適な検出を行うことができる。一般に大きな質量を有するポリイオン種が用いられる。特定の一態様において、ポリイオン種は、その錯体が少なくとも50のm/z値を有するように選択される。市販の単体の四重極質量分析計の大部分は、m/z値が100よりずっと高いときに最適性能を発揮するように設計されている。したがって、他の特定の態様において、ポリイオン種は、その錯体が100よりずっと高いm/z値、たとえば少なくとも約200、少なくとも300、または少なくとも400のm/z値を有するように選択される。当業者は、ポリイオン種の質量が架橋基の大きさだけでなく荷電基の大きさによって決まることを理解できるであろう。これら基のうちの1つまたは2つ以上を変更して、所望の質量のポリイオン種を得ることができる。より好適には、ポリイオン種は、その錯体が+1または−1、すなわちz=1の純電荷を有するように、検出すべき荷電分子よりもわずかに1価だけ大きい反対の電荷を有する。zの値が小さくなるほど、m/z値が大きくなり、検出性能が最適化される。たとえば、−2の荷電分子を検出するには、荷電分子と+1の純電荷を有する錯体を形成するトリカチオン種を用いることが好ましい。
【0269】
更なる一態様において、この方法は、高収率で解離するポリイオン液体塩を選択する工程を含む。この工程は、適切な対イオンを含むポリイオン液体塩を選択することにより達成される。所望のイオン基を有するがさほど所望されない対イオンを有するポリイオン液体塩の場合は、イオン交換により所望の対イオンを含むポリイオン液体塩に転換することができる。特定の一態様において、カチオン種のフッ化物塩はESI−MSのための試薬として用いられるが、もし入手できない場合は、アニオン交換によって、ジハロゲン化物塩、臭化物塩、またはヨウ化物塩から転換することができる。
【0270】
他の態様において、この方法は、さらに、ポリイオン種を添加する前にイオンクロマトグラフを行う工程を含む。
特定の一態様において、本発明は、本発明のトリカチオン種を用いて、質量分析法、特にESI−MSにより、−2の電荷の荷電分子を検出する方法を提供する。上記のトリカチオン種のどれを用いてもよい。
【0271】
他の特定の態様において、本発明は、本発明のトリアニオン種を用いて、質量分析法、特にESI−MSにより、+2の電荷の荷電分子を検出する方法を提供する。上記のトリアニオン種のどれを用いてもよい。
【0272】
他の特定の態様において、本発明は、本発明の複数の異なるジイオン種を用いて、質量分析法により、複数の異なる荷電分子を検出する方法を提供する。各ジイオン種は、選択されて、異なる荷電分子の一つとそれぞれ特異的に結合する。好適には、異なるジイオン種は、対応する荷電分子と形成された錯体を別々に検出できるように、それぞれ異なる質量を有する。一態様において、複数の異なる荷電分子は、+2または−2の異なる荷電分子であり、この複数の異なるポリイオン種は、それぞれトリアニオン種またはトリカチオン種である。
【0273】
質量分析は、当技術分野で公知の標準的な手順を用いて行うことができる。
本発明の他の側面において、少なくとも1種の本発明のポリイオン液体塩、および従来の固定相物質(ポリシロキサン、PEG、メチルポリシロキサン、フェニル置換メチルポリシロキサン、ニトリル置換メチルポリシロキサン、およびカーボワックス(carbowax)などがあるが、これらに限定されるものではない)を含む混合物を提供する。このような混合物(混合固定相(mixed stationary phase)、すなわち「MSP」)は、SPEおよびSPMEだけでなく、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、および高速液体クロマトグラフのようなクロマトグラフ測定で固定相として用いることができる。ポリカチオン液体塩とポリアニオン液体塩の両方とも、この目的のために用いることができる。MSPは、非架橋(たとえば固体支持体またはカラムに吸収または吸着されている)でもよく、「部分」架橋、または「より高度に」架橋(すなわち固体支持体またはカラム上に固定化されている)されていてもよい。ポリイオン液体塩も、架橋されていても、あるいは、従来の固定相と反応しても、または単に従来の固定相と混合されてもよい。
【0274】
このように、一態様において、本発明は、少なくとも1種の本発明のポリイオン液体塩および少なくとも1種の従来の固定相物質を適切な割合で含むMSPを提供する。MSPを生成するための、ポリイオン液体塩と従来の固定相物質との適切な組み合わせは、MSP中のポリイオン液体塩および従来の固定相物質の割合と同じように、特定の用途に基づいている。特定の一態様において、MSP中のポリイオン液体塩と従来の固定相物質の割合は、約1:9(すなわち、約10%のポリイオン液体塩と約90%の従来の固定相物質)から約9:1(すなわち、約90%のポリイオン液体塩と約10%の従来の固定相物質)、約1:3(すなわち、約25%のポリイオン液体塩と約75%の従来の固定相物質)から3:1(すなわち、約75%のポリイオン液体塩と25%の従来の固定相物質)、約1:2(すなわち、約33%のポリイオン液体塩と約67%の従来の固定相物質)から約2:1(すなわち、約67%のポリイオン液体塩と約33%の従来の固定相物質)、または約1:1(すなわち、約50%のポリイオン液体塩と約50%の従来の固定相物質)(w/w)である。MSPを用いるクロマトグラフ測定は、ポリイオン液体塩のみ、または従来の固定相のみを用いるクロマトグラフ測定よりも、優れた機能を発揮し、たとえば、より高い選択性を有する。例としては、約67%の(ジブチルイミダゾリウム)(CHと、約5%フェニル置換された約33%のメチルポリシロキサンとの単純混合物を含むMSPを調製し、カラムの被覆に用いた。このMSPは、精油に対しより優れた分離能力を示した。MSPが架橋したものも用いてもよい。
【0275】
さらに、本発明は、MSP、MSPを含む固体支持体および/またはカラムの調製方法、MSP、固体支持体、シリンジ、チューブ、ピペットチップ、ニードル、バイアル、およびカラムそれ自体、ならびに、クロマトグラフ測定および本明細書の他の部分で述べるような他の分析または分離技術における、このようなMSPを含むカラムおよび固体支持体の使用を提供する。
【実施例】
【0276】
実施例
以下の実施例は単に具体例であり、決して本開示を限定するものではない。ポリイオン液体塩の製造は、以下の実施例1〜19に記載されている。
【0277】
実施例1
対称フェニルおよびイミダゾリウム系トリカチオン液体塩の合成
1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンおよび1−ブチルイミダゾールの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、臭化物を有するイオン化合物を得た。TfNのアニオンを有する化合物は、室温イオン液体であり、LiNTf(リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド)水溶液を用いる臭化物のメタセシス反応により合成した。
【0278】
【化50】

【0279】
実施例2
対称フェニルおよびピロリジニウム系トリカチオン液体塩の合成
1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンおよび1‐ブチルピロリジンの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、臭化物を有するイオン性化合物を得た。TfNのアニオンを有する化合物は、室温イオン液体であり、LiNTf(リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド)水溶液を用いる臭化物のメタセシス反応により合成した。
【0280】
【化51】

【0281】
同様の合成手順により、本発明のホスホニウムまたはピリジウム系イオン液体が得られる。
【0282】
実施例3
シクロヘキサンおよびイミダゾリウム系トリカチオン液体塩の合成
1,3,5−トリス(ブロモメチル)シクロヘキサン中間体を、スキーム3に示すように合成する。次いで、1,3,5−トリス(ブロモメチル)シクロヘキサンおよび1−ブチルイミダゾールの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、臭化物を有するイオン化合物を得る。NTfのアニオンを有する化合物の合成は、LiNTfを用いる臭化物のメタセシス反応を伴う。
【0283】
【化52】

【0284】
実施例4
シクロヘキサンおよびピロリジニウム系トリカチオン液体塩の合成
一例として、スキーム4に示すように、1,3,5−トリス(ブロモメチル)シクロヘキサンおよび1−ブチルピロリジンの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、臭化物を有するイオン化合物を得る。LiNTf水溶液を用いる臭化物のメタセシス反応により、NTfのアニオンを有する化合物を合成する。
【0285】
【化53】

【0286】
同様の合成手順により、本発明のホスホニウムまたはピリジニウム系イオン液体が得られる。
【0287】
実施例5
中心炭素系トリカチオン液体塩の合成
市販の1,3−ジクロロ−2−(クロロメチル)−2−メチルプロパンおよび1−ブチルイミダゾールの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、塩化物を有するイオン化合物を得る。LiNTfを用いる塩化物のメタセシス反応により、NTfのアニオンを有する化合物を合成する。
【0288】
【化54】

【0289】
実施例6
中心炭素系トリカチオン液体塩の合成
1,3−ジクロロ−2−(クロロメチル)−2−メチルプロパンおよび1−ブチルピロリジンの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、塩化物を有するイオン化合物を得る。LiNTf水溶液を用いる塩化物のメタセシス反応により、NTfのアニオンを有する化合物を合成する。
【0290】
【化55】

【0291】
同様の合成手順により、本発明のホスホニウムまたはピロリジニウム系イオン液体が得られる。
【0292】
実施例7
中心窒素系トリカチオン液体塩の合成
市販のトリス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩および1−ブチルイミダゾールの2−プロパノール溶液を還流させて、塩化物を有するイオン化合物を得る。LiNTfをNaOH水溶液に溶かした溶液を用いる塩化物のメタセシス反応により、NTfのアニオンを有するトリカチオン化合物を合成する。
【0293】
【化56】

【0294】
実施例8
中心窒素系トリカチオン液体塩の合成
一例として、スキーム8に示すように、トリス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩および1−ブチルピロリジンの2−プロパノール溶液を還流させて、塩化物を有するイオン化合物を得る。LiNTfをNaOH水溶液に溶かした溶液を用いる塩化物のメタセシス反応により、NTfのアニオンを有するトリカチオン化合物を合成する。
【0295】
【化57】

【0296】
同様の合成手順により、本発明のホスホニウムまたはピロリジニウム系イオン液体が得られる。
【0297】
実施例9
トリカチオンキラル液体塩の合成。
【0298】
1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンおよび(S)−(1−メチルピロリジン−2−イル)−メタノールの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、臭化物を有するイオン化合物を得る。次いで、メタセシス反応により、所望のアニオンを有するイオン化合物を合成する。
【0299】
【化58】

【0300】
実施例10
トリカチオンキラル液体塩の合成
1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンおよび(S)−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブタン−1−オールの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、臭化物を有するイオン化合物を得る。次いで、メタセシス反応により、所望のアニオンを有するイオン化合物を合成する。
【0301】
【化59】

【0302】
実施例11
トリカチオンキラル液体塩の合成
1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンおよび(R,R)−2ジメチルアミノ−1−フェニル−プロパン−1−オールの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、臭化物を有するイオン化合物を得る。次いで、メタセシス反応により、所望のアニオンを有するイオン化合物を合成する。
【0303】
【化60】

【0304】
実施例12
対称中心フェニル系液体塩の合成
1,2,3−トリス−ブロモメチル−ベンゼンを、スキーム12に示すように合成する。次いで、実施例1に記載の合成手順と同様の手順により、C対称三ジェミナル(trigeminal)トリカチオン液体を得る。
【0305】
【化61】

【0306】
実施例13
非対称中心フェニル系液体塩の合成
1,2,4−トリス−ブロモメチル−ベンゼンを、スキーム13に示すように合成する。次いで、実施例1に記載の合成手順と同様の手順により、非対称三ジェミナルトリカチオン液体6a〜6dを得る。
【0307】
【化62】

【0308】
実施例14
分枝状四ジェミナル(tetrageminal)テトラカチオン液体塩の合成
スキーム14に示すように、ブチルイミダゾールおよび1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンの1,4−ジオキサン溶液を還流させて、臭化物を有するテトラカチオン化合物を得る。次いで、メタセシス反応により、所望のアニオンを有するイオン液体化合物を合成する。
【0309】
【化63】

【0310】
実施例15
アンモニウム系テトラカチオン液体塩の合成
スキーム15に示すように、ハロアルカンと2,5−ジメチルピロールのマンニッヒ塩基との4級化反応により、アンモニウム系テトラカチオン化合物を合成する。次いで、メタセシス反応により、所望のアニオンを有するイオン液体化合物を合成する。
【0311】
【化64】

【0312】
実施例16
トリアニオン液体塩の合成
スキーム16に示すように、クロロスルホン酸によりトリオール化合物をスルファート化する。次いで、第3級アミンを用いる酸塩基中和反応により、スルファート系トリアニオンイオン液体を得る。
【0313】
【化65】

【0314】
実施例17
直鎖状三ジェミナルトリカチオン液体塩の合成
スキーム7に示すように、イミダゾールナトリウム塩と(5−ブロモペンチル)−トリメチルアンモニウムブロミドとの反応により、臭化物を有するトリカチオン化合物を得る。次いで、メタセシス反応により、所望のアニオンを有するイオン液体化合物を合成する。
【0315】
【化66】

【0316】
実施例18
直鎖状非対称三ジェミナルトリカチオン液体塩
スキーム8に示すように、上記の合成手順と同様の手順により、非対称トリカチオン化合物を合成する。
【0317】
【化67】

【0318】
実施例19
直鎖状四ジェミナルテトラカチオン液体塩の合成
スキーム19に示すように、アルキルジイミダゾールおよび(5−ブロモペンチル)−トリメチルアンモニウムブロミドのイソプロパノール溶液を還流させて、臭化物を有する直鎖状テトラカチオン化合物を得る。次いで、メタセシス反応により、所望のアニオンを有するイオン液体化合物を得る。
【0319】
【化68】

【0320】
実施例20
アニオン分子検出のためのESI−MSにおける試薬としてのポリカチオン液体塩の使用
トリカチオン試薬:
表1は、本研究で用いた17種のカチオン試薬の構造を示す。
【0321】
【表12】

【0322】
精製後、既に報告した手順をいくらか修正した手順を用いて、トリカチオン塩をイオン交換してフッ化物の形態にした。同量(4mL)のアニオン交換樹脂を、使い捨ての10mLシリンジに充填し、カラム体積の10倍の1MのNaOH、続いてカラム体積の10倍の水、カラム体積の7倍の0.5MのNaF、さらにカラム体積の10倍の水でカラムを洗浄して、フッ化物の形態に変えた。このトリカチオン試薬を、水またはメタノールのいずれかに0.05Mの濃度に溶解し、この溶液1ミリリットルを樹脂に通し、水で容量フラスコ中に溶離させた。この原液を水で希釈し、担体溶媒と混合した場合に作用するトリカチオン試薬溶液の濃度が10μMになるようにした。
【0323】
ESI−MS:
LXQ(Thermo Fisher Scientific San Jose, CA, USA)リニアイオントラップ装置でESI−MS分析を行った。真空脱ガス装置を備えるSurveyor MSポンプ(Thermo Fisher Scientific)により、300μL/min.の担体流(67%MeOH/33%水)を得た。Y型ティー(tee)からトリカチオン試薬を担体流に導入し、本目的のために100μL/min.で作動する島津製作所(Shimazu)製のLCポンプ(6A)を用いた。負モードで分析するため、トリカチオン試薬水溶液を水で置換した。SurveyorMSポンプとY型ティーの間にある6口噴射器の弁から試験アニオンを担体溶液に導入した。フルオロリン酸のための最適化パラメータとともに、正負イオンモードでのESIイオン化条件を、表2に記載する。
【0324】
【表13】

【0325】
噴射を5回繰り返し、11種のアニオンに対する検出限界(S/N=3として定義される)を決定した。すべての検出限界(limits of detection:LOD)を決定するため、単一イオン監視モードで質量分析装置を作動させた。データ分析をXcalibur 3.1ソフトウェアで行った。
【0326】
結果および考察:
11種の2価アニオンを用いて、17種の異なるトリカチオン試薬(表1参照)を評価した。これらのアニオンは、無機型と有機型の両方を含み、様々な構造を持っていた。二クロム酸アニオン、ニトロプルシドアニオン、および六塩化白金酸アニオンのような金属系アニオンが、無機アニオンに含まれていた。これらのアニオンのいくつかは、ジカチオン試薬と対になる1価アニオンの挙動に基づいて選んだ。ジカチオン試薬とよく対を形成するハロゲン原子を有する1価アニオン、および臭素またはフッ素原子を有する非常に典型的な2価アニオン(ブロモコハク酸アニオン、ジブロモコハク酸アニオン、フルオロリン酸アニオン)も、本研究に含まれていた。
【0327】
本研究のために合成されたトリカチオン種は、4つの異なる「核」構造のうちの1つを有していた(表1)。AおよびBはベンゼン核を有するが、核Cの中央の窒素は疎水性が低い。Dは4つの核構造のなかで抜群に柔軟性が高い。7種の異なる荷電担持基を用いて、17種のトリカチオン試薬を形成した。用いられた核(A、B、またはC)および荷電基のタイプ(1〜7)に基づいてトリカチオン種を命名する。たとえば、トリカチオンA1は、ベンゼン核およびブチルイミダゾリウム荷電基を有する。
【0328】
ESI−MSの正モードにおけるアニオンの検出限界を表2に示す。
【0329】
【表14】

【0330】
ニクロム酸アニオンを除き、トリカチオン試薬を用いると、これらのアニオンの大部分に対する検出限界は、数百ピコグラム〜ナノグラムの範囲にあった。LOD測定値にしたがって、トリカチオンを最小LODから最大LODの順に並べる。この配列を用いると、いくつかの傾向がみえてくる。トリカチオンA6およびB1は、広範囲の典型的な2価アニオンに対する選択性が優れていることが、表2から明らかになる。A6(1,3,5−トリス−(トリプロピルホスホニウム)メチルベンゼントリフルオリド)は、全体的に最も優れた働きをし、硫酸アニオンおよびシュウ酸アニオンを除けば、これらのアニオンのすべてに対して上位3種のトリカチオン試薬の1つに位置する。さらに、A6は、シュウ酸アニオンの検出のための5番目に優れたトリカチオン試薬に位置する。トリカチオンB1(1,3,5−トリス−(1−(3−ブチルイミダゾリウム))メチル−2,4,6−トリメチルベンゼントリフルオリド)も、同様に優れた働きをするが、A6のように一貫して上位3種に入っているということはない。表2は、C7トリカチオンがいずれのアニオンともあまり対を形成せず、試験した中で最も効果的でない添加剤であることも示している。A5も、これらのアニオンの多くに対して、トリカチオン種リストの下位半分に位置する。ESI−MSの正イオンモードによる2価アニオン検出のための高感度法の開発に、これらの2種のトリカチオン試薬を選択することは不適切であろう。
【0331】
トリカチオンの末端のカチオン部分が同じものである場合、トリカチオン試薬の性能について核構造の効果を比較することができる。例外はあるが、核C系のカチオン部分よりも、核Aおよび核Bのほうが、2価アニオンとより効果的に対になる傾向がある。これらの11種のアニオンに対し、核Cを有するトリカチオン試薬は、4度だけ上位3種に入る働きをする。したがって、より剛直な芳香核を有するトリカチオン試薬が、より良好な結果を生むようである。ただし、ベンゼン核に置換基としてメチル基を含ませるかどうかを決めるのは簡単ではない。荷電基がリン系の場合、無修飾のベンゼン核(A1)を用いると、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)核(B6)と比較して、検出限界がより低くなる。ただし、A1とB1を比較した場合には、反対の傾向がみられた。MS条件下で、A1は、複数あるブチルイミダゾール基の1つがない場合の影響を、B1よりも受けやすいようであり(データ未記載)、B1はメシチレン核中のメチル基によって安定化しているようである。なお、同一に帯電した部分同士の反発のため、これらの核の柔軟性は制限されている。1価アニオンをジカチオン試薬と対にする場合に、対化剤の柔軟性が重要な要因であることがわかった。トリカチオンD2およびD6は、長鎖を有するためにより柔軟性が高い。ただし、これらのトリカチオン種は、フルオロリン酸アニオン以外のいずれの2価アニオンに対しても感度が高くない。この核構造は、いくつかのヘテロ原子およびカルボニル基を有しており、検出限界を良好にし得る気相対化剤としての有効性を損なうと考えられる。より理想的なトリカチオン核は、荷電基を疎水性の核と結合させるために、より長鎖の(おそらく単一の)炭化水素鎖で構成すればよいと思われる。これにより電荷の反発が減り柔軟性が増すと考えられる。
【0332】
末端荷電基の性質もアニオンを観測する検出限界に影響した。たとえば、ホスホニウム系トリカチオン試薬(A6、B6、およびC6)は、一般にこれらのアニオンのいずれとも十分に結合した。ベンジルイミダゾリウム基を用いると、ニトロプルシドアニオンおよび六塩化白金酸アニオンに対する検出限界が最も低くなり、o−ベンゼンジスルホン酸アニオンに対しての検出限界はかなりの水準になる。これは、π−πおよびn−π相互作用が、一定の特定のアニオンをトリカチオン試薬と会合させる役割を果たすことを示しているようである。ジカチオン試薬の場合にも類似の傾向がみられた。ただし、本研究において、ジカチオン試薬と相性のよい荷電基のうちの2つは、典型的なアニオンに対する感度が予想よりも低かった。メチルイミダゾリウムおよびピロリジニウム基を有する試薬はどれも、核構造にかかわらず、試験されたトリカチオン種の下位半分の中ほどに位置した。一方、メシチレン核(B1)上のブチルイミダゾリウム基は、予想以上に性能がよかった。
【0333】
当然だが、本明細書で提示する実験データは、トリカチオン試薬へのアニオンの結合親和力にいくつかの要因が加わった結果である。装置セット一式を用いてトリカチオン試薬を評価した。異なる錯体の間で装置の性能の変動があることを予想しておかなければならない。イオン化条件を完全にシュウ酸/A6錯体に対して最適化した場合には、シュウ酸アニオンに対する検出限界は250pgから75pgに低下した(実験例参照)。この感度の向上は、1価アニオンの検出のためにジカチオン試薬を最適化した場合にみられる感度の向上に似ている。スプレー電位の増加およびキャピラリー温度の低下は、信号強度に最も大きな影響を与える。
【0334】
図3は、2種のアニオン、六塩化白金酸アニオンおよびo−ベンゼンジルホナートアニオン、を検出するための正負イオンモードにおける信号対雑音比の比較を示す。両方の場合とも、正モードでトリカチオン試薬を用いることで、試薬の投入量が10分の1でも優れた信号対雑音比が得られる。正モードにおいて2価アニオンを錯体として検出することにより、2種のアニオンに対する感度がほぼ2桁分向上する。これにより、トリカチオン試薬が2価アニオンに対する質量分析の感度を向上することが明らかである。
【0335】
結論:
17種のトリカチオン試薬を、ESI−MSの正モードにおいて11種の2価アニオンを検出するための対化剤として評価してきた。末端荷電基および核構造を含むトリカチオン試薬の構造的特徴が、2価アニオンの検出限界に影響していた。トリカチオン試薬を正イオンモードにおいて使用すると、負モードにおける試薬の投入量が10倍であっても、負モードで使用する場合よりも、六塩化白金酸アニオンおよびo−ベンゼンジスルホン酸アニオン検出の信号対雑音比が増加した。
【0336】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造的に式(I)に相当するポリイオン種および少なくとも1つの対イオンを含んでなるポリイオン液体塩:
【化1】

(式中、Gcは、窒素原子、リン原子、ケイ素原子、アルキル、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選ばれる無電荷の置換可能な中心基であり;該窒素原子は、アルキルおよびアルキルカルボニルアミノアルキルからなる群から選ばれる1種または2種以上の置換基で置換されていてもよく;そして、Gcは、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上のRc置換基でさらに置換されていてもよい;
各Aは独立に選ばれるモノイオン基であり;
該モノイオン基は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、(−CH−カルボシクリル−CH−)、およびポリシロキシルからなる群から選ばれ;アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレンは、O、N、S、およびSiからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく;
該モノイオン基は、ヘテロシクリル、アンモニウム、およびホスホニウムからなる群から選ばれるカチオン基で置換されていて;該カチオン基は、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;該アルキルは、ヒドロキシおよびフェニルからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;または、
該モノイオン基は、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートからなる置換基の群から選ばれるアニオン基であり;各このような置換基は、アルキル、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;
nは1〜20(両端の数値を含む)から選ばれ;かつ、
mは3、4、5、および6から選ばれる)。
【請求項2】
各Aが次式からなる群から独立に選ばれる、請求項1に記載のポリイオン液体塩:
【化2】

(式中、各R、R、R及びRは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる)。
【請求項3】
前記ポリイオン種が、次式:
【化3】

からなる群から選ばれる式に構造的に相当する、請求項2に記載のポリイオン液体塩。
【請求項4】
前記ポリイオン種が次式:
【化4−1】

【化4−2】

からなる群から選ばれる、請求項3に記載のポリイオン液体塩。
【請求項5】
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、NTf、TfO、および次式:
【化5】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化6】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から独立に選ばれる、請求項4に記載のポリイオン液体塩。
【請求項6】
少なくとも3つの対イオンを含む、請求項5に記載のポリイオン液体塩。
【請求項7】
前記ポリイオン液体塩が次式:
【化7】

を有する、請求項3に記載のポリイオン液体塩。
【請求項8】
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、NTf、TfO、および次式:
【化8】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化9】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から選ばれる、請求項7に記載のポリイオン液体塩。
【請求項9】
少なくとも3つの対イオンを含む、請求項8に記載のポリイオン液体塩。
【請求項10】
各モノイオン基が1つまたは2つ以上のキラル中心を有する、請求項3に記載のポリイオン液体塩。
【請求項11】
前記ポリイオン種が次式:
【化10】

(式中、各アスタリスクはキラル中心を表し;かつ、
各Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる)
からなる群から選ばれる、請求項10に記載のポリイオン液体塩。
【請求項12】
前記ポリイオン種が次式:
【化11】

からなる群から選ばれる、請求項11に記載のポリイオン液体塩。
【請求項13】
前記ポリイオン種が次式:
【化12】

からなる群から選ばれる、請求項2に記載のポリイオン液体塩。
【請求項14】
前記ポリイオン種が次式:
【化13】

からなる群から選ばれる、請求項13に記載のポリイオン液体塩。
【請求項15】
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、NTf、TfO、および次式:
【化14】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化15】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から選ばれる、請求項14に記載のポリイオン液体塩。
【請求項16】
少なくとも3つの対イオンを含む、請求項15に記載のポリイオン液体塩。
【請求項17】
前記ポリイオン種が、次式:
【化16】

からなる群から選ばれる式に構造的に相当する、請求項2に記載のポリイオン液体塩。
【請求項18】
前記ポリイオン種が次式:
【化17】

のものである、請求項17に記載のポリイオン液体塩。
【請求項19】
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、NTf、TfO、および次式:
【化18】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化19】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から選ばれる、請求項18に記載のポリイオン液体塩。
【請求項20】
少なくとも4つの対イオンを含む、請求項19に記載のポリイオン液体塩。
【請求項21】
前記ポリイオン種が構造的に次式:
【化20】

(式中、zは1〜20(両端の数値を含む)から選ばれる)
に相当する、請求項2に記載のポリイオン液体塩。
【請求項22】
前記ポリイオン種が構造的に次式:
【化21】

(式中、各Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる)
に相当する、請求項21に記載のポリイオン液体塩。
【請求項23】
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、NTf、TfO、および次式:
【化22】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化23】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から選ばれる、請求項22に記載のポリイオン液体塩。
【請求項24】
少なくとも4つの対イオンを含む、請求項23に記載のポリイオン液体塩。
【請求項25】
前記ポリイオン種が構造的に次式:
【化24】

に相当する、請求項2記載のポリイオン液体塩。
【請求項26】
前記ポリイオン種が次式:
【化25】

からなる群から選ばれる、請求項25に記載のポリイオン液体塩。
【請求項27】
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、NTf、TfO、および次式:
【化26】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化27】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から選ばれる、請求項26に記載のポリイオン液体塩。
【請求項28】
少なくとも3つの対イオンを含む、請求項27に記載のポリイオン液体塩。
【請求項29】
該ポリイオン種が構造的に次式:
【化28】

に相当する、請求項2に記載のポリイオン液体塩。
【請求項30】
該ポリイオン種が次式:
【化29】

【化30】

からなる群から選ばれる、請求項29に記載のポリイオン液体塩。
【請求項31】
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、NTf、TfO、および次式:
【化31】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化32】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から選ばれる、請求項30に記載のポリイオン液体塩。
【請求項32】
少なくとも3つの対イオンを有する、請求項31に記載のポリイオン液体塩。
【請求項33】
前記ポリイオン種が構造的に次式:
【化33】

(式中、各tは1〜20(両端の数値を含む)から独立に選ばれる)
に相当する、請求項2のポリイオン液体塩。
【請求項34】
前記ポリイオン種が次式:
【化34】

からなる群から選ばれる式に相当する、請求項33に記載のポリイオン液体塩。
【請求項35】
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、NTf、TfO、および次式:
【化35】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化36】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から選ばれる、請求項34に記載のポリイオン液体塩。
【請求項36】
少なくとも3つの対イオンを含む、請求項35に記載のポリイオン液体塩。
【請求項37】
各Aが次式:
【化37】

(式中、各R、R、R、およびRは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる)からなる群から独立に選ばれるカチオン基であるか、または
各Aは、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートからなる群から独立に選ばれるアニオン基であり、ここで、各このような置換基は、アルキル、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよい、
請求項1に記載のポリイオン液体塩。
【請求項38】
前記ポリイオン種が構造的に次式:
【化38】

に相当する、請求項37に記載のポリイオン液体塩。
【請求項39】
前記ポリイオン種が次式:
【化39】

からなる群から選ばれる、請求項38に記載のポリイオン液体塩。
【請求項40】
Aがカチオン性の場合には、
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、Tf、TfO、および次式:
【化40】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化41】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から選ばれ、かつ、
Aがアニオン性の場合には、
前記少なくとも1つの対イオンは、第4級アンモニウム、プロトン化第3級アミン、ホスホニウム、およびアルソニウムからなる群から選ばれる、
請求項39に記載のポリイオン液体塩。
【請求項41】
少なくとも3つの対イオンを含む、請求項40に記載のポリイオン液体塩。
【請求項42】
式(III)、(IV)、または(V):
【化42】

を有するポリイオン種、および少なくとも1つの対イオン、を含んでなるポリイオン液体塩:
(式中、各Bは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、(−CH−カルボシクリル−CH−)、およびポリシロキシルからなる群から独立に選ばれ;
アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレンは、O、N、S、またはSiからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく;
Bは、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアルコキシからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;
各Aはモノイオン基から独立に選ばれ;
該モノイオン基は、ヘテロシクリル、アンモニウム、およびホスホニウムからなる群から選ばれるカチオン基であり;該カチオン基は、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;該アルキルは、ヒドロキシおよびフェニルからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよい;または
該モノイオン基は、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートからなる置換基の群から選ばれるアニオン基であり;このような各置換基は、アルキル、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から独立に選ばれる1つまたは2つ以上の置換基で置換されていてもよく;
nは1〜20(両端の数値を含む)から選ばれる)。
【請求項43】
各Aが次式:
【化43】

(式中、各R、R、R、およびRは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、フェニル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシルからなる群から独立に選ばれる)
からなる群から独立に選ばれる、請求項42に記載のポリイオン液体塩。
【請求項44】
前記ポリイオン種が次式:
【化44】

(式中、各vは、1〜20(両端の数値を含む)から独立に選ばれる)
からなる群から選ばれる、請求項43に記載のポリイオン液体塩。
【請求項45】
前記少なくとも1つの対イオンが、Br、BF、PF、NTf、TfO、および次式:
【化45】

[式中、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキレン、ヒドロキシカルボニル、および次式:
【化46】

(式中、XはC〜C10のアルキレンであり;
は水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、およびヒドロキシからなる群から選ばれ;
は水素およびアルキルからなる群から選ばれ;かつ、
はC〜C10のアルキレンである)からなる群から選ばれる]
からなる群から選ばれる、請求項44に記載のポリイオン液体塩。
【請求項46】
少なくとも3つの対イオンを含む、請求項45に記載のポリイオン液体塩。
【請求項47】
請求項1または42に記載のポリイオン液体塩の1種または2種以上を含んでなる溶媒。
【請求項48】
固体支持体、および、請求項1または42に記載の1種または2種以上のポリイオン液体塩を含んでなり、該1種または2種以上のポリイオン液体塩が、該固体支持体上に吸着、吸収または固定化されている、化学的分離または分析のための装置。
【請求項49】
前記固体支持体がクロマトグラフ測定カラム内に充填された、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記固体支持体がキャピラリーカラムである、請求項48に記載の装置。
【請求項51】
内部空間を画定する中空ニードルを有するシリンジをさらに含んでなる請求項48に記載の装置であって、
該ニードルは円筒部の端にあり、プランジャーは該円筒部内にあり、該プランジャーが該円筒部から後退すると該固体支持体が該ニードルの該内部空間に後退し、該プランジャーが該円筒部中に挿入されると該固体支持体が該ニードル内から露出するように、該固体支持体が該シリンジに取り付けられている、装置。
【請求項52】
前記1種または2種以上のポリイオン液体塩が、前記固体支持体上に固定化され、かつ、該1種または2種以上のポリイオン液体塩が、架橋または固定化を容易にする少なくとも1つの不飽和基を含む、請求項48に記載の装置。
【請求項53】
前記シリンジがマイクロシリンジである、請求項51に記載の装置。
【請求項54】
化学物質の混合物から1種の化学物質を分離させる方法であって:
少なくとも1種の第1の化学物質と少なくとも1種の第2の化学物質との混合物を準備すること、
該混合物を、請求項1または42に記載のポリイオン液体塩を1種または2種以上含む固体支持体に接触させること、ここで、該1種または2種以上のポリイオン性液体塩は、該固体支持体に吸着、吸収または固定化されている、
該第1の化学物質の少なくとも一部を該固体支持体表面に保持すること、
を含んでなる方法。
【請求項55】
前記固体支持体がカラムであり、前記第1の化学物質の溶離を防ぐかまたは遅らせるように、前記混合物が該カラムを通過する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記カラムがキャピラリーカラムである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記混合物が気相移動相に担持される、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記固体支持体を、内部空間を画定する中空ニードルを有するマイクロシリンジに取り付け、該ニードルを円筒部の一端に配置し、プランジャーを該円筒部内に配置し、該プランジャーが該円筒部から後退すると該固体支持体が該ニードルの該内部空間に後退し、該プランジャーが該円筒部中に挿入されると該固体支持体が該ニードル内から露出するように、該固体支持体を該マイクロシリンジに取り付け、該固体支持体を該ニードル内から該混合物中に露出させ、かつ、該固体支持体を該混合物から後退させ、該混合物が少なくともいくらかの量の前記第1の化学物質を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
請求項1または42の1種又は2種以上のポリカチオン液体塩を用いることを含む、ESI−MSによるアニオンの検出方法。
【請求項60】
前記1種または2種以上のポリカチオン液体塩が、フッ化物塩である、請求項59に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−518019(P2010−518019A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548444(P2009−548444)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/052590
【国際公開番号】WO2008/095069
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(598169572)シグマ−アルドリッチ・カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】Sigma−Aldrich Co.
【Fターム(参考)】