説明

完全CMOS型SRAM装置

【目的】 セル面積の縮小、すなわち高集積化を図り、しかも信号処理の高スピード化を図ることができる完全CMOS型SRAM装置を提供すること。
【構成】 SRAMセルの構成要素であるP型トランジスタのP型不純物拡散層4aとN型トランジスタのN型不純物拡散層4bとが、同一パターンの半導体薄膜層16内に直接PN接合(ダイオード接続)するように形成してある。PN接合する部分の近くのN型不純物拡散層4bまたはP型不純物拡散層4aまたはこれらの双方に対して、半導体薄膜層の上部に形成されるゲート電極6a,6a’の一部が、コンタクトホール8a,8bを通して接続してある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、SOI基板上にメモリセルが形成された完全CMOS型SRAM装置に関する。
【0002】
【従来の技術】4Mbあるいは16Mb用SRAMのメモリセルとして、Pチャネル型薄膜トランジスタ(TFT)を負荷トランジスタとして用いたSRAM用メモリセルが開発されている。このTFT負荷型SRAM用メモリセルは、高抵抗負荷型SRAM用メモリに比較して、スタンバイ時の消費電力が少なく、安定性に優れている。また、負荷トランジスタが半導体基板上に形成されたバルク構造の完全CMOS型SRAM用メモリセルに比較して、高集積化に優れている。
【0003】ところが、TFT負荷型SRAM用メモリセルは、その製造プロセスが煩雑であると言う課題を有している。そこで、バルク構造の完全CMOS型SRAM用メモリセルが見直されている。バルク構造の完全CMOS型SRAM用メモリは、TFT負荷型SRAM用メモリに比較して、製造工程が単純であると共に、動作時に高電流を得ることができ、メモリの安定性にも優れている。
【0004】1993年VLSI,テクノロジー(Tech.)文献第65〜66頁には、メモリセル毎に、ワード線を二本配列したバルク構造完全CMOS型SRAM装置が開発されている。この文献に記載のものを始めとして、従来のバルク構造完全CMOS型SRAM装置では、メモリセル内で、N型MOSトランジスタ領域のN型不純物拡散層と、P型MOSトランジスタ領域のP型不純物拡散層とが、分離して形成してある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、シリコン基板上に形成してあるN型不純物拡散層とP型不純物拡散層とは、互いの電気的分離が困難であり、十分な電気的分離を行おうとする場合には、その分離幅を大きくする必要があった。そのため、メモリセルの面積が増大し、チップ面積の増大、信号遅延を引き起こすおそれがあった。
【0006】本発明は、このような実状に鑑みてなされ、セル面積の縮小、すなわち高集積化を図り、しかも信号処理の高スピード化を図ることができる完全CMOS型SRAM装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る第1の完全CMOS型SRAM装置は、SRAMセルの構成要素であるP型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とが、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成してあり、PN接合する部分の近くのN型不純物拡散層またはP型不純物拡散層に対して、半導体薄膜層の上部に形成されるゲート電極の一部が、コンタクトホールを通して接続してある。
【0008】上記目的を達成するために、本発明に係る第2の完全CMOS型SRAM装置は、SRAMセルの構成要素であるP型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とが、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成してあり、PN接合する部分のN型不純物拡散層およびP型不純物拡散層の双方に対して、半導体薄膜層の上部に形成されるゲート電極の一部が、単一のコンタクトホールを通して接続してある。
【0009】上記目的を達成するために、本発明に係る第3の完全CMOS型SRAM装置は、SRAMセルの構成要素であるP型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とが、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成してあり、各SRAMセル毎のワード線が、ビット線と直交するように、二本に分割して配列してある。
【0010】
【作用】本発明に係る第1の完全CMOS型SRAM装置では、SRAMセルをSOI基板上に形成することで、素子分離を最小デザインで設計することができる。また、通常の半導体基板上にバルク構造の完全CMOS型SRAM装置を形成する場合と比較して、ウェルを形成する必要がないので、P型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とを、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成することができる。
【0011】このPN接合により、負荷トランジスタ側から駆動トランジスタ側へ向かう記憶ノード部にダイオードが形成されるが、SRAMのメモリセルでは、負荷トランジスタ側から駆動トランジスタ側へは、順方向バイアスとなるので、メモリセル上問題にはならない。本発明に係る第1の完全CMOS型SRAM装置では、P型不純物拡散層とN型不純物拡散層との間に絶縁領域を形成しないので、セル面積の縮小、すなわち高集積化を図り、しかも信号処理の高スピード化を図ることができる。
【0012】本発明に係る第2の完全CMOS型SRAM装置では、SRAMセルをSOI基板上に形成することで、素子分離を最小デザインで設計することができる。また、通常の半導体基板上にバルク構造の完全CMOS型SRAM装置を形成する場合と比較して、ウェルを形成する必要がないので、P型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とを、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成することができる。
【0013】しかも、PN接合する部分のN型不純物拡散層およびP型不純物拡散層の双方に対して、半導体薄膜層の上部に形成されるゲート電極の一部を、単一のコンタクトホールを通して接続することができる。このため、PN接合により形成されるダイオードの影響をほとんど無視することができる。
【0014】本発明に係る第2の完全CMOS型SRAM装置では、P型不純物拡散層とN型不純物拡散層との間に絶縁領域を形成しないので、セル面積の縮小、すなわち高集積化を図り、しかも信号処理の高スピード化を図ることができる。本発明に係る第3の完全CMOS型SRAM装置では、SRAMセルをSOI基板上に形成することで、素子分離を最小デザインで設計することができる。また、通常の半導体基板上にバルク構造の完全CMOS型SRAM装置を形成する場合と比較して、ウェルを形成する必要がないので、P型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とを、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成することができる。しかも、各SRAMセル毎のワード線が、ビット線と直交するように、二本に分割して配列してある。
【0015】一般に、SOI基板上に形成されたトランジスタは、通常の半導体基板上に形成されたトランジスタに比較して、電気特性を揃えることが困難であるが、今回採用したワード線分割型セルをSOI構造と組み合わせることで、セルの幾何学的対象性が高まり、セルの動作上の安定性が向上し、トランジスタ間の特性バラツキを吸収し易い。
【0016】本発明に係る第3の完全CMOS型SRAM装置では、P型不純物拡散層とN型不純物拡散層との間に絶縁領域を形成せず、しかも好適なワード線パターンを有するので、セル面積の縮小、高集積化を図り、しかも信号処理の高スピード化を図ることができる。
【0017】
【実施例】以下、本発明に係る完全CMOS型SRAM装置を、図面に示す実施例に基づき、詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る完全CMOS型SRAM装置のメモリセルの要部平面図、図2は同実施例に係るSRAM用メモリセルの等価回路図、図3は図1に示すIII −III 線に沿う要部断面図、図4(A),(B)は図3に示すメモリセルの製造工程を示す要部断面図、図5〜9は図1〜3に示すメモリセルの製造工程を示す要部平面図、図10は本発明の他の実施例に係る完全CMOS型SRAM装置のメモリセルの要部平面図、図11は本発明のさらにその他の実施例に係る完全CMOS型SRAM装置のメモリセルの要部断面図、図12(A),(B)は図11に示すメモリセルの製造工程を示す要部断面図、図13は図11に示すメモリセルの等価回路図である。
【0018】まず、図1〜9に示す実施例に係る完全CMOS型SRAM装置について説明する。図1に示すように、本実施例に係る完全CMOS型SRAM装置のメモリセルMCは、絶縁層2上に所定パターンの半導体薄膜層が形成してあるSOI基板上に形成してある。
【0019】SOI基板は、たとえば張り合わせ法及び選択研磨法を組み合わせた方法、あるいはO2 のイオン注入法などで形成される。張り合わせ法及び選択研磨法を組み合わせた方法では、シリコンウェーハなどの半導体基板上に、素子分離用段差を形成した後、その表面に絶縁層を堆積させ、その絶縁層の表面にポリシリコン層などの平坦化層を堆積し、その表面を平坦化する。その後、その平坦化された表面に、シリコンウェーハなどの支持基板を張り合わせる。その後、半導体基板の裏面から、前記素子分離段差が露出するまで選択研磨し、絶縁層上に所定パターンの半導体薄膜層を残す。
【0020】図1に示すように、半導体薄膜層には、P型不純物拡散層4aとN型不純物拡散層4bとが、境界部分5で接するように形成してある。半導体薄膜層の上には、ゲート絶縁層を介してゲート電極6a,6a’,6b,6b’が積層してある。
【0021】ゲート電極6b,6b’は、ワード線W1,W2を兼ねており、各メモリセルMC毎に、二本づつ形成され、後述するビット線に対して直交するように配置される。このワード線W1 ,W2 となるゲート電極6b,6b’は、選択トランジスタWQ3 ,WQ4 のゲート電極となる。ゲート電極6a,6a’は、略L字形状を有し、ワード線6b,6b’間に、相互に点対象になるように配置される。ゲート電極6a,6a’は、メモリセルMC内で点対象位置に配列された略T字形状の半導体薄膜層(不純物拡散層4a,4b)と交差し、駆動トランジスタDQ1 ,DQ2 と、負荷トランジスタLQ5 ,LQ6 とを構成する。
【0022】負荷トランジスタLQ5 ,LQ6 は、P型不純物拡散層4aの上に形成してあり、駆動トランジスタDQ1 ,DQ2 および選択トランジスタSQ3 ,SQ4 は、N型不純物拡散層4bの上に形成される。これらトランジスタは、図2に示すSRAMのメモリセルを構成するために、コンタクトホール8a,8b,10a,10b,12a,12b,14a,14bで上層側配線層と接続される。
【0023】図2に示すように、SRAM用メモリセルは、フリップフロップ回路を構成する一対の駆動トランジスタDQ1,DQ2と、メモリセルの選択用の選択トランジスタSQ3 ,SQ4 と、負荷トランジスタLQ5 ,LQ6 とを有する。選択トランジスタSQ3 ,SQ4 は、ワード線Wに生じるゲート電圧に応じて、トランジスタをオン状態とし、駆動トランジスタDQ1 ,DQ2 で構成されるフリップフロップ回路に記憶してある情報をビット線bおよび反転ビット線b’に送信するようになっている。
【0024】本実施例のメモリセルでは、後述するような構造を採用することから、負荷トランジスタLQ5 ,LQ6 から駆動トランジスタDQ1 ,DQ2 へ向かう接続点である記憶ノード部分に、それぞれダイオードD1,D2が形成される。これらダイオードD1 ,D2 は、順方向に接続されることを条件として、SRAMセルの回路上問題はない。図2に示す実施例では、ダイオードD1 ,D2 が記憶ノードの負荷トランジスタLQ5 ,LQ6 側に接続してあるが、駆動トランジスタDQ1 ,DQ2 側に形成しても同様である。
【0025】次に、このようなダイオードD1 ,D2 が形成される理由について説明する。本実施例では、図1,3に示すように、同一パターンの半導体薄膜層には、P型不純物拡散層4aと、N型不純物拡散層4bとが、境界部分5でPN接合するように形成される。したがって、この境界部分5に順方向バイアスのダイオードD1 またはD2 が形成されてしまう。図1〜3に示すように、駆動トランジスタDQ1 ,DQ2 および負荷トランジスタLQ5 ,LQ6 のゲート電極6a,6a’は、コンタクトホール8a,8bを通して、対となる他方の記憶ノードに接続する必要がある。ゲート電極6a,6a’は、一般にN型不純物を含むポリシリコン層で構成されるため、コンタクトホール8a,8bを通して接続される記憶ノードの不純物拡散層は、ポリシリコン層からの不純物拡散のために、図3に示すように、N型不純物拡散層4bとなる。
【0026】なお、図3において、符号16aは、負荷トランジスタLQ5 のチャネル部分を示し、N- の不純物拡散領域である。また、符号16bは、選択トランジスタSQ3 のチャネル領域を示し、P- の不純物拡散領域である。また、符号18は、ゲート絶縁層であり、酸化シリコン層などで構成される。
【0027】次に、図1〜3に示すSOI構造を利用した完全CMOS型SRAM装置の製造方法について説明する。まず、図4(A)および図5に示すように、絶縁層2の上に半導体薄膜層16が所定パターンで形成してあるSOI基板を製造する。SOI基板は、たとえば張り合わせ法と選択研磨法とを組み合わせた方法により製造される。半導体薄膜層16の上には、ゲート絶縁層18を形成する。ゲート絶縁層18は、たとえば熱酸化法により形成される酸化シリコン層で構成される。
【0028】また、半導体薄膜層16には、トランジスタのしきい値電圧調整用の不純物を導入し、P型MOSトランジスタが形成される予定領域には、N- 型不純物領域16aを形成し、N型MOSトランジスタが形成される予定領域には、P- 型不純物領域16bを形成する。
【0029】次に、記憶ノードコンタクト部分に対応する位置のゲート絶縁層18に、コンタクトホール8aを形成した後、図4(B)に示すように、ゲート絶縁層18の上に、ゲート電極となるポリシリコン層6を堆積する。なお、コンタクトホール8aを形成する前に、ゲート絶縁層18の表面には、ポリシリコン層などで構成される酸化膜保護層を形成しても良い。
【0030】次に、ゲート電極となるポリシリコン層6を、図6に示すように、パターン加工し、駆動トランジスタDQ1 ,DQ2 および負荷トランジスタLQ5 ,LQ6のゲート電極6a,6a’と、選択トランジスタSQ3 ,SQ4 となるゲート電極6b,6b’(ワード線W1 ,W2 )を形成する。その際に、ゲート電極6a,6a’は、コンタクトホール8a,8bを通して、それぞれ対となる記憶ノードの不純物拡散層と接続する。
【0031】次に、図6に示すように、半導体薄膜層に、ゲート電極の上から選択的イオン注入を行うことにより、各トランジスタのソース・ドレイン領域となるP型不純物拡散層4aと、N型不純物拡散層4bとを形成する。イオン注入後には、熱処理を行い、不純物を拡散させる。その熱処理により、ゲート電極6a,6a’を構成するポリシリコン層に含まれるN型不純物が、コンタクトホール8a,8bを通して、半導体薄膜層の表面に拡散し、そのコンタクト部分の半導体薄膜層の導電型は、図3に示すように、N型不純物拡散層4bと連続するN型となる。また、図3に示すように、P型不純物拡散層4aとN型不純物拡散層4bとの境界部分には、ダイオードD1 が形成される。なお、図示しないが、ダイオードD2も同様にして形成される。また、図6では、図示上、ゲート電極幅とコンタクトホール8a,8bの幅とを同じにしているが、ゲート電極がコンタクトホールをオーバラップするようにデザインすることが好ましい。
【0032】次に、図7に示すように、ゲート電極の上に、第1層間絶縁層を堆積した後、コンタクトホール10a,10b,12a,12b,14a,14bを形成する。第1層間絶縁層としては、たとえば酸化シリコン層、窒化シリコン層、PSG層、BPSG層などが例示される。コンタクトホール10a,10bは、ビット線コンタクトのためのホールであり、コンタクトホール12a,12bは、電源線Vddコンタクトのためのホールであり、コンタクトホール14a,14bは、基準電位線Vssコンタクトのためのホールである。
【0033】次に、第1層間絶縁層の上に、図8に示すように、第1アルミ層を形成する。第1アルミ層は、図8に示すパターン20a,20b,22,24a,24bでエッチング加工される。第1アルミ層のうち、パターン20a,20bは、電源線Vddのパターンを示す。パターン22は、第2層アルミで構成される基準電位線Vssに持ち上げるためのパッド層のパターンを示す。パターン24a,24bは、第2層アルミで構成されるビット線b,b’とのコンタクト位置をずらすためのパッド層のパターンを示す。
【0034】次に、図9に示すように、第1アルミ層の上に、第2層間絶縁層を形成し、その第2層間絶縁層に、コンタクトホール26,28a,28bを形成する。第2層間絶縁層は、特に限定されないが、たとえば酸化シリコン層、窒化シリコン層、PSG層、BPSG層などで構成される。コンタクトホール26は、基準電位線Vssのコンタクトのためのホールであり、コンタクトホール28a,28bは、ビット線b,b’のためのホールである。
【0035】次に、第2層間絶縁層の上に、第2アルミ層を堆積し、第2アルミ層を図9に示すパターン30,32a,32bでエッチング加工し、基準電位線Vssおよびビット線b,b’を得る。その後、オーバーコート層およびパッド層などを形成し、完全CMOS型SRAM装置を製造する。なお、メモリセルMCは、縦方向および横方向に線対象にレイアウトされ、多数形成される。また、メモリセル群の周囲には、セルに対するデータの書き込み回路および読み取り回路などの周辺回路が形成される。
【0036】本実施例に係る完全CMOS型SRAM装置では、SRAMセルをSOI基板上に形成することで、素子分離を最小デザインで設計することができる。また、通常の半導体基板上にバルク構造の完全CMOS型SRAM装置を形成する場合と比較して、ウェルを形成する必要がないので、P型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とを、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成することができる。
【0037】このPN接合により、負荷トランジスタLQ5,LQ6側から駆動トランジスタDQ1 ,DQ2 側へ向かう記憶ノード部にダイオードD1 ,D2 が形成されるが、SRAMのメモリセルでは、負荷トランジスタ側から駆動トランジスタ側へは、順方向バイアスとなるので、メモリセル上問題にはならない。
【0038】すなわち、本実施例に係る完全CMOS型SRAM装置では、P型不純物拡散層4aとN型不純物拡散層4bとの間に絶縁領域を形成しないので、セル面積の縮小、すなわち高集積化を図ることができ、しかも信号処理の高スピード化を図ることができる。また、セル毎に、ワード線W1,W2を二本配置し、ワード線分割型セルとし、このワード線分割型セルをSOI構造と組み合わせることで、セルの幾何学的対象性が高まり、セルの動作上の安定性が向上し、トランジスタ間の特性バラツキを吸収し易い。
【0039】なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば、図10に示すように、図1に示す実施例に比較して、駆動トランジスタDQ1 ,DQ2 と負荷トランジスタLQ5 ,LQ6 との位置を逆に構成するレイアウトのメモリセルMC’も考えられる。この実施例の場合には、基準電位線Vssのためのコンタクトホール14a,14bと、電源線Vddのためのコンタクトホール12a,12bの位置関係も逆になるが、そのほかは、前記実施例と同様な作用効果を有する。
【0040】次に、図11〜13に示す実施例について説明する。図11は、前記実施例の図3に示す断面図に対応する断面図である。この実施例では、ゲート電極36a,36bが下層側ゲート電極30と上層側ゲート電極32との多層構造となっている。また、記憶ノードのコンタクトホール8a部分で、ゲート電極36a,36bの一部を構成する上層側ゲート電極32が半導体薄膜層の表面にコンタクトし、これが、P型不純物拡散層4aおよびN型不純物拡散層4bの双方に対して接続してある。下層側ゲート電極30は、ゲート絶縁層18を構成する酸化膜保護のための保護層を兼ねており、ポリシリコン層などで構成される。また、上層側ゲート電極32は、チタンやタングステンなどの高融点金属で構成してある。
【0041】少なくとも、記憶ノードのためのコンタクトホール8aに入り込むコンタクト部分を、不純物を含有しない導電性物質で構成することで、このコンタクトホール8aを通して、半導体薄膜層に不純物が拡散しなくなり、このコンタクト部分は、同一のコンタクトホール8aで、P型不純物拡散層4aおよびN型不純物拡散層4bの双方に対してコンタクトすることができる。
【0042】このようなコンタクトが実現できれば、前記実施例と異なり、P型不純物拡散層4aとN型不純物拡散層4bとの境界部分5に形成されるダイオードの影響をほとんど無視でき、図13に示すように、ダイオードが形成されない完全CMOS型SRAMセルを実現することができる。
【0043】このようなコンタクトを実現するには、まず、図12(A)に示すように、絶縁層2の上に半導体薄膜層16が所定パターンで形成してあるSOI基板を製造する。SOI基板は、たとえば張り合わせ法と選択研磨法とを組み合わせた方法により製造される。半導体薄膜層16の上には、ゲート絶縁層18を形成する。ゲート絶縁層18は、たとえば熱酸化法により形成される酸化シリコン層で構成される。
【0044】また、半導体薄膜層16には、トランジスタのしきい値電圧調整用の不純物を導入し、P型MOSトランジスタが形成される予定領域には、N- 型不純物領域16aを形成し、N型MOSトランジスタが形成される予定領域には、P- 型不純物領域16bを形成する。
【0045】次に、保護層を兼ねる下層側ゲート電極30となるポリシリコン層を、たとえば30nm程度の膜厚で堆積させる。その後、記憶ノード部分に対し、コンタクトホール8aを形成する。その後、図12(B)に示すように、上層側ゲート電極32を構成するノンドープ導電層(たとえば高融点金属)を堆積し、コンタクトはホール8aに埋め込む。その後の工程は、コンタクトホール8a部分で、上層側ゲート電極32が、両極性の不純物拡散層16a,16bに同時に接続する以外は、前記実施例と同様である。
【0046】本実施例では、上記実施例の作用効果に加えて、PN接合により形成されるダイオードの影響をほとんど無視することができるという作用効果をさらに有する。なお、この実施例において、ゲート電極は、必ずしも多層ではなく、不純物を含まない高融点金属の単層で構成しても良い。また、記憶ノードのためのコンタクト部分のみに、ゲート電極を構成する材質とは異なる高融点金属で構成することもできる。
【0047】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明に係る第1の完全CMOS型SRAM装置では、SRAMセルをSOI基板上に形成することで、素子分離を最小デザインで設計することができる。また、通常の半導体基板上にバルク構造の完全CMOS型SRAM装置を形成する場合と比較して、ウェルを形成する必要がないので、P型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とを、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成することができる。
【0048】このPN接合により、負荷トランジスタ側から駆動トランジスタ側へ向かう記憶ノード部にダイオードが形成されるが、SRAMのメモリセルでは、負荷トランジスタ側から駆動トランジスタ側へは、順方向バイアスとなるので、メモリセル上問題にはならない。本発明に係る第1の完全CMOS型SRAM装置では、P型不純物拡散層とN型不純物拡散層との間に絶縁領域を形成しないので、セル面積の縮小、すなわち高集積化を図り、しかも信号処理の高スピード化を図ることができる。
【0049】本発明に係る第2の完全CMOS型SRAM装置では、SRAMセルをSOI基板上に形成することで、素子分離を最小デザインで設計することができる。また、通常の半導体基板上にバルク構造の完全CMOS型SRAM装置を形成する場合と比較して、ウェルを形成する必要がないので、P型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とを、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成することができる。
【0050】しかも、PN接合する部分のN型不純物拡散層およびP型不純物拡散層の双方に対して、半導体薄膜層の上部に形成されるゲート電極の一部を、単一のコンタクトホールを通して接続することができる。このため、PN接合により形成されるダイオードの影響をほとんど無視することができる。
【0051】本発明に係る第2の完全CMOS型SRAM装置では、P型不純物拡散層とN型不純物拡散層との間に絶縁領域を形成しないので、セル面積の縮小、すなわち高集積化を図り、しかも信号処理の高スピード化を図ることができる。本発明に係る第3の完全CMOS型SRAM装置では、SRAMセルをSOI基板上に形成することで、素子分離を最小デザインで設計することができる。また、通常の半導体基板上にバルク構造の完全CMOS型SRAM装置を形成する場合と比較して、ウェルを形成する必要がないので、P型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とを、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成することができる。しかも、各SRAMセル毎のワード線が、ビット線と直交するように、二本に分割して配列してある。
【0052】一般に、SOI基板上に形成されたトランジスタは、通常の半導体基板上に形成されたトランジスタに比較して、電気特性を揃えることが困難であるが、今回採用したワード線分割型セルをSOI構造と組み合わせることで、セルの幾何学的対象性が高まり、セルの動作上の安定性が向上し、トランジスタ間の特性バラツキを吸収し易い。
【0053】本発明に係る第3の完全CMOS型SRAM装置では、P型不純物拡散層とN型不純物拡散層との間に絶縁領域を形成せず、しかも好適なワード線パターンを有するので、セル面積の縮小、高集積化を図り、しかも信号処理の高スピード化を図ることができる。
【0054】本発明に係る完全CMOS型SRAM装置は、ASIC用メモリとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る完全CMOS型SRAM装置のメモリセルの要部平面図である。
【図2】図2は同実施例に係るSRAM用メモリセルの等価回路図である。
【図3】図3は図1に示すIII −III 線に沿う要部断面図である。
【図4】図4(A),(B)は図3に示すメモリセルの製造工程を示す要部断面図である。
【図5】図5は図1〜3に示すメモリセルの製造工程を示す要部平面図である。
【図6】図6は図5に示す続きの工程を示す要部平面図である。
【図7】図7は図6に示す続きの工程を示す要部平面図である。
【図8】図8は図7に示す続きの工程を示す要部平面図である。
【図9】図9は図8に示す続きの工程を示す要部平面図である。
【図10】図10は本発明の他の実施例に係る完全CMOS型SRAM装置のメモリセルの要部平面図である。
【図11】図11は本発明のさらにその他の実施例に係る完全CMOS型SRAM装置のメモリセルの要部断面図である。
【図12】図12(A),(B)は図11に示すメモリセルの製造工程を示す要部断面図である。
【図13】図13は図11に示すメモリセルの等価回路図である。
【符号の説明】
2… 絶縁層
4a… P型不純物拡散層
4b… N型不純物拡散層
5… 境界部分
6a,6a’,6b,6b’… ゲート電極
8a,8b… 記憶ノードのためのコンタクトホール
10a,10b,12a,12b,14a,14b… コンタクトホール
16… 半導体薄膜層
18… ゲート絶縁層
MC… メモリセル
DQ1,DQ2… 駆動トランジスタ
SQ3,SQ4… 選択トランジスタ
LQ5,LQ6… 負荷トランジスタ
b… ビット線
b’… 反転ビット線
W,W1,W2… ワード線
MC,MC’… メモリセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁層上に所定パターンの半導体薄膜層が形成してあるSOI基板上に、完全CMOS型のSRAMセルが形成してある完全CMOS型SRAM装置であって、SRAMセルの構成要素であるP型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とが、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成してあり、PN接合する部分の近くのN型不純物拡散層またはP型不純物拡散層に対して、半導体薄膜層の上部に形成されるゲート電極の一部が、コンタクトホールを通して接続してある完全CMOS型SRAM装置。
【請求項2】 絶縁層上に所定パターンの半導体薄膜層が形成してあるSOI基板上に、完全CMOS型のSRAMセルが形成してある完全CMOS型SRAM装置であって、SRAMセルの構成要素であるP型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とが、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成してあり、PN接合する部分のN型不純物拡散層およびP型不純物拡散層の双方に対して、半導体薄膜層の上部に形成されるゲート電極の一部が、単一のコンタクトホールを通して接続してある完全CMOS型SRAM装置。
【請求項3】 絶縁層上に所定パターンの半導体薄膜層が形成してあるSOI基板上に、完全CMOS型のSRAMセルが形成してある完全CMOS型SRAM装置であって、SRAMセルの構成要素であるP型トランジスタのP型不純物拡散層とN型トランジスタのN型不純物拡散層とが、同一パターンの半導体薄膜層内に直接PN接合するように形成してあり、各SRAMセル毎のワード線が、ビット線と直交するように、二本に分割して配列してある完全CMOS型SRAM装置。
【請求項4】 各SRAMセル毎のワード線が、ビット線と直交するように、二本に分割して配列してある請求項1または2に記載の完全CMOS型SRAM装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図13】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開平7−153854
【公開日】平成7年(1995)6月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−300676
【出願日】平成5年(1993)11月30日
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)