説明

官能化ジエンゴムを含み、ミクロゲルを含むゴム混合物、これらの混合物の製造方法、ならびに使用

【課題】官能化ジエンゴムを含み、ミクロゲルを含むゴム混合物、これらの混合物の製造方法、ならびに使用を提供する。
【解決手段】本発明は、官能化ジエンゴムを含み、ミクロゲルを含むゴム混合物、これらの混合物の製造方法、ならびに湿潤滑り抵抗を有し、かつ低い転がり抵抗を有する低摩耗自動車タイヤを製造するためのこれらの混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能化ジエンゴムを含み、ミクロゲルを含むゴム混合物、これらの混合物の製造方法、および湿潤滑り抵抗を有し、かつ低い転がり抵抗を有する高い耐摩耗性の自動車タイヤを製造するためのこれらの混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤにおいて望まれる重要な特性は、乾燥および湿潤表面への良好な接着性である。ここで、転がり抵抗および摩耗を同時に損なうことなくタイヤの滑り抵抗を向上させることは非常に困難である。低い転がり抵抗は低燃費にとって重要であり、高い耐摩耗性は高タイヤ寿命にとって決定的な要因である。
【0003】
タイヤの滑り抵抗および転がり抵抗は、タイヤを構築するために使用されるゴムの動的機械特性に大きく依存する。転がり抵抗を低くするために、タイヤトレッド用に使用されるゴムは、比較的高い温度(60℃〜100℃)で高い反発弾性を有する。他方で、湿潤滑り抵抗を向上させるために有利であるゴムは、それぞれ、低温(0℃)で高い減衰係数および0℃〜23℃の範囲で低い反発弾性を有する。この複雑な要件プロフィルに適合するために、様々なゴムからなる混合物がトレッドに使用される。通常の方法は、比較的高いガラス転移温度の1つ以上のゴム、例えば、スチレン−ブタジエンゴムと、比較的低いガラス転移温度の1つ以上のゴム、例えば、高い1,4−シス含有率を有するポリブタジエンまたは、それぞれ、低いスチレン含有率および非常に低いビニル含有率を有するスチレン−ブタジエンゴム、もしくは低いビニル含有率を有する、溶液で製造されたポリブタジエンとからなる混合物を使用することである。
【0004】
二重結合を含有するアニオン重合溶液ゴム、例えば、溶液ポリブタジエンおよび溶液スチレン−ブタジエンゴムは、低い転がり抵抗タイヤトレッドの製造のために相当する乳化ゴムよりも有利である。利点はとりわけ、ビニル含有率の制御可能性に、およびこれに関連したガラス転移温度に、ならびに分子内の分岐に見いだされる。この結果は実際に、タイヤの湿潤滑り抵抗と転がり抵抗との関係において特に利点である。例として、(特許文献1)は、溶液SBRおよびシリカからのタイヤトレッドの製造を記載している。多数の末端基修飾方法が、特性のさらなる向上を得るために開発されてきた。例えば、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを使用することが(特許文献2)に記載されており、またはシリルエーテルを使用することが(特許文献3)に記載されている。しかしながら、末端基の重量割合はゴムの高分子量のために非常に小さく、それ故末端基はフィラーとゴム分子との相互作用に小さな影響を及ぼし得るにすぎない。(特許文献4)は、カルボキシ基を含有し、そしてビニル芳香族化合物およびジエンから構成される比較的高官能化コポリマーであって、60%以下の1,2−結合ジエンの含有率(ビニル含有率)を有するコポリマーを開示している。(特許文献5)は、ジエンからおよび官能化ビニル芳香族モノマーから構成されるコポリマーを記載している。前記コポリマーの欠点は、官能化ビニル芳香族モノマーの合成が複雑で、かつ官能基の選択が大いに制限されることである(使用することができる唯一の官能基がアニオン重合反応中に開始剤といかなる反応もしないものであるため)。特に、水素結合を形成することができる水素原子を有し、それ故、ゴム混合物中のフィラーと特に有利な相互作用を形成することができる官能基を使用することは不可能である。
【0005】
文献は、タイヤの転がり抵抗の低減のための多種多様な手段を記載しており、これらには、炭素−炭素二重結合を含有するゴムから構成されるタイヤトレッドにおけるポリクロロプレンゲル((特許文献6))のおよびポリブタジエンゲル((特許文献7))の使用が含まれる。ポリクロロプレンゲルの使用の欠点は、そのゴム高価格、ポリクロロプレンの高密度、および使用済みタイヤを再利用するための処理中に塩素含有成分により起こる可能性が高い環境上の不利点に見いだされる。(特許文献7)によるポリブタジエンゲルは前記欠点を示さないが、動的減衰はここでは、低温(−20〜+20℃)でのみならず比較的高い温度(40〜80℃)でも低くなり、これは実際に、タイヤの転がり抵抗においては利点につながるが、湿潤滑り性能においては不利点につながる。(特許文献8)に従った硫黄架橋ゴムゲルは、強化作用を全く示さず、それ故本出願にとって不適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5 227 425号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A−334 042号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第A−447 066号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第A−1 000 971号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0 256 284 A1号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第A−405 216号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第A−42 20 563号明細書
【特許文献8】英国特許第1 078 400号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故、先行技術の欠点を持たないゴム混合物を提供することが目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外にも、(A)少なくとも1つのジエンをベースとし、かつ1つ以上のビニル芳香族モノマーから構成されていてもよい繰り返し単位から構成されるポリマー鎖を有する少なくとも1つの官能化ジエンゴムと、(B)トルエン中の膨潤指数が1〜25であり、かつ粒径が5〜1000nmである少なくとも1つのスチレン/ブタジエンゴムゲルと、また(C)適切な場合、さらなるゴム、フィラーおよびゴム助剤とを含む本発明によるゴム混合物が、低温で高い動的減衰および比較的高い温度で非常に低い動的減衰を有し、こうして転がり抵抗において利点を与えるのみならず、湿潤滑り性能においても、およびまた摩耗に関しても利点を与えることが今見いだされた。
【0009】
本発明はそれ故、(A)少なくとも1つのジエンをベースとし、かつ1つ以上のビニル芳香族モノマーから構成されていてもよい繰り返し単位からなるポリマー鎖を有する少なくとも1つの官能化ジエンゴムと、(B)トルエン中の膨潤指数が1〜25であり、かつ粒径が5〜1000nmである少なくとも1つのスチレン/ブタジエンゴムゲルと、また(C)適切な場合、さらなるゴム、フィラーおよびゴム助剤とを含むゴム混合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
官能化ジエンゴム(A)中のジエンは好ましくは、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエンおよび/または1,3−ヘキサジエンである。1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを使用することが特に好ましい。
【0011】
本発明の目的のための好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、o−、m−および/またはp−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンおよび/またはジビニルナフタレンである。スチレンを使用することが特に好ましい。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態では、官能化ジエンゴム(A)は、0〜60重量%、好ましくは15〜45重量%含有率の共重合ビニル芳香族モノマーと、40〜100重量%、好ましくは55〜85重量%含有率のジエンとを有し、ここで、ジエン中の1,2−結合ジエンの含有率(ビニル含有率)は0.5〜95重量%、好ましくは10〜85重量%であり、共重合ビニル芳香族モノマーとジエンとの全体は100%である。
【0013】
官能化ジエンゴム(A)は特に好ましくは、40〜100重量%の1,3−ブタジエンと0〜60重量%のスチレンとから構成され、ここで、結合した官能基および/またはこれらの塩の割合はジエンゴムの100重量%を基準として、0.02〜5重量%である。
【0014】
官能化ジエンゴム中の官能基および/またはこれらの塩の例は、カルボキシ、ヒドロキシ、アミン、カルボン酸エステル、カルボキサミドまたはスルホン酸基である。カルボキシ基またはヒドロキシ基が好ましい。好ましい塩は、アルカリ金属カルボキシレート、アルカリ土類金属カルボキシレート、カルボン酸亜鉛およびカルボン酸アンモニウム、ならびにまたアルカリ金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、スルホン酸亜鉛およびスルホン酸アンモニウムである。
【0015】
本発明の非常に特に好ましい一実施形態では、(A)は、ヒドロキシおよび/またはカルボキシ基を使用して官能化された、1,3−ブタジエンおよびスチレンをベースとする繰り返し単位から構成される官能化ジエンゴムである。
【0016】
官能化ジエンゴム(A)はここでは、例として独国特許第102008023885.6号明細書に記載されているように、溶液中における、ジエンと、適切な場合、ビニル芳香族モノマーとの重合、その後に続く官能基の導入によって好ましくは製造される。
【0017】
スチレン/ブタジエンゴムゲル(B)は、
SBR − 0〜100重量%、好ましくは10〜60重量%のスチレン含有率を有するスチレン/ブタジエンコポリマー、および/または
XSBR − 0〜99重量%のスチレン含有率を有し、かつ1〜25重量%の共重合した極性モノマーの含有率の、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−アセトキシメチルメタクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどの、さらなる極性の不飽和モノマーを含むスチレン/ブタジエンコポリマーおよびグラフトポリマー
の架橋によって製造されるミクロゲルである。
【0018】
スチレン/ブタジエンゴムゲル(B)の中で、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートおよび/またはペンタエリスリトールテトラメタクリレートを、極性不飽和モノマーとして含有するXSBR−スチレン/ブタジエンコポリマーまたはグラフトポリマーが特に好ましい。
【0019】
コポリマーという用語はまた、2つ以上のモノマーからなるポリマーを含む。
【0020】
スチレン/ブタジエンゴムゲルは、5〜1000nm、好ましくは20〜400nm(DIN 53 206に従ったDVN値)の粒径、および1〜25、好ましくは1〜20のトルエン中の膨潤指数(Q)を有する。膨潤指数は、(20,000rpmでの遠心分離後の)溶剤含有ゲルの重量と乾燥ゲルの重量とから計算される。
=ゲルの湿潤重量/ゲルの乾燥重量
【0021】
膨潤指数を測定するために、例として、250mgのSBRゲルが、振盪しながら、25mlのトルエン中で24時間膨潤させられる。ゲルは遠心分離によって単離され、秤量され、そして次に70℃で一定重量まで乾燥され、再び秤量される。
【0022】
好ましい一実施形態では、スチレン/ブタジエンゴムゲル(B)は、20〜50mgKOH/gのヒドロキシ基の含有率を有するXSBR−スチレン/ブタジエンコポリマーを含む。スチレン/ブタジエンゴムゲル(B)のヒドロキシ基含有率はここでは、mgKOH/1gのポリマー単位を用いたヒドロキシ価の形で、DIN 53240に従って無水酢酸との反応および生成した遊離酢酸のKOHでの滴定によって測定される。
【0023】
スチレン−ブタジエンゴム出発物は好ましくは乳化重合によって製造され、それに関連して例としてI.Franta,Elastomers and Rubber Compounding Materials,Elesevier,Amsterdam 1989年、88−92ページを参照されたい。
【0024】
スチレン/ブタジエンゴムゲル(B)を得るためのゴム出発物の架橋は、ラテックス状態で行われ、多官能性モノマーとの共重合による重合反応、および高転化率までの重合反応の続行中にか、高い内部変換を用いる重合による、または、重合反応後に後架橋による、あるいは2つのプロセスの組み合わせによる、モノマー供給プロセスによってかのいずれかで行うことができる。別の可能性は、調整剤、例えば、チオールの存在下での重合による製造である。
【0025】
架橋作用を有する多官能性化合物との共重合によるスチレン/ブタジエンゴムの架橋の場合には、少なくとも2つの、好ましくは2〜4個の共重合性の炭素−炭素二重結合を有する多官能性コモノマー(例えば、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、フタル酸ジアリル、トリ−アリルシアヌレート、トリ−アリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、N,N’−m−フェニレンマレインイミドおよび/またはトリメリット酸トリアリール)を使用することが好ましい。使用することができる他の化合物は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、2〜20個、好ましく2〜8個のオキシエチレン単位を有するポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの、多価の、好ましく2価〜4価のC〜C10アルコールのアクリレートおよびメタクリレート、ならびに脂肪族ジオールおよびポリオールから構成される不飽和ポリエステル、更にはマレイン酸、フマル酸および/またはイタコン酸である。多官能性化合物の使用量は、全体モノマー混合物を基準として、好ましくは0.5〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
【0026】
SBR−ゴムゲルを得るためのスチレン/ブタジエンゴムの架橋はまた、架橋効果を有する化学薬品を使用する後架橋によりラテックス形態で行うことができる。架橋効果を有する好適な化学薬品の例は、有機過酸化物、例えば、ジクミルペルオキシド,t−ブチルクミルペルオキシド、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル、ならびにまた、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスシクロヘキサノニトリルなどの有機アゾ化合物、ならびにまた、ジメルカプトエタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、1,3,5−トリメルカプトトリアジンなどのジ−およびポリメルカプト化合物、ならびにビス−クロロエチルホルマールと多硫化ナトリウムとのメルカプト末端反応生成物などの、メルカプト末端ポリスルフィドゴムである。後架橋反応を実施するための理想的な温度は必然的に、架橋剤の反応性に依存する。この反応は、適切な場合には高圧で、室温〜約170℃以下の温度で実施することができ、それに関連してHouben−Weyl,Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、第4版、第14/2巻、848ページを参照されたい。
【0027】
過酸化物が特に好ましい架橋組成物である。この関連で、例えば、欧州特許出願公開第A−1 307 504号明細書が言及される。
【0028】
適切な場合、粒子拡大もまた、ラテックス形態での後架橋前に、後架橋中にまたは後架橋後に凝集によって実施されてもよい。
【0029】
有機溶媒中で製造されたスチレン/ブタジエンゴムはまた、スチレン/ブタジエンゴムゲルの製造用の出発原料として役立つことができる。この場合には、水中のゴムの溶液を、適切な場合、乳化剤を用いて乳化させ、そして有機溶媒の除去前にまたは後に、好適な架橋剤を使用して、得られたエマルジョンをその後架橋させることが望ましい。好適な架橋剤は前述の架橋剤である。
【0030】
本発明の好ましい一実施形態では、スチレン/ブタジエンゴムゲル(B)の割合は、ゴムの総量の100重量部を基準として、1〜100重量部、特に好ましくは5〜75重量部である。総量という用語は、官能化ジエンゴムのみならず存在するかもしれない任意の前述のゴムもまた含む。
【0031】
本発明によるゴム混合物は、前述した官能化ジエンゴム(A)およびスチレン/ブタジエンゴムゲル(B)のみならず、成分(C)として、天然ゴムあるいは他の合成ゴムなどの、他のゴムを含むことができる。それらが存在する場合、これらの量は通常、ゴム混合物中のゴムの全体を基準として、0.5〜85重量%、好ましくは10〜75重量%の範囲にある。追加して加えられるゴムの量は順繰りに、本発明によるゴム混合物のそれぞれの意図される使用に依存する。
【0032】
追加のゴムの例は、天然ゴムおよび合成ゴムである。
【0033】
文献から公知の合成ゴムを、例としてここに挙げる。それらはとりわけ、
BR − ポリブタジエン
ABR − ブタジエン/C〜Cアルキルアクリレートコポリマー
IR − ポリイソプレン
E−SBR − 乳化重合によって製造された、1〜60重量%、好ましくは20〜50重量%のスチレン含有率を有するスチレン−ブタジエンコポリマー
IIR − イソブチレン−イソプレンコポリマー
NBR − 5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%のアクリロニトリル含有率を有するブタジエン−アクリロニトリルコポリマー
HNBR − 部分水素化または完全水素化NBRゴム
EPDM − エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー
およびまた前記ゴムの混合物を含む。自動車タイヤの製造のために興味のある材料は、特に天然ゴム、E−SBR、およびまた50℃より上のガラス転移温度の溶液SBR、Ni、Co、TiまたはNdをベースとする触媒を使用して製造された、高シス含有率(90%超)を有するポリブタジエンゴム、およびまた80%以下のビニル含有率を有するポリブタジエンゴム、ならびにまたこれらの混合物である。
【0034】
本発明によるゴム混合物のために使用することができるフィラーは、ゴム工業での使用について知られるフィラーのいずれかである。これらは、活性フィラーおよび不活性フィラーの両方を含む。
【0035】
挙げられ得る例は、
− 比表面積が5〜1000m/g(BET表面積)、好ましくは20〜400m/gの、および一次粒径が10〜400nmの、例としてケイ酸塩の溶液からの沈殿、またはハロゲン化ケイ素の火炎加水分解により製造された、微細粒子シリカ。シリカはまた、適切な場合、Alの、Mgの、Caの、Baの、Znの、Zrの、またはTiの酸化物などの、他の金属酸化物との混合酸化物の形態を取ることもでき;
− BET表面積が20〜400m/gの、および一次粒径が10〜400nmの、ケイ酸アルミニウムなどの、合成シリケート、またはアルカリ土類金属シリケート、例えば、ケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸カルシウム;
− カオリンおよび任意の他の天然由来形態のシリカなどの、天然シリケート;
− ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット、より糸)、またはガラスマイクロビーズ;
− 酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または酸化アルミニウムなどの、金属酸化物;
− 炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、または炭酸亜鉛などの、金属炭酸塩;
− 金属水酸化物、例えば、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム;
− 硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの、金属硫酸塩;
− カーボンブラック:ここで使用されるべきカーボンブラックは、それらのBET表面積が9〜200m/gである、火炎−ブラック法、チャネル−ブラック法、ファーネス−ブラック法、ガス−ブラック法、サーマル−ブラック法、またはアセチレン−ブラック法、またはアーク法によって製造されたカーボンブラック、例えば次のカーボンブラック:SAF、ISAF−LS、ISAF−HM、ISAF−LM、ISAF−HS、CF、SCF、HAF−LS、HAF、HAF−HS、FF−HS、SPF、XCF、FEF−LS、FEF、FEF−HS、GPF−HS、GPF、APF、SRF−LS、SRF−LM、SRF−HS、SRF−HMおよびMT、またはASTMに従った次のカーボンブラック:N110、N219、N220、N231、N234、N242、N294、N326、N327、N330、N332、N339、N347、N351、N356、N358、N375、N472、N539、N550、N568、N650、N660、N754、N762、N765、N774、N787およびN990であり;
− ゴムゲル、特に、粒径が5〜1000nmのポリブタジエンおよび/またはポリクロロプレンをベースとするもの
である。
【0036】
使用される好ましいフィラーは、微細粒子シリカおよび/またはカーボンブラックを含む。
【0037】
述べられるフィラーは、単独でかまたは混合物で使用することができる。特に好ましい一実施形態では、ゴム混合物は、フィラーとして、微細粒子シリカなどの、淡色フィラーから、およびカーボンブラックからなる混合物を含み、ここで、淡色フィラー対カーボンブラックの混合比は、0.01:1〜50:1、好ましくは0.05:1〜20:1である。
【0038】
フィラーのここでの使用量は、ゴムの100重量部を基準として、10〜500重量部の範囲にある。20〜200重量部を使用することが好ましい。
【0039】
本発明の別の実施形態では、ゴム混合物はまた、例えばゴム混合物の加工特性を向上させるか、またはゴム混合物の架橋に役立つか、またはこれらの具体的な意図される使用のための、本発明によるゴム混合物から製造された加硫物の物理的特性を向上させるか、またはゴムとフィラーとの相互作用を向上させるかまたはフィラーへのゴムの結合に役立つゴム助剤を含む。
【0040】
ゴム助剤の例は、架橋剤、例えば、硫黄または硫黄供与体化合物、およびまた反応促進剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、シラン、抑制剤、金属酸化物、増量剤オイル、例えば、DAE(留出物芳香族抽出物)オイル、TDAE(被処理抽出物芳香族抽出物)オイル、MES(穏和抽出溶媒和物)オイル、RAE(残留芳香族抽出物)オイル、TRAE(被処理残留芳香族抽出物)オイル、ならびにナフテン系および重質ナフテン系オイル、ならびにまた活性化剤である。
【0041】
好適なシランの例は、欧州特許出願公開第A−1318172号明細書に記載されている化合物である。好ましいシランは、次の構造式:
【化1】

(式中、n=2〜6であり、その数の平均は好ましくは2または4であり、R1〜R6は、1〜12個の炭素原子を有する同一であるかまたは異なるアルコキシ部分、好ましくはメトキシおよび/またはエトキシである)
のビス(トリアルコキシシリルプロピルポリスルファン)などの、硫黄含有有機ケイ素化合物である。このタイプの製品は、EvonikからSi75シラン(n=2)およびSi69シラン(n=4)として商業的に入手可能である。
【0042】
硫黄含有有機ケイ素化合物の使用される総量は有利には、全ゴムの100重量部を基準として、0.2phr〜12phrである。
【0043】
ゴム助剤の総量は、全ゴムの100重量部を基準として、1〜300重量部の範囲にある。5〜150重量部のゴム助剤を使用することが好ましい。
【0044】
本発明は、少なくとも1つの官能化ジエンゴムが少なくとも1つのスチレン/ブタジエンゴムゲルとおよび、適切な場合、さらなるゴム、フィラー、およびゴム助剤と前述の量で、20〜220℃の温度で混合装置にて混合されることによる、本発明によるゴム混合物の製造方法をさらに提供する。
【0045】
混合物は、一段階法でかまたは多段階法で製造することができ、2〜3の混合段階が好ましい。硫黄および促進剤の添加は好ましくは、最終混合段階で、例えば、ロールで行われ、好ましい温度はここでは30〜90℃の範囲にある。
【0046】
混合物の製造に好適なアセンブリの例は、ロール、混練機、内部ミキサーまたは混合押出機である。
【0047】
本発明はまた、ゴム加硫物の製造のための、特にタイヤ、具体的にはタイヤトレッドの製造のための本発明によるゴム混合物の使用を提供する。
【0048】
本発明によるゴム混合物はまた、成形品の製造に、例えば、ケーブル外装材料の、または可撓性チューブ材料の、または駆動ベルト、コンベヤベルト、ロールカバー、靴底、ガスケットリングおよび減衰エレメントの製造にも好適である。
【0049】
以下の実施例は、結果として生じるいかなる限定効果もなく、本発明を例示するのに役立つ。
【実施例】
【0050】
スチレン/ブタジエンゴムゲルの製造
配合研究のために、Tg=−15℃のスチレン/ブタジエンゴムゲルを使用した。このゲルは、95重量%のトルエン不溶性部分を有する。トルエン中の膨潤指数は7.4である。ヒドロキシ価は32.8mgのKOH/ゲルgである。
【0051】
このゲルは、(モノマーの表示部を基準として)300部の水、4.5部の樹脂酸、開始剤としての0.1部のパラ−メンタンヒドロペルオキシド、0.07部のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、0.05部の硫酸鉄七水和物および0.15部のホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウムの存在下で、以下のモノマー混合物の12時間の共重合によって製造した。
【0052】
【表1】

【0053】
混合物を次に加熱し、残存モノマーを70℃の温度で減圧での水蒸気蒸留によって除去し、生成物の100部を基準として、2部の酸化防止剤2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを次に添加した。ラテックスを次に、凝固をもたらすために塩化ナトリウム/硫酸の水溶液に加えた。ゴム小片を単離し、水で洗浄し、50℃で減圧下で乾燥させた。
【0054】
ゴム混合物は、官能化ジエンゴムとして、次の通り構成されるスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を使用した:
ビニル含有率:オイルを含まないゴムを基準として、46重量%、
スチレン含有率:オイルを含まないゴムを基準として、24.5重量%、
Mooney粘度:DIN 53 523に従ってML1+4(100℃)として測定される、52ME、
オイル含有率(TDAEオイル):オイル増量ゴムを基準として、29.1重量%、
COOH官能性:35ミリ当量/kg。
【0055】
比較のために、次の通り構成される、非官能化スチレン−ブタジエンゴムBUNA VSL 5025−2、Lanxess Deutschland GmbH(Lanxess)製の製品を使用した:
ビニル含有率:オイルを含まないゴムを基準として、46重量%、
スチレン含有率:オイルを含まないゴムを基準として、24重量%、
Mooney粘度:DIN 53 523に従ってML1+4(100℃)として測定される、50ME、
オイル含有率(TDAEオイル):オイル増量ゴムを基準として、27.5重量%。
【0056】
ゴム混合物の構成を下の表2に照合する。
【0057】
【表2】

【0058】
(硫黄、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジフェニルグアニジン、およびまたスルホンアミドなしの)前述の混合物を、150℃で1.5L混練機にて第1混合段階で混合した。混合物を次に排出し、室温に24時間冷却し、第2混合工程において、1.5L混練機にて150℃に再加熱した。それを次に冷却し、混合物成分硫黄およびN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジフェニルグアニジン、およびまたスルホンアミドを次にロールで40〜60℃で混ぜ合わせた。
【0059】
前述の混合物をプレスにて160℃で20分間加硫した。相当する加硫物の特性を表3に挙げる。
【0060】
【表3】

【0061】
タイヤ用途は低い転がり抵抗を必要とし、この低い転がり抵抗は、加硫物において、測定される値が60℃での反発弾性について高い値であり、高温(60℃)での動的減衰におけるtanδについて低い値であり、かつ、振幅掃引におけるtanδ最大について低い値であるときにもたらされる。表3から理解できるように、本発明による実施例4の加硫物は、60℃での高い反発弾性、60℃での動的減衰において低いtanδ値、および振幅掃引において低いtanδ最大を特色とする。
【0062】
タイヤ用途はまた高い湿潤滑り抵抗を必要とし、この高い湿潤滑り抵抗は、加硫物が低温(0℃)での動的減衰において高いtanδ値を有するときにもたらされる。表2から理解できるように、本発明による実施例4の加硫物は、0℃での動的減衰において高いtanδ値を特色とする。
【0063】
タイヤ用途は高い耐摩耗性をさらに必要とする。表3から理解できるように、本発明による実施例4の加硫物は、非常に低いDIN摩耗を特色とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つのジエンをベースとし、かつ1つ以上のビニル芳香族モノマーから構成される繰り返し単位から構成されるポリマー鎖を有する少なくとも1つの官能化ジエンゴムと、(B)トルエン中の膨潤指数が1〜25であり、かつ粒径が5〜1000nmである少なくとも1つのスチレン/ブタジエンゴムゲルと、また(C)適切な場合、さらなるゴム、フィラーおよびゴム助剤とを含むゴム混合物。
【請求項2】
前記官能化ジエンゴムが1,3−ブタジエンおよびスチレンをベースとする繰り返し単位から構成され、そしてヒドロキシおよび/またはカルボキシ基を用いて官能化されたものであることを特徴とする請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項3】
40〜100重量%の1,3−ブタジエンと0〜60重量%のスチレンとから構成され、そして結合した官能基および/またはこれらの塩の割合が、ジエンゴムの100重量%を基準として、0.02〜5重量%であることを特徴とする請求項2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
ゴムの総量の100重量部を基準とする、前記スチレン/ブタジエンゴムゲルの割合が1〜100重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項5】
ゴムの総量の100重量部を基準とする、前記スチレン/ブタジエンゴムゲルの割合が5〜75重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項6】
前記スチレン/ブタジエンゴムゲルが、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートおよび/またはペンタエリスリトールテトラメタクリレートを含む、XSBR−スチレン/ブタジエンコポリマーおよびグラフトポリマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項7】
少なくとも1つの官能化ジエンゴムが、少なくとも1つのスチレン/ブタジエンゴムゲルと、適切な場合、さらなるゴム、フィラーおよびゴム助剤と20〜220℃の温度で混合装置にて混合されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム混合物の製造方法。
【請求項8】
ゴム加硫物の製造のための請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム混合物の使用。
【請求項9】
タイヤの製造のための請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム混合物の使用。

【公開番号】特開2010−95724(P2010−95724A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−240361(P2009−240361)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】