説明

官能基選択的水素化触媒、及び官能基選択的水素化方法

【課題】有機化合物中に存在する炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基を選択的に水素化でき、同化合物中に芳香環結合ハロゲン原子、O−ベンジル基、芳香族ケトン性カルボニル基、N−ベンジルオキシカルボニル基および/または芳香族ニトリル基が存在してもこれらの官能基に対しては実質的に水素化活性を示さない官能基選択的水素化触媒、および該触媒を使用する官能基選択的水素化方法を提供する。
【解決手段】該触媒は、担体と、該担体に共存担持されたパラジウム及び有機硫黄化合物とから構成される。また、該官能基選択的水素化方法は該触媒の存在下で有機硫黄化合物を水素ガスと湿式で接触させることからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能基選択的水素化触媒、及び官能基選択的水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化または水素化分解を受ける官能基を複数種類持つ化合物は多く存在するが、それらの官能基のうちの一部のみを選択的に水素化または水素化分解する触媒は知られている。例えば、非特許文献1には、カーボンブラックにエチレンジアミンをパラジウムと共に担持させた炭素触媒が記載されているが、ベンジルエーテルのO−ベンジル基およびN−ベンジルオキシカルボニル基からなる群の中の少なくとも一つの官能基存在下でこれらの官能基を水素化分解せずに、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基からなる群の中の少なくとも一つの官能基を水素化することができる。しかしながら、芳香族ケトン性カルボニル基や、O―ベンジル基でもベンジルエステルのO−ベンジル基は水素化分解を受けてしまうという問題点がある。
【0003】
特許文献1には、2,4−ジニトロアニリンを硫黄で被毒したパラジウム触媒の存在下で水素還元反応させて、2位のニトロ基を選択的に水素還元して2−ジアミノ−4−ニトロベンゼンを高収率で得る方法が記載されている。
【0004】
【非特許文献1】Chem.Commun., 1999, 1041
【特許文献1】特開平5−213834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、N−ベンジルオキシカルボニル基、ベンジルエーテルのO−ベンジル基の他、ベンジルエステルのO−ベンジル基を含めたO−ベンジル基全般や芳香族ケトン性カルボニル基、芳香族ニトリル基或いは芳香環結合ハロゲン原子が同一化合物内に存在していてもこれらを水素化または水素化分解することなく、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を選択的に水素化する触媒、触媒の製造方法及び該触媒を使用する水素化方法を提供することである。
【0006】
本発明者らは、パラジウム系触媒を鋭意検討した結果、有機硫黄化合物をパラジウム触媒へ担持させた触媒が、課題を解決する官能基選択的水素化能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、担体と、該担体に共存担持されたパラジウム及び有機硫黄化合物とを有してなり、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する有機化合物の前記官能基の選択的水素化用触媒を提供するものである。
【0008】
更に、本発明は、上記の選択的水素化触媒の存在下で、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する有機化合物を湿式で水素化処理し、前記の官能基を実質的に選択的に水素化する官能基選択的水素化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の官能基選択的水素化触媒および水素化方法を用いれば、有機化合物中に存在する炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基が選択的に水素化されるが、該有機化合物中に同時に芳香環結合ハロゲン原子、O−ベンジル基、芳香族ケトン性カルボニル基、N−ベンジルオキシカルボニル基および/または芳香族ニトリル基などの官能基が存在してもこれらの官能基は実質的に水素化も水素化分解も受けない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。本願の特許請求の範囲及び明細書においては、下記の用語は以下の通りの意味で用いられる。
・「芳香族ホルミル基」:芳香族アルデヒドを構成するホルミル基であって、該ホルミル基が結合する炭素原子が芳香族の炭素環または複素環の一員であるホルミル基。
・「芳香族ニトロ基」:芳香族の炭化水素環または複素環に結合したニトロ基。
・「芳香環結合ハロゲン原子」:芳香族の炭素環または複素環に結合したハロゲン原子。
・「芳香族ケトン性カルボニル基」:ケトンを構成するカルボニル基であって、該カルボニル基が結合する二つの炭素原子のうちの少なくとも一方が芳香族の炭素環または複素環の一員であるカルボニル基。
・「O−ベンジル基」:酸素原子(O)に結合したベンジル基。
・「N−ベンジルオキシカルボニル基」:窒素原子(N)に結合したベンジルオキシカルボニル基。
・「芳香族ニトリル基」:芳香族の炭化水素環または複素環に結合したニトリル基(−CN)。
【0011】
本発明の官能基選択的水素化触媒の製造方法は、特に限定されないが、通常、担体にパラジウムを担持させてなるパラジウム触媒に有機硫黄化合物を担持することにより製造することができる。
【0012】
担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ及び炭素系担体などが使用することができ、好ましくは、炭素系担体、例えばカーボンブラック及び活性炭であり、活性炭が特に好ましい。
【0013】
担体の比表面積については特に限定されないが、50〜3000m2/gが好ましく、100〜1500 m2/gが特に好ましい。
【0014】
また、担体の粒径については特に限定されないが、メジアン径が0.5〜500μmの範囲であることが好ましく、5〜500μmが特に好ましい。
【0015】
パラジウム触媒の製造は、例えば、パラジウム化合物を溶媒に溶解し、当該溶液中に担体を投入し、パラジウム化合物を吸着または含浸することにより行う。パラジウム化合物が塩化パラジウム酸など水溶性の場合には水を溶媒として用いることができる。パラジウム化合物が、ビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウムなど非水溶性の場合には、当該パラジウム化合物を溶解する有機溶媒を用いて吸着または含浸することができる。パラジウムを吸着または含浸などの方法で担体に担持した触媒は、必要に応じて還元処理を実施してもよい。湿式で還元する場合には、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸などの還元剤のほか、ガス状水素を用いることができる。乾式で還元する場合にはガス状水素を用いて行うが、水素ガスを窒素等の不活性ガスで希釈して使用することも可能である。
【0016】
有機硫黄化合物については、孤立電子対を有している硫黄原子を含む有機化合物であれば特に制限するものではないが、例えば、下記一般式(I):
−S−R (I)
(式中、R及びRは水素、炭素原子数1から12のアルキルもしくはアルケニル、炭素原子数6から8のアリール基を表し、またはR及びRが結合して炭素原子数2から6のアルキレンまたはアルカジエニレンを形成してもよく、R及びRが同時に水素となることはない)
で表される有機硫黄化合物の他、
2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、6−メルカプトー1−ヘキサノールなどの孤立電子対を有する硫黄原子を含むアルコール、チオリンゴ酸、チオ乳酸などの孤立電子対を有する硫黄原子を含むカルボン酸、2−メルカプトエチルアミン、3−メルカプト−1−プロピルアミン、チオ尿素などの孤立電子対を有する硫黄原子を含むアミン、システイン、メチオニンおよびシスチンなどの孤立電子対を有する硫黄原子を含むアミノ酸、1,3−チアゾール、1,3,4−チアジアゾール、エチレンチオ尿素などの孤立電子対を有する硫黄原子を含む複素環化合物などが挙げられ、一般式(I)で表される有機化合物がより好ましい。
【0017】
一般式(I)で表される化合物については特に限定するものではないが、例えば、ジ−n−ブチルスルフィド、ジ−tert−ブチルスルフィド、ジ−n−ヘキシルスルフィド、ジ−n−オクチルスルフィド、ジ−(2−エチルヘキシル)スルフィド、ドデカンチオール、ジフェニルスルフィド、テトラヒドロチオフェン、チオフェンなどが挙げられ、ジフェニルスルフィドが特に好適である。
【0018】
有機硫黄化合物が共存担持されるパラジウム触媒については、特に限定するものではないが、パラジウム−アルミナ触媒、パラジウム−シリカ触媒、パラジウム−シリカアルミナ触媒、及びパラジウム−炭素触媒などが好適であり、パラジウム炭素触媒が特に好適である。
【0019】
有機硫黄化合物のパラジウム触媒への共存担持方法は湿式で、即ち、溶媒中で行われる。担持の時に使用する溶媒については特に限定するものではないが、当該有機硫黄化合物を溶解するものが好ましい。水溶性の有機硫黄化合物に対する溶媒としては水が好ましく、非水溶性の有機硫黄化合物に対する溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類、及び、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類が好ましい。
【0020】
パラジウム触媒に共存担持する有機硫黄化合物の量については特に制限するものではないが、硫黄/パラジウムのモル比で0.01〜10が好適であり、0.1〜3が特に好適である。この範囲より少ないと官能基水素化選択性が低下する傾向があり、多すぎると水素化活性が低下する傾向がある。
【0021】
パラジウム触媒に有機硫黄化合物を共存担持する際の温度については特に限定するものではないが、室温(20℃、以下同じ)から溶媒の沸点までの温度範囲が好適である。
【0022】
パラジウム触媒のパラジウム含有率は特に限定するものではないが、1〜50重量%が好適であり、5〜20重量%が特に好適である。また、パラジウム触媒の形状は特に限定するものではないが、粉末状または顆粒状が好適であり、粉末状が特に好適である。
【0023】
有機硫黄化合物が共存担持したパラジウム触媒は、ろ過等の方法によって溶媒から分離することができる。必要に応じて洗浄、乾燥をして、本発明の官能基選択的水素化触媒を製造することができる。
【0024】
本発明の官能基選択的水素化方法は、芳香環結合ハロゲン原子、O−ベンジル基、芳香族ケトン性カルボニル基、N−ベンジルオキシカルボニル基および芳香族ニトリル基からなる群の中の少なくとも一つの官能基と、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基からなる群の中の少なくとも一つの官能基を有する基質を、有機硫黄化合物を共存担持したパラジウム炭素触媒の存在下で水素と接触させる。
【0025】
本発明の官能基選択的水素化方法の対象となる化合物(基質)としては、例えば、芳香環結合ハロゲン原子、O−ベンジル基、芳香族ケトン性カルボニル基、N−ベンジルオキシカルボニル基および芳香族ニトリル基からなる群の中の少なくとも一つの官能基と、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基からなる群の中の少なくとも一つの官能基を有する化合物が挙げられ、またこれらに限定するものではないが、それらのより具体的な例としては、O−ベンジルで保護されたtrans−スチルベン−4,4−ジカルボン酸ジベンジルや5−ヘキシン酸ベンジルなどが挙げられる。
【0026】
また、これら基質となる化合物には、芳香環結合ハロゲン原子、O−ベンジル基、芳香族ケトン性カルボニル基、N−ベンジルオキシカルボニル基もしくは芳香族ニトリル基、または、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基もしくは芳香族ニトロ基以外の官能基があっても差し支えない。
本発明の官能基選択的水素化方法は湿式で、即ち、溶媒中で行われる。溶媒については特に限定するものではないが、反応基質を溶解するものが好ましい。水溶性の有機硫黄化合物に対する溶媒としては水が好ましく、非水溶性の有機硫黄化合物に対する溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類、及び、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類が好ましい。
【0027】
本発明の官能基選択的水素化方法の反応温度は特に限定するものではないが、室温(20℃、以下同じ)から溶媒の沸点までの温度範囲が好適である。
また、本発明の官能基選択的水素化方法において水素の存在は必須である。水素は遊離の状態の水素であり、通常、水素ガスとして反応中にあるいは反応に先んじて反応系に供給すればよい。例えば、攪拌下の反応液の上部気相部に供給してもよいし、通気してもよい。水素は例えば窒素などの不活性気体との混合ガスとして供給してもよい。供給された水素の圧力は特に限定するものではないが、水素分圧として0.05〜100気圧が好適であり、0.5〜10気圧が特に好適である。反応終了後は、使用した触媒をろ過等の簡便な方法で生成物を含む溶液から容易に分離することができる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒の調製〕
アルゴンを満たしたナス型フラスコに10重量%パラジウムカーボン粉末K−Type触媒(エヌ・イー ケムキャット社製)を532.1mgを秤り取り、10mlのメタノールを加えた。ジフェニルスルフィド186.3mgを添加し、アルゴン雰囲気下5日間攪拌を行った。触媒をろ別しメタノール10ml、エーテル10mlで洗浄した後、デシケータ内で乾燥してジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を得た。
【実施例2】
【0029】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの官能基選択的水素化〕
芳香族ケトン性カルボニル基と炭素−炭素二重結合とを持つ化合物である1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オン100mgをメタノール1mlに溶解し、実施例1で調製したジフェニルスルフィドを添着したパラジウム炭素触媒10mgを添加した。バルーンによる水素微加圧下室温で3時間反応させた。触媒をろ別後反応液をガスクロマトグラフ分析法にかけて、反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である1,5−ジフェニルペンタン−1−オンの選択率95%、芳香族ケトン性カルボニル基と炭素−炭素結合二重結合の両官能基が水素化された生成物である1,5−ジフェニルペンタン−1−オールの選択率5%。
【実施例3】
【0030】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた3−フェニルアクリル酸ベンジルエステルの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに、炭素−炭素二重結合とカルボン酸ベンジルエステルのO−ベンジル基を持つ3−フェニルアクリル酸ベンジルエステルを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である3−フェニルプロピオン酸ベンジルエステルの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合が水素化され更にカルボン酸ベンジルエステルのO−ベンジル基が水素化分解された生成物である3−フェニルプロピオン酸の選択率0%。
【実施例4】
【0031】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに、炭素−炭素二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基を持つ1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オンを用い、反応時間を23時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である1,3−ジフェニルプロパン−1−オンの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基の両官能基が水素化された生成物である1,3−ジフェニルプロパン−1−オールの選択率0%。
【実施例5】
【0032】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−プロペン−1−オンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに、炭素−炭素二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基及び芳香環結合ハロゲン原子を持つ1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−プロペン−1−オンを用い、反応時間を23時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である1−(4−クロロフェニル)−3−フェニルプロパン−1−オンの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基の両官能基が水素化された生成物である1−(4−クロロフェニル)−3−フェニルプロパン−1−オールの選択率0%、炭素−炭素結合二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基の両官能基が水素化され、更に芳香環結合ハロゲン原子が水素化分解された生成物である1,3−ジフェニルプロパン−1−オールの選択率0%。
【実施例6】
【0033】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた2−アリル−4−ヒドロキシアセトフェノンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに、炭素−炭素二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基を持つ2−アリル−4−ヒドロキシアセトフェノンを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である2−プロピル−4−ヒドロキシアセトフェノンの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基の両官能基が水素化された生成物である4−(1−ヒドロキシエチル)−3−プロピルフェノールの選択率0%。
【実施例7】
【0034】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた3−アリル−2、4−ジヒドロキシ−5−ベンゾイルベンゾフェノンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに、炭素−炭素二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基を持つ3−アリル−2、4−ジヒドロキシ−5−ベンゾイルベンゾフェノンを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である3−プロピル−2、4−ジヒドロキシ−5−ベンゾイルベンゾフェノンの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合と一方の芳香族ケトン性カルボニル基が水素化された生成物である3−アリル−2、4−ジヒドロキシ−5−(フェニルヒドロキシメチル)ベンゾフェノンの選択率0%、炭素−炭素結合二重結合と両方の芳香族ケトン性カルボニル基が水素化された生成物3−アリル−2、4−ジヒドロキシ−1,5−ビス(フェニルヒドロキシメチル)ベンゼンの選択率0%。
【実施例8】
【0035】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた1,4−ジフェニル−2−ブテン−1,4−ジオンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに、炭素−炭素二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基を持つ1,4−ジフェニル−2−ブテン−1,4−ジオンを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である1,4−ジフェニルブタン−1,4−ジオンの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合と一方の芳香族ケトン性カルボニル基が水素化された生成物である1,4−ジフェニル−4−ヒドロキソブタン−1オンの選択率0%、炭素−炭素結合二重結合と両方の芳香族ケトン性カルボニル基が水素化された生成物1,4−ジフェニルブタン−1,4−ジオールの選択率0%。
【実施例9】
【0036】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた1,3−ジフェニル−2−プロピン−1−オンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに、炭素−炭素三重結合と芳香族ケトン性カルボニル基を持つ1,3−ジフェニル−2−プロピン−1−オンを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合三重結合のみが水素化された生成物である1,3−ジフェニル−1−プロパノンの選択率72%、炭素−炭素結合三重結合と芳香族ケトン性カルボニル基が水素化された生成物である1,3−ジフェニル−1−プロパノールの選択率28%。
【実施例10】
【0037】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いたメタクリル酸ベンジルの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに、炭素−炭素二重結合とベンジルエステルのO−ベンジル基を持つメタクリル酸ベンジルを用い、反応時間を24時間とし、分析法をガスクロマトグラフ法から1H−NMR法に変えた以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である2−メチルプロピオン酸ベンジルの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されベンジルエステルのO−ベンジル基が水素化分解された生成物である2−メチルプロピオン酸の選択率0%。
【実施例11】
【0038】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いたアクリル酸ベンジルの官能基選択的水素化〕
実施例10において、メタクリル酸ベンジルの代わりにアクリル酸ベンジルを用いた以外は実施例10と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物であるプロピオン酸ベンジルの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されベンジルエステルのO−ベンジル基が水素化分解された生成物であるプロピオン酸の選択率0%。
【実施例12】
【0039】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いたtrans−スチルベンー4,4‘−ジカルボン酸ジベンジルの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに炭素−炭素結合二重結合とベンジルエステルのO−ベンジル基を持つtrans−スチルベン−4,4‘−ジカルボン酸ジベンジルを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素二重結合のみが水素化された生成物であるビベンジル−4,4‘−ジカルボン酸ジベンジルの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されベンジルエステルのO−ベンジル基がひとつ水素化分解された生成物であるビベンジル−4,4‘−ジカルボン酸モノベンジルの選択率0%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されベンジルエステルのO−ベンジル基が両方とも水素化分解された生成物であるビベンジル−4,4‘−ジカルボン酸の選択率0%。
【実施例13】
【0040】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた5−ヘキシン酸ベンジルの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに炭素−炭素結合三重結合とベンジルエステルのO−ベンジル基を持つ5−ヘキシン酸ベンジルを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合三重結合のみが水素化された生成物であるヘキサン酸ベンジルの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されベンジルエステルのO−ベンジル基が水素化分解された生成物であるヘキサン酸の選択率0%。
【実施例14】
【0041】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いたジアリルベンジルオキシカルボニルアミンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに炭素−炭素結合二重結合とN−ベンジルオキシカルボニル基を持つジアリルベンジルオキシカルボニルアミンを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物であるジプロピルベンジルオキシカルボニルアミンの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されN−ベンジルオキシカルボニル基が水素化分解された生成物であるジプロピルアミンの選択率0%。
【実施例15】
【0042】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた3−{4−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノフェニル}−2−プロペン酸エチルの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに炭素−炭素結合二重結合とN−ベンジルオキシカルボニル基を持つ3−{4−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノフェニル}−2−プロペン酸エチルを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である3−{4−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノフェニル}プロピオン酸エチルの選択率98%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されN−ベンジルオキシカルボニル基が水素化分解された生成物である3−(4−アミノフェニル)プロピオン酸エチルの選択率2%。
【実施例16】
【0043】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いたアクリル酸2−(N−ベンジルオキシカルボニル)ベンジルの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに炭素−炭素結合二重結合とN−ベンジルオキシカルボニル基を持つアクリル酸2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノベンジルを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物であるプロピオン酸2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノベンジルの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されN−ベンジルオキシカルボニル基が水素化分解された生成物であるプロピオン酸2−アミノベンジルの選択率0%。
【実施例17】
【0044】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いたN−アリル−N−ベンジルオキシカルボニルアニリンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに炭素−炭素結合二重結合とN−ベンジルオキシカルボニル基を持つN−アリル−N−ベンジルオキシカルボニルアニリンを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物であるN−プロピル−N−ベンジルオキシカルボニルアニリンの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されN−ベンジルオキシカルボニル基が水素化分解された生成物であるN−アリルアニリンの選択率0%。
【実施例18】
【0045】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いたN−ベンジルオキシカルボニルアントラニル酸3−フェニル−2−プロペニルの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに炭素−炭素結合二重結合とN−ベンジルオキシカルボニル基を持つN−ベンジルオキシカルボニルアントラニル酸3−フェニル−2−プロペニルを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物であるN−ベンジルオキシカルボニルアントラニル酸3−フェニル−2−プロピルの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合が水素化されN−ベンジルオキシカルボニル基が水素化分解された生成物であるアントラニル酸3−フェニル−2−プロピルの選択率0%。
【実施例19】
【0046】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いたp−ニトロベンゾフェノンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに芳香族ニトロ基と芳香族ケトン性カルボニル基を持つp−ニトロベンゾフェノンを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。芳香族ニトロ基のみが水素化された生成物であるp−アミノベンゾフェノンの選択率100%、芳香族ニトロ基と芳香族ケトン性カルボニル基の両方が水素化された生成物である4−(1−ヒドロキシエチル)アニリンの選択率0%。
【実施例20】
【0047】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた1−(4−ニトロフェニル)−3−フェニル−2−プロペン−1−オンの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに芳香族ニトロ基と炭素−炭素結合二重結合と芳香族ケトン性カルボニル基を持つ1−(4−ニトロフェニル)−3−フェニル−2−プロペン−1−オンを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。芳香族ニトロ基と炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である1−(4−アミノフェニル)−3−フェニルプロパン−1−オンの選択率100%、芳香族ニトロ基と炭素−炭素結合二重結合及び芳香族ケトン性カルボニル基が水素化された生成物である1−(4−アミノフェニル)−3−フェニルプロパン−1−オールの選択率0%。
【実施例21】
【0048】
〔ジフェニルスルフィドを共存担持したパラジウム炭素触媒を用いた3−フェニルアクリロニトリルの官能基選択的水素化〕
実施例2において、1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの代わりに炭素−炭素結合二重結合とニトリル基を持つ3−フェニルアクリロニトリルを用い、反応時間を24時間とした以外は実施例2と同様にして水素化反応を行い反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である3−フェニルプロピオニトリルの選択率100%、炭素−炭素結合二重結合及びニトリル基が水素化された生成物である3−フェニル−1−プロピルアミンの選択率0%。
[比較例1]
【0049】
〔パラジウム炭素触媒を用いた1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの水素化〕
芳香族ケトン性カルボニル基と炭素−炭素二重結合とを持つ化合物である1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オン100mgをメタノール1mlに溶解し、10重量%パラジウムカーボン粉末K−Type触媒(エヌ・イー ケムキャット社製)10mgを添加した。バルーンによる水素微加圧下室温で3時間反応させた。触媒をろ別後反応液をガスクロマトグラフ分析法にかけて、反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である1,5−ジフェニルペンタン−1−オンの選択率0%、芳香族ケトン性カルボニル基と炭素−炭素結合二重結合の両官能基が水素化された生成物である1,5−ジフェニルペンタン−1−オールの選択率100%。
[比較例2]
【0050】
〔パラジウム炭素触媒を用いた3−フェニルアクリル酸ベンジルエステルの水素化〕
ベンジルエステルのO−ベンジル基と炭素−炭素二重結合とを持つ化合物である3−フェニルアクリル酸ベンジルエステル100mgをメタノール1mlに溶解し、10重量%パラジウムカーボン粉末K−Type触媒(エヌ・イー ケムキャット社製)10mgを添加した。バルーンによる水素微加圧下室温で24時間反応させた。触媒をろ別後反応液をガスクロマトグラフ分析法にかけて、反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である3−フェニルプロピオン酸ベンジルエステルの選択率0%、ベンジルエステルのO−ベンジル基が水素化分解され炭素−炭素二重結合の両官能基が水素化された生成物である3−フェニルプロピオン酸の選択率100%。
[比較例3]
【0051】
〔エチレンジアミン共存担持パラジウム炭素触媒を用いた1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オンの水素化〕
芳香族ケトン性カルボニル基と炭素−炭素二重結合とを持つ化合物である1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オン100mgをメタノール1mlに溶解し、エチレンジアミン共存担持10重量%パラジウムカーボン粉末(和光純薬社製)10mgを添加した。バルーンによる水素微加圧下室温で3時間反応させた。触媒をろ別後反応液をガスクロマトグラフ分析法にかけて、反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である1,5−ジフェニルペンタン−1−オンの選択率0%、芳香族ケトン性カルボニル基と炭素−炭素結合二重結合の両官能基が水素化された生成物である1,5−ジフェニルペンタン−1−オールの選択率100%。
[比較例4]
【0052】
〔エチレンジアミン共存担持パラジウム炭素触媒を用いた3−フェニルアクリル酸ベンジルエステルの水素化〕
ベンジルエステルのO−ベンジル基と炭素−炭素二重結合とを持つ化合物である3−フェニルアクリル酸ベンジルエステル100mgをメタノール1mlに溶解し、エチレンジアミン共存担持10重量%パラジウムカーボン粉末(和光純薬社製)10mgを添加した。バルーンによる水素微加圧下室温で24時間反応させた。触媒をろ別後反応液をガスクロマトグラフ分析法にかけて、反応生成物を同定した。炭素−炭素結合二重結合のみが水素化された生成物である3−フェニルプロピオン酸ベンジルエステルの選択率0%、ベンジルエステルのO−ベンジル基が水素化分解され炭素−炭素二重結合の両官能基が水素化された生成物である3−フェニルプロピオン酸の選択率100%。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の官能基選択的水素化触媒及び官能基選択的水素化方法は、医薬中間体製造や機能性材料製造などのファインケミカル産業での研究、開発及び製造において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、該担体に共存担持されたパラジウム及び有機硫黄化合物とを有してなり、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する有機化合物の前記官能基の選択的水素化用触媒。
【請求項2】
前記有機化合物が芳香環結合ハロゲン原子、O−ベンジル基、芳香族ケトン性カルボニル基、N−ベンジルオキシカルボニル基および/または芳香族ニトリル基を有し、しかしこれらの官能基に対しては実質的に水素化活性を示さない請求項1に係る官能基選択的水素化用触媒。
【請求項3】
有機硫黄化合物が下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に係る選択的水素化用触媒。
−S−R (I)
(式中、R及びRは水素、炭素原子数1から12のアルキルもしくはアルケニル、炭素原子数6から8のアリール基を表し、またはR及びRが結合して炭素原子数2から6のアルキレンまたはアルカジエニレンを形成してもよく、R及びRが同時に水素となることはない)
【請求項4】
有機硫黄化合物がジフェニルスルフィドである請求項1または2に係る選択的水素化用触媒
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の選択的水素化触媒の存在下で、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香族ホルミル基、および芳香族ニトロ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する有機化合物を湿式で水素化処理し、前記の官能基を実質的に選択的に水素化する官能基選択的水素化方法。
【請求項6】
前記有機化合物が芳香環結合ハロゲン原子、O−ベンジル基、芳香族ケトン性カルボニル基、N−ベンジルオキシカルボニル基および/または芳香族ニトリル基を有し、しかしこれらの官能基は実質的に水素化されない請求項5に係る官能基選択的水素化方法。
【請求項7】
有機硫黄化合物が請求項3に記載の一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項5または6に係る官能基選択的水素化方法。
【請求項8】
有機硫黄化合物がジフェニルスルフィドである請求項5〜7のいずれか1項に係る官能基選択的水素化方法。

【公開番号】特開2007−152199(P2007−152199A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349313(P2005−349313)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000228198)エヌ・イーケムキャット株式会社 (87)
【Fターム(参考)】