説明

定在波比測定回路及び通信装置

【課題】電力の通過損失を低減し且つ精度が良い定在波比を測定する。
【解決手段】定在波比測定回路1は、送信系の増幅回路110と、増幅された送信信号をアンテナ190方向へ出力し、アンテナ190で受信された受信信号を受信系へ出力する第1のサーキュレータ120と、定在波比の測定要求が検出されたとき、増幅回路110に入力する前の送信信号(進行波)を、増幅回路110を迂回して受信系へ進行させる進行波迂回部140と、迂回した進行波を第1のサーキュレータ120方向へ出力する第2のサーキュレータ150と、出力した進行波が第1のサーキュレータ120を介してアンテナ190方向へ進行するように、増幅回路110を制御する制御部160と、反射波を受信系のうち第2のサーキュレータ150以降で取得する反射波取得部170と、進行波と反射波とを用いて定在波比を測定する測定回路180とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信と受信を時分割で行う送受信機における定在波比測定回路及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロ波帯の移動体通信基地局の送受信機では、電力消費の抑制、小型化及び低コスト化が要求されている。かかる解決策として、送受信機内の増幅回路以降、すなわち当該増幅回路及び送受信アンテナ間の電力における通過損失の低減が有効である。
【0003】
この送受信機内の増幅回路以降では、送信期間に、当該増幅回路から出力された送信波(進行波)と、該進行波が送受信アンテナ等でケーブル側へ反射された反射波とを用いて、SWR(定在波比:Standing Wave Ratio)が測定される。SWRは、ケーブルに接続される送受信アンテナのインピーダンスと当該ケーブルのインピーダンスとの不連続部分によって反射された反射波の進行波に対する比率を表すものである。
【0004】
上記したSWRを測定する従来の定在波比測定回路について、図15を参照して説明する。図15は、従来の定在波比測定回路を説明する図である。図15(a)は、定在波比測定回路の構成を示すブロック図であり、図15(b)は、動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【0005】
定在波比測定回路9は、PA(Power Amp:大電力増幅回路)91、CIR(Circulator:サーキュレータ)92、進行波及び反射波を検出する検出回路93を有する。さらに、定在波比測定回路9は、BPF(Band Pass Filter:バンドパスフィルタ回路)94、送受信アンテナ95、SWR演算回路96、ISO(Isolator:アイソレータ)97、LNA(Low Noise Amp:低雑音増幅回路)98を有する。
【0006】
PA91は、図示しない送信処理部で生成された無線周波数帯の送信信号を増幅する。CIR92は、送信期間にPA91により増幅された大電力の送信波を検出回路93に供給し、検出回路93から供給される受信波をISO97に供給する。この検出回路93は、大電力用の2つのDC(Directional Coupler:方向性結合器)(DC1、DC2)を含む。
【0007】
DC1は、CIR92から供給された大電力の送信波を進行波としてSWR演算回路96に分配するとともに、当該送信波をDC2に分配する。DC2は、DC1から分配された送信波を、BPF94を介して送受信アンテナ95に供給する。また、DC2は、供給した送信波がBPF94以降で反射された場合には、この反射波を、BPF94を介して検出し、SWR演算回路96に分配するとともに、当該反射波を受信波としてDC1に供給する。
【0008】
SWR演算回路96は、DC1から分配された進行波と、DC2から分配された反射波とを用いて、SWRを測定する。ISO97は、CIR92から供給された受信波をLNA98に供給する。LNA98は、ISO97から供給された受信波を増幅し、図示しない受信処理部に受信信号として供給する。
【0009】
図15(b)に示すように、定在波比測定回路9では、受信期間及び送信期間は、時分割して割り当てられる。すなわち、送信期間すなわち動作モードが送信モードであるとき、送信波が伝播し、同じタイミングで、進行波及び反射波を用いてSWRが測定される。一方、受信期間すなわち動作モードが受信モードであるとき、受信波が伝播する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−147934号公報
【特許文献2】特開2004−286632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の定在波比測定回路9は、時分割される送信期間及び受信期間に伝播する進行波及び反射波を、PA91以降で方向性結合器(DC1、DC2)によって取り出すようにしているので、電力の通過損失が増大するという問題がある。
【0012】
つまり、定在波比測定回路9は、送信期間に、PA91により増幅された送信波の一部を進行波として、DC1を用いてSWR演算回路96に分配するので、送信波から分配分の電波を抜き取ることとなり、その分の送信波に係る電力の損失が増大する。また、定在波比測定回路9は、受信期間に、送受信アンテナ95から供給された受信波の一部をDC2を用いてSWR演算回路96に分配するので、受信波から分配分の電波を抜き取ることとなり、その分の受信波に係る電力の損失が増大する。
【0013】
また、PA91から出力される送信波が大電力であるので、送信波の電力利得がばらつく場合がある。かかる場合には送信波が歪み、送信波(進行波)及び進行波に対する反射波の正確な信号レベルが検出されず、SWRの測定誤差が大きくなるという問題がある。
【0014】
なお、上記課題は、移動体通信基地局だけではなく、送受信アンテナを備え、且つ定在波比の測定を行う無線装置全般に同様に生ずる課題である。
【0015】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、電力の通過損失を低減し、且つ精度が良い定在波比を測定できる定在波比測定回路及び通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の開示する定在波比測定回路は、一つの態様において、送信信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路によって増幅された送信信号を送受信アンテナの方向へ出力し、前記送受信アンテナで受信された受信信号を受信系へ出力する第1のサーキュレータと、定在波比の測定要求が検出されたとき、前記増幅回路に入力する前の送信信号から進行波を取得する進行波取得部と、前記進行波取得部によって取得される進行波を、前記増幅回路を迂回して受信系へ進行させる進行波迂回部と、受信系に備えられ、前記進行波迂回部によって前記増幅回路を迂回する進行波を前記第1のサーキュレータの方向へ出力する第2のサーキュレータと、前記第2のサーキュレータによって出力される進行波が前記第1のサーキュレータを介して前記送受信アンテナの方向へ進行するように、前記増幅回路を制御する制御部と、前記進行波が前記送受信アンテナの近傍で反射された反射波を、受信系のうち前記第2のサーキュレータ以降で取得する反射波取得部と、前記進行波取得部によって取得される進行波と、前記反射波取得部によって取得される反射波とを用いて、定在波比を測定する測定回路とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本願の開示する定在波比測定回路の一つの態様によれば、電力の通過損失を低減し、且つ精度が良い定在波比を測定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1に係る定在波比測定回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、実施例2に係る定在波比測定回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、定在波比測定回路のPA制御を説明する図である。
【図4】図4は、実施例2に係る動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。
【図5】図5は、実施例3に係る動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。
【図6】図6は、実施例4に係る定在波比測定回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】図7は、実施例5に係る定在波比測定回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】図8は、実施例5に係る動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。
【図9】図9は、実施例6に係る定在波比測定回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】図10は、実施例6に係る動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。
【図11】図11は、実施例7に係る定在波比測定回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図12】図12は、実施例8に係る定在波比測定回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図13】図13は、実施例8に係る動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。
【図14】図14は、実施例9に係る定在波比測定回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図15】図15は、従来の定在波比測定回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本願の開示する定在波比測定回路及び通信装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、時分割方式の送受信機を備える移動体通信基地局装置の定在波比測定回路について説明する。なお、本実施例によりこの発明が限定されるものではなく、少なくとも定在波比の測定を行う無線装置であれば同様に適用できる。
【実施例1】
【0020】
図1は、本実施例1に係る定在波比測定回路の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、定在波比測定回路1は、増幅回路110、第1のサーキュレータ120、進行波取得部130、進行波迂回部140、第2のサーキュレータ150、制御部160、反射波取得部170、測定回路180及び送受信アンテナ190を有する。
【0021】
かかる定在波比測定回路1では、進行波取得部130から増幅回路110と第1のサーキュレータ120と送受信アンテナ190とが送信系として直列的に接続される。一方、第1のサーキュレータ120から第2のサーキュレータ150と反射波取得部170とが受信系として直列的に接続される。また、進行波取得部130と第2のサーキュレータ150とは進行波迂回部140によって接続される。さらに、進行波取得部130及び反射波取得部170は、それぞれ測定回路180と接続する。
【0022】
増幅回路110は、送信信号を増幅する。第1のサーキュレータ120は、増幅回路110によって増幅された送信信号を送受信アンテナ190の方向へ出力し、送受信アンテナ190で受信された受信信号を受信系へ出力する。進行波取得部130は、定在波比の測定要求が検出されたとき、増幅回路110が入力する前の送信信号から進行波を取得する。
【0023】
ここで、送信信号とは、送信機の信号源から出力される送信用の信号を指し、進行波とは、送信信号のうち所定のレベルを有する高周波信号を指す。なお、送信信号は、搬送波に情報が重畳された変調波であっても良いし、単なる搬送波(キャリア波:carrier wave)である無変調波であっても良い。
【0024】
進行波迂回部140は、進行波取得部130によって取得される進行波を、増幅回路110を迂回して受信系へ進行させる。つまり、進行波迂回部140は、進行波を受信系に配置される、後述する第2のサーキュレータ150に進行させる。
【0025】
第2のサーキュレータ150は、受信系に備えられ、進行波迂回部140によって増幅回路110を迂回する進行波を第1のサーキュレータ120の方向へ出力する。制御部160は、第2のサーキュレータ150によって出力される進行波が、第1のサーキュレータ120を介して送受信アンテナ190の方向へ進行するように、増幅回路110を制御する。
【0026】
反射波取得部170は、進行波が送受信アンテナ190の近傍で反射された反射波を、受信系のうち第2のサーキュレータ150以降で取得する。ここで、反射波は、送受信アンテナ190とケーブルとの接続部分であってそれぞれのインピーダンスの不連続部分で、進行波が反射することにより発生する。また、反射波は、送受信アンテナ190の何らかの異常原因により送受信アンテナ190そのもので進行波を反射することにより発生する。
【0027】
測定回路180は、進行波取得部130によって取得される進行波と、反射波取得部170によって取得される反射波とを用いて、定在波比を測定する。ここで、定在波比(SWR:Standing Wave Ratio)とは、進行波と反射波との関係を示す値であり、特に進行波に対する反射波の電圧比率を電圧定在波比(VSWR)という。なお、本実施例では、この電圧定在波比を定在波比として説明する。
【0028】
定在波比の例として、ケーブルのインピーダンスと送受信アンテナ190のインピーダンスとが一致している場合には、進行波に対する反射波は発生しないので、反射係数は「0」となり、定在波比が「1.0」となる。ところが、前述したとおり、送受信アンテナ190とケーブルとの接続部分であってそれぞれのインピーダンスの不連続部分がある場合には、双方のインピーダンスが一致しないので、定在波比が「1.0」と一致しない。そして、定在波比が「1.0」と一致しないと、進行波に対する反射波が発生するので、受信処理の性能劣化や受信系の増幅回路の物理的損傷の原因となる。このため、測定回路180は、これらの原因を検出するために、定在波比を測定する。
【0029】
このようにして、実施例1では、定在波比測定回路1は、増幅回路110の入力前に進行波を取得することで、増幅回路110以降に進行波を取得する部品を新たに追加する必要がなくなり、当該部品があることによって生じる電力の通過損失を防止することができる。その結果、定在波比測定回路1は、増幅回路110以降に進行波を取得する部品を新たに追加する場合と比べ、増幅回路110を小型化することができ、増幅回路110に要するコストを抑制することができる。
【0030】
また、定在波比測定回路1は、進行波迂回部140によって増幅回路110を迂回して進行波を進行させているので、増幅前の小電力信号を進行波とすることができ、増幅後の大電力信号を進行波とする場合と比べ、進行波の歪みを小さくできる。そのため、定在波比測定回路1は、進行波及び進行波に対する反射波の正確な信号レベルを検出でき、精度が良いSWRを測定できる。
【0031】
さらに、定在波比測定回路1は、増幅前の小電力信号を進行波とすることができ、仮に送受信アンテナ190の近傍で進行波が全反射しても、全反射に基づく反射波も小電力となるので、受信系に備えられた部品の劣化及び破損を防止できる。
【実施例2】
【0032】
[実施例2に係る定在波比測定回路の構成]
図2は、本実施例2に係る定在波比測定回路2の構成を示す機能ブロック図である。定在波比測定回路2は、増幅回路(PA:Power Amp)110、CIR(Circulator)1、BPF(Band Pass Filter)121、進行波取得部130、進行波迂回部140、CIR2、制御部160を有する。また、定在波比測定回路2は、DC4を含む反射波取得部(LNA:Low Noise Amp)170、測定回路(SWR演算回路)180、送受信アンテナ190及びケーブル191を有する。さらに、進行波取得部130は、DC(Directional Coupler)3及びSW(Switch)1を有し、制御部160は、動作指示部161、SW制御回路162及びPA制御回路163を有する。
【0033】
かかる定在波比測定回路2では、進行波取得部130から増幅回路110、CIR1、BPF121、ケーブル191及び送受信アンテナ190が送信系として直列的に接続される。一方、CIR1からCIR2とLNA170とが直列的に受信系として接続される。また、進行波取得部130に含まれるSW1と受信系に含まれるCIR2とは進行波迂回部140によって接続される。さらに、進行波取得部130に含まれるDC3及びLNA170に含まれるDC4は、それぞれSWR演算回路180と接続する。
【0034】
PA110は、送信信号を増幅する多段アンプ構成の高出力増幅器である。PA110は、時分割で割り当てられた送信区間(送信期間)に、入力された送信信号を大電力に増幅し、後述するCIR1に出力する。
【0035】
ここで、送信信号とは、送信機の信号源から出力される送信用の信号を指し、進行波とは、送信信号のうち所定のレベルを有する高周波信号(RF:Radio Frequency)を指す。なお、送信信号は、搬送波に情報が重畳された変調波であっても良いし、単なる搬送波(キャリア波:carrier wave)である無変調波であっても良い。
【0036】
CIR1は、第1のサーキュレータであり、PA110によって増幅された送信信号を送受信アンテナ190の方向へ出力する。また、CIR1は、送受信アンテナ190によよって受信された受信信号を受信系の方向へ出力する。さらに、CIR1は、後述するCIR2から入力された進行波をPA110の方向へ出力する。
【0037】
BPF121は、バンドパスフィルタであり、通過帯域の周波数のみを通過させ、通過帯域以外の周波数を減衰させる。
【0038】
DC3は、送信信号を結合したり分配したりするカプラ等の方向性結合器である。DC3は、定在波比の測定要求が検出されたとき、PA110に入力する前の送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を分配する。具体的には、DC3は、定在波比の測定要求が検出されたとき、送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を後述するSW1及びSWR演算回路180に分配する。
【0039】
SW1は、SPDT(Single Pole Double Throw)スイッチであり、進行波の進行先をPA110又は進行波迂回部140のいずれかに切り替える。なお、SW1は、反射防止用の終端器が内部に設けられていない安価な反射型のSPDTスイッチが望ましいが、例えば50オーム(Ω)の反射防止用の終端器が設けられた高価な無反射型のSPDTスイッチであっても良い。
【0040】
進行波迂回部140は、進行波取得部130によって取得される進行波を、PA110を迂回して受信系へ進行させる。具体的には、進行波迂回部140は、SW1を介して進行する進行波を、後述するCIR2に進行させる配線である。
【0041】
CIR2は、第2のサーキュレータであり、受信系に備えられ、SW1から入力された進行波をCIR1の方向へ出力する。また、CIR2は、CIR1から入力された受信信号をLNA170の方向へ出力する。
【0042】
動作指示部161は、送信区間と受信区間とが互いに重複しない区間(以降、「ガードタイム区間」という。)になると、定在波比の測定要求をSW制御回路162及びPA制御回路163に指示する。また、動作指示部161は、送信区間になると、送信信号の送信要求をSW制御回路162及びPA制御回路163に指示する。さらに、動作指示部161は、受信区間になると、受信信号の受信要求をSW制御回路162及びPA制御回路163に指示する。なお、ガードタイム区間、送信区間及び受信区間は、時分割してあらかじめ割り当てられる。また、ガードタイム区間の動作モードを「SWR測定モード」、送信区間の動作モードを「送信モード」及び受信区間の動作モードを「受信モード」というものとする。
【0043】
SW制御回路162は、動作指示部161の各種要求に応じて、SW1に対して接続先の切り替えを指示する。具体的には、SW制御回路162は、動作指示部161から指示された定在波比の測定要求を検出すると、進行波の進行先を進行波迂回部140にする目的で、接続先を進行波迂回部140側に切り替えるようにSW1に指示する。また、SW制御回路162は、動作指示部161から指示された送信信号の送信要求を検出すると、進行波の進行先をPA110にする目的で、接続先をPA110側に切り替えるようにSW1に指示する。
【0044】
さらに、SW制御回路162は、動作指示部161から指示された受信信号の受信要求を検出すると、接続先を進行波迂回部140側に切り替えるようにSW1に指示する。これは、受信区間中、CIR2のSW1側を、SW1のインピーダンスと同じ抵抗(例えば50Ω)にするためである。すなわち、受信区間中、CIR2及びSW1を接続しておけば、仮に受信信号がLNA170で反射して受信系を逆流しても、逆流した反射波がCIR2を介してSW1の方向に流れることとなり、送受信アンテナ190の方向に逆流しない。
【0045】
なお、SW1が無反射型のSPDTスイッチである場合には、受信区間中、接続先がPA110側にあっても、SW1に含まれる終端器のインピーダンス及びCIR2のSW1側のインピーダンスが同一であれば、同様の結果が得られる。この場合は、SW制御回路162は、動作指示部161から指示された受信信号の受信要求を検出すると、接続先をPA110側に切り替えるようにSW1に指示しても良い。
【0046】
PA制御回路163は、動作指示部161の各種要求に応じて、PA110を制御する。具体的には、PA制御回路163は、動作指示部161によって定在波比の測定要求を検出すると、CIR2によって出力される進行波がCIR1を介して送受信アンテナ190の方向へ進行するように、PA110の電圧を制御する。例えば、PA110が電界効果トランジスタ(FET:Field-Effect Transistor)で構成されている場合、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。このピンチオフ電圧とは、FETのゲート端子に印加する制御電圧であってドレイン電流の値を「0」にする制御電圧を指す。
【0047】
ここで、PA制御回路163のPA制御について図3を参照しながら説明する。図3は、定在波比測定回路2のPA制御を説明する図である。図3に示すように、X座標はFETのゲート端子に印加する制御電圧(ゲート電圧:VGS)の値、Y座標はドレイン電流(Idss)の値を示す。図3の例では、ドレイン・ソース間電圧(VDS)を一定値にした場合であり、ゲート電圧が「0」のときドレイン電流が飽和し最大値となるが、ゲート電圧を小さくするにつれてドレイン電流が「0」になる電圧(V)があることを表している。この電圧がピンチオフ電圧である。
【0048】
具体的には、動作モードが送信モードである送信区間では、PA制御回路163は、送信信号が歪まない動作点を示すA級動作点となるように、ゲート電圧を制御する。図3の例では、ドレイン電流が「0.5」Idssとなるように、ゲート電圧を「VGG」に制御する。そして、動作モードがSWR測定モードであるガードタイム区間では、PA制御回路163は、ゲート電圧がピンチオフ電圧になるように、ゲート電圧を制御する。図3の例では、ドレイン電流が「0」Idssとなるように、ゲート電圧を「V」に制御する。「V」は、例えば「−2.0ボルト(V)」近辺の電圧値である。
【0049】
これにより、PA制御回路163は、動作モードがSWR測定モードであるとき、PA110を構成するFETのゲート電圧をピンチオフ電圧となるように制御するので、ドレイン電流を「0」にでき、PA110の動作をオフできる。その結果、PA110は、出力インピーダンスが劣化するので、劣化した分だけ入力した信号を反射できる。すなわち、PA110は、CIR1から自身に向かって出力される進行波をほぼ全反射し、CIR1を介して送受信アンテナ190の方向へ進行させることができる。
【0050】
図2に戻って、PA制御回路163は、動作指示部161から指示された送信信号の送信要求を検出すると、PA110の動作点電圧をA級動作点電圧になるように制御する。なお、PA制御回路163は、動作点電圧をA級動作点電圧に代えて、AB級動作点電圧に制御するものとしても良い。また、PA制御回路163は、動作指示部161から指示された受信信号の受信要求を検出すると、PA110の動作をオフするように制御する。例えば、PA制御回路163は、定在波比の測定要求を検出した場合と同様にPA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御しても良いし、PA110の電源をオフにするように制御しても良い。
【0051】
LNA170は、複数のアンプ(Amp)1〜2を含む多段アンプ構成の低雑音増幅器である。LNA170は、自身に入力された受信信号を増幅する。
【0052】
DC4は、受信信号を結合したり分配したりするカプラ等の方向性結合器である。DC4は、複数のAmpのうちいずれか2つのAmpに挟まれ、受信信号を反射波として抽出し、抽出した反射波を分配する。具体的には、DC4は、Amp2によって増幅された受信信号を反射波として抽出し、抽出した反射波をSWR演算回路180及びAmp1に分配する。
【0053】
SWR演算回路180は、DC3によって取得される進行波と、DC4によって取得される反射波とを用いて、定在波比を測定する。具体的には、SWR演算回路180は、Amp2によって受信信号を増幅しているので、増幅した受信信号の電圧を増幅前の電圧に調整し、調整した受信信号(反射波)と進行波とを用いて、定在波比を測定する。
【0054】
次に、動作モードに対する各部の制御内容を、図4を参照して説明する。図4は、動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。図4に示すように、動作モードが送信モードの場合、受信モードの場合、及びSWR測定モードの場合に区別して、各部は制御する。
【0055】
動作モードが送信モード2aである送信区間になると、送信波(送信信号)が送受信アンテナ190の方向へ伝播し、送信信号の出力が「ON」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して送信信号の送信要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をPA110側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「PA110側へ接続」を切り替える。他方、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をA級動作点に制御し、PA110の動作が「ON」となる。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して非動作となるように指示し、SWR演算回路180の動作が「OFF」となる。
【0056】
これにより、送信区間になると、送信波(送信信号)は、SW1からPA110に進行し、PA110によって増幅され、CIR1を経由して送受信アンテナ190に出力される。
【0057】
また、動作モードが受信モード2bである受信区間になると、送受信アンテナ190によって受信される受信波が受信系の方向へ伝播し、送信信号の出力が「OFF」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して受信信号の受信要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をCIR2側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「CIR2側へ接続」を切り替える。他方、PA制御回路163は、PA110の動作をオフするように制御し、PA110の動作が「OFF」となる。例えば、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して非動作となるように指示し、SWR演算回路180の動作が「OFF」となる。
【0058】
これにより、受信区間になると、受信波は、送受信アンテナ190からCIR1及びCIR2を経由して、受信信号を処理する図示しない受信回路に出力される。
【0059】
また、動作モードがSWR測定モード2cであるガードタイム区間になると、進行波が送受信アンテナ190の方向へ伝播し、送信信号(進行波)の出力が「ON」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して定在波比の測定要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をCIR2側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「CIR2側へ接続」を切り替える。他方、PA制御回路163は、PA110の動作をオフするように制御し、PA110の動作が「OFF」となる。例えば、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して動作するように指示し、SWR演算回路180の動作が「ON」となる。
【0060】
これにより、ガードタイム区間になると、進行波は、DC3を介してSWR演算回路180に出力されるとともに、SW1から進行波迂回部140を介してCIR2に進行し、CIR2及びCIR1を経由してPA110の方向へ進行する。そして、進行波は、PA110によってほぼ全反射され、CIR1を経由して送受信アンテナ190に出力される。さらに、進行波が送受信アンテナ190の近傍で反射された反射波は、CIR1及びCIR2を経由して、DC4を介してSWR演算回路180に出力される。その結果、SWR演算回路180は、進行波及び反射波を用いて、定在波比を測定する。
【0061】
[実施例2の効果]
上記実施例2によれば、定在波比測定回路2では、進行波取得部130は、送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を分配するDC3と、SW1とを有する。SW1は、進行波の進行先をPA110又は進行波迂回部140に切り替え可能な経路を用いて、進行波を進行波迂回部140に進行させる。これにより、定在波比測定回路2は、増幅回路110の入力前にDC3により進行波を取得することで、増幅回路110以降に進行波を取得する部品を新たに追加する必要がなくなり、当該部品があることによって生じる電力の通過損失を防止することができる。その結果、定在波比測定回路2は、増幅回路110以降に進行波を取得する部品を新たに追加する場合と比べ、増幅回路110を小型化することができ、増幅回路110に要するコストを抑制することができる。
【0062】
また、実施例2によれば、定在波比測定回路2では、PA制御回路163は、定在波比の測定要求が検出されたとき、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。これにより、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するので、ドレイン電流が「0」になる。そのため、PA制御回路163は、PA110の出力インピーダンスを劣化させることができ、劣化させた分だけPA110に入り込む進行波を反射できる。その結果、定在波比測定回路2は、PA110以降に余分な部品を要さず、進行波を送受信アンテナ190の方向へ進行させることができる。
【0063】
また、実施例2によれば、定在波比測定回路2では、LNA170は、反射波を増幅する複数のアンプAmpと、複数のAmpのうちいずれか2つのAmpに挟まれ、反射波を分配するDC4とを有する。これにより、定在波比測定回路2は、DC4をLNA170に有しているので、LNA170より前の受信系にDC4を備える場合と比較して、LNA170のNF劣化を低減できる。
【0064】
また、実施例2によれば、定在波比測定回路2では、進行波取得部130のDC3は、時分割で割り当てられた送信区間と受信区間とが互いに重複しないガードタイム区間に定在波比の測定要求が検出されたとき、送信信号を進行波として取得する。これにより、定在波比測定回路2は、送信区間に送信される送信信号及び受信区間に受信される受信信号に影響なく定在波比を測定できる。
【実施例3】
【0065】
ところで、実施例2に係る定在波比測定回路2では、送信区間と受信区間とが互いに重複しない「ガードタイム区間」になると、定在波比を測定する場合を説明した。しかし、定在波比測定回路3では、これに限定されるものではなく、「受信区間の一部の所定区間」になると、定在波比を測定しても良い。
【0066】
ここで、「受信区間の一部の所定区間」とは、受信区間のうち運用期間とは重ならない期間を指し、例えば、基地局装置の試験期間若しくは保守期間、又は運用期間であっても移動体と全く接続をしないような時間帯であるものとする。本実施例では、「受信区間の一部の所定区間」の動作モードを、特に「SWR測定モード」というものとする。すなわち、受信区間のうち受信信号を受信する区間の動作モードを「受信モード」といい、定在波比を測定する区間の動作モードを「SWR測定モード」という。
【0067】
そこで、実施例3では、受信区間の一部の所定区間になると、定在波比を測定する場合を説明する。なお、実施例3に係る定在波比測定回路3の構成を示す機能ブロック図は、実施例2に係る定在波比測定回路2と同一の構成であるので、その構成の説明については省略する。
【0068】
次に、動作モードに対する各部の制御内容を、図5を参照して説明する。図5は、動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。図5に示すように、各部は、動作モードが送信モードの場合、受信モードの場合、及びSWR測定モードの場合に区別して、制御する。なお、動作モードが送信モード3a及び受信モード3bにおける動作は、実施例2(図4)と同様であるので、その説明については省略する。
【0069】
動作モードがSWR測定モード3cである、受信区間の一部の所定区間になると、進行波が送受信アンテナ190の方向へ伝播し、送信信号(進行波)の出力が「ON」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して定在波比の測定要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をCIR2側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「CIR2側へ接続」を切り替える。他方、PA制御回路163は、PA110の動作をオフするように制御し、PA110の動作が「OFF」となる。例えば、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して動作するように指示し、SWR演算回路180の動作が「ON」となる。
【0070】
これにより、受信区間の一部の所定区間になると、進行波は、DC3を介してSWR演算回路180に出力するとともに、SW1から進行波迂回部140を介してCIR2に進行し、CIR2及びCIR1を経由してPA110の方向へ進行する。そして、進行波は、PA110によってほぼ全反射され、CIR1を経由して送受信アンテナ190に出力される。さらに、進行波が送受信アンテナ190の近傍で反射された反射波は、CIR1及びCIR2を経由して、DC4を介してSWR演算回路180に出力される。その結果、SWR演算回路180は、進行波及び反射波を用いて、定在波比を測定する。
【0071】
[実施例3の効果]
上記実施例3によれば、定在波比測定回路3では、進行波取得部130のDC3は、受信期間の一部の所定期間に定在波比の測定要求が検出されたとき、送信信号を進行波として取得する。これにより、定在波比測定回路3は、受信期間であっても保守期間や運用に支障がない期間を所定期間とすれば、運用期間の空き時間を有効に活用して定在波比を測定できる。
【実施例4】
【0072】
ところで、実施例2に係る定在波比測定回路2では、進行波をSWR演算回路180に分配するDC3を、送信信号の進行方向に対してPA110より前の送信系に備えるものとして説明した。しかし、定在波比測定回路4では、これに限定されるものではなく、進行波をSWR演算回路180に分配するDC3を、進行波迂回部140に備えるものとしても良い。そこで、実施例4では、定在波比測定回路4が、進行波をSWR演算回路180に分配するDC3を進行波迂回部140に備える場合を説明する。
【0073】
まず、実施例4に係る定在波比測定回路4の構成について説明する。図6は、実施例4に係る定在波比測定回路4の構成を示す機能ブロック図である。なお、図2に示す定在波比測定回路2と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例2と実施例4とが異なるところは、DC3及びSW1の配置場所を変更した点にある。
【0074】
かかる定在波比測定回路4では、進行波取得部130に含まれるSW1から増幅回路110、CIR1、BPF121、ケーブル191及び送受信アンテナ190が送信系として直列的に接続される。一方、CIR1からCIR2とLNA170とが受信系として直列的に接続される。また、進行波取得部130に含まれるSW1と受信系に含まれるCIR2とは進行波迂回部140によって接続される。そして、進行波取得部130に含まれるDC3が、進行波迂回部140に備えられ、SW1及びCIR2とそれぞれ接続する。さらに、DC3及び反射波取得部170に含まれるDC4は、それぞれ測定回路180と接続する。
【0075】
SW1は、SPDTスイッチであり、送信信号の進行先をPA110又はDC3のいずれかに切り替える。なお、SW1は、例えば50オーム(Ω)の反射防止用の終端器が設けられた無反射型のSPDTスイッチであることが望ましい。
【0076】
DC3は、送信信号を結合したり分配したりするカプラ等の方向性結合器である。DC3は、SW1から進行する送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を分配する。具体的には、DC3は、SW1を経由した送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波をSWR演算回路180及びCIR2に分配する。
【0077】
なお、実施例4に係る動作モードに対する定在波比測定回路4の各部の制御内容は、実施例2(図4)と同様であるので、その説明については省略する。
【0078】
[実施例4の効果]
上記実施例4によれば、定在波比測定回路4では、進行波取得部130は、送信信号の送信先をPA110又は進行波迂回部140に切替可能な経路を用いて送信信号を進行波迂回部140に進行させるSW1と、DC3とを有する。このDC3は、進行波迂回部140に備えられ、送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を分配する。これにより、定在波比測定回路4は、DC3を送信系と異なる伝送線路(進行波迂回部140)上に配置するので、送信系の部品構成を簡易化することができる。
【実施例5】
【0079】
ところで、実施例2に係る定在波比測定回路2では、SW1及びCIR2間の進行波迂回部140に部品を備えないものとして説明した。しかし、定在波比測定回路5では、これに限定されるものではなく、SW1及びCIR2間の進行波迂回部140にSW3を備えるものとしても良い。そこで、実施例5では、定在波比測定回路5が、SW1及びCIR2間の進行波迂回部140にSW3を備える場合を説明する。
【0080】
まず、実施例5に係る定在波比測定回路5の構成について説明する。図7は、実施例5に係る定在波比測定回路5の構成を示す機能ブロック図である。なお、図2に示す定在波比測定回路2と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例2と実施例5とが異なるところは、進行波迂回部140にSW3を追加した点と、SW1をSW2に変更した点にある。
【0081】
かかる定在波比測定回路5では、進行波取得部130から増幅回路110、CIR1、BPF121、ケーブル191及び送受信アンテナ190が送信系として直列的に接続される。一方、CIR1からCIR2とLNA170とが受信系として直列的に接続される。また、進行波取得部130に含まれるSW2とCIR2とは進行波迂回部140によって接続される。さらに、進行波取得部130に含まれるDC3及び反射波取得部170に含まれるDC4は、それぞれ測定回路180と接続する。そして、SW3が進行波迂回部140に備えられ、SW2及びCIR2とそれぞれ接続する。
【0082】
SW2は、SPDTスイッチであり、進行波の進行先をPA110又は進行波迂回部140のいずれかに切り替える。なお、SW2は、反射防止用の終端器が内部に設けられていない反射型のSPDTスイッチが望ましい。
【0083】
SW3は、SPDTスイッチであり、例えば50Ωに終端する終端器141と接続される。SW2は、受信信号がLNA170によって反射された反射波の進行先をSW2又は終端器141のいずれかに切り替える。なお、SW2は、反射が少ない性質を持つCIR2の特性を安定化させるため、CIR2の近傍に備えられることが望ましい。すなわち、受信信号がLNA170によって反射されると、その反射波はCIR2からSW3に進行し、SW2がその反射波を確実に終端器141に進行させる。その結果、CIR2の特性は安定する。
【0084】
次に、動作モードに対する各部の制御内容を、図8を参照して説明する。図8は、動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。図8に示すように、各部は、動作モードが送信モードの場合、受信モードの場合、及びSWR測定モードの場合に区別して、制御する。
【0085】
動作モードが送信モード5aである送信区間になると、送信波(送信信号)が送受信アンテナ190の方向へ伝播し、送信信号の出力が「ON」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して送信信号の送信要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をPA110側に切り替えるようにSW2に対して指示し、SW2が「PA110側へ接続」を切り替える。また、SW制御回路162は、接続先を終端器141側に切り替えるようにSW3に対して指示し、SW3が「終端器141側へ接続」を切り替える。また、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をA級動作点に制御し、PA110の動作が「ON」となる。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して非動作となるように指示し、SWR演算回路180の動作が「OFF」となる。
【0086】
これにより、送信区間になると、送信波(送信信号)は、SW1からPA110に進行し、PA110によって増幅され、CIR1を経由して送受信アンテナ190に出力される。
【0087】
また、動作モードが受信モード5bである受信区間になると、送受信アンテナ190によって受信される受信波が受信系の方向へ伝播し、送信信号の出力が「OFF」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して受信信号の受信要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をCIR2側に切り替えるようにSW2に対して指示し、SW2が「CIR2側へ接続」を切り替える。また、SW制御回路162は、接続先を終端器141側に切り替えるようにSW3に対して指示し、SW3が「終端器141側へ接続」を切り替える。また、PA制御回路163は、PA110の動作をオフするように制御し、PA110の動作が「OFF」となる。例えば、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して非動作となるように指示し、SWR演算回路180の動作が「OFF」となる。
【0088】
これにより、受信区間になると、受信波は、送受信アンテナ190からCIR1及びCIR2を経由して、受信信号を処理する図示しない受信回路に出力される。また、受信波がLNA170によって反射されると、その反射波は、CIR2からSW3を介して終端器141に出力される。
【0089】
また、動作モードがSWR測定モード5cであるガードタイム区間になると、進行波が送受信アンテナ190の方向へ伝播し、送信信号(進行波)の出力が「ON」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して定在波比の測定要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をCIR2側に切り替えるようにSW2に対して指示し、SW2が「CIR2側へ接続」を切り替える。また、SW制御回路162は、接続先をSW2側に切り替えるようにSW3に対して指示し、SW3が「SW2側へ接続」を切り替える。また、PA制御回路163は、PA110の動作をオフするように制御し、PA110の動作が「OFF」となる。例えば、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して動作するように指示し、SWR演算回路180の動作が「ON」となる。
【0090】
これにより、ガードタイム区間になると、進行波は、DC3を介してSWR演算回路180に出力されるとともに、SW2からSW3を介してCIR2に進行し、CIR2及びCIR1を経由してPA110の方向へ進行する。そして、進行波は、PA110によってほぼ全反射され、CIR1を経由して送受信アンテナ190に出力される。さらに、進行波が送受信アンテナ190の近傍で反射された反射波は、CIR1及びCIR2を経由して、DC4を介してSWR演算回路180に出力される。その結果、SWR演算回路180は、進行波及び反射波を用いて、定在波比を測定する。
【0091】
[実施例5の効果]
上記実施例5によれば、定在波比測定回路5では、進行波迂回部140は、CIR2の近傍に備えられるSW3を有する。このSW3は、受信信号がLNA170によって反射された反射波の進行先をSW2又は例えば50Ωに終端する終端器141に切り替え可能な経路を用いて、当該反射波を終端器に進行させる。これにより、定在波比測定回路5は、LNA170によって反射された反射波をCIR2の近傍に有するSW3に進行させるので、当該反射波をSW3から終端器141に確実に進行させることができる。その結果、定在波比測定回路5は、反射の少ないCIR2の特性を安定させることができる。
【実施例6】
【0092】
ところで、実施例2に係る定在波比測定回路2では、LNA170にDC4を備えるものとして説明した。しかし、定在波比測定回路6では、これに限定されるものではなく、LNA170にSW4を備えるものとしても良い。そこで、実施例6では、定在波比測定回路6が、LNA170にSW4を備える場合を説明する。
【0093】
まず、実施例6に係る定在波比測定回路6の構成について説明する。図9は、実施例6に係る定在波比測定回路6の構成を示す機能ブロック図である。なお、図2に示す定在波比測定回路2と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例2と実施例6とが異なるところは、LNA170に含まれるDC4をSW4に変更した点にある。
【0094】
かかる定在波比測定回路6では、進行波取得部130から増幅回路110、CIR1、BPF121、ケーブル191及び送受信アンテナ190が送信系として直列的に接続される。一方、CIR1からCIR2とLNA170とが受信系として直列的に接続される。また、進行波取得部130に含まれるSW1と受信系に含まれるCIR2とは進行波迂回部140によって接続される。さらに、進行波取得部130に含まれるDC3及び反射波取得部170に含まれるSW4は、それぞれ測定回路180と接続する。
【0095】
SW4は、SPDTスイッチであり、複数のアンプAmpのうちいずれか2つのAmpに挟まれ、反射波の進行先を後続のAmp1又はSWR演算回路180のいずれかに切り替える。なお、SW4は、反射防止用の終端器が内部に設けられていない安価な反射型のSPDTスイッチが望ましいが、例えば50オーム(Ω)の反射防止用の終端器が設けられた高価な無反射型のSPDTスイッチであっても良い。
【0096】
次に、動作モードに対する各部の制御内容を、図10を参照して説明する。図10は、動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。図10に示すように、動作モードが送信モードの場合、受信モードの場合、及びSWR測定モードの場合に区別して、各部は制御する。
【0097】
動作モードが送信モード6aである送信区間になると、送信波(送信信号)が送受信アンテナ190の方向へ伝播し、送信信号の出力が「ON」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して送信信号の送信要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をPA110側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「PA110側へ接続」を切り替える。また、SW制御回路162は、接続先をSWR演算回路180側に切り替えるようにSW4に対して指示し、SW4が「SWR演算回路180側へ接続」を切り替える。また、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をA級動作点に制御し、PA110の動作が「ON」となる。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して非動作となるように指示し、SWR演算回路180の動作が「OFF」となる。
【0098】
これにより、送信区間になると、送信波(送信信号)は、SW1からPA110に進行し、PA110によって増幅され、CIR1を経由して送受信アンテナ190に出力される。
【0099】
また、動作モードが受信モード6bである受信区間になると、送受信アンテナ190によって受信される受信波が受信系の方向へ伝播し、送信信号の出力が「OFF」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して受信信号の受信要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をCIR2側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「CIR2側へ接続」を切り替える。また、SW制御回路162は、接続先をLNA170(Amp1)側に切り替えるようにSW4に対して指示し、SW4が「LNA170側へ接続」を切り替える。また、PA制御回路163は、PA110の動作をオフするように制御し、PA110の動作が「OFF」となる。例えば、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して非動作となるように指示し、SWR演算回路180の動作が「OFF」となる。
【0100】
これにより、受信区間になると、受信波は、送受信アンテナ190からCIR1及びCIR2を経由し、SW4を介して受信信号を処理する図示しない受信回路に出力される。
【0101】
また、動作モードがSWR測定モード6cであるガードタイム区間になると、進行波が送受信アンテナ190の方向へ伝播し、送信信号(進行波)の出力が「ON」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して定在波比の測定要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をCIR2側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「CIR2側へ接続」を切り替える。また、SW制御回路162は、接続先をSWR演算回路180側に切り替えるようにSW4に対して指示し、SW4が「SWR演算回路180側へ接続」を切り替える。また、PA制御回路163は、PA110の動作をオフするように制御し、PA110の動作が「OFF」となる。例えば、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して動作するように指示し、SWR演算回路180の動作が「ON」となる。
【0102】
これにより、ガードタイム区間になると、進行波は、DC3を介してSWR演算回路180に出力されるとともに、SW1からCIR2に進行し、CIR2及びCIR1を経由してPA110の方向へ進行する。そして、進行波は、PA110によってほぼ全反射され、CIR1を経由して送受信アンテナ190に出力される。さらに、進行波が送受信アンテナ190の近傍で反射された反射波は、CIR1及びCIR2を経由して、SW4を介してSWR演算回路180に出力される。その結果、SWR演算回路180は、進行波及び反射波を用いて、定在波比を測定する。
【0103】
[実施例6の効果]
上記実施例6によれば、定在波比測定回路6では、LNA170は、反射波を増幅する複数のアンプAmpと、複数のAmpのうちいずれか2つのAmp1〜2に挟まれたSW4を有する。このSW4は、反射波の進行先を後続のAmp1又はSWR演算回路180に切り替え可能な経路を用いて、ガードタイム区間になると反射波をSWR測定回路180に進行させる。これによれば、定在波比測定回路6は、ガードタイム区間になると反射波を全てSWR測定回路180に進行させるので、反射波の信号レベルを上げることができ、精度の高いSWR測定を行うことができる。
【実施例7】
【0104】
ところで、実施例2に係る定在波比測定回路2では、進行波を高周波信号(RF)として説明した。すなわち、進行波をRFとすることで、送受信アンテナ190の近傍で反射した反射波もRFとなる。しかし、定在波比測定回路7では、これに限定されるものではなく、反射波をRFから中間周波数(IF:Intermediate Frequency)に変換した反射波を、DC4bによってSWR演算回路180に分配するものとしても良い。そこで、実施例7では、定在波比測定回路7では、反射波をRFからIFに変換した反射波を、DC4bによってSWR演算回路180に分配する場合を説明する。
【0105】
まず、実施例7に係る定在波比測定回路7の構成について説明する。図11は、実施例7に係る定在波比測定回路7の構成を示す機能ブロック図である。なお、図2に示す定在波比測定回路2と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例2と実施例7とが異なるところは、反射波をSWR演算回路180に進行させるカプラ(DC4b)をLNA170内部から外部に配置場所を変更した点と、周波数変換器(MIX1)を追加した点にある。
【0106】
かかる定在波比測定回路7では、進行波取得部130から増幅回路110、CIR1、BPF121、ケーブル191及び送受信アンテナ190が送信系として直列的に接続される。一方、CIR1からCIR2、LNA170、MIX1及びDC4bが受信系として直列的に接続される。また、進行波取得部130に含まれるSW1と受信系に含まれるCIR2とは進行波迂回部140によって接続される。さらに、進行波取得部130に含まれるDC3及び受信系に含まれるDC4bは、それぞれSWR演算回路180と接続する。
【0107】
MIX1は、信号の周波数を変換させる周波数変換器である。MIX1は、LNA170によって増幅された受信信号の周波数をRFからIFに変換する。なお、IFは、例えば数100メガヘルツ(MHz)以下の周波数である。
【0108】
DC4bは、受信信号を結合したり分配したりするカプラ等の方向性結合器である。DC4bは、受信信号を反射波として抽出し、抽出した反射波を分配する。具体的には、DC4bは、MIX1によってIFに変換された受信信号を反射波として抽出し、抽出した反射波をSWR演算回路180及び受信系の処理を行う図示しない受信回路に分配する。
【0109】
なお、実施例7に係る動作モードに対する定在波比測定回路4の各部の制御内容は、実施例2(図4)と同様であるので、その説明については省略する。
【0110】
[実施例7の効果]
上記実施例7によれば、定在波比測定回路7では、反射波を増幅するLNA170と、LNA170にて増幅された反射波の周波数をIFに変換するMIX1と、MIX1にて周波数が変換された反射波をSWR演算回路180に分配するDC4bとを有する。これにより、定在波比測定回路7は、受信信号をRFからIFに変換するので、変換後の信号を処理するSWR演算回路180等の回路の負荷を軽減する。
【実施例8】
【0111】
ところで、実施例2に係る定在波比測定回路2では、進行波を高周波信号(RF)として説明した。すなわち、進行波をRFとすることで、送受信アンテナ190の近傍で反射された反射波もRFとなる。しかし、定在波比測定回路7では、これに限定されるものではなく、反射波をRFからIFに変換した反射波を、SW5によってSWR演算回路180に進行させるものとしても良い。そこで、実施例8では、定在波比測定回路7は、反射波をRFからIFに変換した反射波を、SW5によってSWR演算回路180に進行させる場合を説明する。
【0112】
まず、実施例8に係る定在波比測定回路8の構成について説明する。図12は、実施例8に係る定在波比測定回路8の構成を示す機能ブロック図である。なお、図2に示す定在波比測定回路2と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例2と実施例8とが異なるところは、反射波をSWR演算回路180に進行させる部品をLNA170内部から外部に配置場所を変更した点と、周波数変換器(MIX1)を追加した点にある。
【0113】
かかる定在波比測定回路8では、進行波取得部130から増幅回路110、CIR1、BPF121、ケーブル191及び送受信アンテナ190が送信系として直列的に接続される。一方、CIR1からCIR2、LNA170、MIX1及びSW5が受信系として直列的に接続される。また、進行波取得部130に含まれるSW1と受信系に含まれるCIR2とは進行波迂回部140によって接続される。さらに、進行波取得部130に含まれるDC3及び受信系に含まれるSW5は、それぞれSWR演算回路180と接続する。
【0114】
MIX1は、信号の周波数を変換させる周波数変換器である。MIX1は、LNA170によって増幅された受信信号の周波数をRFからIFに変換する。なお、IFは、例えば数100メガヘルツ(MHz)以下の周波数である。SW5は、IF帯域用スイッチであり、反射波の進行先をSWR演算回路180又は図示しない受信回路のいずれかに切り替える。
【0115】
次に、動作モードに対する各部の制御内容を、図13を参照して説明する。図13は、動作モードに対する各部の制御内容を示す図である。図13に示すように、動作モードが送信モードの場合、受信モードの場合、及びSWR測定モードの場合に区別して、各部は制御する。
【0116】
動作モードが送信モード8aである送信区間になると、送信波(送信信号)が送受信アンテナ190の方向へ伝播し、送信信号の出力が「ON」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して送信信号の送信要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をPA110側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「PA110側へ接続」を切り替える。また、SW制御回路162は、接続先をSWR演算回路180側に切り替えるようにSW5に対して指示し、SW5が「SWR演算回路180側へ接続」を切り替える。また、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をA級動作点に制御し、PA110の動作が「ON」となる。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して非動作となるように指示し、SWR演算回路180の動作が「OFF」となる。
【0117】
これにより、送信区間になると、送信波(送信信号)は、SW1からPA110に進行し、PA110によって増幅され、CIR1を経由して送受信アンテナ190に出力される。
【0118】
また、動作モードが受信モード8bである受信区間になると、送受信アンテナ190によって受信される受信波が受信系の方向へ伝播し、送信信号の出力が「OFF」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して受信信号の受信要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をCIR2側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「CIR2側へ接続」を切り替える。また、SW制御回路162は、接続先を図示しない受信回路側に切り替えるようにSW5に対して指示し、SW5が「受信回路側へ接続」を切り替える。また、PA制御回路163は、PA110の動作をオフするように制御し、PA110の動作が「OFF」となる。例えば、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して非動作となるように指示し、SWR演算回路180の動作が「OFF」となる。
【0119】
これにより、受信区間になると、受信波は、送受信アンテナ190からCIR1及びCIR2を経由し、SW5を介して図示しない受信回路に出力される。
【0120】
また、動作モードがSWR測定モード8cであるガードタイム区間になると、進行波が送受信アンテナ190の方向へ伝播し、送信信号(進行波)の出力が「ON」となる。このとき、動作指示部161は、SW制御回路162及びPA制御回路163に対して定在波比の測定要求を指示する。すると、SW制御回路162は、接続先をCIR2側に切り替えるようにSW1に対して指示し、SW1が「CIR2側へ接続」を切り替える。また、SW制御回路162は、接続先をSWR演算回路180側に切り替えるようにSW5に対して指示し、SW5が「SWR演算回路180側へ接続」を切り替える。また、PA制御回路163は、PA110の動作をオフするように制御し、PA110の動作が「OFF」となる。例えば、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御する。さらに、動作指示部161は、SWR演算回路180に対して動作するように指示し、SWR演算回路180の動作が「ON」となる。
【0121】
これにより、ガードタイム区間になると、進行波は、DC3を介してSWR演算回路180に出力されるとともに、SW1からCIR2に進行し、CIR2及びCIR1を経由してPA110の方向へ進行する。そして、進行波は、PA110によってほぼ全反射され、CIR1を経由して送受信アンテナ190に出力される。さらに、進行波が送受信アンテナ190の近傍で反射された反射波は、CIR1及びCIR2を経由して、SW5を介してSWR演算回路180に出力される。その結果、SWR演算回路180は、進行波及び反射波を用いて、定在波比を測定する。
【0122】
[実施例8の効果]
上記実施例8によれば、定在波比測定回路8では、受信信号を増幅するLNA170と、LNA170によって増幅された受信信号の周波数をIFに変換するMIX1と、SW5とを有する。このSW5は、MIX1によって周波数が変換された受信信号の進行先を後続の受信回路又はSWR演算回路180に切り替え可能な経路を用いて、ガードタイム区間になると受信信号を反射波としてSWR測定回路180に進行させる。これにより、定在波比測定回路8は、ガードタイム区間になると反射波を全てSWR測定回路180に進行させるので、反射波の信号レベルを上げることができ、精度の高いSWR測定を行うことができる。また、定在波比測定回路8は、受信信号をRFからIFに変換するので、変換後の信号を処理するSWR演算回路180等の回路の負荷を軽減する。
【実施例9】
【0123】
ところで、実施例2に係る定在波比測定回路2では、SWR演算回路180を用いて定在波比を測定するものとして説明した。しかし、定在波比測定回路9では、これに限定されるものではなく、SWR演算回路及び受信回路を備える信号処理回路200を用いて定在波比を測定するものとしても良い。そこで、実施例9では、定在波比測定回路9が、SWR演算回路及び受信回路を備える信号処理回路200を用いて定在波比を測定する場合を説明する。
【0124】
まず、実施例9に係る定在波比測定回路9の構成について説明する。図14は、実施例9に係る定在波比測定回路9の構成を示す機能ブロック図である。なお、図2に示す定在波比測定回路2と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例2と実施例9とが異なるところは、SWR演算回路180を信号処理回路200に変更し、DC4を削除し、MIX1及びIFAmp1を追加した点にある。
【0125】
かかる定在波比測定回路9では、進行波取得部130から増幅回路110、CIR1、BPF121、ケーブル191及び送受信アンテナ190が送信系として直列的に接続される。一方、CIR1からCIR2、LNA170、MIX1及びIFAmp1が受信系として直列的に接続される。また、進行波取得部130に含まれるSW1と受信系に含まれるCIR2とは進行波迂回部140によって接続される。さらに、進行波取得部130に含まれるDC3及び受信系に含まれるIFAmp1は、信号処理回路200と接続する。
【0126】
MIX1は、信号の周波数を変換させる周波数変換器である。MIX1は、LNA170によって増幅された受信信号の周波数をRFからIFに変換する。なお、IFは、例えば数100メガヘルツ以下の周波数である。
【0127】
IFAmp1は、IF用のアンプである。IFAmp1は、MIX1によってRFをIFに変換された受信信号を増幅し、増幅した受信信号を反射波として信号処理回路200に出力する。
【0128】
DC3は、送信信号を結合したり分配したりするカプラ等の方向性結合器である。DC3は、定在波比の測定要求が検出されたとき、PA110に入力する前の送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を分配する。具体的には、DC3は、定在波比の測定要求が検出されたとき、送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波をSW1及び信号処理回路200に分配する。
【0129】
信号処理回路200は、DC3によって取得される進行波と、IFAmp1によって取得される反射波とを用いて、定在波比を測定する。具体的には、信号処理回路200は、LNA170及びIFAmp1によって受信信号を増幅しているので、増幅した受信信号の電圧を増幅前の電圧に調整し、調整した受信信号(反射波)と進行波とを用いて、定在波比を測定する。
【0130】
なお、実施例9に係る動作モードに対する定在波比測定回路4の各部の制御内容は、実施例2(図4)と同様であるので、その説明については省略する。
【0131】
[実施例9の効果]
上記実施例9によれば、定在波比測定回路9では、受信信号を増幅するLNA170と、LNA170によって増幅された受信信号の周波数をIFに変換するMIX1と、IFAmp1とを有する。IFAmp1は、MIX1によって周波数が変換された反射波を増幅し、増幅した反射波を、SWR演算回路と受信回路とを含む信号処理回路200に出力する。これにより、定在波比測定回路9は、反射波の処理を信号処理回路200の信号処理に任せることで、反射波を取得するカプラやスイッチ等の部品を1つ減らすことができる。その結果、反射波を取得する部品によって生じる通過損失がなくなるので、定在波比測定回路9は、受信系全体の通過損失を低減できる。
【0132】
なお、本実施例1〜9によれば、定在波比測定回路1〜9では、進行波取得部130は、無変調波を進行波として取得しても良い。これにより、進行波取得部130は、信号レベルの変動が小さい安定した信号を取得できることととなり、定在波比測定回路1〜9は、取得した信号を用いて精度の良い定在波比を測定できる。
【0133】
また、本実施例2〜9によれば、定在波比測定回路2〜9では、PA制御回路163が定在波比の測定要求を検出すると、CIR2によって出力される進行波が、CIR1を介して送受信アンテナ190の方向へ進行するように、PA110の電圧を制御する。この場合、1つの例として、PA制御回路163が、定在波比の測定要求を検出すると、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように、ドレイン・ソース間電圧を一定値に設定して制御するものとして説明した。しかし、これに限定されず、PA制御回路163は、PA110の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように、ドレイン・ソース間電圧を「0」に設定して制御するものとしても良い。また、PA制御回路163は、定在波比の測定要求を検出すると、PA110の電源をオフするものとしても良い。
【0134】
また、本実施例1〜9において図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、送信信号を増幅する多段アンプ構成のPA110を1段アンプ構成の複数の増幅回路に分散しても良い。また、SWR演算回路180を定在波比測定回路2〜9の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしても良い。また、制御部160、SWR演算回路180を別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク接続されて協働することで、上記した定在波比測定回路2〜9の機能を実現するようにしても良い。
【0135】
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともできる。例えば図2における動作指示部161は手動で行っても良い。
【0136】
以上の実施例に係る実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0137】
(付記1)送信信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路によって増幅された送信信号を送受信アンテナの方向へ出力し、前記送受信アンテナで受信された受信信号を受信系へ出力する第1のサーキュレータと、
定在波比の測定要求が検出されたとき、前記増幅回路に入力する前の送信信号を進行波として取得する進行波取得部と、
前記進行波取得部によって取得される進行波を、前記増幅回路を迂回して受信系へ進行させる進行波迂回部と、
受信系に備えられ、前記進行波迂回部によって前記増幅回路を迂回する進行波を前記第1のサーキュレータの方向へ出力する第2のサーキュレータと、
前記第2のサーキュレータによって出力される進行波が前記第1のサーキュレータを介して前記送受信アンテナの方向へ進行するように、前記増幅回路を制御する制御部と、
前記進行波が前記送受信アンテナの近傍で反射された反射波を、受信系のうち前記第2のサーキュレータ以降で取得する反射波取得部と、
前記進行波取得部によって取得される進行波と、前記反射波取得部によって取得される反射波とを用いて、定在波比を測定する測定回路と
を有することを特徴とする定在波比測定回路。
【0138】
(付記2)前記制御部は、前記増幅回路の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御することを特徴とする付記1に記載の定在波比測定回路。
【0139】
(付記3)前記進行波取得部は、
前記送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を分配する送信系方向性結合器と、
前記進行波の進行先を前記増幅回路又は前記進行波迂回部に切り替え可能な経路を用いて、前記進行波を前記進行波迂回部に進行させる送信系スイッチとを有することを特徴とする付記1又は付記2に記載の定在波比測定回路。
【0140】
(付記4)前記進行波取得部は、
前記送信信号の送信先を前記増幅回路又は前記進行波迂回部に切り替え可能な経路を用いて、前記送信信号を前記進行波迂回部に進行させる送信系スイッチと、
前記進行波迂回部に備えられ、前記送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を分配する送信系方向性結合器とを有することを特徴とする付記1又は付記2に記載の定在波比測定回路。
【0141】
(付記5)前記進行波迂回部は、
前記第2のサーキュレータの近傍に備えられ、前記受信信号が前記反射波取得部によって反射された反射波の進行先を前記送信系スイッチ又は所定インピーダンスに終端する終端器に切り替え可能な経路を用いて、前記反射波を前記終端器に進行させる反射型スイッチを有することを特徴とする付記3に記載の定在波比測定回路。
【0142】
(付記6)前記反射波取得部は、
前記反射波を増幅する複数の受信系増幅回路と、
前記複数の受信系増幅回路のうちいずれか2つの受信系増幅回路に挟まれ、前記反射波を分配する受信系方向性結合器とを有することを特徴とする付記1から付記5のいずれか1つに記載の定在波比測定回路。
【0143】
(付記7)前記反射波取得部は、
前記反射波を増幅する複数の受信系増幅回路と、
前記複数の受信系増幅回路のうちいずれか2つの受信系増幅回路に挟まれ、前記反射波の進行先を後続の受信系増幅回路又は前記測定回路に切り替え可能な経路を用いて、前記反射波を前記測定回路に進行させる受信系スイッチとを有することを特徴とする付記1から付記5のいずれか1つに記載の定在波比測定回路。
【0144】
(付記8)前記反射波取得部は、
前記反射波を増幅する受信系増幅回路と、
前記受信系増幅回路によって増幅された反射波の周波数を中間周波数に変換する周波数変換器と、
前記周波数変換器によって周波数が変換された反射波を前記測定回路に分配する受信系方向性結合器とを有することを特徴とする付記1から付記5のいずれか1つに記載の定在波比測定回路。
【0145】
(付記9)前記反射波取得部は、
前記反射波を増幅する受信系増幅回路と、
前記受信系増幅回路によって増幅された反射波の周波数を中間周波数に変換する周波数変換器と、
前記周波数変換器によって周波数が変換された反射波の進行先を後続する受信系回路又は前記測定回路に切り替え可能な経路を用いて、前記反射波を前記測定回路に進行させる受信系スイッチとを有することを特徴とする付記1から付記5のいずれか1つに記載の定在波比測定回路。
【0146】
(付記10)前記反射波取得部は、
前記反射波を増幅する第1の受信系増幅回路と、
前記第1の受信系増幅回路によって増幅された反射波の周波数を中間周波数に変換する周波数変換器と、
前記周波数変換器によって周波数が変換された反射波を増幅し、増幅した反射波を、前記測定回路と受信系回路とを含む信号処理回路に出力する第2の受信系増幅回路とを有することを特徴とする付記1から付記5のいずれか1つに記載の定在波比測定回路。
【0147】
(付記11)前記進行波取得部は、
無変調波を進行波として取得することを特徴とする付記1から付記10のいずれか1つに記載の定在波比測定回路。
【0148】
(付記12)前記進行波取得部は、
時分割で割り当てられた送信期間と受信期間とが互いに重複しない期間に定在波比の測定要求が検出されたとき、前記送信信号を進行波として取得することを特徴とする付記1から付記11のいずれか1つに記載の定在波比測定回路。
【0149】
(付記13)前記進行波取得部は、
前記受信期間の一部の所定期間に定在波比の測定要求が検出されたとき、前記送信信号を進行波として取得することを特徴とする付記1から付記11のいずれか1つに記載の定在波比測定回路。
【0150】
(付記14)送信信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路によって増幅された送信信号を送受信アンテナの方向へ出力し、前記送受信アンテナで受信された受信信号を受信系へ出力する第1のサーキュレータと、
定在波比の測定要求が検出されたとき、前記増幅回路に入力する前の送信信号を進行波として取得する進行波取得部と、
前記進行波取得部によって取得される進行波を、前記増幅回路を迂回して受信系へ進行させる進行波迂回部と、
受信系に備えられ、前記進行波迂回部によって前記増幅回路を迂回する進行波を前記第1のサーキュレータの方向へ出力する第2のサーキュレータと、
前記第2のサーキュレータによって出力される進行波が前記第1のサーキュレータを介して前記送受信アンテナの方向へ進行するように、前記増幅回路を制御する制御部と、
前記進行波が前記送受信アンテナの近傍で反射された反射波を、受信系のうち前記第2のサーキュレータ以降で取得する反射波取得部と、
前記進行波取得部によって取得される進行波と、前記反射波取得部によって取得される反射波とを用いて、定在波比を測定する測定回路と
を有することを特徴とする通信装置。
【符号の説明】
【0151】
1〜9 定在波比測定回路
110 増幅回路
120 第1のサーキュレータ
121 BPF
130 進行波取得部
140 進行波迂回部
150 第2のサーキュレータ
160 制御部
161 動作指示部
162 SW制御回路
163 PA制御回路
170 反射波取得部
180 測定回路
190 送受信アンテナ
191 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路によって増幅された送信信号を送受信アンテナの方向へ出力し、前記送受信アンテナで受信された受信信号を受信系へ出力する第1のサーキュレータと、
定在波比の測定要求が検出されたとき、前記増幅回路に入力する前の送信信号を進行波として取得する進行波取得部と、
前記進行波取得部によって取得される進行波を、前記増幅回路を迂回して受信系へ進行させる進行波迂回部と、
受信系に備えられ、前記進行波迂回部によって前記増幅回路を迂回する進行波を前記第1のサーキュレータの方向へ出力する第2のサーキュレータと、
前記第2のサーキュレータによって出力される進行波が前記第1のサーキュレータを介して前記送受信アンテナの方向へ進行するように、前記増幅回路を制御する制御部と、
前記進行波が前記送受信アンテナの近傍で反射された反射波を、受信系のうち前記第2のサーキュレータ以降で取得する反射波取得部と、
前記進行波取得部によって取得される進行波と、前記反射波取得部によって取得される反射波とを用いて、定在波比を測定する測定回路と
を有することを特徴とする定在波比測定回路。
【請求項2】
前記制御部は、前記増幅回路の動作点電圧をピンチオフ電圧に設定するように制御することを特徴とする請求項1に記載の定在波比測定回路。
【請求項3】
前記進行波取得部は、
前記送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を分配する送信系方向性結合器と、
前記進行波の進行先を前記増幅回路又は前記進行波迂回部に切り替え可能な経路を用いて、前記進行波を前記進行波迂回部に進行させる送信系スイッチとを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定在波比測定回路。
【請求項4】
前記進行波取得部は、
前記送信信号の送信先を前記増幅回路又は前記進行波迂回部に切り替え可能な経路を用いて、前記送信信号を前記進行波迂回部に進行させる送信系スイッチと、
前記進行波迂回部に備えられ、前記送信信号を進行波として抽出し、抽出した進行波を分配する送信系方向性結合器とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定在波比測定回路。
【請求項5】
前記進行波取得部は、
時分割で割り当てられた送信期間と受信期間とが互いに重複しない期間に定在波比の測定要求が検出されたとき、前記送信信号を進行波として取得することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の定在波比測定回路。
【請求項6】
送信信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路によって増幅された送信信号を送受信アンテナの方向へ出力し、前記送受信アンテナで受信された受信信号を受信系へ出力する第1のサーキュレータと、
定在波比の測定要求が検出されたとき、前記増幅回路に入力する前の送信信号を進行波として取得する進行波取得部と、
前記進行波取得部によって取得される進行波を、前記増幅回路を迂回して受信系へ進行させる進行波迂回部と、
受信系に備えられ、前記進行波迂回部によって前記増幅回路を迂回する進行波を前記第1のサーキュレータの方向へ出力する第2のサーキュレータと、
前記第2のサーキュレータによって出力される進行波が前記第1のサーキュレータを介して前記送受信アンテナの方向へ進行するように、前記増幅回路を制御する制御部と、
前記進行波が前記送受信アンテナの近傍で反射された反射波を、受信系のうち前記第2のサーキュレータ以降で取得する反射波取得部と、
前記進行波取得部によって取得される進行波と、前記反射波取得部によって取得される反射波とを用いて、定在波比を測定する測定回路と
を有することを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−114417(P2011−114417A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266846(P2009−266846)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】