説明

定容量パルスシリンダ型流量制御装置

【課題】従来の油圧の流量制御方法としては、流路断面を狭める絞り弁だけであり、この前後では圧力差が発生し、流速が変化して振動や異音や発熱を伴い、エネルギー損失が避けられなかったため、蓄圧アキュムレータからの吐出量をより簡単で且つ正確に流量を調節し、シリンダ速度と位置の制御を可変自由に実現し、絞り弁等のエネルギーロスを極力削減する。
【解決手段】小型複動シリンダを、交互に移動させて一定量の液体を吐出させながら、パルス的にアクチュエータを駆動し、高圧による速度を低減して、時間軸方向への駆動間隔の延長により、アクチュエータを目的の速度や位置への停止など、自在な制御を行う制御回路とその制御方法を提供する。又、本発明を交互に使用して無脈動の定量ポンプとする方法や、複数個を並列に設置して一部を作動することで、流量を簡便でレスポンスの良い流量制御方法を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧アキュムレータを気体と液体を同一の個体容器に収納し、液体のみを当該容器から入出力できる構造にしたものと定義し、液体ポンプにより加圧した時に当該容器が破損せずに蓄圧可能で、当該液体の圧力差を利用することを目的とするものとして説明する。
【0002】
液体として油や水等が、気体として常温や高温で液化しにくい窒素ガスやアルゴンガスが一般に用いられているが、説明の都合と理解の容易さと且つ物性と経済性を考慮して、以下では油と窒素ガスで説明している。
【0003】
本発明は、蓄圧アキュムレータからの吐出量を一定量に制御する装置に関している。
【0004】
本発明は、シリンダの位置を高精度に制御する位置制御装置に関している。
【0005】
更に、本発明は、エネルギーロスの少ない流量制御装置にも関している。
【背景技術】
【0006】
従来の油圧装置の流量制御方法としては、絞り弁と流量調整弁、デセラレーション弁やフィールドコントロール弁、パイロット操作流量調整弁やパワーセービング弁、ニードル弁などが挙げられるが、全て絞り弁であった。
【0007】
これらの弁は基本的に流路断面積の縮小を利用しており、弁前後の圧力差発生と発熱による油温上昇、振動やうなり音などの大幅なエネルギーロスが避けられないという、根本的な問題を持っていた。
【0008】
しかし、油圧機器は機械製造等の様な一定負荷とは限らずに、エレベーターの加重やクレーンの巻上げの様に荷重範囲が変動したり、パワーショベルの掘削反力の様にワンストローク中の負荷変動まで、色々な場合の利用が考えられる。
【0009】
エンジン直結の多段可変容量ピストンポンプの閉回路でシリンダを作動させる時で、パワーショベル掘削力の様にストローク中の負荷変動がある場合には、高負荷を予想してスロットルを上げていると、エンジン回転は高くなりポンプからの吐出量が多くなり、騒音と燃料消費量も増加するだけでなく、低負荷時には操作レバーの同じ開度でシリンダ速度も増すために、方向切替え弁の開度も微妙に操作する必要があり、更に切替え弁での漏れ油量と油音温上昇もばかにならない。
【0010】
高回転にしていないと、掘削中に礫や石に当たって過負荷の時にエンストなどが多発して仕事にならない。
【0011】
この騒音を低下させエネルギーロスも少なくする為に、軽量型アキュムレータを採用しする事で、ポンプ容量も削減可能な極低騒音ショベルカー等が実現された。
【0012】
その油圧アキュムレータでの蓄積エネルギーEは、圧力Pと吐出量Vの積で与えられる為、余分なエネルギーを効率的に蓄積する為には、容量が装置に制限されるために、蓄積圧力は所要圧力の数倍以上と成る事も有る。
【0013】
その場合、高圧アキュムレータからそのままの高圧をシリンダに送ると、早く動き過ぎたり強すぎたりコントロールが難しく、製品やシリンダが破損する恐れがある。
【0014】
アキュムレータを複数個用意し、差圧を一定値の整数倍とし、順次交互に低圧に向けて切替え作動させる方式も考えられるが、複動シリンダの断面積を左右同じ値にする必要があり寸法が伸びる事と、1シリンダに複数個のアキュムレータを用意してまでエネルギー節約をする程の意味も無い。
【0015】
一般に、切替えバルブの操作は、特にウオーターハンマーを発生させない様に、ゆっくり開き、ゆっくり締める必要がある。
【0016】
シリンダへの位置微調整の為に、直接に方位切り替え弁等を瞬間的に作動・停止させる方法は、特に高圧油圧バルブの故障や誤動作の原因となるだけではなく、破壊や事故につながり、材料疲労を考慮しても得策ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、より簡単で且つ正確に流量を調節し、シリンダ速度と位置の制御を可変自由に実現する事と、絞り弁等のエネルギーロスを極力削減する事を目的としている。
【0018】
本発明は、エンジン駆動多段ピストン型油圧ポンプで蓄圧アキュムレータに蓄圧して、蓄圧アキュムレータから一定容量の液体をパルス的に送り出す定容量パルスシリンダのパルス間隔を任意に変えて油圧シリンダを制御する装置で、変動負荷の高負荷時のエンジン騒音レベルを低減することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、小型複動シリンダを、交互に移動させて一定量の液体を吐出させながら、パルス的にアクチュエータを駆動し、高圧による速度を低減して、時間軸方向への駆動間隔の延長により、アクチュエータを目的の速度や位置への停止など、自在な制御を行う制御方法を提供する事を特徴とする。
【0020】
例えば、作動させるアクチュエータ(シリンダ等)と、小型複動シリンダの断面積比が100倍であれば、その小型複動シリンダの1ストローク長が50mmとしても、アクチュエータのロッドは50mm/100=0.5mmしか移動しない事になり、アクチュエータ位置制御には精度向上となる。
【0021】
逆に、アクチュエータのロッドを200mm移動させる為には200/0.5=400ストローク、200往復必要の為長時間掛かり、且つ磨耗も考慮する必要がある。
【0022】
この値は、小型の他に中型の異なる断面積の複動シリンダを並列に切り替えて制御する事で制御時間が長く掛かる問題も防止できて、更に仕様にあわせた寸法や面積を任意に決定できるし、複数個の複動シリンダ併用でも問題防止が可能である。
【発明の効果】
【0023】
この様に、小型複動シリンダを、交互に移動させながら、パルス的にアクチュエータを駆動し、高圧による速度を低減しながら、時間軸方向への駆動間隔の延長により、アクチュエータを目的の速度や位置への停止などのコントロールが任意に精度良く可能となる。
【0024】
作動させるシリンダを一定位置(フルストロークでなく)まで全力で動かし、そのあとに、前後に微調整したい場合などでは、複動シリンダの容積を、そのシリンダの一定位置までの油糧に合わせて選択すれば、何度でも同一精度で当該シリンダ移動量をコントロールできる。
【0025】
又、該複動シリンダが他端までの移動する時間Txより少し長い時間Taを考慮すると、Taより長周期の任意パルス間隔で、当該アクチュエータへの液体流量(駆動速度)を制御し任意の速度や位置のコントロールが任意に可能となる。Ta>Tx
【0026】
これまでの回路で示す様に、複動シリンダと電磁切替え弁だけなので、流量制御弁の様な絞り弁や流路断面積の減少が無いために、熱と振動や音に変わるエネルギーロスが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この様に、小型複動シリンダや中型複動シリンダを並列に配置し、同時に又は片方だけ、交互に移動させながら、、パルス的にアクチュエータを駆動し、高圧による速度を低減して、時間軸方向への駆動間隔の延長により、アクチュエータを目的の速度や位置への停止などのコントロールが任意に精度良く可能となる。
【0028】
複動シリンダは、左右が同一断面積でなくてもパルス駆動という意味では、熱エネルギー削減は同様であり、又一往復分では定容量パルスとなるため、本発明の本質は変わらない。
【0029】
同一容積の複動シリンダを二つ並列配置し、一つの複動シリンダ移動時間をTxとすると、停止時間もTxとして二つを交互に液体をパルス出力する事で、連続吐出も可能となる。(実施例4に示す。)
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明装置の実施例1の油圧回路図であって、蓄圧アキュムレータ5が原動機2に駆動される可変容量油圧ピストンポンプ3によって加圧され、逆流防止弁6で油圧が供給される。
【0031】
蓄圧アキュムレータ5には、鋼製容器内部にピストンにより隔離された窒素ガス室と反対側に油の入るピストン型アキュムレータか、鋼製容器内に窒素ガス室が入った風船の外側に油が充満しているプラダ型アキュムレータのどちらも使用可能である。
【0032】
一般にピストン型の方がプラダ型よりピストンの慣性移動分だけ応答速度が遅いとされている。
【0033】
所定圧力より高くなった油は、直動型リリーフ弁4からドレンタンク1に直接戻る。
【0034】
二つの逆流防止弁6の間に、複動シリンダ用方向切替え弁7と、その先に本発明の複動シリンダ10が配置されて、アクチュエータ(油圧シリンダ)25に向けて、油を一方向に送っている。
【0035】
その油は、センタ保持機能付き手動スライド方向制御弁24を経由して、アクチュエータ(油圧シリンダ)25の押し引き両端に配管されており、戻り配管はドレンタンク1に戻っている。
【0036】
周期Taで、オン時間がTxの矩形波形の直流電圧で、ソレノイドを駆動すると最高周期の定容量パルス吐出が可能となる。
【0037】
しかし、交互にソレノイド8とソレノイド9に電圧を掛ける必要があり、且つ複動シリンダの位置により電圧を掛けるソレノイドを自動選択する必要がある。
【0038】
図2に示すシーケンス回路で、シリンダの位置をリミットスイッチで検出して、必要な側のソレノイドを作動させる様に工夫している。
【0039】
図3には、そのタイムチャートを示す。
【0040】
Txは、本発明の複動パルスシリンダ10がその圧力での移動時間であり、Taはその周期(sec)である。
【0041】
従って、一分間に供給される油の量Vリットルは、複動シリンダ10の一ストロークの容量をvリットルとすると、V=60/Ta×vリットルで計算される。
【0042】
直動型リリーフ弁4の代わりに、圧力スイッチとリリーフ弁でも可能である。
【実施例2】
【0043】
本発明の定容量パルスシリンダ(小・中併用)型流量制御装置の実施例を図4に示す。
【0044】
複動パルスシリンダ10は、アクチュエータ(油圧シリンダ)を精度良くコントロールできるが、逆に移動速度が遅いという問題点があり、中型複動パルスシリンダ35(容積が10〜100倍程度)と併用することでそれを解決可能である。
【0045】
他の配管と操作は、図1と同じであり、機能も同等です。
【実施例3】
【0046】
連続吐出が必要な場合は、図5に示す本発明の定容量連続シリンダ型流量装置を使用する。必要な吐出量から逆算した複動パルスシリンダ10を二つ組み合わせて、交互に供給して、定容量ポンプとして使用が可能である。
【実施例4】
【0047】
定容量パルスシリンダ複数型流量制御装置を図6に示す。
【0048】
複数型の特徴は、複動パルスシリンダ10を例えば10個並列に並べて設置し、例えば7個動かせば7割の流量、3個動かせば3割の流量と簡単に流量を変更可能であり、精度と再現性が高い。
【0049】
Taの周期を変更する場合は、人間が簡便にコントロールできず、周波数をマイコンで制御する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0050】
従来の建設用土木機械は、原動機で直接ピストン油圧ボンプを駆動し、手動スライド弁を用いて、油圧シリンダを直接駆動するという油圧閉回路であり、高負荷時は最大エンジン負荷となり騒音も高かった。
【0051】
アキュムレータを採用すると、静音性が向上するが、絞り弁を多用するとエネルギーロスが発生して、油の温度が上昇して粘性が変わり、油量が一定となら無い。
【0052】
その為にオイルクーラーが必要となるという、悪循環が発生してしまう。
【0053】
しかし、本発明の定容量パルスシリンダ型流量制御装置により、絞り弁が不要な流量制御装置が得られた。
【0054】
更に、パルスが無い連続流量の制御装置も可能であり、また複数型と組み合わせる事により、任意の回路に利用可能な流量制御装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の定容量パルスシリンダ型流量制御装置の実施例。(実施例1)
【図2】本発明の定容量パルスシリンダ型流量制御装置実施例のシーケンス回路図。(実施例1)
【図3】本発明の定容量パルスシリンダ型流量制御装置実施例のタイムチャートを示す。(実施例1)
【図4】本発明の定容量パルスシリンダ(小・中併用)型流量制御装置の実施例。(実施例2)
【図5】本発明の定容量連続シリンダ型流量制御装置の実施例。(実施例3)
【図6】本発明の定容量パルスシリンダ複数型流量制御装置の実施例(10-1〜10-3まで記入 必要に応じて10個程度並列にする)。(実施例4)
【符号の説明】
【0056】
1 ドレンタンク
2 原動機
3 可変容量油圧ピストンポンプ
4 直動型リリーフ弁
5 蓄圧アキュムレータ
6 逆流防止弁
7 複動シリンダ用方向制御電磁切替え弁
7a 複動シリンダ用方向制御電磁切替え弁クロス
7b 複動シリンダ用方向制御電磁切替え弁ストレート
7c 複動シリンダ用方向制御電磁切替え弁ストップ
8 複動シリンダ用ソレノイド(SLa)
9 複動シリンダ用ソレノイド(SLb)
10 複動パルスシリンダ
10' 複動連続シリンダ
11 複動ピストン
11' 複動連続ピストン
12 複動ロッド左
13 複動ロッド右
14 緩衝バネ左
15 緩衝バネ右
16 リミットスイッチ左端(LS1)
17 リミットスイッチ左中(LS2)
18 リミットスイッチ右中(LS3)
19 リミットスイッチ右端(LS4)
20 LS5リミットスイッチ左
21 LS6リミットスイッチ右
22 オペレータ用操作ノブ
23 操作ロッド
24 センタ保持機能付き手動スライド方向制御弁
24aセンタ保持機能付き手動スライド方向制御弁クロス
24bセンタ保持機能付き手動スライド方向制御弁ストレート
24cセンタ保持機能付き手動スライド方向制御弁ストップ
25 アクチュエータ(油圧シリンダ)
26 油圧ロッド
27 油圧ピストン
28 複動シリンダ中型用方向制御電磁切替え弁
28‘複動連続シリンダ用方向制御電磁切替え弁
29 複動シリンダ中型用ソレノイド(SLa)
29‘複動連続シリンダ中型用ソレノイド(SLa)
30 複動シリンダ中型用ソレノイド(SLb)
30‘複動連続シリンダ用ソレノイド(SLb)
31 リミットスイッチ左端(LS7)
32 リミットスイッチ左中(LS8)
33 リミットスイッチ右中(LS9)
34 リミットスイッチ右端(LS10)
35 複動中型シリンダ
36 複動中型ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄圧アキュムレータから一定容量の液体をパルス的に送り出す定容量パルスシリンダとその制御回路
【請求項2】
蓄圧アキュムレータから一定容量の液体をパルス的に送り出す定容量パルスシリンダを一定周期で作動させる定流量制御装置
【請求項3】
蓄圧アキュムレータから一定容量の液体をパルス的に送り出す定容量パルスシリンダのパルス間隔を任意に変えて流量を制御する流量制御装置
【請求項4】
蓄圧アキュムレータからの出力を、一定容量の液体をパルス的に送り出す往復シリンダを複数本並列に並べて同一周期で作動させた時に、その一部を作動させない事により流量を調節する流量制御装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−278310(P2007−278310A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101330(P2006−101330)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(399042063)共立工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】