説明

定着ローラ、定着ユニット及び画像形成装置

【課題】定着ローラ及びそれを適用した定着ユニット及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、定着部に挿入される内部管と、内部管の外周面を取り囲み、定着部の内周面に密着するように設置されて熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラにおいて、定着部の外周面は、中心線平均粗さRaの値が3μm以上5μm以下の範囲内で表面処理されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラ、定着ユニット及び画像形成装置に関し、特に、トナーで現像された画像に熱及び圧力を加えて印刷媒体に融着させる定着ローラ、この定着ローラを備える定着ユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子写真方式の画像形成装置は、印刷しようとする画像に対応する静電潜像を感光媒体に形成し、トナーを利用して静電潜像を現像した後、現像されたトナー画像を印刷媒体に転写させた後に定着させる装置である。したがって、画像形成装置は、印刷媒体に転写されたトナー画像に熱及び圧力を加えて、トナー画像を印刷媒体に融着させる定着装置を備える。
【0003】
図1は、従来の画像形成装置の定着ユニットの一例の構成を示す縦断面図である。図1に示すように、定着ユニット10は、定着ローラ11及び加圧ローラ15を備える。
【0004】
定着ローラ11は、管状の定着部12と、その内部の中央に設置されるハロゲンランプとからなる発熱部14と、を備える。定着ローラ12の外周面には、印刷媒体17との分離が円滑に行われる、ポリ4フッ化エチレン(TeflonTM)でコーティングされた離型層13で覆われている。発熱部14から発生した熱は、輻射を通じて定着部12に伝達され、定着部12の帯電を通じて定着部12の外周面に伝達されつつ、定着部12は、トナー画像18を印刷媒体17に融着させるための定着温度まで加熱される。
【0005】
加圧ローラ15は、定着ローラ11の下部に印刷媒体17を挟んで相接するように設置されている。加圧ローラ15は、弾性手段16によって定着ローラ11側に弾性力を受けるので、それらの間を通過する印刷媒体17には圧力が加えられる。したがって、印刷媒体17に転写されたトナー画像18は、前記発熱部14から伝達された熱と共に、前記加圧ローラ15による圧力によって印刷媒体17に融着される。
【0006】
前述の定着ユニット10は、その一例を説明したが、定着ユニットは、基本的に前記のような構成を有している。ただし、発熱部をいかなる構成とするか、定着部の材質を何にするかなどの詳細な構成については変更可能である。
【0007】
図1には、定着部12の外周面に離型層13のみが形成されているが、これは、モノクロ画像を印刷する場合に利用される構成である。モノクロ画像を印刷する場合には、印刷媒体17が排紙される側に、離型層13に付着される印刷媒体17を分離できる分離部(図示せず)が設けられるので、定着ローラ11と加圧ローラ15とが接触して形成されるニップは、所定の曲率を有するように形成されてもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カラー画像を印刷する場合には、定着ローラ11と加圧ローラ15とが接触して形成されるニップは扁平である必要があるので、離型層13と定着部12との間に弾性層(図示せず)が設けられる。このとき、弾性層は、ニップを形成して定着性を確保し、印刷媒体のカール方向を加圧ローラ15側に変えて、印刷媒体が定着ローラ11に巻き付けられてしまう現象(ラップジャム)を防止するものである。このため、弾性層としては低硬度の弾性層を使用する。
【0009】
ところが、低硬度の弾性層を使用する場合に、発熱部から伝達される高温の熱及び加圧ローラの加圧力は、弾性層にストレスとして作用する。このため、弾性層の寿命を確保することが困難となり、定着部と弾性層との間に剥離が発生して、弾性層が剥離されるという問題点が発生する。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、低硬度の弾性層との接合を向上させることが可能な、新規かつ改良された定着ローラ、定着ユニット及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、前記定着部に挿入される内部管と、前記内部管の外周面に設けられ、前記定着部の内周面に密着するように設置されて熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラにおいて、前記定着部の外周面は、中心線平均粗さRaの値が3μm以上5μm以下の範囲内で表面処理されている定着ローラが提供される。
【0012】
また、前記定着部は、アルミニウム材質からなるものであってもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、管状の定着部と、
前記定着部の外周面に形成された弾性層と、前記定着部に挿入される内部管と、前記内部管の外周面に設けられ、前記定着部の内周面に密着するように設置されて熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラにおいて、前記定着部の外周面は、0.15mmピッチで旋削処理され、且つ燐酸塩処理されている定着ローラが提供される。
【0014】
また、前記定着部は、スチール材質からなるものであってもよい。
【0015】
また、前記弾性層は、JIS−A硬度2度〜10度であってもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、前記定着部に挿入される内部管と、前記内部管の外周面に設けられ、前記定着部の内周面に密着するように設置されて熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラと、前記定着ローラと相接してニップを形成するように前記定着ローラ側に付勢されている加圧ローラと、を備える定着ユニットにおいて、前記定着部の外周面は、中心線平均粗さRaの値が3μm以上〜5μm以下の範囲内で表面処理されている定着ユニットが提供される。
【0017】
また、前記定着部は、アルミニウム材質からなるものであってもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、前記定着部に挿入される内部管と、前記内部管の外周面に設けられ、前記定着部の内周面に密着するように設置されて熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラと、前記定着ローラと相接してニップを形成するように前記定着ローラ側に付勢されている加圧ローラと、を備える定着ユニットにおいて、前記定着部の外周面は、0.15mmピッチで旋削処理され、且つ燐酸塩処理されている定着ユニットが提供される。
【0019】
また、前記定着部は、スチール材質からなるものであってもよい。
【0020】
また、前記弾性層は、JIS−A硬度2度〜10度であってもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、静電潜像を現像する現像装置と、画像を印刷媒体に融着させるものであって、管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラと、前記定着ローラと相接する加圧ローラとを備える定着ユニットと、を備える画像形成装置において、前記定着部の外周面は、中心線平均粗さRaの値が3μm以上5μm以下の範囲内で表面処理されている画像形成装置が提供される。
【0022】
また、前記定着部は、アルミニウム材質からなるものであってもよい。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、静電潜像を現像する現像装置と、画像を印刷媒体に融着させるものであって、管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラと、前記定着ローラと相接する加圧ローラとを備える定着ユニットと、を備える画像形成装置において、前記定着部の外周面は、0.15mmピッチで旋削処理され、且つ燐酸塩処理されている画像形成装置が提供される。
【0024】
また、前記定着部は、スチール材質からなるものであってもよい。
【0025】
また、前記弾性層は、JIS−A硬度2度〜10度であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、定着部の外周面に最適な表面処理を行うことによって、弾性層と定着部との結合力を向上させて、弾性層の剥離を確実に抑止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
図2は、本発明に係る定着ユニットが適用された画像形成装置の概略的な構成を示す縦断面図であり、図3は、画像形成装置の定着ユニットを示す縦断面図であり、図4は、図3に示す定着ローラの構成を示す横断面図であり、図5は、図4に示すA部分を拡大して示したものであって、本発明の一実施形態に係る定着ローラの構成を示す横断面図であり、図6は、図4に示すA部分を拡大して示したものであって、本発明の他の実施形態に係る定着ローラの構成を示す横断面図である。
【0029】
図2及び図4に示すように、画像形成装置は、本体100の下部には、印刷媒体Pを積載したカセット110が着脱可能に設置されており、本体100の側部には、印刷媒体Pを積載した多目的給紙台123が設置されている。カセット110及び多目的給紙台123の上側には、積載された印刷媒体Pをピックアップするためのピックアップローラ121、124がそれぞれ設置されている。
【0030】
印刷媒体Pがピックアップローラ121、124によってピックアップされて、移送ローラ122によって移送される移送経路上には、印刷媒体Pに画像を現像及び転写するための現像装置130及び転写ローラ132が設置されている。
【0031】
前記現像装置130は、光走査装置150によって、その表面に静電潜像が形成される感光媒体131、感光媒体131に接触するように設置されて静電潜像を現像する現像ローラ133、現像ローラ133にトナータンク137からトナーを供給する供給ローラ134を備える。
【0032】
転写ローラ132は、感光媒体131に対向して接触するように設置されて、感光媒体131に形成されたトナー画像を用紙Pに転写させる。
【0033】
図3に示すように、転写ローラ132によって印刷媒体Pに転写されたトナー画像は、印刷媒体Pの移送経路上に設置された定着ユニット160によって印刷媒体Pに融着されて、排紙ローラ181、182を通じて本体100の外部に排出されて、排紙台183に積載される。
【0034】
前記定着ユニット160は、印刷媒体Pに転写されたトナー画像111に熱及び圧力を加えて印刷媒体Pに融着させるものであって、矢印方向に回転しつつトナー画像111に熱を加える定着ローラ161と、前記定着ローラ161と相接するように設置されて、弾性手段168によって前記定着ローラ161側に弾性力が加えられる加圧ローラ167とを備える。
【0035】
トナー画像111の転写された印刷媒体Pは、定着ローラ161と加圧ローラ167とが相接する部分(ニップと言う)を通過しつつ熱及び圧力を受けて、トナー画像111は、印刷媒体Pに融着される。
【0036】
定着ローラ161は、管状の定着部162、定着部162に挿入される内部管165、発熱部164、及び発熱部164を前記定着部162及び内部管165と絶縁させる絶縁部166を備える。
【0037】
図4に示すように、定着部162は、その両端が開放されており、その外周面には保護層163が設けられている。前記定着部162の両端には、エンドキャップ169と動力伝達エンドキャップ170とが設置されており、定着部162は、エンドキャップ169と伝達エンドキャップ170との間に挟まれて設置されている。動力伝達エンドキャップ170の構成は、エンドキャップ169の構成と類似している。ただし、動力伝達エンドキャップ170には、駆動装置(図示せず)に連結されて動力を伝達されて回転可能とされるため、動力伝達部170aが設けられている。エンドキャップ169と動力伝達用エンドキャップ170aとにはそれぞれ電極171が設置される。電極171は、フレーム200に弾性支持されている電源供給部210と接触して電流を供給される。従って、定着ローラ161が回転される間にも、電極171は、電源供給部210との接触が持続的に維持されることで、電流を供給されうる。
【0038】
定着部162の両端にそれぞれエンドキャップ169及び動力伝達用エンドキャップ170を配置したことにより、定着部162がエンドキャップ169及び動力伝達用エンドキャップ170によって挟まれる。このため、定着ローラ161の内部空間172は、外部と遮断されて、ほとんど密閉される。従って、発熱部164から発生した熱が内部空間172に伝達されて、内部空間172に収容されている空気の温度を上昇させることによって、定着ローラ161の長手方向全体に温度を速く上昇させうる。
【0039】
保護層163は、図5に示すように、定着部162の外周面を取り囲むように設置されており、加圧ローラ167と接触しつつ弾性変形してニップを形成する弾性層163bと、前記弾性層163bの外周面を取り囲むように設置されており、ポリ4フッ化エチレン(TeflonTM)などでコーティングされて、印刷媒体P及びトナー画像111との分離を円滑に行う離型層163aと、を備える。
【0040】
弾性層163bと定着部162との間、弾性層163bと離型層163aとの間には、それらを接着させる接合層163c、163dがそれぞれ設けられている。接合層163c、163dは、ポリマーからなることが望ましい。
【0041】
弾性層163bは、JIS−A(Japanese Industrial Standards)基準2度〜10度の低硬度であるLSR(Liquid silicon rubber; 液状シリコン)のレジン(Resin)から構成されている。
【0042】
このように、定着部162の外周面を取り囲むように保護層163を設け、保護層163に弾性を持たせたことにより、印刷媒体Pのカール方向を加圧ローラ167側にすることができ、印刷媒体が定着ローラ161に巻き付けられてしまうことを抑止できる。
【0043】
図4に示す本発明の一実施形態に係る定着部162は、その材質がアルミニウム(Al)からなっており、その外周面は、粗度Raの値が3μm〜5μmになるように表面処理されていることが望ましい。
【0044】
アルミニウム(Al)からなる定着部162の粗度に関する条件は、以下の実験結果から得られたものである。本実施形態では、少なくとも印刷媒体Pの表面積に対して2%のパターンの画像が形成されるように印刷媒体Pを10万枚連続的に印刷しても、弾性層163bと定着部162とが剥離されないことを条件とし、この条件を満足させる結果として、定着部162の外周面の粗度に関する条件を得た。
【0045】
このような実験条件下で、定着部162の外周面の旋削を行った状態と、旋削を行っていない状態で粗度を変化させつつ行った実験結果とを下記の表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
ここで、粗度の単位であるRaは、中心線平均粗さであり、印刷媒体の表面積に対して2%パターンの画像が形成されるように、印刷媒体を10万枚連続的に印刷する実験条件を行った結果である。
【0048】
表1で図形の表示は、次のような意味を表す。これは、下記表2にも同じく適用される。
○:10万枚以上印刷しても、弾性層163bと定着部162とが剥離するなどの問題点が発生しない良好な状態
△:5万枚ないし10万枚以下に印刷する場合に、弾性層163bと定着部162とが剥離するなどの問題点が発生する普通の状態
×:5万枚以下印刷する場合にも、弾性層163bと定着部162とが剥離するなどの問題点が発生する不適な状態
【0049】
表1で、定着部162の外周面を旋削0.3mmに表面処理した状態で、粗度を0μmないし6μmまで1μmずつ区分して各区間別に実験した結果、4μm〜5μmである区間を除いては不適合であり、4μm〜5μmである区間も、5万枚ないし10万枚以下に印刷する場合に、所望の条件を満足させ得ない。ここで、旋削は、旋盤作業でラウンド状の工作物(定着部162)を回転させつつ、その表面を工具で削って製作する方法であって、0.3mmの旋削は、ピッチが0.3mmである。
【0050】
一方、定着部162の外周面を旋削によって表面処理していない状態で、粗度を0μmないし6μmまで1μmずつ区分して各区間別に実験した結果、粗度が3μm〜4μmの区間及び4μm〜5μmの区間が所望の実験条件を満足させるということが判明した。従って、定着部162の外周面の粗度を3μm〜4μmとすることで、弾性層163bと定着部162とが剥離するなどの問題の発生を確実に抑止できる。
【0051】
図6に示す本発明の他の実施形態に係る定着部162は、その材質がスチールからなっており、その外周面は、旋削0.15mmに表面処理した状態で燐酸塩処理されていることが望ましい。上述のように、旋削は、旋盤作業でラウンド状の工作物を回転させつつ、その表面を工具で削って製作する方法であって、0.3mmの旋削は、ピッチが0.3mmである。
【0052】
スチールからなる定着部162が、上記の表面処理条件を有することは、以下の実験結果から得られたものである。この実施形態では、少なくとも印刷媒体Pの表面積に対して2%のパターンの画像が形成されるように印刷媒体Pを10万枚連続的に印刷しても、弾性層163bと定着部162とが剥離されないこと条件とし、この条件を満足させる結果として、定着部162の表面処理条件を得た。
【0053】
このような実験条件下で、定着部162の外周面を燐酸塩処理した状態と、処理していない状態で旋盤条件を変化させつつ行った実験結果とを下記の表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に示すように、定着部162の外周面を燐酸塩処理していない状態では、旋削を0(無)ないし0.5mmまで区間別に分けて実験した結果、全ての区間で不適であった。
【0056】
一方、定着部162の外周面を燐酸塩処理した状態で、旋削を0(無)ないし0.5mmまで区間別に分けて実験した結果、0.15mmに旋削された区間で所望の実験条件を満足させるということが判明した。すなわち、定着部162の外周面を燐酸塩処理し、且つ、ピッチを0.15mmで旋削した場合は、弾性層163bと定着部162とが剥離するなどの問題の発生を確実に抑止できる。
【0057】
パーカライジングは、マンガンまたは亜鉛のような金属の第1燐酸塩水溶液を沸点近くまで加熱したものの中に鉄鋼製品を浸せば、表面に不溶性である鉄の第2燐酸塩及び第3燐酸塩が形成される。この被膜は、水にも溶けずに稠密であり、表面をよく覆うので、防食効果が大きく、また塗装の基(下地)としても好適である。
【0058】
発熱部164は、定着部162と内部管165との間に位置し、内部管165の外周面を螺旋状に取り囲むように設置されて、外部電源から電流を供給されて抵抗発熱する抵抗発熱体から形成されている。図4に示すように、発熱部164の両端には、それぞれ外部電源から電流を供給されるように設けられたリード部164aが設けられている。リード部164aのそれぞれは、定着部162の両端に設けられた電極171にそれぞれ電気的に接続されている。従って、外部電源から入力される電流は、電極171、リード部164aを介して発熱部164に伝達されうる。発熱部164の抵抗発熱体の間は、図面上では相互離隔されているように示されているが、これは説明の便宜のためであり、実際には、抵抗発熱体の厚さが薄いため、これらの間には絶縁部166が挟まれうる。
【0059】
絶縁部166は、図5及び図6に示すように、発熱部164と内部管165との間に設けられている第1絶縁部166aと、発熱部164と定着部162との間に設けられている第2絶縁部166bとを備える。
【0060】
絶縁部166は、耐電圧特性及び耐絶縁破壊性能に優れ、かつ薄型にすることができるので、熱伝逹効率の高い材料でなければならない。耐電圧特性は、所定の外部電源がかかっても、これに耐えうる特性を表すものであり、耐絶縁破壊特性は、最大の耐電圧下で1分間、10mA以上の漏れ電流が発生せず、かつ絶縁破壊されない特性を表す。このような条件を満たす材料であれば、いかなる材料でも絶縁部166として使用されうる。
【0061】
内部管165は、その外周面を発熱部164が取り囲むように設けられた状態で定着部162に挿入されて、発熱部164が定着部162の内周面に密着するように設置される。したがって、内部管165、絶縁部166、発熱部164及び定着部162は相互密着しており、発熱部164から発生した熱は、効率的に定着部162の表面に伝達される。
【0062】
図3に示すように、定着ローラ161の上側には、定着部162の表面温度が急激に上昇する場合に、電源を遮断して過熱を防止するサーモスタット191と、定着部162の表面温度を測定するサーミスター192とが設置されている。
【0063】
参考までに、定着ローラ161の製造方法を簡単に説明すれば、次の通りである。内部管165の外周面に第1絶縁部166aを設置する。第1絶縁部166aを取り囲むように、前記発熱部213を螺旋状に設置する。その後、発熱部213を取り囲むように第2絶縁部166bを設置する。
【0064】
そして、上述のように、発熱部164、第1絶縁部166a及び第2絶縁部166bの設けられた内部管165を定着部162の内部に挿入する。
【0065】
その後、内部管165の両端を塞ぎ、内部空間172に所定の圧力を加えて内部管165を拡大させる。
【0066】
これにより、内部管165は拡大しつつ、発熱部164、第1絶縁部166a、第2絶縁部166bは、定着部162の内面に密着する。このとき、発熱部164は、抵抗発熱体から形成されているので、隣接する他の抵抗発熱体との離隔空間は、第1絶縁部166a及び第2絶縁部166bで満たされる。
【0067】
拡管させる場合には、内部管165がアルミニウムのような軟性を有する材質からなる場合に可能であり、ステンレススチールのような材質からなる場合には、発熱部164、第1絶縁部166a及び第2絶縁部166bの設けられた内部管165を定着部162の内部に挟み込む。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、印刷媒体に転写されたトナー画像に熱及び圧力を加えて印刷媒体に融着させる定着ローラ、定着ユニット及び画像形成装置に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】従来の画像形成装置の定着ユニットの一例の構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る定着ユニットが適用された画像形成装置の概略的な構成を示す縦断面図である。
【図3】画像形成装置の定着ユニットを示す縦断面図である。
【図4】図3に示す定着ローラの構成を示す横断面図である。
【図5】図4に示すA部分を拡大して示したものであって、本発明の一実施形態に係る定着ローラの構成を示す横断面図である。
【図6】図4に示すA部分を拡大して示したものであって、本発明の他の実施形態に係る定着ローラの構成を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0071】
162 定着部
163 保護層
164 発熱部
164a リード部
165 内部管
166 絶縁部
166a 第1絶縁部
166b 第2絶縁部
169 エンドキャップ
170 動力伝達エンドキャップ
170a 動力伝達部
171 電極
200 フレーム
210 電源供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の定着部と、
前記定着部の外周面に形成された弾性層と、
前記定着部に挿入される内部管と、
前記内部管の外周面に設けられ、前記定着部の内周面に密着するように設置されて熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラにおいて、
前記定着部の外周面は、中心線平均粗さRaの値が3μm以上5μm以下の範囲内で表面処理されていることを特徴とする定着ローラ。
【請求項2】
前記定着部は、アルミニウム材質からなることを特徴とする請求項1に記載の定着ローラ。
【請求項3】
管状の定着部と、
前記定着部の外周面に形成された弾性層と、
前記定着部に挿入される内部管と、
前記内部管の外周面に設けられ、前記定着部の内周面に密着するように設置されて熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラにおいて、
前記定着部の外周面は、0.15mmピッチで旋削処理され、且つ燐酸塩処理されていることを特徴とする定着ローラ。
【請求項4】
前記定着部は、スチール材質からなることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラ。
【請求項5】
前記弾性層は、JIS−A硬度2度〜10度であることを特徴とする請求項1又は3に記載の定着ローラ。
【請求項6】
管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、前記定着部に挿入される内部管と、前記内部管の外周面に設けられ、前記定着部の内周面に密着するように設置されて熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラと、
前記定着ローラと相接してニップを形成するように前記定着ローラ側に付勢されている加圧ローラと、を備える定着ユニットにおいて、
前記定着部の外周面は、中心線平均粗さRaの値が3μm以上〜5μm以下の範囲内で表面処理されていることを特徴とする定着ユニット。
【請求項7】
前記定着部は、アルミニウム材質からなることを特徴とする請求項6に記載の定着ユニット。
【請求項8】
管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、前記定着部に挿入される内部管と、前記内部管の外周面に設けられ、前記定着部の内周面に密着するように設置されて熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラと、
前記定着ローラと相接してニップを形成するように前記定着ローラ側に付勢されている加圧ローラと、を備える定着ユニットにおいて、
前記定着部の外周面は、0.15mmピッチで旋削処理され、且つ燐酸塩処理されていることを特徴とする定着ユニット。
【請求項9】
前記定着部は、スチール材質からなることを特徴とする請求項7に記載の定着ユニット。
【請求項10】
前記弾性層は、JIS−A硬度2度〜10度であることを特徴とする請求項6又は8に記載の定着ユニット。
【請求項11】
静電潜像を現像する現像装置と、
画像を印刷媒体に融着させるものであって、管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラと、
前記定着ローラと相接する加圧ローラとを備える定着ユニットと、を備える画像形成装置において、
前記定着部の外周面は、中心線平均粗さRaの値が3μm以上5μm以下の範囲内で表面処理されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記定着部は、アルミニウム材質からなることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
静電潜像を現像する現像装置と、
画像を印刷媒体に融着させるものであって、管状の定着部と、前記定着部の外周面に形成された弾性層と、熱を発生させる発熱部と、を備える定着ローラと、
前記定着ローラと相接する加圧ローラとを備える定着ユニットと、を備える画像形成装置において、
前記定着部の外周面は、0.15mmピッチで旋削処理され、且つ燐酸塩処理されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
前記定着部は、スチール材質からなることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記弾性層は、JIS−A硬度2度〜10度であることを特徴とする請求項11または請求項13に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−20884(P2008−20884A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106216(P2007−106216)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】