説明

定着ローラ、定着ローラの製造方法、定着装置及び画像形成装置

【課題】ガスバリア性を向上させやすくすることができる定着ローラ、定着ローラの製造方法、定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】ローラ81と、ローラ81の外周面に該外周面を囲むように設けられるとともに、弾性材料を含んで構成される弾性層83と、弾性層83の外周面に該外周面を囲むように設けられる表面層85と、弾性層83の一端側及び他端側のそれぞれに設けられ、弾性層83の端部を覆う一対のカバー86a及び86bとを備え、カバー86a及び86bは、それぞれ接着により表面層85に接合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラ、定着ローラの製造方法、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用するプリンタ、コピー、ファクシミリなどの画像形成装置は、露光、現像、転写、定着のプロセスにより、紙などの記録媒体上に、トナーからなる画像を形成する。このような画像形成装置には、トナーにより形成されたトナー像を未定着状態で担持する紙等の記録媒体に加熱および加圧することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置が備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる定着装置は、一般に、互いに圧接回転する円柱状または円筒状の定着ローラおよび加圧ローラと、この定着ローラを加熱するハロゲンヒータとを有している。前記定着ローラおよび前記加圧ローラの前記圧接により形成されたニップに、記録媒体を通紙することにより、前記記録媒体を加熱および加圧して、前記記録媒体上に形成されたトナー像を前記記録媒体に定着させる。
【0004】
特許文献1において、加圧ローラは、芯金と、この芯金の周囲を覆うゴム製の弾性層と、この弾性層の周囲を覆う離型層とを有している。このような加圧ローラに設けられた弾性層は、その弾性により、ニップ幅を大きいものとして定着性を向上させる。
【0005】
また、特許文献1では、弾性層と離型層とは加圧ローラの軸線方向で同等の長さとなっていて、弾性層の端面が外部に露出している。そのため、弾性層内に含まれる低分子量成分が外部へ漏れ出し、画像形成装置内で画像形成プロセスに悪影響を与える場合がある。例えば、弾性層がシリコーンゴムで構成されている場合、弾性層内の低分子量シロキサンが画像形成装置内へ漏れ出し、前述のような悪影響を生じさせるおそれがある。
【0006】
このような問題に対し、低分子量成分をオゾンにより分解・除去する手段を設けた画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平6−214481号公報
【特許文献2】特開2004−294460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載された手段では、低分子量成分の種類等によっては、十分な除去性能が得られないおそれがある。また、画像形成装置に、新たに排気装置や反応装置等を備える必要があり、画像形成装置の大型化、高コスト化を招くという問題もある。
【0009】
そこで、本出願人は、基部(ローラ)と、この基部の外周面を覆う弾性層と、弾性層の外周面を覆う離型層とを備えた定着ローラにおいて、弾性層の端部をカバー層で封止した構成を提案している(特願2005−380426)。上記のカバー層は、カバー層を形成するための液状組成物を、基部と弾性層とチューブ状の離型層とで形成される凹部に充填してから、加熱して硬化させることによって形成される。
【0010】
上記のカバー層を備えた定着ローラでは、弾性層が基部と離型層とカバー層とによって封止されるので、弾性層から低分子量成分が放出されるのを低く抑えることができる。そして、カバー層の厚みを厚くすることにより、低分子量成分の漏洩を一層低く抑えること、すなわちガスバリア性を向上させることができるようになると考えられる。
【0011】
しかしながら、上述した方法で形成されるカバー層は、硬化する際に収縮をともなう。そして、硬化後の収縮量は、カバー層の厚みが厚くなるほど多くなる。つまり、カバー層の厚みを厚くすると、カバー層の硬化にともなう収縮量が多くなるため、カバー層の内部や、カバー層と離型層との間の接合部や、カバー層と弾性層との間の接合部などに応力や亀裂が発生しやすくなる。すなわち、上記のカバー層では、ガスバリア性を向上させることが困難であるという未解決の課題がある。
【0012】
本発明は、この未解決の課題を解決するためになされたものであり、ガスバリア性を向上させやすくすることができる定着ローラ、定着ローラの製造方法、定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明における定着ローラは、ローラと、該ローラの外周面に該外周面を囲むように設けられるとともに、弾性材料を含んで構成される弾性層と、該弾性層の外周面に該外周面を囲むように設けられる表面層と、前記弾性層の一端側及び他端側のそれぞれに設けられ、当該弾性層の端部を覆う封止部とを備え、前記封止部は、接着により前記表面層に接合されていることを特徴とする。
【0014】
この発明では、封止部が接着により表面層に接合されるため、封止部の厚みを容易に厚くすることができる。従って、定着ローラのガスバリア性を向上させやすくすることが可能となる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、前記封止部と前記表面層とは、前記封止部及び前記表面層の少なくとも一方に形成され、接着強度を向上させる被接合層を介して接合されていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、封止部と表面層とが被接合層を介して接着されている。これにより、封止部と表面層との接合強度の向上が図られる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、前記被接合層は、無機物で構成された無機薄膜であることを特徴とする。
【0018】
この発明では、種々の接着剤に対して耐性を有する無機物で被接合層が構成されているため、適用可能な接着剤の種類を拡大することができる。
【0019】
第4の発明は、第3の発明において、前記無機薄膜は、金属で構成されていることを特徴とする。
【0020】
この発明では、無機薄膜が金属で構成されているため、表面層の柔軟性が損なわれてしまうことを低く抑えることが可能となる。
【0021】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか一つの発明において、前記封止部は、該封止部の外周面が前記表面層の内周面に接合されていることを特徴とする。
【0022】
この発明では、封止部の外周面が表面層の内周面に接合されているため、封止部の厚みを厚くするほど接合面積が大きくなる。これにより、封止部の厚みを容易に厚くすることができるとともに、接合強度の向上が図られる。
【0023】
第6の発明における定着ローラの製造方法は、管状の表面層の内周面に金属薄膜を形成する工程と、リング状の第1封止部材及びリング状の第2封止部材を形成する工程と、前記第1封止部材の内周側にローラを挿入するとともに、前記第1封止部材及び前記ローラを接合する工程と、前記ローラに接合された前記第1封止部材の前記外周面を前記表面層の内周側に挿入するとともに、前記第1封止部材の前記外周面及び前記表面層の前記内周面を、前記金属薄膜を介して接着する工程と、前記第1封止部材を底として前記ローラ及び前記表面層間に、流動性を有する弾性材料を流し込む工程と、前記第2封止部材の外周面を前記表面層の内周側に挿入するとともに、前記第2封止部材の前記外周面及び前記表面層の前記内周面を前記金属薄膜を介して接着して、前記弾性材料に前記第2封止部材で蓋をする工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
この発明では、第1封止部材及び第2封止部材を、それぞれ単独で形成することができる。これにより、第1封止部材及び第2封止部材のそれぞれの厚みを、容易に変更することが可能となる。また、第1封止部材及び第2封止部材の各外周面を、表面層の内周面に金属薄膜を介して接着することにより、弾性材料を、ローラ及び表面層並びに第1封止部材及び第2封止部材で囲まれる領域内に封止することが可能となる。従って、ガスバリア性を向上させやすくすることができる定着ローラを製造することが可能となる。
【0025】
第7の発明における定着装置は、第1乃至第5のいずれか一つの発明の定着ローラと、該定着ローラに当接する加圧ローラとを備え、前記定着ローラ及び前記加圧ローラは、外周面同士が当接した状態で回転可能に構成されているとともに、トナーが付着した記録媒体を前記外周面同士で挟持した状態で回転しながら、前記トナーを前記記録媒体に定着させるように構成されていることを特徴とする。
【0026】
この発明では、定着装置は、ガスバリア性を向上することができる定着ローラと、この定着ローラに当接する加圧ローラとを備えているため、低分子量成分の発生が低く抑えられる。
【0027】
第8の発明における画像形成装置は、記録媒体に、画像情報に基づいてトナーを付着させてトナー像を形成するトナー像形成部と、第7の発明の定着装置とを備えたことを特徴とする。
【0028】
この発明では、低分子量成分の発生が低く抑えられた定着装置を備えているため、画像形成装置における低分子量成分の発生が低く抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態の画像形成装置1は、図1に示すように、装置本体2と、感光ローラ3と、帯電器5と、露光装置7と、現像装置9と、転写装置11と、定着装置13と、給紙装置15と、レジストローラ17と、記録用紙Pを導く搬送路19と、排出ローラ21と、反転ローラ23と、反転搬送路25と、搬送ローラ27とを備えている。この画像形成装置1は、露光・現像・転写・定着を含む一連したプロセスを経て記録用紙Pに画像を形成する所謂電子写真方式を採用している。
【0030】
ここで、上記の各構成について説明する。
感光ローラ3は、外周面に感光体が設けられており、図示しない駆動手段によって図中の矢印方向に回転駆動される。帯電器5は、例えば、コロトロンなどのコロナ帯電器で構成され、感光ローラ3の外周面を一様に帯電させる。露光装置7は、図示しないパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから入力された画像情報に基づいて、感光ローラ3の外周面にレーザ光などを照射して、この感光ローラ3の外周面に静電的な潜像(以下、静電潜像と呼ぶ)を形成する。
【0031】
現像装置9は、図1に示すように、4つの現像器31Y、31M、31C及び31Kを備えている。この現像装置9は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のトナーを感光ローラ3の外周面に付着させて、静電潜像をトナー像として現像する。具体的には、現像器31Yが、イエローのトナーを用いてイエローのトナー像を現像し、現像器31Mが、マゼンタのトナーを用いてマゼンタのトナー像を現像し、現像器31Cが、シアンのトナーを用いてシアンのトナー像を現像し、現像器31Kが、ブラックのトナーを用いてブラックのトナー像を現像する。
【0032】
各現像器31Y、31M、31C及び31Kは、内部にそれぞれの色のトナーが収容されており、各色のトナーを感光ローラ3の外周面に付着させる現像ローラ33を備えている。この現像ローラ33は、感光ローラ3の外周面に当接しつつ回転可能に構成されており、現像ローラ33の外周面に付着したトナーを感光ローラ3の外周面に転移させることで、トナーを感光ローラ3の外周面に付着させる。
【0033】
各現像器31Y、31M、31C及び31Kは、支持フレーム35に支持されている。この支持フレーム35は、軸37を回転軸として回転可能に構成されており、図示しないモータで回転駆動される。そして、現像装置9は、イエローのトナー像を現像する際には、現像器31Yの現像ローラ33の外周面を感光ローラ3の外周面に当接させ、マゼンタのトナー像を現像する際には、現像器31Mの現像ローラ33の外周面を感光ローラ3の外周面に当接させ、シアンのトナー像を現像する際には、現像器31Cの現像ローラ33の外周面を感光ローラ3の外周面に当接させ、ブラックのトナー像を現像する際には、現像器31Kの現像ローラ33の外周面を感光ローラ3の外周面に当接させる。
【0034】
転写装置11は、図1に示すように、駆動ローラ41と、従動ローラ43と、転写ベルト45と、一次転写ローラ47と、二次転写ローラ49とを備えている。転写ベルト45は、駆動ローラ41及び従動ローラ43間に張設されている。一次転写ローラ47は、転写ベルト45の内側で、転写ベルト45を挟んで感光ローラ3の外周面に対向して配設されている。つまり、転写ベルト45は、感光ローラ3と一次転写ローラ47とによって挟持されている。二次転写ローラ49は、転写ベルト45の外側で駆動ローラ41の外周面に対向して配設されている。
【0035】
転写ベルト45は、駆動ローラ41が駆動されることによって、図1で見て反時計方向(図中矢印方向)に回転駆動される。転写ベルト45の外周面には、感光ローラ3の外周面に現像されたトナー像が転写される。そして、転写ベルト45の外周面に転写されたトナー像は、転写ベルト45の外周面と二次転写ローラ49とによって挟持される記録用紙Pに転写される。つまり、この転写装置11は、感光ローラ3から転写ベルト45に転写されたトナー像を記録用紙Pに転写する。
【0036】
定着装置13は、図1に示すように、定着ローラ51及び加圧ローラ53を備えている。この定着装置13は、トナー像が転写された記録用紙Pを定着ローラ51及び加圧ローラ53間に挟持させつつ加熱して、トナー像をこの記録用紙Pに定着させる。
【0037】
給紙装置15は、図1に示すように、給紙トレイ55と、ピックアップローラ57とを備えている。給紙トレイ55は、複数枚の記録用紙Pを収容することができ、且つ装置本体2に対して着脱可能に構成されている。ピックアップローラ57は、給紙トレイ55に収容されている記録用紙Pを1枚ずつ、搬送路19を介して後述するレジストローラ17に供給する。
【0038】
レジストローラ17は、図1に示すように、一対のローラ17a及び17bを備えており、記録用紙Pの搬送経路でピックアップローラ57よりも下流側に配設されている。一対のローラ17a及び17bは、それぞれの外周面が記録用紙Pの第1面59a及び第1面59aとは反対側の面である第2面59bのそれぞれに当接した状態で、記録用紙Pを挟持しつつ、回転可能に構成されている。
【0039】
レジストローラ17は、ピックアップローラ57から供給された記録用紙Pを、転写装置11に供給する。ピックアップローラ57は、記録用紙Pを、一対のローラ17a及び17b間に突き当てるようにしてレジストローラ17に供給する。このとき、記録用紙Pは、一対のローラ17a及び17b間に突き当てられることによって、傾きが補正される。この傾きの補正は、スキュー補正と呼ばれる。そして、レジストローラ17は、スキュー補正された記録用紙Pを、転写装置11の転写ベルト45と二次転写ローラ49との間に供給する。
【0040】
排出ローラ21は、画像が形成された記録用紙Pを、画像形成装置1外に排出する。
反転ローラ23は、定着装置13を経て画像が形成された記録用紙Pを、後述の反転搬送路25に引き込む。反転搬送路25は、記録用紙Pの表裏を反転、すなわち第1面59aの向きと第2面59bの向きとを反転させつつ、記録用紙Pをレジストローラ17に導く。搬送ローラ27は、反転搬送路25の途中に配設されており、反転ローラ23から送り渡された記録用紙Pを、レジストローラ17に送り出す。
【0041】
上記の構成を有する画像形成装置1における画像形成の流れを説明する。
まず、図示しないホストコンピュータからの指令により、感光ローラ3、各現像器31Y、31M、31C及び31Kの現像ローラ33、及び転写ベルト45が回転を開始する。そして、感光ローラ3は、回転しながら、帯電器5により外周面が一様に帯電される。なお、このとき、各現像ローラ33は、支持フレーム35が軸37を回転軸として回転駆動されて、各現像ローラ33が感光ローラ3の外周面に接しないように退避している。
【0042】
感光ローラ3の帯電された領域は、感光ローラ3の回転にともなって露光位置に至り、露光装置7によって、イエローの画像情報に応じた静電潜像が前記領域に形成される。
【0043】
感光ローラ3の外周面に形成された静電潜像は、感光ローラ3の回転にともなって現像位置に至り、現像器31Yによってイエローのトナーで現像される。このとき、現像装置9は、支持フレーム35が軸37を回転軸として回転駆動されて、現像器31Yの現像ローラ33が感光ローラ3の外周面に当接している。これにより、感光ローラ3の外周面にイエローのトナー像が現像される。
【0044】
感光ローラ3上に形成されたイエローのトナー像は、感光ローラ3の回転にともなって一次転写位置(すなわち、感光ローラ3と一次転写ローラ47との対向部)に至り、一次転写ローラ47によって、転写ベルト45に転写(一次転写)される。このとき、一次転写ローラ47には、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。なお、この間、二次転写ローラ49は、転写ベルト45から離間している。
【0045】
上述の処理と同様の処理が、マゼンタ、シアン及びブラックの各色について繰り返して行われる。これにより、各色の画像情報に対応した各色のトナー像が、転写ベルト45に重なり合って転写される。すなわち、転写ベルト45の外周面にはフルカラーのトナー像が形成される。
【0046】
一方、記録用紙Pは、給紙トレイ55から、ピックアップローラ57及びレジストローラ17によって、転写ベルト45の外周面と二次転写ローラ49との間に供給される。このとき、記録用紙Pは、第1面59aが転写ベルト45の外周面に当接する向きで、転写ベルト45の外周面と二次転写ローラ49との間に供給される。
【0047】
転写ベルト45の外周面に形成されたフルカラーのトナー像は、転写ベルト45の回転にともなって二次転写位置(すなわち、二次転写ローラ49と駆動ローラ41との対向部)に至り、二次転写ローラ49によって記録用紙Pに転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ49は転写ベルト45に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。
【0048】
記録用紙Pに転写されたフルカラーのトナー像は、定着装置13によって加熱および加圧されて記録用紙Pに融着される。その後、記録用紙Pは、排出ローラ21によって画像形成装置1の外部へ排出される。
【0049】
一方、感光ローラ3は、各トナー像が一次転写位置を経過した後に、図示しないクリーニング装置によって、その外周面に付着しているトナーがクリーニングされ、次の静電潜像を形成するための帯電に備える。また、転写ベルト45は、トナー像が二次転写位置を経過した後に、図示しないクリーニング装置によって、その外周面に付着しているトナーがクリーニングされ、新たな一次転写及び二次転写に備える。
【0050】
記録用紙Pの第1面59a及び第2面59bの両面に画像を形成する場合には、記録用紙Pを、反転搬送路25を介して反転させてから、レジストローラ17に供給する。すなわち、定着装置13を経て第1面59aに画像が形成された記録用紙Pは、排出ローラ21によって後端側から反転ローラ23に供給される。
【0051】
そして、この記録用紙Pは、反転ローラ23及び搬送ローラ27の駆動によって、反転搬送路25をレジストローラ17に向かって搬送される。つまり、反転搬送路25を搬送される記録用紙Pは、後端側からレジストローラ17に供給される。これにより、記録用紙Pは、第2面59bが転写ベルト45の外周面に当接する向きで、転写ベルト45の外周面と二次転写ローラ49との間に供給される。
【0052】
ここで、定着装置13の構成について、詳細を説明する。
定着装置13は、構成を模式的に示す断面図である図2(a)に示すように、前述した定着ローラ51及び加圧ローラ53がハウジング71内に配設されている。さらに、この定着装置13は、定着ローラ51を加熱するヒータ73と、定着ローラ51の温度を検知する温度検知器75と、定着ローラ51から記録用紙Pを分離する分離部材77とを備えている。
【0053】
定着ローラ51は、定着ローラ51及び加圧ローラ53の拡大図である図2(b)に示すように、円筒状のローラ81と、ローラ81の外周面を囲む弾性層83と、弾性層83の外周面を囲む表面層85とを備えている。
加圧ローラ53は、円柱状のローラ87と、ローラ87の外周面を囲む弾性層89と、弾性層89の外周面を囲む表面層91とを備えている。
【0054】
また、定着ローラ51は、定着ローラ51及び加圧ローラ53の図2(a)中のA−A断面図である図3に示すように、弾性層83をローラ81の軸線方向に挟む一対のカバー86a及び86bを備えている。加圧ローラ53は、弾性層89をローラ87の軸線方向に挟む一対のカバー92a及び92bを備えている。
【0055】
ローラ81及びローラ87は、それぞれ、例えば金属などの熱伝導率が良好な材料で構成されており、両端が図示しない軸受けを介して、図示しない筐体に回転自在に支持されている。
【0056】
弾性層83及び弾性層89としては、それぞれ例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーなどの材料を採用することができ、これらのうちの2種類以上を混合した材料を採用することもできる。これらの中でも、弾性層83及び弾性層89の構成材料としては、例えば、シリコーンゴム、EPDM、フッ素ゴムなどを好適に用いることができ、シリコーンゴムが特に好ましい。
【0057】
シリコーンゴムは、主鎖が−(Si−O)−で表されるシロキサン結合で構成されている有機ケイ素ポリマーである。この主鎖のSi原子には、種々の側鎖が結合しており、この側鎖の構造に応じて、シリコーンゴムの種類が分類されている。
【0058】
シリコーンゴムの種類としては、例えば、側鎖が全てメチル基であるジメチルシリコーンゴム(MQ)、ジメチルシリコーンゴムのメチル基の一部をビニル基で置換したビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)、ジメチルシリコーンゴムのメチル基の一部をフェニル基で置換したフェニルメチルシリコーンゴム(PMQ)、ビニルメチルシリコーンゴムのメチル基の一部をフェニル基で置換したフェニルビニルメチルシリコーンゴム(PVMQ)、ビニルメチルシリコーンゴムのメチル基の一部をフルオロアルキル基で置換したフルオロシリコーンゴム(FVMQ)等が挙げられる。
【0059】
また、シリコーンゴムは、その重合度によっても種類が分類され、ミラブル型と液状型とに大別される。一般的に、重合度100〜2000程度のものが液状型シリコーンゴムに分類され、重合度3000〜10000程度のものがミラブル型シリコーンゴムに分類されている。
【0060】
液状型シリコーンゴムは、硬化する前には、液状またはゲル状をなしているが、硬化剤を添加したり、吸湿したりすることにより、硬化するものである。ミラブル型シリコーンゴムは、硬化する前は、ペースト状(コンパウンド)の形態をなしているが、加硫剤を添加し、加熱することにより硬化するものである。
【0061】
表面層85及び表面層91は、それぞれ、定着ローラ51及び加圧ローラ53のそれぞれから記録用紙Pを剥離しやすくする機能を有している。また、表面層85及び表面層91は、弾性層83及び弾性層89の構成材料から発生するガスを遮断するガスバリア性を有している。これらの表面層85及び表面層91の厚さは、それぞれ、10〜80μmであるのが好ましく、30〜40μmであるのがより好ましい。これにより、表面層85及び表面層91に必要な強度とガスバリア性とを保ちつつ、弾性層83及び弾性層89の弾性を十分に発揮させることができる。
【0062】
これらの表面層85及び表面層91としては、それぞれ例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)のようなフッ素系樹脂、シリコン系樹脂、オレフィン系樹脂等を採用することができるが、フッ素系樹脂を主材料として構成されるのが好ましい。フッ素系樹脂は、フッ素原子に起因する特有の滑り性を有するため、記録用紙Pの剥離性に優れているためである。
【0063】
また、表面層85及び表面層91は、それぞれ、弾性層83及び弾性層89の各外周面に接合してなるチューブ状(管状)部材であるのが好ましい。これにより、表面層85及び表面層91の耐久性を優れたものとし、長期使用により表面層85及び表面層91が損傷して定着ローラ51及び加圧ローラ53の外周面から低分子量成分が漏れ出すのを防止することができる。
【0064】
一対のカバー86a及び86bは、それぞれリング状の形態を有し、内周側にローラ81の外周が挿入されている。カバー86a及び86bの外周面は、表面層85の内周面に覆われている。すなわち、表面層85の内周側に、カバー86a及び86bの外周が挿入されている。そして、ローラ81、表面層85、カバー86a及び86bによって囲まれる領域内に弾性層83が形成されている。換言すれば、弾性層83は、ローラ81、表面層85、カバー86a及び86bによって封止されている。
【0065】
また、一対のカバー92a及び92bも同様の構成を有している。すなわち、一対のカバー92a及び92bは、それぞれリング状の形態を有し、内周側にローラ87の外周が挿入されており、外周側が表面層91の内周側に挿入されている。これにより、加圧ローラ53の弾性層89は、ローラ87、表面層91、カバー92a及び92bによって封止されている。
【0066】
これらのカバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bは、フッ素化ポリエーテル系高分子を含有する材料で構成されている。このようなフッ素化ポリエーテル系高分子は、フッ素原子が特有の性質(親和性が低い)を有しているため、弾性材料から発生する低分子量成分(ガス)を実質的に遮断するガスバリア性に優れる。このため、カバー86a及び86bを備える定着ローラ51、並びにカバー92a及び92bを備える加圧ローラ53は、弾性層83及び弾性層89のそれぞれから発生したガスが外部に放出されるのを確実に防止し得るものとなる。
【0067】
フッ素化ポリエーテル系高分子には、フッ素化アルキルエーテル構造と複数のアルケニル基とを有するフッ素化ポリエーテル化合物と、複数のSiH結合を有するシリコン系化合物とを反応させて得られた高分子が好適に用いられる。このようにして得られるフッ素化ポリエーテル系高分子の末端には、アルケニル基が存在することになるため、弾性層83及び弾性層89をシリコーンゴムを主材料として構成する場合、例えば、このシリコーンゴムとフッ素化ポリエーテル系高分子とを反応させることにより、弾性層83とカバー86a及び86bとの間、及び弾性層89とカバー92a及び92bとの間のさらなる密着性の向上を図ることができる。
【0068】
以下、フッ素化ポリエーテル化合物およびシリコン系化合物について、それぞれ詳述する。
フッ素化ポリエーテル化合物は、フッ素化アルキルエーテル構造(主鎖)と複数のアルケニル基とを有する化合物である。フッ素化アルキルエーテル構造としては、各種の構造が挙げられるが、下記一般式(I)で表される構造が好適である。
【0069】
−(CF(CF3))a(OCF2CF(CF3))b(O)c(CF2dO(CF(CF3)CF2O)e(CF(CF3))f− ・・・(I)
ただし、式(I)中、a、cおよびfは、それぞれ0または1、bおよびeは、それぞれ0〜200の整数、dは、2〜6の整数を表す。
【0070】
各種の構造の具体例としては、例えば、−CF2O−、−CF2CF2O−、−CF2CF2CF2O−、−CF2CF2CF2CF2O−、−CF2CF2CF2CF2CF2O−、−CF2CF2CF2CF2CF2CF2O−、−CF2CF(CF3)O−、−CF2CF2CF(CF3)O−、−C(CF32O−、−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))bOCF2CF2O(CF(CF3)CF2O)eCF(CF3)−等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、フッ素化アルキルエーテル構造は、CF2CF(CF3)Oの構造を含むもの、すなわち分枝状をなしているものが好ましい。かかる構造を含むフッ素化ポリエーテル化合物から得られるフッ素化ポリエーテル系高分子は、そのガスバリア性がより高いものとなる。
【0072】
また、フッ素化アルキルエーテル構造の総酸素原子数は、1〜450程度であるのが好ましく、5〜300程度であるのがより好ましい。このような総酸素原子数のフッ素化アルキルエーテル構造を有するフッ素化ポリエーテル化合物は、その分子量が適度なものとなる。その結果、カバー86a及び86bを形成する際に用いる組成物の粘度が適度なものとなり、その取り扱いが容易となる。
【0073】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、中でも、ビニル基またはアリル基が好ましい。これらのアルケニル基は、ヒドロシリル基との反応性が特に高いことから好ましい。
なお、アルケニル基は、主鎖のフッ素化アルキルエーテル構造に直接結合していてもよいが、各種二価の連結基を介して結合していてもよい。
【0074】
かかる二価の連結基としては、例えば、−CH2−、−CH2O−、−CH2NHCO−、−CH2N(CH3)CO−、−CH2N(C65)CO−、−CH2N(CH2CHCH2)CO−、−Si(CH32(C64)NHCO−、−Si(CH32(C64)N(CH3)CO−、−Si(CH32(C64)N(C65)CO−、−Si(CH32(C64)N(CH2CHCH2)CO−等が挙げられる。このうち、ベンゼン環を含めば、得られるフッ素化ポリエーテル系高分子の耐熱性の向上を図り得ることから好ましい。
【0075】
さらに、以上のようなフッ素化ポリエーテル化合物は、必要に応じて、これをモノマーとして、重合化剤(架橋剤)により、予めオリゴマー化(またはプレポリマー化)して用いるようにしてもよい。この重合化度(分子量)を設定することにより、カバー86a及び86bを形成する際に用いる組成物の粘度の調製を行うことができる。
【0076】
かかる重合化剤としては、例えば、ヒドロシリル基を2つ有する化合物、ビニル基(アクリロイル基)を2つ有する化合物、エポキシ基を2つ有する化合物等が挙げられる。
【0077】
用いるフッ素化ポリエーテル化合物(または重合体)としては、その重量平均分子量が400〜100000程度であるのが好ましく、1000〜50000程度であるのがより好ましい。
【0078】
シリコン系化合物は、複数のSiH結合(ヒドロシリル基)を有する化合物である。
このシリコン系化合物は、SiH結合を2つ有していればよいが、3つ以上有するものが好ましい。これにより、前記フッ素化ポリエーテル化合物とシリコン系化合物とを反応させると、得られるフッ素化ポリエーテル系高分子は、3次元的な網目構造を形成するようになり、結果として、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bの機械的強度がより向上する。
【0079】
また、このシリコン系化合物としては、フッ素化ポリエーテル化合物との相溶性(親和性)の高い化合物が好ましい。かかるシリコン系化合物を用いることにより、カバー86a及び86bを形成する際に用いる組成物中において、シリコン系化合物とフッ素化ポリエーテル化合物とを均一に混合することができる。このため、カバー86a及び86bの各部において、これらの化合物を均一に反応させることができ、その結果、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bの各部において機械的強度にバラツキが生じるのを好適に防止することができる。
【0080】
フッ素化ポリエーテル化合物との相溶性を向上させる観点からは、シリコン系化合物は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭化水素構造を有するのが好ましい。これにより、シリコン系化合物とフッ素化ポリエーテル化合物との相溶性を極めて高いものとすることができる。
【0081】
さらに、シリコン系化合物は、少なくとも1つのエーテル結合を有するものが好ましい。フッ素化ポリエーテル化合物は、フッ素原子とエーテル結合とを有することにより、分極し易い構造となっているが、シリコン系化合物もフッ素原子を含み、さらにエーテル結合を有することにより、分極し易い構造となる。その結果、電気的な相互作用の観点からも、これらの相溶性を向上させることができるようになる。
【0082】
このようなシリコン系化合物としては、例えば、一価のフッ素化アルキル基にシリコン原子が結合した化合物、一価のフッ素化オキシアルキル基にシリコン原子が結合した化合物、二価のフッ素化アルキレン基にシリコン原子が結合した化合物、二価のフッ素化オキシアルキレン基にシリコン原子が結合した化合物等が挙げられる。
【0083】
なお、これらのフッ素化アルキル基、フッ素化オキシアルキル基、フッ素化アルキレン基、フッ素化オキシアルキレン基に、シリコン原子は、直接結合していてもよいが、各種二価の連結基を介して結合していてもよい。
かかる二価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基またはこれらの組み合わせの他、エーテル結合、アミド結合、カルボニル結合等が挙げられる。
【0084】
また、シリコン原子には、水素原子以外に、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基またはこれらの置換体等の置換基が結合していてもよい。なお、置換基の炭素数は、1〜20程度であるのが好ましい。
【0085】
このようなシリコン系化合物は、その総炭素原子数が1〜300程度であるのが好ましく、5〜200程度であるのがより好ましい。これにより、シリコン系化合物のフッ素化ポリエーテル化合物との相溶性を十分に高いものとすることができる。
【0086】
カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bにおいて、フッ素化ポリエーテル系高分子の含有量は、60wt%以上であるのが好ましく、75wt%以上であるのがより好ましい。これにより、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bのガスバリア性をより向上させることができる。
【0087】
なお、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bは、その他の成分を含有してもよい。
かかる成分としては、例えば、1−エチル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチンー3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレンアルコール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のヒドロシリル化反応触媒の制御剤、アルコキシ基、エポキシ基、ヒドロシリル基等を有するオルガノシロキサン等の接着性付与剤、酸化鉄、酸化セリウム、カーボンブラック等の顔料、着色剤、染料、酸化防止剤等が挙げられる。
【0088】
カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bにフィラーを含有することにより、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bの機械的強度をより向上させることができる。
【0089】
用いるフィラーとしては、如何なるものであってもよいが、本実施形態においては、シリコン酸窒化物で構成されるものが好適である。かかるフィラーを用いることにより、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bのそれぞれにおいて均一に分散することができ、フィラーを含有することによる効果がより好適に発揮される。
【0090】
また、シリコン酸窒化物で構成されるフィラーは、その表面に疎水化処理を施したものが好ましい。これにより、フッ素化ポリエーテル系高分子との密着性が向上し、フィラーのカバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bからの脱落を好適に防止することができる。
【0091】
この疎水化処理の方法としては、例えば、フィラーの表面に存在するシラノール基に疎水性の高い構造を結合させる方法、シラノール基を疎水性の高い構造と置換する方法等が挙げられる。
【0092】
なお、フィラーの形状は、針状、葉状等であってもよいが、粒状であるのが好ましい。これにより、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bのそれぞれの中でのフィラーの分散性を高めることができる。
【0093】
ヒータ73は、例えばハロゲンランプなどが採用され、定着ローラ51の円筒状のローラ81の内側に挿入されている。このヒータ73は、ローラ81をこのローラ81の内側から加熱することで、定着ローラ51を加熱する。
【0094】
温度検知器75は、例えばサーミスタなどで構成され、定着ローラ51の表面層85の外周面の温度を検知する。なお、本実施形態の画像形成装置1は、温度検知器75が検知した温度に基づいて、図示しない制御部がヒータ73を制御して、表面層85の外周面の温度が所定範囲内に保たれるように構成されている。
【0095】
上記の構成を有する定着ローラ51及び加圧ローラ53は、図2(b)に示すように、外周面同士が圧接していることによってニップ部Nが形成されている。そして、未定着のトナー像が形成された記録用紙Pは、ヒータ73からの熱によって定着ローラ51の温度が所定範囲に保たれている状態で、ニップ部Nに挟持されるとともに、定着ローラ51及び加圧ローラ53によって送り出される。つまり、未定着のトナー像は、加圧及び加熱されることによって記録用紙Pに定着される。なお、ヒータ73からの熱は、ローラ81、弾性層83及び表面層85を介して、トナー像に伝えられる。
【0096】
ここで、定着ローラ51及び加圧ローラ53のそれぞれ製造方法について説明する。なお、定着ローラ51の製造方法と、加圧ローラ53の製造方法とは、同様の流れ及び工程を有している。従って、ここでは、説明の重複を避けるため、定着ローラ51のみを説明する。
定着ローラ51の製造方法は、カバー86a及び86bを形成する工程と、弾性層83の材料を生成する工程と、定着ローラ51を組み立てる工程とに大別される。
【0097】
まず、カバー86a及び86bを形成する工程について説明する。
この工程では、まず、フッ素化ポリエーテル化合物、シリコン系化合物および触媒を溶媒に溶解して、カバー86a及び86bを形成するための液状(またはゲル状)組成物を調製する。
【0098】
溶媒には、例えば、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等を用いることができる。
【0099】
また、触媒としては、例えば、白金、パラジウム等の白金族金属等を用いることができる。なお、必要に応じて、液状組成物中に、前述したようなフィラーを混合する。
【0100】
そして、調整した液状組成物を、例えばLIM成形(Liquid Injection Molding)、ミラブル成形などの成形方法で成形して、カバー86a及び86bのそれぞれを形成する。
【0101】
なお、本実施形態では、液状組成物として、信越化学工業(株)製の「SIFEL」を使用した。また、カバー86a及び86bのそれぞれを成形する方法として、LIM成形を活用した。
【0102】
弾性層83の材料を生成する工程では、液状の弾性材料(コンパウンド)に硬化剤を添加して、弾性層83の材料を生成する。
【0103】
定着ローラ51を組み立てる工程では、まず、図4(a)に示すように、カバー86aの内周側にローラ81を挿入するとともに、カバー86aの内周面とローラ81の外周面とを接着する。
【0104】
ここで、接着剤として、アルミナや酸化シリコンを主成分とするフィラーを混合したものを用いるのが好ましい。フィラーとしては、平均粒径が1〜20μm程度の粒状のものが好ましい。このように、接着剤にフィラーを混合することで、フィラーによってガスの通路が遮られ、接着剤におけるガスバリア性を向上させることが可能となる。
【0105】
次いで、図4(b)に示すように、管状の表面層85の内周側に、カバー86aの外周面を挿入するとともに、表面層85の内周面とカバー86aの外周面とを接着する。ここで、表面層85の内周面には、カバー86a及び86bのそれぞれの外周面が対向する領域に、図5に示すように、無機物で構成される被接合層としての薄膜95をスパッタリング技術などを活用して形成しておく。
【0106】
なお、表面層85の内周面に薄膜95を形成する際には、表面層85の外周面85aに無機物が付着しないように、表面層85の外周面85aをマスクしておく。また、薄膜95を形成する領域は、カバー86a及び86bのそれぞれの外周面が対向する領域のみならず、表面層85の内周面の全域であってもよい。
【0107】
そして、カバー86aの外周面と表面層85の内周面とを接合するときに、薄膜95を介して接合する。すなわち、カバー86aの外周面と薄膜95との間に接着剤を介在させて、カバー86a及び表面層85を接着する。なお、図5において、構成をわかりやすく示すため、薄膜95にハッチングを施して図示した。また、無機物としては、ガラス、シリコン酸化物、金属などの種々の材料を採用することができる。なお、本実施形態では、無機物として、金属の一種であるアルミニウムを採用した。
【0108】
次いで、図4(c)に示すように、カバー86a、ローラ81及び表面層85で囲まれる領域内に、弾性層83の材料すなわち液状の弾性材料83’を流し込む。
【0109】
次いで、図4(d)に示すように、ローラ81をカバー86bの内周側にはめるとともに、カバー86bの外周面を表面層85の内周側に挿入して、カバー86bの外周面と表面層85の内周面とを接着する。すなわち、カバー86a、ローラ81及び表面層85で囲まれる領域をカバー86bで蓋をする。なお、カバー86bと表面層85とは、カバー86aの外周面と薄膜との間に接着剤を介在させて接着される。
【0110】
次いで、カバー86a及び86bで封止された弾性材料83’を、加熱によって硬化させて、定着ローラ51を完成させる。なお、加熱の方法としては、例えば、炉等による加熱や、電磁誘導を利用した加熱等が挙げられる。また、加熱温度は、弾性層83の材料(本実施形態では液状型シリコーンゴム)の硬化温度以上、分解温度未満であればよく、具体的には、150〜250℃程度であるのが好ましく、170〜230℃程度であるのがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて若干異なるが、1〜10時間程度であるのが好ましく、3〜5時間程度であるのがより好ましい。
【0111】
なお、本実施形態において、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bが封止部としての封止部材に対応し、感光ローラ3、帯電器5、露光装置7、現像装置9及び転写装置11が、トナー像形成部に対応している。
【0112】
本実施形態の画像形成装置1では、定着ローラ51及び加圧ローラ53のそれぞれのカバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bが、定着ローラ51及び加圧ローラ53のそれぞれの組み立て工程とは個別に形成される。従って、定着ローラ51及び加圧ローラ53のそれぞれの組み立て工程において、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bを、各表面層85及び91に接着しても、その接合部に応力や亀裂が発生することを防止できる。これにより、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bの厚みを容易に厚くすることができ、ガスバリア性の向上が図られる。
【0113】
なお、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bの形成段階で硬化にともなう収縮が発生しても、カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bを、硬化の際の収縮量を見込んだ寸法で形成すればよい。
【0114】
また、本実施形態では、各カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bが、表面層85及び91の各内周面に形成された薄膜95に接着剤で接合される。これにより、各カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bと、各表面層85及び91との間の接合強度を向上させることが可能となる。
【0115】
また、本実施形態では、種々の接着剤に対して耐性を有する無機物で薄膜95を構成しているため、適用可能な接着剤の種類を拡大することができる。
【0116】
さらに、本実施形態では、薄膜95を金属で構成しているため、表面層85及び91の弾力性が損なわれてしまうことを抑制しつつ、接着における接合強度を高く保つことが可能となる。
【0117】
また、本実施形態では、各カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bと、各表面層85及び91との間の接着剤に、アルミナや酸化シリコンを主成分とするフィラーを混合しているため、接着剤におけるガスバリア性の向上が図られる。
【0118】
また、本実施形態では、各カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bの外周面を、各表面層85及び91の内周面で覆っているため、各カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bの厚みを厚くするほど接合面積を大きくすることができる。これにより、接合強度の一層の向上が図られるとともに、ガスバリア性の一層の向上が図られる。
【0119】
なお、本実施形態では、定着ローラ51を記録用紙Pの未定着のトナー像側に配設し、加圧ローラ53を未定着のトナー像側とは反対側に配設するようにしたが、定着ローラ51及び加圧ローラ53の配設位置は、これに限定されず、定着ローラ51を記録用紙Pの未定着のトナー像側とは反対側に配設し、加圧ローラ53を未定着のトナー像側に配設するようにしてもよい。
【0120】
また、本実施形態では、ヒータ73を定着ローラ51におけるローラ81の内側のみに設けたが、ヒータ73の数量はこれに限定されず、加圧ローラ53側にも設けるようにしてもよい。この場合、加圧ローラ53のローラ87を、図6に示すように、円筒状に形成して、このローラ87の内側にヒータ73を配設した構成とすれば、未定着のトナー像を、定着ローラ51及び加圧ローラ53の両方で加熱することが可能となり、トナー像を記録用紙Pに効率よく定着させることが可能となるとともに、暖機時間を短縮することが可能となる。
【0121】
また、本実施形態では、定着ローラ51の製造方法において、カバー86aを底として、このカバー86a、ローラ81及び表面層85で囲まれる領域内に液状の弾性材料83’を流し込むようにしたが、これに限定されず、カバー86bを底として、カバー86b、ローラ81及び表面層85で囲まれる領域内に液状の弾性材料83’を流し込むようにしてもよい。
【0122】
また、本実施形態では、薄膜95を表面層85及び91の内周面に形成するようにしたが、これに限定されず、各カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bの外周面に形成するようにしてもよい。さらに、薄膜95の形成領域は、表面層85及び91の内周面と、各カバー86a及び86b並びにカバー92a及び92bの外周面との両方であってもよい。これにより、適用可能な接着剤の種類を一層拡大することができる。
【0123】
また、本実施形態では、弾性層83及び弾性層89としてシリコーンゴムを採用したが、それぞれの材料はこれに限定されず、他の材料であってもよい。
【0124】
また、本実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4種類のトナーを用いた場合を例に説明したが、これに限定されず、これにライトシアン及びライトマゼンタを加えた6種類等、任意の種類のトナーを用いた構成とすることができる。
【0125】
また、記録媒体は記録用紙Pに限らず、トナーが付着して画像を形成できるものであれば、任意の記録媒体を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施形態の画像形成装置の構成を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の実施形態の画像形成装置の定着装置の構成を説明する図。
【図3】本発明の実施形態の画像形成装置の定着装置の定着ローラ及び加圧ローラの構成を説明する断面図。
【図4】本発明の実施形態の画像形成装置の定着装置の定着ローラの製造方法を説明する図。
【図5】本発明の実施形態の画像形成装置の定着装置の定着ローラの表面層に形成される薄膜を説明する図。
【図6】本発明の実施形態の画像形成装置の定着装置の他の構成例を説明する図。
【符号の説明】
【0127】
1…画像形成装置、13…定着装置、51…定着ローラ、53…加圧ローラ、81,87…ローラ、83,89…弾性層、85,91…表面層、86a,86b,92a,92b…カバー、95…薄膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラと、該ローラの外周面に該外周面を囲むように設けられるとともに、弾性材料を含んで構成される弾性層と、該弾性層の外周面に該外周面を囲むように設けられる表面層と、前記弾性層の一端側及び他端側のそれぞれに設けられ、当該弾性層の端部を覆う封止部とを備え、
前記封止部は、接着により前記表面層に接合されていることを特徴とする定着ローラ。
【請求項2】
前記封止部と前記表面層とは、前記封止部及び前記表面層の少なくとも一方に形成され、接着強度を向上させる被接合層を介して接合されていることを特徴とする請求項1に記載の定着ローラ。
【請求項3】
前記被接合層は、無機物で構成された無機薄膜であることを特徴とする請求項2に記載の定着ローラ。
【請求項4】
前記無機薄膜は、金属で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラ。
【請求項5】
前記封止部は、該封止部の外周面が前記表面層の内周面に接合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の定着ローラ。
【請求項6】
管状の表面層の内周面に金属薄膜を形成する工程と、リング状の第1封止部材及びリング状の第2封止部材を形成する工程と、前記第1封止部材の内周側にローラを挿入するとともに、前記第1封止部材及び前記ローラを接合する工程と、前記ローラに接合された前記第1封止部材の前記外周面を前記表面層の内周側に挿入するとともに、前記第1封止部材の前記外周面及び前記表面層の前記内周面を、前記金属薄膜を介して接着する工程と、前記第1封止部材を底として前記ローラ及び前記表面層間に、流動性を有する弾性材料を流し込む工程と、前記第2封止部材の外周面を前記表面層の内周側に挿入するとともに、前記第2封止部材の前記外周面及び前記表面層の前記内周面を前記金属薄膜を介して接着して、前記弾性材料に前記第2封止部材で蓋をする工程と、を有することを特徴とする定着ローラの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の定着ローラと、該定着ローラに当接する加圧ローラとを備え、前記定着ローラ及び前記加圧ローラは、外周面同士が当接した状態で回転可能に構成されているとともに、トナーが付着した記録媒体を前記外周面同士で挟持した状態で回転しながら、前記トナーを前記記録媒体に定着させるように構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
記録媒体に、画像情報に基づいてトナーを付着させてトナー像を形成するトナー像形成部と、請求項7に記載の定着装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−328142(P2007−328142A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159388(P2006−159388)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】