定着ローラ及びその定着ローラの成形方法
【課題】薄肉円筒化した胴部に歪が生じる恐れを大幅に低減して、定着にばらつきがなくムラのない高品質が画像を得ることができる定着ローラを提供すること。
【解決手段】アルミ材からなる薄肉円筒部材11の端部に、周方向と軸方向に延出させた格子状の溝12aが外周面に設けられた円筒状で、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成した円筒状のカラー部材12を遊挿し、スピニング成形により薄肉円筒部材11を塑性変形してカラー部材12を嵌着する。そして、一方の支軸部1aに、その先端から軸長手方向中途部に亘って、カラー部材12の肉厚中途部まで平行に二平面切欠したダブルDカットの歯車取り付け用の廻り止め部1bを形成する。
【解決手段】アルミ材からなる薄肉円筒部材11の端部に、周方向と軸方向に延出させた格子状の溝12aが外周面に設けられた円筒状で、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成した円筒状のカラー部材12を遊挿し、スピニング成形により薄肉円筒部材11を塑性変形してカラー部材12を嵌着する。そして、一方の支軸部1aに、その先端から軸長手方向中途部に亘って、カラー部材12の肉厚中途部まで平行に二平面切欠したダブルDカットの歯車取り付け用の廻り止め部1bを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に組み込まれる定着装置の一部品である定着ローラ及びその定着ローラの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、ハロゲンヒータが内装された定着ローラとその定着ローラに平行に配設された加圧ローラとの間に、トナー像を付着させた記録紙を通紙させて、熱と圧力でトナー像を定着させる定着装置を備えている。
この定着装置の一構成部材である上述の定着ローラとしては、例えば、大径部と小径部(支軸部)とで略T字の中空段付軸状に形成された一対のカラー部材を、薄肉円筒状に形成された胴部の両端に夫々の大径部を挿嵌させたものがある(例えば特許文献1参照)。
この定着ローラは、ボールベアリングを介してカラー部材の小径部(支軸部)が定着装置の筐体に支持されていると共に、カラー部材の一方の小径部に、定着ローラを回転させる歯車が取り付けられている。この小径部は、その歯車を取り付けるために、歯車の穴形状に応じた加工がされており、例えば、小径部の外周面の一部を平坦状に切欠させた所謂Dカット、平行に二平面切欠させて俵状の所謂ダブルDカット、軸方向の延出させたキー溝等がなされている。
このような定着ローラにあっては、昨今、上述した熱の立ち上がり時間を短縮するために(熱応答性を向上させるために)、胴部やカラー部材の薄肉化が進んできている。
【特許文献1】特開2006−301333公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術は、薄肉円筒化した胴部にカラー部材を挿嵌することから、その加工時に胴部に歪が生じる恐れがあり、しかも、歯車の取り付け用の廻り止め加工を小径部(支軸部)に行なうことで、かかる部分の肉厚が薄くなって強度が低下し、その結果、その加工面の歪みが発生したり、その加工面の中央部付近に凹凸が発生したりする恐れがあった。また、その加工面の変形により胴部も歪みが発生しやすくなり、仮に、歪が発生すると、画像の左側と右側部分で定着性のばらつきが発生し、ムラのある画像になってしまう。
また、定着装置の駆動時に、歯車による回転(ねじり応力)で、カラー部材と胴部とにゆるみが生じてしまう恐れもあった。
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決できる定着ローラ及びその定着ローラの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記技術課題を達成するために、本発明にかかる定着ローラ、及び、定着ローラの成形方法は、下記の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1にかかる定着ローラは、スピニング成形により両端部を縮径した薄肉円筒部材から成る定着ローラであって、該両端部内に、円筒状のカラー部材を嵌着させて支軸部としたことを特徴とする。
請求項2にかかる定着ローラは、請求項1において、前記カラー部材は、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成されていることを特徴とする。
請求項3にかかる定着ローラは、請求項1または2において、前記カラー部材の外周面に、周方向に延出させた溝が設けられていることを特徴とする。
請求項4にかかる定着ローラは、請求項1乃至3の何れか1項において、前記カラー部材の外周面に、軸方向に延出させた溝が設けられていることを特徴とする。
請求項5にかかる定着ローラは、請求項1乃至4の何れか1項において、一方の前記支軸部に歯車が挿嵌されると共に、その一方の前記支軸部に前記カラー部材の肉厚中途部まで切欠されてなる前記歯車の廻り止め部が設けられていることを特徴とする。
請求項6にかかる定着ローラの成形方法は、薄肉円筒部材を回転可能に保持し、該薄肉円筒部材と異なる材質で円筒状に形成したカラー部材を回転可能に保持し、そのカラー部材を前記薄肉円筒部材の端部に遊挿し、その端部に前記カラー部材をスピニング加工で嵌着して、ローラ両端に支軸部を形成したことを特徴とする。
請求項7にかかる定着ローラの成形方法は、請求項6において、前記カラー部材は、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質のものを用いたことを特徴とする。
請求項8にかかる定着ローラの成形方法は、請求項6または7において、前記カラー部材の外周面に、周方向に延出する溝を加工し、その溝を形成した前記カラー部材を用いることを特徴とする。
請求項9にかかる定着ローラの成形方法は、請求項6乃至8の何れか1項において、前記カラー部材の外周面に、軸方向に延出する溝を加工し、その溝を形成した前記カラー部材を用いることを特徴とする。
請求項10にかかる定着ローラの成形方法は、請求項6乃至9の何れか1項において、前記支軸部の形成後に、一方の前記支軸部に前記カラー部材の肉厚中途部まで切欠して前記歯車の廻り止め部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、スピニング成形により両端部を縮径した薄肉円筒部材から成る定着ローラであって、該両端部内に、円筒状のカラー部材を嵌着させて支軸部としたことで、薄肉円筒化した胴部にカラー部材を押し込んで嵌着するとした従来技術の場合と比べ、胴部に歪が生じる恐れを大幅に低減できる。したがって、定着にばらつきがなくムラのない高品質が画像を得ることができる。
しかも、その一方の支軸部にカラー部材の肉厚中途部まで切欠されてなる歯車の廻り止め部を設けて、薄肉円筒部材とカラー部材との双方が歯車と係合するようにしたから、歯車による回転(ねじり応力)によりカラー部材と胴部とにゆるみが生じる恐れを払拭できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明にかかる定着ローラとその成形方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施の形態にかかる定着ローラを取り付けた状態の縦断面図である。
まず、本実施の形態にかかる定着ローラ1を説明する。
本実施の形態にかかる定着ローラ1は、図1に示すように、アルミ材からなる薄肉円筒部材11の両端がスピニング成形で縮径される共に、その縮径された両端に、図3乃至図5に示すように、周方向と軸方向に夫々延出させた格子状の溝12aが外周面に設けられた円筒状でSUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成されたカラー部材12が内嵌されて支軸部1aが形成されている。そして、一方の支軸部1a(図1において右方の支軸部1a)には、図2に示すように、その先端から軸長手方向中途部に亘って、カラー部材12の肉厚中途部まで平行に二平面切欠させた所謂ダブルDカットの廻り止め部1bが形成されている。
この廻り止め部1bは、当然のことながら、歯車3の取り付け穴(軸穴)の形状に対応しており、本実施の形態では、歯車3の取り付け穴が、ダブルDカット穴になっている。この廻り止め部1bの他の態様としては、Dカット、キー溝があげられる。
このように構成された本実施の形態にかかる定着ローラ1は、図1に示すように、ボールベアリング2を介して支軸部1aが定着装置の筐体mに突出するように支持されると共に、一方の支軸部1aに形成させた廻り止め部1bに歯車3(従動歯車)が取り付けられて、図示しない駆動歯車と噛合されて定着ローラ1を回転させるようになっている。
なお、この定着ローラ1を備えた定着装置は、加熱源であるハロゲンヒータを定着ローラ1に遊挿させ、この定着ローラ1に平行に加圧ローラが配設されて、定着ローラ1と加圧ローラとの間にトナー像を付着させた記録紙を通紙させることで、熱と圧力でトナー像を定着させる。
【0007】
次に、上述した定着ローラ1の成形方法を、図6乃至図11を参照しながら説明する。
まず、周知の両端加工機のチャック兼スピンドル4に、両端が突出するようにアルミ材からなる薄肉円筒部材11をセットする。これと前後して、カラー部材12の軸穴12bに挿入させて回転可能に支持させるすべり軸受け部5aが形成された段付軸状のカラー部材セット治具5を、チャック兼スピンドル4の軸心と同軸となるように、かつ、すべり軸受け部5aがチャック兼スピンドル4に向くように配置し、そのすべり軸受け部5aに、上述したカラー部材12をセットする(図6参照)。
次いで、カラー部材12が薄肉円筒部材11内に納まるまで、カラー部材セット治具5をチャック兼スピンドル4に向けて移動する。カラー部材12が薄肉円筒部材11内に納まったら、チャック兼スピンドル4の回転を開始する(図7参照)。
次いで、従動回転可能に設けた円板状の押し付け工具6(の外周面)を、回転中の薄肉円筒部材11の端部に押し当て、薄肉円筒部材11が塑性変形してカラー部材12に圧接するまで押し付け工具6を押圧しながら、カラー部材12の長手方向全長と同じ距離だけ、その押し付け工具6をチャック兼スピンドル4方向へ移動する(スピニング加工)。このとき、薄肉円筒部材11に押し付けた押し付け工具6は、薄肉円筒部材11の回転に従動回転し、また、薄肉円筒部材11と圧接したカラー部材12は、カラー部材セット治具5のすべり軸受け部5aにより、薄肉円筒部材11の回転に従動回転する(図8参照)。
カラー部材12の長手方向全長に亘って、かつ、全周に亘って、そのカラー部材12の外周面が薄肉円筒部材11の内周面に圧接することで、カラー部材12が薄肉円筒部材11に嵌着する。このようにしてカラー部材12が薄肉円筒部材11に嵌着したら、カラー部材セット治具5を後退して、カラー部材12からカラー部材セット治具5を抜く(図9参照)。
この図6〜図9までの工程は、薄肉円筒部材11の両端同時に行なう。
【0008】
支軸部1aを加工したら、エンドミルなどのフライス加工用工具7を用いて、一方の支軸部1aの先端から軸長手方向中途部に亘って、カラー部材12の肉厚中途部まで平行に二平面、切削加工を行なって、ダブルDカットの廻り止め部1bを形成する(図10参照)。
このようにして上述した定着ローラ1が完成したら、チャック兼スピンドル4から取り外して一連の成形工程が終了する(図11参照)。
このように本実施の形態にかかる定着ローラ1及びその成形方法は、アルミ材からなる薄肉円筒部材11の端部に、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成した円筒状のカラー部材12を遊挿し、スピニング成形により薄肉円筒部材11にカラー部材12を嵌着するようにしたから、薄肉円筒化した胴部にカラー部材12を押し込んで嵌着するとした従来技術の場合と比べ、胴部に歪が生じる恐れを大幅に低減できる。したがって、定着にばらつきがなくムラのない高品質が画像を得ることができる。
しかも、その一方の支軸部1aにカラー部材12の肉厚中途部まで切欠されてなる廻り止め部1bを設けて、薄肉円筒部材11とカラー部材12との双方が歯車3と係合するようにしたから、歯車3による回転(ねじり応力)によりカラー部材12と胴部とにゆるみが生じる恐れを払拭できる。
【0009】
また、本実施の形態にかかる定着ローラ1は、カラー部材12の外周面に、予め周方向と軸方向に延出した格子状の溝12aを設けておくことで、スピニング加工時に、薄肉円筒部材11の端部内面がその溝12aに食い込んで、カラー部材12が空回りしたり抜けたりすることを防ぐことができる。本実施の形態では、格子状の溝12aを例示したが、この溝12aは、周方向のみ、軸方向のみ、またはアヤメ状、或いは粗面加工、凹凸加工でも良いものである。なお、溝加工自体は、ローレット加工(転造加工)や切削加工など、特に限定されない。
また、カラー部材12の材質として、鉄やSUS材等のアルミよりも剛性が強く、且つ熱伝導率の低いものを用いることにより、アルミ材だけで構成される薄肉定着ローラ1(図示せず)よりも支軸部1aの温度上昇を抑えてボールベアリング2及びギヤ等の各構成部材の熱による悪影響を低減できる。
以上、本実施の形態にかかる定着ローラ1及びその成形方法を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態にかかる定着ローラを取り付けた状態の縦断面図である。
【図2】本実施の形態にかかる定着ローラを取り付けた状態の右側面図である。
【図3】カラー部材の斜視図である。
【図4】カラー部材の縦断面図である。
【図5】カラー部材の右側面図である。
【図6】本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図7】図6に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図8】図7に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図9】図8に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図10】図9に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図11】図10に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【符号の説明】
【0011】
1 定着ローラ、1a 支軸部、1b 廻り止め部、11 薄肉円筒部材、12 カラー部材、12a 溝、12b 軸穴、2 ボールベアリング、3 歯車、4 チャック兼スピンドル、5 カラー部材セット治具、5a すべり軸受け部、6 押し付け工具、7 フライス加工用工具、m 筐体
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に組み込まれる定着装置の一部品である定着ローラ及びその定着ローラの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、ハロゲンヒータが内装された定着ローラとその定着ローラに平行に配設された加圧ローラとの間に、トナー像を付着させた記録紙を通紙させて、熱と圧力でトナー像を定着させる定着装置を備えている。
この定着装置の一構成部材である上述の定着ローラとしては、例えば、大径部と小径部(支軸部)とで略T字の中空段付軸状に形成された一対のカラー部材を、薄肉円筒状に形成された胴部の両端に夫々の大径部を挿嵌させたものがある(例えば特許文献1参照)。
この定着ローラは、ボールベアリングを介してカラー部材の小径部(支軸部)が定着装置の筐体に支持されていると共に、カラー部材の一方の小径部に、定着ローラを回転させる歯車が取り付けられている。この小径部は、その歯車を取り付けるために、歯車の穴形状に応じた加工がされており、例えば、小径部の外周面の一部を平坦状に切欠させた所謂Dカット、平行に二平面切欠させて俵状の所謂ダブルDカット、軸方向の延出させたキー溝等がなされている。
このような定着ローラにあっては、昨今、上述した熱の立ち上がり時間を短縮するために(熱応答性を向上させるために)、胴部やカラー部材の薄肉化が進んできている。
【特許文献1】特開2006−301333公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術は、薄肉円筒化した胴部にカラー部材を挿嵌することから、その加工時に胴部に歪が生じる恐れがあり、しかも、歯車の取り付け用の廻り止め加工を小径部(支軸部)に行なうことで、かかる部分の肉厚が薄くなって強度が低下し、その結果、その加工面の歪みが発生したり、その加工面の中央部付近に凹凸が発生したりする恐れがあった。また、その加工面の変形により胴部も歪みが発生しやすくなり、仮に、歪が発生すると、画像の左側と右側部分で定着性のばらつきが発生し、ムラのある画像になってしまう。
また、定着装置の駆動時に、歯車による回転(ねじり応力)で、カラー部材と胴部とにゆるみが生じてしまう恐れもあった。
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決できる定着ローラ及びその定着ローラの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記技術課題を達成するために、本発明にかかる定着ローラ、及び、定着ローラの成形方法は、下記の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1にかかる定着ローラは、スピニング成形により両端部を縮径した薄肉円筒部材から成る定着ローラであって、該両端部内に、円筒状のカラー部材を嵌着させて支軸部としたことを特徴とする。
請求項2にかかる定着ローラは、請求項1において、前記カラー部材は、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成されていることを特徴とする。
請求項3にかかる定着ローラは、請求項1または2において、前記カラー部材の外周面に、周方向に延出させた溝が設けられていることを特徴とする。
請求項4にかかる定着ローラは、請求項1乃至3の何れか1項において、前記カラー部材の外周面に、軸方向に延出させた溝が設けられていることを特徴とする。
請求項5にかかる定着ローラは、請求項1乃至4の何れか1項において、一方の前記支軸部に歯車が挿嵌されると共に、その一方の前記支軸部に前記カラー部材の肉厚中途部まで切欠されてなる前記歯車の廻り止め部が設けられていることを特徴とする。
請求項6にかかる定着ローラの成形方法は、薄肉円筒部材を回転可能に保持し、該薄肉円筒部材と異なる材質で円筒状に形成したカラー部材を回転可能に保持し、そのカラー部材を前記薄肉円筒部材の端部に遊挿し、その端部に前記カラー部材をスピニング加工で嵌着して、ローラ両端に支軸部を形成したことを特徴とする。
請求項7にかかる定着ローラの成形方法は、請求項6において、前記カラー部材は、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質のものを用いたことを特徴とする。
請求項8にかかる定着ローラの成形方法は、請求項6または7において、前記カラー部材の外周面に、周方向に延出する溝を加工し、その溝を形成した前記カラー部材を用いることを特徴とする。
請求項9にかかる定着ローラの成形方法は、請求項6乃至8の何れか1項において、前記カラー部材の外周面に、軸方向に延出する溝を加工し、その溝を形成した前記カラー部材を用いることを特徴とする。
請求項10にかかる定着ローラの成形方法は、請求項6乃至9の何れか1項において、前記支軸部の形成後に、一方の前記支軸部に前記カラー部材の肉厚中途部まで切欠して前記歯車の廻り止め部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、スピニング成形により両端部を縮径した薄肉円筒部材から成る定着ローラであって、該両端部内に、円筒状のカラー部材を嵌着させて支軸部としたことで、薄肉円筒化した胴部にカラー部材を押し込んで嵌着するとした従来技術の場合と比べ、胴部に歪が生じる恐れを大幅に低減できる。したがって、定着にばらつきがなくムラのない高品質が画像を得ることができる。
しかも、その一方の支軸部にカラー部材の肉厚中途部まで切欠されてなる歯車の廻り止め部を設けて、薄肉円筒部材とカラー部材との双方が歯車と係合するようにしたから、歯車による回転(ねじり応力)によりカラー部材と胴部とにゆるみが生じる恐れを払拭できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明にかかる定着ローラとその成形方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施の形態にかかる定着ローラを取り付けた状態の縦断面図である。
まず、本実施の形態にかかる定着ローラ1を説明する。
本実施の形態にかかる定着ローラ1は、図1に示すように、アルミ材からなる薄肉円筒部材11の両端がスピニング成形で縮径される共に、その縮径された両端に、図3乃至図5に示すように、周方向と軸方向に夫々延出させた格子状の溝12aが外周面に設けられた円筒状でSUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成されたカラー部材12が内嵌されて支軸部1aが形成されている。そして、一方の支軸部1a(図1において右方の支軸部1a)には、図2に示すように、その先端から軸長手方向中途部に亘って、カラー部材12の肉厚中途部まで平行に二平面切欠させた所謂ダブルDカットの廻り止め部1bが形成されている。
この廻り止め部1bは、当然のことながら、歯車3の取り付け穴(軸穴)の形状に対応しており、本実施の形態では、歯車3の取り付け穴が、ダブルDカット穴になっている。この廻り止め部1bの他の態様としては、Dカット、キー溝があげられる。
このように構成された本実施の形態にかかる定着ローラ1は、図1に示すように、ボールベアリング2を介して支軸部1aが定着装置の筐体mに突出するように支持されると共に、一方の支軸部1aに形成させた廻り止め部1bに歯車3(従動歯車)が取り付けられて、図示しない駆動歯車と噛合されて定着ローラ1を回転させるようになっている。
なお、この定着ローラ1を備えた定着装置は、加熱源であるハロゲンヒータを定着ローラ1に遊挿させ、この定着ローラ1に平行に加圧ローラが配設されて、定着ローラ1と加圧ローラとの間にトナー像を付着させた記録紙を通紙させることで、熱と圧力でトナー像を定着させる。
【0007】
次に、上述した定着ローラ1の成形方法を、図6乃至図11を参照しながら説明する。
まず、周知の両端加工機のチャック兼スピンドル4に、両端が突出するようにアルミ材からなる薄肉円筒部材11をセットする。これと前後して、カラー部材12の軸穴12bに挿入させて回転可能に支持させるすべり軸受け部5aが形成された段付軸状のカラー部材セット治具5を、チャック兼スピンドル4の軸心と同軸となるように、かつ、すべり軸受け部5aがチャック兼スピンドル4に向くように配置し、そのすべり軸受け部5aに、上述したカラー部材12をセットする(図6参照)。
次いで、カラー部材12が薄肉円筒部材11内に納まるまで、カラー部材セット治具5をチャック兼スピンドル4に向けて移動する。カラー部材12が薄肉円筒部材11内に納まったら、チャック兼スピンドル4の回転を開始する(図7参照)。
次いで、従動回転可能に設けた円板状の押し付け工具6(の外周面)を、回転中の薄肉円筒部材11の端部に押し当て、薄肉円筒部材11が塑性変形してカラー部材12に圧接するまで押し付け工具6を押圧しながら、カラー部材12の長手方向全長と同じ距離だけ、その押し付け工具6をチャック兼スピンドル4方向へ移動する(スピニング加工)。このとき、薄肉円筒部材11に押し付けた押し付け工具6は、薄肉円筒部材11の回転に従動回転し、また、薄肉円筒部材11と圧接したカラー部材12は、カラー部材セット治具5のすべり軸受け部5aにより、薄肉円筒部材11の回転に従動回転する(図8参照)。
カラー部材12の長手方向全長に亘って、かつ、全周に亘って、そのカラー部材12の外周面が薄肉円筒部材11の内周面に圧接することで、カラー部材12が薄肉円筒部材11に嵌着する。このようにしてカラー部材12が薄肉円筒部材11に嵌着したら、カラー部材セット治具5を後退して、カラー部材12からカラー部材セット治具5を抜く(図9参照)。
この図6〜図9までの工程は、薄肉円筒部材11の両端同時に行なう。
【0008】
支軸部1aを加工したら、エンドミルなどのフライス加工用工具7を用いて、一方の支軸部1aの先端から軸長手方向中途部に亘って、カラー部材12の肉厚中途部まで平行に二平面、切削加工を行なって、ダブルDカットの廻り止め部1bを形成する(図10参照)。
このようにして上述した定着ローラ1が完成したら、チャック兼スピンドル4から取り外して一連の成形工程が終了する(図11参照)。
このように本実施の形態にかかる定着ローラ1及びその成形方法は、アルミ材からなる薄肉円筒部材11の端部に、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成した円筒状のカラー部材12を遊挿し、スピニング成形により薄肉円筒部材11にカラー部材12を嵌着するようにしたから、薄肉円筒化した胴部にカラー部材12を押し込んで嵌着するとした従来技術の場合と比べ、胴部に歪が生じる恐れを大幅に低減できる。したがって、定着にばらつきがなくムラのない高品質が画像を得ることができる。
しかも、その一方の支軸部1aにカラー部材12の肉厚中途部まで切欠されてなる廻り止め部1bを設けて、薄肉円筒部材11とカラー部材12との双方が歯車3と係合するようにしたから、歯車3による回転(ねじり応力)によりカラー部材12と胴部とにゆるみが生じる恐れを払拭できる。
【0009】
また、本実施の形態にかかる定着ローラ1は、カラー部材12の外周面に、予め周方向と軸方向に延出した格子状の溝12aを設けておくことで、スピニング加工時に、薄肉円筒部材11の端部内面がその溝12aに食い込んで、カラー部材12が空回りしたり抜けたりすることを防ぐことができる。本実施の形態では、格子状の溝12aを例示したが、この溝12aは、周方向のみ、軸方向のみ、またはアヤメ状、或いは粗面加工、凹凸加工でも良いものである。なお、溝加工自体は、ローレット加工(転造加工)や切削加工など、特に限定されない。
また、カラー部材12の材質として、鉄やSUS材等のアルミよりも剛性が強く、且つ熱伝導率の低いものを用いることにより、アルミ材だけで構成される薄肉定着ローラ1(図示せず)よりも支軸部1aの温度上昇を抑えてボールベアリング2及びギヤ等の各構成部材の熱による悪影響を低減できる。
以上、本実施の形態にかかる定着ローラ1及びその成形方法を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態にかかる定着ローラを取り付けた状態の縦断面図である。
【図2】本実施の形態にかかる定着ローラを取り付けた状態の右側面図である。
【図3】カラー部材の斜視図である。
【図4】カラー部材の縦断面図である。
【図5】カラー部材の右側面図である。
【図6】本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図7】図6に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図8】図7に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図9】図8に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図10】図9に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【図11】図10に続く本実施の形態にかかる定着ローラの成形工程図である。
【符号の説明】
【0011】
1 定着ローラ、1a 支軸部、1b 廻り止め部、11 薄肉円筒部材、12 カラー部材、12a 溝、12b 軸穴、2 ボールベアリング、3 歯車、4 チャック兼スピンドル、5 カラー部材セット治具、5a すべり軸受け部、6 押し付け工具、7 フライス加工用工具、m 筐体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピニング成形により両端部を縮径した薄肉円筒部材から成る定着ローラであって、該両端部内に、円筒状のカラー部材を嵌着させて支軸部としたことを特徴とする定着ローラ。
【請求項2】
前記カラー部材は、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成されていることを特徴とする請求項1記載の定着ローラ。
【請求項3】
前記カラー部材の外周面に、周方向に延出させた溝が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の定着ローラ。
【請求項4】
前記カラー部材の外周面に、軸方向に延出させた溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の定着ローラ。
【請求項5】
一方の前記支軸部に歯車が挿嵌されると共に、その一方の前記支軸部に前記カラー部材の肉厚中途部まで切欠されてなる前記歯車の廻り止め部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の定着ローラ。
【請求項6】
薄肉円筒部材を回転可能に保持し、該薄肉円筒部材と異なる材質で円筒状に形成したカラー部材を回転可能に保持し、そのカラー部材を前記薄肉円筒部材の端部に遊挿し、その端部に前記カラー部材をスピニング加工で嵌着して、ローラ両端に支軸部を形成したことを特徴とする定着ローラの成形方法。
【請求項7】
前記カラー部材は、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質のものを用いたことを特徴とする請求項6記載の定着ローラの成形方法。
【請求項8】
前記カラー部材の外周面に、周方向に延出する溝を加工し、その溝を形成した前記カラー部材を用いることを特徴とする請求項6または7記載の定着ローラの成形方法。
【請求項9】
前記カラー部材の外周面に、軸方向に延出する溝を加工し、その溝を形成した前記カラー部材を用いることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項記載の定着ローラの成形方法。
【請求項10】
前記支軸部の形成後に、一方の前記支軸部に前記カラー部材の肉厚中途部まで切欠して前記歯車の廻り止め部を形成したことを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項記載の定着ローラの成形方法。
【請求項1】
スピニング成形により両端部を縮径した薄肉円筒部材から成る定着ローラであって、該両端部内に、円筒状のカラー部材を嵌着させて支軸部としたことを特徴とする定着ローラ。
【請求項2】
前記カラー部材は、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質で構成されていることを特徴とする請求項1記載の定着ローラ。
【請求項3】
前記カラー部材の外周面に、周方向に延出させた溝が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の定着ローラ。
【請求項4】
前記カラー部材の外周面に、軸方向に延出させた溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の定着ローラ。
【請求項5】
一方の前記支軸部に歯車が挿嵌されると共に、その一方の前記支軸部に前記カラー部材の肉厚中途部まで切欠されてなる前記歯車の廻り止め部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の定着ローラ。
【請求項6】
薄肉円筒部材を回転可能に保持し、該薄肉円筒部材と異なる材質で円筒状に形成したカラー部材を回転可能に保持し、そのカラー部材を前記薄肉円筒部材の端部に遊挿し、その端部に前記カラー部材をスピニング加工で嵌着して、ローラ両端に支軸部を形成したことを特徴とする定着ローラの成形方法。
【請求項7】
前記カラー部材は、SUS材または鉄材等の熱伝導率の低い材質のものを用いたことを特徴とする請求項6記載の定着ローラの成形方法。
【請求項8】
前記カラー部材の外周面に、周方向に延出する溝を加工し、その溝を形成した前記カラー部材を用いることを特徴とする請求項6または7記載の定着ローラの成形方法。
【請求項9】
前記カラー部材の外周面に、軸方向に延出する溝を加工し、その溝を形成した前記カラー部材を用いることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項記載の定着ローラの成形方法。
【請求項10】
前記支軸部の形成後に、一方の前記支軸部に前記カラー部材の肉厚中途部まで切欠して前記歯車の廻り止め部を形成したことを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項記載の定着ローラの成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−271195(P2009−271195A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119790(P2008−119790)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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