説明

定着装置および画像形成装置

【課題】定着処理のための電気的接点部における熱によるダメージおよび弊害をなくすと共に、さらに小型化および省スペース化を可能にする。
【解決手段】定着装置26の装置筺体35における下方から駆動モータなどから駆動力を入力して、ギヤあるいはプーリ,ベルトなどの駆動力伝達機構および変速機構などからなる駆動伝達部材41を介して定着ローラ32と加圧ローラ34との少なくともいずれか一方に駆動力を伝達する。駆動伝達部材41は、装置筺体35内部の駆動部設置領域42に設置し、また、加熱源30を有する加熱ローラ31と定着ローラ32と定着ベルト33とからなる加熱部材、および加圧部材としての加圧ローラ34を、装置筺体35内部の定着部設置領域43に設置する。駆動部設置領域42と定着部設置領域43とは隣接して装置筺体35の内部に区画して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に形成されたトナー像を加熱・加圧して、記録媒体に定着させる定着装置、および該定着装置を搭載する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置においては、定着部材の寿命に伴う交換作業性やジャム処理性を考慮して、当該定着装置を搭載する画像形成装置本体から独立して着脱可能なユニット形態を採ることが主流である。
【0003】
そのため、定着装置にはヒータや温度検知手段などの電気系統に電力を供給すべく、画像形成装置本体との電気的接点であるドロワコネクタが配置されている。通常、定着装置のフレーム表面は、交換作業やジャム処理作業においてサービスマンやユーザが高温部分に触れないように、保護カバーで覆われている。
【0004】
図10は従来の定着装置の概略構成を示す断面図、図11は図10の定着装置の外観斜視図である。
【0005】
図10において、定着装置1は、ヒータなどの加熱源2を内部に有する加熱ローラ3と、加熱ローラ3に対向設置されて該加熱ローラ3とにより定着ベルト4を支持する定着ローラ5と、定着ローラ5に定着ベルト4を介して圧接される加圧ローラ6とを備えている。
【0006】
そして、定着装置1では、加熱ローラ3により加熱される定着ベルト4を介して定着ローラ5と加圧ローラ6間に形成されるニップ部Nに、トナー像が形成された記録媒体である用紙Pが給紙され、ニップ部Nにて用紙Pに対して熱と圧力を加えることによりトナー像を用紙Pに定着させる。
【0007】
加熱源2を有する加熱ローラ3により加熱される定着ベルト4の定着温度は、温度センサにより検知され、検知信号に基づき加熱ローラ3の加熱源2を温度制御手段(図示せず)によって制御することにより、ベルト表面が所定の温度に維持されるようになっている。
【0008】
また、定着装置1の装置筺体7の横側壁には、図10,図11に示すように、搭載される装置本体側から電源供給を受けるための電気的接点であるドロワコネクタ8が設けられている。
【0009】
最近では、定着装置1を搭載する装置本体に対して、定着装置1を該定着装置1の長手方向に対して垂直(図において黒両矢印で示す)に着脱することが主流であり、その結果、ドロワコネクタ8は、定着装置1の後方(図10における左側)に配置されるのが一般的である。そのためドロワコネクタ8は、同じく定着装置1の後方に設けられる加熱ローラ3の加熱源2に近くに配設され、高温になりやすい。また、定着装置1の装置筺体7からドロワコネクタ8が突出するように設けられ、ドロワコネクタ8のためのスペースを要するというデメリットあった(加熱源2が近くにあるため装置筺体7内に収められない)。
【0010】
このため、図12に示すように、定着装置1の長手方向端部の装置筺体7にドロワコネクタ8を縦に配置することも考えられる。しかし、ドロワコネクタ8を装置筺体7の側端部に配設することにより、高温となる温度的問題は軽減されるが、定着装置1の装置筺体7全体の幅スペースを大きくすることになる。
【0011】
また、定着装置1は高温になるため、装置筐体7は耐熱性の問題から金属にて構成されており、ドロワコネクタ8は金属製の装置筐体7に固定されるのが一般的であり、そのためドロワコネクタ8に対して定着装置1の熱が直接伝導され高温になりやすい。
【0012】
さらに、定着装置におけるコネクタに係る前記のような課題を解決するため、各種の提案がなされ、実施されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2004−151223号公報
【特許文献2】特開2004−109466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来の定着装置におけるドロワコネクタの設置構造には各種の課題があるが、特に、ドロワコネクタを構成するコネクタ部および中継コネクタ部などの電気接点部は耐熱温度が約100℃以下であり、ドロワコネクタを定着装置において使用する場合には耐熱性が一つの問題となる。
【0014】
また、定着装置自体が熱源であり、定着装置近傍の雰囲気温度も構成部材の密集度が高く、120〜130℃程度になることもあり、コネクタ部および中継コネクタ部の耐熱性への対応が課題となっている。
【0015】
本発明の目的は、前記課題に鑑みてなされたものであり、定着処理のための電気的接点部における熱によるダメージおよび弊害をなくし、さらに小型化および省スペース化を図ることができる定着装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、加熱源により加熱される加熱部材と、該加熱部材に所定の圧力で当接する加圧部材とによりニップ部を形成し、該ニップ部にて記録媒体上のトナー像に対して定着を行う定着装置において、装置筺体内に、前記加熱部材および前記加圧部材を設置する定着部設置領域と、該定着部設置領域外に前記加熱部材と前記加圧部材の少なくとも一方を駆動する駆動伝達部材を設置する駆動部設置領域とを設け、電源供給部と電気的に接続する接点を有するコネクタを設けた樹脂製の保持部材を、前記駆動部設置領域の前記装置筺体に設けたことを特徴とし、この構成によって、コネクタを保持するために樹脂製の保持部材を用い、さらにコネクタおよび保持部材を、定着部設置領域より発熱量が少ない駆動部設置領域における装置筺体に設けたことにより、コネクタへの熱伝導を防止でき、熱の影響を最小限に抑えることができると共に、駆動部設置領域のスペースを有効利用することによって、省スペース化を図ることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の定着装置において、保持部材に電気的配線部材を這い回すための配線案内経路部を一体的に形成したことを特徴とし、この構成によって、保持部材が配線案内経路部を有することにより、部品集約によるコストダウンおよび省スペース化を達成することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の定着装置において、配線案内経路部を複数段に形成したことを特徴とし、この構成によって、配線案内経路部がコネクタに適応した多段構成であることにより、部品集約によるコストダウンおよび省スペース化を達成することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2記載の定着装置において、保持部材に電気的配線部材の分配・集約を行うターミナルを設けたことを特徴とし、この構成によって、保持部材がターミナルを有することにより、部品集約によるコストダウンおよび省スペース化を達成することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の定着装置において、保持部材を装置筺体に、コネクタ挿抜方向に対して移動可能に設けたことを特徴とし、この構成によって、コネクタの接触作業中、コネクタが可動であることにより適宜調整が可能になり、よって、確実な接触が可能になる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1記載の定着装置において、保持部材を当該定着装置の保護カバーを兼ねるように構成したことを特徴とし、この構成によって、保持部材が保護カバーを兼ねることにより、部品集約によるコストダウンおよび省スペース化を達成することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、トナー現像剤にて記録媒体にトナー像を形成する画像形成部と、該画像形成部から搬送される記録媒体上のトナー像に対して定着を行う定着部とを備えた画像形成装置において、前記定着部として請求項1〜6いずれか1項記載の定着装置を搭載したことを特徴とし、この構成によって、耐久性,安定性に優れた定着装置を用いることにより、画像形成装置における信頼性を向上させることができると共に、省スペース化を達成した定着装置に用いることにより小型化を図ることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の画像形成装置において、定着装置を当該画像形成装置に、定着部材の長手方向に対し垂直方向に着脱可能に設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る定着装置によれば、コネクタを保持するために樹脂製の保持部材を用い、さらにコネクタおよび保持部材を、定着部設置領域より発熱量が少ない駆動部設置領域における装置筺体上に設けたことにより、コネクタへの熱伝導を防止でき、熱の影響を最小限に抑えることができると共に、駆動部設置領域のスペースを有効利用することによって、省スペース化を図ることができる。
【0025】
本発明に係る画像形成装置によれば、耐久性,安定性に優れた定着装置を用いることにより、画像形成装置における信頼性を向上させることができると共に、省スペース化を達成した定着装置に用いることにより小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は本発明の画像形成装置の実施形態であるカラーレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)の概略構成図である。
【0028】
図1において、本プリンタは、イエロー,シアン,マゼンタ,ブラックの4つの画像形成手段を横に並べて配置したタンデム画像形成部9を搭載している。タンデム画像形成部9においては、各色の画像形成手段10Y,10C,10M,10Kが、図中、左から順に配置されている。ここで、各符号の添字Y,C,M,Kは、それぞれイエロー,マゼンダ,シアン,ブラック用の部材であることをそれぞれ示す。
【0029】
また、タンデム画像形成部9において、各画像形成手段10Y,C,M,Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体11Y,C,M,Kのまわりに、現像装置12Y,C,M,K、および感光体クリーニング装置13Y,C,M,Kなどが設けられている。プリンタの上部には、イエロー,シアン,マゼンタ,ブラックの各色トナーが充填されたトナーボトル14Y,C,M,Kが配置されている。そして、このトナーボトル14Y,C,M,Kから図示しない搬送経路によって、所定の補給量だけ各色に対応する現像装置12Y,C,M,Kに各色トナーが補給される。
【0030】
また、タンデム画像形成部9の下部に潜像形成手段としての光書込ユニット15が設けられ、この光書込ユニット15は、光源(図示せず),ポリゴンミラー16,f−θレンズ17,反射ミラー18などを備え、画像データに基づいて各感光体11Y,C,M,Kの表面をレーザ光Lで露光走査しながら潜像形成を行うように構成されている。
【0031】
また、タンデム画像形成部9の直上には、無端ベルト状の中間転写ベルト19が設けられている。この中間転写ベルト19は、支持ローラ20a,20bに掛け回され、この支持ローラ20a,20bのうち一方が駆動ローラであって、駆動モータ(図示せず)が連結され、該駆動モータによって中間転写ベルト19が図中反時計回りに回転移動するように駆動される。中間転写ベルト19の内側には、感光体11Y,C,M,K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト19上に転写するための1次転写装置21Y,C,M,Kが設けられている。
【0032】
また、1次転写装置21Y,C,M,Kよりも中間転写ベルト19における駆動方向下流に2次転写装置としての2次転写ローラ22が設けられている。この2次転写ローラ22における中間転写ベルト19を挟んで反対の側には、他方の支持ローラ20bが配置されている。
【0033】
また、タンデム画像形成部9の下方から上方にかけて記録媒体である用紙Pの給紙搬送路が設置され、下方には給紙カセット23と給紙コロ24が設けられ、側方には2次転写ローラ22にタイミングを取って用紙Pを給紙するレジストローラ25が設けられている。
【0034】
さらに、2次転写ローラ22によりトナー像が転写された用紙Pの搬送方向の下流側には、用紙P上のトナー像を定着する定着装置26が設けられ、さらに定着装置26における用紙Pの搬送方向の下流側に、定着処理を受けて送り出される定着後の用紙Pを、上部排紙トレイ27に排出する排紙ローラ28が設けられている。
【0035】
前記定着装置26は、加熱源30を内部に有し、かつ表面が設定温度に維持される加熱ローラ31と、加熱ローラ31に対して対向設置された定着ローラ32と、加熱ローラ31と定着ローラ32間に架設された無端状の定着ベルト33と、この定着ベルト33を介して定着ベルト32に圧接する加圧ローラ34などからなり、これらの部材が装置筺体35内に設けられている。また、定着装置26は、装置筺体35の長手方向(図1の図面垂直方向)に対して水平かつ垂直方向(矢印A方向)に着脱可能に当該画像形成装置に設けられている。
【0036】
なお、図中、36は中間転写ベルト19上に画像転写後に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置である。
【0037】
次に、前記構成のプリンタの動作を説明する。
【0038】
表面が一様に帯電された感光体11Y,C,M,Kに対して、画像データに基づき光書込ユニット15からレーザ光Lの書込み光を照射して感光体11Y,C,M,B上に静電潜像を形成する。その後、現像装置12Y,C,M,Kによりトナー現像が行われて静電潜像を可視像化することで各感光体11Y,C,M,K上にそれぞれ、イエロー,シアン,マゼンタ,ブラックの単色画像を形成する。
【0039】
前記各色のトナー像は、支持ローラ20a,20bの駆動により中間転写ベルト19が矢印方向へ移動することにより、一次転写装置21Y,C,M,Kで中間転写ベルト19上に順次転写する。これにより中間転写ベルト19上に合成カラー画像が形成される。画像転写後の感光体11Y,C,M,Kの表面は感光体クリーニング装置13Y,C,M,Kで残留トナーが除去され、次の画像形成に備える。
【0040】
また、前記画像形成のタイミングに合せて、給紙カセット23から用紙Pが給紙コロ24により給紙され、レジストローラ25まで搬送され、用紙先端が一旦停止する。そして、前記画像形成動作とタイミングを取りながら、2次転写ローラ22と中間転写ベルト19間に搬送される。ここで、中間転写ベルト19と2次転写ローラ22とは用紙Pを挟んで、いわゆる2次転写ニップを形成し、2次転写ローラ22にて中間転写ベルト19上のトナー像を用紙P上に転写する。
【0041】
画像転写後の用紙Pは定着装置26へ搬送される。定着装置26は、定着ベルト33と加圧ローラ34間の定着ニップ部において用紙P上のトナー像を加熱・加圧して用紙に定着させる。また、定着ニップ部から排出された用紙Pは、排紙ローラ28によって上部排紙トレイ27に排紙される。
【0042】
次に、本実施形態における定着装置と、その電気的接点であるドロワコネクタとに関する構成について説明する。図2(a)は本実施形態における定着装置の概略構造を示す平面図、図2(b)は本実施形態における定着装置の概略構造を示す正面図、図3(a)は本実施形態における定着装置の駆動部の概略構造を示す側面図、図3(b)は図3(a)の駆動部の要部を示す平面状態の説明図であって、ドロワコネクタ40の配置位置は図2(a),(b),図3(a)における斜線部である。
【0043】
本実施形態における定着装置26では、装置筺体35における下方から駆動モータなどから駆動力を入力して、ギヤあるいはプーリ,ベルトなどの駆動力伝達機構および変速機構などからなる駆動伝達部材41を介して定着ローラ32と加圧ローラ34との少なくともいずれか一方に駆動力を伝達している。駆動伝達部材41は、装置筺体35における内部の駆動部設置領域42に設置されている。
【0044】
また、加熱源30を有する加熱ローラ31と定着ローラ32と定着ベルト33とからなる加熱部材、および加圧部材としての加圧ローラ34は、装置筺体35における内部の定着部設置領域43に設置されている。駆動部設置領域42と定着部設置領域43とは隣接して装置筺体35内部に区画されて設けられている。
【0045】
図3(a),(b)に示す駆動部の構成例1では、定着ローラ32と加圧ローラ34に固定された駆動ギヤ44,45と、駆動ギヤ44,45にそれぞれ噛合して駆動モータからの駆動力を伝える入力ギヤ46,47とにより駆動伝達部材41を構成している。
【0046】
ところが、この場合、定着ローラ32と加圧ローラ34に設けられる駆動ギヤ44,45は、平面状態において同一平面内に配設されると、互いに干渉する位置関係になりやすく、特に、定着ローラ32と加圧ローラ34とが小径になるほど干渉する位置関係になりやすい。
【0047】
このため、構成例1では、図3(b)に示すように、定着ローラ32と加圧ローラ34に設けられる駆動ギヤ44,45を歯幅方向aに距離を取って設置位置をずらしている。この構成にすることにより前記干渉を回避することができる。ただし、前記のようにずらした分bだけ歯幅方向aのスペースが広くなる。
【0048】
また、図4(a),(b)は本実施形態における駆動部の構成例2を示し、図4(a)は定着装置の駆動部の概略構造を示す側面図、図4(b)は図4(a)の駆動部の要部を示す斜視図である。
【0049】
構成例2では、定着ローラ32に固定された駆動ギヤ44に噛合する一方の入力ギヤ46と、この一方の入力ギヤ46および加圧ローラ34の駆動ギヤ45にそれぞれ噛合する2段ギヤ構造の他方の入力ギヤ48により駆動伝達部材41を構成している。
【0050】
すなわち、他方の入力ギヤ48は、大径ギヤ部48aが一方の入力ギヤ46に噛合し、小径ギヤ部48bが加圧ローラ34の駆動ギヤ45に噛合する変速ギヤ列を構成するものである。このため、大径ギヤ部48aと小径ギヤ部48b間の減速作用により、加圧ローラ34の駆動ギヤ45を小径化することができ、前記干渉の問題を回避することが可能になる。ただし、2段ギヤ構造を採用したことにより前記と同様に歯幅方向のスペースが広くなる。
【0051】
このように、駆動部設置領域42において、定着ローラ32と加圧ローラ34などに駆動力を伝達するため前記スペースが必要になり、装置筺体35の下面から上方のローラ設置位置までよって、変速機構などの設置と機械強度上の問題から、構成部材を保持する枠体各部に前記スペース分の長さ,幅が必要になる。このため図2(b),図3(a)に示すように、駆動部設置領域42の上部に部品の配置されない空間が生じる。そこで、前記駆動部設置領域42の空間にドロワコネクタ40を設置することによって、装置空間の有効利用を図ることができる。
【0052】
また、ドロワコネクタ40を駆動部設置領域42に設けることにより、発熱源である定着部設置領域43よりも外側に配置されることになるため、定着装置26で発熱する熱が定着部設置領域43と駆動部設置領域42の枠体などで遮断され、ドロワコネクタ40への熱的影響の程度を小さくすることができる。
【0053】
さらに本実施形態では、図5に示すように、ドロワコネクタ40の取付保持部分に樹脂製の保持部材50を設けている。その結果、金属で保持する場合に比べて熱伝導の面で有利となる。樹脂製の保持部材50には、図4に例示すように、電気的配線部材であるハーネスを這い回すための案内路51を一体的に形成することも考えられる。
【0054】
従来、ドロワコネクタ40を保持する部材は金属製であったため、細かな案内路を容易には設けることはできず、ドロワコネクタ40からのハーネスを、それぞれ必要な方向へ引き出すとともにクランプなどを用いて固定して這い回すようにしていた。そのため作業工数がかかると共に、どのハーネスをどの方向に這い回すかが不明確であったり、無用にハーネス同士が重なり合ったりするなどの不具合が生じていた。
【0055】
特に、定着装置26の場合は加熱源30に電力を供給するための1次電源系のハーネスと温度制御信号などの2次制御系のハーネスが混在する。1次電源系のハーネスと2次制御系のハーネスが重なり合うと制御系ハーネスにノイズがのってしまい、制御エラーを発生するなどの不具合が発生する。
【0056】
しかし、本実施形態の樹脂製の保持部材50では、ハーネスの案内路(配線案内経路部)45を有するため、ドロワコネクタ40を保持部材50にセットした時点で、各ハーネスが案内路51に導かれることになるため煩雑な這い回しが必要なくなる。また、案内路51は、絶縁性を有しかつ信号遮蔽体としての機能を有する樹脂製として、それぞれが仕切られている構造とすることにより、1次電源系のハーネスと2次制御系のハーネスが重なり合うといった不具合も未然に解決される。
【0057】
なお、ドロワコネクタ40の構成としては、図7に示すように、上下二段にハーネス52が並んでいる構造が最も一般的である。そこで、図7に示す保持部材53の変形例のように、案内路54をドロワコネクタ40の上下二段に分割された構造に対応させて二段構造にするとよい。このような構成とすることによって、より確実に各ハーネスを所定の位置に案内することが可能となる。
【0058】
また、図8に示す保持部材の他の変形例のように、保持部材55にてハーネス同士の連結を行う構成にすることができる。従来、装置内で各ハーネスを適当な箇所で連結するため煩雑になっていたものが、本例のように保持部材55上で一括して連結を行うことによって組立性を改善することができる。
【0059】
図8には1次電源系ハーネスの配線の一例を示しており、一般的に、1次電源系ハーネスではファストン端子による連結を行っているが、この場合、コネクタ部が大きくスペースを要するという欠点がある。そこで本例では、ファストン端子の代わりに真ちゅうなどで製造された端子台56と丸型端子57をネジ58にて止めて結合するようにしている。複数のハーネス連結を保持部材55上で全て行うことにより、各所に必要だった端子台と端子台保持部材をまとめることができるため、省スペース化およびコストダウンを図ることができる。
【0060】
また、図8に示すように、端子台56の形状を、利用方法に合せて変更することにより、ハーネス59の引き出し方向の分配・集約ができるターミナル構造にすることができる。
【0061】
なお、図8に示す例では1次電源系のハーネスの例であるが、2次信号系に用いるハーネスにおいても保持部材55上での連結・分配が可能である。一例を挙げると、通常、ハーネスの連結に用いるパネルマウントを固定する形状部を保持部材55上に設けることにより、保持部材55上での連結が可能となって、ハーネスの分配・集約ができるターミナル構造にすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、図9(a)の斜視図,図9(b)の側面図に示すように、ドロワコネクタ40と保持部材60とを、定着装置26の装置筺体35に対してドロワコネクタ40の挿抜方向(矢印A方向)に移動可能な構成としている。これにより、定着装置26を搭載対象である画像形成装置などに装着するときの設置位置のバラツキにより、画像形成装置側などのコネクタとドロワコネクタ40との接続が不十分になることを防止するためである。
【0063】
具体的には、図9(b)に示すように、定着装置26の装置筺体35と保持部材54との間にコイルスプリングなどの弾性部材61を配し、この弾性部材55によってドロワコネクタ40および保持部材60を定着装置挿入方向の後方から押圧する構成にしている。このようにして、図示しない画像形成装置側のコネクタと定着装置側のドロワコネクタ40とが喰い込むように初期設定しておくことにより、押し込み過ぎの場合は弾性部材61の弾性力にて押し戻されることになり、押圧力を持って両コネクタを確実に嵌合させることができる。
【0064】
さらに、図9に示すように、保持部材60を定着装置26上部に配すことにより、保持部材60に定着装置26における保護カバーの一部としての機能を持たせることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、複写機,プリンタ,ファクシミリ装置などの電子写真方式の画像形成部に設けられる定着装置に適用され、特に、記録媒体として多種のシート紙を用いる装置に実施して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の画像形成装置の実施形態であるカラーレーザプリンタの概略構成図
【図2】(a)は本実施形態における定着装置の概略構造を示す平面図、(b)は本実施形態における定着装置の概略構造を示す正面図
【図3】(a)は本実施形態における定着装置の駆動部の構成例1を示す側面図、(b)は(a)の駆動部の要部を示す平面状態の説明図
【図4】(a)は本実施形態における駆動部の構成例2を示す側面図、(b)は(a)の駆動部の要部を示す斜視図
【図5】本実施形態におけるドロワコネクタと保持部材との関連構成を示す斜視図
【図6】本実施形態におけるハーネスの案内路を示す保持部材の平面図
【図7】本実施形態における保持部材の変形例の一部断面図
【図8】本実施形態における保持部材の変形例の斜視図
【図9】(a)は本実施形態における保持部材の変形例の斜視図、(b)は(a)に示す保持部材の側面図
【図10】従来の定着装置の概略構成を示す断面図
【図11】図10に示す従来の定着装置の外観斜視図
【図12】従来の他の定着装置の外観斜視図
【符号の説明】
【0067】
26 定着装置
30 加熱源
31 加熱ローラ
32 定着ローラ
33 定着ベルト
34 加圧ローラ
35 装置筺体
40 ドロワコネクタ
41 駆動伝達部材
42 駆動部設置領域
43 定着部設置領域
44,45 駆動ギヤ
46,47 入力ギヤ
48 入力ギヤ(2段ギヤ)
48a 大径ギヤ部
48b 小径ギヤ部
50,53,55,60 保持部材
51,54 案内路
52,59 ハーネス
56 端子台
57 丸型端子
58 ネジ
61 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱源により加熱される加熱部材と、該加熱部材に所定の圧力で当接する加圧部材とによりニップ部を形成し、該ニップ部にて記録媒体上のトナー像に対して定着を行う定着装置において、
装置筺体内に、前記加熱部材および前記加圧部材を設置する定着部設置領域と、該定着部設置領域外に前記加熱部材と前記加圧部材の少なくとも一方を駆動する駆動伝達部材を設置する駆動部設置領域とを設け、
電源供給部と電気的に接続する接点を有するコネクタを設けた樹脂製の保持部材を、前記駆動部設置領域の前記装置筺体に設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記保持部材に電気的配線部材を這い回すための配線案内経路部を一体的に形成したことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記配線案内経路部を複数段に形成したことを特徴とする請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記保持部材に電気的配線部材の分配・集約を行うターミナルを設けたことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項5】
前記保持部材を前記装置筺体に、前記コネクタ挿抜方向に対して移動可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項6】
前記保持部材を当該定着装置の保護カバーを兼ねるように構成したことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項7】
トナー現像剤にて記録媒体にトナー像を形成する画像形成部と、該画像形成部から搬送される記録媒体上のトナー像に対して定着を行う定着部とを備えた画像形成装置において、前記定着部として請求項1〜6いずれか1項記載の定着装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記定着装置を当該画像形成装置に、前記定着部材の長手方向に対し垂直方向に着脱可能に設置したことを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−32757(P2010−32757A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194645(P2008−194645)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】