定着装置および画像形成装置
【課題】本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置で用いられる定着部材における温度むらの発生を抑制することを目的とする。
【解決手段】導電層を有し、導電層が電磁誘導加熱されて発熱する定着ベルト61と、定着ベルト61の導電層と交差する交流磁界を生成する励磁コイル82と、励磁コイル82を介して定着ベルト61に対向し、定着ベルト61の幅方向に並んで設けられる複数の磁心片84aと、定着ベルト61の内周面に接触して配置される感温磁性部材64と、感温磁性部材64の内周面に接触して配置される誘導部材66とを備え、定着ベルト61は、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向する部位を通過する第1領域S1と磁心片84aと対向しない部位を通過する第2領域S2とを有し、感温磁性部材64および誘導部材66は、定着ベルト61の第2領域S2と対向する部位に切欠き部69を有する。
【解決手段】導電層を有し、導電層が電磁誘導加熱されて発熱する定着ベルト61と、定着ベルト61の導電層と交差する交流磁界を生成する励磁コイル82と、励磁コイル82を介して定着ベルト61に対向し、定着ベルト61の幅方向に並んで設けられる複数の磁心片84aと、定着ベルト61の内周面に接触して配置される感温磁性部材64と、感温磁性部材64の内周面に接触して配置される誘導部材66とを備え、定着ベルト61は、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向する部位を通過する第1領域S1と磁心片84aと対向しない部位を通過する第2領域S2とを有し、感温磁性部材64および誘導部材66は、定着ベルト61の第2領域S2と対向する部位に切欠き部69を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に搭載する定着装置として、電磁誘導加熱方式を用いたものが知られている。
例えば、特許文献1には、フェライト等の高透磁率を有する材料で構成され、少なくとも一方向に配列された複数の芯材に励磁コイルを巻き付けて構成した磁場発生手段を、導電部材としてのエンドレス状フィルムの内部に、複数の芯材がエンドレス状フィルムの幅方向に並ぶように配置し、励磁コイルにて生成した誘導磁界によりエンドレス状フィルムに渦電流を発生させることで、エンドレス状フィルムを直接的に加熱する電磁誘導加熱方式の定着装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−16005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置で用いられる定着部材における温度むらの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、無端帯状の形状を備えるとともに導電層を有し、回転可能に設けられ、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、
前記定着部材と対向して設けられ、交流電流が供給されることで、当該定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記磁界生成部材を介して前記定着部材に対向して設けられ、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する複数の第1磁路形成部材と、
前記定着部材を介して前記磁界生成部材に対向して設けられ、複数の前記第1磁路形成部材とともに、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する第2磁路形成部材とを備え、
複数の前記第1磁路形成部材は、それぞれが前記定着部材の回転方向に沿って延びるとともに、隣接する当該第1磁路形成部材との間に間隔を有するように、当該定着部材の回転方向と交差する当該定着部材の幅方向に並んで設けられ、
前記定着部材は、前記磁界生成部材を介して前記第1磁路形成部材と対向する部位を通過する第1領域と、当該第1領域と隣接して設けられ、当該磁界生成部材を介して当該第1磁路形成部材と対向しない部位を通過する第2領域とを有し、
前記第2磁路形成部材は、前記定着部材の前記第1領域と対向する第1部位と、当該定着部材の前記第2領域と対向し、当該第1部位よりも熱容量が低い第2部位とを有することを特徴とする定着装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における体積が、前記第2部位における体積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
請求項3に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における前記定着部材の回転方向に沿った長さが、前記第2部位における当該定着部材の回転方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
請求項4に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、外周面が前記定着部材の内周面に接触して配置され、磁気特性が温度に応じて強磁性と常磁性との間で変化し、磁気特性が強磁性の場合に、前記磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成し、磁気特性が常磁性の場合に、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を透過させる感温磁性部材と、外周面が当該感温磁性部材の内周面に接触して配置され、当該感温磁性部材の磁気特性が常磁性の場合に、当該感温磁性部材を透過した交流磁界を誘導する誘導部材とを備え、
前記感温磁性部材および前記誘導部材は、前記第2部位に、前記定着部材の回転方向に沿った切欠きを有することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
請求項5に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における厚さが、前記第2部位における厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
請求項6に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、外周面が前記定着部材の内周面に接触して配置され、磁気特性が温度に応じて強磁性と常磁性との間で変化し、磁気特性が強磁性の場合に、前記磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成し、磁気特性が常磁性の場合に、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を透過させる感温磁性部材と、外周面が当該感温磁性部材の内周面に接触して配置され、当該感温磁性部材の磁気特性が常磁性の場合に、当該感温磁性部材を透過した交流磁界を誘導する誘導部材とを備え、
前記誘導部材は、前記第1部位において、前記感温磁性部材の内周面と接する面とは反対側に、前記第2部位よりも突出する凸部を有することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
【0007】
請求項7に記載の発明は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段によって形成された前記トナー像を記録材上に転写する転写手段と、
前記記録材上に転写された前記トナー像を当該記録材に定着する定着手段とを有し、
前記定着手段は、
無端帯状の形状を備えるとともに導電層を有し、回転可能に設けられ、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、
前記定着部材と対向して設けられ、交流電流が供給されることで、当該定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記磁界生成部材を介して前記定着部材に対向して設けられ、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する複数の第1磁路形成部材と、
前記定着部材を介して前記磁界生成部材に対向して設けられ、複数の前記第1磁路形成部材とともに、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する第2磁路形成部材とを備え、
複数の前記第1磁路形成部材は、それぞれが前記定着部材の回転方向に沿って延びるとともに、隣接する当該第1磁路形成部材との間に間隔を有するように当該定着部材の回転方向と交差する当該定着部材の幅方向に並んで設けられ、
前記定着部材は、前記磁界生成部材を介して前記第1磁路形成部材と対向する部位を通過する第1領域と、当該第1領域と隣接して設けられ、当該磁界生成部材を介して当該第1磁路形成部材と対向しない部位を通過する第2領域とを有し、
前記第2磁路形成部材は、前記定着部材の前記第1領域と対向する第1部位と、当該定着部材の前記第2領域と対向し、当該第1部位よりも熱容量が低い第2部位とを有することを特徴とする画像形成装置である。
【0008】
請求項8に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における体積が、前記第2部位における体積よりも大きいことを特徴とする請求項7記載の画像形成装置である。
請求項9に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における前記定着部材の回転方向に沿った長さが、前記第2部位における当該定着部材の回転方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置である。
請求項10に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における厚さが、前記第2部位における厚さよりも厚いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、定着部材における温度むらの発生を抑制することができる。
請求項2の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、より簡易な構成で、第2磁路形成部材における第1部位の熱容量を第2部位の熱容量よりも大きくすることができる。
請求項3の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、第2磁路形成部材における熱容量の分布を、より簡易な構成で実現することができる。
請求項4の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、定着部材における過剰な温度上昇を抑制することができる。
請求項5の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、第2磁路形成部材における熱容量の分布を、より簡易な構成で実現することができる。
請求項6の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、定着部材における過剰な温度上昇を抑制することができる。
【0010】
請求項7の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、定着部材における温度むらの発生を抑制することができる。
請求項8の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、より簡易な構成で、第2磁路形成部材における第1部位の熱容量を第2部位の熱容量よりも大きくすることができる。
請求項9の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、第2磁路形成部材における熱容量の分布を、より簡易な構成で実現することができる。
請求項10の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、第2磁路形成部材における熱容量の分布を、より簡易な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態の定着装置が適用される画像形成装置の構成例を示した図である。
【図2】本実施の形態の定着ユニットの構成を示す正面図である。
【図3】図2における定着ユニットのIII−III断面図である。
【図4】定着ベルトの層構成を説明する図である。
【図5】(a)がエンドキャップ部材の側面図であり、(b)がVB方向から見たエンドキャップ部材の平面図である。
【図6】本実施の形態のIHヒータの構成を説明する断面図である。
【図7】本実施の形態におけるIHヒータ、定着ベルト、感温磁性部材および誘導部材の積層構造を説明する図である。
【図8】本実施の形態のIHヒータにおける磁心、感温磁性部材および誘導部材の関係を説明する図である。
【図9】定着ベルトの温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合の磁力線の状態を説明する図である。
【図10】本実施の形態におけるIHヒータ、定着ベルト、感温磁性部材および誘導部材の積層構造を説明する斜視図である。
【図11】本実施の形態におけるIHヒータ、定着ベルト、感温磁性部材および誘導部材の積層構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
<画像形成装置の説明>
図1は本実施の形態の定着装置が適用される画像形成装置の構成例を示した図である。図1に示す画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラープリンタであり、画像データに基づき画像形成を行う画像形成部10、画像形成装置1全体の動作を制御する制御部31、画像形成装置1に対して供給される用紙Pを保持する用紙保持部40、画像が形成された用紙Pを積載する用紙積載部45を備えている。さらには、例えばパーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置(スキャナ)4等との通信を行って画像データを受信する通信部32、通信部32にて受信された画像データに対し予め定めた画像処理を施す画像処理部33を備えている。
【0013】
画像形成部10は、一定の間隔を置いて並列的に配置されるトナー像形成手段の一例である4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11K(「画像形成ユニット11」とも総称する)を備えている。各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を各色画像データに基づき露光するLED(Light Emitting Diode)プリントヘッド14、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を現像する現像器15、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するドラムクリーナ16を備えている。
画像形成ユニット11各々は、現像器15に収納されるトナーを除いて同様に構成され、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0014】
また、画像形成部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト20、各画像形成ユニット11にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト20に順次転写(一次転写)する一次転写ロール21を備えている。さらに、中間転写ベルト20上に重畳して転写された各色トナー像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール22、二次転写後の中間転写ベルト20表面を清掃するベルトクリーナ25、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着させる定着手段(定着装置)の一例としての定着ユニット60を備えている。なお、本実施の形態の画像形成装置1では、中間転写ベルト20、一次転写ロール21、および二次転写ロール22により転写手段が構成される。
【0015】
本実施の形態の画像形成装置1では、制御部31による動作制御の下で、次のようなプロセスによる画像形成処理が行われる。すなわち、PC3やスキャナ4からの画像データは通信部32にて受信され、画像処理部33により予め定めた画像処理が施された後、各色の画像データとなって各画像形成ユニット11に送られる。そして、例えば黒(K)色トナー像を形成する画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら帯電器13により予め定めた電位で帯電され、画像処理部33から送信された黒(K)色画像データに基づきLEDプリントヘッド14が感光体ドラム12を走査露光する。それにより、感光体ドラム12上には黒(K)色画像に関する静電潜像が形成される。感光体ドラム12上に形成された黒(K)色静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上に黒(K)色トナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11Y、11M、11Cにおいても、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
【0016】
各画像形成ユニット11の感光体ドラム12に形成された各色トナー像は、一次転写ロール21により矢印B方向に移動する中間転写ベルト20上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。中間転写ベルト20上の重畳トナー像は、中間転写ベルト20の移動に伴って二次転写ロール22が配置された領域(二次転写部T)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されると、そのタイミングに合わせて用紙保持部40から用紙Pが二次転写部Tに供給される。そして、重畳トナー像は、二次転写部Tにて二次転写ロール22が形成する転写電界により、搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写(二次転写)される。
【0017】
その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、定着ユニット60まで搬送される。定着ユニット60に搬送された用紙P上のトナー像は、定着ユニット60によって熱および圧力を受け、用紙P上に定着される。そして、定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置1の排出部に設けられた用紙積載部45に搬送される。
一方、一次転写後に感光体ドラム12に付着しているトナー(一次転写残トナー)、および二次転写後に中間転写ベルト20に付着しているトナー(二次転写残トナー)は、それぞれドラムクリーナ16、およびベルトクリーナ25によって除去される。
このようにして、画像形成装置1での画像形成処理がプリント枚数分のサイクルだけ繰り返し実行される。
【0018】
<定着ユニットの構成の説明>
次に、本実施の形態の定着ユニット60について説明する。
図2および図3は本実施の形態の定着ユニット60の構成を示す図であり、図2は正面図、図3は図2におけるIII−III断面図である。
まず、断面図である図3に示すように、定着ユニット60は、IH(Induction Heating)ヒータ80、IHヒータ80により電磁誘導加熱されてトナー像を定着する定着部材の一例としての定着ベルト61、定着ベルト61の外周側において、定着ベルト61に対向するように配置された加圧ロール62、定着ベルト61の内周側に設けられるとともに、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧され、加圧ロール62との間にニップ部Nを形成する押圧パッド63を備えている。なお、本実施の形態においては、IHヒータ80は定着ベルト61の外周側に設けられている。
さらに、定着ユニット60は、定着ベルト61の内周側において定着ベルト61に接触して設けられ、IHヒータ80にて生成された交流磁界を誘導して磁路を形成する感温磁性部材64、定着ベルト61の内周側に設けられるとともに感温磁性部材64に接触して設けられ、感温磁性部材64を通過した磁力線を誘導する誘導部材66、定着ベルト61の内周側に設けられ、押圧パッド63、感温磁性部材64および誘導部材66を支持するホルダ65、定着ベルト61の外周側に設けられ、定着ベルト61からの用紙Pの剥離を補助する剥離補助部材173を備えている。なお、本実施の形態の定着ユニット60では、感温磁性部材64と誘導部材66とにより第2磁路形成部材が構成される。
【0019】
<定着ベルトの説明>
図4は、定着ベルト61の層構成を説明する図である。定着ベルト61は、原形が円筒形状の無端のベルト部材で構成され、例えば原形(円筒形状)時の直径が30mm、幅方向長が370mmに形成されている。また、図4に示したように、定着ベルト61は、内周側から、基材層611、基材層611の上に積層された導電層の一例としての導電発熱層612、トナー像の定着性を向上させる弾性層613、最上層に被覆された表面離型層614が積層された多層構造のベルト部材である。したがって、本実施の形態においては、定着ベルト61の内周側において基材層611が感温磁性部材64と接触し、定着ベルト61の外周側において表面離型層614が加圧ロール62およびIHヒータ80に対向している。
【0020】
基材層611は、導電発熱層612を支持するとともに、定着ベルト61全体としての機械的強度を形成する耐熱性のシート状部材で構成される。また、基材層611は、IHヒータ80にて生成された交流磁界が感温磁性部材64まで作用するように、磁界を通過させる物性(比透磁率、固有抵抗)を持った材質、厚さで形成される。一方、基材層611自身は、磁界の作用により発熱しないか、または発熱し難く構成される。
具体的には、基材層611として、例えば、厚さ30〜200μm(好ましくは50〜150μm)の非磁性ステンレススチール等の非磁性金属や、厚さ60〜200μmの樹脂材料等が用いられる。
【0021】
導電発熱層612は、IHヒータ80にて生成される交流磁界によって電磁誘導加熱される電磁誘導発熱体層である。すなわち、導電発熱層612は、IHヒータ80からの交流磁界が厚さ方向に通過することにより、渦電流を発生させる層である。
通常、IHヒータ80に交流電流を供給する励磁回路88(後段の図6も参照)の電源として、安価に製造できる汎用電源が使用される。そのため、IHヒータ80により生成される交流磁界の周波数は、一般に、汎用電源による20kHz〜100kHzとなる。それにより、導電発熱層612は、周波数20kHz〜100kHzの交流磁界が侵入し通過するように構成される。
【0022】
導電発熱層612に交流磁界が侵入できる領域は、交流磁界が1/eに減衰する領域である「表皮深さ(δ)」として規定され、次の(1)式から導かれる。(1)式において、fは交流磁界の周波数(例えば、20kHz)、ρは固有抵抗値(Ω・m)、μrは比透磁率である。
そのため、導電発熱層612の厚さは、周波数20kHz〜100kHzの交流磁界が導電発熱層612に侵入し通過するように、(1)式で規定される導電発熱層612の表皮深さ(δ)よりも薄く構成される。また、導電発熱層612を構成する材料として、例えば、Au、Ag、Al、Cu、Zn、Sn、Pb、Bi、Be、Sb等の金属や、これらの金属合金が用いられる。
【0023】
【数1】
【0024】
具体的には、導電発熱層612として、厚さ2〜20μm、固有抵抗値2.7×10−8Ω・m以下の例えばCu等の非磁性金属(比透磁率が概ね1)が用いられる。
また、定着ベルト61が定着設定温度まで加熱されるまでに要する時間(以下、「ウォームアップタイム」)を短縮する観点からも、導電発熱層612は、薄層に構成される。
【0025】
次に、弾性層613は、シリコーンゴム等の耐熱性の弾性体で構成される。定着対象となる用紙Pに保持されるトナー像は、粉体である各色トナーが積層して形成されている。そのため、ニップ部Nにおいてトナー像の全体に均一に熱を供給するには、用紙P上のトナー像の凹凸に倣って定着ベルト61表面が変形することが好ましい。そこで、弾性層613には、例えば厚みが100〜600μm、硬度が10°〜30°(JIS−A)のシリコーンゴムが用いられる。
表面離型層614は、用紙P上に保持された未定着トナー像と直接接触するため、離型性の高い材質が使用される。例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン共重合体、またはこれらの複合層等が用いられる。表面離型層614の厚さとしては、薄すぎると、耐摩耗性の面で充分でなく、定着ベルト61の寿命を短くする。その一方で、厚すぎると、定着ベルト61の熱容量が大きくなりすぎ、ウォームアップタイムが長くなる。そこで、表面離型層614の厚さとして、耐摩耗性と熱容量とのバランスを考慮し、1〜50μmが用いられる。
【0026】
<押圧パッドの説明>
押圧パッド63は、シリコーンゴム等やフッ素ゴム等の弾性体やLCP、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂で構成され、図3に示すように加圧ロール62と対向する位置にてホルダ65に支持される。そして、押圧パッド63は、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される状態で配置され、加圧ロール62との間でニップ部Nを形成する。
また、押圧パッド63は、ニップ部Nの入口側(用紙Pの搬送方向上流側)のプレニップ領域63aと、ニップ部Nの出口側(用紙Pの搬送方向下流側)の剥離ニップ領域63bとで異なるニップ圧が設定されている。すなわち、押圧パッド63は、プレニップ領域63aでは、加圧ロール62側の面がほぼ加圧ロール62の外周面に倣う円弧形状に形成され、均一で幅の広いニップ部Nを形成する。また、押圧パッド63は、剥離ニップ領域63bでは、剥離ニップ領域63bを通過する定着ベルト61の曲率半径が小さくなるように、加圧ロール62表面から局所的に大きなニップ圧で押圧されるように形成される。それにより、押圧パッド63は、剥離ニップ領域63bを通過する用紙Pに定着ベルト61表面から離れる方向のカール(ダウンカール)を形成して、用紙Pに対する定着ベルト61表面からの剥離を促進させている。
【0027】
なお、本実施の形態では、押圧パッド63による剥離の補助手段として、ニップ部Nの下流側に、剥離補助部材173を配置している。剥離補助部材173は、ニップ部Nよりも用紙搬送方向下流側において、定着ベルト61に向かって延びる剥離バッフル171と、剥離バッフル171を支持するホルダ172とから構成される。そして、ニップ部Nの出口にて押圧パッド63により用紙Pに形成されたカール部分を剥離バッフル171により支持することで、用紙Pが定着ベルト61方向に向かうことを抑制する。
【0028】
<感温磁性部材の説明>
次に、感温磁性部材64について説明する。図3に示すように、感温磁性部材64は、定着ベルト61の内周面に倣った円弧形状で形成され、外周面が定着ベルト61の内周面と接触するように配置される。それにより、感温磁性部材64の温度は定着ベルト61の温度に対応して変化し、感温磁性部材64は定着ベルト61の温度を検知する検知部として機能する。
そして、感温磁性部材64は、その磁気特性の透磁率が急変する温度である「透磁率変化開始温度」が、各色トナー像が溶融する定着設定温度以上であって、定着ベルト61の弾性層613や表面離型層614の耐熱温度よりも低い温度範囲内に設定された材質で構成される。すなわち、感温磁性部材64は、定着設定温度を含む温度領域において強磁性と非磁性(常磁性)との間を可逆的に変化する特性(「感温磁性」)を有する材質で構成される。それにより、感温磁性部材64は、強磁性を呈する透磁率変化開始温度以下の温度範囲において磁路形成部材として機能し、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線を内部に誘導して、感温磁性部材64の内部を通過する磁路を形成する。そして、感温磁性部材64は、定着ベルト61とIHヒータ80の励磁コイル82(後段の図6参照)とを内部に包み込むような閉磁路を形成する。一方、透磁率変化開始温度を超える温度範囲においては、感温磁性部材64は、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線を、感温磁性部材64の厚さ方向に横切るように透過させる。それにより、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線は、感温磁性部材64を透過し、誘導部材66の内部を通過してIHヒータ80に戻る磁路を形成する。
【0029】
感温磁性部材64に用いる材質としては、透磁率変化開始温度が定着設定温度として用いられる例えば140℃〜240℃の範囲内に設定された、例えばFe−Ni合金(パーマロイ)等の二元系感温磁性合金やFe−Ni−Cr合金等の三元系の感温磁性合金等が用いられる。例えば、Fe−Niの二元系感温磁性合金においては約Fe64%、Ni36%(原子数比)とすることで220℃〜225℃前後に透磁率変化開始温度を設定することができる。このようなパーマロイや感温磁性合金等の金属合金等は、成型性や加工性に優れ、伝熱性も高く安価である等の理由から、感温磁性部材64に適する。その他の材質としては、Fe、Ni、Si、B、Nb、Cu、Zr、Co、Cr、V、Mn、Mo等からなる金属合金が用いられる。
また、感温磁性部材64は、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)に対する表皮深さδ(上記(1)式参照)よりも厚い厚さで形成される。具体的には、例えばFe−Ni合金を用いた場合には50〜300μm程度に設定される。
【0030】
また、本実施の形態の感温磁性部材64は発熱体としても機能して、接触して配置される定着ベルト61に対して熱を供給する。それにより、感温磁性部材64は、トナー像を定着する定着部材として機能する定着ベルト61の発熱を補助して、画像形成時の定着ベルト61の温度を定着設定温度の範囲内に維持する。例えば、感温磁性部材64自らが発熱して定着ベルト61に対して熱を供給することで、定着動作の開始時に生じ易い定着ベルト61の温度の一時的な落ち込み(所謂「温度ドループ現象」)の発生等を抑制して、定着ベルト61の温度が定着設定温度の範囲内に安定的に維持されるように構成している。
なお、本実施の形態における感温磁性部材64の構造については、後段で詳細に説明する。
【0031】
<ホルダの説明>
図3に示すように、ホルダ65は、定着ベルト61の内周側に設けられ、押圧パッド63、感温磁性部材64および誘導部材66を支持する。そして、ホルダ65は、押圧パッド63が加圧ロール62からの押圧力を受けた状態で、押圧パッド63の撓み量が一定量以下となるように、剛性の高い材料で構成される。それにより、ニップ部Nにおける定着ベルト61の幅方向の圧力(ニップ圧)の均一性を維持している。さらに、本実施の形態の定着ユニット60では、電磁誘導を用いて定着ベルト61を加熱する構成を採用していることから、ホルダ65は、誘導磁界に影響を与えないか、または与え難い材料であり、かつ、誘導磁界から影響を受けないか、または受け難い材料で構成される。例えば、ガラス混入PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂や、例えばAl、Cu、Ag等の非磁性金属材料等が用いられる。
【0032】
<誘導部材の説明>
図3に示すように、誘導部材66は、感温磁性部材64の内周面に倣った円弧形状で形成され、感温磁性部材64の内周面と接触して配置される。また、誘導部材66は、例えばAg、Cu、Alといった固有抵抗値が比較的小さい非磁性金属で構成される。そして、感温磁性部材64が透磁率変化開始温度以上の温度に上昇した際に、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)を誘導して、定着ベルト61の導電発熱層612よりも渦電流Iが発生し易い状態を形成する。それにより、誘導部材66の厚さは、渦電流Iが流れ易いように、表皮深さδ(上記(1)式参照)よりも充分に厚い厚さ(例えば、1.0mm)で形成される。なお、本実施の形態では、誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向全域に亘って、感温磁性部材64よりも厚く形成されている。
【0033】
さらに、誘導部材66は、感温磁性部材64と接触して配置されることにより、感温磁性部材64にて発生した熱を蓄える蓄熱体としても機能する。そして、誘導部材66は、蓄えた熱を感温磁性部材64を介して定着ベルト61に供給することで、画像形成時の定着ベルト61の温度を定着設定温度の範囲内に維持する。すなわち、本実施の形態の誘導部材66は、感温磁性部材64にて発熱した熱を貯蔵し、温度が落ち込んだ定着ベルト61に対し感温磁性部材64を介して熱を供給する。それにより、例えば定着動作の開始時に生じ易い定着ベルト61の温度の一時的な落ち込み(温度ドループ現象)等の発生の抑制を補助して、定着ベルト61の温度が定着設定温度の範囲内に安定的に維持されるように機能する。
なお、本実施の形態における誘導部材66の構造については、後段で詳細に説明する。
【0034】
<定着ベルトの駆動機構の説明>
次に、定着ベルト61の駆動機構について説明する。
正面図である図2に示したように、ホルダ65(図3参照)の軸方向両端部には、定着ベルト61の両端部の断面形状を円形に維持しながら定着ベルト61を周方向に回転駆動するエンドキャップ部材67が固定されている。そして、定着ベルト61は、両端部からエンドキャップ部材67を介した回転駆動力を直接的に受けて、例えば140mm/sのプロセススピードで図3の矢印C方向に回転移動する。
ここで図5は、(a)がエンドキャップ部材67の側面図であり、(b)がVB方向から見たエンドキャップ部材67の平面図である。図5に示したように、エンドキャップ部材67は、定着ベルト61の両端部内側に嵌め合わされる固定部67a、固定部67aより外径が大きく形成され、定着ベルト61に装着された際に定着ベルト61よりも半径方向外側に張り出すように形成されたフランジ部67d、回転駆動力が伝達されるギヤ部67b、ホルダ65の両端部に形成された支持部65aと結合部材166を介して回転自在に結合されたベアリング軸受部67cを備える。すなわち、エンドキャップ部材67は、定着ベルト61の軸方向中央から外側に向かって、固定部67a、フランジ部67dおよびギヤ部67bが順に配置された構造を有する。そして、上記図2に示したように、ホルダ65(図3参照)の両端部の支持部65aが定着ユニット60の筐体70の両端部に固定されることで、エンドキャップ部材67は、支持部65aに結合されたベアリング軸受部67cを介して回転自在に支持される。
エンドキャップ部材67を構成する材質としては、機械的強度や耐熱性の高い所謂エンジニアリングプラスチックスが用いられる。例えば、エンドキャップ部材67を構成する材質としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、LCP樹脂等が用いられる。
【0035】
そして、図2に示すように、定着ユニット60では、駆動モータ90からの回転駆動力が伝達ギヤ91、92を介してシャフト93に伝達され、シャフト93に結合された伝達ギヤ94、95から両エンドキャップ部材67のギヤ部67b(図5参照)に伝達される。それによって、エンドキャップ部材67から定着ベルト61に回転駆動力が伝わり、エンドキャップ部材67と定着ベルト61とが一体となって回転駆動される。
このように、定着ベルト61が定着ベルト61の両端部から駆動力を直接受けて回転するので、定着ベルト61は安定して回転する。
【0036】
ここで、定着ベルト61が両端部のエンドキャップ部材67から駆動力を直接受けて回転する場合には、一般に、0.1〜0.5N・m程度のトルクが作用する。ところが、本実施の形態の定着ベルト61では、基材層611を機械的強度の高い例えば非磁性ステンレススチール等で構成している。そのため、定着ベルト61全体に0.1〜0.5N・m程度のねじりトルクが作用した場合でも、定着ベルト61には座屈等が生じ難い。
また、エンドキャップ部材67のフランジ部67dにより定着ベルト61の片寄りを抑えているが、その際の定着ベルト61には、一般に、端部(フランジ部67d)側から軸方向に向けて1〜5N程度の圧縮力が働く。しかし、定着ベルト61がこのような圧縮力を受けた場合においても、定着ベルト61の基材層611が非磁性ステンレススチール等で構成されていることから、座屈等の発生が抑制される。
上記のように、本実施の形態の定着ベルト61においては、定着ベルト61の両端部から駆動力を直接受けて回転するので、安定した回転が行われる。また、その際に、定着ベルト61の基材層611を機械的強度の高い例えば非磁性ステンレススチール等で構成することで、ねじりトルクや圧縮力に対して座屈等が発生し難い構成を実現している。さらには、基材層611および導電発熱層612を薄層に形成して、定着ベルト61全体としての柔軟性/フレキシブル性を確保しているので、ニップ部Nに倣った変形と形状復元とが行われる。
【0037】
<加圧ロールの説明>
図3に戻り、加圧ロール62は、定着ベルト61に対向するように配置され、定着ベルト61に従動して図3の矢印D方向に、例えば140mm/sのプロセススピードで回転する。そして、加圧ロール62と押圧パッド63とにより定着ベルト61を挟持した状態でニップ部Nを形成し、このニップ部Nに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させることで、熱および圧力を加えて未定着トナー像を用紙Pに定着する。
加圧ロール62は、例えば直径18mmの中実のアルミニウム製コア(円柱状芯金)621と、コア621の外周面に被覆された例えば厚さ5mmのシリコーンスポンジ等の耐熱性弾性体層622と、さらに例えば厚さ50μmのカーボン配合のPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層623とが積層されて構成される。そして、加圧ロール62は、押圧バネ68(図2参照)により例えば25kgfの荷重で定着ベルト61を介して押圧パッド63を押圧している。
【0038】
<IHヒータの説明>
続いて、定着ベルト61の導電発熱層612に交流磁界を作用させて電磁誘導加熱するIHヒータ80について説明する。
図6は、本実施の形態のIHヒータ80の構成を説明する断面図であり、図7は、本実施の形態におけるIHヒータ80、定着ベルト61、感温磁性部材64および誘導部材66の積層構造を説明する図である。なお、図7においては、シールド85(図6参照)の記載を省略している。また、図8は、IHヒータ80における磁心84(図6参照)と感温磁性部材64および誘導部材66との関係を説明する図である。なお、図8は、定着ベルト61の外周形状に沿って湾曲した形状の磁心84、感温磁性部材64および誘導部材66の積層構造を平坦とみなして、シールド85側から見たものに対応する。
【0039】
図6に示したように、本実施の形態のIHヒータ80は、定着ベルト61の外周面に沿って設けられる支持体81、支持体81に支持されるとともに支持体81を介して定着ベルト61に対向して設けられ、交流磁界を生成する磁界生成部材の一例としての励磁コイル82、支持体81に支持されるとともに励磁コイル82に対向して設けられ、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁路を形成する磁心84を備えている。また、本実施の形態のIHヒータ80は、励磁コイル82上に設けられ、励磁コイル82を支持体81上に固定する弾性支持部材83、支持体81に取り付けられるとともに、励磁コイル82、弾性支持部材83および磁心84を囲んで設けられ、磁界を遮蔽するシールド85、磁心84とシールド85との間に設けられ、磁心84を支持体81側に加圧する加圧部材86、励磁コイル82に交流電流を供給する励磁回路88を備えている。
さらに、本実施の形態のIHヒータ80は、定着ベルト61を介して、定着ベルト61の内周側に設けられる感温磁性部材64および誘導部材66と対向している(図3参照)。
【0040】
図7に示したように、本実施の形態におけるIHヒータ80の支持体81は、定着ベルト61の移動方向に直交する方向(以下では、定着ベルト61の幅方向という)を長手方向とし、定着ベルト61の全幅に亘って定着ベルト61と対向して設けられる。
さらに、支持体81は、断面が定着ベルト61の表面形状に沿って湾曲した形状で形成され、励磁コイル82を支持する上部面(支持面)81a(図6参照)が定着ベルト61表面と予め定めた間隙(例えば、0.5〜2mm)を保つように設定されている。
また、図6に示したように、支持体81には、支持面81aにおける定着ベルト61の移動方向中央部にて、定着ベルト61の幅方向に沿って平行に配置された一対の磁心支持部81bと、支持面81aにおける定着ベルト61の移動方向両端部に配置され、磁心84に接触することで、磁心84の定着ベルト61の移動方向に対する配置位置を規制する磁心規制部81cとが設けられている。そして、一対の磁心支持部81bは、支持面81aにおける定着ベルト61の移動方向両端部に設けられた2つの磁心規制部81cの間で、磁心84を定着ベルト61の移動方向前後に移動自在に支持する。それにより、支持体81は、製造時の熱処理によって形状にばらつきが生じ易い磁心84と支持面81aとの間隙が、定着ベルト61の移動方向中央部を中心として上流側領域と下流側領域とにおいて略対称となるように磁心84を支持する。
支持体81を構成する材質としては、例えば、耐熱ガラス、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂、またはこれらにガラス繊維を混合した耐熱性樹脂等の耐熱性のある非磁性材料が用いられる。
【0041】
励磁コイル82は、相互に絶縁された例えば直径0.17mmの銅線材を例えば90本束ねたリッツ線が、定着ベルト61の幅方向が長手方向となるような長円形状や楕円形状、長方形状等の中空きの閉ループ状に巻かれて構成される。励磁コイル82は、励磁コイル82の中空き部から支持体81の磁心支持部81bが突出するように、支持体81の支持面81a上に配置される。そして、励磁コイル82に励磁回路88から予め定めた周波数の交流電流が供給されることにより、励磁コイル82の周囲には、閉ループ状に巻かれたリッツ線を中心とする交流磁界が生成される。励磁回路88から励磁コイル82に供給される交流電流の周波数は、一般に、上記した汎用電源により生成される20〜100kHzが用いられる。
弾性支持部材83は、例えばシリコーンゴム等やフッ素ゴム等の弾性体で構成されたシート状部材である。弾性支持部材83は、励磁コイル82が支持体81の支持面81aに密着して固定されるように、励磁コイル82を支持体81に対して押圧するように設定されている。
【0042】
磁心84(図6参照)は、図7に示すように、複数の第1磁路形成部材の一例としての複数の磁心片84aが、隣接する磁心片84aとの間に間隔を有するように、定着ベルト61の幅方向に並んで配置されることで構成される。そして、磁心84を構成する複数の磁心片84aは、それぞれ、断面が定着ベルト61の断面形状に沿って湾曲するとともに、定着ベルト61の移動方向を長手方向とする弓状の形状を有している。そして、複数の磁心片84aは、それぞれ、支持体81に設けられた磁心支持部81bおよび磁心規制部81cにより、位置決めされている。
また、図8に示すように、定着ベルト61の移動方向に沿った磁心片84aの長さは、感温磁性部材64および誘導部材66の定着ベルト61の移動方向に沿った長さよりも小さく構成される。それにより、磁心84を構成する磁心片84aから放射される磁力線H(後述する図9参照)のIHヒータ80周辺への漏洩が減り、力率が向上する。さらには、定着ユニット60を構成する金属製部材への電磁誘導を抑え、定着ベルト61(導電発熱層612)での発熱効率を高める。
【0043】
磁心84を構成する磁心片84aを形成する材料としては、例えばソフトフェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)、やパーマロイ、感温磁性合金等の高透磁率の酸化物や合金材質で構成される強磁性体が用いられる。磁心片84aは、励磁コイル82にて生成された交流磁界による磁力線H(磁束)を内部に誘導し、磁心片84aから支持体81を介して定着ベルト61を横切って感温磁性部材64方向に向かい、感温磁性部材64の中を通過して支持体81を介して磁心片84aに戻るといった磁力線Hの通路(磁路)を形成する。すなわち、励磁コイル82にて生成された交流磁界が磁心片84aの内部と感温磁性部材64の内部とを通過するように構成して、磁力線Hが定着ベルト61と励磁コイル82とを内部に包み込むような閉磁路を形成する。それにより、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁力線Hは、定着ベルト61のうち磁心片84aと対向する領域に集中される。
【0044】
<定着ベルトが発熱する状態の説明>
引き続いて、IHヒータ80により生成された交流磁界によって定着ベルト61が発熱する状態を説明する。
まず、上記したように、感温磁性部材64の透磁率変化開始温度は、各色トナー像を定着する定着設定温度以上であって定着ベルト61の耐熱温度以下となる温度範囲内(例えば、140〜240℃)に設定されている。そして、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の状態にある場合には、定着ベルト61に近接する感温磁性部材64の温度も定着ベルト61の温度に対応して、透磁率変化開始温度以下となる。そのため、感温磁性部材64は強磁性を呈するので、IHヒータ80により生成された交流磁界の磁力線Hは、定着ベルト61を透過した後、感温磁性部材64の内部を広がり方向に沿って通過する磁路を形成する。ここでの「広がり方向」とは、感温磁性部材64の厚さ方向と直交する方向を意味する。
【0045】
図9は、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合の磁力線Hの状態を説明する図である。図9に示したように、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合には、IHヒータ80により生成された交流磁界の磁力線Hは、定着ベルト61を透過し、感温磁性部材64の内部を広がり方向(厚さ方向と直交する方向)に沿って通過する磁路を形成する。そのため、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度よりも高い温度範囲にある場合と比較して、定着ベルト61の導電発熱層612を横切る領域での単位面積あたりの磁力線Hの数(磁束密度)は多くなる。
【0046】
すなわち、IHヒータ80における磁心84の磁心片84aから磁力線Hが放射されて定着ベルト61の導電発熱層612を横切る領域R1、R2を通過した後、磁力線Hは強磁性体である感温磁性部材64の内部に誘導される。そのため、定着ベルト61の導電発熱層612を厚さ方向に横切る磁力線Hは感温磁性部材64の内部に進入するように集中し、領域R1、R2での磁束密度は他の領域の磁束密度と比較して高くなる。また、感温磁性部材64の内部を広がり方向に沿って通過した磁力線Hが再び磁心片84aに戻るに際しても、導電発熱層612を厚さ方向に横切る領域R3では、磁力線Hが感温磁性部材64内の磁位の低い部分から集中して磁心片84aに向けて発生する。そのため、定着ベルト61の導電発熱層612を厚さ方向に横切る磁力線Hは、感温磁性部材64から集中して磁心片84aに向かうこととなり、領域R3での磁束密度も他の領域の磁束密度と比較して高くなる。
【0047】
磁力線Hが厚さ方向に横切る定着ベルト61の導電発熱層612では、単位面積当たりの磁力線Hの数(磁束密度)の変化量に比例した渦電流Iが発生する。それにより、図9に示したように、磁束密度の変化量が他の領域よりも大きい領域R1、R2および領域R3では、他の領域よりも大きな渦電流Iが発生する。導電発熱層612に生じた渦電流Iは、導電発熱層612の固有抵抗値Rと渦電流Iの二乗の積であるジュール熱W(W=I2R)を発生させる。それにより、他の領域よりも大きな渦電流Iが発生した導電発熱層612の領域R1、R2およびR3では、他の領域よりも大きなジュール熱Wが発生する。
このように、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合には、磁力線Hが導電発熱層612を横切る領域R1、R2や領域R3において他の領域よりも大きな熱が発生する。それにより、定着ベルト61は加熱される。
【0048】
本実施の形態の定着ユニット60では、定着ベルト61の内周面に接触させて感温磁性部材64を配置している。それにより、励磁コイル82にて生成された磁力線Hを内部に誘導する磁心84(磁心片84a)と、定着ベルト61を厚さ方向に横切って透過した磁力線Hを内部に誘導する感温磁性部材64とが近接した構成を実現している。そのため、IHヒータ80(励磁コイル82)により生成された交流磁界は、磁路が短いループを形成するので、磁路内での磁束密度や磁気結合度は高まる。それにより、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合、定着ベルト61にはさらに効率的に熱が発生する。
【0049】
また、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度よりも高い温度範囲にある場合には、感温磁性部材64の温度も透磁率変化開始温度より高くなるため、感温磁性部材64の比透磁率が低下する。そのため、IHヒータ80の励磁コイル82により生成された交流磁界の磁力線Hは、感温磁性部材64を容易に透過するように変化する。それにより、励磁コイル82により生成された交流磁界の磁力線Hは、磁心84(磁心片84a)から定着ベルト61に向けて拡散するように放射され、感温磁性部材64を透過して誘導部材66に到達するようになる。
【0050】
一方、感温磁性部材64を透過した磁力線Hが到達した誘導部材66では、磁力線Hを打ち消す方向の磁力線を生じさせる渦電流が発生する。そして、誘導部材66にて発生した渦電流により生じた磁力線と、感温磁性部材64を透過して誘導部材66に到達した磁力線Hとが打ち消し合うことになる。
そのため、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度を超える温度範囲にある場合には、導電発熱層612を厚さ方向に横切る磁力線Hの磁束密度が減少することとなる。それにより、磁力線Hが厚さ方向に横切る導電発熱層612に発生する渦電流Iは減り、定着ベルト61に発生するジュール熱Wは減少する。これにより、定着ベルト61の温度上昇が抑制される。
【0051】
また、感温磁性部材64を透過して誘導部材66に到達した磁力線Hの一部は、誘導部材66の内部に誘導される。磁力線Hが誘導部材66の内部に誘導されるようになると、定着ベルト61の導電発熱層612より渦電流Iの流れやすい誘導部材66のほうに多くの渦電流Iが流れる。そのため、導電発熱層612で流れる渦電流Iの量はさらに抑制され、定着ベルト61の温度上昇がさらに抑制されることになる。
【0052】
その後、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度よりも低くなると、感温磁性部材64の温度も透磁率変化開始温度よりも低くなるため、感温磁性部材64は再び強磁性に変化する。これにより、磁力線Hが再び感温磁性部材64の内部に誘導されるため、定着ベルト61の導電発熱層612に渦電流Iが多く流れるようになる。そのため、定着ベルト61が再び加熱されるようになる。
【0053】
ここで、図7および図8に示すように、本実施の形態のIHヒータ80では、磁心84(図6参照)は、励磁コイル82の長手方向(定着ベルト61の幅方向)に亘って並んで形成される複数の磁心片84aから構成されている。
本実施の形態においては、回転する定着ベルト61のうち、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向する部位を通過する領域を第1領域S1と呼び、回転する定着ベルト61のうち、第1領域S1と隣接して設けられ、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向しない部位を通過する領域を第2領域S2と呼ぶ。したがって、図7に示すように、本実施の形態の定着ベルト61においては、定着ベルト61の幅方向に、第1領域S1と第2領域S2とが交互に並んで存在することとなる。なお、図8には、定着ベルト61に設定される第1領域S1と対応する領域および第2領域S2と対応する領域を示している。
【0054】
上述したように、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合には、磁力線Hは、磁心84(磁心片84a)から放出され、定着ベルト61の導電発熱層612を横切り感温磁性部材64を通過した後、再び磁心84(磁心片84a)に向かうことになる。したがって、定着ベルト61のうち、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向する部位を通過する第1領域S1の方が、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向しない部位を通過する第2領域S2と比較して、導電発熱層612に磁力線Hが集中し、磁束密度が高くなりやすい。そして、定着ベルト61の導電発熱層612では、第2領域S2と比較して第1領域S1で渦電流Iが生じやすくなり、ジュール熱Wが発生しやすくなる。
これにより、定着ベルト61では、第2領域S2と比較して第1領域S1のほうが温度上昇しやすいため、定着ベルト61において、第1領域S1と第2領域S2との間で温度むらが生じやすくなる傾向がある。
【0055】
<定着ベルトにおける温度むらの発生を抑制する構成の説明>
この場合に定着ベルト61において温度むらの発生を抑制するためには、隣接する磁心片84a同士の間隔を狭くして励磁コイル82の長手方向に亘って磁心片84aを敷き詰めるように配置することで、磁心84を形成する構成や、磁心84を励磁コイル82の長手方向に亘って一体的に形成する構成等を採用することが挙げられる。しかし、このような構成では、IHヒータ80全体の重量が大きくなり、また製造コストも高価なものとなる。また、磁心84をフェライトで形成する場合には、成形後の熱処理によって磁心84の形状にばらつきが生じ易く、磁心84の寸法精度を高めることが困難である。そのため、磁心片84aを励磁コイル82の長手方向に亘って敷き詰めることで磁心84を形成したり、磁心84を励磁コイル82の長手方向に亘って一体構成としたりする場合には、励磁コイル82の長手方向に亘って、磁心84と励磁コイル82との間隔のばらつきが大きくなりやすい。その結果、定着ベルト61に供給する磁力線が不均一となって、定着ベルト61の発熱量においても、定着ベルト61の幅方向においてばらつきが生じ、定着ベルト61に温度むらが生じる懸念がある。
【0056】
そこで、本実施の形態の定着ユニット60では、定着ベルト61の内周側に設けられる誘導部材66において、定着ベルト61における第1領域S1が通過する部位の熱容量を、定着ベルト61における第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくすることで、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制している。
【0057】
上述したように、感温磁性部材64は発熱体としても機能し、接触して配置される定着ベルト61に対して熱を供給して、定着ベルト61での発熱量を補助する。
すなわち、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下であり、感温磁性部材64が強磁性を呈する状態であっても、IHヒータ80からの磁力線Hの中には、感温磁性部材64を厚さ方向に横切る磁力線Hが存在する。それにより、感温磁性部材64の内部には弱い渦電流Iが発生し、感温磁性部材64自身も発熱する。その場合に、本実施の形態の感温磁性部材64では、スリット等の渦電流Iを抑制する機構を設けず、積極的に感温磁性部材64が発熱するように構成している。そして、円弧形状の感温磁性部材64が同様に円弧形状の内周面をもった定着ベルト61と大きな面積領域において接触するように配置して、感温磁性部材64にて発生した熱が定着ベルト61に伝熱するように構成している。それにより、感温磁性部材64は、定着ベルト61に対して熱を供給する。
またその際に、感温磁性部材64と接触して配置される誘導部材66には、感温磁性部材64にて発生した熱が伝導され、誘導部材66は、その熱を蓄える蓄熱材としての機能を有する。さらに、誘導部材66は、感温磁性部材64から蓄えた熱を、感温磁性部材64を介して定着ベルト61に供給する。
【0058】
誘導部材66から感温磁性部材64を介して定着ベルト61に供給される熱量は、感温磁性部材64に接して設けられる誘導部材66の熱容量に依存する。すなわち、誘導部材66の熱容量が大きいほど、感温磁性部材64にて発生した熱のうち誘導部材66にて蓄えられる熱量が多くなるため、それに伴って感温磁性部材64にて発生した熱のうち定着ベルト61に供給される熱量が少なくなる。逆に、誘導部材66の熱容量が小さいほど、感温磁性部材64にて発生した熱のうち誘導部材66にて蓄えられる熱量が少なくなるため、感温磁性部材64にて発生した熱のうち定着ベルト61に供給される熱量が多くなる。
したがって、本実施の形態の定着ユニット60では、定着ベルト61の内周側に設けられる誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2と比較して、導電発熱層612でジュール熱Wが発生しやすく温度上昇しやすい定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくすることで、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制している。
【0059】
ここで、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向に亘って一体的に構成されるとともに、定着ベルト61の幅方向に亘って同一の非磁性金属材料にて形成されている。したがって、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の誘導部材66の体積を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の誘導部材66の体積よりも大きくすることで、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくすることが可能になる。
なお、本実施の形態の説明において、「体積」とは、誘導部材66における、定着ベルト61の幅方向に沿った単位長さ当たりの体積をいうものとする。同様に、「熱容量」とは、誘導部材66における、定着ベルト61の幅方向に沿った単位長さ当たりの熱容量をいうものとする。
【0060】
続いて、本実施の形態において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を、誘導部材66のうち定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくするための構成について説明する。
本実施の形態の誘導部材66は、図7に示すように、感温磁性部材64の内周面に倣った形状で形成されている。そして、誘導部材66の外周面は、感温磁性部材64の内周面に接触して配置される。また、本実施の形態においては、誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向に亘って一体的に構成されている。
さらに、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位と第2領域S2が通過する部位とで、厚さが等しくなるように構成される。
さらにまた、図7および図8に示すように、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、定着ベルト61の移動方向上流側に切欠きが形成されている。これにより、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが第1の長さとなる長径部66aを有し、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが第1の長さよりも短い第2の長さとなる短径部66bを有している。
【0061】
本実施の形態の誘導部材66は、上記構成を有することで定着ベルト61の第1領域S1が通過する長径部66aの方が、定着ベルト61の第2領域S2が通過する短径部66bよりも体積が大きくなる。
これにより、本実施の形態では、誘導部材66において定着ベルト61の第1領域S1が通過する長径部66aの方が、定着ベルト61の第2領域S2が通過する短径部66bよりも熱容量が大きくなる。したがって、本構成を有さない場合と比較して、誘導部材66の長径部66aから定着ベルト61の第1領域S1に供給される熱量の方が、誘導部材66の短径部66bから定着ベルト61の第2領域S2に供給される熱量よりも小さくなる。
以上より、本実施の形態では、本構成を有さない場合と比較して、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおいて温度むらが発生するのを抑制することが可能になる。
【0062】
また、図7および図8に示すように、本実施の形態の感温磁性部材64は、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、定着ベルト61の移動方向上流側に切欠きが形成されている。これにより、本実施の形態の感温磁性部材64は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが第3の長さとなる長径部64aを有し、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが第3の長さよりも短い第4の長さとなる短径部64bを有している。
【0063】
そして、本実施の形態では、感温磁性部材64の内周側に誘導部材66の外周が接触して配置されるとともに、感温磁性部材64の短径部64bと誘導部材66の短径部66bとが重なり、感温磁性部材64の長径部64aと誘導部材66の長径部66aとが重なって配置される。これにより、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位には、感温磁性部材64および誘導部材66の双方が切欠かれた切欠き部69が形成されている。
なお、本実施の形態の定着ユニット60においては、誘導部材66の長径部66aと感温磁性部材64の長径部64aとにより、第2磁路形成部材の第1部位が構成され、誘導部材66の短径部66bと感温磁性部材64の短径部64bとにより、第2磁路形成部材の第2部位が構成されている。
【0064】
本実施の形態では、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、感温磁性部材64と誘導部材66との双方を切欠いて形成される切欠き部69を有することで、この切欠き部69に、定着ベルト61の温度を検知するサーミスタ(図示せず)や、定着ベルト61の温度が異常に上昇した場合に定着ユニット60への電力の供給を遮断するサーモスイッチ(図示せず)を設けることができる。これにより、切欠き部69以外にサーミスタやサーモスイッチを設置した場合と比較して、定着ユニット60の省スペース化を図ることが可能になる。また、本実施の形態では、サーミスタやサーモスイッチを設置するために、切欠き部69以外に感温磁性部材64および誘導部材66をさらに切欠く必要がなく、サーミスタやサーモスイッチを設置するために感温磁性部材64および誘導部材66を切欠いたことによる、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制することが可能になる。
【0065】
さらに、本実施の形態では、磁心片84aにおける定着ベルト61の移動方向に沿った長さが、感温磁性部材64の長径部64aおよび誘導部材66の長径部66aにおける定着ベルト61の移動方向に沿った長さよりも短い。そして、磁心片84aにおける定着ベルト61の移動方向に沿った両端部は、ともに、感温磁性部材64の長径部64aおよび誘導部材66の長径部66aにおける定着ベルト61の移動方向に沿った両端部よりも内側に設けられる。
これにより、磁心片84aから放射される磁力線H(図9参照)がIHヒータ80周辺へ漏洩するのを抑制でき、力率が向上する。さらには、定着ユニット60を構成する金属製部材への電磁誘導を抑え、定着ベルト61(導電発熱層612)での発熱効率を高めることが可能になる。
【0066】
なお、本実施の形態では、感温磁性部材64において長径部64aおよび短径部64bを形成するとともに、誘導部材66において長径部66aおよび短径部66bを形成した。しかし、例えば、感温磁性部材64において、長径部64aおよび短径部64bを形成せずに、誘導部材66のみに長径部66aおよび短径部66bを形成してもよい。
また、本実施の形態では、誘導部材66における定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、定着ベルト61の移動方向上流側を切欠くことで、誘導部材66に長径部66aおよび短径部66bを形成した。しかし誘導部材66を切欠く場所はこれに限られず、誘導部材66における定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、定着ベルト61の移動方向下流側を切欠いても良いし、定着ベルト61の移動方向上流側および下流側の双方を切欠くことで、長径部66aおよび短径部66bを形成しても良い。
【0067】
さらに、本実施の形態では、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において誘導部材66を矩形状に切欠くことで、誘導部材66において矩形状の長径部66aおよび矩形状の短径部66bを形成した。しかし、誘導部材66の長径部66aの形状および短径部66bの形状は矩形に限られず、三角形状や半円形状等、あらゆる形状を採用することができる。
また、本実施の形態では、誘導部材66の長径部66aにおける、定着ベルト61の幅方向に沿った幅と、定着ベルト61の第1領域S1における、定着ベルト61の幅方向に沿った幅とを等しくし、誘導部材66の短径部66bにおける、定着ベルト61の幅方向に沿った幅と、定着ベルト61の第2領域S2における、定着ベルト61の幅方向に沿った幅とを等しくした。しかし、誘導部材66における長径部66aおよび短径部66bの幅はこれに限られない。例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位のうち、少なくとも一部の部位に短径部66bが形成されていれば足りる。
【0068】
また、本実施の形態においては、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において誘導部材66を切欠くことで、誘導部材66に長径部66aと短径部66bとを形成した。しかし、誘導部材66に長径部66aおよび短径部66bを形成する方法はこれに限られない。例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の材料を引き伸ばす等の方法で、誘導部材66に長径部66aと短径部66bとを形成してもよい。
【0069】
さらに、本実施の形態では、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位よりも第2領域S2と対向する部位の熱容量を小さくするために、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位に長径部66aを形成し、定着ベルト61の第2領域S2と対向する部位に短径部66bを形成した。しかし、例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2と対向する部位に孔を設けることで、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位よりも第2領域S2と対向する部位の体積を小さくし、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位よりも第2領域S2と対向する部位の熱容量を小さくしても良い。
【0070】
[実施の形態2]
続いて、本発明の実施の形態2について説明する。
実施の形態1では、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位に長径部66aを形成し、定着ベルト61の第2領域S2と対向する部位に短径部66bを形成し、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の体積を第2領域S2が通過する部位の体積よりも大きくすることで、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくし、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制する構成について説明した。
本実施の形態では、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位と第2領域S2が通過する部位とで、誘導部材66の定着ベルト61の移動方向に沿った長さが等しくなるように構成するとともに、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位と第2領域S2が通過する部位とで、誘導部材66の厚さを異ならせることで、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制する構成について説明する。
なお、実施の形態1と同様な構成については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0071】
図10は、本実施の形態におけるIHヒータ80(図7参照)、定着ベルト61、感温磁性部材64および誘導部材66の積層構造を説明する斜視図であり、図11は、本実施の形態におけるIHヒータ80(図7参照)、定着ベルト61、感温磁性部材64および誘導部材66の積層構造を説明する断面図である。図11は、図3のXI−XI断面に相当する。なお、図10においては、シールド85の記載を省略し、図11においては、支持体81、弾性支持部材83およびシールド85の記載を省略している。
【0072】
図10に示すように、本実施の形態の感温磁性部材64は、定着ベルト61の内周面に倣った円弧形状で形成され、感温磁性部材64の外周面は、定着ベルト61の内周面に接触して設けられる。
また、本実施の形態の誘導部材66は、図10に示すように、感温磁性部材64の内周面に倣った形状で形成されている。そして、誘導部材66の外周面は、感温磁性部材64の内周面に接触して設けられる。さらに、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向に亘って一体的に構成されるとともに、定着ベルト61の幅方向に亘って同一の非磁性金属にて形成されている。
【0073】
本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位と第2領域S2が通過する部位とで、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが等しくなるように構成される。
さらに、図11に示すように、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿って感温磁性部材64と接触する側とは反対側に突出することで、厚さが第1の厚さとなる肉厚部66cを有し、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿って延びるとともに、厚さが第1の厚さよりも薄い第2の厚さとなる肉薄部66dを有している。
本実施の形態の定着ユニット60では、誘導部材66における肉厚部66cと感温磁性部材64のうち誘導部材66の肉厚部66cに接する部位とにより第1部位が構成され、誘導部材66における肉薄部66dと感温磁性部材64のうち誘導部材66の肉薄部66dに接する部位とにより第2部位が構成されている。
【0074】
本実施の形態の誘導部材66では、肉厚部66cと肉薄部66dとで、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが等しくなるように形成されるため、本実施の形態の誘導部材66は、上記構成を有することで、肉厚部66cの方が肉薄部66dよりも体積が大きくなる。
これにより、本実施の形態では、誘導部材66において肉厚部66cの方が肉薄部66dよりも熱容量が大きくなるため、本構成を有さない場合と比較して、誘導部材66の肉厚部66cから定着ベルト61の第1領域S1に供給される熱量の方が、誘導部材66の肉薄部66dから定着ベルト61の第2領域S2に供給される熱量よりも小さくなる。
したがって、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおいて温度むらが発生するのを抑制することが可能になる。
【0075】
なお、本実施の形態の誘導部材66において、肉厚部66cの厚さは、例えば0.8〜1.2mmであり、肉薄部66dの厚さは、例えば0.4〜0.6mmである。また、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向の全域に亘って、感温磁性部材64よりも厚く形成されている。
【0076】
ここで、誘導部材66において肉厚部66cおよび肉薄部66dを形成する方法としては、例えば、絞りプレス加工による方法や、厚さが定着ベルト61の幅方向に亘って第1の厚さになるように形成された基部に対して、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位を削ることで、肉厚部66cと肉薄部66dとを形成する方法等が挙げられる。
また、厚さが定着ベルト61の幅方向に亘って第2の厚さに形成された基部に対して、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位に、他の部材を接着することで肉厚部66cと肉薄部66dとを形成してもよい。この場合、密着性等の観点から、誘導部材66の基部と、基部に接着する他の部材とは同一の材料から構成されることが好ましい。
【0077】
また、本実施の形態では、誘導部材66の肉厚部66cにおける、定着ベルト61の幅方向に沿った幅と、定着ベルト61の第1領域S1における、定着ベルト61の幅方向に沿った幅とを等しくし、誘導部材66の肉薄部66dにおける、定着ベルト61の幅方向に沿った幅と、定着ベルト61の第2領域S2における、定着ベルト61の幅方向に沿った幅とを等しくした。しかし、誘導部材66における肉厚部66cおよび肉薄部66dの幅はこれに限られない。例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位のうち、少なくとも一部の部位に肉厚部66cが形成されていれば足りる。
【0078】
実施の形態1では、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位よりも、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位における、定着ベルト61の進行方向に沿った長さを長くすることで、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおける温度むらの発生を抑制する構成について説明した。また、実施の形態2では、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位よりも、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位における厚さを厚くすることで、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおける温度むらの発生を抑制する構成について説明した。
しかし、誘導部材66において定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくする方法はこれらの形態に限られない。例えば、実施の形態1の構成と実施の形態2の構成とを併用してもよい。具体的には、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位を切欠くとともに、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の厚みを定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位よりも厚く形成することで、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制することも可能である。
【0079】
また、実施の形態1および実施の形態2では、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位における体積を、第2領域S2が通過する部位における体積よりも大きくすることで、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおける温度むらの発生を抑制する構成について説明した。しかし、例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位を第1の材料で形成し、第2領域S2が通過する部位を第1の材料よりも単位体積当たりの熱容量が小さい第2の材料で形成することで、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくし、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおける温度むらの発生を抑制することも可能である。このような構成を採用する場合、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の体積と第2領域S2が通過する部位の体積とを等しくしても良いし、第1領域S1が通過する部位の体積を第2領域S2が通過する部位の体積よりも小さくしても良い。
【符号の説明】
【0080】
1…画像形成装置、60…定着ユニット、61…定着ベルト、62…加圧ロール、64…感温磁性部材、66…誘導部材、69…切欠き部、80…IHヒータ、82…励磁コイル、84…磁心
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に搭載する定着装置として、電磁誘導加熱方式を用いたものが知られている。
例えば、特許文献1には、フェライト等の高透磁率を有する材料で構成され、少なくとも一方向に配列された複数の芯材に励磁コイルを巻き付けて構成した磁場発生手段を、導電部材としてのエンドレス状フィルムの内部に、複数の芯材がエンドレス状フィルムの幅方向に並ぶように配置し、励磁コイルにて生成した誘導磁界によりエンドレス状フィルムに渦電流を発生させることで、エンドレス状フィルムを直接的に加熱する電磁誘導加熱方式の定着装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−16005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置で用いられる定着部材における温度むらの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、無端帯状の形状を備えるとともに導電層を有し、回転可能に設けられ、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、
前記定着部材と対向して設けられ、交流電流が供給されることで、当該定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記磁界生成部材を介して前記定着部材に対向して設けられ、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する複数の第1磁路形成部材と、
前記定着部材を介して前記磁界生成部材に対向して設けられ、複数の前記第1磁路形成部材とともに、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する第2磁路形成部材とを備え、
複数の前記第1磁路形成部材は、それぞれが前記定着部材の回転方向に沿って延びるとともに、隣接する当該第1磁路形成部材との間に間隔を有するように、当該定着部材の回転方向と交差する当該定着部材の幅方向に並んで設けられ、
前記定着部材は、前記磁界生成部材を介して前記第1磁路形成部材と対向する部位を通過する第1領域と、当該第1領域と隣接して設けられ、当該磁界生成部材を介して当該第1磁路形成部材と対向しない部位を通過する第2領域とを有し、
前記第2磁路形成部材は、前記定着部材の前記第1領域と対向する第1部位と、当該定着部材の前記第2領域と対向し、当該第1部位よりも熱容量が低い第2部位とを有することを特徴とする定着装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における体積が、前記第2部位における体積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
請求項3に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における前記定着部材の回転方向に沿った長さが、前記第2部位における当該定着部材の回転方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
請求項4に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、外周面が前記定着部材の内周面に接触して配置され、磁気特性が温度に応じて強磁性と常磁性との間で変化し、磁気特性が強磁性の場合に、前記磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成し、磁気特性が常磁性の場合に、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を透過させる感温磁性部材と、外周面が当該感温磁性部材の内周面に接触して配置され、当該感温磁性部材の磁気特性が常磁性の場合に、当該感温磁性部材を透過した交流磁界を誘導する誘導部材とを備え、
前記感温磁性部材および前記誘導部材は、前記第2部位に、前記定着部材の回転方向に沿った切欠きを有することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
請求項5に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における厚さが、前記第2部位における厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
請求項6に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、外周面が前記定着部材の内周面に接触して配置され、磁気特性が温度に応じて強磁性と常磁性との間で変化し、磁気特性が強磁性の場合に、前記磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成し、磁気特性が常磁性の場合に、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を透過させる感温磁性部材と、外周面が当該感温磁性部材の内周面に接触して配置され、当該感温磁性部材の磁気特性が常磁性の場合に、当該感温磁性部材を透過した交流磁界を誘導する誘導部材とを備え、
前記誘導部材は、前記第1部位において、前記感温磁性部材の内周面と接する面とは反対側に、前記第2部位よりも突出する凸部を有することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
【0007】
請求項7に記載の発明は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段によって形成された前記トナー像を記録材上に転写する転写手段と、
前記記録材上に転写された前記トナー像を当該記録材に定着する定着手段とを有し、
前記定着手段は、
無端帯状の形状を備えるとともに導電層を有し、回転可能に設けられ、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、
前記定着部材と対向して設けられ、交流電流が供給されることで、当該定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記磁界生成部材を介して前記定着部材に対向して設けられ、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する複数の第1磁路形成部材と、
前記定着部材を介して前記磁界生成部材に対向して設けられ、複数の前記第1磁路形成部材とともに、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する第2磁路形成部材とを備え、
複数の前記第1磁路形成部材は、それぞれが前記定着部材の回転方向に沿って延びるとともに、隣接する当該第1磁路形成部材との間に間隔を有するように当該定着部材の回転方向と交差する当該定着部材の幅方向に並んで設けられ、
前記定着部材は、前記磁界生成部材を介して前記第1磁路形成部材と対向する部位を通過する第1領域と、当該第1領域と隣接して設けられ、当該磁界生成部材を介して当該第1磁路形成部材と対向しない部位を通過する第2領域とを有し、
前記第2磁路形成部材は、前記定着部材の前記第1領域と対向する第1部位と、当該定着部材の前記第2領域と対向し、当該第1部位よりも熱容量が低い第2部位とを有することを特徴とする画像形成装置である。
【0008】
請求項8に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における体積が、前記第2部位における体積よりも大きいことを特徴とする請求項7記載の画像形成装置である。
請求項9に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における前記定着部材の回転方向に沿った長さが、前記第2部位における当該定着部材の回転方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置である。
請求項10に記載の発明は、前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における厚さが、前記第2部位における厚さよりも厚いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、定着部材における温度むらの発生を抑制することができる。
請求項2の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、より簡易な構成で、第2磁路形成部材における第1部位の熱容量を第2部位の熱容量よりも大きくすることができる。
請求項3の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、第2磁路形成部材における熱容量の分布を、より簡易な構成で実現することができる。
請求項4の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、定着部材における過剰な温度上昇を抑制することができる。
請求項5の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、第2磁路形成部材における熱容量の分布を、より簡易な構成で実現することができる。
請求項6の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、定着部材における過剰な温度上昇を抑制することができる。
【0010】
請求項7の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、定着部材における温度むらの発生を抑制することができる。
請求項8の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、より簡易な構成で、第2磁路形成部材における第1部位の熱容量を第2部位の熱容量よりも大きくすることができる。
請求項9の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、第2磁路形成部材における熱容量の分布を、より簡易な構成で実現することができる。
請求項10の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、第2磁路形成部材における熱容量の分布を、より簡易な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態の定着装置が適用される画像形成装置の構成例を示した図である。
【図2】本実施の形態の定着ユニットの構成を示す正面図である。
【図3】図2における定着ユニットのIII−III断面図である。
【図4】定着ベルトの層構成を説明する図である。
【図5】(a)がエンドキャップ部材の側面図であり、(b)がVB方向から見たエンドキャップ部材の平面図である。
【図6】本実施の形態のIHヒータの構成を説明する断面図である。
【図7】本実施の形態におけるIHヒータ、定着ベルト、感温磁性部材および誘導部材の積層構造を説明する図である。
【図8】本実施の形態のIHヒータにおける磁心、感温磁性部材および誘導部材の関係を説明する図である。
【図9】定着ベルトの温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合の磁力線の状態を説明する図である。
【図10】本実施の形態におけるIHヒータ、定着ベルト、感温磁性部材および誘導部材の積層構造を説明する斜視図である。
【図11】本実施の形態におけるIHヒータ、定着ベルト、感温磁性部材および誘導部材の積層構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
<画像形成装置の説明>
図1は本実施の形態の定着装置が適用される画像形成装置の構成例を示した図である。図1に示す画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラープリンタであり、画像データに基づき画像形成を行う画像形成部10、画像形成装置1全体の動作を制御する制御部31、画像形成装置1に対して供給される用紙Pを保持する用紙保持部40、画像が形成された用紙Pを積載する用紙積載部45を備えている。さらには、例えばパーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置(スキャナ)4等との通信を行って画像データを受信する通信部32、通信部32にて受信された画像データに対し予め定めた画像処理を施す画像処理部33を備えている。
【0013】
画像形成部10は、一定の間隔を置いて並列的に配置されるトナー像形成手段の一例である4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11K(「画像形成ユニット11」とも総称する)を備えている。各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を各色画像データに基づき露光するLED(Light Emitting Diode)プリントヘッド14、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を現像する現像器15、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するドラムクリーナ16を備えている。
画像形成ユニット11各々は、現像器15に収納されるトナーを除いて同様に構成され、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0014】
また、画像形成部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト20、各画像形成ユニット11にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト20に順次転写(一次転写)する一次転写ロール21を備えている。さらに、中間転写ベルト20上に重畳して転写された各色トナー像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール22、二次転写後の中間転写ベルト20表面を清掃するベルトクリーナ25、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着させる定着手段(定着装置)の一例としての定着ユニット60を備えている。なお、本実施の形態の画像形成装置1では、中間転写ベルト20、一次転写ロール21、および二次転写ロール22により転写手段が構成される。
【0015】
本実施の形態の画像形成装置1では、制御部31による動作制御の下で、次のようなプロセスによる画像形成処理が行われる。すなわち、PC3やスキャナ4からの画像データは通信部32にて受信され、画像処理部33により予め定めた画像処理が施された後、各色の画像データとなって各画像形成ユニット11に送られる。そして、例えば黒(K)色トナー像を形成する画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら帯電器13により予め定めた電位で帯電され、画像処理部33から送信された黒(K)色画像データに基づきLEDプリントヘッド14が感光体ドラム12を走査露光する。それにより、感光体ドラム12上には黒(K)色画像に関する静電潜像が形成される。感光体ドラム12上に形成された黒(K)色静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上に黒(K)色トナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11Y、11M、11Cにおいても、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
【0016】
各画像形成ユニット11の感光体ドラム12に形成された各色トナー像は、一次転写ロール21により矢印B方向に移動する中間転写ベルト20上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。中間転写ベルト20上の重畳トナー像は、中間転写ベルト20の移動に伴って二次転写ロール22が配置された領域(二次転写部T)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されると、そのタイミングに合わせて用紙保持部40から用紙Pが二次転写部Tに供給される。そして、重畳トナー像は、二次転写部Tにて二次転写ロール22が形成する転写電界により、搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写(二次転写)される。
【0017】
その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、定着ユニット60まで搬送される。定着ユニット60に搬送された用紙P上のトナー像は、定着ユニット60によって熱および圧力を受け、用紙P上に定着される。そして、定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置1の排出部に設けられた用紙積載部45に搬送される。
一方、一次転写後に感光体ドラム12に付着しているトナー(一次転写残トナー)、および二次転写後に中間転写ベルト20に付着しているトナー(二次転写残トナー)は、それぞれドラムクリーナ16、およびベルトクリーナ25によって除去される。
このようにして、画像形成装置1での画像形成処理がプリント枚数分のサイクルだけ繰り返し実行される。
【0018】
<定着ユニットの構成の説明>
次に、本実施の形態の定着ユニット60について説明する。
図2および図3は本実施の形態の定着ユニット60の構成を示す図であり、図2は正面図、図3は図2におけるIII−III断面図である。
まず、断面図である図3に示すように、定着ユニット60は、IH(Induction Heating)ヒータ80、IHヒータ80により電磁誘導加熱されてトナー像を定着する定着部材の一例としての定着ベルト61、定着ベルト61の外周側において、定着ベルト61に対向するように配置された加圧ロール62、定着ベルト61の内周側に設けられるとともに、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧され、加圧ロール62との間にニップ部Nを形成する押圧パッド63を備えている。なお、本実施の形態においては、IHヒータ80は定着ベルト61の外周側に設けられている。
さらに、定着ユニット60は、定着ベルト61の内周側において定着ベルト61に接触して設けられ、IHヒータ80にて生成された交流磁界を誘導して磁路を形成する感温磁性部材64、定着ベルト61の内周側に設けられるとともに感温磁性部材64に接触して設けられ、感温磁性部材64を通過した磁力線を誘導する誘導部材66、定着ベルト61の内周側に設けられ、押圧パッド63、感温磁性部材64および誘導部材66を支持するホルダ65、定着ベルト61の外周側に設けられ、定着ベルト61からの用紙Pの剥離を補助する剥離補助部材173を備えている。なお、本実施の形態の定着ユニット60では、感温磁性部材64と誘導部材66とにより第2磁路形成部材が構成される。
【0019】
<定着ベルトの説明>
図4は、定着ベルト61の層構成を説明する図である。定着ベルト61は、原形が円筒形状の無端のベルト部材で構成され、例えば原形(円筒形状)時の直径が30mm、幅方向長が370mmに形成されている。また、図4に示したように、定着ベルト61は、内周側から、基材層611、基材層611の上に積層された導電層の一例としての導電発熱層612、トナー像の定着性を向上させる弾性層613、最上層に被覆された表面離型層614が積層された多層構造のベルト部材である。したがって、本実施の形態においては、定着ベルト61の内周側において基材層611が感温磁性部材64と接触し、定着ベルト61の外周側において表面離型層614が加圧ロール62およびIHヒータ80に対向している。
【0020】
基材層611は、導電発熱層612を支持するとともに、定着ベルト61全体としての機械的強度を形成する耐熱性のシート状部材で構成される。また、基材層611は、IHヒータ80にて生成された交流磁界が感温磁性部材64まで作用するように、磁界を通過させる物性(比透磁率、固有抵抗)を持った材質、厚さで形成される。一方、基材層611自身は、磁界の作用により発熱しないか、または発熱し難く構成される。
具体的には、基材層611として、例えば、厚さ30〜200μm(好ましくは50〜150μm)の非磁性ステンレススチール等の非磁性金属や、厚さ60〜200μmの樹脂材料等が用いられる。
【0021】
導電発熱層612は、IHヒータ80にて生成される交流磁界によって電磁誘導加熱される電磁誘導発熱体層である。すなわち、導電発熱層612は、IHヒータ80からの交流磁界が厚さ方向に通過することにより、渦電流を発生させる層である。
通常、IHヒータ80に交流電流を供給する励磁回路88(後段の図6も参照)の電源として、安価に製造できる汎用電源が使用される。そのため、IHヒータ80により生成される交流磁界の周波数は、一般に、汎用電源による20kHz〜100kHzとなる。それにより、導電発熱層612は、周波数20kHz〜100kHzの交流磁界が侵入し通過するように構成される。
【0022】
導電発熱層612に交流磁界が侵入できる領域は、交流磁界が1/eに減衰する領域である「表皮深さ(δ)」として規定され、次の(1)式から導かれる。(1)式において、fは交流磁界の周波数(例えば、20kHz)、ρは固有抵抗値(Ω・m)、μrは比透磁率である。
そのため、導電発熱層612の厚さは、周波数20kHz〜100kHzの交流磁界が導電発熱層612に侵入し通過するように、(1)式で規定される導電発熱層612の表皮深さ(δ)よりも薄く構成される。また、導電発熱層612を構成する材料として、例えば、Au、Ag、Al、Cu、Zn、Sn、Pb、Bi、Be、Sb等の金属や、これらの金属合金が用いられる。
【0023】
【数1】
【0024】
具体的には、導電発熱層612として、厚さ2〜20μm、固有抵抗値2.7×10−8Ω・m以下の例えばCu等の非磁性金属(比透磁率が概ね1)が用いられる。
また、定着ベルト61が定着設定温度まで加熱されるまでに要する時間(以下、「ウォームアップタイム」)を短縮する観点からも、導電発熱層612は、薄層に構成される。
【0025】
次に、弾性層613は、シリコーンゴム等の耐熱性の弾性体で構成される。定着対象となる用紙Pに保持されるトナー像は、粉体である各色トナーが積層して形成されている。そのため、ニップ部Nにおいてトナー像の全体に均一に熱を供給するには、用紙P上のトナー像の凹凸に倣って定着ベルト61表面が変形することが好ましい。そこで、弾性層613には、例えば厚みが100〜600μm、硬度が10°〜30°(JIS−A)のシリコーンゴムが用いられる。
表面離型層614は、用紙P上に保持された未定着トナー像と直接接触するため、離型性の高い材質が使用される。例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン共重合体、またはこれらの複合層等が用いられる。表面離型層614の厚さとしては、薄すぎると、耐摩耗性の面で充分でなく、定着ベルト61の寿命を短くする。その一方で、厚すぎると、定着ベルト61の熱容量が大きくなりすぎ、ウォームアップタイムが長くなる。そこで、表面離型層614の厚さとして、耐摩耗性と熱容量とのバランスを考慮し、1〜50μmが用いられる。
【0026】
<押圧パッドの説明>
押圧パッド63は、シリコーンゴム等やフッ素ゴム等の弾性体やLCP、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂で構成され、図3に示すように加圧ロール62と対向する位置にてホルダ65に支持される。そして、押圧パッド63は、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される状態で配置され、加圧ロール62との間でニップ部Nを形成する。
また、押圧パッド63は、ニップ部Nの入口側(用紙Pの搬送方向上流側)のプレニップ領域63aと、ニップ部Nの出口側(用紙Pの搬送方向下流側)の剥離ニップ領域63bとで異なるニップ圧が設定されている。すなわち、押圧パッド63は、プレニップ領域63aでは、加圧ロール62側の面がほぼ加圧ロール62の外周面に倣う円弧形状に形成され、均一で幅の広いニップ部Nを形成する。また、押圧パッド63は、剥離ニップ領域63bでは、剥離ニップ領域63bを通過する定着ベルト61の曲率半径が小さくなるように、加圧ロール62表面から局所的に大きなニップ圧で押圧されるように形成される。それにより、押圧パッド63は、剥離ニップ領域63bを通過する用紙Pに定着ベルト61表面から離れる方向のカール(ダウンカール)を形成して、用紙Pに対する定着ベルト61表面からの剥離を促進させている。
【0027】
なお、本実施の形態では、押圧パッド63による剥離の補助手段として、ニップ部Nの下流側に、剥離補助部材173を配置している。剥離補助部材173は、ニップ部Nよりも用紙搬送方向下流側において、定着ベルト61に向かって延びる剥離バッフル171と、剥離バッフル171を支持するホルダ172とから構成される。そして、ニップ部Nの出口にて押圧パッド63により用紙Pに形成されたカール部分を剥離バッフル171により支持することで、用紙Pが定着ベルト61方向に向かうことを抑制する。
【0028】
<感温磁性部材の説明>
次に、感温磁性部材64について説明する。図3に示すように、感温磁性部材64は、定着ベルト61の内周面に倣った円弧形状で形成され、外周面が定着ベルト61の内周面と接触するように配置される。それにより、感温磁性部材64の温度は定着ベルト61の温度に対応して変化し、感温磁性部材64は定着ベルト61の温度を検知する検知部として機能する。
そして、感温磁性部材64は、その磁気特性の透磁率が急変する温度である「透磁率変化開始温度」が、各色トナー像が溶融する定着設定温度以上であって、定着ベルト61の弾性層613や表面離型層614の耐熱温度よりも低い温度範囲内に設定された材質で構成される。すなわち、感温磁性部材64は、定着設定温度を含む温度領域において強磁性と非磁性(常磁性)との間を可逆的に変化する特性(「感温磁性」)を有する材質で構成される。それにより、感温磁性部材64は、強磁性を呈する透磁率変化開始温度以下の温度範囲において磁路形成部材として機能し、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線を内部に誘導して、感温磁性部材64の内部を通過する磁路を形成する。そして、感温磁性部材64は、定着ベルト61とIHヒータ80の励磁コイル82(後段の図6参照)とを内部に包み込むような閉磁路を形成する。一方、透磁率変化開始温度を超える温度範囲においては、感温磁性部材64は、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線を、感温磁性部材64の厚さ方向に横切るように透過させる。それにより、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線は、感温磁性部材64を透過し、誘導部材66の内部を通過してIHヒータ80に戻る磁路を形成する。
【0029】
感温磁性部材64に用いる材質としては、透磁率変化開始温度が定着設定温度として用いられる例えば140℃〜240℃の範囲内に設定された、例えばFe−Ni合金(パーマロイ)等の二元系感温磁性合金やFe−Ni−Cr合金等の三元系の感温磁性合金等が用いられる。例えば、Fe−Niの二元系感温磁性合金においては約Fe64%、Ni36%(原子数比)とすることで220℃〜225℃前後に透磁率変化開始温度を設定することができる。このようなパーマロイや感温磁性合金等の金属合金等は、成型性や加工性に優れ、伝熱性も高く安価である等の理由から、感温磁性部材64に適する。その他の材質としては、Fe、Ni、Si、B、Nb、Cu、Zr、Co、Cr、V、Mn、Mo等からなる金属合金が用いられる。
また、感温磁性部材64は、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)に対する表皮深さδ(上記(1)式参照)よりも厚い厚さで形成される。具体的には、例えばFe−Ni合金を用いた場合には50〜300μm程度に設定される。
【0030】
また、本実施の形態の感温磁性部材64は発熱体としても機能して、接触して配置される定着ベルト61に対して熱を供給する。それにより、感温磁性部材64は、トナー像を定着する定着部材として機能する定着ベルト61の発熱を補助して、画像形成時の定着ベルト61の温度を定着設定温度の範囲内に維持する。例えば、感温磁性部材64自らが発熱して定着ベルト61に対して熱を供給することで、定着動作の開始時に生じ易い定着ベルト61の温度の一時的な落ち込み(所謂「温度ドループ現象」)の発生等を抑制して、定着ベルト61の温度が定着設定温度の範囲内に安定的に維持されるように構成している。
なお、本実施の形態における感温磁性部材64の構造については、後段で詳細に説明する。
【0031】
<ホルダの説明>
図3に示すように、ホルダ65は、定着ベルト61の内周側に設けられ、押圧パッド63、感温磁性部材64および誘導部材66を支持する。そして、ホルダ65は、押圧パッド63が加圧ロール62からの押圧力を受けた状態で、押圧パッド63の撓み量が一定量以下となるように、剛性の高い材料で構成される。それにより、ニップ部Nにおける定着ベルト61の幅方向の圧力(ニップ圧)の均一性を維持している。さらに、本実施の形態の定着ユニット60では、電磁誘導を用いて定着ベルト61を加熱する構成を採用していることから、ホルダ65は、誘導磁界に影響を与えないか、または与え難い材料であり、かつ、誘導磁界から影響を受けないか、または受け難い材料で構成される。例えば、ガラス混入PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂や、例えばAl、Cu、Ag等の非磁性金属材料等が用いられる。
【0032】
<誘導部材の説明>
図3に示すように、誘導部材66は、感温磁性部材64の内周面に倣った円弧形状で形成され、感温磁性部材64の内周面と接触して配置される。また、誘導部材66は、例えばAg、Cu、Alといった固有抵抗値が比較的小さい非磁性金属で構成される。そして、感温磁性部材64が透磁率変化開始温度以上の温度に上昇した際に、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)を誘導して、定着ベルト61の導電発熱層612よりも渦電流Iが発生し易い状態を形成する。それにより、誘導部材66の厚さは、渦電流Iが流れ易いように、表皮深さδ(上記(1)式参照)よりも充分に厚い厚さ(例えば、1.0mm)で形成される。なお、本実施の形態では、誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向全域に亘って、感温磁性部材64よりも厚く形成されている。
【0033】
さらに、誘導部材66は、感温磁性部材64と接触して配置されることにより、感温磁性部材64にて発生した熱を蓄える蓄熱体としても機能する。そして、誘導部材66は、蓄えた熱を感温磁性部材64を介して定着ベルト61に供給することで、画像形成時の定着ベルト61の温度を定着設定温度の範囲内に維持する。すなわち、本実施の形態の誘導部材66は、感温磁性部材64にて発熱した熱を貯蔵し、温度が落ち込んだ定着ベルト61に対し感温磁性部材64を介して熱を供給する。それにより、例えば定着動作の開始時に生じ易い定着ベルト61の温度の一時的な落ち込み(温度ドループ現象)等の発生の抑制を補助して、定着ベルト61の温度が定着設定温度の範囲内に安定的に維持されるように機能する。
なお、本実施の形態における誘導部材66の構造については、後段で詳細に説明する。
【0034】
<定着ベルトの駆動機構の説明>
次に、定着ベルト61の駆動機構について説明する。
正面図である図2に示したように、ホルダ65(図3参照)の軸方向両端部には、定着ベルト61の両端部の断面形状を円形に維持しながら定着ベルト61を周方向に回転駆動するエンドキャップ部材67が固定されている。そして、定着ベルト61は、両端部からエンドキャップ部材67を介した回転駆動力を直接的に受けて、例えば140mm/sのプロセススピードで図3の矢印C方向に回転移動する。
ここで図5は、(a)がエンドキャップ部材67の側面図であり、(b)がVB方向から見たエンドキャップ部材67の平面図である。図5に示したように、エンドキャップ部材67は、定着ベルト61の両端部内側に嵌め合わされる固定部67a、固定部67aより外径が大きく形成され、定着ベルト61に装着された際に定着ベルト61よりも半径方向外側に張り出すように形成されたフランジ部67d、回転駆動力が伝達されるギヤ部67b、ホルダ65の両端部に形成された支持部65aと結合部材166を介して回転自在に結合されたベアリング軸受部67cを備える。すなわち、エンドキャップ部材67は、定着ベルト61の軸方向中央から外側に向かって、固定部67a、フランジ部67dおよびギヤ部67bが順に配置された構造を有する。そして、上記図2に示したように、ホルダ65(図3参照)の両端部の支持部65aが定着ユニット60の筐体70の両端部に固定されることで、エンドキャップ部材67は、支持部65aに結合されたベアリング軸受部67cを介して回転自在に支持される。
エンドキャップ部材67を構成する材質としては、機械的強度や耐熱性の高い所謂エンジニアリングプラスチックスが用いられる。例えば、エンドキャップ部材67を構成する材質としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、LCP樹脂等が用いられる。
【0035】
そして、図2に示すように、定着ユニット60では、駆動モータ90からの回転駆動力が伝達ギヤ91、92を介してシャフト93に伝達され、シャフト93に結合された伝達ギヤ94、95から両エンドキャップ部材67のギヤ部67b(図5参照)に伝達される。それによって、エンドキャップ部材67から定着ベルト61に回転駆動力が伝わり、エンドキャップ部材67と定着ベルト61とが一体となって回転駆動される。
このように、定着ベルト61が定着ベルト61の両端部から駆動力を直接受けて回転するので、定着ベルト61は安定して回転する。
【0036】
ここで、定着ベルト61が両端部のエンドキャップ部材67から駆動力を直接受けて回転する場合には、一般に、0.1〜0.5N・m程度のトルクが作用する。ところが、本実施の形態の定着ベルト61では、基材層611を機械的強度の高い例えば非磁性ステンレススチール等で構成している。そのため、定着ベルト61全体に0.1〜0.5N・m程度のねじりトルクが作用した場合でも、定着ベルト61には座屈等が生じ難い。
また、エンドキャップ部材67のフランジ部67dにより定着ベルト61の片寄りを抑えているが、その際の定着ベルト61には、一般に、端部(フランジ部67d)側から軸方向に向けて1〜5N程度の圧縮力が働く。しかし、定着ベルト61がこのような圧縮力を受けた場合においても、定着ベルト61の基材層611が非磁性ステンレススチール等で構成されていることから、座屈等の発生が抑制される。
上記のように、本実施の形態の定着ベルト61においては、定着ベルト61の両端部から駆動力を直接受けて回転するので、安定した回転が行われる。また、その際に、定着ベルト61の基材層611を機械的強度の高い例えば非磁性ステンレススチール等で構成することで、ねじりトルクや圧縮力に対して座屈等が発生し難い構成を実現している。さらには、基材層611および導電発熱層612を薄層に形成して、定着ベルト61全体としての柔軟性/フレキシブル性を確保しているので、ニップ部Nに倣った変形と形状復元とが行われる。
【0037】
<加圧ロールの説明>
図3に戻り、加圧ロール62は、定着ベルト61に対向するように配置され、定着ベルト61に従動して図3の矢印D方向に、例えば140mm/sのプロセススピードで回転する。そして、加圧ロール62と押圧パッド63とにより定着ベルト61を挟持した状態でニップ部Nを形成し、このニップ部Nに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させることで、熱および圧力を加えて未定着トナー像を用紙Pに定着する。
加圧ロール62は、例えば直径18mmの中実のアルミニウム製コア(円柱状芯金)621と、コア621の外周面に被覆された例えば厚さ5mmのシリコーンスポンジ等の耐熱性弾性体層622と、さらに例えば厚さ50μmのカーボン配合のPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層623とが積層されて構成される。そして、加圧ロール62は、押圧バネ68(図2参照)により例えば25kgfの荷重で定着ベルト61を介して押圧パッド63を押圧している。
【0038】
<IHヒータの説明>
続いて、定着ベルト61の導電発熱層612に交流磁界を作用させて電磁誘導加熱するIHヒータ80について説明する。
図6は、本実施の形態のIHヒータ80の構成を説明する断面図であり、図7は、本実施の形態におけるIHヒータ80、定着ベルト61、感温磁性部材64および誘導部材66の積層構造を説明する図である。なお、図7においては、シールド85(図6参照)の記載を省略している。また、図8は、IHヒータ80における磁心84(図6参照)と感温磁性部材64および誘導部材66との関係を説明する図である。なお、図8は、定着ベルト61の外周形状に沿って湾曲した形状の磁心84、感温磁性部材64および誘導部材66の積層構造を平坦とみなして、シールド85側から見たものに対応する。
【0039】
図6に示したように、本実施の形態のIHヒータ80は、定着ベルト61の外周面に沿って設けられる支持体81、支持体81に支持されるとともに支持体81を介して定着ベルト61に対向して設けられ、交流磁界を生成する磁界生成部材の一例としての励磁コイル82、支持体81に支持されるとともに励磁コイル82に対向して設けられ、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁路を形成する磁心84を備えている。また、本実施の形態のIHヒータ80は、励磁コイル82上に設けられ、励磁コイル82を支持体81上に固定する弾性支持部材83、支持体81に取り付けられるとともに、励磁コイル82、弾性支持部材83および磁心84を囲んで設けられ、磁界を遮蔽するシールド85、磁心84とシールド85との間に設けられ、磁心84を支持体81側に加圧する加圧部材86、励磁コイル82に交流電流を供給する励磁回路88を備えている。
さらに、本実施の形態のIHヒータ80は、定着ベルト61を介して、定着ベルト61の内周側に設けられる感温磁性部材64および誘導部材66と対向している(図3参照)。
【0040】
図7に示したように、本実施の形態におけるIHヒータ80の支持体81は、定着ベルト61の移動方向に直交する方向(以下では、定着ベルト61の幅方向という)を長手方向とし、定着ベルト61の全幅に亘って定着ベルト61と対向して設けられる。
さらに、支持体81は、断面が定着ベルト61の表面形状に沿って湾曲した形状で形成され、励磁コイル82を支持する上部面(支持面)81a(図6参照)が定着ベルト61表面と予め定めた間隙(例えば、0.5〜2mm)を保つように設定されている。
また、図6に示したように、支持体81には、支持面81aにおける定着ベルト61の移動方向中央部にて、定着ベルト61の幅方向に沿って平行に配置された一対の磁心支持部81bと、支持面81aにおける定着ベルト61の移動方向両端部に配置され、磁心84に接触することで、磁心84の定着ベルト61の移動方向に対する配置位置を規制する磁心規制部81cとが設けられている。そして、一対の磁心支持部81bは、支持面81aにおける定着ベルト61の移動方向両端部に設けられた2つの磁心規制部81cの間で、磁心84を定着ベルト61の移動方向前後に移動自在に支持する。それにより、支持体81は、製造時の熱処理によって形状にばらつきが生じ易い磁心84と支持面81aとの間隙が、定着ベルト61の移動方向中央部を中心として上流側領域と下流側領域とにおいて略対称となるように磁心84を支持する。
支持体81を構成する材質としては、例えば、耐熱ガラス、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂、またはこれらにガラス繊維を混合した耐熱性樹脂等の耐熱性のある非磁性材料が用いられる。
【0041】
励磁コイル82は、相互に絶縁された例えば直径0.17mmの銅線材を例えば90本束ねたリッツ線が、定着ベルト61の幅方向が長手方向となるような長円形状や楕円形状、長方形状等の中空きの閉ループ状に巻かれて構成される。励磁コイル82は、励磁コイル82の中空き部から支持体81の磁心支持部81bが突出するように、支持体81の支持面81a上に配置される。そして、励磁コイル82に励磁回路88から予め定めた周波数の交流電流が供給されることにより、励磁コイル82の周囲には、閉ループ状に巻かれたリッツ線を中心とする交流磁界が生成される。励磁回路88から励磁コイル82に供給される交流電流の周波数は、一般に、上記した汎用電源により生成される20〜100kHzが用いられる。
弾性支持部材83は、例えばシリコーンゴム等やフッ素ゴム等の弾性体で構成されたシート状部材である。弾性支持部材83は、励磁コイル82が支持体81の支持面81aに密着して固定されるように、励磁コイル82を支持体81に対して押圧するように設定されている。
【0042】
磁心84(図6参照)は、図7に示すように、複数の第1磁路形成部材の一例としての複数の磁心片84aが、隣接する磁心片84aとの間に間隔を有するように、定着ベルト61の幅方向に並んで配置されることで構成される。そして、磁心84を構成する複数の磁心片84aは、それぞれ、断面が定着ベルト61の断面形状に沿って湾曲するとともに、定着ベルト61の移動方向を長手方向とする弓状の形状を有している。そして、複数の磁心片84aは、それぞれ、支持体81に設けられた磁心支持部81bおよび磁心規制部81cにより、位置決めされている。
また、図8に示すように、定着ベルト61の移動方向に沿った磁心片84aの長さは、感温磁性部材64および誘導部材66の定着ベルト61の移動方向に沿った長さよりも小さく構成される。それにより、磁心84を構成する磁心片84aから放射される磁力線H(後述する図9参照)のIHヒータ80周辺への漏洩が減り、力率が向上する。さらには、定着ユニット60を構成する金属製部材への電磁誘導を抑え、定着ベルト61(導電発熱層612)での発熱効率を高める。
【0043】
磁心84を構成する磁心片84aを形成する材料としては、例えばソフトフェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)、やパーマロイ、感温磁性合金等の高透磁率の酸化物や合金材質で構成される強磁性体が用いられる。磁心片84aは、励磁コイル82にて生成された交流磁界による磁力線H(磁束)を内部に誘導し、磁心片84aから支持体81を介して定着ベルト61を横切って感温磁性部材64方向に向かい、感温磁性部材64の中を通過して支持体81を介して磁心片84aに戻るといった磁力線Hの通路(磁路)を形成する。すなわち、励磁コイル82にて生成された交流磁界が磁心片84aの内部と感温磁性部材64の内部とを通過するように構成して、磁力線Hが定着ベルト61と励磁コイル82とを内部に包み込むような閉磁路を形成する。それにより、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁力線Hは、定着ベルト61のうち磁心片84aと対向する領域に集中される。
【0044】
<定着ベルトが発熱する状態の説明>
引き続いて、IHヒータ80により生成された交流磁界によって定着ベルト61が発熱する状態を説明する。
まず、上記したように、感温磁性部材64の透磁率変化開始温度は、各色トナー像を定着する定着設定温度以上であって定着ベルト61の耐熱温度以下となる温度範囲内(例えば、140〜240℃)に設定されている。そして、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の状態にある場合には、定着ベルト61に近接する感温磁性部材64の温度も定着ベルト61の温度に対応して、透磁率変化開始温度以下となる。そのため、感温磁性部材64は強磁性を呈するので、IHヒータ80により生成された交流磁界の磁力線Hは、定着ベルト61を透過した後、感温磁性部材64の内部を広がり方向に沿って通過する磁路を形成する。ここでの「広がり方向」とは、感温磁性部材64の厚さ方向と直交する方向を意味する。
【0045】
図9は、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合の磁力線Hの状態を説明する図である。図9に示したように、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合には、IHヒータ80により生成された交流磁界の磁力線Hは、定着ベルト61を透過し、感温磁性部材64の内部を広がり方向(厚さ方向と直交する方向)に沿って通過する磁路を形成する。そのため、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度よりも高い温度範囲にある場合と比較して、定着ベルト61の導電発熱層612を横切る領域での単位面積あたりの磁力線Hの数(磁束密度)は多くなる。
【0046】
すなわち、IHヒータ80における磁心84の磁心片84aから磁力線Hが放射されて定着ベルト61の導電発熱層612を横切る領域R1、R2を通過した後、磁力線Hは強磁性体である感温磁性部材64の内部に誘導される。そのため、定着ベルト61の導電発熱層612を厚さ方向に横切る磁力線Hは感温磁性部材64の内部に進入するように集中し、領域R1、R2での磁束密度は他の領域の磁束密度と比較して高くなる。また、感温磁性部材64の内部を広がり方向に沿って通過した磁力線Hが再び磁心片84aに戻るに際しても、導電発熱層612を厚さ方向に横切る領域R3では、磁力線Hが感温磁性部材64内の磁位の低い部分から集中して磁心片84aに向けて発生する。そのため、定着ベルト61の導電発熱層612を厚さ方向に横切る磁力線Hは、感温磁性部材64から集中して磁心片84aに向かうこととなり、領域R3での磁束密度も他の領域の磁束密度と比較して高くなる。
【0047】
磁力線Hが厚さ方向に横切る定着ベルト61の導電発熱層612では、単位面積当たりの磁力線Hの数(磁束密度)の変化量に比例した渦電流Iが発生する。それにより、図9に示したように、磁束密度の変化量が他の領域よりも大きい領域R1、R2および領域R3では、他の領域よりも大きな渦電流Iが発生する。導電発熱層612に生じた渦電流Iは、導電発熱層612の固有抵抗値Rと渦電流Iの二乗の積であるジュール熱W(W=I2R)を発生させる。それにより、他の領域よりも大きな渦電流Iが発生した導電発熱層612の領域R1、R2およびR3では、他の領域よりも大きなジュール熱Wが発生する。
このように、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合には、磁力線Hが導電発熱層612を横切る領域R1、R2や領域R3において他の領域よりも大きな熱が発生する。それにより、定着ベルト61は加熱される。
【0048】
本実施の形態の定着ユニット60では、定着ベルト61の内周面に接触させて感温磁性部材64を配置している。それにより、励磁コイル82にて生成された磁力線Hを内部に誘導する磁心84(磁心片84a)と、定着ベルト61を厚さ方向に横切って透過した磁力線Hを内部に誘導する感温磁性部材64とが近接した構成を実現している。そのため、IHヒータ80(励磁コイル82)により生成された交流磁界は、磁路が短いループを形成するので、磁路内での磁束密度や磁気結合度は高まる。それにより、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合、定着ベルト61にはさらに効率的に熱が発生する。
【0049】
また、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度よりも高い温度範囲にある場合には、感温磁性部材64の温度も透磁率変化開始温度より高くなるため、感温磁性部材64の比透磁率が低下する。そのため、IHヒータ80の励磁コイル82により生成された交流磁界の磁力線Hは、感温磁性部材64を容易に透過するように変化する。それにより、励磁コイル82により生成された交流磁界の磁力線Hは、磁心84(磁心片84a)から定着ベルト61に向けて拡散するように放射され、感温磁性部材64を透過して誘導部材66に到達するようになる。
【0050】
一方、感温磁性部材64を透過した磁力線Hが到達した誘導部材66では、磁力線Hを打ち消す方向の磁力線を生じさせる渦電流が発生する。そして、誘導部材66にて発生した渦電流により生じた磁力線と、感温磁性部材64を透過して誘導部材66に到達した磁力線Hとが打ち消し合うことになる。
そのため、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度を超える温度範囲にある場合には、導電発熱層612を厚さ方向に横切る磁力線Hの磁束密度が減少することとなる。それにより、磁力線Hが厚さ方向に横切る導電発熱層612に発生する渦電流Iは減り、定着ベルト61に発生するジュール熱Wは減少する。これにより、定着ベルト61の温度上昇が抑制される。
【0051】
また、感温磁性部材64を透過して誘導部材66に到達した磁力線Hの一部は、誘導部材66の内部に誘導される。磁力線Hが誘導部材66の内部に誘導されるようになると、定着ベルト61の導電発熱層612より渦電流Iの流れやすい誘導部材66のほうに多くの渦電流Iが流れる。そのため、導電発熱層612で流れる渦電流Iの量はさらに抑制され、定着ベルト61の温度上昇がさらに抑制されることになる。
【0052】
その後、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度よりも低くなると、感温磁性部材64の温度も透磁率変化開始温度よりも低くなるため、感温磁性部材64は再び強磁性に変化する。これにより、磁力線Hが再び感温磁性部材64の内部に誘導されるため、定着ベルト61の導電発熱層612に渦電流Iが多く流れるようになる。そのため、定着ベルト61が再び加熱されるようになる。
【0053】
ここで、図7および図8に示すように、本実施の形態のIHヒータ80では、磁心84(図6参照)は、励磁コイル82の長手方向(定着ベルト61の幅方向)に亘って並んで形成される複数の磁心片84aから構成されている。
本実施の形態においては、回転する定着ベルト61のうち、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向する部位を通過する領域を第1領域S1と呼び、回転する定着ベルト61のうち、第1領域S1と隣接して設けられ、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向しない部位を通過する領域を第2領域S2と呼ぶ。したがって、図7に示すように、本実施の形態の定着ベルト61においては、定着ベルト61の幅方向に、第1領域S1と第2領域S2とが交互に並んで存在することとなる。なお、図8には、定着ベルト61に設定される第1領域S1と対応する領域および第2領域S2と対応する領域を示している。
【0054】
上述したように、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合には、磁力線Hは、磁心84(磁心片84a)から放出され、定着ベルト61の導電発熱層612を横切り感温磁性部材64を通過した後、再び磁心84(磁心片84a)に向かうことになる。したがって、定着ベルト61のうち、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向する部位を通過する第1領域S1の方が、励磁コイル82を介して磁心片84aと対向しない部位を通過する第2領域S2と比較して、導電発熱層612に磁力線Hが集中し、磁束密度が高くなりやすい。そして、定着ベルト61の導電発熱層612では、第2領域S2と比較して第1領域S1で渦電流Iが生じやすくなり、ジュール熱Wが発生しやすくなる。
これにより、定着ベルト61では、第2領域S2と比較して第1領域S1のほうが温度上昇しやすいため、定着ベルト61において、第1領域S1と第2領域S2との間で温度むらが生じやすくなる傾向がある。
【0055】
<定着ベルトにおける温度むらの発生を抑制する構成の説明>
この場合に定着ベルト61において温度むらの発生を抑制するためには、隣接する磁心片84a同士の間隔を狭くして励磁コイル82の長手方向に亘って磁心片84aを敷き詰めるように配置することで、磁心84を形成する構成や、磁心84を励磁コイル82の長手方向に亘って一体的に形成する構成等を採用することが挙げられる。しかし、このような構成では、IHヒータ80全体の重量が大きくなり、また製造コストも高価なものとなる。また、磁心84をフェライトで形成する場合には、成形後の熱処理によって磁心84の形状にばらつきが生じ易く、磁心84の寸法精度を高めることが困難である。そのため、磁心片84aを励磁コイル82の長手方向に亘って敷き詰めることで磁心84を形成したり、磁心84を励磁コイル82の長手方向に亘って一体構成としたりする場合には、励磁コイル82の長手方向に亘って、磁心84と励磁コイル82との間隔のばらつきが大きくなりやすい。その結果、定着ベルト61に供給する磁力線が不均一となって、定着ベルト61の発熱量においても、定着ベルト61の幅方向においてばらつきが生じ、定着ベルト61に温度むらが生じる懸念がある。
【0056】
そこで、本実施の形態の定着ユニット60では、定着ベルト61の内周側に設けられる誘導部材66において、定着ベルト61における第1領域S1が通過する部位の熱容量を、定着ベルト61における第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくすることで、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制している。
【0057】
上述したように、感温磁性部材64は発熱体としても機能し、接触して配置される定着ベルト61に対して熱を供給して、定着ベルト61での発熱量を補助する。
すなわち、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下であり、感温磁性部材64が強磁性を呈する状態であっても、IHヒータ80からの磁力線Hの中には、感温磁性部材64を厚さ方向に横切る磁力線Hが存在する。それにより、感温磁性部材64の内部には弱い渦電流Iが発生し、感温磁性部材64自身も発熱する。その場合に、本実施の形態の感温磁性部材64では、スリット等の渦電流Iを抑制する機構を設けず、積極的に感温磁性部材64が発熱するように構成している。そして、円弧形状の感温磁性部材64が同様に円弧形状の内周面をもった定着ベルト61と大きな面積領域において接触するように配置して、感温磁性部材64にて発生した熱が定着ベルト61に伝熱するように構成している。それにより、感温磁性部材64は、定着ベルト61に対して熱を供給する。
またその際に、感温磁性部材64と接触して配置される誘導部材66には、感温磁性部材64にて発生した熱が伝導され、誘導部材66は、その熱を蓄える蓄熱材としての機能を有する。さらに、誘導部材66は、感温磁性部材64から蓄えた熱を、感温磁性部材64を介して定着ベルト61に供給する。
【0058】
誘導部材66から感温磁性部材64を介して定着ベルト61に供給される熱量は、感温磁性部材64に接して設けられる誘導部材66の熱容量に依存する。すなわち、誘導部材66の熱容量が大きいほど、感温磁性部材64にて発生した熱のうち誘導部材66にて蓄えられる熱量が多くなるため、それに伴って感温磁性部材64にて発生した熱のうち定着ベルト61に供給される熱量が少なくなる。逆に、誘導部材66の熱容量が小さいほど、感温磁性部材64にて発生した熱のうち誘導部材66にて蓄えられる熱量が少なくなるため、感温磁性部材64にて発生した熱のうち定着ベルト61に供給される熱量が多くなる。
したがって、本実施の形態の定着ユニット60では、定着ベルト61の内周側に設けられる誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2と比較して、導電発熱層612でジュール熱Wが発生しやすく温度上昇しやすい定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくすることで、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制している。
【0059】
ここで、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向に亘って一体的に構成されるとともに、定着ベルト61の幅方向に亘って同一の非磁性金属材料にて形成されている。したがって、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の誘導部材66の体積を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の誘導部材66の体積よりも大きくすることで、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくすることが可能になる。
なお、本実施の形態の説明において、「体積」とは、誘導部材66における、定着ベルト61の幅方向に沿った単位長さ当たりの体積をいうものとする。同様に、「熱容量」とは、誘導部材66における、定着ベルト61の幅方向に沿った単位長さ当たりの熱容量をいうものとする。
【0060】
続いて、本実施の形態において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を、誘導部材66のうち定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくするための構成について説明する。
本実施の形態の誘導部材66は、図7に示すように、感温磁性部材64の内周面に倣った形状で形成されている。そして、誘導部材66の外周面は、感温磁性部材64の内周面に接触して配置される。また、本実施の形態においては、誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向に亘って一体的に構成されている。
さらに、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位と第2領域S2が通過する部位とで、厚さが等しくなるように構成される。
さらにまた、図7および図8に示すように、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、定着ベルト61の移動方向上流側に切欠きが形成されている。これにより、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが第1の長さとなる長径部66aを有し、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが第1の長さよりも短い第2の長さとなる短径部66bを有している。
【0061】
本実施の形態の誘導部材66は、上記構成を有することで定着ベルト61の第1領域S1が通過する長径部66aの方が、定着ベルト61の第2領域S2が通過する短径部66bよりも体積が大きくなる。
これにより、本実施の形態では、誘導部材66において定着ベルト61の第1領域S1が通過する長径部66aの方が、定着ベルト61の第2領域S2が通過する短径部66bよりも熱容量が大きくなる。したがって、本構成を有さない場合と比較して、誘導部材66の長径部66aから定着ベルト61の第1領域S1に供給される熱量の方が、誘導部材66の短径部66bから定着ベルト61の第2領域S2に供給される熱量よりも小さくなる。
以上より、本実施の形態では、本構成を有さない場合と比較して、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおいて温度むらが発生するのを抑制することが可能になる。
【0062】
また、図7および図8に示すように、本実施の形態の感温磁性部材64は、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、定着ベルト61の移動方向上流側に切欠きが形成されている。これにより、本実施の形態の感温磁性部材64は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが第3の長さとなる長径部64aを有し、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが第3の長さよりも短い第4の長さとなる短径部64bを有している。
【0063】
そして、本実施の形態では、感温磁性部材64の内周側に誘導部材66の外周が接触して配置されるとともに、感温磁性部材64の短径部64bと誘導部材66の短径部66bとが重なり、感温磁性部材64の長径部64aと誘導部材66の長径部66aとが重なって配置される。これにより、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位には、感温磁性部材64および誘導部材66の双方が切欠かれた切欠き部69が形成されている。
なお、本実施の形態の定着ユニット60においては、誘導部材66の長径部66aと感温磁性部材64の長径部64aとにより、第2磁路形成部材の第1部位が構成され、誘導部材66の短径部66bと感温磁性部材64の短径部64bとにより、第2磁路形成部材の第2部位が構成されている。
【0064】
本実施の形態では、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、感温磁性部材64と誘導部材66との双方を切欠いて形成される切欠き部69を有することで、この切欠き部69に、定着ベルト61の温度を検知するサーミスタ(図示せず)や、定着ベルト61の温度が異常に上昇した場合に定着ユニット60への電力の供給を遮断するサーモスイッチ(図示せず)を設けることができる。これにより、切欠き部69以外にサーミスタやサーモスイッチを設置した場合と比較して、定着ユニット60の省スペース化を図ることが可能になる。また、本実施の形態では、サーミスタやサーモスイッチを設置するために、切欠き部69以外に感温磁性部材64および誘導部材66をさらに切欠く必要がなく、サーミスタやサーモスイッチを設置するために感温磁性部材64および誘導部材66を切欠いたことによる、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制することが可能になる。
【0065】
さらに、本実施の形態では、磁心片84aにおける定着ベルト61の移動方向に沿った長さが、感温磁性部材64の長径部64aおよび誘導部材66の長径部66aにおける定着ベルト61の移動方向に沿った長さよりも短い。そして、磁心片84aにおける定着ベルト61の移動方向に沿った両端部は、ともに、感温磁性部材64の長径部64aおよび誘導部材66の長径部66aにおける定着ベルト61の移動方向に沿った両端部よりも内側に設けられる。
これにより、磁心片84aから放射される磁力線H(図9参照)がIHヒータ80周辺へ漏洩するのを抑制でき、力率が向上する。さらには、定着ユニット60を構成する金属製部材への電磁誘導を抑え、定着ベルト61(導電発熱層612)での発熱効率を高めることが可能になる。
【0066】
なお、本実施の形態では、感温磁性部材64において長径部64aおよび短径部64bを形成するとともに、誘導部材66において長径部66aおよび短径部66bを形成した。しかし、例えば、感温磁性部材64において、長径部64aおよび短径部64bを形成せずに、誘導部材66のみに長径部66aおよび短径部66bを形成してもよい。
また、本実施の形態では、誘導部材66における定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、定着ベルト61の移動方向上流側を切欠くことで、誘導部材66に長径部66aおよび短径部66bを形成した。しかし誘導部材66を切欠く場所はこれに限られず、誘導部材66における定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において、定着ベルト61の移動方向下流側を切欠いても良いし、定着ベルト61の移動方向上流側および下流側の双方を切欠くことで、長径部66aおよび短径部66bを形成しても良い。
【0067】
さらに、本実施の形態では、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において誘導部材66を矩形状に切欠くことで、誘導部材66において矩形状の長径部66aおよび矩形状の短径部66bを形成した。しかし、誘導部材66の長径部66aの形状および短径部66bの形状は矩形に限られず、三角形状や半円形状等、あらゆる形状を採用することができる。
また、本実施の形態では、誘導部材66の長径部66aにおける、定着ベルト61の幅方向に沿った幅と、定着ベルト61の第1領域S1における、定着ベルト61の幅方向に沿った幅とを等しくし、誘導部材66の短径部66bにおける、定着ベルト61の幅方向に沿った幅と、定着ベルト61の第2領域S2における、定着ベルト61の幅方向に沿った幅とを等しくした。しかし、誘導部材66における長径部66aおよび短径部66bの幅はこれに限られない。例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位のうち、少なくとも一部の部位に短径部66bが形成されていれば足りる。
【0068】
また、本実施の形態においては、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位において誘導部材66を切欠くことで、誘導部材66に長径部66aと短径部66bとを形成した。しかし、誘導部材66に長径部66aおよび短径部66bを形成する方法はこれに限られない。例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の材料を引き伸ばす等の方法で、誘導部材66に長径部66aと短径部66bとを形成してもよい。
【0069】
さらに、本実施の形態では、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位よりも第2領域S2と対向する部位の熱容量を小さくするために、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位に長径部66aを形成し、定着ベルト61の第2領域S2と対向する部位に短径部66bを形成した。しかし、例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2と対向する部位に孔を設けることで、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位よりも第2領域S2と対向する部位の体積を小さくし、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位よりも第2領域S2と対向する部位の熱容量を小さくしても良い。
【0070】
[実施の形態2]
続いて、本発明の実施の形態2について説明する。
実施の形態1では、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1と対向する部位に長径部66aを形成し、定着ベルト61の第2領域S2と対向する部位に短径部66bを形成し、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の体積を第2領域S2が通過する部位の体積よりも大きくすることで、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくし、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制する構成について説明した。
本実施の形態では、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位と第2領域S2が通過する部位とで、誘導部材66の定着ベルト61の移動方向に沿った長さが等しくなるように構成するとともに、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位と第2領域S2が通過する部位とで、誘導部材66の厚さを異ならせることで、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制する構成について説明する。
なお、実施の形態1と同様な構成については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0071】
図10は、本実施の形態におけるIHヒータ80(図7参照)、定着ベルト61、感温磁性部材64および誘導部材66の積層構造を説明する斜視図であり、図11は、本実施の形態におけるIHヒータ80(図7参照)、定着ベルト61、感温磁性部材64および誘導部材66の積層構造を説明する断面図である。図11は、図3のXI−XI断面に相当する。なお、図10においては、シールド85の記載を省略し、図11においては、支持体81、弾性支持部材83およびシールド85の記載を省略している。
【0072】
図10に示すように、本実施の形態の感温磁性部材64は、定着ベルト61の内周面に倣った円弧形状で形成され、感温磁性部材64の外周面は、定着ベルト61の内周面に接触して設けられる。
また、本実施の形態の誘導部材66は、図10に示すように、感温磁性部材64の内周面に倣った形状で形成されている。そして、誘導部材66の外周面は、感温磁性部材64の内周面に接触して設けられる。さらに、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向に亘って一体的に構成されるとともに、定着ベルト61の幅方向に亘って同一の非磁性金属にて形成されている。
【0073】
本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位と第2領域S2が通過する部位とで、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが等しくなるように構成される。
さらに、図11に示すように、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿って感温磁性部材64と接触する側とは反対側に突出することで、厚さが第1の厚さとなる肉厚部66cを有し、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位に、定着ベルト61の移動方向に沿って延びるとともに、厚さが第1の厚さよりも薄い第2の厚さとなる肉薄部66dを有している。
本実施の形態の定着ユニット60では、誘導部材66における肉厚部66cと感温磁性部材64のうち誘導部材66の肉厚部66cに接する部位とにより第1部位が構成され、誘導部材66における肉薄部66dと感温磁性部材64のうち誘導部材66の肉薄部66dに接する部位とにより第2部位が構成されている。
【0074】
本実施の形態の誘導部材66では、肉厚部66cと肉薄部66dとで、定着ベルト61の移動方向に沿った長さが等しくなるように形成されるため、本実施の形態の誘導部材66は、上記構成を有することで、肉厚部66cの方が肉薄部66dよりも体積が大きくなる。
これにより、本実施の形態では、誘導部材66において肉厚部66cの方が肉薄部66dよりも熱容量が大きくなるため、本構成を有さない場合と比較して、誘導部材66の肉厚部66cから定着ベルト61の第1領域S1に供給される熱量の方が、誘導部材66の肉薄部66dから定着ベルト61の第2領域S2に供給される熱量よりも小さくなる。
したがって、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおいて温度むらが発生するのを抑制することが可能になる。
【0075】
なお、本実施の形態の誘導部材66において、肉厚部66cの厚さは、例えば0.8〜1.2mmであり、肉薄部66dの厚さは、例えば0.4〜0.6mmである。また、本実施の形態の誘導部材66は、定着ベルト61の幅方向の全域に亘って、感温磁性部材64よりも厚く形成されている。
【0076】
ここで、誘導部材66において肉厚部66cおよび肉薄部66dを形成する方法としては、例えば、絞りプレス加工による方法や、厚さが定着ベルト61の幅方向に亘って第1の厚さになるように形成された基部に対して、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位を削ることで、肉厚部66cと肉薄部66dとを形成する方法等が挙げられる。
また、厚さが定着ベルト61の幅方向に亘って第2の厚さに形成された基部に対して、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位に、他の部材を接着することで肉厚部66cと肉薄部66dとを形成してもよい。この場合、密着性等の観点から、誘導部材66の基部と、基部に接着する他の部材とは同一の材料から構成されることが好ましい。
【0077】
また、本実施の形態では、誘導部材66の肉厚部66cにおける、定着ベルト61の幅方向に沿った幅と、定着ベルト61の第1領域S1における、定着ベルト61の幅方向に沿った幅とを等しくし、誘導部材66の肉薄部66dにおける、定着ベルト61の幅方向に沿った幅と、定着ベルト61の第2領域S2における、定着ベルト61の幅方向に沿った幅とを等しくした。しかし、誘導部材66における肉厚部66cおよび肉薄部66dの幅はこれに限られない。例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位のうち、少なくとも一部の部位に肉厚部66cが形成されていれば足りる。
【0078】
実施の形態1では、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位よりも、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位における、定着ベルト61の進行方向に沿った長さを長くすることで、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおける温度むらの発生を抑制する構成について説明した。また、実施の形態2では、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位よりも、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位における厚さを厚くすることで、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおける温度むらの発生を抑制する構成について説明した。
しかし、誘導部材66において定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位を、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくする方法はこれらの形態に限られない。例えば、実施の形態1の構成と実施の形態2の構成とを併用してもよい。具体的には、誘導部材66において、定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位を切欠くとともに、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の厚みを定着ベルト61の第2領域S2が通過する部位よりも厚く形成することで、定着ベルト61における温度むらの発生を抑制することも可能である。
【0079】
また、実施の形態1および実施の形態2では、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位における体積を、第2領域S2が通過する部位における体積よりも大きくすることで、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおける温度むらの発生を抑制する構成について説明した。しかし、例えば、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位を第1の材料で形成し、第2領域S2が通過する部位を第1の材料よりも単位体積当たりの熱容量が小さい第2の材料で形成することで、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の熱容量を第2領域S2が通過する部位の熱容量よりも大きくし、定着ベルト61の第1領域S1と第2領域S2とにおける温度むらの発生を抑制することも可能である。このような構成を採用する場合、誘導部材66において、定着ベルト61の第1領域S1が通過する部位の体積と第2領域S2が通過する部位の体積とを等しくしても良いし、第1領域S1が通過する部位の体積を第2領域S2が通過する部位の体積よりも小さくしても良い。
【符号の説明】
【0080】
1…画像形成装置、60…定着ユニット、61…定着ベルト、62…加圧ロール、64…感温磁性部材、66…誘導部材、69…切欠き部、80…IHヒータ、82…励磁コイル、84…磁心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状の形状を備えるとともに導電層を有し、回転可能に設けられ、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、
前記定着部材と対向して設けられ、交流電流が供給されることで、当該定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記磁界生成部材を介して前記定着部材に対向して設けられ、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する複数の第1磁路形成部材と、
前記定着部材を介して前記磁界生成部材に対向して設けられ、複数の前記第1磁路形成部材とともに、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する第2磁路形成部材とを備え、
複数の前記第1磁路形成部材は、それぞれが前記定着部材の回転方向に沿って延びるとともに、隣接する当該第1磁路形成部材との間に間隔を有するように、当該定着部材の回転方向と交差する当該定着部材の幅方向に並んで設けられ、
前記定着部材は、前記磁界生成部材を介して前記第1磁路形成部材と対向する部位を通過する第1領域と、当該第1領域と隣接して設けられ、当該磁界生成部材を介して当該第1磁路形成部材と対向しない部位を通過する第2領域とを有し、
前記第2磁路形成部材は、前記定着部材の前記第1領域と対向する第1部位と、当該定着部材の前記第2領域と対向し、当該第1部位よりも熱容量が低い第2部位とを有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における体積が、前記第2部位における体積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における前記定着部材の回転方向に沿った長さが、前記第2部位における当該定着部材の回転方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2磁路形成部材は、外周面が前記定着部材の内周面に接触して配置され、磁気特性が温度に応じて強磁性と常磁性との間で変化し、磁気特性が強磁性の場合に、前記磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成し、磁気特性が常磁性の場合に、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を透過させる感温磁性部材と、外周面が当該感温磁性部材の内周面に接触して配置され、当該感温磁性部材の磁気特性が常磁性の場合に、当該感温磁性部材を透過した交流磁界を誘導する誘導部材とを備え、
前記感温磁性部材および前記誘導部材は、前記第2部位に、前記定着部材の回転方向に沿った切欠きを有することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項5】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における厚さが、前記第2部位における厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項6】
前記第2磁路形成部材は、外周面が前記定着部材の内周面に接触して配置され、磁気特性が温度に応じて強磁性と常磁性との間で変化し、磁気特性が強磁性の場合に、前記磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成し、磁気特性が常磁性の場合に、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を透過させる感温磁性部材と、外周面が当該感温磁性部材の内周面に接触して配置され、当該感温磁性部材の磁気特性が常磁性の場合に、当該感温磁性部材を透過した交流磁界を誘導する誘導部材とを備え、
前記誘導部材は、前記第1部位において、前記感温磁性部材の内周面と接する面とは反対側に、前記第2部位よりも突出する凸部を有することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項7】
トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段によって形成された前記トナー像を記録材上に転写する転写手段と、
前記記録材上に転写された前記トナー像を当該記録材に定着する定着手段とを有し、
前記定着手段は、
無端帯状の形状を備えるとともに導電層を有し、回転可能に設けられ、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、
前記定着部材と対向して設けられ、交流電流が供給されることで、当該定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記磁界生成部材を介して前記定着部材に対向して設けられ、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する複数の第1磁路形成部材と、
前記定着部材を介して前記磁界生成部材に対向して設けられ、複数の前記第1磁路形成部材とともに、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する第2磁路形成部材とを備え、
複数の前記第1磁路形成部材は、それぞれが前記定着部材の回転方向に沿って延びるとともに、隣接する当該第1磁路形成部材との間に間隔を有するように当該定着部材の回転方向と交差する当該定着部材の幅方向に並んで設けられ、
前記定着部材は、前記磁界生成部材を介して前記第1磁路形成部材と対向する部位を通過する第1領域と、当該第1領域と隣接して設けられ、当該磁界生成部材を介して当該第1磁路形成部材と対向しない部位を通過する第2領域とを有し、
前記第2磁路形成部材は、前記定着部材の前記第1領域と対向する第1部位と、当該定着部材の前記第2領域と対向し、当該第1部位よりも熱容量が低い第2部位とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における体積が、前記第2部位における体積よりも大きいことを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における前記定着部材の回転方向に沿った長さが、前記第2部位における当該定着部材の回転方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における厚さが、前記第2部位における厚さよりも厚いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置。
【請求項1】
無端帯状の形状を備えるとともに導電層を有し、回転可能に設けられ、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、
前記定着部材と対向して設けられ、交流電流が供給されることで、当該定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記磁界生成部材を介して前記定着部材に対向して設けられ、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する複数の第1磁路形成部材と、
前記定着部材を介して前記磁界生成部材に対向して設けられ、複数の前記第1磁路形成部材とともに、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する第2磁路形成部材とを備え、
複数の前記第1磁路形成部材は、それぞれが前記定着部材の回転方向に沿って延びるとともに、隣接する当該第1磁路形成部材との間に間隔を有するように、当該定着部材の回転方向と交差する当該定着部材の幅方向に並んで設けられ、
前記定着部材は、前記磁界生成部材を介して前記第1磁路形成部材と対向する部位を通過する第1領域と、当該第1領域と隣接して設けられ、当該磁界生成部材を介して当該第1磁路形成部材と対向しない部位を通過する第2領域とを有し、
前記第2磁路形成部材は、前記定着部材の前記第1領域と対向する第1部位と、当該定着部材の前記第2領域と対向し、当該第1部位よりも熱容量が低い第2部位とを有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における体積が、前記第2部位における体積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における前記定着部材の回転方向に沿った長さが、前記第2部位における当該定着部材の回転方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2磁路形成部材は、外周面が前記定着部材の内周面に接触して配置され、磁気特性が温度に応じて強磁性と常磁性との間で変化し、磁気特性が強磁性の場合に、前記磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成し、磁気特性が常磁性の場合に、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を透過させる感温磁性部材と、外周面が当該感温磁性部材の内周面に接触して配置され、当該感温磁性部材の磁気特性が常磁性の場合に、当該感温磁性部材を透過した交流磁界を誘導する誘導部材とを備え、
前記感温磁性部材および前記誘導部材は、前記第2部位に、前記定着部材の回転方向に沿った切欠きを有することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項5】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における厚さが、前記第2部位における厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項6】
前記第2磁路形成部材は、外周面が前記定着部材の内周面に接触して配置され、磁気特性が温度に応じて強磁性と常磁性との間で変化し、磁気特性が強磁性の場合に、前記磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成し、磁気特性が常磁性の場合に、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を透過させる感温磁性部材と、外周面が当該感温磁性部材の内周面に接触して配置され、当該感温磁性部材の磁気特性が常磁性の場合に、当該感温磁性部材を透過した交流磁界を誘導する誘導部材とを備え、
前記誘導部材は、前記第1部位において、前記感温磁性部材の内周面と接する面とは反対側に、前記第2部位よりも突出する凸部を有することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項7】
トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段によって形成された前記トナー像を記録材上に転写する転写手段と、
前記記録材上に転写された前記トナー像を当該記録材に定着する定着手段とを有し、
前記定着手段は、
無端帯状の形状を備えるとともに導電層を有し、回転可能に設けられ、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、
前記定着部材と対向して設けられ、交流電流が供給されることで、当該定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記磁界生成部材を介して前記定着部材に対向して設けられ、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する複数の第1磁路形成部材と、
前記定着部材を介して前記磁界生成部材に対向して設けられ、複数の前記第1磁路形成部材とともに、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界の磁路を形成する第2磁路形成部材とを備え、
複数の前記第1磁路形成部材は、それぞれが前記定着部材の回転方向に沿って延びるとともに、隣接する当該第1磁路形成部材との間に間隔を有するように当該定着部材の回転方向と交差する当該定着部材の幅方向に並んで設けられ、
前記定着部材は、前記磁界生成部材を介して前記第1磁路形成部材と対向する部位を通過する第1領域と、当該第1領域と隣接して設けられ、当該磁界生成部材を介して当該第1磁路形成部材と対向しない部位を通過する第2領域とを有し、
前記第2磁路形成部材は、前記定着部材の前記第1領域と対向する第1部位と、当該定着部材の前記第2領域と対向し、当該第1部位よりも熱容量が低い第2部位とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における体積が、前記第2部位における体積よりも大きいことを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における前記定着部材の回転方向に沿った長さが、前記第2部位における当該定着部材の回転方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第2磁路形成部材は、前記第1部位における厚さが、前記第2部位における厚さよりも厚いことを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−41223(P2013−41223A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179879(P2011−179879)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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