説明

定着装置及びこれを搭載した画像形成装置

【課題】加熱ローラ等の損傷を確実に回避ができる定着装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に画像を定着するための定着装置(14)であって、加熱部材(45,48)の外面に沿って配置され、加熱部材を誘導加熱するための磁界を発生させるコイル(52)と、コイルを挟んで加熱部材の反対側に配置され、コイルの周囲にて磁路を形成するコア部(54)と、加熱部材の外面に沿って配置され、コイルを保持するコイル保持部(53)と、コイルを冷却するべくコイル保持部と協働してダクトをなしており、加熱部材の外面を覆うとともに、コイル保持部に対して脱着可能に構成されたカバー部材(71)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー画像を担持した記録媒体を定着ローラ対や加熱ベルトとローラとのニップ間に通しながら、未定着トナーを加熱溶融させて用紙に定着させる定着装置及びこれを搭載した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置においては近年、定着装置でのウォームアップタイムの短縮や省エネルギー等の要望から、熱容量を少なく設定できるベルト方式が注目されている。また、近年、急速加熱や高効率加熱の可能性をもった電磁誘導加熱方式(IH)が注目されており、カラー画像を定着させる際の省エネルギー化の観点から、電磁誘導加熱をベルト方式と組み合わせたものが多数製品化されている。ベルト方式と電磁誘導加熱とを組み合わせる場合、コイルのレイアウト及び冷却の容易さ、さらにはベルトを直接加熱できるメリット等から、ベルトの外側に電磁誘導のための磁界を発生させる装置を配置する構成が多く採用されている(いわゆる外包IH)。
【0003】
上記の電磁誘導加熱方式においては、コイル自身の電気抵抗、加熱ローラや加熱ベルトからの熱伝導によってコイルが昇温し、この加熱ローラ等の加熱効率の低下を招く。一方、このコイルの他、加熱ローラ等も併せて冷却されると、やはり加熱ローラ等の加熱効率の低下を招く。つまり、コイルを単に冷却すると、コイルの冷却効率と加熱ローラ等の加熱効率とがトレードオフの関係になる。
【0004】
そのため、このコイルを保持するコイルボビンを中空に形成し、この中空部分に空気を供給してコイルを空冷する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−9169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、定着装置が、コイル及びコイルボビン側と、加熱ローラ側とで一体形成されていた場合に、仮に定着装置内の一部品に交換を要する不具合が生ずると定着装置全体が交換され、交換を必要としない部品も交換対象になるので、コストの低廉化を図れないとの懸念がある。一方、コイル及びコイルボビン側と加熱ローラ側とを別個に構成しておけば、当該懸念は解消される。
【0007】
しかしながら、加熱ローラ側をコイル及びコイルボビン側から脱着可能に構成しても、この加熱ローラ等が剥き出しであれば、当該加熱ローラ側を画像形成装置本体から引き抜く際、作業台に一時保管する際、さらに、この装置本体に押し込む際のいずれの場合にも加熱ローラ等を他の部材などに衝突させて損傷させる可能性があるという問題がある。
【0008】
すなわち、コイル及びコイルボビン側と加熱ローラ側とを単に別個に構成すると、加熱ローラ等の安全性を確保できないので、これを解消するための措置が必要であるが、上記従来の技術ではこの点については格別の配慮がなされていない。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、加熱ローラ等の損傷を確実に回避ができる定着装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1の発明は、記録媒体に画像を定着するための定着装置であって、加熱部材の外面に沿って配置され、加熱部材を誘導加熱するための磁界を発生させるコイルと、コイルを挟んで加熱部材の反対側に配置され、コイルの周囲にて磁路を形成するコア部と、加熱部材の外面に沿って配置され、コイルを保持するコイル保持部と、コイルを冷却するべくコイル保持部と協働してダクトをなしており、加熱部材の外面を覆うとともに、コイル保持部に対して脱着可能に構成されたカバー部材とを具備する。
【0010】
第1の発明によれば、コイルで発生させた磁界により回転する加熱部材を誘導加熱してトナー画像の加熱溶融を行う方式(外包IH)を採用し、コイル、コイル保持部、及びコア部を備えたユニット(以下、IHコイルユニットと称する)と、カバー部材、加熱部材、及び加圧部材を備えたユニット(以下、トナー溶融ユニットと称する)とで構成されている。
【0011】
このIHコイルユニットでは、コイルの発生させる磁界が加熱部材に渦電流を発生させ、磁気誘導加熱を行う一方、磁路内の磁気抵抗が増大して磁界強度が低下すると、加熱部材の発熱量が低下してしまい十分な定着作用を有さなくなる可能性がある。
ここで、本発明によれば、加熱部材がカバー部材に覆われているため、トナー溶融ユニットをIHコイルユニットから脱着可能に構成しても、加熱部材の損傷を確実に回避できるし、トナー溶融ユニットの脱着も容易になり、作業性が向上する。
【0012】
また、コイル保持部とカバー部材とでダクトを形成し、コイルのみを有効に冷却可能になるので、剥き出しの加熱部材も併せて冷却される場合に比して発熱性能の低下も回避できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の構成において、コイル保持部は、加熱部材の外面に沿って配置されたコイル側ダクト面を有し、カバー部材は、コイル側ダクト面に沿って配置されたハウジング側ダクト面を有しており、コイル側ダクト面若しくはハウジング側ダクト面の少なくともいずれか一方には、ダクト内に突出した複数のリブが形成されていることを特徴とする。
【0014】
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、コイル保持部のコイル側ダクト面とカバー部材のハウジング側ダクト面とでダクトを形成すれば、部品点数が少なくて済むし、また、このダクト内には複数のリブが突出していることから、コイルの冷却に供される表面積が大きくなり、コイルの冷却効率が向上する。
【0015】
第3の発明は、第2の発明の構成において、複数のリブは、コイル側ダクト面に略等間隔で形成され、コイルは、このリブに巻きつけられていることを特徴とする。
第3の発明によれば、第2の発明の作用に加えてさらに、コイルをリブに巻きつければ、このコイルのみを直接に冷却でき、コイルの冷却効率がより向上する。さらに、コイル間のピッチが同じになるため、均一な磁界が得られ、この点も発熱性能の向上に寄与する。
【0016】
第4の発明は、第1から第3の定着装置を搭載し、これを用いて画像形成部で形成されたトナー画像を用紙に定着させる画像形成装置であることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、加熱部材の安全性が高められ、且つ、発熱性能を確保して良好なトナー画像が形成される結果、画像形成装置の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コイル保持部とでダクトを形成するカバー部材が加熱部材を覆っており、コイルのみを有効に冷却しつつ、加熱部材の損傷を確実に回避できる定着装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態の画像形成装置の構成を示した概略図である。
【図2】定着ユニットの構造例を示す縦断面図である。
【図3】図2のハウジングの外観斜視図である。
【図4】ダクトの他の構造例を示す図である。
【図5】ダクトのさらに他の構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、一実施形態の画像形成装置1の構成を示した概略図である。画像形成装置1は、例えば外部から入力された画像情報に基づいて記録媒体の一例としての用紙の表面にトナー画像を転写して印刷を行うプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、それらの機能を併せ持つ複合機等としての形態をとることができる。また、以下の実施形態では、記録媒体は用紙に限らず、用紙以外の記録媒体(OHPシートなど)であっても実施可能である。
【0020】
図1に示される画像形成装置1は、例えばタンデム型のカラープリンタである。この画像形成装置1は、内部で用紙にカラー画像を形成(プリント)する四角箱状の装置本体2を備え、この装置本体2の上面部には、カラー画像が印刷された用紙を排出するための排出トレイ3が設けられている。
装置本体2内において、その下部には、用紙を収納する給紙カセット5が配設されている。また、装置本体2内の中央部には、給紙カセット5に収容していない用紙を装置本体2へ供給するスタックトレイ6が配設されている。そして、装置本体2の上部には画像形成部7が設けられており、この画像形成部7は、画像形成装置1と接続されたPC等の上位装置から送信される文字や絵柄などの画像データに基づいて用紙に画像を形成する。
【0021】
図1でみて装置本体2の左部には、給紙カセット5から繰り出された用紙を後述の二次転写部23に搬送する第1の搬送路9が配設されており、装置本体2の右部から左部にかけては、スタックトレイ6から繰り出された用紙を二次転写部23に搬送する第2の搬送路10が配設されている。また、装置本体2内の左上部には、二次転写部23で画像が形成された用紙に対して定着処理を行う定着ユニット(定着装置)14と、定着処理の行われた用紙を排出トレイ3に搬送する第3の搬送路11とが配設されている。
【0022】
給紙カセット5は、装置本体2の外部(例えば図1の手前側)に引き出すことにより用紙の補充を可能にする。この給紙カセット5は収納部16を備えており、この収納部16には、給紙方向のサイズが異なる少なくとも2種類の用紙を選択的に収納可能である。なお、収納部16に収納されている用紙は、給紙ローラ17及び捌きローラ対18により1枚ずつ第1の搬送路9側に繰り出される。
【0023】
スタックトレイ6は、装置本体2の外面にて開閉可能であり、その手差し部19には用紙が1枚ずつ載置されるか、又は複数枚が積載される。なお、手差し部19に載置された用紙はピックアップローラ20及び捌きローラ対21により1枚ずつ第2の搬送路10側に繰り出される。
第1の搬送路9と第2の搬送路10とはレジストローラ対22の手前で合流しており、レジストローラ対22に到達した用紙はここで一旦待機し、スキュー調整とタイミング調整を行った後、二次転写部23に向けて送出される。送出された用紙には、二次転写部23で中間転写ベルト40上のフルカラーのトナー画像が用紙に二次転写される。この後、定着ユニット14でトナー画像が定着された用紙は、必要に応じて第4の搬送路12で反転され、最初とは反対側の面にも二次転写部23でフルカラーのトナー画像が二次転写される。そして、反対面のトナー画像が定着ユニット14で定着された後、第3の搬送路11を通って排出ローラ対24により排出トレイ3に排出される。
【0024】
画像形成部7は、ブラック(B)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)の各トナー画像を形成する4つの画像形成ユニット26〜29を備える他、これら画像形成ユニット26〜29で形成した各色別のトナー画像を重畳して担持する中間転写部30を備えている。
各画像形成ユニット26〜29は、感光体ドラム32と、感光体ドラム32の周面に対向して配設された帯電部33と、帯電部33の感光体ドラム32の回転方向下流側であって感光体ドラム32の周面上の特定位置にレーザビームを照射するレーザ走査ユニット34と、レーザ走査ユニット34からのレーザビーム照射位置の感光体ドラム32の回転方向下流側であって感光体ドラム32の周面に対向して配設された現像部35と、現像部35の感光体ドラム32の回転方向下流側であって感光体ドラム32の周面に対向して配設されたクリーニング部36とを備えている。
【0025】
なお、各画像形成ユニット26〜29の感光体ドラム32は、図示しない駆動モータにより図中の反時計回り方向に回転する。また、各画像形成ユニット26〜29の現像部35には、各現像装置51にブラックトナー、イエロートナー、シアントナー及びマゼンタトナーを含む二成分現像剤がそれぞれ収納されている。
中間転写部30は、画像形成ユニット26の近傍位置に配設された後ローラ38と、画像形成ユニット29の近傍位置に配設された前ローラ39と、後ローラ38と前ローラ39とに跨って配設された中間転写ベルト40と、各画像形成ユニット26〜29の感光体ドラム32における現像部35の感光体ドラム32の回転方向下流側の位置に中間転写ベルト40を介して圧接可能に配設された4つの一次転写ローラ41とを備えている。
【0026】
この中間転写部30では、各画像形成ユニット26〜29の一次転写ローラ41の位置で、中間転写ベルト40上に各色別のトナー画像がそれぞれ重ね合わせて転写されて、最後にはフルカラーのトナー画像となる。
第1の搬送路9や第2の搬送路10は、給紙カセット5やスタックトレイ6から繰り出されてきた用紙を二次転写部23側に搬送するものであり、装置本体2内で所定の位置に配設された複数の搬送ローラ対43と、二次転写部23の手前に配設され、画像形成部7における画像形成動作と給紙動作とのタイミングを取るためのレジストローラ対22とを備えている。
【0027】
定着ユニット14は、画像形成部7でトナー画像が転写された用紙を加熱及び加圧することにより、未定着トナー画像を用紙に定着させる処理を行うものである。定着ユニット14は、例えば加圧ローラ44と定着ローラ(加熱部材)45からなるローラ対を備え、このうち加圧ローラ44が例えば金属製の芯材と弾性体の表層(例えば、シリコンゴム)及び離型層(例えば、FPA)を有するものであり、定着ローラ45が金属製の芯材と弾性体の表層(例えば、シリコンスポンジ)を有するものである。また、定着ローラ45には加熱ベルト(加熱部材)48が巻かれている(図2)。なお、定着ユニット14の詳細な構造についてはさらに後述する。
【0028】
用紙の搬送方向でみて、定着ユニット14の上流側及び下流側にはそれぞれ搬送路47が設けられており(図1)、二次転写部23を通って搬送されてきた用紙は上流側の搬送路47を通じて加圧ローラ44と定着ローラ45との間のニップに導入される。そして、加圧ローラ44及び定着ローラ45間を通過した用紙は下流側の搬送路47を通じて第3の搬送路11に案内される。
【0029】
第3の搬送路11は、定着ユニット14で定着処理の行われた用紙を排出トレイ3に搬送する。このため第3の搬送路11には、適宜位置に搬送ローラ対49が配設されるとともに、その出口には上記の排出ローラ対24が配設されている。
〔定着ユニットの詳細〕
次に、本実施形態の画像形成装置1に適用された定着ユニット14の詳細について説明する。
【0030】
図2は、定着ユニット14の構造例を示す縦断面図である。なお、図2では、画像形成装置1に実装した状態から向きを約90°反時計回りに転回させて示している。したがって、図1中でみて下方から上方への用紙搬送方向は、図2でみると右方から左方となる。つまり、図2の用紙Pは定着ユニット14に搬送される直前の状態である。なお、装置本体2がより大型(複合機等)である場合、図2に示される向きで実装されることもある。また、この他のレイアウトとして、図2に示される状態から左右いずれかに傾斜した姿勢で定着ユニット14が配置される場合もある。
【0031】
本実施例の定着ユニット14は、上記のように加圧ローラ44、定着ローラ45及び加熱ベルト48を備えている。加圧ローラ44は、例えば金属製(例えば、SUS)の芯金上に厚み2〜5mm程度のSiゴム層を形成し、さらにその表層に離型層(例えばFPA)を積層して直径50mm程度のローラとしている。定着ローラ45は、例えば金属製(例えば、SUS)の芯金上に厚み5〜10mm程度のシリコンゴムスポンジ層を積層して直径45mm程度のローラとしている。
【0032】
また、加熱ベルト48は、その基材の厚みが例えば35μm(1μm=1×10−6m)の強磁性材料(例えばNi電鋳基材)であり、その表層に厚み200〜500μm程度の薄膜の弾性層(例えば、シリコンゴム)が形成され、その外面には離型層(例えば、PFA)が形成されており、その発熱温度を例えば150〜200℃の範囲に調整される。なお、加熱ベルト48の表面温度は、加熱ベルト48に接触或いは非接触するタイプの温度センサで測定される。
【0033】
上記のように加圧ローラ44が表層にシリコンスポンジの弾性層を有することから、加熱ベルト48と定着ローラ45との間にはフラットニップが形成される。なお、加圧ローラ44の内側には、図示しないハロゲンヒータが設けられている。
〔IHコイルユニット〕
この他に定着ユニット14は、定着ローラ45及び加熱ベルト48の外側にIHコイルユニット50を備えている(図1には示されていない)。IHコイルユニット50は、誘導加熱コイル(コイル)52をはじめ、この誘導加熱コイル52の周囲にて磁路を形成するべく、フェライト等の強磁性体(比透磁率:1000〜3000程度)で構成されたセンタコアやサイドコア等を有したコア部54から構成されている。
【0034】
〔コイル〕
誘導加熱コイル52は、定着ローラ45及び加熱ベルト48を誘導加熱するための磁界を発生させる。そのため、誘導加熱コイル52は定着ローラ45及び加熱ベルト48の外面に沿う仮想的な円弧面上に配置される。実際には、コイルボビン(コイル保持部)53が配置されており、このコイルボビン53上に誘導加熱コイル52が巻線状に配置される構成である。
【0035】
〔コイル保持部〕
コイルボビン53は、定着ローラ45及び加熱ベルト48の外面に沿う形状に成形されている。図2の姿勢で云えば、水平方向に延びた頂面部分、並びに、定着ローラ45及び加熱ベルト48の外面を覆うように(外面に沿うように)、この頂面部分の両端から広がって下降する斜面部分を有し、これら頂面部分や斜面部分に誘導加熱コイル52をそれぞれ保持し、この斜面部分でコア部54の下端を支持している。なお、コイルボビン53の材質は、耐熱性樹脂(例えばPPS、PET、LCP)であることが好ましく、また、コイル52のコイルボビン53への固定は例えばシリコン系接着剤を用いて行う。
【0036】
より具体的には、本実施例のコイルボビン53は、上述した頂面部分や斜面部分からなる載置面53bを有し、この載置面53bの反対側には同形状のコイル側ダクト面53aを備える。このコイル側ダクト面53aが後述のトナー溶融ユニット70に対峙している(図1には、トナー溶融ユニット70のうち収納される加圧ローラ44や定着ローラ45を示し、後述のハウジング71は示されていない)。また、コイル側ダクト面53aの端面53cには弾性部材が設けられ、トナー溶融ユニット70に密着して係合できる。
【0037】
〔トナー溶融ユニット〕
ところで、本実施例の定着ユニット14は、このIHコイルユニット50とトナー溶融ユニット70とを分離することができ、装置本体2からトナー溶融ユニット70を加圧ローラ44や定着ローラ45の長手方向、つまり、図1,2でみて紙面に直交する方向に向けてスライドできる。これにより、トナー溶融ユニット70が装置本体2から引き抜かれ、IHコイルユニット50は装置本体2に残される。
【0038】
本実施例のトナー溶融ユニット70は箱状のハウジング(カバー部材)71を備え、このハウジング71内に上述した加圧ローラ44や、定着ローラ45及び加熱ベルト48を収納している。
〔カバー部材〕
詳しくは、本実施例のハウジング71は、図2の他、図3にも示される如く、加圧ローラ44や定着ローラ45の長手方向に沿って延びた上カバー72及び下カバー76を備える。
【0039】
この上カバー72は図2でみて下方向に向けた開口を有し、上カバー72が定着ローラ45及び加熱ベルト48を覆う。一方、下カバー76は図2でみて上方向に向けた開口を有しており、加圧ローラ44を覆う。そして、上カバー72の開口及び下カバー76の開口をそれぞれ突き合わせて接合すると、用紙導入口80や用紙排出口82が形成される。また、上カバー72や下カバー76の長手方向の両端は正面84及び背面88でそれぞれ塞がれている(図3)。なお、この図3に示されるように、本実施例の正面84には、トナー溶融ユニット70のスライド移動に供される取手86が設置される。
【0040】
一方、本実施例のハウジング71はコイルボビン53と協働してダクトを構成する。
より具体的には、上カバー72はハウジング側ダクト面73を備え、このハウジング側ダクト面73もまた頂面部分や斜面部分を有しており、コイル側ダクト面53aに沿うように直に対峙する。
【0041】
また、ハウジング側ダクト面73の定着ローラ45の周面に沿った両端部には図3に示すように、その頂面部分に向けて折れ曲がった略く字状の遮蔽腕74が設けられている。詳しくは、この遮蔽腕74は、ハウジング側ダクト面73の斜面部分に一体形成された立設面部分と、この立設面部分に連なってハウジング側ダクト面73の頂面部分に向けて延びた当接面部分とを有する。前者の立設面部分の内側がコイル側ダクト面53aの端面53cに係合し、後者の当接面部分の先端がコア部54の外周面に当接する。これにより、IHコイルユニット50のコイル側ダクト面53aとトナー溶融ユニット70のハウジング側ダクト面73とは所定の間隔で離間できる。そして、この離間によって形成された空隙に対し、図示しないファンを用い、外気を吸入或いは送出によって供給すれば、コイルボビン53はそのコイル側ダクト面53aから冷却されるので、コイルボビン53に担持されたコイル52のみを冷却できる。また、定着ローラ45及び加熱ベルト48は、ダクト78を流れる冷却用空気とはハウジング側ダクト面73を有する上カバー72と定着ローラ45及び加熱ベルト48との間にある熱伝導率の低い空気層79によって隔てられているので、定着ローラ45及び加熱ベルト48が冷却されることは無い。
【0042】
また、これらコイル側ダクト面53a及びハウジング側ダクト面73で形成された空隙は、遮蔽腕74が端面53cを取り囲み、隙間のほとんどないダクト形状になっており、上記ファンで供給された空気の漏れも生じない。
なお、IHコイルユニット50とトナー溶融ユニット70とを分離する場合には、作業者が取手86を利用してハウジング71を図2でみて手前側に向けて引き出すと、遮蔽腕74が端面53cに案内され、トナー溶融ユニット70のみが正面84を先頭にして装置本体2から引き抜かれる。一方、背面88を先頭にしてハウジング71を押し込むと、遮蔽腕74が端面53cに案内され、トナー溶融ユニット70を装置本体2に戻すことができる。
【0043】
〔ダクトの他の構造例〕
ところで、上述のダクトにはフィンの機能が備えられていても良い。
詳しくは、図4に示されたダクトもまた、上記実施例と同様に、IHコイルユニット50のコイル側ダクト面53aとトナー溶融ユニット70のハウジング側ダクト面73とは所定の間隔で離間しているが、当該実施例では、コイル側ダクト面53aに複数のリブ90が加圧ローラ44や定着ローラ45の長手方向に沿って突設されている。これらリブ90は略等間隔で設けられ、コイル側ダクト面53aからハウジング側ダクト面73に向けて突き出ている。なお、この例に替え、リブ90はハウジング側ダクト面73に突設されていても良い。
【0044】
〔ダクトのさらに他の構造例〕
一方、上述のコイル52はダクト内に配置されていても良い。すなわち、図5に示されたダクトは、図4の例と同様に、複数のリブ90がコイル側ダクト面53aに突設されている。しかし、当該実施例では、コイル52が当該リブ90に巻きつけられており、ダクト内の外気がそのままコイル52に当てられている。
【0045】
以上のように、本実施例によれば、誘導加熱コイル52で発生させた磁界により回転する定着ローラ45及び加熱ベルト48を誘導加熱してトナー画像の加熱溶融を行う方式(外包IH)を採用し、誘導加熱コイル52、コイルボビン53、及びコア部54を備えたIHコイルユニット50と、ハウジング71、定着ローラ45及び加熱ベルト48、並びに加圧ローラ44を備えたトナー溶融ユニット70とで構成されている。
【0046】
このIHコイルユニット50では、誘導加熱コイル52の発生させる磁界が定着ローラ45及び加熱ベルト48に渦電流を発生させ、磁気誘導加熱を行う。
ここで、定着ローラ45及び加熱ベルト48がハウジング71に覆われているため、トナー溶融ユニット70をIHコイルユニット50から脱着可能に構成しても、定着ローラ45及び加熱ベルト48の損傷を確実に回避できるし、トナー溶融ユニット70の脱着も容易になり、作業性が向上する。
【0047】
また、コイルボビン53とハウジング71とでダクトを形成し、誘導加熱コイル52のみを有効に冷却可能になるので、定着ローラ45及び加熱ベルト48を剥き出しにした場合に比して、これら定着ローラ45及び加熱ベルト48が冷却されないため、発熱性能の低下も回避できる。
さらに、誘導加熱コイル52の冷却に気体を用いれば、液冷の場合よりもコストの低廉化を図ることができる。
【0048】
さらにまた、コイルボビン53のコイル側ダクト面53aとハウジング71のハウジング側ダクト面73とでダクトを形成すれば、部品点数が少なくて済むし、また、図4,5に示されるように、このダクト内には複数のリブ90が突出していることから、誘導加熱コイル52の冷却に供される表面積が大きくなり、誘導加熱コイル52の冷却効率が向上する。
【0049】
また、図5に示される如く、誘導加熱コイル52をリブ90に巻きつければ、この誘導加熱コイル52のみを直接に冷却でき、誘導加熱コイル52の冷却効率がより向上する。さらに、誘導加熱コイル52間のピッチが同じになるため、均一な磁界が得られ、この点も発熱性能の向上に寄与する。
さらに、定着ローラ45及び加熱ベルト48の安全性が高められ、且つ、発熱性能を確保して良好なトナー画像が形成される結果、画像形成装置1の信頼性が向上する。
【0050】
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施可能である。例えば、コア部54の構成は回転するセンタコア或いは固定のセンタコアのいずれでも良く、適宜に変形可能である。
また、本実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているものの、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
【0051】
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、加熱ローラ等の損傷を確実に回避ができるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0052】
1 プリンタ(画像形成装置)
7 画像形成部
14 定着ユニット(定着装置)
45 定着ローラ(加熱部材)
48 加熱ベルト(加熱部材)
50 IHコイルユニット
52 誘導加熱コイル(コイル)
53 コイルボビン(コイル保持部)
53a コイル側ダクト面
54 コア部
70 トナー溶融ユニット
71 ハウジング(カバー部材)
73 ハウジング側ダクト面
90 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を定着するための定着装置であって、
加熱部材の外面に沿って配置され、前記加熱部材を誘導加熱するための磁界を発生させるコイルと、
前記コイルを挟んで前記加熱部材の反対側に配置され、前記コイルの周囲にて磁路を形成するコア部と、
前記加熱部材の外面に沿って配置され、前記コイルを保持するコイル保持部と、
前記コイルを冷却するべく前記コイル保持部と協働してダクトをなしており、前記加熱部材の外面を覆うとともに、前記コイル保持部に対して脱着可能に構成されたカバー部材と
を具備する定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記コイル保持部は、前記加熱部材の外面に沿って配置されたコイル側ダクト面を有し、前記カバー部材は、前記コイル側ダクト面に沿って配置されたハウジング側ダクト面を有しており、
前記コイル側ダクト面若しくは前記ハウジング側ダクト面の少なくともいずれか一方には、前記ダクト内に突出した複数のリブが形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の定着装置であって、
前記複数のリブは、前記コイル側ダクト面に略等間隔で形成され、前記コイルは、このリブに巻きつけられていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の定着装置を画像形成装置に搭載し、これを用いて画像形成部で形成されたトナー画像を用紙に定着させることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−133614(P2011−133614A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291994(P2009−291994)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】