説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】 単純な構成で安価な構成で定着ベルトへ振動を与えることができる定着装置及びその定着装置を有した画像形成装置の提供を目的としている。
【解決手段】 2以上の張架部材によって張架される定着ベルト43と、定着ベルト43を加熱する加熱手段40aと、張架部材である加熱ローラ40と、張架部材である定着ローラ42と、定着ローラ42と圧接する加圧ローラ41と、加熱ローラ40と定着ローラ42の間であって定着ベルト43の内側に設けられ、回転軸44aが偏心した振動付与ローラ44と、を有し、振動付与ローラ44は、定着ベルト43のうち定着ローラ42と加圧ローラ41の圧接部N1の出口付近に振動を付与することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写紙の分離がしやすく定着品質を損なうことのない定着装置及び、該定着装
置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機等の画像形成装置は、像担持体の表面に原稿画像の画像情報に基づいた静電潜像を形成し、この静電潜像を現像手段によってトナー像として現像し、現像されたトナー像を転写紙に転写して、定着装置によってトナーを加熱し転写紙にトナー像を定着させる構成となっている。
【0003】
定着装置には、内部にハロゲンヒータ等を内蔵した加熱ローラと、加熱ローラに圧接する加圧ローラとによりトナーを定着させるものと、加熱ローラと定着ローラという2つの張架部材の間に無端ベルトである定着ベルトを張架して該ベルトに加圧ローラが当接しているもの及び、加圧ローラ側にも加圧ローラと張架部材によって張架される加圧ベルトを使用し、加圧ベルトと定着ベルトが圧接した構成としているもの等がある。定着ベルトを使用する定着装置は、定着ベルトの熱容量が小さいため、ウォームアップ時間が短くできるほか、加圧ローラ又は加圧ベルトとの圧接幅を広くすることができる等の理由から、カラー画像形成装置に使用されることが多い。
【0004】
上記のような定着装置においては、トナーが加熱されすぎてしまい転写紙が定着ベルトから分離するときにトナーが定着ベルトに残留して、後続の転写紙に汚れとして転写されるホットオフセットと呼ばれる現象が発生することがある。ひどい場合は転写紙が定着ベルトから分離せずに紙詰まりになってしまう。
【0005】
このような現象を防止するために、定着ベルトと加圧ローラ又は加圧ベルトの圧接部の出口下流に、定着ベルトを振動させるための振動付与手段を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。これによって、オフセットが防止できる。
【特許文献1】特開2002−268422(段落0033,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の定着装置は、定着ベルトに振動を与えるために、振動モータや高圧電源又は磁力発生部材といった特殊な装置を用いているため、高コストなものとなっている。
【0007】
そこで、本発明は、単純な構成で安価な構成で定着ベルトへ振動を与えることができる定着装置及びその定着装置を有した画像形成装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の定着装置は、2以上の張架部材によって張架される定着ベルトと、該定着ベルトを加熱する加熱手段と、前記張架部材の一つと圧接する加圧ローラと、前記張架部材の間であって前記定着ベルトの内側に設けられ、回転軸が偏心した振動付与ローラと、を有し、該振動付与ローラは、前記定着ベルトのうち前記張架部材の一つと前記加圧ローラの圧接部の出口付近に振動を付与することを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の定着装置は、前記張架部材のうち一つは、内部に加熱手段を有する加熱ローラであり、前記加圧手段に圧接する張架部材は定着ローラであることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の定着装置は、前記加圧手段は加圧ローラであることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の定着装置は、前記加圧手段は2以上の張架部材によって張架された加圧ベルトであることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の定着装置は、前記定着ベルトは、加熱ローラと定着ローラ及びテンションローラによって張架されており、前記振動付与ローラは前記テンションローラと前記定着ローラとの間に設けられていることを特徴としている。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項6記載の画像形成装置は、像担持体と、該像担持体の表面に静電潜像を形成する画像書き込み装置と、該画像書き込み装置によって形成された静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、現像されたトナー像を転写紙に転写する転写装置と、前記転写紙に転写されたトナー像を、前記転写紙に定着する定着装置と、を有する画像形成装置であって、前記定着装置は、請求項1から5のいずれかに記載の定着装置であることを特徴としている。
【0014】
本発明は以下のような作用を有する。請求項1記載の定着装置は、定着ベルトが、2つ以上の張架部材によって張架され、加熱手段は定着ベルトを加熱する位置に設けられている。また、張架部材の一つと圧接する加圧ローラが有り、定着ベルトの内側であって2つの張架部材との間には回転軸が偏心した振動付与ローラが設けられている。振動付与ローラが回転することで定着ベルトのうち、張架部材と加圧ローラの圧接部の出口付近を振動させる。
【0015】
請求項2記載の定着装置は、加熱ローラの内部に加熱手段が設けられており、加熱ローラと定着ローラによって定着ベルトが張架されている。加圧ローラは定着ローラと圧接しており、振動付与ローラは加熱ローラと加圧ローラの間であって定着ベルトの内側に設けられている。振動付与ローラが回転することで、定着ベルトの加圧ローラと定着ベルトの圧接部の出口付近を振動させることができる。
【0016】
請求項3記載の定着装置は、加圧手段が加圧ローラであることとなっており、請求項4記載の定着装置は、加圧手段は2以上の張架部材によって張架された加圧ベルトである構成となっている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の定着装置によれば、振動付与ローラが回転することで定着ベルトのうち加圧ローラと張架部材との圧接部の出口付近が振動するので、その振動によって転写紙が定着ベルトから分離し、オフセットの防止ができる。
【0018】
請求項4記載の定着装置によれば、加圧手段として加圧ベルトを用いた定着装置の場合にも、オフセットの防止が可能となる。
【0019】
請求項4記載の定着装置によれば、テンションローラがあることにより、振動付与ローラは圧接部の近傍に寄せることが可能となり、転写紙の分離がより確実に行える。
【0020】
請求項6記載の画像形成装置によれば、定着装置として請求項1から4に記載のいずれかの定着装置を使用することで、オフセットの防止ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明を、図面を基に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置の構成を示す図である。図1に示すカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置であり、原稿自動搬送手段30、画像読取装置60、画像書き込み装置3Y,3M,3C,3K、像担持体1Y,1M,1C,1K、帯電装置2Y,2M,2C,2K、現像装置4Y,4M,4C,4K、定着装置24、ベルト状の中間転写体6、給紙手段21A,21B,21C及び、搬送系22等を有するものである。
【0022】
原稿自動搬送手段30は両面又は片面の原稿dを自動搬送する手段である。画像読取装置60は、移動式光学系により画像情報が読み取られる装置で、原稿載置台上から給送される多数枚の原稿dの内容を、3枚の可動ミラー60Cで反射し、集光レンズ60BによりCCDからなる撮像素子60Aに結像して読み取る。
【0023】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、像形成体として像担持体1Yの周囲に配置された帯電装置2Y、画像書き込み装置3Y、現像装置4Y及びクリーニング装置8Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、像形成体としての像担持体1M、帯電装置2M、画像書き込み装置3M、現像装置4M及びクリーニング装置8Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、像形成体としての像担持体1C、帯電装置2C、画像書き込み装置3C、現像装置4C及びクリーニング装置8Cを有し、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、像形成体としての像担持体1K、帯電装置2K、画像書き込み装置3K、現像装置4K及びクリーニング装置8Kを有する。
【0024】
帯電装置2Yと画像書き込み装置3Y、帯電装置2Mと画像書き込み装置3M、帯電装置2Cと画像書き込み装置3C及び帯電装置2Kと画像書き込み装置3Kとは、静電潜像形成手段を構成する。
【0025】
中間転写体6は、無端状のベルトであり、複数のローラにより張架され、回動可能に指示されている。
【0026】
撮像素子60A上に結像した画像情報の信号は、図示しない画像処理部に送られる。画像処理部はアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、画像書き込み装置3Y,3M,3C,3Kに各色ごとの信号を送る。
【0027】
画像書き込み装置3Y,3M,3C,3Kでは、レーザ光線としての半導体レーザを用い、半導体レーザが出射した光ビームは、ポリゴンミラーなどの光学要素によって走査光ビームに形成されて被走査体としての像担持体1Y,1M,1C,1Kに入射し、各色の静電潜像を形成する。
【0028】
像担持体1Y,1M,1C,1Kに形成された各色ごとの静電潜像は、現像装置4Y,4M,4C,4Kによって、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、黒のトナー像として現像される。
【0029】
上記のようにして形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に1次転写装置としての転写装置7Y,7M,7C,7Kによって逐次1次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20A,20B,20C内に収容された転写紙PEは、給紙手段21A,21B,21Cにより給紙され、搬送系22を経て、レジストローラ23でタイミングを合わせて2次転写装置としての転写装置7Aに搬送され、転写紙PE上にカラー画像が2次転写される。カラー画像が転写された転写紙PEは、定着装置24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0030】
一方、転写装置7Aによって転写紙PEにカラー画像を転写した後、転写紙PEを分離した中間転写体6は、クリーニング装置8Aによりクリーニングされる。また、中間転写体6に各色のトナー像を転写した像担持体1Y,1M,1C,1Kも、クリーニング装置8Y,8M,8C,8Kによって表面に残留しているトナーが除去される。
【0031】
5Y,5M,5C,5Kは、現像装置4Y,4M,4C,4Kにそれぞれ新規のトナーを補給するトナー補給手段である。
【0032】
定着装置24は、加熱ローラ40と加圧手段である加圧ローラ41及び定着ローラ42を有している。このうち、加熱ローラ40と定着ローラ42が定着ベルト43を張架する張架部材である。加熱ローラ40は、内部にハロゲンヒータ等の加熱手段40aを有している。定着ベルト43は、ポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂で形成され、その表層にシリコーンゴム及びフッ素樹脂等を被覆した薄肉の無端ベルトである。加圧ローラ41は定着ベルト43を介して定着ローラ42に圧接している。加熱ローラ40と定着ローラ42との間には振動付与ローラ44が設けられている。
【0033】
図2は振動付与ローラにより定着ベルトの張力が最大になった状態を示す図であり、図3は定着ベルトの張力が最小になった状態を示す図である。
振動付与ローラ44は回転軸44aを偏心させたローラであり、加熱ローラ40や定着ローラ42を駆動する図示しない駆動源とギア等によって接続されている。そのため、加熱ローラ40や定着ローラ42の駆動・停止と連動して振動付与手段も駆動・停止する。本発明では上記以外に、振動付与ローラ44に専用の駆動源を設けた構成としてもよい。
【0034】
振動付与ローラ44は、定着ベルト43のうち加圧ローラ41と定着ローラ42とが圧接している圧接部N1よりも後方に振動を付与する位置に設けられている。振動付与ローラ44は回転軸44aが偏心しているため、図2のように定着ベルト43の張力が最大になったところから、回転するにつれて張力が小さくなり、図3で示した状態で張力が最小となる。図3の状態からさらに回転を続けると、今度は張力が徐々に増していき、再び図2の状態となる。このような回転をトナーTの付着防止に必要な回転数で連続して行うことで、定着ベルト43が振動し、その振動は加圧ローラ41と定着ローラ42の圧接部N1の出口付近にまで伝わる。
【0035】
転写装置7AによってトナーTが転写された転写紙PEは、加圧ローラ41と定着ローラ42との圧接部N1を通過するときにトナーTが加熱・溶融されてトナーTが転写紙PEに定着する。トナーTが定着した転写紙PEは圧接部N1を通過すると振動付与ローラ44による定着ベルト43の振動により定着ベルト43から分離する。
【0036】
図4は本発明の第2実施例を示す図である。図2及び図3との違いとしては、加圧ローラ41と定着ローラ42の圧接部N1より後方で、加熱ローラ40と定着ローラ42との間にテンションローラ45が設けられていることである。振動付与ローラ44は定着ローラ42とテンションローラ45との間に設けられ、図の左右方向に移動が可能で、定着ベルト43の張力を増減できるようになっている。このようにテンションローラ45がある場合には、振動付与ローラ44は、テンションローラ45より定着ローラ42寄りに設けられる。また、本発明は、振動付与ローラ44にテンションローラ45を兼ねさせることもできる。
【0037】
図5は本発明の第3実施例を示す図である。図5の実施例では、加熱ローラ40と定着ローラ42によって張架されている定着ベルト43と、加圧ローラ41と張架部材46によって張架されている加圧ベルト47とが圧接した構成となっている。
【0038】
加熱ローラ40と加圧ローラ41が圧接している圧接部N2から定着ローラ42と張架部材46が圧接しているN3までの間に設けられた押圧部材48,48がバネ等の押圧手段48a,48aによって定着ベルト43と加圧ベルト47を押圧している。第3実施例では、転写紙PEが圧接部N2から圧接部N3まで通る間に、転写紙PEに転写されたトナーTを加熱・溶融し、転写紙PEに定着する。
【0039】
振動付与ローラ44は、定着ローラ42より上方に設けられており、圧接部N3を通過した転写紙PEに振動を与えるようになっている。
【0040】
なお、本発明は上記のような実施例に限定するものではない。例えば、第3実施例において第2実施例のようにテンションローラ45を設け、振動付与ローラ44を定着ローラ42とテンションローラ45の間に設けるような実施例にすることが可能である。また、定着ベルト43を定着ローラ42等の張架部材46を2つ用いて張架し、加熱手段40aは定着ベルト43を直接加熱するような構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】振動付与ローラにより定着ベルトの張力が最大になった状態を示す図である。
【図3】定着ベルトの張力が最小になった状態を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す図である。
【図5】本発明の第3実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1Y,1M,1C,1K 像担持体
3Y,3M,3C,3K 画像書き込み装置
4Y,4M,4C,4K 現像装置
7A 転写装置
24 定着装置
40 加熱ローラ
40a 加熱手段
41 加圧ローラ
42 定着ローラ
43 定着ベルト
44a 回転軸
44 振動付与ローラ
45 テンションローラ
46 張架部材
47 加圧ベルト
N1,N2,N3 圧接部
PE 転写紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の張架部材によって張架される定着ベルトと、
該定着ベルトを加熱する加熱手段と、
前記張架部材の少なくとも一つと圧接する加圧手段と、
前記張架部材の間であって前記定着ベルトの内側に設けられ、回転軸が偏心した振動付与ローラと、を有し、
該振動付与ローラは、前記定着ベルトのうち前記張架部材の一つと前記加圧手段の圧接部の出口付近に振動を付与することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記張架部材のうち一つは、内部に加熱手段を有する加熱ローラであり、
前記加圧手段に圧接する張架部材は定着ローラであることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記加圧手段は加圧ローラであることを特徴とする請求項1又は2記載の定着装置。
【請求項4】
前記加圧手段は2以上の張架部材によって張架された加圧ベルトであることを特徴とする請求項1又は2記載の定着装置。
【請求項5】
前記定着ベルトは、加熱ローラと定着ローラ及びテンションローラによって張架されており、前記振動付与ローラは前記テンションローラと前記定着ローラとの間に設けられていることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
像担持体と、
該像担持体の表面に静電潜像を形成する画像書き込み装置と、
該画像書き込み装置によって形成された静電潜像を、トナー像として現像する現像装置と、
現像されたトナー像を転写紙に転写する転写装置と、
前記転写紙に転写されたトナー像を、前記転写紙に定着する定着装置と、を有する画像
形成装置であって、
前記定着装置は、請求項1から5のいずれかに記載の定着装置であることを特徴とする
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−184395(P2006−184395A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375874(P2004−375874)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】