定着装置及び画像形成装置
【課題】複数対の消磁コイルを幅方向に並設した場合であっても、励磁コイルや消磁コイルによって形成される磁路が微調整されて、発熱部材の通紙領域における幅方向の温度分布が均一化される、定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】励磁コイルのループ内であって消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して配設された複数のセンターコア28と、励磁コイルや消磁コイルを覆うように幅方向に直交する方向に架設された複数のアーチコア29と、を備える。そして、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成する。
【解決手段】励磁コイルのループ内であって消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して配設された複数のセンターコア28と、励磁コイルや消磁コイルを覆うように幅方向に直交する方向に架設された複数のアーチコア29と、を備える。そして、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置とそこに設置される定着装置とに関し、特に、複数対の消磁コイルや複数のアーチコアが設置された電磁誘導加熱方式の定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、電磁誘導加熱方式の定着装置に消磁コイルを設置して、発熱部材の非通紙領域の過昇温を抑止する技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照。)。
【0003】
特許文献1等において、定着装置の誘導加熱部には、励磁コイルの他に、励磁コイルに対向する位置であって幅方向両端部に複数対の消磁コイルが並設されている。複数対の消磁コイルは、種々のサイズの記録媒体の非通紙領域に対応する位置に並設されていて、対向する位置に生じる励磁コイルの磁束を消磁することで、発熱部材の非通紙領域の過昇温を抑止している。
また、誘導加熱部には、励磁コイルや消磁コイルを覆うように第1コア(アーチコア)が架設されていて、励磁コイルのループ内には消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して第2コア(センターコア)が延設されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の定着装置は、発熱部材の通紙領域における幅方向の温度分布が不均一になる不具合が生じていた。特に、幅方向両端部に複数対の消磁コイルが並設されている場合には、消磁コイルやセンターコアが配設されている範囲と配設されていない範囲とが生じてしまい、制御すべき磁路が複雑化するために、このような問題が顕著になっていた。
このような問題を解決するために、本願発明者は研究を重ねた結果、励磁コイルや消磁コイルを覆うように架設される複数のアーチコアのレイアウト(設置数や位置等である。)を最適化することで、励磁コイルや消磁コイルによって形成される磁路が微調整されて、発熱部材の幅方向の温度分布を均一化できることを知るに至った。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、複数対の消磁コイルを幅方向に並設した場合であっても、励磁コイルや消磁コイルによって形成される磁路が微調整されて、発熱部材の通紙領域における幅方向の温度分布が均一化される、定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1記載の発明にかかる定着装置は、発熱層を有する発熱部材と、前記発熱部材に対向するとともに、磁束を発生させて当該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルと、前記励磁コイルに対向するように幅方向両端部に並設されるとともに、前記励磁コイルによって発生される前記磁束を打ち消す方向の磁束を幅方向両端部に発生させる複数対の消磁コイルと、前記励磁コイルのループ内であって前記消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して配設された複数のセンターコアと、前記励磁コイル又は/及び前記消磁コイルを覆うように幅方向に直交する方向に架設された複数のアーチコアと、を備え、前記複数対の消磁コイルは、隣接する消磁コイルの前記励磁コイルとの対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に配設されるとともに、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設され、前記複数のセンターコアのうち前記複数対の消磁コイルのループ内に配設されたセンターコアが幅方向に直交する方向からみたときに隣接するセンターコアの一部に重なるように、上方からみたときに前記複数対の消磁コイルの隣接部が幅方向に対して傾斜するように形成され、前記複数のアーチコアの幅方向の位置又は/及び設置数を調整して前記複数のセンターコアに突き当てられるように構成されたものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記複数のセンターコアは、前記アーチコアが突き当たった状態で幅方向にスライド移動できるように形成された突き当て部が幅方向に延設されたものである。
【0008】
また、請求項3記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記複数のアーチコアは、前記センターコアを挟むように幅方向に直交する方向に分割されたものである。
【0009】
また、請求項4記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記アーチコアの幅方向の長さをL1(mm)として、前記複数のセンターコアにおいて隣接するセンターコア同士の幅方向の間隔をL2(mm)としたときに、
L1≧L2×1/2
なる関係が成立するように構成したものである。
【0010】
また、請求項5記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記センターコアは、当該センターコアを保持する保持部材に形成された突起部に係合する貫通穴を具備したものである。
【0011】
また、請求項6記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記複数対の消磁コイルは、サイズの異なる複数種の記録媒体の通紙領域に対応して前記発熱層の幅方向の加熱範囲を可変できるように配設されたものである。
【0012】
また、請求項7記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記発熱部材を、トナー像を溶融する定着部材としたものである。
【0013】
また、請求項8記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記発熱部材を、トナー像を溶融する定着部材を加熱する加熱部材としたものである。
【0014】
また、請求項9記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の定着装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、複数対の消磁コイルを幅方向に並設した場合であっても、複数のアーチコアの幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコアに突き当てられるように構成しているため、励磁コイルや消磁コイルによって形成される磁路が微調整されて、発熱部材の通紙領域における幅方向の温度分布が均一化される、定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】定着装置を示す構成図である。
【図3】誘導加熱部によって発生される磁束の状態を示す図である。
【図4】誘導加熱部を示す概略図である。
【図5】図4のX1−X1断面を示す断面図である。
【図6】図4のX2−X2断面を示す断面図である。
【図7】センターコア及びアーチコアを示す斜視図である。
【図8】誘導加熱部を示す概略側面図である。
【図9】この発明の実施の形態2における定着装置の誘導加熱部を示す概略図である。
【図10】図9のK視方向を示す概略図である。
【図11】この発明の実施の形態3における定着装置の誘導加熱部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0018】
実施の形態1.
図1〜図8にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、7は転写紙等の記録媒体Pが収容される給紙部、11Y、11M、11C、11BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される感光体ドラム、12は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上を帯電する帯電部、13は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成される静電潜像を現像する現像部、15は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
また、16は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング部、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上に形成されたカラー画像を記録媒体P上に転写する2次転写ローラ、19は記録媒体P上のトナー像(未定着画像)を定着する電磁誘導加熱方式の定着装置、を示す。
【0019】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿読込部4によって、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に向けて発せられる。
【0020】
一方、4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、図1の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、帯電部12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0021】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Y表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0022】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11M表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11C表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BK表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0023】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように転写バイアスローラ(不図示である。)が設置されている。そして、転写バイアスローラの位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0024】
そして、1次転写工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0025】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト17は、2次転写ローラ18との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラが、2次転写ローラ18との間に中間転写ベルト17を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト17上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される(2次転写工程である。)。このとき、中間転写ベルト17には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト17は、中間転写クリーニング部16の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト17上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト17上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
【0026】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部7から、給紙ローラ8やレジストローラ等が設置された搬送経路K1を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部7には、記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ8が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pが搬送経路K1に向けて給送される。
【0027】
搬送経路K1に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ(不図示である。)のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト17上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラが回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0028】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置19の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ローラ及び加圧ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラ9によって、装置本体1外に出力画像として排出されて(破線矢印方向の移動である。)、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0029】
次に、画像形成装置本体1に設置される定着装置19の構成・動作について詳述する。
図2に示すように、定着装置19は、誘導加熱部25(磁束発生手段)、誘導加熱部25に対向する発熱部材としての定着ローラ20(定着部材)、定着ローラ20に圧接する加圧部材としての加圧ローラ30、入口ガイド板41、拍車42、分離板43、ガイド部材50、等で構成される。
【0030】
ここで、発熱部材としての定着ローラ20は、鉄やステンレス鋼等からなる芯金23上に、発泡シリコーンゴム等からなる断熱弾性層22、スリーブ層21が順次積層されたものであって、その外径が40mm程度に形成されている。
定着ローラ20のスリーブ層21は、内周面側から基材層、第1酸化防止層、発熱層、第2酸化防止層、弾性層、離型層が順次積層された多層構造体である。詳しくは、基材層は層厚が40μm程度のステンレスで形成されたものであり、第1酸化防止層及び第2酸化防止層は層厚が1μm以下のニッケルをストライクめっき処理にて形成したものであり、発熱層は層厚が10μm程度の銅で形成されたものであり、弾性層は層厚が150μm程度のシリコーンゴムで形成されたものであり、離型層は層厚が30μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン・バーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で形成されたものである。
このように構成された定着ローラ20(発熱部材)は、誘導加熱部25の励磁コイル26から発せられる磁束によってスリーブ層21の発熱層が電磁誘導加熱されることになる。なお、定着ローラ20の構成は、本実施の形態1のものに限定されることなく、例えば、スリーブ層21を断熱弾性層22(定着補助ローラ)に接着しないで別体化することもできる。ただし、スリーブ層21(定着スリーブ)を別体化した場合には、稼動中にスリーブ層21が幅方向(スラスト方向)に移動するのを抑止するための部材を設置することが好ましい。
【0031】
ここで、定着部材としての定着ローラ20に対向する位置であって、ニップ部の上流側(搬送方向上流側)には、複数の拍車42が幅方向に並設されている。拍車42は、ニップ部に送入される記録媒体Pをニップ部に案内するものである。拍車42は、記録媒体P上の未定着画像に接触してもその画像に擦れ跡が生じないように、その周面がノコ歯状に形成されている。
また、定着ローラ20に対向する位置であって、ニップ部の下流側(搬送方向下流側)には、分離板43が設置されている。分離板43は、ニップ部から送出された定着工程後の記録媒体Pが、定着ローラ20に吸着して巻き付く不具合を防止するためのものである。すなわち、定着工程後の記録媒体Pが定着ローラ20に吸着してしまった場合に、記録媒体Pの先端に分離部材43が干渉して、記録媒体Pを定着ローラ20から強制的に分離させる。
また、定着ローラ20の周囲には、サーミスタ40(接触型温度検知センサ)が配設されている。そして、サーミスタ40によって、定着ローラ20上の温度(定着温度)を検知する。そして、サーミスタ40による検知結果に基いて、誘導加熱部25による加熱量を調整する。なお、本実施の形態1において、サーミスタ40は、幅方向に複数設けられている(図4(C)のサーミスタ40A〜40Dを参照できる。)。
【0032】
図2を参照して、加圧部材としての加圧ローラ30は、アルミニウム、銅等からなる円筒部材32上に、シリコーンゴム等からなる弾性層31、PFA等からなる離型層(不図示である。)が形成されたものである。加圧ローラ30の弾性層31は、肉厚が1〜5mmとなるように形成されている。また、加圧ローラ30の離型層は、層厚が20〜50μmとなるように形成されている。加圧ローラ30は、定着ローラ20に圧接している。そして、定着ローラ20と加圧ローラ30との圧接部(ニップ部である。)に、記録媒体Pが搬送される。
なお、本実施の形態1では、定着ローラ20の加熱効率を高めるために、加圧ローラ30にハロゲンヒータ等のヒータ33(電気部材)が内設されている。電気部材としてのヒータ33に電力が供給されることにより、ヒータ33の輻射熱によって加圧ローラ30が加熱されて、定着ローラ20の表面が加圧ローラ30を介して加熱されることになる。
【0033】
ここで、加圧ローラ30に対向する位置であって、ニップ部の上流側には、入口ガイド板41が設置されている。入口ガイド板41は、ニップ部に送入される記録媒体Pをニップ部に案内するものである。
また、加圧ローラ30に対向する位置であってニップ部の下流側(ニップ部から送出される記録媒体Pの非定着面に対向する位置である。)には、ガイド部材50が設置されている。ガイド部材50は、ニップ部から送出された定着工程後の記録媒体Pを定着工程後の搬送経路に向けて案内するためのものである。
【0034】
誘導加熱部25は、励磁コイル26、複数対の消磁コイル27A〜27C、コア部28、29、35、コイルガイド36(保持部材)、等で構成される。
励磁コイル26は、発熱層を有する定着ローラ20(発熱部材)の外周面の一部を覆うように配設されたコイルガイド36上に細線を束ねたリッツ線を巻回して幅方向(図2の紙面垂直方向である。)に延設したものである(図4及び図8をも参照できる。)。定着ローラ20に対向する励磁コイル26が磁束を発生させて、その磁束によって定着ローラ20の発熱層が電磁誘導加熱されることになる。
【0035】
複数対の消磁コイル27A〜27Cは、励磁コイル26に対向するように幅方向両端部に並設されている(図4をも参照できる。)。消磁コイル27A〜27Cは、励磁コイル26によって発生される磁束を打ち消す方向の磁束を幅方向両端部に発生させる。
詳しくは、図3(A)に示すように、切替スイッチ60が開放された場合(消磁コイル27A〜27Cが動作しない場合)、励磁コイル26から発生する磁束(図中の太線矢印である。)は、定着ローラ20の発熱層21を通過する磁気回路を形成することになる。そのため、発熱層に誘導電流が流れて、発熱層はジュール熱により発熱する。
これに対して、図3(B)に示すように、切替スイッチ60が閉鎖された場合(複数対の消磁コイル27A〜27Cの一部又は全部が動作する場合)には、励磁コイル26から発生する磁束(図中の太線矢印である。)は、消磁コイル27A〜27Cから発生する磁束(図中の太破線矢印である。)により打ち消されて、非常に弱い磁束となる。こうして、発熱層を加熱させる磁束は非常に弱くなり、消磁コイル27A〜27Cに対向する位置(幅方向両端部)において定着ローラ20の加熱量を低下させることができる。なお、図示は省略するが、切替スイッチ60は、第1消磁コイル27A、第2消磁コイル27B、第3消磁コイル27Cに対して、それぞれ独立して設置されている。
【0036】
なお、本実施の形態1では、図4を参照して、B4サイズ、A4サイズ(又はB5サイズ)、葉書サイズの記録媒体Pに対応して、3対の消磁コイル27A〜27Cが幅方向(図4の左右方向である。)に並設されている。そして、3対の消磁コイル27A〜27Cによって、サイズの異なる複数種の記録媒体Pの通紙領域に対応して発熱層の幅方向の加熱範囲が可変される。詳しくは、A3サイズの記録媒体P(A3縦(以下、「縦」を単に「T」と表す。))が縦方向に通紙される場合には3対の消磁コイル27A〜27Cのすべての切替スイッチ60が開放され、B4サイズの記録媒体P(B4T)が縦方向に通紙される場合には第1消磁コイル27Aの切替スイッチ60のみが閉鎖され、A4サイズの記録媒体P(A4T)が縦方向に通紙される場合には第1消磁コイル27A及び第2消磁コイル27Bの切替スイッチ60が閉鎖され、葉書サイズの記録媒体P(H)が通紙される場合には3対の消磁コイル27A〜27Cのすべての切替スイッチ60が閉鎖される。
ここで、B5サイズとA4サイズとの寸法差は比較的小さいために、本実施の形態1では、B5サイズの記録媒体P(B5T)が縦方向に通紙される場合には、A4サイズの記録媒体P(A4T)が縦方向に通紙される場合と同様に、第1消磁コイル27A及び第2消磁コイル27Bの切替スイッチ60が閉鎖される。なお、本実施の形態1では、B5サイズの記録媒体P(B5T)が縦方向に通紙される場合に用いられる消磁コイルを、A4サイズの記録媒体P(A4T)が縦方向に通紙される場合に用いられる消磁コイルと共用しているが、B5サイズ用に別に消磁コイルを増設することもできる。
【0037】
このように、3対の消磁コイル27A〜27Cへの通電は、通紙される記録媒体Pの紙サイズによって変更される。ここで、記録媒体Pの紙サイズを検知する方法としては、例えば、ユーザーが入力する紙サイズの情報(入力信号)に基いて紙サイズを直接的に判断する方法や、定着ローラ20の幅方向の温度分布を検知して紙サイズを間接的に判断する方法、等を用いることができる。
本実施の形態1では、図4を参照して、定着ローラ20の幅方向の温度分布を検知して紙サイズを間接的に判断する方法を用いている。具体的には、種々の記録媒体Pの紙サイズの端部位置に合わせて、定着ローラ20に対向(接触)するように幅方向に複数の温度検知センサとしてのサーミスタ40A〜40Dを配置している。さらに詳しくは、中央部にはサーミスタ40Aを配置して、第1〜第3の消磁コイル27A〜27Cに対応する位置にはそれぞれ第1〜第3のサーミスタ40B〜40Dを配置している。そして、これら4つのサーミスタ40A〜40Dによって、定着ローラ20の幅方向の温度分布を検知している。通紙領域では定着ローラ20の熱が記録媒体Pに奪われて、非通紙領域では定着ローラ20の温度が通紙領域に比べて高い状態に維持されるため、定着ローラ20の幅方向の温度分布により通紙されている記録媒体Pの紙サイズを判断することができる。そして、検知された温度情報(温度分布)に応じて、通電する消磁コイルが決定される。
【0038】
なお、ユーザーが入力する紙サイズの情報に基いて紙サイズを判断する方法を用いる場合には、通紙開始時には既に消磁コイルが通電されることになるため、定着ローラ20の通紙領域内の端部の熱が、消磁されて温度上昇が抑制されている非通紙領域に奪われてしまい、通紙領域内の端部温度が落ち込んでしまう可能性がある。このような場合には、出力画像上に定着不良が生じてしまうことになる。
これに対して、上述した本実施の形態1の温度分布に基づく紙サイズ検知方法によれば、通紙開始から所定時間が経過するまでは、すべての消磁コイル27A〜27Cが通電されていない状態であるため、このような定着不良が生じることはない。なお、ユーザーが入力する紙サイズの情報に基いて紙サイズを判断する方法を用いた場合であっても、通紙開始から所定時間が経過するまでは消磁コイル27A〜27Cが通電されないように制御することによって、上述した問題を解消することが可能になる。
ここで、本実施の形態1では、温度分布を検知する温度検知センサとしてサーミスタ40A〜40D(接触型温度検知センサ)を用いたが、温度分布を検知する温度検知センサとしてサーモパイルのような非接触型温度検知センサを用いることもできる。
【0039】
コア部28、29、35は、フェライト等の強磁性体(比透磁率が2500程度である。)からなり、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによる磁路(磁束が形成される経路である。)を制御して、定着ローラ20の発熱層に向けて効率のよい磁束を形成するためのものである。図2及び図4に示すように、コア部は、複数のセンターコア28、複数のアーチコア29、2つのサイドコア35で構成されている。なお、コア部28、29、35や消磁コイル27A〜27Cの特徴的な構成については、後で詳しく説明する。
コイルガイド36は、耐熱性の高い樹脂材料等からなり、励磁コイル26、消磁コイル27A〜27C、コア部28、29、35を保持する(図8をも参照できる。)。
なお、誘導加熱部25は、定着装置19の主部から分離できるように構成されている。そして、定着装置19の主部は、ドア100が開放された状態で、誘導加熱部25から分離されて画像形成装置本体1から取出されることになる(図1の右方向への移動である。)。
【0040】
このように構成された定着装置19は、次のように動作する。
不図示の駆動モータによって定着ローラ20が図2の反時計方向に回転駆動され、それにともない加圧ローラ30が時計方向に回転する。そして、定着ローラ20のスリーブ層21(発熱層)は、誘導加熱部25との対向位置で、誘導加熱部25(励磁コイル26)から発生される磁束によって加熱される。
【0041】
詳しくは、発振回路が周波数可変の電源部(不図示である。)から励磁コイル26に10kHz〜1MHz(好ましくは、20kHz〜800kHzである。)の高周波交番電流を流すことで、励磁コイル26から定着ローラ20のスリーブ層21に向けて磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このように交番磁界が形成されることで、スリーブ層21の発熱層に渦電流が生じて、発熱層はその電気抵抗によってジュール熱が発生して誘導加熱される。こうして、スリーブ層21(定着ローラ20)は、自身の発熱層の誘導加熱によって加熱される。
【0042】
その後、誘導加熱部25によって加熱された定着ローラ20表面は、加圧ローラ30との当接部(ニップ部)に達する。そして、搬送される記録媒体P上のトナー像T(トナー)を加熱して溶融する。
詳しくは、先に説明した作像プロセスを経てトナー像Tを担持した記録媒体Pが、入口ガイド板41(又は拍車42)に案内されながら定着ローラ20と加圧ローラ30との間に送入される(矢印Y1の搬送方向の移動である。)。そして、定着ローラ20から受ける熱と加圧ローラ30から受ける圧力とによってトナー像Tが記録媒体Pに定着されて、記録媒体Pは定着ローラ20と加圧ローラ30との間から送出される(矢印Y2の搬送方向の移動である。)。
ニップ部を通過した定着ローラ20表面は、その後に再び誘導加熱部25との対向位置に達する。
このような一連の動作が連続的に繰り返されて、画像形成プロセスにおける定着工程が完了する。
【0043】
以下、図4〜図8にて、本実施の形態1において特徴的な、定着装置19の構成・動作について詳述する。
図4(A)は誘導加熱部25を示す概略上面図であり、図4(B)は誘導加熱部25を示す概略側面図であり、図4(C)は誘導加熱部25とA3サイズ〜葉書サイズの記録媒体との幅方向の位置関係を示す図である。なお、図4(C)では、定着ローラ20と、定着ローラ20に接触するサーミスタ40A〜40Dと、の幅方向の位置関係も図示している。また、図5は、図4(A)のX1−X1断面(第1消磁コイル27A及び第3消磁コイル27Cの位置の断面である。)を示す断面図である。図6は、図4(A)のX2−X2断面(第2消磁コイル27Bの位置の断面である。)を示す断面図である。さらに、図7は、センターコア28及びアーチコア29を示す斜視図である。図8は、誘導加熱部28を示す概略側面図である。
【0044】
図4に示すように、3対の消磁コイル27A〜27Cは、隣接する消磁コイルの対向距離(励磁コイル26との対向距離である。)が異なるように2つの高さ位置に交互に配設されている。詳しくは、第2消磁コイル27Bは励磁コイル26に近接する高さ位置に配設され、第1消磁コイル27A及び第3消磁コイル27C(第2消磁コイル27Bに隣接する消磁コイルである。)は励磁コイル26から距離Zだけ離れた高さ位置に配設されている。
具体的に、本実施の形態1では、第2消磁コイル27Bと励磁コイル26との対向距離が2mm程度に設定され、第1消磁コイル27A(又は第3消磁コイル27C)と励磁コイル26との対向距離が5mm程度に設定されている。
【0045】
さらに、3対の消磁コイル27A〜27Cは、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設されている。すなわち、図4(A)を参照して、第1消磁コイル27Aのループ内側(幅方向中央部側)の部分が、第2消磁コイル27Bのループ外側(幅方向端部側)の部分の上方(図4(A)の紙面垂直方向の上方である。)に重なるように配設されている。同様に、第3消磁コイル27Cのループ外側(幅方向端部側)の部分が、第2消磁コイル27Bのループ内側(幅方中央部側)の部分の上方に重なるように配設されている。
【0046】
このような構成により、誘導加熱部25が高さ方向(図4(A)の紙面垂直方向である。)に大型化してしまう不具合や、隣接する消磁コイルの境界部分の消磁能力が不充分になってしまう不具合が抑止される。また、3対の消磁コイル27A〜27Cは、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設されているため、隣接する消磁コイルのループ内に設置されるセンターコア28同士の間隔(センターコアがない領域)が短くなって、定着ローラ20の幅方向の温度分布が均一化される。
【0047】
また、本実施の形態1において、センターコア28は、励磁コイル26のループ内であって消磁コイル27A〜27Cに交差しないように幅方向に分割して複数配設されている。具体的に、センターコア28は、励磁コイル26及び第1消磁コイル27Aのループ内に配設されたもの、励磁コイル26及び第2消磁コイル27Bのループ内に配設されたもの、励磁コイル26及び第3消磁コイル27Cのループ内に配設されたもの、励磁コイル26のループ内のみに配設されたもの(幅方向中央部に配設されたセンターコアである。)、に分割されている。
さらに、アーチコア29(図4(A)にて一点鎖線で示している。)は、励磁コイル26や消磁コイル27A、27Cを覆うように、幅方向に直交する方向に複数架設されている。具体的に、アーチコア29には、励磁コイル26のみを覆うように架設されたもの(幅方向中央部に配設されたアーチコアである。)と、励磁コイル26及び消磁コイルを覆うように架設されたものと、がある。
そして、これらのアーチコア29は、励磁コイル26との対向距離が短くなる高さ位置に配設された消磁コイル27A、27Cの消磁効率が、励磁コイル26との対向距離が長くなる高さ位置に配設された消磁コイル27Bの消磁効率と同等になるように配設されている。
具体的には、図4(A)及び図5に示すように、励磁コイル26との対向距離が長くなる高さ位置に配設された第1消磁コイル27A、第3消磁コイル27Cの位置には、アーチコア29を配設している。これに対して、図4(A)及び図6に示すように、励磁コイル26との対向距離が短くなる高さ位置に配設された第2消磁コイル27Bの位置には、アーチコア29を配設していない。
【0048】
このような構成により、3対の消磁コイル27A〜27Cを幅方向両端部に並設するとともに、隣接する消磁コイルの高さ位置を変えて配設した場合であっても、高さ位置の異なる消磁コイルの消磁効率が均一化されて、サイズの異なる複数種の記録媒体Pの非通紙領域に生じる励磁コイル26の磁束が消磁コイルによって均一に消磁される(同等の消磁効率で均一に消磁される)。さらに、消磁コイル27A〜27Cを動作させたときに幅方向の消磁ムラが生じないために、消磁コイル27A〜27Cを動作させない場合(A3サイズを通紙する場合)等においても、定着ローラ20の通紙領域における幅方向の温度分布が均一化される。
これは、誘導加熱部25に設置するコア部28、29、35のレイアウト(特に、アーチコア29の設置数や位置である。)が、定着ローラ20の幅方向の温度分布の均一性や消磁コイルの消磁効率(消磁により定着ローラ20の発熱を抑制する割合である。)に大きく影響することを意味する。
【0049】
ここで、本実施の形態1における誘導加熱部25は、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成されている。詳しくは、図7等を参照して、センターコア28には、アーチコア29が突き当たった状態で幅方向(図7の両矢印方向であって、図4の左右方向である。)にスライド移動できるように形成された突き当て部28a(凸状に形成されている。)が幅方向に延設されている。このような突き当て部28aは、複数対の消磁コイル27A〜27Cのループ内に設置されたセンターコア28にも、複数対の消磁コイル27A〜27Cのループ内に設置されていないセンターコア28(幅方向中央部に配設されたセンターコアである。)にも、設けられている。
【0050】
このような構成により、複数のアーチコア29のレイアウト(設置数や位置である。)を最適化して、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路が微調整されるために、定着ローラ20の幅方向の温度分布を均一化することができる。
例えば、定着ローラ20の幅方向両端部の定着温度が幅方向中央部の定着温度よりも若干低くなってしまう場合に、第1消磁コイル27Aの位置に設置されたアーチコア29を幅方向端部側に僅かな距離だけスライド移動させたり、第1消磁コイル27Aの位置にアーチコア29を増設したりすることができる。また、第3消磁コイル27Cの位置の消磁効率が他の位置の消磁効率よりも若干低い場合に、第2消磁コイル27Cの位置や他の位置に設置されたアーチコア29を幅方向端部側に僅かな距離だけスライド移動させたり、第2消磁コイル27Cの位置にアーチコア29を増設したり、他の位置に設置されたアーチコイル29を取り除いたりすることができる。このとき、センターコア28の突き当て部28aが幅方向に延設されているために、センターコア28とアーチコア29との当接状態を維持したまま、アーチコア29の移動や増設が簡易におこなわれることになる。このようにして、全体の磁路を調整制御することで、定着ローラ20の幅方向の温度分布を均一化することができる。
【0051】
なお、本実施の形態1では、図5、図7等を参照して、複数のアーチコア29が、センターコア28を挟むように幅方向に直交する方向に分割されている。そして、分割されたアーチコア29が、それぞれ、センターコア28の両端に凸状に形成された突き当て部28aに突き当てられている。
このような構成により、分割されたアーチコア29のレイアウトを、それぞれ、独立して調整できるために、全体の磁路の調整制御を細かい精度でおこなうことができる。
【0052】
また、図8を参照して、本実施の形態1における誘導加熱部25には、保持部材としてのコイルガイド36が設けられている。コイルガイド36(保持部材)には、励磁コイル26、消磁コイル27A〜27C、センターコア28、が保持される。さらに、コイルガイド36には、複数のアーチコア29が位置や設置数が調整された後に保持される。
具体的に、製造時の組み付け手順は、以下のようになる。
まず、コイルガイド36上に、励磁コイル28と、消磁コイル27A〜27Cのループ内に配設されないセンターコア28と、が固設される。その後、複数対の消磁コイル27A〜27Cと、消磁コイル27A〜27Cのループ内に配設されたセンターコア28と、がコイルガイド36上に固設される。そして、最後に、全体の磁路の調整制御をおこないレイアウトが確定した複数のアーチコア29が、コイルガイド36上に接着等により固設される。
【0053】
ここで、図7及び図8を参照して、センターコア28には、コイルガイド36に形成された突起部36bに係合する貫通穴28b(位置決め穴と長穴とである。)が形成されている。これにより、誘導加熱部25におけるセンターコア28の位置が正確に定められることになる。
なお、図8では、第3消磁コイル27Cの位置のみ突起部36b及び貫通穴28bが図示されていて、他の位置の突起部36b及び貫通穴28bの図示が省略されている。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態1では、複数対の消磁コイル27A〜27Cを幅方向に並設した場合であっても、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成しているため、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路が微調整されて、定着ローラ20(発熱部材)の通紙領域における幅方向の温度分布を均一化することができる。
【0055】
実施の形態2.
図9及び図10にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図9は、実施の形態2における定着装置の誘導加熱部を示す概略図であって、前記実施の形態1における図4に相当する図である。図10は、消磁コイル27A〜27Cのループ内に配設されたセンターコア28を図9のK視方向からみた概略図である。
本実施の形態2における定着装置は、センターコア28及び消磁コイル27A〜27Cの構成が、前記実施の形態1のものとは相違する。
【0056】
図9を参照して、本実施の形態2における定着装置にも、前記実施の形態1のものと同様に、励磁コイル26、3対の消磁コイル27A〜27C、センターコア28、アーチコア29、サイドコア35、等で構成された誘導加熱部25が設置されている。また、本実施の形態2においても、3対の消磁コイル27A〜27Cは、隣接する消磁コイルの励磁コイル26との対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に並設されている。また、3対の消磁コイル27A〜27Cは、上方からみたときに、隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設されている。そして、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように、センターコア28には凸状に延設された突き当て部28aが設けられている。
【0057】
ここで、本実施の形態2では、図9(A)及び図10を参照して、複数のセンターコア28のうち3対の消磁コイル27A〜27Cのループ内に配設されたセンターコア28が、幅方向に直交する方向からみたとき(図10のK視方向からみたときである。)に隣接するセンターコア28の一部が重なるように、上方からみたときに3対の消磁コイル27A〜27Cの隣接部が幅方向に対して傾斜するように形成されている。具体的に、図9(A)に示すように、上方からみて、第1消磁コイル27Aとそのループ内に設置されたセンターコア28とは略三角形に形成され、第2消磁コイル27B及び第3消磁コイル27Cとそれらのループ内に設置されたセンターコア28とは略平行四辺形に形成されている。
【0058】
このように、隣接する消磁コイル内に配設されたセンターコア28同士に隙間があっても、図10に示すように、幅方向に直交する方向(K視方向)からみたときに、隣接するセンターコア28の一部が重なるように形成されている。そのため、センターコア28によって磁路を効率的に制御する効果が幅方向にわたって均一に発揮されることになる。したがって、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を細かく調整して、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路をさらに微調整することで、消磁コイル27A〜27Cによる消磁が幅方向にさらに均一におこなわれるとともに、定着ローラ20(発熱部材)の通紙領域における幅方向の温度分布がさらに均一化される。すなわち、本実施の形態2のように消磁コイル27A〜27Cやそのループ内に配設されるセンターコア28を構成した場合には、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整できるように構成したことによる効果が大きくなる。
【0059】
なお、図9を参照して、本実施の形態2では、アーチコア29の幅方向の長さをL1(mm)として、複数のセンターコア28において隣接するセンターコア28同士の幅方向の間隔をL2(mm)としたときに、
L1≧L2×1/2
なる関係が成立するように設定されている。このような構成により、アーチコア29の磁路を制御する機能を維持しつつ、センターコア28の突き当て部28aへのアーチコア29の設置箇所を充分に確保することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態2でも、前記実施の形態1と同様に、複数対の消磁コイル27A〜27Cを幅方向に並設した場合であっても、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成しているため、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路が微調整されて、定着ローラ20(発熱部材)の通紙領域における幅方向の温度分布を均一化することができる。
【0061】
実施の形態3.
図11にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図11は、実施の形態3における定着装置の誘導加熱部を示す断面図であって、前記実施の形態1における図5に相当する図である。本実施の形態3における定着装置は、アーチコア29の構成が、前記実施の形態1のものとは相違する。
【0062】
図11を参照して、本実施の形態3における定着装置にも、前記各実施の形態のものと同様に、励磁コイル26、3対の消磁コイル27A〜27C、センターコア28、アーチコア29、サイドコア35、等で構成された誘導加熱部25が設置されている。また、本実施の形態3においても、3対の消磁コイル27A〜27Cは、隣接する消磁コイルの励磁コイル26との対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に並設されている。また、3対の消磁コイル27A〜27Cは、上方からみたときに、隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設されている。
【0063】
ここで、本実施の形態3においても、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように、センターコア28には凸状に延設された突き当て部28aが設けられている。そして、本実施の形態3では、図11に示すように、センターコア28の突き当て部28aとアーチコア29との接触面積を大きくするために、アーチコア29の先端部(突き当て部28aに当接する部分である。)に段差部を設けている。これにより、センターコア28に対するアーチコア29の密着性が増して、アーチコア29の位置決め精度が向上することになる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態3でも、前記各実施の形態と同様に、複数対の消磁コイル27A〜27Cを幅方向に並設した場合であっても、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成しているため、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路が微調整されて、定着ローラ20(発熱部材)の通紙領域における幅方向の温度分布を均一化することができる。
【0065】
なお、前記各実施の形態では、定着部材として定着ローラ20を用いて加圧部材として加圧ローラ30を用いた定着装置に対して本発明を適用したが、定着部材として定着ベルトや定着フィルムを用いた電磁誘導加熱方式の定着装置や、加圧部材として加圧ベルトや加圧パッドを用いた電磁誘導加熱方式の定着装置に対しても、本発明を適用することができる。
また、前記各実施の形態では、誘導加熱部25によって誘導加熱される発熱部材として定着部材(定着ローラ20)を用いた定着装置に対して本発明を適用したが、発熱部材として定着部材を加熱する加熱部材を用いた定着装置に対しても、本発明を適用することができる。例えば、定着部材としての定着ベルトを張架する加熱ローラ(発熱部材)に発熱層が設けられていて、誘導加熱部25によって加熱ローラを誘導加熱することで、定着ベルトを間接的に加熱する定着装置であっても、本発明を適用することができる。
そして、これらの場合にも、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、前記各実施の形態では、3対の消磁コイル27A〜27Cを用いたが、消磁コイルが2対以下又は4対以上設置されている場合であっても、本発明を適用することができる。その場合であっても、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0068】
(付記)
(付記1)
発熱層を有する発熱部材と、
前記発熱部材に対向するとともに、磁束を発生させて当該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルと、
前記励磁コイルに対向するように幅方向両端部に並設されるとともに、前記励磁コイルによって発生される前記磁束を打ち消す方向の磁束を幅方向両端部に発生させる複数対の消磁コイルと、
前記励磁コイルのループ内であって前記消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して配設された複数のセンターコアと、
前記励磁コイル又は/及び前記消磁コイルを覆うように幅方向に直交する方向に架設された複数のアーチコアと、
を備え、
前記複数のアーチコアの幅方向の位置又は/及び設置数を調整して前記複数のセンターコアに突き当てられるように構成されたことを特徴とする定着装置。
(付記2)
前記複数対の消磁コイルは、隣接する消磁コイルの前記励磁コイルとの対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に配設されるとともに、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設され、
前記複数のセンターコアのうち前記複数対の消磁コイルのループ内に配設されたセンターコアが幅方向に直交する方向からみたときに隣接するセンターコアの一部に重なるように、上方からみたときに前記複数対の消磁コイルの隣接部が幅方向に対して傾斜するように形成されたことを特徴とする付記1に記載の定着装置。
【符号の説明】
【0069】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
19 定着装置、
20 定着ローラ(定着部材、発熱部材)、
25 誘導加熱部、
26 励磁コイル、
27A〜27C 消磁コイル、
28 センターコア、
28a 突き当て部、 28b 貫通穴、
29 アーチコア、
30 加圧ローラ(加圧部材)、
35 サイドコア、
36 コイルガイド(保持部材)、
36b 突起部、
40、40A〜40D サーミスタ、60 切替スイッチ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2008−40176号公報
【特許文献2】特開2007−226126号公報
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置とそこに設置される定着装置とに関し、特に、複数対の消磁コイルや複数のアーチコアが設置された電磁誘導加熱方式の定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、電磁誘導加熱方式の定着装置に消磁コイルを設置して、発熱部材の非通紙領域の過昇温を抑止する技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照。)。
【0003】
特許文献1等において、定着装置の誘導加熱部には、励磁コイルの他に、励磁コイルに対向する位置であって幅方向両端部に複数対の消磁コイルが並設されている。複数対の消磁コイルは、種々のサイズの記録媒体の非通紙領域に対応する位置に並設されていて、対向する位置に生じる励磁コイルの磁束を消磁することで、発熱部材の非通紙領域の過昇温を抑止している。
また、誘導加熱部には、励磁コイルや消磁コイルを覆うように第1コア(アーチコア)が架設されていて、励磁コイルのループ内には消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して第2コア(センターコア)が延設されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の定着装置は、発熱部材の通紙領域における幅方向の温度分布が不均一になる不具合が生じていた。特に、幅方向両端部に複数対の消磁コイルが並設されている場合には、消磁コイルやセンターコアが配設されている範囲と配設されていない範囲とが生じてしまい、制御すべき磁路が複雑化するために、このような問題が顕著になっていた。
このような問題を解決するために、本願発明者は研究を重ねた結果、励磁コイルや消磁コイルを覆うように架設される複数のアーチコアのレイアウト(設置数や位置等である。)を最適化することで、励磁コイルや消磁コイルによって形成される磁路が微調整されて、発熱部材の幅方向の温度分布を均一化できることを知るに至った。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、複数対の消磁コイルを幅方向に並設した場合であっても、励磁コイルや消磁コイルによって形成される磁路が微調整されて、発熱部材の通紙領域における幅方向の温度分布が均一化される、定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1記載の発明にかかる定着装置は、発熱層を有する発熱部材と、前記発熱部材に対向するとともに、磁束を発生させて当該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルと、前記励磁コイルに対向するように幅方向両端部に並設されるとともに、前記励磁コイルによって発生される前記磁束を打ち消す方向の磁束を幅方向両端部に発生させる複数対の消磁コイルと、前記励磁コイルのループ内であって前記消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して配設された複数のセンターコアと、前記励磁コイル又は/及び前記消磁コイルを覆うように幅方向に直交する方向に架設された複数のアーチコアと、を備え、前記複数対の消磁コイルは、隣接する消磁コイルの前記励磁コイルとの対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に配設されるとともに、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設され、前記複数のセンターコアのうち前記複数対の消磁コイルのループ内に配設されたセンターコアが幅方向に直交する方向からみたときに隣接するセンターコアの一部に重なるように、上方からみたときに前記複数対の消磁コイルの隣接部が幅方向に対して傾斜するように形成され、前記複数のアーチコアの幅方向の位置又は/及び設置数を調整して前記複数のセンターコアに突き当てられるように構成されたものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記複数のセンターコアは、前記アーチコアが突き当たった状態で幅方向にスライド移動できるように形成された突き当て部が幅方向に延設されたものである。
【0008】
また、請求項3記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記複数のアーチコアは、前記センターコアを挟むように幅方向に直交する方向に分割されたものである。
【0009】
また、請求項4記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記アーチコアの幅方向の長さをL1(mm)として、前記複数のセンターコアにおいて隣接するセンターコア同士の幅方向の間隔をL2(mm)としたときに、
L1≧L2×1/2
なる関係が成立するように構成したものである。
【0010】
また、請求項5記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記センターコアは、当該センターコアを保持する保持部材に形成された突起部に係合する貫通穴を具備したものである。
【0011】
また、請求項6記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記複数対の消磁コイルは、サイズの異なる複数種の記録媒体の通紙領域に対応して前記発熱層の幅方向の加熱範囲を可変できるように配設されたものである。
【0012】
また、請求項7記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記発熱部材を、トナー像を溶融する定着部材としたものである。
【0013】
また、請求項8記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記発熱部材を、トナー像を溶融する定着部材を加熱する加熱部材としたものである。
【0014】
また、請求項9記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の定着装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、複数対の消磁コイルを幅方向に並設した場合であっても、複数のアーチコアの幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコアに突き当てられるように構成しているため、励磁コイルや消磁コイルによって形成される磁路が微調整されて、発熱部材の通紙領域における幅方向の温度分布が均一化される、定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】定着装置を示す構成図である。
【図3】誘導加熱部によって発生される磁束の状態を示す図である。
【図4】誘導加熱部を示す概略図である。
【図5】図4のX1−X1断面を示す断面図である。
【図6】図4のX2−X2断面を示す断面図である。
【図7】センターコア及びアーチコアを示す斜視図である。
【図8】誘導加熱部を示す概略側面図である。
【図9】この発明の実施の形態2における定着装置の誘導加熱部を示す概略図である。
【図10】図9のK視方向を示す概略図である。
【図11】この発明の実施の形態3における定着装置の誘導加熱部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0018】
実施の形態1.
図1〜図8にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、7は転写紙等の記録媒体Pが収容される給紙部、11Y、11M、11C、11BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される感光体ドラム、12は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上を帯電する帯電部、13は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成される静電潜像を現像する現像部、15は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
また、16は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング部、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上に形成されたカラー画像を記録媒体P上に転写する2次転写ローラ、19は記録媒体P上のトナー像(未定着画像)を定着する電磁誘導加熱方式の定着装置、を示す。
【0019】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿読込部4によって、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に向けて発せられる。
【0020】
一方、4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、図1の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、帯電部12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0021】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Y表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0022】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11M表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11C表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BK表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0023】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように転写バイアスローラ(不図示である。)が設置されている。そして、転写バイアスローラの位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0024】
そして、1次転写工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0025】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト17は、2次転写ローラ18との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラが、2次転写ローラ18との間に中間転写ベルト17を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト17上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される(2次転写工程である。)。このとき、中間転写ベルト17には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト17は、中間転写クリーニング部16の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト17上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト17上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
【0026】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部7から、給紙ローラ8やレジストローラ等が設置された搬送経路K1を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部7には、記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ8が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pが搬送経路K1に向けて給送される。
【0027】
搬送経路K1に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ(不図示である。)のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト17上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラが回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0028】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置19の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ローラ及び加圧ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラ9によって、装置本体1外に出力画像として排出されて(破線矢印方向の移動である。)、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0029】
次に、画像形成装置本体1に設置される定着装置19の構成・動作について詳述する。
図2に示すように、定着装置19は、誘導加熱部25(磁束発生手段)、誘導加熱部25に対向する発熱部材としての定着ローラ20(定着部材)、定着ローラ20に圧接する加圧部材としての加圧ローラ30、入口ガイド板41、拍車42、分離板43、ガイド部材50、等で構成される。
【0030】
ここで、発熱部材としての定着ローラ20は、鉄やステンレス鋼等からなる芯金23上に、発泡シリコーンゴム等からなる断熱弾性層22、スリーブ層21が順次積層されたものであって、その外径が40mm程度に形成されている。
定着ローラ20のスリーブ層21は、内周面側から基材層、第1酸化防止層、発熱層、第2酸化防止層、弾性層、離型層が順次積層された多層構造体である。詳しくは、基材層は層厚が40μm程度のステンレスで形成されたものであり、第1酸化防止層及び第2酸化防止層は層厚が1μm以下のニッケルをストライクめっき処理にて形成したものであり、発熱層は層厚が10μm程度の銅で形成されたものであり、弾性層は層厚が150μm程度のシリコーンゴムで形成されたものであり、離型層は層厚が30μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン・バーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で形成されたものである。
このように構成された定着ローラ20(発熱部材)は、誘導加熱部25の励磁コイル26から発せられる磁束によってスリーブ層21の発熱層が電磁誘導加熱されることになる。なお、定着ローラ20の構成は、本実施の形態1のものに限定されることなく、例えば、スリーブ層21を断熱弾性層22(定着補助ローラ)に接着しないで別体化することもできる。ただし、スリーブ層21(定着スリーブ)を別体化した場合には、稼動中にスリーブ層21が幅方向(スラスト方向)に移動するのを抑止するための部材を設置することが好ましい。
【0031】
ここで、定着部材としての定着ローラ20に対向する位置であって、ニップ部の上流側(搬送方向上流側)には、複数の拍車42が幅方向に並設されている。拍車42は、ニップ部に送入される記録媒体Pをニップ部に案内するものである。拍車42は、記録媒体P上の未定着画像に接触してもその画像に擦れ跡が生じないように、その周面がノコ歯状に形成されている。
また、定着ローラ20に対向する位置であって、ニップ部の下流側(搬送方向下流側)には、分離板43が設置されている。分離板43は、ニップ部から送出された定着工程後の記録媒体Pが、定着ローラ20に吸着して巻き付く不具合を防止するためのものである。すなわち、定着工程後の記録媒体Pが定着ローラ20に吸着してしまった場合に、記録媒体Pの先端に分離部材43が干渉して、記録媒体Pを定着ローラ20から強制的に分離させる。
また、定着ローラ20の周囲には、サーミスタ40(接触型温度検知センサ)が配設されている。そして、サーミスタ40によって、定着ローラ20上の温度(定着温度)を検知する。そして、サーミスタ40による検知結果に基いて、誘導加熱部25による加熱量を調整する。なお、本実施の形態1において、サーミスタ40は、幅方向に複数設けられている(図4(C)のサーミスタ40A〜40Dを参照できる。)。
【0032】
図2を参照して、加圧部材としての加圧ローラ30は、アルミニウム、銅等からなる円筒部材32上に、シリコーンゴム等からなる弾性層31、PFA等からなる離型層(不図示である。)が形成されたものである。加圧ローラ30の弾性層31は、肉厚が1〜5mmとなるように形成されている。また、加圧ローラ30の離型層は、層厚が20〜50μmとなるように形成されている。加圧ローラ30は、定着ローラ20に圧接している。そして、定着ローラ20と加圧ローラ30との圧接部(ニップ部である。)に、記録媒体Pが搬送される。
なお、本実施の形態1では、定着ローラ20の加熱効率を高めるために、加圧ローラ30にハロゲンヒータ等のヒータ33(電気部材)が内設されている。電気部材としてのヒータ33に電力が供給されることにより、ヒータ33の輻射熱によって加圧ローラ30が加熱されて、定着ローラ20の表面が加圧ローラ30を介して加熱されることになる。
【0033】
ここで、加圧ローラ30に対向する位置であって、ニップ部の上流側には、入口ガイド板41が設置されている。入口ガイド板41は、ニップ部に送入される記録媒体Pをニップ部に案内するものである。
また、加圧ローラ30に対向する位置であってニップ部の下流側(ニップ部から送出される記録媒体Pの非定着面に対向する位置である。)には、ガイド部材50が設置されている。ガイド部材50は、ニップ部から送出された定着工程後の記録媒体Pを定着工程後の搬送経路に向けて案内するためのものである。
【0034】
誘導加熱部25は、励磁コイル26、複数対の消磁コイル27A〜27C、コア部28、29、35、コイルガイド36(保持部材)、等で構成される。
励磁コイル26は、発熱層を有する定着ローラ20(発熱部材)の外周面の一部を覆うように配設されたコイルガイド36上に細線を束ねたリッツ線を巻回して幅方向(図2の紙面垂直方向である。)に延設したものである(図4及び図8をも参照できる。)。定着ローラ20に対向する励磁コイル26が磁束を発生させて、その磁束によって定着ローラ20の発熱層が電磁誘導加熱されることになる。
【0035】
複数対の消磁コイル27A〜27Cは、励磁コイル26に対向するように幅方向両端部に並設されている(図4をも参照できる。)。消磁コイル27A〜27Cは、励磁コイル26によって発生される磁束を打ち消す方向の磁束を幅方向両端部に発生させる。
詳しくは、図3(A)に示すように、切替スイッチ60が開放された場合(消磁コイル27A〜27Cが動作しない場合)、励磁コイル26から発生する磁束(図中の太線矢印である。)は、定着ローラ20の発熱層21を通過する磁気回路を形成することになる。そのため、発熱層に誘導電流が流れて、発熱層はジュール熱により発熱する。
これに対して、図3(B)に示すように、切替スイッチ60が閉鎖された場合(複数対の消磁コイル27A〜27Cの一部又は全部が動作する場合)には、励磁コイル26から発生する磁束(図中の太線矢印である。)は、消磁コイル27A〜27Cから発生する磁束(図中の太破線矢印である。)により打ち消されて、非常に弱い磁束となる。こうして、発熱層を加熱させる磁束は非常に弱くなり、消磁コイル27A〜27Cに対向する位置(幅方向両端部)において定着ローラ20の加熱量を低下させることができる。なお、図示は省略するが、切替スイッチ60は、第1消磁コイル27A、第2消磁コイル27B、第3消磁コイル27Cに対して、それぞれ独立して設置されている。
【0036】
なお、本実施の形態1では、図4を参照して、B4サイズ、A4サイズ(又はB5サイズ)、葉書サイズの記録媒体Pに対応して、3対の消磁コイル27A〜27Cが幅方向(図4の左右方向である。)に並設されている。そして、3対の消磁コイル27A〜27Cによって、サイズの異なる複数種の記録媒体Pの通紙領域に対応して発熱層の幅方向の加熱範囲が可変される。詳しくは、A3サイズの記録媒体P(A3縦(以下、「縦」を単に「T」と表す。))が縦方向に通紙される場合には3対の消磁コイル27A〜27Cのすべての切替スイッチ60が開放され、B4サイズの記録媒体P(B4T)が縦方向に通紙される場合には第1消磁コイル27Aの切替スイッチ60のみが閉鎖され、A4サイズの記録媒体P(A4T)が縦方向に通紙される場合には第1消磁コイル27A及び第2消磁コイル27Bの切替スイッチ60が閉鎖され、葉書サイズの記録媒体P(H)が通紙される場合には3対の消磁コイル27A〜27Cのすべての切替スイッチ60が閉鎖される。
ここで、B5サイズとA4サイズとの寸法差は比較的小さいために、本実施の形態1では、B5サイズの記録媒体P(B5T)が縦方向に通紙される場合には、A4サイズの記録媒体P(A4T)が縦方向に通紙される場合と同様に、第1消磁コイル27A及び第2消磁コイル27Bの切替スイッチ60が閉鎖される。なお、本実施の形態1では、B5サイズの記録媒体P(B5T)が縦方向に通紙される場合に用いられる消磁コイルを、A4サイズの記録媒体P(A4T)が縦方向に通紙される場合に用いられる消磁コイルと共用しているが、B5サイズ用に別に消磁コイルを増設することもできる。
【0037】
このように、3対の消磁コイル27A〜27Cへの通電は、通紙される記録媒体Pの紙サイズによって変更される。ここで、記録媒体Pの紙サイズを検知する方法としては、例えば、ユーザーが入力する紙サイズの情報(入力信号)に基いて紙サイズを直接的に判断する方法や、定着ローラ20の幅方向の温度分布を検知して紙サイズを間接的に判断する方法、等を用いることができる。
本実施の形態1では、図4を参照して、定着ローラ20の幅方向の温度分布を検知して紙サイズを間接的に判断する方法を用いている。具体的には、種々の記録媒体Pの紙サイズの端部位置に合わせて、定着ローラ20に対向(接触)するように幅方向に複数の温度検知センサとしてのサーミスタ40A〜40Dを配置している。さらに詳しくは、中央部にはサーミスタ40Aを配置して、第1〜第3の消磁コイル27A〜27Cに対応する位置にはそれぞれ第1〜第3のサーミスタ40B〜40Dを配置している。そして、これら4つのサーミスタ40A〜40Dによって、定着ローラ20の幅方向の温度分布を検知している。通紙領域では定着ローラ20の熱が記録媒体Pに奪われて、非通紙領域では定着ローラ20の温度が通紙領域に比べて高い状態に維持されるため、定着ローラ20の幅方向の温度分布により通紙されている記録媒体Pの紙サイズを判断することができる。そして、検知された温度情報(温度分布)に応じて、通電する消磁コイルが決定される。
【0038】
なお、ユーザーが入力する紙サイズの情報に基いて紙サイズを判断する方法を用いる場合には、通紙開始時には既に消磁コイルが通電されることになるため、定着ローラ20の通紙領域内の端部の熱が、消磁されて温度上昇が抑制されている非通紙領域に奪われてしまい、通紙領域内の端部温度が落ち込んでしまう可能性がある。このような場合には、出力画像上に定着不良が生じてしまうことになる。
これに対して、上述した本実施の形態1の温度分布に基づく紙サイズ検知方法によれば、通紙開始から所定時間が経過するまでは、すべての消磁コイル27A〜27Cが通電されていない状態であるため、このような定着不良が生じることはない。なお、ユーザーが入力する紙サイズの情報に基いて紙サイズを判断する方法を用いた場合であっても、通紙開始から所定時間が経過するまでは消磁コイル27A〜27Cが通電されないように制御することによって、上述した問題を解消することが可能になる。
ここで、本実施の形態1では、温度分布を検知する温度検知センサとしてサーミスタ40A〜40D(接触型温度検知センサ)を用いたが、温度分布を検知する温度検知センサとしてサーモパイルのような非接触型温度検知センサを用いることもできる。
【0039】
コア部28、29、35は、フェライト等の強磁性体(比透磁率が2500程度である。)からなり、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによる磁路(磁束が形成される経路である。)を制御して、定着ローラ20の発熱層に向けて効率のよい磁束を形成するためのものである。図2及び図4に示すように、コア部は、複数のセンターコア28、複数のアーチコア29、2つのサイドコア35で構成されている。なお、コア部28、29、35や消磁コイル27A〜27Cの特徴的な構成については、後で詳しく説明する。
コイルガイド36は、耐熱性の高い樹脂材料等からなり、励磁コイル26、消磁コイル27A〜27C、コア部28、29、35を保持する(図8をも参照できる。)。
なお、誘導加熱部25は、定着装置19の主部から分離できるように構成されている。そして、定着装置19の主部は、ドア100が開放された状態で、誘導加熱部25から分離されて画像形成装置本体1から取出されることになる(図1の右方向への移動である。)。
【0040】
このように構成された定着装置19は、次のように動作する。
不図示の駆動モータによって定着ローラ20が図2の反時計方向に回転駆動され、それにともない加圧ローラ30が時計方向に回転する。そして、定着ローラ20のスリーブ層21(発熱層)は、誘導加熱部25との対向位置で、誘導加熱部25(励磁コイル26)から発生される磁束によって加熱される。
【0041】
詳しくは、発振回路が周波数可変の電源部(不図示である。)から励磁コイル26に10kHz〜1MHz(好ましくは、20kHz〜800kHzである。)の高周波交番電流を流すことで、励磁コイル26から定着ローラ20のスリーブ層21に向けて磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このように交番磁界が形成されることで、スリーブ層21の発熱層に渦電流が生じて、発熱層はその電気抵抗によってジュール熱が発生して誘導加熱される。こうして、スリーブ層21(定着ローラ20)は、自身の発熱層の誘導加熱によって加熱される。
【0042】
その後、誘導加熱部25によって加熱された定着ローラ20表面は、加圧ローラ30との当接部(ニップ部)に達する。そして、搬送される記録媒体P上のトナー像T(トナー)を加熱して溶融する。
詳しくは、先に説明した作像プロセスを経てトナー像Tを担持した記録媒体Pが、入口ガイド板41(又は拍車42)に案内されながら定着ローラ20と加圧ローラ30との間に送入される(矢印Y1の搬送方向の移動である。)。そして、定着ローラ20から受ける熱と加圧ローラ30から受ける圧力とによってトナー像Tが記録媒体Pに定着されて、記録媒体Pは定着ローラ20と加圧ローラ30との間から送出される(矢印Y2の搬送方向の移動である。)。
ニップ部を通過した定着ローラ20表面は、その後に再び誘導加熱部25との対向位置に達する。
このような一連の動作が連続的に繰り返されて、画像形成プロセスにおける定着工程が完了する。
【0043】
以下、図4〜図8にて、本実施の形態1において特徴的な、定着装置19の構成・動作について詳述する。
図4(A)は誘導加熱部25を示す概略上面図であり、図4(B)は誘導加熱部25を示す概略側面図であり、図4(C)は誘導加熱部25とA3サイズ〜葉書サイズの記録媒体との幅方向の位置関係を示す図である。なお、図4(C)では、定着ローラ20と、定着ローラ20に接触するサーミスタ40A〜40Dと、の幅方向の位置関係も図示している。また、図5は、図4(A)のX1−X1断面(第1消磁コイル27A及び第3消磁コイル27Cの位置の断面である。)を示す断面図である。図6は、図4(A)のX2−X2断面(第2消磁コイル27Bの位置の断面である。)を示す断面図である。さらに、図7は、センターコア28及びアーチコア29を示す斜視図である。図8は、誘導加熱部28を示す概略側面図である。
【0044】
図4に示すように、3対の消磁コイル27A〜27Cは、隣接する消磁コイルの対向距離(励磁コイル26との対向距離である。)が異なるように2つの高さ位置に交互に配設されている。詳しくは、第2消磁コイル27Bは励磁コイル26に近接する高さ位置に配設され、第1消磁コイル27A及び第3消磁コイル27C(第2消磁コイル27Bに隣接する消磁コイルである。)は励磁コイル26から距離Zだけ離れた高さ位置に配設されている。
具体的に、本実施の形態1では、第2消磁コイル27Bと励磁コイル26との対向距離が2mm程度に設定され、第1消磁コイル27A(又は第3消磁コイル27C)と励磁コイル26との対向距離が5mm程度に設定されている。
【0045】
さらに、3対の消磁コイル27A〜27Cは、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設されている。すなわち、図4(A)を参照して、第1消磁コイル27Aのループ内側(幅方向中央部側)の部分が、第2消磁コイル27Bのループ外側(幅方向端部側)の部分の上方(図4(A)の紙面垂直方向の上方である。)に重なるように配設されている。同様に、第3消磁コイル27Cのループ外側(幅方向端部側)の部分が、第2消磁コイル27Bのループ内側(幅方中央部側)の部分の上方に重なるように配設されている。
【0046】
このような構成により、誘導加熱部25が高さ方向(図4(A)の紙面垂直方向である。)に大型化してしまう不具合や、隣接する消磁コイルの境界部分の消磁能力が不充分になってしまう不具合が抑止される。また、3対の消磁コイル27A〜27Cは、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設されているため、隣接する消磁コイルのループ内に設置されるセンターコア28同士の間隔(センターコアがない領域)が短くなって、定着ローラ20の幅方向の温度分布が均一化される。
【0047】
また、本実施の形態1において、センターコア28は、励磁コイル26のループ内であって消磁コイル27A〜27Cに交差しないように幅方向に分割して複数配設されている。具体的に、センターコア28は、励磁コイル26及び第1消磁コイル27Aのループ内に配設されたもの、励磁コイル26及び第2消磁コイル27Bのループ内に配設されたもの、励磁コイル26及び第3消磁コイル27Cのループ内に配設されたもの、励磁コイル26のループ内のみに配設されたもの(幅方向中央部に配設されたセンターコアである。)、に分割されている。
さらに、アーチコア29(図4(A)にて一点鎖線で示している。)は、励磁コイル26や消磁コイル27A、27Cを覆うように、幅方向に直交する方向に複数架設されている。具体的に、アーチコア29には、励磁コイル26のみを覆うように架設されたもの(幅方向中央部に配設されたアーチコアである。)と、励磁コイル26及び消磁コイルを覆うように架設されたものと、がある。
そして、これらのアーチコア29は、励磁コイル26との対向距離が短くなる高さ位置に配設された消磁コイル27A、27Cの消磁効率が、励磁コイル26との対向距離が長くなる高さ位置に配設された消磁コイル27Bの消磁効率と同等になるように配設されている。
具体的には、図4(A)及び図5に示すように、励磁コイル26との対向距離が長くなる高さ位置に配設された第1消磁コイル27A、第3消磁コイル27Cの位置には、アーチコア29を配設している。これに対して、図4(A)及び図6に示すように、励磁コイル26との対向距離が短くなる高さ位置に配設された第2消磁コイル27Bの位置には、アーチコア29を配設していない。
【0048】
このような構成により、3対の消磁コイル27A〜27Cを幅方向両端部に並設するとともに、隣接する消磁コイルの高さ位置を変えて配設した場合であっても、高さ位置の異なる消磁コイルの消磁効率が均一化されて、サイズの異なる複数種の記録媒体Pの非通紙領域に生じる励磁コイル26の磁束が消磁コイルによって均一に消磁される(同等の消磁効率で均一に消磁される)。さらに、消磁コイル27A〜27Cを動作させたときに幅方向の消磁ムラが生じないために、消磁コイル27A〜27Cを動作させない場合(A3サイズを通紙する場合)等においても、定着ローラ20の通紙領域における幅方向の温度分布が均一化される。
これは、誘導加熱部25に設置するコア部28、29、35のレイアウト(特に、アーチコア29の設置数や位置である。)が、定着ローラ20の幅方向の温度分布の均一性や消磁コイルの消磁効率(消磁により定着ローラ20の発熱を抑制する割合である。)に大きく影響することを意味する。
【0049】
ここで、本実施の形態1における誘導加熱部25は、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成されている。詳しくは、図7等を参照して、センターコア28には、アーチコア29が突き当たった状態で幅方向(図7の両矢印方向であって、図4の左右方向である。)にスライド移動できるように形成された突き当て部28a(凸状に形成されている。)が幅方向に延設されている。このような突き当て部28aは、複数対の消磁コイル27A〜27Cのループ内に設置されたセンターコア28にも、複数対の消磁コイル27A〜27Cのループ内に設置されていないセンターコア28(幅方向中央部に配設されたセンターコアである。)にも、設けられている。
【0050】
このような構成により、複数のアーチコア29のレイアウト(設置数や位置である。)を最適化して、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路が微調整されるために、定着ローラ20の幅方向の温度分布を均一化することができる。
例えば、定着ローラ20の幅方向両端部の定着温度が幅方向中央部の定着温度よりも若干低くなってしまう場合に、第1消磁コイル27Aの位置に設置されたアーチコア29を幅方向端部側に僅かな距離だけスライド移動させたり、第1消磁コイル27Aの位置にアーチコア29を増設したりすることができる。また、第3消磁コイル27Cの位置の消磁効率が他の位置の消磁効率よりも若干低い場合に、第2消磁コイル27Cの位置や他の位置に設置されたアーチコア29を幅方向端部側に僅かな距離だけスライド移動させたり、第2消磁コイル27Cの位置にアーチコア29を増設したり、他の位置に設置されたアーチコイル29を取り除いたりすることができる。このとき、センターコア28の突き当て部28aが幅方向に延設されているために、センターコア28とアーチコア29との当接状態を維持したまま、アーチコア29の移動や増設が簡易におこなわれることになる。このようにして、全体の磁路を調整制御することで、定着ローラ20の幅方向の温度分布を均一化することができる。
【0051】
なお、本実施の形態1では、図5、図7等を参照して、複数のアーチコア29が、センターコア28を挟むように幅方向に直交する方向に分割されている。そして、分割されたアーチコア29が、それぞれ、センターコア28の両端に凸状に形成された突き当て部28aに突き当てられている。
このような構成により、分割されたアーチコア29のレイアウトを、それぞれ、独立して調整できるために、全体の磁路の調整制御を細かい精度でおこなうことができる。
【0052】
また、図8を参照して、本実施の形態1における誘導加熱部25には、保持部材としてのコイルガイド36が設けられている。コイルガイド36(保持部材)には、励磁コイル26、消磁コイル27A〜27C、センターコア28、が保持される。さらに、コイルガイド36には、複数のアーチコア29が位置や設置数が調整された後に保持される。
具体的に、製造時の組み付け手順は、以下のようになる。
まず、コイルガイド36上に、励磁コイル28と、消磁コイル27A〜27Cのループ内に配設されないセンターコア28と、が固設される。その後、複数対の消磁コイル27A〜27Cと、消磁コイル27A〜27Cのループ内に配設されたセンターコア28と、がコイルガイド36上に固設される。そして、最後に、全体の磁路の調整制御をおこないレイアウトが確定した複数のアーチコア29が、コイルガイド36上に接着等により固設される。
【0053】
ここで、図7及び図8を参照して、センターコア28には、コイルガイド36に形成された突起部36bに係合する貫通穴28b(位置決め穴と長穴とである。)が形成されている。これにより、誘導加熱部25におけるセンターコア28の位置が正確に定められることになる。
なお、図8では、第3消磁コイル27Cの位置のみ突起部36b及び貫通穴28bが図示されていて、他の位置の突起部36b及び貫通穴28bの図示が省略されている。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態1では、複数対の消磁コイル27A〜27Cを幅方向に並設した場合であっても、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成しているため、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路が微調整されて、定着ローラ20(発熱部材)の通紙領域における幅方向の温度分布を均一化することができる。
【0055】
実施の形態2.
図9及び図10にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図9は、実施の形態2における定着装置の誘導加熱部を示す概略図であって、前記実施の形態1における図4に相当する図である。図10は、消磁コイル27A〜27Cのループ内に配設されたセンターコア28を図9のK視方向からみた概略図である。
本実施の形態2における定着装置は、センターコア28及び消磁コイル27A〜27Cの構成が、前記実施の形態1のものとは相違する。
【0056】
図9を参照して、本実施の形態2における定着装置にも、前記実施の形態1のものと同様に、励磁コイル26、3対の消磁コイル27A〜27C、センターコア28、アーチコア29、サイドコア35、等で構成された誘導加熱部25が設置されている。また、本実施の形態2においても、3対の消磁コイル27A〜27Cは、隣接する消磁コイルの励磁コイル26との対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に並設されている。また、3対の消磁コイル27A〜27Cは、上方からみたときに、隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設されている。そして、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように、センターコア28には凸状に延設された突き当て部28aが設けられている。
【0057】
ここで、本実施の形態2では、図9(A)及び図10を参照して、複数のセンターコア28のうち3対の消磁コイル27A〜27Cのループ内に配設されたセンターコア28が、幅方向に直交する方向からみたとき(図10のK視方向からみたときである。)に隣接するセンターコア28の一部が重なるように、上方からみたときに3対の消磁コイル27A〜27Cの隣接部が幅方向に対して傾斜するように形成されている。具体的に、図9(A)に示すように、上方からみて、第1消磁コイル27Aとそのループ内に設置されたセンターコア28とは略三角形に形成され、第2消磁コイル27B及び第3消磁コイル27Cとそれらのループ内に設置されたセンターコア28とは略平行四辺形に形成されている。
【0058】
このように、隣接する消磁コイル内に配設されたセンターコア28同士に隙間があっても、図10に示すように、幅方向に直交する方向(K視方向)からみたときに、隣接するセンターコア28の一部が重なるように形成されている。そのため、センターコア28によって磁路を効率的に制御する効果が幅方向にわたって均一に発揮されることになる。したがって、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を細かく調整して、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路をさらに微調整することで、消磁コイル27A〜27Cによる消磁が幅方向にさらに均一におこなわれるとともに、定着ローラ20(発熱部材)の通紙領域における幅方向の温度分布がさらに均一化される。すなわち、本実施の形態2のように消磁コイル27A〜27Cやそのループ内に配設されるセンターコア28を構成した場合には、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整できるように構成したことによる効果が大きくなる。
【0059】
なお、図9を参照して、本実施の形態2では、アーチコア29の幅方向の長さをL1(mm)として、複数のセンターコア28において隣接するセンターコア28同士の幅方向の間隔をL2(mm)としたときに、
L1≧L2×1/2
なる関係が成立するように設定されている。このような構成により、アーチコア29の磁路を制御する機能を維持しつつ、センターコア28の突き当て部28aへのアーチコア29の設置箇所を充分に確保することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態2でも、前記実施の形態1と同様に、複数対の消磁コイル27A〜27Cを幅方向に並設した場合であっても、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成しているため、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路が微調整されて、定着ローラ20(発熱部材)の通紙領域における幅方向の温度分布を均一化することができる。
【0061】
実施の形態3.
図11にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図11は、実施の形態3における定着装置の誘導加熱部を示す断面図であって、前記実施の形態1における図5に相当する図である。本実施の形態3における定着装置は、アーチコア29の構成が、前記実施の形態1のものとは相違する。
【0062】
図11を参照して、本実施の形態3における定着装置にも、前記各実施の形態のものと同様に、励磁コイル26、3対の消磁コイル27A〜27C、センターコア28、アーチコア29、サイドコア35、等で構成された誘導加熱部25が設置されている。また、本実施の形態3においても、3対の消磁コイル27A〜27Cは、隣接する消磁コイルの励磁コイル26との対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に並設されている。また、3対の消磁コイル27A〜27Cは、上方からみたときに、隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設されている。
【0063】
ここで、本実施の形態3においても、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように、センターコア28には凸状に延設された突き当て部28aが設けられている。そして、本実施の形態3では、図11に示すように、センターコア28の突き当て部28aとアーチコア29との接触面積を大きくするために、アーチコア29の先端部(突き当て部28aに当接する部分である。)に段差部を設けている。これにより、センターコア28に対するアーチコア29の密着性が増して、アーチコア29の位置決め精度が向上することになる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態3でも、前記各実施の形態と同様に、複数対の消磁コイル27A〜27Cを幅方向に並設した場合であっても、複数のアーチコア29の幅方向の位置や設置数を調整して複数のセンターコア28に突き当てられるように構成しているため、励磁コイル26や消磁コイル27A〜27Cによって形成される磁路が微調整されて、定着ローラ20(発熱部材)の通紙領域における幅方向の温度分布を均一化することができる。
【0065】
なお、前記各実施の形態では、定着部材として定着ローラ20を用いて加圧部材として加圧ローラ30を用いた定着装置に対して本発明を適用したが、定着部材として定着ベルトや定着フィルムを用いた電磁誘導加熱方式の定着装置や、加圧部材として加圧ベルトや加圧パッドを用いた電磁誘導加熱方式の定着装置に対しても、本発明を適用することができる。
また、前記各実施の形態では、誘導加熱部25によって誘導加熱される発熱部材として定着部材(定着ローラ20)を用いた定着装置に対して本発明を適用したが、発熱部材として定着部材を加熱する加熱部材を用いた定着装置に対しても、本発明を適用することができる。例えば、定着部材としての定着ベルトを張架する加熱ローラ(発熱部材)に発熱層が設けられていて、誘導加熱部25によって加熱ローラを誘導加熱することで、定着ベルトを間接的に加熱する定着装置であっても、本発明を適用することができる。
そして、これらの場合にも、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、前記各実施の形態では、3対の消磁コイル27A〜27Cを用いたが、消磁コイルが2対以下又は4対以上設置されている場合であっても、本発明を適用することができる。その場合であっても、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0068】
(付記)
(付記1)
発熱層を有する発熱部材と、
前記発熱部材に対向するとともに、磁束を発生させて当該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルと、
前記励磁コイルに対向するように幅方向両端部に並設されるとともに、前記励磁コイルによって発生される前記磁束を打ち消す方向の磁束を幅方向両端部に発生させる複数対の消磁コイルと、
前記励磁コイルのループ内であって前記消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して配設された複数のセンターコアと、
前記励磁コイル又は/及び前記消磁コイルを覆うように幅方向に直交する方向に架設された複数のアーチコアと、
を備え、
前記複数のアーチコアの幅方向の位置又は/及び設置数を調整して前記複数のセンターコアに突き当てられるように構成されたことを特徴とする定着装置。
(付記2)
前記複数対の消磁コイルは、隣接する消磁コイルの前記励磁コイルとの対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に配設されるとともに、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設され、
前記複数のセンターコアのうち前記複数対の消磁コイルのループ内に配設されたセンターコアが幅方向に直交する方向からみたときに隣接するセンターコアの一部に重なるように、上方からみたときに前記複数対の消磁コイルの隣接部が幅方向に対して傾斜するように形成されたことを特徴とする付記1に記載の定着装置。
【符号の説明】
【0069】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
19 定着装置、
20 定着ローラ(定着部材、発熱部材)、
25 誘導加熱部、
26 励磁コイル、
27A〜27C 消磁コイル、
28 センターコア、
28a 突き当て部、 28b 貫通穴、
29 アーチコア、
30 加圧ローラ(加圧部材)、
35 サイドコア、
36 コイルガイド(保持部材)、
36b 突起部、
40、40A〜40D サーミスタ、60 切替スイッチ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2008−40176号公報
【特許文献2】特開2007−226126号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱層を有する発熱部材と、
前記発熱部材に対向するとともに、磁束を発生させて当該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルと、
前記励磁コイルに対向するように幅方向両端部に並設されるとともに、前記励磁コイルによって発生される前記磁束を打ち消す方向の磁束を幅方向両端部に発生させる複数対の消磁コイルと、
前記励磁コイルのループ内であって前記消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して配設された複数のセンターコアと、
前記励磁コイル又は/及び前記消磁コイルを覆うように幅方向に直交する方向に架設された複数のアーチコアと、
を備え、
前記複数対の消磁コイルは、隣接する消磁コイルの前記励磁コイルとの対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に配設されるとともに、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設され、
前記複数のセンターコアのうち前記複数対の消磁コイルのループ内に配設されたセンターコアが幅方向に直交する方向からみたときに隣接するセンターコアの一部に重なるように、上方からみたときに前記複数対の消磁コイルの隣接部が幅方向に対して傾斜するように形成され、
前記複数のアーチコアの幅方向の位置又は/及び設置数を調整して前記複数のセンターコアに突き当てられるように構成されたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記複数のセンターコアは、前記アーチコアが突き当たった状態で幅方向にスライド移動できるように形成された突き当て部が幅方向に延設されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記複数のアーチコアは、前記センターコアを挟むように幅方向に直交する方向に分割されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記アーチコアの幅方向の長さをL1(mm)として、前記複数のセンターコアにおいて隣接するセンターコア同士の幅方向の間隔をL2(mm)としたときに、
L1≧L2×1/2
なる関係が成立するように構成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記センターコアは、当該センターコアを保持する保持部材に形成された突起部に係合する貫通穴を具備したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記複数対の消磁コイルは、サイズの異なる複数種の記録媒体の通紙領域に対応して前記発熱層の幅方向の加熱範囲を可変できるように配設されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記発熱部材は、トナー像を溶融する定着部材であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記発熱部材は、トナー像を溶融する定着部材を加熱する加熱部材であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
発熱層を有する発熱部材と、
前記発熱部材に対向するとともに、磁束を発生させて当該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルと、
前記励磁コイルに対向するように幅方向両端部に並設されるとともに、前記励磁コイルによって発生される前記磁束を打ち消す方向の磁束を幅方向両端部に発生させる複数対の消磁コイルと、
前記励磁コイルのループ内であって前記消磁コイルと交差しないように幅方向に分割して配設された複数のセンターコアと、
前記励磁コイル又は/及び前記消磁コイルを覆うように幅方向に直交する方向に架設された複数のアーチコアと、
を備え、
前記複数対の消磁コイルは、隣接する消磁コイルの前記励磁コイルとの対向距離が異なるように2つの高さ位置に交互に配設されるとともに、上方からみたときに隣接する消磁コイルの一部が重なるように配設され、
前記複数のセンターコアのうち前記複数対の消磁コイルのループ内に配設されたセンターコアが幅方向に直交する方向からみたときに隣接するセンターコアの一部に重なるように、上方からみたときに前記複数対の消磁コイルの隣接部が幅方向に対して傾斜するように形成され、
前記複数のアーチコアの幅方向の位置又は/及び設置数を調整して前記複数のセンターコアに突き当てられるように構成されたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記複数のセンターコアは、前記アーチコアが突き当たった状態で幅方向にスライド移動できるように形成された突き当て部が幅方向に延設されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記複数のアーチコアは、前記センターコアを挟むように幅方向に直交する方向に分割されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記アーチコアの幅方向の長さをL1(mm)として、前記複数のセンターコアにおいて隣接するセンターコア同士の幅方向の間隔をL2(mm)としたときに、
L1≧L2×1/2
なる関係が成立するように構成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記センターコアは、当該センターコアを保持する保持部材に形成された突起部に係合する貫通穴を具備したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記複数対の消磁コイルは、サイズの異なる複数種の記録媒体の通紙領域に対応して前記発熱層の幅方向の加熱範囲を可変できるように配設されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記発熱部材は、トナー像を溶融する定着部材であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記発熱部材は、トナー像を溶融する定着部材を加熱する加熱部材であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−57971(P2013−57971A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−273578(P2012−273578)
【出願日】平成24年12月14日(2012.12.14)
【分割の表示】特願2008−119452(P2008−119452)の分割
【原出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月14日(2012.12.14)
【分割の表示】特願2008−119452(P2008−119452)の分割
【原出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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