説明

定着装置

【課題】 定着ローラ11を薄肉パイプ材12で構成し、その定着ローラ11の長さ方向の移動を制限する場合に、定着ローラ11の端部の破壊を出来る限り抑制して、定着ローラ11の長寿命化を図る。
【解決手段】 移動制限回転部材25における定着ローラ11の端面と対向する対向面25aを、該対向面25aの径方向内側に向かって定着ローラ11の端面から離れる方向に傾斜するテーパ状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、FAX等の画像形成装置に用いられる定着装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の定着装置としては、加圧ローラと、該加圧ローラと径方向に対向し、該加圧ローラによって径方向に加圧される定着ローラと、この定着ローラを加熱する加熱手段とを備えた熱ローラ定着方式のものがよく知られており、このものは、記録媒体を上記加圧ローラと定着ローラとの間に挟持して搬送しながら、その記録媒体上に付着したトナーを該記録媒体と共に加熱することで記録媒体上にトナー像を定着するようにしている。
【0003】
上記のような熱ローラ定着方式の定着装置では、通常、定着ローラの熱容量が大きいことから、エネルギー効率が悪く、そのためにウォーミングアップ時間が長くなるという問題がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に示されているように、定着ローラを、加圧ローラからの加圧力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材(円筒状弾性体)で構成することが提案されており、このものでは、熱容量を非常に小さくしてウォーミングアップ時間を短縮することができるとともに、均一で幅広のニップ部を形成することができて、トナーの記録媒体上への定着を良好に行うことができるという利点を有している。
【特許文献1】特開2000−347529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記提案例のものでは、定着ローラの両端部は、定着ローラの外径よりも大きい内径を有する軸受部材で支持されており、この軸受部材は、定着ローラの端面と当接することで定着ローラの長さ方向の移動を制限する役割をも有している。この軸受部材は、定着ローラの端面が当接すると、定着ローラの回転に連れて軸受部材の中心軸回りに回転するようになっているため、定着ローラの端面が弾性変形しないと仮定すれば、定着ローラと軸受部材とが互いに摺動することはない。
【0006】
しかしながら、定着ローラはその長さ方向中間部のみで加圧ローラによって径方向に加圧されるだけであるが、定着ローラの長さには限界があり、通常、定着ローラの端面も回転しながら弾性変形することとなり、定着ローラの端面(薄肉パイプ材の端面)が弾性変形により軸受部材と摺動してしまう。このため、定着ローラの端部は、弾性変形による繰り返し疲労破壊が生じ易い(定着ローラの長さ方向中間部も同様)ことに加えて、軸受部材との摺動により大きな機械的ストレスを受けることとなり、この結果、定着装置を長期間に亘って使用した場合には、定着ローラの端部が破壊してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のように定着ローラを薄肉パイプ材で構成し、その定着ローラの長さ方向の移動を制限する場合に、定着ローラの端部(薄肉パイプ材の端部)の破壊を出来る限り抑制して、定着ローラの長寿命化を図ろうとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明では、加圧ローラと、該加圧ローラと径方向に対向し、該加圧ローラによって径方向に加圧されるとともに、該加圧力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材で構成された定着ローラと、該定着ローラを加熱する加熱手段と、該定着ローラの長さ方向から見て定着ローラの外周面における上記加圧ローラと反対側の部分を覆うように略円弧状をなしかつ該反対側の部分を、定着ローラがそのローラ軸回りに回転自在となるように支持する支持部を有する定着ローラ支持部材と、上記定着ローラの端面と対向する環状の対向面を有し、該対向面に定着ローラの端面が当接することで定着ローラの長さ方向の移動を制限するとともに、該当接時に定着ローラの回転に連れて中心軸回りに回転するように支持された筒状の移動制限回転部材とを備えた定着装置を対象として、上記移動制限回転部材の対向面を、該対向面の径方向内側に向かって上記定着ローラの端面から離れる方向に傾斜するテーパ状に形成するようにした。
【0009】
上記の構成により、定着ローラの端面において加圧ローラと定着ローラとの対向方向における加圧ローラ側の部分は、加圧ローラによる加圧により定着ローラの径方向内側に大きく弾性変形するが、この径方向内側に対応する移動制限回転部材の対向面は、テーパにより定着ローラの端面から離れるので、上記加圧ローラ側の部分は移動制限回転部材の対向面に当接しなくなる。これにより、定着ローラの端面は、弾性変形しても、該端面における加圧ローラとは反対側の部分で移動制限回転部材の対向面と摺動するだけとなる。この結果、定着ローラの端面と移動制限回転部材の対向面との間の摺動は低減される。したがって、定着ローラの端部の劣化を効果的に抑制することができるとともに、この摺動に伴う擦れ音が生じるのを抑制することができる。また、移動制限回転部材の対向面の削れをも抑制することができる。よって、定着ローラや移動制限回転部材の長寿命化を図ることができる。
【0010】
請求項2の発明では、加圧ローラと、該加圧ローラと径方向に対向し、該加圧ローラによって径方向に加圧されるとともに、該加圧力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材で構成された定着ローラと、該定着ローラを加熱する加熱手段と、該定着ローラの長さ方向から見て定着ローラの外周面における上記加圧ローラと反対側の部分を覆うように略円弧状をなしかつ該反対側の部分を、定着ローラがそのローラ軸回りに回転自在となるように支持する支持部を有する定着ローラ支持部材と、上記定着ローラの端面と対向する環状の対向面を有し、該対向面に定着ローラの端面が当接することで定着ローラの長さ方向の移動を制限するとともに、該当接時に定着ローラの回転に連れて中心軸回りに回転するように支持された筒状の移動制限回転部材とを備えた定着装置を対象として、上記移動制限回転部材の中心軸は、定着ローラ支持部材の円弧状である支持部の円中心を通っており、上記移動制限回転部材の対向面は、上記定着ローラの長さ方向から見たときの該対向面の径方向内側縁の直径をD1とし、定着ローラの長さ方向から見たときの上記定着ローラ支持部材の支持部の半径の2倍をD2とし、定着ローラの薄肉パイプ材の厚みをtとしたとき、t≦D2−D1≦10tを満たすように形成されているものとする。
【0011】
このことにより、D2とD1との差が大きいほど、定着ローラ端面の、移動制限回転部材の対向面に対する当接部分が増大することになるが、その差が10t以下であれば、定着ローラの端面において加圧ローラと定着ローラとの対向方向における加圧ローラ側の部分が、移動制限回転部材の対向面に殆ど当接しなくなり、定着ローラの端面と移動制限回転部材の対向面との間の摺動が低減される。そして、D2とD1との差が小さいほど、上記摺動は確実に低減されるが、その差がtよりも小さいと、定着ローラの端面が対向面から外れて、定着ローラの長さ方向の移動を制限することができなくなる可能性があるので、t以上としている。よって、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0012】
請求項3の発明では、加圧ローラと、該加圧ローラと径方向に対向し、該加圧ローラによって径方向に加圧されるとともに、該加圧力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材で構成された定着ローラと、該定着ローラを加熱する加熱手段と、該定着ローラの長さ方向から見て定着ローラの外周面における上記加圧ローラと反対側の部分を覆うように略円弧状をなしかつ該反対側の部分を、定着ローラがそのローラ軸回りに回転自在となるように支持する支持部を有する定着ローラ支持部材と、上記定着ローラの端面と対向する環状の対向面を有し、該対向面に定着ローラの端面が当接することで定着ローラの長さ方向の移動を制限するとともに、該当接時に定着ローラの回転に連れて中心軸回りに回転するように支持された筒状の移動制限回転部材とを備えた定着装置を対象として、上記移動制限回転部材は、上記定着ローラの端面において加圧ローラと定着ローラとの対向方向における加圧ローラと反対側の部分のみが、該移動制限回転部材の対向面に当接するように、該移動制限回転部材の中心軸が上記定着ローラのローラ軸に対して傾いた状態で支持されているものとする。
【0013】
このことで、定着ローラの端面において加圧ローラと定着ローラとの対向方向における加圧ローラ側の部分が、移動制限回転部材の対向面に当接しなくなり、定着ローラの端面と移動制限回転部材の対向面との間の摺動が低減される。よって、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0014】
請求項4の発明では、請求項1又は3の発明において、定着ローラの端面は、移動制限回転部材の対向面への当接時に該対向面に略沿うテーパ状に形成されているものとする。
【0015】
こうすることで、定着ローラの端面が移動制限回転部材の対向面に倣うため、定着ローラの端部の劣化及び移動制限回転部材の対向面の削れをより一層効果的に抑制することができる。
【0016】
請求項5の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、定着ローラの端面は、摺動部材で構成されているものとする。
【0017】
この発明により、摺動部材を、移動制限回転部材との摩擦係数が小さい材料にして、移動制限回転部材の対向面と摺動させるようにすることができ、定着ローラや移動制限回転部材の更なる長寿命化を図ることができる。
【0018】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、摺動部材は、定着ローラの端面に一体成形されたものであるとする。
【0019】
このことで、定着ローラの端面に摺動部材を容易に設けることができるとともに、摺動部材を移動制限回転部材の対向面と確実に摺動させるようにすることができる。
【0020】
請求項7の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、定着ローラ支持部材の支持部は、弾性部材を介して定着ローラを支持しているものとする。
【0021】
このことにより、定着ローラを均一に加圧することができ、定着ローラのより一層の長寿命化を図ることができる。
【0022】
請求項8の発明では、請求項7の発明において、定着ローラ支持部材は、定着ローラの外周面全周を覆う筒状のものからなっていて、その内周面に支持部が形成されたものであり、弾性部材は、外径が上記定着ローラ支持部材の内径よりも小さくかつ内径が定着ローラの外径よりも大きい環状のものであり、上記弾性部材の外周面において加圧ローラと定着ローラとの対向方向における加圧ローラ側の部分が上記定着ローラ支持部材の内周面から離隔されているものとする。
【0023】
こうすることで、定着ローラの熱が定着ローラ支持部材を介して外部へ逃げるのを抑制することができ、断熱効果を高めることができる。
【0024】
請求項9の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、移動制限回転部材は、加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動自在に構成されているものとする。
【0025】
すなわち、定着ローラのローラ軸は、加圧ローラと定着ローラとの対向方向から見て、加圧ローラのローラ軸に対して斜めに傾き易く、このように定着ローラが傾くと、定着ローラ支持部材に対しても傾く関係で、定着ローラをその長さ方向に移動させるスラスト力が生じるが、移動制限回転部材が加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動しない場合には、上記傾きにより、定着ローラの端面が移動制限回転部材の対向面に対して記録媒体の移動方向において均一に当接しなくなるため、そのようなスラスト力を、移動制限回転部材の対向面で記録媒体の移動方向において均一に受け止めることができなくなる。しかし、この発明では、上記傾き状態で定着ローラの端面が当接した移動制限回転部材が、その傾きに倣って加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動することで、定着ローラの端面が移動制限回転部材の対向面に対して記録媒体の移動方向において均一に当接するようになる。この結果、定着ローラに生じるスラスト力を、移動制限回転部材の対向面で記録媒体の移動方向において均一に受け止めることができる。よって、定着ローラの端部の劣化及び移動制限回転部材の対向面の削れをより一層有効に抑制することができる。
【0026】
請求項10の発明では、請求項1又は2の発明において、定着ローラ支持部材は、定着ローラの外周面全周を覆う筒状のものからなりかつその内周面に支持部が形成されたものであって、移動制限回転部材に一体形成されているものとする。
【0027】
このことにより、定着ローラ支持部材及び移動制限回転部材の低コスト化を図ることができるとともに、定着装置全体を小型化することができる。
【0028】
請求項11の発明では、請求項10の発明において、定着ローラ支持部材の支持部は、移動制限回転部材の対向面から所定距離以上離れた位置に形成されているものとする。
【0029】
このことで、定着ローラの端面における該定着ローラの端面に近接する部分が、定着ローラ支持部材の支持部から径方向の力を受けることがなく、定着ローラの端部の破損をより一層有効に抑制することができ、定着ローラの更なる長寿命化を図ることができる。
【0030】
請求項12の発明では、請求項10の発明において、定着ローラ支持部材が一体形成された移動制限回転部材は、定着ローラの長さ方向両側にそれぞれ配設されており、少なくとも一方の上記移動制限回転部材は、加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動自在に構成されているとともに、定着ローラの長さ方向中央側へ押圧されているものとする。
【0031】
このことにより、請求項9の発明と同様に、定着ローラに生じるスラスト力を、移動制限回転部材の対向面で記録媒体の移動方向において均一に受け止めることができ、しかも、定着ローラのローラ軸が、加圧ローラと定着ローラとの対向方向から見て、加圧ローラのローラ軸に対して斜めに傾くのが抑制され、これにより、定着ローラに生じるスラスト力を低減することができる。よって、定着ローラの端部の劣化及び移動制限回転部材の対向面の削れを更に効果的に抑制することができる。
【0032】
請求項13の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、定着ローラ支持部材は、加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動自在に構成されているものとする。
【0033】
すなわち、定着ローラのローラ軸と定着ローラ支持部材の中心軸が互いに平行になる状態が最も安定した状態であるので、定着ローラのローラ軸が、加圧ローラと定着ローラとの対向方向から見て、加圧ローラのローラ軸に対して斜めに傾いた場合には、定着ローラ支持部材が加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動して、定着ローラのローラ軸と定着ローラ支持部材の中心軸とが互いに平行になる。これにより、定着ローラに生じるスラスト力が低減して定着ローラが安定する。よって、定着ローラの端部の劣化及び移動制限回転部材の対向面の削れを更に効果的に抑制することができる。
【0034】
請求項14の発明では、請求項13の発明において、定着ローラが該定着ローラの長さ方向に移動したときにその移動方向を検出する移動方向検出手段と、定着ローラ支持部材を、加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに所定角度範囲内で正逆に回動させる回動手段とを備え、上記回動手段は、上記移動方向検出手段により検出された移動方向に応じて、上記定着ローラ支持部材を正方向又は逆方向に回動させるように構成されているものとする。
【0035】
すなわち、定着ローラのローラ軸が、加圧ローラと定着ローラとの対向方向から見て、加圧ローラのローラ軸に対して斜めに傾いて、定着ローラの長さ方向の移動が生じたときに、定着ローラ支持部材を加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動させると、その回動方向によっては定着ローラの傾きを強制的に変更して、定着ローラの移動方向を逆向きにすることができる。したがって、定着ローラの移動方向に応じて定着ローラ支持部材の回動方向を選択することにより、定着ローラをその移動方向とは反対方向に移動させるようにすることができ、これにより、定着ローラの長さ方向の移動自体を極小化することが可能になり、よって、定着ローラや移動制限回転部材の更なる長寿命化を図ることができる。
【0036】
請求項15の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、定着ローラ支持部材は、定着ローラの外周面全周を覆う筒状のものからなりかつその内周面に支持部が形成されたものであって、定着ローラの両端部にそれぞれ対応して配設されているとともに、該定着ローラ支持部材の中心軸回りに回転自在に支持されており、少なくとも一方の上記定着ローラ支持部材をその中心軸回りに回転させることで、該定着ローラ支持部材の支持部と上記定着ローラの外周面との間の摩擦力により該定着ローラをローラ軸回りに回転駆動させる駆動手段を備えているものとする。
【0037】
この発明により、安定した記録媒体の送りが得られる。すなわち、加圧ローラを駆動する場合には、加圧ローラは温度変化し易く、このために加圧ローラの外径が変化して記録媒体の送り速度が変化する可能性があるが、一定温度に支持された定着ローラを駆動する場合には、定着ローラの外径が殆ど変化しないので、記録媒体を確実に一定速度で送ることが可能になる。
【0038】
請求項16の発明では、請求項15の発明において、駆動手段は、一方の定着ローラ支持部材をその中心軸回りに回転させることで、定着ローラをそのローラ軸回りに回転駆動させるように構成されており、上記一方の定着ローラ支持部材の支持部と上記定着ローラの外周面との間の摩擦力に対して、他方の定着ローラ支持部材の支持部と定着ローラの外周面との間の摩擦力が小さいものとする。
【0039】
このことにより、駆動手段により回転される一方の定着ローラ支持部材の支持部と定着ローラの外周面との間の摩擦力が大きいため、その間に滑りが生じずに定着ローラが確実に回転駆動される一方、他方の定着ローラ支持部材の支持部と定着ローラの外周面との間の摩擦力が小さいため、その間に滑りが生じ易く、この結果、定着ローラのローラ軸が、加圧ローラと定着ローラとの対向方向から見て、加圧ローラのローラ軸に対して斜めに傾いても、定着ローラに生じるスラスト力が小さくて、定着ローラの長さ方向の移動が生じ難くなる。
【0040】
請求項17の発明では、請求項15の発明において、駆動手段は、両定着ローラ支持部材をその中心軸回りに回転させることで、定着ローラをそのローラ軸回りに回転駆動させるように構成されているものとする。
【0041】
このことで、定着ローラのローラ軸が、加圧ローラと定着ローラとの対向方向から見て、加圧ローラのローラ軸に対して斜めに傾き難くなり、この結果、定着ローラの長さ方向の移動が生じ難くなる。よって、定着ローラや移動制限回転部材のより一層の長寿命化を図ることができる。
【0042】
請求項18の発明では、請求項15の発明において、駆動手段により定着ローラ支持部材に加えられる力の方向が、定着ローラの長さ方向から見て、加圧ローラと定着ローラとの対向方向において定着ローラを加圧ローラに押し付ける方向又は該方向に対して30°以内の傾き方向であるものとする。
【0043】
こうすることで、定着ローラ支持部材の中心軸と定着ローラのローラ軸との平行度が安定に維持され、定着ローラの長さ方向の移動が生じ難くなる。
【0044】
請求項19の発明では、請求項15の発明において、駆動手段は、駆動プーリと、該駆動プーリと定着ローラ支持部材の外周面との間に掛け渡されたベルトとを有していて、該駆動プーリ及びベルトにより定着ローラ支持部材をその中心軸回りに回転させるように構成されているものとする。
【0045】
このことにより、ギヤにより定着ローラ支持部材を回転させる場合に比べて負荷変動が小さく、定着ローラ支持部材の支持部と定着ローラの外周面との間に滑りが生じ難くなる。また、ギヤの場合には、負荷変動により定着ローラ支持部材が振動し易くなり、この振動により、加圧ローラによる加圧力が変動して、定着ローラに過剰の加圧力が作用し、このために定着ローラの寿命が短くなる可能性があるが、ベルトの場合には、負荷変動が小さいので、定着ローラに過剰の加圧力が作用するようなことがなく、よって、定着ローラの長寿命化を図ることができる。
【0046】
請求項20の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、定着ローラ支持部材は、定着ローラの両端部にそれぞれ対応して配設されており、上記定着ローラの薄肉パイプ材は、金属からなり、上記薄肉パイプ材の少なくとも両端部の外周面及び内周面に、ショットピーニング処理が施されているものとする。
【0047】
このことで、ショットピーニング処理により、破壊し易い定着ローラ両端部に残留圧縮応力を付与して、伸縮に対する繰り返し疲労強度を向上させることができ、よって、定着ローラの長寿命化を図ることができる。ここで、薄肉パイプ材の内周面へのショットピーニング処理については、長さ方向中央部を処理するためには、特殊な装置が必要になるが、端部を処理するためには、そのような特殊な装置は必要なく、外周面の処理と同様の通常の装置で行うことができるので、薄肉パイプ材の両端部の外周面及び内周面のみにショットピーニング処理を行うようにすれば、容易でかつ低コストである。一方、処理が両端部のみであっても、特に破壊し易いのは両端部であるので、問題はない。
【0048】
請求項21の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、定着ローラ支持部材は、定着ローラの両端部にそれぞれ対応して配設されており、上記定着ローラの薄肉パイプ材における両端部を除く外周面全周に、ゴム層が形成されているものとする。
【0049】
こうすることで、安定した定着と記録媒体の送りを実現することができるようになるとともに、定着ローラ支持部材の支持部と対応する両端部には、ゴム層を形成しないようにして、定着ローラの外周面と定着ローラ支持部材の支持部との安定した接触を維持することができる。
【0050】
請求項22の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、加圧ローラは、定着ローラに対する加圧力の反力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材で構成されているものとする。
【0051】
この発明により、定着ローラと加圧ローラとの接触部であるニップ部が略フラット状となり、種々の記録媒体を皺が生じないように搬送することができるようになる。
【0052】
請求項23の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、定着ローラの回転を検知する回転検知手段を備え、上記回転検知手段は、定着ローラの周方向の一部分のみを1回転毎に検出することで、該定着ローラの回転を検知するように構成されているものとする。
【0053】
このことにより、定着ローラの回転速度を制御して定着ローラを一定の回転速度で回転させるようにすることができるとともに、定着ローラの回転を低コストで検知することができる。一方、このように定着ローラの周方向の一部分のみを1回転毎に検出するようにしても、通常の記録媒体搬送速度であれば、十分に定着ローラの回転速度を制御することができる。
【0054】
請求項24の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、加圧ローラは、押付け部材により定着ローラに押し付けられることで該定着ローラを径方向に加圧するように構成され、上記押付け部材による加圧ローラの定着ローラへの押付け量を制限する制限部材を備えているものとする。
【0055】
すなわち、定着ローラの端部に亀裂等が生じた場合には、通常、加圧ローラの定着ローラへの押付け量が増大し、このため、その亀裂が進行して直ぐに破壊に至る。しかし、この発明では、制限部材により押付け量が制限されるので、定着ローラ端部の破壊への進行を抑制して、大きなトラブルが生じるのを未然に防止することができる。
【0056】
請求項25の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、加圧ローラは、押付け部材により定着ローラに押し付けられることで該定着ローラを径方向に加圧するように構成され、上記押付け部材による加圧ローラの定着ローラへの押付け量を検出する押付け量検出手段を備え、上記押付け量検出手段により検出された押付け量に基づいて、上記定着ローラの劣化を検知するように構成されているものとする。
【0057】
こうすることで、定着ローラ(薄肉パイプ材)の端部に亀裂等が生じた場合、加圧ローラの定着ローラへの押付け量が増大し、この押付け量の増大が押付け量検出手段により検出され、この検出により定着ローラの劣化を検知することができる。そして、定着ローラの劣化を検知したときには、加圧ローラの定着ローラへの押付けを解除したり、画像形成装置の作動を停止したりするようにして、大きなトラブルが生じるのを未然に防止することができるとともに、ユーザに定着装置が故障したことを知らせることができる。
【発明の効果】
【0058】
以上説明したように、本発明の定着装置によると、定着ローラの端面と移動制限回転部材の対向面との間の摺動を低減するような構成にしたことにより、定着ローラの端部の劣化を効果的に抑制することができるとともに、移動制限回転部材の対向面の削れを抑制することができ、よって、定着ローラの長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0060】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る定着装置を示し、この定着装置は、複写機、プリンタ、FAX等の画像形成装置に用いられて、記録紙等の記録媒体上に付着したトナーを該記録媒体と共に加熱することで記録媒体上にトナー像を定着する熱ローラ定着方式のものである。
【0061】
上記定着装置は、加圧ローラ1と、該加圧ローラ1と径方向(本実施形態では、上下方向)に対向する定着ローラ11とを備えている。この加圧ローラ1は、例えば、直径20mmのアルミニウム製の円柱状基材2と、この基材2の外周面全周をその長さ方向略全体に亘って密着状態で覆う厚み7mmのシリコーンスポンジゴム3と、このシリコーンスポンジゴム3の外周面全周をその長さ方向略全体に亘って密着状態で覆う厚み30μmのテフロンチューブ(図示は省略している)とで構成されている。
【0062】
上記加圧ローラ1は、図2に示すように、略水平方向に延びる押付け部材5により定着ローラ11に押し付けられるようになっている。すなわち、基材2の小径にされた両端部2aが、該両端部2aにそれぞれ対応して設けた押付け部材5の長さ方向中間部に形成した嵌合孔5aにそれぞれ回転自在に嵌合されており、この各押付け部材5の一端部は回転軸5b回りに回転自在に支持され、他端部は、引張コイルスプリング6により、定着ローラ11側(上側)に付勢されている。したがって、各押付け部材5は、回転軸5b回りに図2で反時計回り方向に回動しようとするため、加圧ローラ1が上側に移動しようとして定着ローラ11に押し付けられることになる。この押付けにより、加圧ローラ1が定着ローラ11を径方向に所定の加圧力で加圧することになる。本実施形態では、この加圧力は約9.3N/cmである。
【0063】
また、加圧ローラ1は、基材2の両端部2aが両押付け部材5の嵌合孔5aにそれぞれ回転自在に嵌合していることから、上記押付け状態で、該加圧ローラ1のローラ軸X1(基材2の中心軸)回りに回転可能になっている。そして、基材2の一端部2a(図1の左側端部)には、連結軸7aを介して不図示のモータ等によって回転駆動される駆動ギヤ7と噛み合う従動ギヤ8が結合されており、これら駆動ギヤ7及び従動ギヤ8により加圧ローラ1がそのローラ軸X1回りに回転駆動されるようになっている。
【0064】
上記定着ローラ11は、上記加圧ローラ1による加圧力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材12で構成されている。すなわち、この薄肉パイプ材12は、ステンレス鋼やリン青銅等のバネ性を有する金属からなり、上記加圧力により弾性変形してその断面が円形状から、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向(上下方向)が短軸でかつ水平方向が長軸である略楕円形状となる。本実施形態では、薄肉パイプ材12は、外径34mm、肉厚0.2mmのステンレス鋼(SUS304)を用いている。この薄肉パイプ材12の両端部(後述の定着ローラ支持部材21により支持される部分を含む)の外周面及び内周面には、ショットピーニング処理が施されている。尚、ショットピーニング処理は、薄肉パイプ材12の両端部の外周面及び内周面だけでなく、これに加えて薄肉パイプ材12の長さ方向(定着ローラ11の長さ方向)中間部の外周面及び内周面に施すようにしてもよい。但し、薄肉パイプ材12の長さ方向中間部の内周面にショットピーニング処理を施す場合には、特殊な装置が必要になるので、両端部の外周面及び内周面のみにショットピーニング処理を行うようにする方が容易でかつ低コストである。一方、処理が両端部のみであっても、特に破壊し易いのは両端部であるので、問題はない。
【0065】
上記薄肉パイプ材12における両端部を除く外周面全周には、ゴム層13が形成されている。このゴム層13は、本実施形態では、厚み200μmのシリコーンゴムからなり、このゴム層13の外周面を、その長さ方向略全体に亘って厚み30μmのテフロンチューブ14が密着状態で覆っている(これらゴム層13及びテフロンチューブ14は、厚みが非常に小さいので、定着ローラ11を記載した図面のうち図1以外の図面では記載を省略している)。そして、上記加圧ローラ1は、この定着ローラ11のゴム層12が形成された部分に対して加圧するようになっており、加圧ローラ1の回転駆動によって、その定着ローラ11のゴム層12が形成された部分と加圧ローラ1との間(ニップ部)に記録媒体を挟持して搬送するようになっている。尚、加圧ローラ1が回転駆動されると、定着ローラ11は加圧ローラ1又はニップ部の記録媒体を介して定着ローラ11のローラ軸X2(弾性変形した薄肉パイプ材12の中心軸)回りに従動回転することになる。
【0066】
上記薄肉パイプ材12の内部には、記録媒体上のトナーを記録媒体と共に加熱するために定着ローラ11を加熱する加熱手段としてのハロゲンランプ17が配設されており、このハロゲンランプ17により定着ローラ11が約170℃に加熱されるようになっている。尚、このような加熱手段は、ハロゲンランプ17に限らず、他のランプであってもよく、電磁誘導を用いるものであってもよい。また、ランプを用いる場合においては、そのランプを薄肉パイプ材12の外側に設けるようにしてもよい。
【0067】
上記定着ローラ11の両端部に対応する位置には、定着ローラ支持部材21がそれぞれ配設されている。この各定着ローラ支持部材21は、定着ローラ11の長さ方向から見て定着ローラ11の外周面(つまり薄肉パイプ材12の外周面)における上記加圧ローラ1と反対側の部分(上側部分)を覆うように略円弧状をなしかつ該反対側の部分(上側部分)を、定着ローラ11がそのローラ軸X2回りに回転自在となるように支持する支持部21aを有している。この支持部21aの半径は、弾性変形前の薄肉パイプ材12の半径よりも大きくされている。そして、定着ローラ11が加圧ローラ1により下側から上方に加圧されると、定着ローラ11の外周面の上記支持部21aと対向する部分が該支持部21aに当接支持された状態で、薄肉パイプ材12が弾性変形し、このときに、図2に示すように、薄肉パイプ材12の上側部分が支持部21aに略沿うようになる。尚、上記各定着ローラ支持部材21は、定着ローラ11の端部における該定着ローラ11端面から所定距離以上離れた部分に設けられており、該定着ローラ11端面に近接する部分が、定着ローラ支持部材21の支持部21aから径方向の力を受けないようになされている。
【0068】
上記各定着ローラ支持部材21は、定着ローラ11の外周面全周を覆う円筒状のものからなっていて、その内周面に支持部21aが形成されたものである。この各定着ローラ支持部材21aの中心軸は、定着ローラ11のローラ軸X2と平行である。そして、各定着ローラ支持部材21は、ベアリング22によりその中心軸回りに回転可能に支持されていて、定着ローラ11の回転に連れて定着ローラ支持部材21の中心軸回りに回転するようになっている。このように定着ローラ支持部材21が回転しても、支持部21aは常に定着ローラ支持部材21の上側部分にある。したがって、定着ローラ支持部材21の内周面は、どの回転位置においても支持部21aとなり得るように、定着ローラ11の長さ方向から見て円形状になっている。
【0069】
上記定着ローラ支持部材21は必ずしもその中心軸回りに回転可能に支持する必要はなく、固定したものであってもよい。この場合、定着ローラ支持部材21は、定着ローラ11の長さ方向から見て上半分だけの半円状のもの(図24に示す後述の加圧ローラ支持部材4を上下逆にしたようなもの)としてもよい。但し、定着ローラ支持部材21を回転可能に支持した方が、定着ローラ11との間で摺動が殆ど生じないので好ましい。
【0070】
また、本実施形態では、定着ローラ11の外周面における定着ローラ支持部材21に対応する部分には、ゴム層13が形成されておらず、薄肉パイプ材12が支持部21aに直接当接するようにしたが、定着ローラ支持部材21がその中心軸回りに回転可能に支持されていれば、定着ローラ支持部材21に対応する部分にもゴム層13を形成するようにしてもよい。但し、ゴム層13がない方が、ゴムの劣化等を考慮する必要がなく、定着ローラ11の外周面と定着ローラ支持部材21の支持部21aとの安定した接触が維持される。
【0071】
本実施形態では、定着ローラ支持部材21は、内径が43mm、幅(定着ローラ11の長さ方向に沿った長さ)が8mmである樹脂製のものからなっている。この定着ローラ支持部材21の材料としては、耐熱性が良好なベークライトやPPS(ポリフェニレンサルファイド)が好ましい。
【0072】
上記定着ローラ11の長さ方向両側には、円筒状の移動制限回転部材25がそれぞれ配設されている。この各移動制限回転部材25は、定着ローラ11のローラ軸X2と垂直な方向に延びる定着ローラ11端面(つまり薄肉パイプ材12端面)と対向する円環状の対向面25aを有していて、該対向面25aに定着ローラ11の端面が当接することで定着ローラ11の長さ方向の移動を制限するようになっている。この各移動制限回転部材25の中心軸は、定着ローラ11のローラ軸X2と平行であって、上記定着ローラ支持部材21の中心軸と一致している(定着ローラ支持部材21の円弧状である支持部21aの円中心を通る)。また、各移動制限回転部材25は、上記定着ローラ11端面の当接時に該定着ローラ11の回転に連れて該移動制限回転部材25の中心軸回りに回転するようにベアリング26により支持されている。尚、2つの移動制限回転部材25の間の間隔は、加熱により長くなった状態の定着ローラ11の長さよりも僅かに大きくされており、定着ローラ11の長さ方向の移動は、その2つの移動制限回転部材25の間に制限されることになる。
【0073】
上記各移動制限回転部材25の対向面25aは、図3にも示すように、該対向面25aの径方向内側に向かって上記定着ローラの端面から離れる方向に傾斜するテーパ状に形成されている。この対向面25aの、移動制限回転部材25の中心軸と垂直な面に対する傾斜角θ(θ=(180°−テーパ角)/2)は、2°〜15°が好ましく、より好ましいのは、5°〜9°である。本実施形態では、7°に設定されている。この各移動制限回転部材25の材料としては、上記定着ローラ支持部材21と同様に、耐熱性が良好なベークライトやPPS(ポリフェニレンサルファイド)が好ましい。
【0074】
上記定着ローラ11(薄肉パイプ材12)の一端部(図1では右側端部)の外周面における定着ローラ11端面から所定距離以内の部分(定着ローラ11端面に近接する部分)には、図4に示すように、周方向の一部分の濃度が薄くかつ他の部分の濃度が濃い第1濃度パターン11aが形成されている。この第1濃度パターン11aの濃度の薄い部分が定着ローラ11の1回転毎に第1フォトセンサ30により検出されるようになっている。すなわち、この第1フォトセンサ30は、投光した光の反射光量を検出する反射型の光センサで構成されていて、上記第1濃度パターン11aに対し投光した光の反射光量を検出することで、濃度の薄い部分(反射光量が増大する)を検出するようになっている。このことで、第1フォトセンサ30は、定着ローラの周方向の一部分のみを1回転毎に検出することで、該定着ローラ11の回転を検知する回転検知手段を構成する。このように定着ローラ11の回転を検知することで、上記加圧ローラ1を回転駆動するモータ等の制御を行って、定着ローラ11の回転速度を一定速度となるように制御する。本実施形態では、記録媒体搬送速度が約100mm/sとなるように定着ローラ11の回転速度を約0.94回転/sに制御する。このような回転速度であれば、定着ローラ11の周方向の一部分のみを1回転毎に検出するようにしても、十分に定着ローラ11の回転速度を制御することができる。尚、上記第1濃度パターン11aの位置は、定着ローラ11の長さ方向のどの位置であってもよい。
【0075】
上記構成の定着装置においては、定着ローラ11がその長さ方向に移動すると、該定着ローラ11の端面(薄肉パイプ材12の端面)が移動制限回転部材25の対向面25aに当接し、このことで、定着ローラ11の長さ方向の移動が制限される。そして、定着ローラ11の端面が当接した移動制限回転部材25は、定着ローラ11のローラ軸X2回りの回転に連れて該移動制限回転部材25の中心軸回りに回転するが、定着ローラ11の端面が回転しながら弾性変形するため、定着ローラ11の端面と移動制限回転部材25の対向面25aとの間で摺動が生じる。しかし、上記のように移動制限回転部材25の対向面25aがテーパ状に形成されているので、そのような摺動を低減することができる。すなわち、定着ローラ11の端面において加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向における加圧ローラ1側の部分(下側部分)は、加圧ローラ1による加圧により定着ローラ11の径方向内側(上側)に大きく弾性変形するが、この径方向内側に対応する移動制限回転部材25の対向面25aは、テーパにより定着ローラ11の端面から離れるので、上記加圧ローラ1側の部分(下側部分)は移動制限回転部材の対向面に当接しなくなる(図2の定着ローラ11と二点鎖線で示す移動制限回転部材25との関係を参照)。これにより、定着ローラ11の端面は、弾性変形しても、該端面における加圧ローラ1と反対側の部分(上側部分)で移動制限回転部材25の対向面25aと摺動するだけとなる。この結果、定着ローラ11の端面と移動制限回転部材25の対向面25aとの間の摺動は低減される。したがって、定着ローラ11の端部の劣化を効果的に抑制することができるとともに、この摺動に伴う擦れ音が生じるのを抑制することができる。また、移動制限回転部材25の対向面25aの削れをも抑制することができる。よって、定着ローラ11や移動制限回転部材25の長寿命化を図ることができる。
【0076】
尚、本実施形態では、加圧ローラ1を回転駆動するようにしたが、これに代えて、後述の実施形態12のように、定着ローラ支持部材21をその中心軸回りに回転させることで、該定着ローラ支持部材21の支持部21aと定着ローラ11の外周面との間の摩擦力により該定着ローラ11をそのローラ軸X2回りに回転駆動させるようにしてもよい。
【0077】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2を示し、移動制限回転部材25の対向面25aの形状を、上記実施形態1とは異ならせ、その他の構成を上記実施形態1と同様としたものである。尚、上記実施形態1と同様の構成については、説明を省略する。
【0078】
具体的には、移動制限回転部材25の対向面25aは、上記実施形態1のようなテーパ状に形成されてはおらず、移動制限回転部材25の中心軸(又は定着ローラ11のローラ軸X2)と垂直な方向に延びている。そして、移動制限回転部材25の対向面25aは、定着ローラ11の長さ方向から見たときの該対向面25aの径方向内側縁の直径をD1とし、定着ローラ11の長さ方向から見たときの上記定着ローラ支持部材21の支持部21aの半径の2倍(定着ローラ支持部材21の内径)をD2とし、定着ローラ11の薄肉パイプ材12の厚みをtとしたとき、
t≦D2−D1≦10t
を満たすように形成されている。
【0079】
すなわち、D2とD1との差が大きいほど、定着ローラ11端面の、移動制限回転部材25の対向面25aに対する当接部分が増大することになるが、その差が10t以下であれば、定着ローラ11の端面において加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向における加圧ローラ1側の部分(下側部分)が、移動制限回転部材25の対向面25aに殆ど当接しなくなり、定着ローラ11の端面と移動制限回転部材25の対向面25aとの間の摺動が低減される。そして、D2とD1との差が小さいほど、上記摺動は確実に低減されるが、その差がtよりも小さいと、定着ローラ11の端面が対向面25aから外れて、定着ローラ11の長さ方向の移動を制限することができなくなる可能性があるので、t以上としている。
【0080】
したがって、本実施形態2においても、上記実施形態1と同様に、定着ローラ11の端面と移動制限回転部材25の対向面25aとの間の摺動は低減され、この結果、定着ローラ25や移動制限回転部材25aの長寿命化を図ることができる。
【0081】
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3を示し、移動制限回転部材25の中心軸(図6に示すX3)を定着ローラ11のローラ軸X2に対して傾けるようにしたものである。
【0082】
すなわち、本実施形態では、移動制限回転部材25の対向面25aは、上記実施形態1のようなテーパ状に形成されてはおらず、移動制限回転部材25の中心軸X3と垂直な方向に延びている。但し、移動制限回転部材25の中心軸X3が、定着ローラ11のローラ軸X2に対して、対向面25aの上側部分が定着ローラ11の端面に近づくように傾いており、これにより、対向面25aをテーパ状にしたのと同様の状態にしている。つまり、移動制限回転部材25は、定着ローラ11の端面において加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向における加圧ローラ1と反対側の部分(上側部分)のみが、該移動制限回転部材25の対向面25aに当接するように、該移動制限回転部材25の中心軸X3が定着ローラ11のローラ軸X3に対して傾いた状態で支持されることになる。
【0083】
したがって、本実施形態3においても、上記実施形態1と同様に、定着ローラ11の端面の下側部分が、移動制限回転部材25の対向面25aに当接しなくなり、定着ローラ11の端面と移動制限回転部材25の対向面25aとの間の摺動が低減され、よって、定着ローラ25や移動制限回転部材25aの長寿命化を図ることができる。
【0084】
(実施形態4)
図7は、本発明の実施形態4を示し、上記実施形態1において定着ローラ11の端面の形状を変更したものである。
【0085】
すなわち、本実施形態4では、定着ローラ11の端面は、移動制限回転部材25の対向面25aへの当接時に該対向面25aに略沿うテーパ状に形成されている。これにより、定着ローラ11の端面が移動制限回転部材25の対向面25aに倣うため、定着ローラ11の端部の劣化及び移動制限回転部材25の対向面25aの削れをより一層効果的に抑制することができる。
【0086】
尚、本実施形態4では、移動制限回転部材25を実施形態1のものとしたが、実施形態3のように移動制限回転部材25の中心軸X3を定着ローラ11のローラ軸X2に対して傾ける場合にも、本実施形態4の構成を適用することができる。
【0087】
(実施形態5)
図8は、本発明の実施形態5を示し、定着ローラ11の端面を摺動部材15で構成し、その他の構成を上記実施形態1と同様にしたものである。
【0088】
上記摺動部材15は、中心部に薄肉パイプ材12の内径と略同径の貫通孔が開けられた円形の基部15aと、この基部15aの外周縁部に設けられた筒状の側部15bとからなるキャップ状に形成されていて、定着ローラ11の端面に被せられている。上記側部15bの内径は、弾性変形前の薄肉パイプ材12の外径と略同じであってもよく、僅かに大きくしてもよい。また、摺動部材15は、定着ローラ11の端面に固定するようにしてもよく、固定しないようにしてもよい。固定しない場合には、摺動部材15の定着ローラ11側の面を摩擦係数が高くなるようにゴム層等を形成し、摺動部材15と定着ローラ11とが摺動しないようにする。或いは、図9に示すように、摺動部材15を、金型を用いて、定着ローラ11の端面に一体成形するようにしてもよい。この場合、成形後に仕上げ加工をするようにしてもよい。
【0089】
上記摺動部材15の材料としては、PPS等が好ましい。このような摺動部材15により、定着ローラ11の端面と移動制限回転部材25の対向面25aとの間の摩擦係数を出来る限り小さくすることができ、定着ローラ11や移動制限回転部材25の更なる長寿命化を図ることができる。
【0090】
尚、第1濃度パターン11aは、上記実施形態1と同じ箇所に設けることができないので、別の箇所に設ければよい。また、摺動部材15を定着ローラ11の端面に固定する場合には、摺動部材15の側部15bに設けるようにしてもよい。
【0091】
さらに、移動制限回転部材25は、上記実施形態1のものに限らず、上記実施形態2又は3のものを用いてもよい。
【0092】
(実施形態6)
図10は、本発明の実施形態6を示し、定着ローラ支持部材21の支持部21aが、弾性部材23を介して定着ローラ11を支持するようにしたものである。
【0093】
すなわち、本実施形態6では、定着ローラ支持部材21の内周面に、該定着ローラ支持部材21と略同じ幅の円環状の弾性部材23が嵌め込まれている。この弾性部材23の厚みは、0.5mm〜3mmであることが好ましく、本実施形態では、1.5mmとしている。この弾性部材23の材料としては、ポリウレタンゴムやクロロプレンゴム等が挙げられる。
【0094】
このような弾性部材23を、定着ローラ11(薄肉パイプ材12)の外周面と定着ローラ支持部材21の支持部21aとの間に介在させることにより、定着ローラ11を均一に加圧することができ、定着ローラ11のより一層の長寿命化を図ることができる。
【0095】
尚、本実施形態6では、弾性部材23の外径が定着ローラ支持部材21の内径と略同じであり、弾性部材23の外周面が全周に亘って定着ローラ支持部材21の内周面と接触しているが、図11に示すように、弾性部材23の外径を定着ローラ支持部材21の内径よりも小さくしかつ弾性部材23の内径を定着ローラ11の外径よりも大きくして、弾性部材23の外周面において加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向における加圧ローラ1側の部分(下側部分)が定着ローラ支持部材21の内周面から離隔されるようにしてもよい。こうすれば、定着ローラ11の熱が定着ローラ支持部材21を介して外部へ逃げるのを抑制することができ、断熱効果を高めることができる。
【0096】
また、移動制限回転部材25やその他の構成は、上記実施形態1〜5のいずれの構成をも採用することができる。
【0097】
(実施形態7)
図12は、本発明の実施形態7を示し、移動制限回転部材25を、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向に延びる軸25b回りに回動自在に構成し、その他の構成を上記実施形態1と同様にしたものである。この軸25bの軸心は、移動制限回転部材25の中心軸と交わるようにするのが好ましい。
【0098】
このような構成にするのは、以下のような理由からである。すなわち、定着ローラ11のローラ軸X2は、図12に示すように、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向から見て、加圧ローラ1のローラ軸X1に対して斜めに傾き易く、このように定着ローラ11が傾くと、定着ローラ支持部材21に対しても傾く関係で、定着ローラ11をその長さ方向に移動させるスラスト力が生じるが、移動制限回転部材25が上記軸25b回りに回動しない場合には、上記傾きにより、定着ローラ11の端面が移動制限回転部材25の対向面25aに対して記録媒体の移動方向において均一に当接しなくなるため、そのようなスラスト力を、移動制限回転部材25の対向面25aで記録媒体の移動方向において均一に受け止めることができなくなる。そこで、移動制限回転部材25を上記軸25b回りに回動自在に構成することにより、上記傾き状態で定着ローラ11の端面が当接した移動制限回転部材25が、その傾きに倣って上記軸25b回りに回動することで、定着ローラ11の端面が移動制限回転部材25の対向面25aに対して記録媒体の移動方向において均一に当接するようになる。この結果、定着ローラ11に生じるスラスト力を、移動制限回転部材25の対向面25aで記録媒体の移動方向において均一に受け止めることができる。よって、定着ローラ11の端部の劣化及び移動制限回転部材25の対向面25aの削れをより一層有効に抑制することができる。
【0099】
尚、本実施形態7では、移動制限回転部材25を上記実施形態1のものとしたが、上記実施形態2や3のものにも適用することができる。上記実施形態3のものに適用する場合であっても、移動制限回転部材25を、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向に延びる軸回りに回動自在に構成すればよい。
【0100】
(実施形態8)
図13は、本発明の実施形態8を示し、定着ローラ支持部材21を移動制限回転部材25に一体形成し、その他の構成を上記実施形態1と同様にしたものである。
【0101】
すなわち、本実施形態では、定着ローラ支持部材21が、上記実施形態1のように円筒状であり、その移動制限回転部材25側の面が、移動制限回転部材25の対向面25aの径方向外側部分に接続されている。これにより、定着ローラ支持部材21を支持するベアリング22はなく、ベアリング26により、定着ローラ支持部材21及び移動制限回転部材25が、移動制限回転部材25の中心軸(定着ローラ支持部材21の中心軸でもある)回りに一体回転するように支持されている。
【0102】
このように定着ローラ支持部材21を移動制限回転部材25に一体形成することで、定着ローラ支持部材21及び移動制限回転部材25の低コスト化を図ることができるとともに、定着装置全体を小型化することができる。
【0103】
尚、本実施形態8では、移動制限回転部材25の対向面25aは、上記実施形態1のようにテーパ状に形成しているが、上記実施形態2のようにしてもよい。
【0104】
また、本実施形態8では、定着ローラ支持部材21の支持部21aが、移動制限回転部材25の対向面25aに接しているが、図14に示すように、支持部21aを、移動制限回転部材25の対向面25aから所定距離以上離れた位置(つまり上記実施形態1の定着ローラ支持部材21と同様の位置)に形成するようにしてもよい。こうすれば、定着ローラ11の端部における定着ローラ11の端面に近接する部分が、定着ローラ支持部材21の支持部21aから径方向の力を受けることがなく、定着ローラ11の端部の破損をより一層有効に抑制することができる。
【0105】
さらに、本実施形態8では、加圧ローラ1を回転駆動するようにしたが、これに代えて、後述の実施形態12のように、定着ローラ支持部材21をその中心軸回りに回転させることで、該定着ローラ支持部材21の支持部21aと定着ローラ11の外周面との間の摩擦力により該定着ローラ11をそのローラ軸X2回りに回転駆動させるようにしてもよい。
【0106】
(実施形態9)
図15は、本発明の実施形態9を示し、上記実施形態8における、定着ローラ支持部材21が一体形成された移動制限回転部材25を、定着ローラ11の長さ方向中央側へ押圧するようにしたものである。
【0107】
すなわち、本実施形態9では、一方の移動制限回転部材25を、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向に延びる軸25b回りに回動自在に支持する支持部材41が設けられており、この支持部材41は、移動制限回転部材25の径方向外側において加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向に延びる軸41a回りに回動自在に軸支されている。上記軸25bの軸心は、上記実施形態7と同様に、移動制限回転部材25の中心軸と交わるようにするのが好ましい。
【0108】
そして、上記支持部材41の先端部は、引張コイルスプリング42により、定着ローラ11の長さ方向中央側へ付勢されている。これにより、支持部材41は、上記軸41a回りに図15で反時計回り方向に回動しようとし、この結果、移動制限回転部材25が定着ローラ11の長さ方向中央側へ押圧されることになる。尚、移動制限回転部材25を定着ローラ11の長さ方向中央側へ押圧する構成はどのようなものであってもよい。
【0109】
このような構成により、定着ローラ11は、その両端面が同時に両移動制限回転部材25の対向面25aにそれぞれ当接した状態で安定する。このとき、上記実施形態7と同様に、定着ローラ11の両端面がそれぞれ両移動制限回転部材25の対向面25aに対して記録媒体の移動方向で均一に当接する。しかも、定着ローラ11のローラ軸X2が、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向から見て、加圧ローラ1のローラ軸X1に対して斜めに傾くのが抑制され、これにより、定着ローラ11に生じるスラスト力を低減することができる。よって、定着ローラ11の端部の劣化及び移動制限回転部材25の対向面25aの削れを更に効果的に抑制することができる。
【0110】
尚、本実施形態9では、一方の移動制限回転部材25のみを、定着ローラ11の長さ方向中央側へ押圧するようにしたが、両方の移動制限回転部材25を定着ローラ11の長さ方向中央側へ押圧するようにしてもよい。
【0111】
(実施形態10)
図16は、本発明の実施形態10を示し、定着ローラ支持部材21を、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向に延びる軸45a回りに回動自在に構成したものである。尚、本実施形態では、上記実施形態8及び9のように定着ローラ支持部材21を移動制限回転部材25に一体形成したものを用いるため、定着ローラ支持部材21を、移動制限回転部材25を介して軸45a回りに回動自在となるようにしている。
【0112】
すなわち、本実施形態では、一方の移動制限回転部材25が、支持部材45により支持固定されており(支持部材45に対しては回動しない)、この支持部材45が、移動制限回転部材25の径方向外側において加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向に延びる軸45a回りに回動自在に軸支されている。このため、定着ローラ支持部材21が移動制限回転部材25と共に上記軸45a回りに回動可能になっている。尚、支持部材45は、上記実施形態9の如くスプリングにより付勢されてはいない。
【0113】
このように構成することで、定着ローラ11のローラ軸X2が、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向から見て、加圧ローラ1のローラ軸X1に対して斜めに傾いた場合には、定着ローラ支持部材21が上記軸45a回りに回動して、定着ローラ11のローラ軸X2と定着ローラ支持部材21の中心軸とが互いに平行になる。つまり、定着ローラ11のローラ軸X2と定着ローラ支持部材21の中心軸とが互いに平行になる状態が最も安定した状態であるので、自動的にそのような状態となる。これにより、定着ローラ11に生じるスラスト力が低減して定着ローラ11が安定する。よって、定着ローラ11の端部の劣化及び移動制限回転部材25の対向面25aの削れを更に効果的に抑制することができる。
【0114】
尚、本実施形態10では、一方の定着ローラ支持部材21(及び移動制限回転部材25)のみを回動自在に構成したが、両方の定着ローラ支持部材21を回動自在に構成してもよい。
【0115】
また、定着ローラ支持部材21は、上記実施形態1等のように移動制限回転部材25と別体のものとしてもよく、この場合には、定着ローラ支持部材21を、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向に延びる軸回りに回動自在となるように構成すればよい。そして、定着ローラ支持部材21と移動制限回転部材25とが別体であれば、移動制限回転部材25は、上記実施形態1〜3のいずれのものであってもよい。
【0116】
さらに、支持部材45の回動軸45aは、どのような位置にあってもよく、定着ローラ11のローラ軸X2が加圧ローラ1のローラ軸X1に対してどの程度傾くかによって適宜に設定すればよい。例えば図17に示すように、軸45aを、その軸心が移動制限回転部材25の中心軸と交わる位置に設けてもよい。
【0117】
(実施形態11)
図18は、本発明の実施形態11を示し、定着ローラ11の移動方向を検出して、定着ローラ11を、その移動方向とは反対方向に移動させるようにしたものである。
【0118】
すなわち、本実施形態11では、上記実施形態10の変形例(図17)と同様の支持部材45(図16と同様の支持部材45であってもよい)が設けられており、この支持部材45を、軸45a回りに所定角度範囲内で回動させるシリンダ46と引張コイルスプリング47とが設けられている。すなわち、支持部材45は、シリンダ46のロッド46aが伸長すると、引張コイルスプリング47の付勢力に抗して軸45a回りに図18で時計回り方向に回動する一方、該ロッド46aが収縮すると、引張コイルスプリング47によって軸45a回りに図18で反時計回り方向に回動するようになっている。
【0119】
上記支持部材45の回動により、定着ローラ支持部材21が移動制限回転部材25を介して上記軸45a回りに所定角度範囲内で正逆に回動することになる。このことから、シリンダ46及び引張コイルスプリング47は、定着ローラ支持部材21を、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向に延びる軸45a回りに所定角度範囲内で正逆に回動させる回動手段を構成することになる。そして、定着ローラ11のローラ軸X2が、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向から見て、加圧ローラ1のローラ軸X1に対して斜めに傾いて、定着ローラ11の長さ方向の移動が生じたときに、定着ローラ支持部材21を上記軸45a回りに適切な方向に回動させると、定着ローラ11の傾きを強制的に変更して、定着ローラ11の移動方向を逆向きにすることができる。
【0120】
上記定着ローラ11の外周面には、上記実施形態1で説明した第1濃度パターン11aに加えて、第2濃度パターン11bが形成されている(尚、図18では、第2濃度パターン11bしか記載していない)。この第2濃度パターン11bは、定着ローラ11の長さ方向に向かって濃度が変化するようになっており、この濃度変化を、第1フォトセンサ30と同様の第2フォトセンサ31により検出することで、定着ローラ11の移動方向が検出されるようになっている。このことで、第2フォトセンサ31は、定着ローラ11の移動方向を検出する移動方向検出手段を構成することになる。
【0121】
上記シリンダ46は、第2フォトセンサ31により検出された移動方向に応じて、該シリンダ46のロッド46aを伸長させたり収縮させたりする。すなわち、定着ローラ11のローラ軸X2が、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向から見て、加圧ローラ1のローラ軸X1に対して斜めに傾くことで、定着ローラ11がその長さ方向に移動したときに、シリンダ46のロッド46aを伸長又は収縮させて定着ローラ支持部材21をその傾きが修正されるように正方向又は逆方向に回動させる。このことにより、定着ローラ11をその移動方向とは反対方向に移動させるようにすることができる。この結果、定着ローラの長さ方向の移動自体を極小化することが可能になり、定着ローラや移動制限回転部材の更なる長寿命化を図ることができる。
【0122】
尚、本実施形態11においても、一方の定着ローラ支持部材21(及び移動制限回転部材25)のみを回動させるようにしたが、両方の定着ローラ支持部材21を回動させるようにしてもよい。
【0123】
また、定着ローラ支持部材21は、移動制限回転部材25と別体のものとしてもよく、この場合には、定着ローラ支持部材21を、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向に延びる軸回りに回動させるようにすればよい。そして、定着ローラ支持部材21と移動制限回転部材25とが別体であれば、移動制限回転部材25は、上記実施形態1〜3のいずれのものであってもよい。
【0124】
さらに、支持部材45の回動軸45aは、どのような位置にあってもよく、定着ローラ11のローラ軸X2が加圧ローラ1のローラ軸X1に対してどの程度傾くかによって適宜に設定すればよい。
【0125】
(実施形態12)
図19は、本発明の実施形態12を示し、定着ローラ11の外周面全周を覆う筒状のものからなりかつその内周面に支持部21aが形成された定着ローラ支持部材21をその中心軸回りに回転させることで、該定着ローラ支持部材21の支持部21aと定着ローラ11の外周面との間の摩擦力により該定着ローラ11をそのローラ軸X2回りに回転駆動させるようにしたものである。尚、本実施形態では、上記実施形態8及び9のように定着ローラ支持部材21を移動制限回転部材25に一体形成したものを用いるため、移動制限回転部材25も駆動回転されることになる。
【0126】
すなわち、本実施形態では、一方の定着ローラ支持部材21の外周面にギヤ部21bが形成されており、このギヤ部21bと、連結軸7aを介して不図示のモータ等によって回転駆動される駆動ギヤ7とが噛み合っている。この駆動ギヤ7が回転すると、定着ローラ支持部材21がその中心軸回りに回転し、このとき、定着ローラ支持部材21の支持部21aと定着ローラ11の外周面との間の摩擦力により定着ローラ11がそのローラ軸X2回りに回転することになる。このように、駆動ギヤ7は、定着ローラ支持部材21をその中心軸回りに回転させることで、定着ローラ11をそのローラ軸X2回りに回転駆動させる駆動手段を構成する。
【0127】
上記実施形態1等のように加圧ローラ1を駆動する場合には、加圧ローラ1が温度変化し易いために、その温度変化に伴って加圧ローラ1の外径が変化して記録媒体の送り速度が変化する可能性がある。しかし、本実施形態のように定着ローラ11を駆動するようにすれば、定着ローラ11は、通常、一定温度に支持されるので、定着ローラ11の外径が殆ど変化せず、記録媒体を確実に一定速度で送ることが可能になる。
【0128】
尚、上記のように一方の定着ローラ支持部材21をその中心軸回りに回転させることで、定着ローラ11をローラ軸X2回りに回転駆動させる場合には、その一方の定着ローラ支持部材21の支持部21aと定着ローラ11の外周面との間の摩擦力に対して、他方の定着ローラ支持部材21の支持部21aと定着ローラ11の外周面との間の摩擦力が小さいことが好ましい。具体的には、図20に示すように、他方の定着ローラ支持部材21の支持部21aにフッ素樹脂等の摺動部材28を設けたり、他方の定着ローラ支持部材21の支持部21aの面粗さを小さくしたりして、定着ローラ11の外周面との間の摩擦力を小さくするようにすればよい。このようにすると、一方の定着ローラ支持部材21の支持部21aと定着ローラ11の外周面との間では、滑りが生じずに定着ローラ11を確実に回転駆動することができる一方、他方の定着ローラ支持部材21の支持部21aと定着ローラ11の外周面との間では、滑りが生じ易く、この結果、定着ローラ11のローラ軸X2が、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向から見て、加圧ローラ1のローラ軸X1に対して斜めに傾いても、定着ローラ11に生じるスラスト力が小さくて、定着ローラ11の長さ方向の移動が生じ難くなる。
【0129】
また、図21に示すように、両方の定着ローラ支持部材21をその中心軸回りに回転させることで、定着ローラ11をローラ軸X2回りに回転駆動させるようにしてもよい。すなわち、両方の定着ローラ支持部材21にそれぞれギヤ部21bを形成するとともに、連結軸7aに、該両ギヤ部21bとそれぞれ噛み合う2つの駆動ギヤ7を取付固定して、該2つの駆動ギヤ7により両方の定着ローラ支持部材21を同時に回転させるようにする。このようにすることで、定着ローラ11のローラ軸X2が、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向から見て、加圧ローラ1のローラ軸X1に対して斜めに傾き難くなり、この結果、定着ローラ11の長さ方向の移動が生じ難くなる。
【0130】
さらに、駆動ギヤ7により定着ローラ支持部材21に加えられる力の方向は、定着ローラ11の長さ方向から見て、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向において定着ローラ11を加圧ローラ1に押し付ける方向(図22の矢印A方向)又は該方向(矢印A方向)に対して30°以内の傾き方向(図22の矢印B又はC方向(θ1≦30°,θ2≦30°))であることが好ましい。このような方向になるように、駆動ギヤ7のギヤ部21bに対する噛み合い位置(周方向位置)や駆動ギヤ7及びギヤ部21bの圧力角を設定すればよい。こうすれば、定着ローラ支持部材21の中心軸と定着ローラ11のローラ軸X2との平行度が安定に維持され、定着ローラ11の長さ方向の移動が生じ難くなる。
【0131】
さらにまた、上記駆動手段として、図23に示すように、駆動ギヤ7に代えて、連結軸9aを介してモータ等によって回転駆動される駆動プーリ9と、この駆動プーリ9と定着ローラ支持部材21の外周面との間に掛け渡された駆動ベルト55とを用いることもできる。このような駆動プーリ9及び駆動ベルト55により、定着ローラ支持部材21をその中心軸回りに回転させることができる。このように駆動ベルト55を用いると、駆動ギヤ7を用いる場合に比べて負荷変動が小さくなって、定着ローラ支持部材21の支持部21aと定着ローラ11の外周面との間に滑りが生じ難くなる。また、駆動ギヤ7を用いる場合に比べて負荷変動に伴う振動が生じ難く、振動により定着ローラ11に過剰の加圧力が作用するようなことがない。このような駆動ベルト55を用いる場合にも、定着ローラ支持部材21に加えられる力の方向は、定着ローラ11の長さ方向から見て、加圧ローラ1と定着ローラ11との対向方向において定着ローラ11を加圧ローラ1に押し付ける方向又は該方向に対して30°以内の傾き方向であることが好ましい。
【0132】
また、定着ローラ支持部材21は、上記実施形態1等のように移動制限回転部材25と別体のものとしてもよく、この場合には、移動制限回転部材25は、上記実施形態1〜3のいずれのものであってもよい。
【0133】
(実施形態13)
図24は、本発明の実施形態13を示し、加圧ローラ1も、定着ローラ11と同様の薄肉パイプ材で構成したものである。
【0134】
すなわち、本実施形態では、加圧ローラ1の薄肉パイプ材が、ステンレス鋼やリン青銅等のバネ性を有する金属からなり、定着ローラ11に対する加圧力の反力を弾性力で受け止める。これにより、加圧ローラ1の薄肉パイプ材が、定着ローラ11と同様に略楕円形状に弾性変形する。尚、本実施形態では、加圧ローラ1の薄肉パイプ材は、定着ローラ11と同じく、外径34mm、肉厚0.2mmのステンレス鋼(SUS304)を用いている。
【0135】
また、上記加圧ローラ1の下側には、該加圧ローラ1をそのローラ軸(弾性変形した薄肉パイプ材の中心軸)回りに回転可能に支持する加圧ローラ支持部材4が、不図示の固定部材に固定されている。この加圧ローラ支持部材4の定着ローラ11に対する上下方向の位置によって、加圧ローラ1及び定着ローラ11の弾性変形量が決まり、その位置は、所定の加圧力が得られる位置に設定される。加圧ローラ支持部材4は、加圧ローラ1の長さ方向から見て下半分だけの半円状のものであり、その半径は弾性変形前の加圧ローラ1の薄肉パイプ材の半径よりも大きくされており、弾性変形時には、その薄肉パイプ材の下側部分が加圧ローラ支持部材4に略沿うようになる。この加圧ローラ支持部材4の材料としては、ベークライトやPPSが好ましい。
【0136】
このように加圧ローラ1も、定着ローラ11と同様の薄肉パイプ材で構成することにより、加圧ローラ1と定着ローラ11との接触部であるニップ部を略フラット状にすることができ、これにより、種々の記録媒体(特に二重になった封筒等)を皺が生じないように搬送することができるようになる。
【0137】
尚、本実施形態では、加圧ローラ1を加圧ローラ支持部材4で回転可能に支持するようにしたが、例えば図25に示すように、加圧ローラ1の内部において該加圧ローラ1のローラ軸と平行に延びかつそれぞれ中心軸回りに回転可能に支持された2つの支持ローラ52によって回転可能に支持するようにしてもよい。この場合、この2つの支持ローラ52の間隔及び定着ローラ11に対する上下方向の位置を適切に設定して、所定の加圧力が得られるようにすることができる。
【0138】
また、加圧ローラ1を薄肉パイプ材で構成する場合には、この加圧ローラ1の内部にもハロゲンランプ17等の加熱手段を設けるようにしてもよい。このようにしても、加圧ローラ1の熱容量が小さいため、ウォーミングアップ時間を短縮することができる。
【0139】
(実施形態14)
図26は、本発明の実施形態14を示し、定着ローラ11の劣化を検知するようにしたものである。
【0140】
すなわち、本実施形態では、押付け部材5における引張コイルスプリング6側の端部の上側近傍に、押付け部材5による加圧ローラ1の定着ローラ11への押付け量を検出する押付け量検出手段としての検出センサ51が設けられており、この検出センサ51の本体から下側に突出している接触子51aが、押付け部材5により本体側(上側)に押圧されて移動するときの移動量から上記押付け量が分かるようになっている。尚、上記押付け量の検出は、どのような方法で行ってもよい。
【0141】
ここで、定着ローラ11(薄肉パイプ材12)に亀裂等が生じていない場合には、上記押付け量は所定範囲内にあるが、亀裂等が生じると、押付け量がその所定範囲から外れて増大する。したがって、押付け量が所定値以上になったときに、定着ローラ11の劣化を検知することができる。このように定着ローラ11の劣化を検知したときには、画像形成装置の作動を停止する。尚、押付け部材5による加圧ローラ1の定着ローラ11への押付けを解除する機構を設けて、定着ローラ11の劣化を検知したときに、その押付けの解除を行うようにしてもよい。
【0142】
このように検出センサ51により検出された押付け量に基づいて、定着ローラ11の劣化を検知するようにしたので、定着ローラ11の端部に亀裂等が生じたときに、直ぐに画像形成装置の作動を停止する等して、大きなトラブルが生じるのを未然に防止することができるとともに、ユーザに定着装置が故障したことを知らせることができる。
【0143】
尚、定着ローラ11の劣化を検知する代わりに、押付け部材5による加圧ローラ1の定着ローラ11への押付け量を制限する制限部材を設けるようにしてもよい。つまり、この制限部材を、上記検出センサ51と同様な位置に設けて、押付け部材5の回転軸5b回りの回転を制限するようにする。このようにすれば、定着ローラ11の端部に亀裂等が生じた場合に、押付け部材5が上記制限部材に当接して定着ローラ11側へ回動できなくなるため、上記押付け量が制限されて、定着ローラ11端部の破壊への進行を抑制することができ、大きなトラブルが生じるのを未然に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、複写機、プリンタ、FAX等の画像形成装置に用いられる定着装置において、定着ローラを薄肉パイプ材で構成し、その定着ローラの長さ方向の移動を制限する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の実施形態1に係る定着装置を示す断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】移動制限回転部材を示す断面図である。
【図4】第1濃度パターンを示す定着ローラ端部の部分側面図である。
【図5】実施形態2を示す定着ローラ端部近傍の断面図である。
【図6】実施形態3を示す図5相当図である。
【図7】実施形態4を示す図5相当図である。
【図8】実施形態5を示す図5相当図である。
【図9】実施形態5の変形例を示す図5相当図である。
【図10】実施形態6を示す図2相当図である。
【図11】実施形態6の変形例を示す図2相当図である。
【図12】実施形態7を示す定着装置の平面図である。
【図13】実施形態8を示す図1相当図である。
【図14】実施形態8の変形例を示す図5相当図である。
【図15】実施形態9を示す図12相当図である。
【図16】実施形態10を示す図12相当図である。
【図17】実施形態10の変形例を示す図12相当図である。
【図18】実施形態11を示す図12相当図である。
【図19】実施形態12を示す図1相当図である。
【図20】実施形態12の変形例を示す図1相当図である。
【図21】実施形態12の更なる変形例を示す図1相当図である。
【図22】駆動ギヤにより定着ローラ支持部材に加えられる力の方向を示す図である。
【図23】実施形態12の更に別の変形例を示す図1相当図である。
【図24】実施形態13を示す図2相当図である。
【図25】実施形態13の変形例を示す図2相当図である。
【図26】実施形態14を示す図2相当図である。
【符号の説明】
【0146】
1 加圧ローラ
7 駆動ギヤ(駆動手段)
9 駆動プーリ(駆動手段)
11 定着ローラ
12 薄肉パイプ材
13 ゴム層
15 摺動部材
17 ハロゲンランプ(加熱手段)
21 定着ローラ支持部材
21a 支持部
23 弾性部材
25 移動制限回転部材
25a 対向面
30 第1フォトセンサ(回転検知手段)
31 第2フォトセンサ(移動方向検出手段)
46 シリンダ(回動手段)
47 引張コイルスプリング(回動手段)
51 検出センサ(押付け量検出手段)
55 駆動ベルト(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ローラと、該加圧ローラと径方向に対向し、該加圧ローラによって径方向に加圧されるとともに、該加圧力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材で構成された定着ローラと、該定着ローラを加熱する加熱手段と、該定着ローラの長さ方向から見て定着ローラの外周面における上記加圧ローラと反対側の部分を覆うように略円弧状をなしかつ該反対側の部分を、定着ローラがそのローラ軸回りに回転自在となるように支持する支持部を有する定着ローラ支持部材と、上記定着ローラの端面と対向する環状の対向面を有し、該対向面に定着ローラの端面が当接することで定着ローラの長さ方向の移動を制限するとともに、該当接時に定着ローラの回転に連れて中心軸回りに回転するように支持された筒状の移動制限回転部材とを備えた定着装置であって、
上記移動制限回転部材の対向面は、該対向面の径方向内側に向かって上記定着ローラの端面から離れる方向に傾斜するテーパ状に形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
加圧ローラと、該加圧ローラと径方向に対向し、該加圧ローラによって径方向に加圧されるとともに、該加圧力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材で構成された定着ローラと、該定着ローラを加熱する加熱手段と、該定着ローラの長さ方向から見て定着ローラの外周面における上記加圧ローラと反対側の部分を覆うように略円弧状をなしかつ該反対側の部分を、定着ローラがそのローラ軸回りに回転自在となるように支持する支持部を有する定着ローラ支持部材と、上記定着ローラの端面と対向する環状の対向面を有し、該対向面に定着ローラの端面が当接することで定着ローラの長さ方向の移動を制限するとともに、該当接時に定着ローラの回転に連れて中心軸回りに回転するように支持された筒状の移動制限回転部材とを備えた定着装置であって、
上記移動制限回転部材の中心軸は、定着ローラ支持部材の円弧状である支持部の円中心を通っており、
上記移動制限回転部材の対向面は、上記定着ローラの長さ方向から見たときの該対向面の径方向内側縁の直径をD1とし、定着ローラの長さ方向から見たときの上記定着ローラ支持部材の支持部の半径の2倍をD2とし、定着ローラの薄肉パイプ材の厚みをtとしたとき、
t≦D2−D1≦10t
を満たすように形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
加圧ローラと、該加圧ローラと径方向に対向し、該加圧ローラによって径方向に加圧されるとともに、該加圧力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材で構成された定着ローラと、該定着ローラを加熱する加熱手段と、該定着ローラの長さ方向から見て定着ローラの外周面における上記加圧ローラと反対側の部分を覆うように略円弧状をなしかつ該反対側の部分を、定着ローラがそのローラ軸回りに回転自在となるように支持する支持部を有する定着ローラ支持部材と、上記定着ローラの端面と対向する環状の対向面を有し、該対向面に定着ローラの端面が当接することで定着ローラの長さ方向の移動を制限するとともに、該当接時に定着ローラの回転に連れて中心軸回りに回転するように支持された筒状の移動制限回転部材とを備えた定着装置であって、
上記移動制限回転部材は、上記定着ローラの端面において加圧ローラと定着ローラとの対向方向における加圧ローラと反対側の部分のみが、該移動制限回転部材の対向面に当接するように、該移動制限回転部材の中心軸が上記定着ローラのローラ軸に対して傾いた状態で支持されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1又は3記載の定着装置において、
定着ローラの端面は、移動制限回転部材の対向面への当接時に該対向面に略沿うテーパ状に形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
定着ローラの端面は、摺動部材で構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項5記載の定着装置において、
摺動部材は、定着ローラの端面に一体成形されたものであることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
定着ローラ支持部材の支持部は、弾性部材を介して定着ローラを支持していることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項7記載の定着装置において、
定着ローラ支持部材は、定着ローラの外周面全周を覆う筒状のものからなっていて、その内周面に支持部が形成されたものであり、
弾性部材は、外径が上記定着ローラ支持部材の内径よりも小さくかつ内径が定着ローラの外径よりも大きい環状のものであり、
上記弾性部材の外周面において加圧ローラと定着ローラとの対向方向における加圧ローラ側の部分が上記定着ローラ支持部材の内周面から離隔されていることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
移動制限回転部材は、加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動自在に構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項1又は2記載の定着装置において、
定着ローラ支持部材は、定着ローラの外周面全周を覆う筒状のものからなりかつその内周面に支持部が形成されたものであって、移動制限回転部材に一体形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項10記載の定着装置において、
定着ローラ支持部材の支持部は、移動制限回転部材の対向面から所定距離以上離れた位置に形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項10記載の定着装置において、
定着ローラ支持部材が一体形成された移動制限回転部材は、定着ローラの長さ方向両側にそれぞれ配設されており、
少なくとも一方の上記移動制限回転部材は、加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動自在に構成されているとともに、定着ローラの長さ方向中央側へ押圧されていることを特徴とする定着装置。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
定着ローラ支持部材は、加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに回動自在に構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項14】
請求項13記載の定着装置において、
定着ローラが該定着ローラの長さ方向に移動したときにその移動方向を検出する移動方向検出手段と、
定着ローラ支持部材を、加圧ローラと定着ローラとの対向方向に延びる軸回りに所定角度範囲内で正逆に回動させる回動手段とを備え、
上記回動手段は、上記移動方向検出手段により検出された移動方向に応じて、上記定着ローラ支持部材を正方向又は逆方向に回動させるように構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項15】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
定着ローラ支持部材は、定着ローラの外周面全周を覆う筒状のものからなりかつその内周面に支持部が形成されたものであって、定着ローラの両端部にそれぞれ対応して配設されているとともに、該定着ローラ支持部材の中心軸回りに回転自在に支持されており、
少なくとも一方の上記定着ローラ支持部材をその中心軸回りに回転させることで、該定着ローラ支持部材の支持部と上記定着ローラの外周面との間の摩擦力により該定着ローラをローラ軸回りに回転駆動させる駆動手段を備えていることを特徴とする定着装置。
【請求項16】
請求項15記載の定着装置において、
駆動手段は、一方の定着ローラ支持部材をその中心軸回りに回転させることで、定着ローラをそのローラ軸回りに回転駆動させるように構成されており、
上記一方の定着ローラ支持部材の支持部と上記定着ローラの外周面との間の摩擦力に対して、他方の定着ローラ支持部材の支持部と定着ローラの外周面との間の摩擦力が小さいことを特徴とする定着装置。
【請求項17】
請求項15記載の定着装置において、
駆動手段は、両定着ローラ支持部材をその中心軸回りに回転させることで、定着ローラをそのローラ軸回りに回転駆動させるように構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項18】
請求項15記載の定着装置において、
駆動手段により定着ローラ支持部材に加えられる力の方向が、定着ローラの長さ方向から見て、加圧ローラと定着ローラとの対向方向において定着ローラを加圧ローラに押し付ける方向又は該方向に対して30°以内の傾き方向であることを特徴とする定着装置。
【請求項19】
請求項15記載の定着装置において、
駆動手段は、駆動プーリと、該駆動プーリと定着ローラ支持部材の外周面との間に掛け渡されたベルトとを有していて、該駆動プーリ及びベルトにより定着ローラ支持部材をその中心軸回りに回転させるように構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項20】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
定着ローラ支持部材は、定着ローラの両端部にそれぞれ対応して配設されており、
上記定着ローラの薄肉パイプ材は、金属からなり、
上記薄肉パイプ材の少なくとも両端部の外周面及び内周面に、ショットピーニング処理が施されていることを特徴とする定着装置。
【請求項21】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
定着ローラ支持部材は、定着ローラの両端部にそれぞれ対応して配設されており、
上記定着ローラの薄肉パイプ材における両端部を除く外周面全周に、ゴム層が形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項22】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
加圧ローラは、定着ローラに対する加圧力の反力を弾性力で受け止める薄肉パイプ材で構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項23】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
定着ローラの回転を検知する回転検知手段を備え、
上記回転検知手段は、定着ローラの周方向の一部分のみを1回転毎に検出することで、該定着ローラの回転を検知するように構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項24】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
加圧ローラは、押付け部材により定着ローラに押し付けられることで該定着ローラを径方向に加圧するように構成され、
上記押付け部材による加圧ローラの定着ローラへの押付け量を制限する制限部材を備えていることを特徴とする定着装置。
【請求項25】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置において、
加圧ローラは、押付け部材により定着ローラに押し付けられることで該定着ローラを径方向に加圧するように構成され、
上記押付け部材による加圧ローラの定着ローラへの押付け量を検出する押付け量検出手段を備え、
上記押付け量検出手段により検出された押付け量に基づいて、上記定着ローラの劣化を検知するように構成されていることを特徴とする定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−215498(P2006−215498A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30990(P2005−30990)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】