説明

定着装置

【課題】ヒートローラーのニップ部から他の部分への無駄な熱伝導を阻止して、ヒートローラのニップ部を速やかに所定の温度まで上昇させる。定着動作に必要なヒートローラのニップ部のみを集中的に加熱してヒータの熱効率を向上する。
【解決手段】ヒートローラのローラ芯の内部にヒータを配置する。ローラ芯は、ニップ部を構成する主管部と、主管部の両側の支持管部とからなる。主管部と支持管部との隣接部に、主管部から支持管部への熱伝導を阻止する遮熱部を設ける。遮熱部の筒壁の周方向に複数個の遮熱孔を形成して遮熱部の断面積を主管部の断面積より小さくし、主管部から支持管部への無駄な熱伝導を遮熱部で阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙に加熱加圧処理を施すためのニップ部を構成するヒートローラおよびプレスローラを有し、前記ヒートローラ内に内蔵されたヒータで前記ニップ部を加熱しながら、トナー画像および記録用紙を加圧して、トナー画像を記録用紙に定着させる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機、ファクシミリ装置、複合機などの電子写真方式の画像形成装置に適用される定着装置は、トナー画像が形成された記録用紙をニップ部で加熱加圧処理することによりトナー画像を記録用紙に定着させている。このような定着装置では、ヒートローラを短時間で所定の温度に昇温すること、さらに、ヒートローラを効率よく加熱することが求められている。
【0003】
この種の要請に関して、特許文献1では、定着ローラの両端を熱伝導率が低い熱可塑性樹脂の軸受部材で支持して、定着ローラの熱が軸受、駆動歯車、ハウジングなどへ無駄に散逸するのを防いで、加熱時間を短縮している。また、特許文献2では、定着ローラと軸受部材との間に断熱部材を設けている。そこでは、ハロゲンヒータで加熱された定着ローラの熱が断熱部材によって軸受部材へと逃げることを防いで、定着装置の熱効率の向上を図っている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−161313号公報(段落番号0011、図3)
【特許文献2】特開2002−214949号公報(段落番号0052、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2によれば、定着ローラの両端から軸受などに熱が逃げるのを防いで、昇温時間の短縮や熱効率の向上をある程度は実現できる。しかし、この種の定着装置では、定着ローラとプレスローラとで構成されるニップ部を含む、定着ローラの全体を熱源で過熱している。そのため、定着ローラは定着動作に必要のない部分まで無駄に加熱されていることになりその分だけ無駄がある。また、定着ローラの昇温に要する時間が長くなる不利もある。当然、無駄に加熱する分だけ定着装置の熱効率が低下し消費電力が大きくなる。
【0006】
本発明の目的は、ヒートローラーのニップ部から他の部分への無駄な熱伝導を阻止して、ヒートローラのニップ部を速やかに所定の温度まで上昇させることができる定着装置を得ることにある。本発明の目的は、定着動作に必要なヒートローラのニップ部のみを集中的に加熱して不必要なエネルギー消費を排除し、これにより、ヒータの熱効率を向上し省エネルギーに貢献できる定着装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、記録用紙に加熱加圧処理を施すためのニップ部を構成するヒートローラおよびプレスローラを有し、トナー画像を記録用紙に定着させる定着装置を対象とする。ヒートローラは中空円筒状のローラ芯で構成されて、ローラ芯の内部にヒータが配置してある。ローラ芯は、ニップ部を構成する主管部と、主管部の両端に設けられて軸受で回転自在に支持される支持管部とからなる。以て、主管部と支持管部との隣接部に、主管部から支持管部への熱伝導を阻止する遮熱部を設けることを特徴とする。
【0008】
具体的には、遮熱部の断面積を主管部の断面積より小さくして、主管部から支持管部への熱伝導を阻止する。
【0009】
さらに具体的には、遮熱部の筒壁の周方向に複数個の遮熱孔を形成して、遮熱部の断面積を主管部の断面積より小さくする。あるいは、遮熱部の筒壁の周方向に遮熱溝を凹み形成して、遮熱部の断面積を主管部の断面積より小さくする。その場合の遮熱溝は周回状に形成することができる。
【0010】
上記の実施形態とは別の形態で熱伝導を阻止することができ、そこでは遮熱部を断熱材で形成し、主管部と支持管部とを遮熱部を介して接続することにより、主管部から支持管部への熱伝導を阻止する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の定着装置においては、ニップ部を構成する主管部と支持管部との隣接部に遮熱部を設けるので、ヒータで加熱された主管部の熱が支持管部へ伝導するのを遮熱部で阻止して、主管部の熱がニップ部以外の部分へ無駄に伝導するのを阻止できる。これにより、主管部から支持管部側への無駄な熱伝導に伴う主管部の温度低下を大幅に抑止でき、ヒートローラのニップ部を速やかに所定の温度まで昇温できる。また、ニップ部に対応するヒートローラの主管部のみをヒータで集中的に加熱するので、ヒートローラの加熱形態に無駄がなく、その分だけヒータの熱効率を向上させて省エネルギーに貢献できる。
【0012】
遮熱部の断面積を主管部の断面積より小さくする定着装置によれば、遮熱部の断面積が小さい分だけ熱伝導面積を小さくして、主管部から支持管部へ伝導しようとする熱総量を減少できる。その結果、主管部から支持管部側への無駄な熱伝導に伴う主管部の温度低下を大幅に抑止して、ヒートローラのニップ部を速やかに所定の温度まで昇温できる。また、ヒートローラに孔加工や溝加工を施すなど簡単な機械加工を施すことで、遮熱部の断面積を小さくし熱伝導を阻止できるので、ヒートローラの基本構造を変更する必要がなく、熱伝導阻止機能を付加するためのコストの増加を抑止できる。既存のヒートローラであっても簡単な追加工を施すだけで、熱伝導阻止機能を付加できる。
【0013】
筒壁の周方向に複数個の遮熱孔を形成して遮熱部を構成する定着装置によれば、ローラ芯に切削加工を施すだけで断面積を小さくすることができる。したがって、断熱材で形成した断熱部品などを使用して熱伝導を阻止する場合に比べて、ヒートローラを安価に製作することができ、定着装置のコストの上昇を抑えることができる。
【0014】
筒壁の周方向に遮熱溝を凹み形成して遮熱部を構成する定着装置によれば、上記と同様にヒートローラを安価に製作することができる。また、複数個の遮熱孔で遮熱部を構成する場合には、ヒートローラの内部の熱が遮熱部を介して散逸するのを防止できる点で有利である。とくに、遮熱溝を周回状に形成する場合には旋削加工によって遮熱部を形成できるので、遮熱部を付加することに伴う製造コストの増加を著しく抑止できる。使用時には、主管部の熱が遮熱部を介して支持管部へ伝導するのを避けられないが、遮熱溝を周回状に形成すると、遮熱部の周方向における熱伝導量を均一にできるので、遮熱部に隣接する主管部の周方向の熱分布が不均一になるのを解消できる。
【0015】
遮熱部を断熱材で形成して、主管部と支持管部との間に遮熱部を配置する定着装置によれば、主管部から支持管部側への無駄な熱伝導をさらに効果的に阻止できる。したがって、ヒートローラのニップ部を速やかに所定の温度まで昇温できるうえ、ヒーター熱の無駄な消費を抑止できる分だけヒータの熱効率を向上させて、定着装置の省エネルギーにさらに貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施例) 図1から図4に、本発明に係る定着装置を、コピー機能とファクシミリ機能とを備えた複合機の定着装置に適用した実施形態を示す。図2において複合機1は、枚葉紙(以下、単に用紙と記す)Pの一群が載置される給紙カセット2と、給紙カセット2から送られてきた用紙Pに対してトナー画像を転写して画像形成を行う画像記録部3と、画像記録部3で画像形成処理が施された用紙Pに対して加熱・加圧処理を施してトナー画像を用紙Pに定着させる定着装置4と、これら画像記録部3および定着装置4の上方に配置された画像読取部5とを含む。画像読取部5の上面には、各種操作ボタンを有する操作パネル6と、自動原稿搬送装置(ADF)7が設けられている。
【0017】
複合機1の内部には、給紙カセット2から画像記録部3を経て排紙部8に至る用紙搬送路Rが形成されている。コピー動作等に伴う画像形成時には、給紙カセット2の上端部に配置した給紙ローラ9を回転駆動することにより、用紙Pが搬送路Rに1枚ずつ繰り出される。画像記録部3は、帯電ドラム11を含む感光体ユニット10と、感光体ユニット10にトナーを供給するトナーカートリッジ12とを含んで構成する。
【0018】
図3に示すように、定着装置4は、ヒートローラ15とプレスローラ16とを具備し、両ローラ15・16の間に用紙Pに対する加熱加圧処理を施すニップ部Nが形成される。ヒートローラ15には、ヒートローラ15を介してニップ部Nを加熱するためのヒータ17、具体的にはハロゲンヒータが内蔵されている。ヒータ17で加熱される領域は、ニップ部Nの領域とほぼ同一であり、図1ではこの有効加熱領域を大径管部として図示している。ヒートローラ15は、熱伝導率が高いアルミニウム等の金属を中空円筒状に成形したローラ芯18の外周面に、トナーの剥離性向上を目的としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によるコーティング処理を施してなる。
【0019】
ヒートローラ15に対して並列状に配置されるプレスローラ16は、回転軸19の外周面にシリコンゴム等からなる弾性体層20を形成し、さらにその外周面に先と同様のPTFEコーティング処理を施してなる。回転軸19の両端部を圧縮ばね21・21で付勢することにより、プレスローラ16の弾性体層20はヒートローラ15に常時圧接される。画像形成時における両ローラ15・16は、ニップ部Nに送給された用紙Pを排紙部8へ送り出す方向に回転する。これらヒートローラ15、プレスローラ16等を四角箱状のケース22内に組み付けてユニット部品化している。
【0020】
ローラ芯18は、ニップ部Nを構成する主管部24と、ケース22に固定される軸受27・27でそれぞれ支持される支持管部25・25と、主管部24の両端に隣接配置される遮熱部26・26とで構成する。一方の支持管部25には、不図示の駆動部の終段ギヤに噛み合うギヤ28が装着されており、この駆動部からの回転駆動力を受けて、ヒートローラ15が回転駆動される。
【0021】
上記の遮熱部26・26は、先の主管部24から各支持管部25・25への熱伝導を阻止して、ヒートローラ15のニップ部Nを集中的に加熱するために設ける。図1および図4に示すように、遮熱部26・26は、ローラ芯18の筒壁に長円状の8個の遮熱孔31を一定間隔おきに形成して構成する。遮熱孔31はローラ芯18にミリング加工を施して形成する。このように遮熱孔31を筒壁の周方向へ一定間隔おきに形成することにより、主管部24と支持管部25は、周方向に隣接する遮熱孔31の間の橋絡部32のみを介して連続することとなる。その結果、遮熱部26の断面積を主管部24に比べて小さくすることができる。したがって、ヒータ17で加熱された主管部24の熱は先の橋絡部32を介して伝導するしかなく、支持管部25に伝導する熱量を減少して主管部24の温度低下を阻止できる。
【0022】
遮熱孔31の数は、8ヶ所とは限らず適宜変更できる。遮熱孔31は1列のみ形成したが、複数列であってもよい。複数列にした場合には、各列の遮熱孔31の位相をずらすことができる。
【0023】
(第2実施例) 図5に、本発明に係る定着装置の第2の実施形態を示す。定着装置4の構成は、第1実施例と同一であるので説明は省略する。そこでは、ローラ芯18の筒周壁に遮熱溝33を周回状に設けて遮熱部26とし、遮熱部26の断面積を主管部24に比べて小さくした。遮熱溝33は、ローラ芯18に切削加工を施して形成する。ヒータ17で加熱された主管部24の熱は、遮熱溝33の溝底の橋絡部32を介して伝導するしかなく、これにより支持管部25に熱が伝導するのを遅らせることができ、その分だけ主管部24の温度低下を阻止できることとなる。
【0024】
遮熱溝33は外周面に形成したが、内周面であってもよい。遮熱溝33は1列のみ形成したが、複数列であってもよい。遮熱溝33は、断続する状態で形成することができ、その場合の遮熱溝33は、先の遮熱孔31と同様にローラ芯18にミリング加工を施して形成するとよい。
【0025】
上記のように、各遮熱部26・26に複数個の遮熱孔31や遮熱溝33を設けて、遮熱部26の断面積を小さくすると、遮熱部26における熱伝導量を低下できる。したがって、支持管部25側への熱伝導による主管部24の温度低下を阻止して、ヒートローラ15のニップ部Nを速やかに所定の温度まで昇温することができる。加えて、主管部24の温度低下を阻止できる分だけ熱損失を低下しながら、ヒートローラ15のニップ部Nをヒータ17で集中的に加熱することができ、ヒータ17の熱効率を向上させて省エネルギーに貢献できる。
【0026】
遮熱孔31または遮熱溝33で遮熱部26を構成すると、ローラ芯18を切削加工するだけで断面積を小さくすることができる。したがって、別途断熱部材などを使用する場合に比べて安価に製作することができ、定着装置のコストの上昇を抑えることができる。
【0027】
(第3実施例) 図6に、本発明に係る定着装置の第3の実施形態を示す。そこでは遮熱部26を熱伝導率が低い耐熱性のプラスチック材(断熱材)で形成し、主管部24と支持管部25とを遮熱部26を介して接続することにより、主管部24から支持管部26への熱伝導を阻止できるようにした。遮熱部26は、主管部24と同じ外径の円筒体からなり、両側に主管部24および支持管部25に内嵌する薄肉の連結筒部35を備えている。図示していないが、主管部24および支持管部25と連結筒部35とはビスで締結固定する。なお、遮熱部26を形成する断熱材としては、耐熱性を有する繊維強化複合プラスチック材や、セラミックス、ゴムなどプラスチック以外の素材を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る定着装置の第1実施例を示す要部の断面図である。
【図2】本発明に係る定着装置が適用された画像形成装置の全体構成図である。
【図3】定着装置の全体構成図である。
【図4】図1おけるA―A線断面図である。
【図5】本発明に係る定着装置の第2実施例を示すヒートローラの断面図である。
【図6】本発明に係る定着装置の第3実施例を示すヒートローラの断面図である。
【符号の説明】
【0029】
4 定着装置
15 ヒートローラ
16 プレスローラ
17 ヒータ
18 ローラ芯
27 軸受
24 主管部
25 支持管部
26 遮熱部
31 遮熱孔
33 遮熱溝
N ニップ部
P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙に加熱加圧処理を施すためのニップ部を構成するヒートローラおよびプレスローラを有し、トナー画像を記録用紙に定着させる定着装置であって、
前記ヒートローラは中空円筒状のローラ芯で構成されて、該ローラ芯の内部にヒータが配置されており、
前記ローラ芯は、前記ニップ部を構成する主管部と、前記主管部の両端に設けられて軸受で回転自在に支持される支持管部とからなり、
前記主管部と前記支持管部との隣接部に、前記主管部から前記支持管部への熱伝導を阻止する遮熱部が設けてあることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記遮熱部の断面積を前記主管部の断面積より小さくして、前記主管部から前記支持管部への熱伝導を阻止する請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記遮熱部の筒壁の周方向に複数個の遮熱孔を形成して、前記遮熱部の断面積が前記主管部の断面積より小さくしてある請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記遮熱部の筒壁の周方向に遮熱溝を凹み形成して、前記遮熱部の断面積が前記主管部の断面積より小さくしてある請求項2または3記載の定着装置。
【請求項5】
前記遮熱溝が周回状に形成してある請求項4記載の定着装置。
【請求項6】
前記遮熱部が断熱材で形成されて、前記主管部と前記支持管部とが前記遮熱部を介して接続してある請求項1記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−156901(P2009−156901A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331614(P2007−331614)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】