説明

定着装置

【課題】加熱体の絶縁層の削れに起因して発生する加熱体の発熱層と可撓性部材との絶縁不良の発生を未然に防ぐことができるようにした定着装置の提供。
【解決手段】所定のバイアスVfを可撓性部材3の基層3cに印加したときに前記基層から加熱体1の絶縁層1cを通って発熱層1bに流れる電流を電流検出部材Siで検出し、前記電流検出部材で検出した電流値に基づいて前記絶縁層の削れ具合を判断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載する定着装置(定着器)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の複写機やプリンタに搭載する定着装置(定着器)として、フィルム加熱方式の定着装置が知られている。このフィルム加熱方式の定着装置は、セラミックス製の基板上に通電発熱抵抗体を有するヒータと、ヒータと接触しつつ移動する定着フィルムと、定着フィルムを介してヒータとニップ部を形成する加圧ローラと、を有している。特許文献1にはこのタイプの定着装置が記載されている。未定着トナー画像を担持する記録材はニップ部で挟持搬送されつつ加熱され、これにより記録材上の画像は記録材に加熱定着される。この定着装置は、ヒータへの通電を開始し定着可能温度まで昇温するのに要する時間が短いというメリットがある。従って、この定着装置を搭載するプリンタは、プリント指令の入力後、1枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:First Print Out Time)を短くできる。また、このタイプの定着装置は、プリント指令を待つ待機中の消費電力が少ないというメリットもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−204984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記定着装置において、定着フィルムは、熱伝導性、耐熱性及び耐久性を実現する目的で、SUS、Al、Niなどの金属材料を薄膜化して筒状に形成されている。ヒータとしては、セラミック基板上に、発熱ペーストを印刷した通電発熱抵抗層と、この通電発熱抵抗層の保護と絶縁性を確保する目的でガラスのコーティング層をその順に積層して構成したものが使用されている。定着フィルムには、静電的な現像に起因して発生する画像欠陥を防止する目的で、トナーと同極性の定着フィルムバイアス(以下、バイアスと記す)が印加される場合が多い。定着フィルムに印加されたバイアスにより定着フィルム表面を一定の電位に維持することで、記録材上にトナー画像を静電的に保持させ、画像品質の向上を達成している。定着フィルムはニップ部においてヒータのコーティング層即ち絶縁層と接触しながら移動するため、絶縁層と定着フィルムとの間に潤滑剤としてグリースを介在させることにより定着フィルムのスムースな移動を確保するようにしている。
【0005】
ところが、グリースの高温/高圧下での長期に渡る使用に伴いグリース成分が分離して凝集固化し、この凝集固化成分が絶縁層表面を研磨する研磨剤としての働きをすることがある。また、画像形成装置の設置環境によっても同様のことが考えられる。例えば画像形成装置の設置箇所の気中にゴミや粉塵などが著しく多い環境下においては、ゴミや粉塵などが定着装置の定着フィルムの内周面(内面)に付着し易い。そして定着フィルム内面に付着したゴミや粉塵などの異物が、上記グリースの凝集固化成分と同様、絶縁層を研磨する研磨剤としての働きをする現象をもたらしてしまう。ヒータの絶縁層が傷ついたり削れたりすると、ヒータの通電発熱抵抗層と定着フィルムとの間の絶縁性が確保できなくなる恐れがあるため、ヒータの絶縁層の削れを監視することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、加熱体の絶縁層の削れに起因して発生する加熱体の発熱層と可撓性部材との絶縁不良の発生を未然に防ぐことができるようにした定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するための本発明に係る像加熱装置の代表的な構成は、画像形成装置に用いられる定着装置であって、電源と、通電により発熱する発熱層と前記発熱層を覆う絶縁層とを有する加熱体と、前記絶縁層と接触しつつ移動する可撓性部材であり前記絶縁層と接触する導電性の基層を有する可撓性部材と、を有し、前記電源から前記基層に所定のバイアスを印加して記録材が担持するトナー像を記録材に保持させ前記加熱体の熱でトナー像を記録材上に加熱定着する定着装置において、所定の前記バイアスを前記基層に印加したときに前記基層から前記絶縁層を通って前記発熱層に流れる電流を電流検出部材で検出し、前記電流検出部材で検出した電流値に基づいて前記絶縁層の削れ具合を判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱体の絶縁層の削れに起因して発生する加熱体の発熱層と可撓性部材との絶縁不良の発生を未然に防ぐことができるようにした定着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は実施例1の定着装置の構成を表わす横断面模式図、(b)は(a)に示す定着装置の定着フィルムと定着フィルムに接触しているヒータの横断面拡大図
【図2】(a)は定着フィルムにバイアスを印加するバイアス印加回路図、(b)はヒータ削れを検出するヒータ削れ検出回路の一例の等価回路図
【図3】ヒータ削れ検出シーケンスの一例のフローチャート
【図4】実施例2の定着装置における定着フィルムバイアスと検出電流値との関係を表す図
【図5】実施例3の定着装置における定着フィルムバイアス印加時間と2つの積算電流値との関係を表す図
【図6】画像形成装置の構成を表わす横断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
<画像形成装置全体の説明>
図6は本発明に係る定着装置(定着器)を搭載する画像形成装置の構成を表わす横断面模式図である。この画像形成装置は、電子写真プロセスを利用して記録紙やOHPシートなどの記録材に画像を形成するレーザビームプリンタ(以下、プリンタと記す)である。本実施例1に示すプリンタは、ホストコンピュータなどの外部装置(不図示)から出力されるプリント指令に応じて制御部(制御手段)100が所定の画像形成シーケンスを実行し、この画像形成シーケンスに従って所定の画像形成動作を行う。制御部100はCPUとROMやRAMなどのメモリとからなり、メモリには画像形成シーケンス、ヒータ削れ検出シーケンス及び画像形成に必要な各種プログラムなどが記憶されている。
【0011】
本実施例1のプリンタは、記録材上に画像を形成する画像形成部と、記録材が担持する画像を記録材上に加熱定着する定着部(以下、定着装置と記す)と、を有している。画像形成シーケンスが実行されると、画像形成部において、先ずドラム型の感光ドラム(像担持体)101が矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転される。この感光ドラム101は、アルミニウムやニッケルなどによりシリンダ状に形成された基体を有し、この基体の外周面にはOPC、アモルファスシリコン等の感光材料が塗付されている。感光材料が塗付された感光ドラム101の外周面(表面)は、帯電ローラ(帯電部材)102によって所定の極性・電位に帯電される。次に、光走査露光装置(露光手段)103が外部装置から出力される画像データに応じて強度変調させたレーザ光を感光ドラム101表面の帯電面に走査露光する。これにより感光ドラム101表面の帯電面に画像データに応じた静電潜像(静電像)が形成される。そしてこの静電潜像は現像装置(現像手段)104によりトナー(現像剤)を用いて現像される。これにより感光ドラム101表面上に画像データに応じたトナー像(現像像)が形成される。一方、給送カセット106から記録材Pが送出しローラ107によりレジストローラ8に送られる。次いで記録材Pはレジストローラ108によって感光ドラム101表面と転写ローラ(転写部材)109の外周面(表面)との間の転写ニップ部Ntに搬送される。この記録材Pは転写ニップ部Ntで感光ドラム101表面と転写ローラ109表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。そしてこの搬送過程において転写ローラ109により感光ドラム1表面上のトナー像が記録材P上に転写される。これにより記録材Pはトナー像を担持する。トナー像転写後の感光ドラム101は、感光ドラム101表面に残留している転写残トナーがドラムクリーナー(クリーニング部材)105によって除去され、次の画像形成に供される。
【0012】
未定着のトナー像を担持した記録材Pは定着装置110の後述する定着ニップ部(ニップ部)Nに搬送される。定着装置110は、トナー像を担持した記録材Pを定着ニップ部Nで挟持搬送して記録材P上にトナー像を加熱定着する。トナー像が加熱定着された記録材Pは定着装置110を出で搬送ローラ111により排出ローラ112に搬送され排出ローラ112によって排出トレー113上に排出される。
【0013】
<定着装置の説明>
以下の説明において、定着装置及び定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。長さとは長手方向の寸法である。幅とは短手方向の寸法である。記録材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。幅とは短手方向の寸法である。図1の(a)は定着装置の構成を表わす横断面模式図、(b)は(a)に示す定着装置の定着フィルムと定着フィルムに接触しているヒータの横断面拡大図である。この定着装置はフィルム加熱方式の定着装置である。本実施例1に示す定着装置110は、セラミックヒータ(加熱体)1と、フィルムガイド(ガイド部材)2と、定着フィルム(可撓性部材)3と、加圧ローラ(バックアップ部材)4と、加圧ステー(加圧部材)5などを有している。セラミックヒータ(以下、ヒータと記す)1と、フィルムガイド2と、定着フィルム3と、加圧ローラ4と、加圧ステー5は、何れも長手方向に長い部材である。各部材の長さは、画像形成装置に用いられる最大サイズの記録材Pの幅よりも長い。以下に各部材の構成を説明する。
【0014】
<ヒータ>
ヒータ1は細長いセラミック製のヒータ基板1aを有している。そしてこのヒータ基板1aの表面上に、ヒータ基板1aの長手方向に沿って発熱ペーストを印刷した通電発熱抵抗層(以下、発熱層と記す)1bが形成されている(図1(b)参照)。そしてこの発熱層1bの保護と定着フィルム3との絶縁性を確保するために、発熱層1bの表面に絶縁層としてガラスをコーティングしている(以下、ガラス層と記す)。ヒータ基板1aの材料として、チッ化アルミニウムや酸化アルミニウムなどが用いられる。本実施例1では、ヒータ基板1aとして、酸化アルミニウムにより幅10.0mm、長さ270.0mm、厚さ1.0mmに形成した板状の部材を用いている。発熱層1bとしては、銀−パラジウム合金を厚さ10μmでスクリーン印刷して全体抵抗値が10〜50Ωに調整されたものを用いている。ガラス層1cとして、厚さ60μmのガラスを発熱層1bの表面にコーティングした。
【0015】
<フィルムガイド>
フィルムガイド2は、ヒータ1を支持する支持機能、及び、定着フィルム3の回転をガイドするガイド機能を具備するように耐熱性樹脂によって横断面略馬蹄形に形成されている。フィルムガイド2の下面の幅方向中央部には長手方向に沿って溝状の支持部2aが設けられており、この支持部2aでヒータ基板1aをガラス層1cがフィルムガイド2の下面から所定量突出するように支持している。フィルムガイド2の長手方向一端部と長手方向他端部は、それぞれ、フィルム端部移動規制用のフランジ(不図示)を介して定着装置110の上フレーム6に支持されている。
【0016】
<定着フィルム>
定着フィルム3は、可撓性を有するように厚みの薄い筒状に形成してあり、ヒータ1を支持させたフィルムガイド2にルーズに外嵌されている。この定着フィルム3は、耐熱性と高熱伝導性を併せ持つSUS(膜厚30μm)製の基層3aを有している。基層3aの外周面上には導電性を付与したプライマー層3bが形成され、プライマー層3bの外周面上にはPTFE、PFA、FEPなどのフッ素樹脂からなる離型層(膜厚12μm)3cがコーティングされている。
【0017】
<加圧ローラ>
加圧ローラ4は、金属製の芯金4cと、芯金4cの外周面上に設けられた弾性層4bと、弾性層4bの外周面上に設けられた離型層4aと、を有している。弾性層4bは、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの耐熱性ゴムにより形成されている。離型層4aは、PFA、PTFE、FEPなどのフッ素樹脂により形成されている。本実施例1では、芯金4cとして、アルミニウム合金製の芯金を用いている。弾性層4bとして、抵抗値10Ω以下の導電性を付与したシリコーンゴムのソリッドゴムを用いている。離型層4aとして、絶縁のPFAチューブ(膜厚50μm)を弾性層4bの外周面上に被覆した。この加圧ローラ4は、定着フィルム3の下方で定着フィルム3と平行に配設され、芯金4cの長手方向両端部が定着装置110の下フレーム8に軸受(不図示)を介して回転自在に支持されている。
【0018】
<加圧ステー>
加圧ステー5は、剛性を有する金属材料により横断面略逆U字形状に形成されている。この加圧ステー5は、定着フィルム3内のフィルムガイド2の上面に配設されている。そして加圧ステー5の長手方向一端部が上述のフィルムガイド2の長手方向一端部側のフランジに支持され、加圧ステー5の長手方向他端部が上述のフィルムガイド2の長手方向他端部側のフランジに支持されている。そしてこの加圧ステー5の長手方向一端部側と長手方向他端部側を下方向(定着フィルム3表面の母線方向と直交する方向)へ加圧バネ (不図示)により総圧39.2N(4kgf)〜294N(30kgf)程度の力で加圧している。この加圧バネの加圧力によりフィルムガイド2を介してヒータ1のガラス層1cが定着フィルム3の基層3aの内周面(内面)に加圧され、定着フィルム3表面が加圧ローラ4の外周面(表面)と加圧状態に接触する。これにより加圧ローラ4の弾性層4bを弾性変形させ定着フィルム3表面と加圧ローラ4表面との間に所定幅の定着ニップ部(ニップ部)Nを形成している。
【0019】
<定着装置の加熱定着動作の説明>
制御部100は、プリント指令に応じて定着モータ(駆動源)Mを回転駆動する。定着モータMの出力軸の回転は所定のギア列(不図示)を介して加圧ローラ4の芯金4aに伝達される。これにより加圧ローラ4は所定の周速度(プロセススピード)で矢印方向へ回転する。加圧ローラ4の回転は定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ4表面と定着フィルム3表面との摩擦力によって定着フィルム3に伝達される。これにより定着フィルム3は、定着フィルム3の基層3cの内周面がヒータ1のガラス層1c表面と接触しながら加圧ローラ4の回転に追従して回転する。定着フィルム3の基層3cの内周面(内面)には、ヒータ1のガラス層1c表面、及び、フィルムガイド2の外周面との摩擦抵抗を低減するために、フッ素樹脂粉末とフッ素オイルとからなるグリース(潤滑剤)が塗付してある。定着フィルム3が回転動作中に長手方向一端部側に移動すると、定着フィルム3の長手方向一端部がフィルムガイド2の長手方向一端部側のフランジに接触し、このフランジにより定着フィルム3の長手方向一端部側への移動が規制される。また定着フィルム3が回転動作中に長手方向他端部側に移動すると、定着フィルム3の長手方向他端部がフィルムガイド2の長手方向他端部側のフランジに接触し、このフランジにより定着フィルム3の長手方向他端部側への移動が規制される。これによって定着フィルム3は回転動作中に適切な位置に保持される。
【0020】
また制御部100は、プリント指令に応じて通電制御回路(通電制御部(不図示))を立ち上げる。これにより通電制御回路はヒータ1のヒータ基板1aに設けられた電極部(不図示)を介して発熱層1bに通電する。ヒータ1は、発熱層1bが通電により発熱し急速に昇温して定着フィルム3を加熱する。ヒータ1の温度はヒータ基板1aの裏面に設けられたサーミスタなどの温度センサ(温度検知部材)Stにより検知される。制御部100は、温度センサStからの出力信号(温度検知信号)を取り込み、この出力信号に基づいてヒータ1を所定の定着温度(目標温度)に維持するように通電制御回路を制御する。定着モータMを回転駆動し、且つ、ヒータ1を所定の定着温度に維持する温度制御を行っている状態において、未定着のトナー像tを担持する記録材Pがトナー像担持面を上向きにして定着ニップ部Nに導入される。この記録材Pは定着ニップ部Nにおいて定着フィルム3表面と加圧ローラ4表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程において記録材P上のトナー像tは定着フィルム3を介してヒータ1により加熱されて溶融し定着ニップ部Nで加圧されることにより記録材P上に加熱定着される。そしてトナー像tが加熱定着された記録材Pは定着ニップ部Nから排出され搬送ローラ111に向けて搬送される。
【0021】
<定着フィルムバイアスの説明>
本実施例1の定着装置110では、定着フィルム3に定着フィルムバイアス(以下、バイアスと記す)を印加している。定着フィルム3にバイアスを印加する理由を以下に説明する。例えば定着装置110の加熱定着処理速度を高速化するために定着温度を上げると、長期間の定着装置110の使用を通して定着フィルム3表面や加圧ローラ4表面がダメージを受け、定着フィルム3表面や加圧ローラ4表面の離型性が低下してしまうことがある。定着フィルム3表面の離型性が低下すると、記録材P上のトナー像を加熱定着する際にトナー像のトナーの一部が定着されずに定着フィルム3表面に付着するトナーオフセットが発生しやすくなる。記録材Pにおいて含水分量が多い場合、加熱定着時にトナー像のトナーの一部が記録材Pの搬送方向の後方に飛び散って定着される尾引きという現象が発生することがある。定着温度を上げると、加熱定着時に発生する水蒸気量が増えるので、この尾引きが発生しやすくなる。これらのトナーオフセットや尾引きが発生しやすい条件では、定着フィルム3表面や、加圧ローラ4表面にトナーによる汚れも蓄積しやすくなり、加熱定着時に記録材Pにトナー汚れを生じやすくなってしまう。このため、定着フィルム3の表面電位を制御して、定着フィルム3表面へのトナーの付着を防止することが重要になってくる。そこで、定着フィルム3にバイアスを印加し定着フィルム3表面をトナーと同極性の電位に帯電させることでトナーオフセット、尾引きの発生を低減でき、定着画像の品質を改善することが出来る。本実施例1では、−300〜−500Vのバイアス値の範囲で設定した一定のバイアス値のバイアスを定着フィルム3に印加することにする。バイアスのバイアス値は、トナーオフセットと尾引きの発生の防止を両立する条件から採用している。
【0022】
図2の(a)に定着フィルムにバイアスを印加するバイアス印加回路の一例を示す。バイアス印加回路は、バイアス電源(以下、電源と記す)Eから導電ブラシ(給電部材)30を介して定着フィルム3のプライマー層3bにバイアスVfを印加する。定着フィルム3において、定着フィルム3の記録材Pが通過しない非通紙領域W1の端部側周面にはプライマー層3bが露出している。このプライマー層3bを除く定着フィルム3表面において少なくとも記録材Pが通過する通紙領域Wpには離型層3aが被覆されている。定着フィルム3表面とともに定着ニップ部Nを形成している加圧ローラ4の長さは、定着フィルム3内のヒータ(不図示)のガラス層1cの表面と加圧ローラ4表面とが直接対向しないように、定着フィルム3と略同等か若干短くなるように設定されている。定着フィルム3表面のプライマー層3bには導電ブラシ30が接触しており、この導電ブラシ30を介して電源Eからプライマー層3bにバイアスVfが印加される。このバイアスVfはプライマー層3bを介して基層3cに流れる。そして加圧ローラ4の表面電位を制御させるため、加圧ローラ4の芯金4cはダイオード40を介してグランドに接地してある。導電ブラシ30は定着フィルム3のプライマー層3bに接触しているが、導電ブラシ30を定着フィルム3の基層3cに接触させて基層3cにバイアスVfを直接印加するようにしてもよい。
【0023】
<ヒータ削れの説明>
定着フィルム3の基層3c内面に塗付されているグリースは、高温/高圧下での長期に渡る使用に伴いフッ素樹脂粉末とフッ素オイルが分離し、オイル成分が枯渇することがある。オイル成分が枯渇すると、フッ素樹脂成分が凝集固化する。この凝集固化したフッ素樹脂成分は、一般には強度的に定着フィルム3の基層3cより弱いが、ヒータ1のガラス層1cよりも強い。このため、凝集固化したフッ素樹脂成分は、定着フィルム3の回転に伴いヒータ1のガラス層1cの表面を加圧状態に移動して、ガラス層1c表面を傷つけたり、削ったりする研磨剤としての働きをすることがある。また、プリンタの設置されている環境によっても同様のことが考えられる。例えばプリンタ設置箇所の気中のゴミ、粉塵などが著しく多い環境下においては、ゴミ、粉塵などが定着装置110内に入り込み定着フィルム3の基層3a内面に付着することがある。定着フィルム3の基層3a内面に付着したゴミ、粉塵などの異物は、定着フィルム3の回転に伴い定着フィルム3の基層3a内面とヒータ1のガラス層1c表面との間に侵入してしまう。この異物は、一般には強度的に定着フィルム3の基層3cより弱いが、ヒータ1のガラス層1cよりも強い。このため、定着フィルム3の基層3a内面とヒータ1のガラス層1c表面との間に侵入した異物は、定着フィルム3の回転に伴いガラス層1c表面を加圧状態に移動して、ガラス層1c表面を傷つける、削るなどの現象をもたらす。ヒータ1のガラス層1c表面が傷ついたり削れたりして摩耗する所謂ヒータ削れが発生すると、ヒータ1の発熱層1bと定着フィルム3との間の絶縁性が確保できなくなる恐れがある。ヒータ1の発熱層1bと定着フィルム3との間の絶縁性が確保できなくなると、ヒータ1の発熱層1bと定着フィルム3の基層3aとが電気的に導通してバイアスVfが発熱層1bに流れ、発熱層1bが発熱してしまう。バイアスVfの導通による発熱層1bの発熱を防止するためには、ヒータ1のガラス層1cの削れ即ちヒータ削れを監視する必要がある。
【0024】
<ヒータ削れ検出回路の説明>
図2の(b)にヒータ削れを検出するヒータ削れ検出回路の一例の等価回路図を示す。ヒータ削れ検出回路は、電源Eから定着フィルム3にバイアスVfを印加した際に、定着フィルム3からヒータ1のガラス層1cを通って発熱層1bに流れる電流Iを、発熱層1bと電気的に接続されている電流センサ(電流検出部材)Siで検出する。この電流センサSiはグランドに接地されている。そしてこの電流センサSiからの出力信号(電流検知信号)に基づいて制御部100がヒータ1のガラス層1cの削れ状態(削れ具合)を判断する。定着フィルム3のバイアス印加側から見た場合、定着フィルム3の抵抗Rfと、ヒータ1のガラス層1cの抵抗Rgと、ヒータ1の発熱層1bの抵抗Rhは、抵抗Rfと抵抗Rgと抵抗Rhが直列接続された状態である。このため、定着バイアス電源Eから電流センサSiまでの間の合成抵抗は(Rf+Rg+Rh)となる。定着フィルム3にバイアスVfを印加すると、電流センサSiに流れる電流Iは式(1)で表される。
I=Vf/(Rf+Rg+Rh)・・・式(1)
定着フィルム3にバイアスVfを印加した際、ヒータ1のガラス層1cにより絶縁が保たれている通常時は、ヒータ1のガラス層1cの抵抗Rgはガラス層1cが絶縁であるため∞であるので電流は流れず、I=0となる。しかしながら、ヒータ1の発熱層1bを覆っている部分のガラス層1cが削れた場合はガラス層1cの抵抗Rgが徐々に小さくなる。例えばヒータ1のガラス層1cが全て削れて発熱層1bが露出した場合には、ヒータ1のガラス層1cの抵抗Rgは0となり(Rg=0)、定着フィルム3の抵抗Rfとヒータ1のガラス層1cの抵抗Rgとの和(Rf+Rg)に対して電流が流れることになる。定着フィルム3の抵抗Rfは基層1cの抵抗になるので略0である(Rf≒0)。このため、実質的にはバイアスVfとヒータ1の発熱層1bの抵抗Rhとの関係で電流Iが流れることになる。従って、このヒータ1の発熱層1bに流れる電流Iを検出することで、ヒータ1のガラス層1cの削れを監視することが可能となる。電流センサSiで検出された電流値(以下、検出電流値と記す)Isと予め定めた閾値電流値Ithとの大小関係を調べる。閾値電流値Ithとは、ヒータ1のガラス層1cが削れた状態であり定着装置110を継続して使用する上で問題がある状態、あるいは、近い将来にヒータ1のガラス層1cが削れた状態に至る可能性があると判断される状態であることを表している。従って、定着フィルム3にバイアスVfを印加した際に、検出電流値Isが電流値Ithに対して、関係式(2)
Is>Ith・・・(2)
が成り立つ場合には、ヒータ1のガラス層1cが削れた状態であると判断される。ヒータ1のガラス層1cの抵抗値Rgで考えた場合、この抵抗値Rgが低下した状態を指し示すので、関係式(3)の関係下に置かれることになる。
Rg<Rth・・・(3)(Rth:ガラス層の閾値抵抗値)
<ヒータ削れ検出シーケンスの説明>
図3にヒータ削れ検出シーケンスの一例のフローチャートを示す。制御部100は、前述の画像形成シーケンスを実行する前にヒータ削れ検出シーケンスを実行する。このヒータ削れ検出シーケンスは、定着装置110の駆動を停止した状態即ち定着モータMの駆動を停止し、且つ、ヒータ1への通電を停止した状態で実行される。つまり、ヒータ削れ検出シーケンスは、定着フィルム3の移動が停止され、且つ、ヒータ1の発熱層1bへの通電が停止された状態で実行される。図3において、S1では、プリント指令を取り込む。S2では、電源EをオンしバイアスVfを導電ブラシ30を介して定着フィルム3のプライマー層3bに印加する。S3では、電流センサSiから検出電流値Isを所定のタイミングで1回サンプリングして取り込む。S4では、検出電流値Isが閾値電流値Ithに対して、Is>Ithの関係が成り立つか否かを判断する。S4において、Is>Ithの関係が成り立つ場合(YES)にはS5に進み、Is>Ithの関係が成り立たない場合(NO)にはS6に進む。S5では、ガラス層1cが削れた状態にあると判断する。即ち、ガラス層1cによる発熱層1bと定着フィルム3との絶縁性が不十分であると判断し、定着装置の交換を促す警告を発する処理例えば「定着ユニットの交換」をユーザーに促すメッセージを所定の表示部に表示する処理を行う。あるいは、ガラス層1cが削れた状態にあると判断すると同時にプリンタを停止させる処理を行う。S6では、ヒータ1のガラス層1cが削れた状態に至っていない判断し、画像形成シーケンスを実行する。
【0025】
本実施例1の定着装置110のように、ヒータ1の発熱層1bの抵抗値を10〜50Ωとし、バイアスVfを−300〜−500Vとした場合、ヒータ1のガラス層1cが摩耗している場合には検出電流値Isは6〜50Aになる。プリンタの使用される環境(100V/200V圏)や、バイアスの設定値などにより、検出電流値の範囲を小さくすることが可能であることは言うまでもない。本実施例1の定着装置110は、定着フィルム3の基層3c或いはプライマー層3bかにバイアスVfを印加したときに基層3c或いはプライマー層3bからヒータ1のガラス層1cを通って発熱層1bに流れる電流を電流センサSiで検出する。そしてこの電流センサSiの検出電流値Isに基づいてガラス層1cの削れ具合を判断するため、ヒータ1のガラス層1cの削れに起因して発生するヒータ1の発熱層1bと定着フィルム3との絶縁不良の発生を未然に防ぐことができる。
【0026】
[実施例2]
定着装置の他の実施例を説明する。本実施例2では、実施例1の定着装置と同じ部材については、同一の符号を付して説明を省略する。実施例1の定着装置110は、バイアス値が一定のバイアスVfを定着フィルム3に印加しているため、電流センサSiで検出される電流値Isは1つである。本実施例2に示す定着装置110は、バイアス値の異なる複数のバイアス即ちバイアス値の異なる2つのバイアスを定着フィルム3に印加している。そしてこの2つのバイアスを印加した際にヒータ1のガラス層1cを通って発熱層1bに流れる電流を2つのバイアスと個々に対応して設けられた2つの電流センサ(不図示)で検出している。
【0027】
電源Eから定着フィルム3に印加する2つバイアスをVf1,Vf2とし、電流センサで検出された電流値(検出電流値)をI1,I2と仮定する。このとき、検出電流値I1,I2は、ヒータ1の発熱体1bの抵抗値Rh、ヒータ1のガラス層1cの抵抗値Rgを用いて表すと、
I1=Vf1/(Rh+Rg)
I2=Vf2/(Rh+Rg)
となる。尚、定着フィルム3の抵抗値Rfは、実施例1と同様、Rf=0として扱った。ヒータ1のガラス層1cが削れて発熱層1bが露出した場合にはRg=0となるため、I1,I2はバイアスVf1,Vf2に依存した数値を示すことになる。あるいは、ヒータ1のガラス層1cが完全に削れた状態ではなく、発熱層1b上に若干なりとも残っている場合もある。バイアスVf1,Vf2が小さい場合は若干残っているガラス層1cにより絶縁が保たれているが、バイアスVf1,Vf2を大きくした場合には絶縁破壊を起こしてヒータ1の発熱層1bに通電される場合もある。
【0028】
図4は本実施例2の定着装置の定着フィルムバイアスVfと検出電流値Isとの関係を表す図である。図中のライン1は、ガラス層1cが削れて発熱層1bが露出した場合のバイアスVf1,Vf2と検出電流値I1,I2の関係を示している。ライン2は、若干ガラス層1cが残っている場合のバイアスVf1,Vf2と検出電流値I1,I2の関係を示している。ライン1、ライン2のいずれも、ヒータ1のガラス層1cが削れている場合には、
I1<I2
の関係が成り立っている。
【0029】
制御部100は、ライン1のように、検出電流値I1,I2がそれぞれ閾値電流値Ithを越えている場合(Is>Ithの関係が成り立つ場合)には、実施例1と同様、ガラス層1cが削れた状態であると判断する。そして定着装置の交換を促す警告を発する処理、例えば「定着ユニットの交換」をユーザーに促すメッセージを所定の表示部に表示する処理を行う。あるいは、ガラス層1cが削れた状態であると判断すると同時にプリンタを停止させる処理を行う。ライン2のように、検出電流値I1の時点では閾値電流値Ithは超えていないが、バイアスを大きくした際に検出された検出電流値I2が閾値電流値Ithを越えた場合(Is>Ithの関係が成り立つ場合)には、次のように判断する。即ち、発熱層1bが露出しかけた状態であり、近い将来にはガラス層1cが削れた状態に至ると判断する。そして定着装置の交換を促す警告を発する処理例えば「定着ユニットの交換」をユーザーに促すメッセージを所定の表示部に表示する処理を行う。あるいは、ガラス層1cが削れた状態であると判断すると同時にプリンタを停止させる処理を行う。一方、
I1<I2
の関係が成り立っていない場合において、バイアス値を大きくしたにもかかわらず検出電流値が増加しない場合は、ヒータ1のガラス層1cの削れに関しては問題ないと判断する。
【0030】
本実施例2の定着装置は、定着フィルム3にバイアス値の異なる複数のバイアスVf1,Vf2を印加して得られる複数の検出電流値I1,I2に基づいてガラス層1cの削れ具合を判断するので、ガラス層の削れ具合の監視精度を向上できる。
【0031】
[実施例3]
定着装置の他の実施例を説明する。本実施例3においても、実施例1の定着装置と同じ部材については、同一の符号を付して説明を省略する。実施例1の定着装置110は、バイアス値が一定のバイアスVfを定着フィルム3に印加している際に電流センサSiより所定のタイミングで1回サンプリングして得られる検出電流値Isに基づいてガラス層1cの削れ具合を判断する構成となっている。本実施例3の定着装置110は、バイアス値が一定のバイアスVfを定着フィルム3に印加している際に電流センサSiの検出電流値Isを所定時間サンプリングし積算する処理を繰り返し行うことで2つの(複数の)積算電流値ΣI1,ΣI2を得ている。そしてこの2つの積算電流値ΣI1,ΣI2に基づいてガラス層1cの削れ具合を判断するように構成されている。
【0032】
図5は本実施例3の定着装置の定着フィルムバイアス印加時間Tと2つの積算電流値ΣI,ΣI2との関係を表す図である。電源Eから定着フィルム3に印加する定着バイアス印加時間Tに対して電流センサSiの検出電流値Isを所定時間サンプリングし積算する処理を繰り返し行うことで得られる2つの積算電流値をそれぞれΣI1,ΣI2と仮定する。ヒータ1のガラス層1cが削れて発熱層1bが露出した場合には、電流は発熱層1bに通電され続ける。このため、タイミングT1における検出電流値Isの積算電流値ΣI1とタイミングT2における検出電流値Isの積算電流値IsのΣI2の大小関係は
ΣI1<ΣI2・・・(4)
となる。ヒータ1のガラス層1cが完全に削れた状態ではなく、発熱層1b上に若干なりとも残っている場合はバイアスVfを印加した際には電流は検出されないが、その後にガラス層1cが削れた状態となったとき電流は発熱層1bに通電される場合がある。その結果、タイミングT1における検出電流値Isの積算電流値ΣI1とタイミングT2における検出電流値Isの積算電流値IsのΣI2の大小関係は
ΣI1≒ΣI2・・・(5)
となる場合もある。図5おいて、ライン3は、ガラス層1cが削れて発熱層1bが露出した場合の定着フィルムバイアス印加時間Tと、2点のタイミングT1,T2の積算電流値ΣIとの関係を示している。ライン4は、若干ガラス層1cが残っている場合の定着フィルムバイアス印加時間Tと、2点のタイミングT1,T2の積算電流値ΣIとの関係を示している。ライン3は関係式(4)の場合であり、ヒータ1のガラス層1cが削れて発熱層1bが露出している状態である。
【0033】
制御部100は、ライン3のように、2つの積算電流値ΣI1,ΣI2のうち先に得られる積算電流値ΣI1に対して後に得られる積算電流値ΣI2が大きい場合に、ガラス層1cが削れた状態であると判断すると同時にプリンタを停止させる処理を行う。ライン4のように、2つの積算電流値ΣI1,ΣI2が略等しい場合に、発熱層1bが露出しかけた状態であり、近い将来にはガラス層1cが削れた状態に至ると判断する。そして定着装置の交換を促す警告を発する処理例えば「定着ユニットの交換」をユーザーに促すメッセージを所定の表示部に表示する処理を行う。
【0034】
本実施例3の定着装置は、電流センサSiの検出電流値Isを所定時間サンプリングし積算する処理を繰り返し行うことで得られる複数の積算電流値ΣI1,ΣI2に基づいてガラス層1cの削れ具合を判断するので、ガラス層の削れ具合の監視精度を向上できる。
【符号の説明】
【0035】
1…ヒータ、1b…通電発熱抵抗層、1c…ガラス層、3…定着フィルム、3c…基層、100…制御部、110…定着装置、E…定着フィルムバイアス印加電源、t…トナー像、P…記録材、Si…電流センサ、Vf…定着フィルムバイアス、Σ1,Σ2…積算電流値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられる定着装置であって、電源と、通電により発熱する発熱層と前記発熱層を覆う絶縁層とを有する加熱体と、前記絶縁層と接触しつつ移動する可撓性部材であり前記絶縁層と接触する導電性の基層を有する可撓性部材と、を有し、前記電源から前記基層に所定のバイアスを印加して記録材が担持するトナー像を記録材に保持させ前記加熱体の熱でトナー像を記録材上に加熱定着する定着装置において、所定の前記バイアスを前記基層に印加したときに前記基層から前記絶縁層を通って前記発熱層に流れる電流を電流検出部材で検出し、前記電流検出部材で検出した電流値に基づいて前記絶縁層の削れ具合を判断することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
制御手段を有し、前記電流検出部材で検出した電流値をIsとし、前記絶縁層の削れ具合を判断するための閾値電流値をIthとするとき、前記制御手段は、前記電流検出部材で検出した電流値IsについてIs>Ithの関係が成り立つ場合に、前記絶縁層の絶縁性が不十分であると判断することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記絶縁層の絶縁性が不十分であると判断したとき定着装置の交換を促す警告を発する処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
画像形成装置に用いられる定着装置であって、電源と、通電により発熱する発熱層と前記発熱層を覆う絶縁層とを有する加熱体と、前記絶縁層と接触しつつ移動する可撓性部材であり前記絶縁層と接触する導電性の基層を有する可撓性部材と、を有し、前記電源から前記基層に所定のバイアスを印加して記録材が担持するトナー像を記録材に保持させ前記加熱体の熱でトナー像を記録材上に加熱定着する定着装置において、バイアス値の異なる複数のバイアスを前記基層に印加したときに前記基層から前記絶縁層を通って前記発熱層に流れる電流を複数の前記バイアスと個々に対応して設けられた電流検出部材で検出し、前記電流検出部材のそれぞれで検出した電流値に基づいて前記絶縁層の削れ具合を判断することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
制御手段を有し、前記電流検出部材のそれぞれで検出した電流値をIsとし、前記絶縁層の削れ具合を判断するための閾値電流値をIthとするとき、前記制御手段は、前記電流検出部材のそれぞれで検出した電流値IsについてIs>Ithの関係が成り立つ場合、或いは前記電流検出部材のそれぞれで検出した電流値Isのうち少なくとも1つの電流値IsについてIs>Ithの関係が成り立つ場合に、前記絶縁層の絶縁性が不十分であると判断することを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記絶縁層の絶縁性が不十分であると判断したとき定着装置の交換を促す警告を発する処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項7】
画像形成装置に用いられる定着装置であって、電源と、通電により発熱する発熱層と前記発熱層を覆う絶縁層とを有する加熱体と、前記絶縁層と接触しつつ移動する可撓性部材であり前記絶縁層と接触する導電性の基層を有する可撓性部材と、を有し、前記電源から前記基層に所定のバイアスを印加して記録材が担持するトナー像を記録材に保持させ前記加熱体の熱でトナー像を記録材上に加熱定着する定着装置において、所定の前記バイアスを前記基層に印加したときに前記基層から前記絶縁層を通って前記発熱層に流れる電流を前記電流検出部材で検出し、前記電流検出部材で検出した電流値を所定時間サンプリングし積算する処理を繰り返し行うことで得られる複数の積算電流値に基づいて前記絶縁層の削れ具合を判断することを特徴とする定着装置。
【請求項8】
制御手段を有し、前記制御手段は、複数の前記積算電流値のうち先に得られる積算電流値に対して後に得られる積算電流値が大きい場合に、前記絶縁層の絶縁性が不十分であると判断することを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記絶縁層の絶縁性が不十分であると判断したとき定着装置の交換を促す警告を発する処理を行うことを特徴とする請求項8に記載の定着装置。
【請求項10】
前記電流検出部材による電流の検出は、前記可撓性部材の移動が停止され、且つ、前記発熱層への通電が停止された状態で行われることを特徴とする請求項1、請求項4又は請求項7に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133630(P2011−133630A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292255(P2009−292255)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】