説明

定量充填装置

【課題】 供給部が停止するまでの応答遅れ時間を有する定量充填装置において、充填中に供給部から供給される被計量物の時間当たりの供給量が変化しても、正確に目標重量値若しくはそれに近い重量の被計量物を充填することができるようにすること。
【解決手段】 被計量物を供給するポンプと、ポンプから供給される被計量物が充填される容器と、容器に充填された被計量物の重量を計量する計量部と、容器に所定の目標重量値gTの被計量物が充填される間に、目標重量値gTから所定時間間隔tUで得られた計量値gの差分平均値Δg〔aveC〕を減算して供給停止重量値gSCを求め(ステップS20)、計量値gが供給停止重量値gSCとなったときに被計量物6の供給を停止させる停止信号を出力させる演算制御部(ステップS22、24)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一定重量の液体、粉粒状体又は流動物等の被計量物を充填するため計量するときに、特に、ポンプ等の供給部が停止するまでの応答遅れによる計量誤差を補正できる定量充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の定量充填装置として図5に示すものがある。同図に示す定量充填装置1は、モータ等の駆動部2が駆動すると、ポンプ3のロータ(図示せず)を回転させることができ、ロータが回転すると、吸込み口4からタンク5内の液体(被計量物6)を吸い込んで、吐出口7から吐出することができる。この吐出された被計量物6は、供給管8を通って弁装置9のノズル9aから吐出される。ノズル9aから吐出される被計量物6は、容器10内に充填され、容器10内に充填された被計量物6の重量は、計量器11によって計量される。そして、容器10内に充填された被計量物6の重量(計量値)が予め設定された目標重量値となったときに、制御装置12は、駆動部2に対して停止信号を送信すると共に、弁装置9に対して閉信号を送信する。これによって、容器10に略目標重量値の被計量物6を充填することができる。
【0003】
図6は、計量値gが目標重量値gTとなったとき(時間ta1)に、制御装置12が駆動部2及び弁装置9に対して停止信号及び閉信号を送信した場合は、この送信の時間ta1からtK時間経過後の時間ta2にロータの回転が停止して充填が終了することを示す図である。
【0004】
図6から分かるように、応答遅れ時間tKが存在するので、容器10には、目標重量値よりもgOだけ余分に被計量物6が充填されてしまう(最終充填重量値gJ1)。この応答遅れ時間tKは、例えばポンプ3における回転するロータが停止するまでの時間であり、ロータの慣性モーメントに基づくものである。
【0005】
図7は、応答遅れ時間tK中に容器10に充填される液体の重量がgOであることを勘案して、目標重量値gTよりもgOだけ少ない充填重量(充填停止重量gS)となったときに、駆動部2及び弁装置9に対して停止信号等を送信するようにしたときの充填重量を示す図である。このようにすると、容器10に最終充填重量値gJ2(≒目標重量値gT)の液体を充填することができる。
【0006】
また、このような応答遅れ時間tK等に基づく充填誤差を小さくするための落差補正装置として、容器に目標重量値の被計量物を複数回充填して複数の計量データを求め、そして、これらの計量データを使用して充填補正値を求めて、この充填補正値に基づいて充填停止重量を求めるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−197321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図7に示す従来の方法や、特許文献1の落差補正装置では、例えば複数の容器10にそれぞれ一定重量の被計量物(液体)6を充填する作業において、まず、第1番目の容器10に充填された被計量物6の計量データを使用して、応答遅れ時間tK中に容器10に充填される被計量物6の重量gO、及び充填停止重量gSを求め、この充填停止重量gSを、第2番目の容器10に被計量物6を充填するときに使用しているので、例えば第1番目及び第2番目の容器10に被計量物6を充填するごとに、重量gOが変化したり、ばらつく場合は、目標重量値gTの被計量物6を容器10に充填することができないこととなる。
【0008】
このように、重量gOが変化等する要因として、例えば図5に示す供給管8の途中に設けられているフィルタ13の目詰まりの度合いが大きくなることによって、ノズル9aから吐出される被計量物6の流量が小さくなる(変化する)ことが挙げられる。
【0009】
図8は、その例を示すものであり、容器10内の被計量物6が目標重量値gTとなるように、図7に示す方法で第1回目、第2回目及び第3回目と充填を繰り返していくと、ノズル9aから吐出される被計量物6の流量が順次小さくなることがある。これによって、応答遅れ時間tK内にノズル9aから吐出される被計量物6の重量gOが変化するので、第1回目、第2回目及び第3回目の各充填重量(gJ1、gJ2、gJ3、)が順次小さくなる。その結果、充填重量がばらつくこととなり(ばらつきgB)、目標重量値gTの被計量物6を容器10に充填することができないこととなる。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、供給部が停止するまでの応答遅れ時間を有する定量充填装置において、充填中に供給部から供給される被計量物の時間当たりの供給量が変化しても、正確に目標重量値若しくはそれに近い重量の被計量物を充填することができる定量充填装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る定量充填装置は、被計量物を供給する供給部と、前記供給部から供給される被計量物を保持する保持部と、前記保持部に供給された被計量物の重量を計量する計量部と、前記保持部に所定の目標重量値の被計量物が供給される間に、所定時間間隔の計量値の変化量に基づいて、前記供給部による被計量物の供給を停止させる供給停止重量値を演算し、前記計量値が前記供給停止重量値となったとき又はこれよりも大きくなったときに前記供給部を停止させる信号を生成する演算制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係る定量充填装置によると、保持部に充填された被計量物の計量値が供給停止重量値となったときに、演算制御部は、供給部を停止させる信号を生成する。そして、この供給停止信号を生成したときから、供給部が停止するまでの応答遅れ時間の間にも被計量物が保持部に充填される。この応答遅れ時間の間に充填される被計量物を含む保持部の充填重量が、目標重量値若しくはそれに近い重量となるように、供給停止重量値が演算されている。また、応答遅れ時間の間に充填される被計量物の重量は、被計量物の時間当たりの供給量に応じて変化するが、充填中における所定時間間隔の計量値の変化量に基づいて供給停止重量値を求めているので、被計量物の時間当たりの供給量が変化しても、目標重量値若しくはそれに近い重量の被計量物を保持部に充填することができる。
【0013】
そして、この発明に係る定量充填装置において、前記供給停止重量値は、前記目標重量値から前記変化量に基づく補正重量を減算して得るようにするとよい。このように、目標重量値から補正重量を減算して供給停止重量値を得るようにすると、複雑な演算をせずに、短時間で供給停止重量値を求めることができ、今回充填中の被計量物の供給を適切なタイミングで停止させるために、この供給停止重量値を使用することができる。
【0014】
また、この発明に係る定量充填装置において、前記変化量は、一定時間間隔ごとに得られた複数の計量値の平均変化量とするとよい。このように、変化量の平均値を使用することによって、変化量のばらつきを補正することができ、計量精度を向上させることができる。
【0015】
更に、この発明に係る定量充填装置において、前記補正重量は、前記変化量に前記供給部の応答遅れ時間を乗じて得られた重量から演算するとよい。このようにすると、供給部が停止するまでの応答遅れ時間の間に供給部から供給される被計量物の重量を補正重量として求めることができる。これによって、応答遅れ時間の間に供給部から保持部に供給される被計量物の重量に基づく計量誤差を、この補正重量によって補正して、目標重量値若しくはそれに近い重量の被計量物を充填することができる。
【0016】
そして、この発明に係る定量充填装置において、前記変化量を、計量値の差分値として求めるとよい。例えば目標重量値の被計量物を保持部に充填しているときに、この充填中において得られた2つの計量値の差分を演算することによって差分値を得ることができ、比較的簡単に変化量を得ることができる。
【0017】
更に、この発明に係る定量充填装置において、前記供給部は、ステータと、ロータとを備える一軸偏心ねじポンプであり、前記ステータと前記ロータとの間に形成される空間に収容される被計量物を吐出口から吐出するものとしてもよい。供給装置として使用される一軸偏心ねじポンプは、ステータとロータとの間に形成される空間に被計量物を収容した状態で、この空間を移動させることによって吐出口から被計量物を吐出することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る定量充填装置によると、保持部に所定の目標重量値の被計量物が充填されていくときに、この充填中の所定時間間隔の計量値の変化量に基づいて供給停止重量値を演算し、この供給停止重量値で供給部を停止する信号を生成する構成としてある。従って、供給部から供給される被計量物の時間当たりの供給量が変化して、応答遅れ時間の間に充填される被計量物の重量が変化しても、正確に目標重量値若しくはそれに近い重量の被計量物を充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る定量充填装置の一実施形態を図1〜図4を参照して説明する。この定量充填装置14は、図1に示すように、タンク5内に貯留されている液体(被計量物6)をポンプ(供給部)3で吸い込んで、この吸い込んだ被計量物6を、弁装置9に設けられているノズル9aから吐出させて、複数の各容器10に一定重量ずつ充填することができるものである。そして、このように被計量物6を一定重量ずつ計量するたびに、例えばポンプ3を停止させるが、ポンプ3が停止するまでの応答遅れにより発生する計量誤差を補正できるようにしてある。
【0020】
ポンプ3は、図2に示すように、一軸偏心ねじポンプであり、ステータ15とロータ16とを備えている。ステータ15は、雌ねじ形状の内孔を有する筒形に形成され、この内孔の横断面形状が長円であり、例えば合成ゴムや合成樹脂で形成されている。ステータ15は、鉛直方向と平行して配置され、下側に開口する吸込み口4、及び上側で開口する吐出口7を備えている。
【0021】
ロータ16は、図2に示すように、雄ねじ形状に形成され、横断面形状が真円であり、螺旋形状のピッチは、ステータ15の1/2に設定されている。ロータ16は、例えばステンレス等の金属製であり、ステータ15の内孔15aに回動自在に収容されている。そして、ロータ16の上端部は、コネクティングロッド17及び減速機を介して駆動部(電気モータ)2と連結している。なお、ロータ16とコネクティングロッド17との連結部18、及びコネクティングロッド17と駆動側軸19との連結部18には、それぞれユニバーサルジョイントが設けられている。
【0022】
駆動部2は、例えば定速度モータであり、ポンプケーシング20に取り付けられている。また、駆動部2は、制御装置21と接続線22を介して電気的に接続している。制御装置21は、駆動信号及び停止信号を出力することによって、駆動部2を一定速度で回転駆動したり、停止させることができる。
【0023】
また、図1に示すように、ポンプ3は、ステータ15の吸込み口4がタンク5内に貯留されている被計量物(例えば蜂蜜等の液体)6内に浸漬されている状態で、架台(図示せず)に固定して設けられている。更に、ポンプ3の吐出口7には、供給管8の一端が接続されており、この供給管8の他端が弁装置9の入口9bに接続されている。そして、供給管8の途中には、被計量物6を濾過するためのフィルタ13が設けられている。
【0024】
この図1に示すポンプ3は、駆動部2が駆動してロータ16が所定方向に回転すると、タンク5内の被計量物6を吸込み口4から吸い込んで、ステータ15とロータ16との間に形成される空間に被計量物6を収容した状態で、この空間を移動させて吐出口7から被計量物6を吐出することができる。この吐出口7から吐出される被計量物6は、供給管8及びフィルタ13を通って弁装置9に供給される。
【0025】
弁装置9は、例えば電磁弁であり、図には示さないが、ソレノイドを駆動することによって弁体を作動させることができ、これによって、弁孔を開閉することができる。弁孔が開いた状態では、供給管8内の被計量物6がこの弁孔を通ってノズル(弁装置9の出口)9aから吐出される。弁孔が閉じた状態では、被計量物6はノズル9aから吐出されない。弁装置9は、図1に示す制御装置21と接続線23を介して電気的に接続している。制御装置21は、開信号及び閉信号を出力することによって、弁装置9を開閉動作させて、被計量物6をノズル9aから吐出したり、ノズル9aからの被計量物6の吐出を止めることができる。
【0026】
また、図1に示すように、弁装置9の下方には、容器(保持部)10が配置されており、ノズル9aから吐出された被計量物6は、この容器10内に充填される。この容器10は、計量器11の計量台上に載置されている。
【0027】
計量器11は、例えば電子秤であり、容器10に充填された被計量物6の重量を計量するものであり、被計量物6の計量信号を出力することができる。この計量信号は、接続線24を介して制御装置21に送信される。
【0028】
制御装置21は、図には示さないが、演算制御部、記憶部、入力部及び表示部等を備えている。演算制御部は、CPU(中央演算処理装置)で構成されており、記憶部に予め記憶されているプログラムに従って、例えば図4に示すフローチャートに記載された処理を実行するものである。入力部は、図3に示すように、例えば容器10に充填しようとする被計量物6の目標重量値gTを設定したり、設定時間間隔tUを設定することができる。この設定時間間隔tUは、被計量物6が容器10に充填されている途中において、容器10内の被計量物6の重量を、計量器11が演算制御部に逐次計量値を出力する時間間隔である。また、定量充填の運転命令や、停止命令をしたり、各種設定値を設定することができるものである。表示部は、設定された目標重量値gTや設定時間間隔tUを表示したり、運転中であることや停止であることを表示できるものである。
【0029】
演算制御部は、図3に示すように、容器10に所定の目標重量値gTの被計量物6が充填される間に、設定時間間隔tUの計量値gの変化量Δg1、Δg2、・・・、ΔgNを順次演算して、この変化量に基づいて、ポンプ3による被計量物6の供給を停止させる供給停止重量値gSCを演算することができる。そして、容器10内に充填された被計量物6の計量値gがこの供給停止重量値gSCとなったときに、被計量物6の供給を停止させる停止信号を駆動部2に出力するように構成されている。この供給停止重量値gSCは、目標重量値gTの被計量物6を容器10に充填するたびに、その充填中に演算して求められる。gS1、gS2、gS3、・・・、gSCは、第1回目、第2回目、第3回目、・・・、第C回目の充填中に求められた供給停止重量値である。この供給停止重量値gSCは、目標重量値gTよりも小さい重量値である。
【0030】
計量器11は、容器10内に充填されていく被計量物6の重量を計量することができ、計量値gがこの供給停止重量値gSCとなったときに、演算制御部が、ポンプ3の駆動部2に対して停止信号を出力する。この供給停止重量値gSCが、目標重量値gTよりも小さい重量として演算されている理由は、演算制御部が駆動部2に対して停止信号を出力したときからポンプ3のロータ16の回転が停止するまでには、応答遅れ時間tKが存在しているからである。この応答遅れ時間tKの間に、回転するロータ16によってノズル9aから被計量物6が吐出されて容器10に充填されるので、その分の重量Fを補正するために、計量値gが目標重量値gTよりも小さい供給停止重量値gSCとなったときに、演算制御部が停止信号を出力するようにしている。よって、応答遅れ時間tKに容器10に充填される被計量物6の重量をFとすると、重量F=(目標重量値gT−供給停止重量値gSC)となるように、供給停止重量値gSCを決定するようにしている。なお、この応答遅れ時間tKは、例えばポンプ3における回転するロータ16が停止するまでの時間であり、ロータ16の慣性モーメントに基づくものである。
【0031】
従って、被計量物6を容器10に充填していくときに、容器10内の被計量物6の計量値gが供給停止重量値gSCとなったとき、演算制御部がポンプ3を停止させる停止信号を出力する。すると、ロータ16が停止するまでの応答遅れ時間tKの間に被計量物6が容器10に充填され、ロータ16の回転が停止したときに、弁装置9が閉じられて、被計量物6の容器10への充填が終了する。これによって、目標重量値gT若しくはそれに近い重量の被計量物6を容器10に充填することができる。
【0032】
次に、この図1、図3及び図4を参照して、定量充填装置14を使用して目標重量値gTの被計量物6を容器10に充填する制御手順を説明する。図3は、この定量充填装置14を使用して、容器10に一定重量(目標重量値gT)の被計量物6を、例えば3回充填したときの充填時間tと、各時間tにおける計量値gとの関係を表している。図4は、定量充填装置14の制御手順を示すフローチャートである。
【0033】
まず、図4に示すステップS10において、オペレータは、入力部を操作して、目標重量値gT、設定時間間隔tU及び各種設定値を設定する。そして、ポンプ3の運転命令、及び計量器11による計量開始命令を操作する。すると、演算制御部は、ポンプ3を作動させて、タンク5内の被計量物6を供給管8及びフィルタ13に通し、弁装置9のノズル9aから略一定量ずつ吐出させることができる。これによって、被計量物6が容器10に充填されていくし、容器10内に充填されていく被計量物6の重量が計量器11によって計量される。
【0034】
そして、演算制御部は、ステップS12〜ステップS16において、充填開始から予め設定された時間が経過したときから、設定時間間隔tUが経過するごとに、容器10内に充填された被計量物6の計量値g1、g2、g3、・・・、gA、・・・を順次記憶部に記憶する。そして、計量値gAが記憶部に順次記憶されるたびに、今回の計量値gAと前回の計量値g〔A−1〕との差を演算して、計量値の差分値(変化量)Δg1、Δg2、・・・、ΔgB、・・・を記憶部に順次記憶していく。そして、差分値ΔgBのデータ数が予め設定されている個数Nとなったときは、次のステップS18に進む。
【0035】
図3には、第1回目の充填計量において、設定時間間隔tUが経過するごとの計量値g1、g2、g3、・・・、gA、・・・、及び計量値gの差分値Δg1、Δg2、・・・、ΔgNを示してある。
【0036】
演算制御部は、ステップS18において、記憶部に記憶されたN個の差分値Δg1、Δg2、・・・、ΔgNを平均して差分平均値Δg〔aveC〕を算出する(この差分平均値Δg〔aveC〕が補正重量である。)。Cは、1、2、・・・の自然数であり、差分平均値を求めた回数を表す。そして、目標重量値gTから差分平均値Δg〔aveC〕を減算して供給停止重量値gSCを算出し、この供給停止重量値gSCを記憶部に記憶する(ステップS20)。次に、容器10内に充填されていく被計量物6の計量値gが供給停止重量値gSCよりも大きいか否かを判定して(ステップS22)、被計量物6の計量値gが供給停止重量値gSCよりも大きく、YESと判定したときに、ポンプ停止命令(停止信号)を出力する(ステップS24)。
【0037】
ただし、ステップS22において、容器10内に充填されていく被計量物6の計量値gが供給停止重量値gSC以下であり、NOと判定したときは、記憶部に記憶されている全ての計量値gAを1個手前に移動させて記憶し、新計量値gAの格納場所を空ける(ステップS23)。そして、ステップS12に戻り、ステップS12〜ステップS23の処理を行う。この際、ステップS18では、最新に得られたN個の差分値Δg1〜ΔgNを平均して差分平均値Δg〔aveC〕を算出する。
【0038】
演算制御部が、駆動部2に対してこのポンプ停止信号を出力したときから、所定の応答遅れ時間tKが経過した後に、ロータ16の回転が停止し、しかる後に弁装置9が閉じられて、被計量物6の容器10への充填が終了する。このようにして、第1回目の充填において、最終充填重量値gJ1の被計量物6を容器10に充填することができる。この最終充填重量値gJ1は、目標重量値gTと同一若しくは、それよりも少し大きい許容重量範囲内の重量となるように、供給停止重量値gS1が設定されている。
【0039】
なお、ステップS20において、目標重量値gTから差分平均値Δg〔aveC〕を減算することによって供給停止重量値gSCを算出している理由は、被計量物6が所定の応答遅れ時間tKにノズル9aから吐出されて容器10に充填されてしまうので、計量値gが目標重量値gTよりもその分の重量Fだけ小さい値となったときに、ポンプ3を停止させるようにするためである。従って、応答遅れ時間tKにノズル9aから吐出される被計量物6の重量Fと、差分平均値Δg〔aveN〕とが一致、又は略一致するように、設定時間間隔tUが設定されている。
【0040】
図3には、ステップS18〜ステップS24における、目標重量値gT、供給停止重量値gS1、差分平均値Δg〔ave1〕、最終充填重量値gJ1、応答遅れ時間tK、及び供給停止重量値gS1となった時間td1等を示してある。
【0041】
そして、この第1回目の定量充填と同様に、図4に示すステップS10〜ステップS24を実行することによって、第2回目、第3回目、・・・の定量充填を行うことができる。ただし、図3に示すように、第1回目、第2回目、及び第3回目と定量充填を繰り返すに従って、計量値gを表す直線部分の傾きが小さくなっているが(図3では、傾きの変化を誇張して描いてある。)、これは、定量充填を繰り返すに従って、フィルタ13の目詰まりの度合いが大きくなり、ノズル9aから吐出される被計量物6の流量が小さくなっているからである。しかし、このように、ノズル9aから吐出される被計量物6の流量が充填の度に小さくなる場合でも、容器10に充填される被計量物6の重量が、目標重量値gTと同一若しくは、それよりも少し大きい許容重量範囲の重量となるように充填することができる。
【0042】
つまり、容器10に充填された被計量物6の計量値gが供給停止重量値gS1、gS2、又はgS3となって、被計量物6の供給を停止させようとするときに、ロータ16の回転が停止するまでの応答時間遅れtKが存在し、この応答遅れ時間tKの間に充填される被計量物6の重量Fは、被計量物6の時間当たりの供給量(フィルタ13を通過する被計量物6の流量)に応じて変化する。そこで、フィルタ13を通過する被計量物6の流量変化を、充填中における所定時間間隔tUにおける計量値g1、g2、・・・、gA、・・・の差分平均値Δg〔aveC〕の変化として取り入れて、目標重量値gTから差分平均値Δg〔aveC〕を減算することによって、フィルタ13を通過する被計量物6の流量変化に対応するそれぞれの供給停止重量値gSC(gS1、gS2、gS3)を算出することとしている。
【0043】
例えば、図3に示すように、第2回目の充填における計量値gを表す直線部分の傾きが第1回目のものよりも小さくなっているので、第2回目の充填は、第1回目の充填の場合よりも、フィルタ13を通過する被計量物6の流量が小さくなっている。これによって、第2回目の充填では、第1回目の充填のときよりも、応答遅れ時間tKの間に容器10に充填される被計量物6の重量が小さくなるが、それに応じて供給停止重量値を、第1回目のgS1よりも第2回目のgS2の方を大きな重量値として自動的に設定することができる。
【0044】
従って、フィルタ13を通過する被計量物6の時間当たりの流量が変化して、応答遅れ時間tKの間に容器10に充填される被計量物6の重量が変化することがあっても、正確に目標重量値gT若しくはそれに近い重量の被計量物6を容器10に自動的に充填することができる。
【0045】
また、この定量充填装置14によると、図4のステップS20に示すように、目標重量値gTから差分平均値Δg〔aveC〕(補正重量)を減算して供給停止重量値gSCを得るようにしているので、複雑な演算をせずに、短時間で供給停止重量値gSCを求めることができ、今回充填中の被計量物6の供給を適切なタイミングで停止させるために、この供給停止重量値gSCを使用することができる。
【0046】
更に、図4のステップS20に示すように、供給停止重量値gSCを求めるために、目標重量値gTから差分平均値Δg〔aveC〕を減算しているが、このように、差分平均値Δg〔aveC〕を減算しているので、差分値Δg1、Δg2、・・・、又はΔgNを減算する場合と比較して、差分値のばらつきを補正することができ、これによって、計量精度を向上させることができる。
【0047】
なお、この実施形態では、例えば被計量物6が蜂蜜等の粘度が比較的大きい液体であり、容器10に充填される蜂蜜の目標重量値gTを5Kgに設定してある。そして、蜂蜜5Kgの充填時間は約20秒であり、設定時間間隔tUは50msに設定してある。
【0048】
ただし、上記実施形態では、図4のステップS20に示すように、目標重量値gTから差分平均値Δg〔aveC〕を減算することによって供給停止重量値gSCを算出したが、これに代えて、目標重量値gTから補正重量Hを減算することによって供給停止重量値gSCを算出してもよい。この補正重量Hは、計量値gの平均変化量Eに応答遅れ時間tK及び係数Lを乗じて得られたものである。つまり、応答遅れ時間tKにノズル9aから吐出される被計量物6の重量Fは、計量値gの平均変化量Eと、応答遅れ時間tKとによって決まる重量であるので、この平均変化量Eと応答遅れ時間tKとの乗算値を使用して重量Fを求めることができる。そして、被計量物6の性状やポンプの種類に応じて、設定時間間隔tUを変更する必要があったり、応答遅れ時間tKに容器10に充填される被計量物6の重量が相違することがあるので、それに応じて係数Lを乗じるとよい。
【0049】
そして、上記実施形態では、図4のステップS20に示すように、目標重量値gTから差分平均値Δg〔aveC〕を減算することによって供給停止重量値gSCを算出したが、これに代えて、目標重量値gTから差分値Jを減算することによって供給停止重量値gSCを算出してもよい。この差分値Jは、
差分値J=(g〔N+n〕−gn)/N ・・・(1)
=Δg〔aveC〕
の式を演算して求めることができる。g〔N+n〕及びgnは、設定時間間隔tUごとに記憶部に記憶される計量値において、〔N+n〕番目のものと、n番目のものである。
【0050】
また、上記実施形態では、供給部として一軸偏心ねじポンプ3を使用したが、これ以外のプランジャーポンプ等を使用することができる。また、被計量物6が粉粒状体、流動物又はペースト等である場合、又は一定重量充填中に被計量物の密度が変化する場合にも、上記実施形態の定量充填装置を使用することによって、目標重量値若しくはそれに近い重量の被計量物6を充填することができる。
それらの被計量物6を供給することができる装置を使用すればよい。
【0051】
更に、上記実施形態では、目標重量値若しくはそれに近い重量の被計量物6を充填できるようにしたが、体積当たりの重量が一定である被計量物6に対しては、目標体積値若しくはそれに近い体積の被計量物6を充填することができる。
【0052】
そして、上記実施形態では、図4のステップS22に示すように、計量値が供給停止重量値gSCよりも大きくなったときに、ポンプ停止信号を出力したが、これに代えて、計量値が供給停止重量値gSCとなったときに、ポンプ停止信号を出力するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係る定量充填装置は、供給部が停止するまでの応答遅れ時間を有する定量充填装置等において、充填中に供給部から供給される被計量物の時間当たりの供給量が変化しても、正確に目標重量値若しくはそれに近い重量の被計量物を充填することができる優れた効果を有し、このような定量充填装置等に適用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の一実施形態に係る定量充填装置を示す図である。
【図2】同実施形態に使用されているポンプを示す拡大縦断面図である。
【図3】同実施形態に係る定量充填装置を使用して被計量物を充填するときの計量値と時間との関係を示す図である。
【図4】同実施形態の定量充填装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】従来の定量充填装置を示す図である。
【図6】同従来の定量充填装置を使用して目標重量値で供給停止信号を出力したときの計量値と時間との関係を示す図である。
【図7】同従来の定量充填装置を使用して供給停止重量値で供給停止信号を出力したときの計量値と時間との関係を示す図である。
【図8】同従来の定量充填装置を使用して供給停止重量値で供給停止信号を出力したときの充填重量値のばらつきを示す図である。
【符号の説明】
【0055】
2 駆動部
3 ポンプ
4 吸込み口
5 タンク
6 被計量物
7 吐出口
8 供給管
9 弁装置
9a ノズル
9b 入口
10 容器(保持部)
11 計量器
13 フィルタ
14 定量充填装置
15 ステータ
15a 内孔
16 ロータ
17 コネクティングロッド
18 連結部
19 駆動側軸
20 ポンプケーシング
21 制御装置
22、23、24 接続線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物を供給する供給部と、前記供給部から供給される被計量物を保持する保持部と、前記保持部に供給された被計量物の重量を計量する計量部と、前記保持部に所定の目標重量値の被計量物が供給される間に、所定時間間隔の計量値の変化量に基づいて、前記供給部による被計量物の供給を停止させる供給停止重量値を演算し、前記計量値が前記供給停止重量値となったとき又はこれよりも大きくなったときに前記供給部を停止させる信号を生成する演算制御部とを備えることを特徴とする定量充填装置。
【請求項2】
前記供給停止重量値は、前記目標重量値から前記変化量に基づく補正重量を減算して得ることを特徴とする請求項1記載の定量充填装置。
【請求項3】
前記変化量は、一定時間間隔ごとに得られた複数の計量値の平均変化量であることを特徴とする請求項1又は2記載の定量充填装置。
【請求項4】
前記補正重量は、前記変化量に前記供給部の応答遅れ時間を乗じて得られた重量から演算されたものであることを特徴とする請求項2又は3記載の定量充填装置。
【請求項5】
前記変化量が、計量値の差分値であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の定量充填装置。
【請求項6】
前記供給部は、ステータと、ロータとを備える一軸偏心ねじポンプであり、前記ステータと前記ロータとの間に形成される空間に収容される被計量物を吐出口から吐出するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の定量充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−3343(P2007−3343A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183721(P2005−183721)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】