説明

定量噴射機構および、この定量噴射機構を備えたエアゾール式製品

【課題】圧縮ガス態様のエアゾール式製品での確実な定量噴射動作を担保して技術の豊富化および、アフタードローの防止化を図る。
【解決手段】ステム2と押しボタン4との間に環状のピストン6で画定される定量室Aを形成している。押しボタン4を押圧操作するとステム2の横孔部2bが開くので、容器本体の内容物は圧縮ガスの作用で横孔部からピストン6の下側空間域である加圧室Bに矢印Dの経路で流入し、ピストン6をバネ7の付勢力に抗しながら上方向に移動させる。このピストンの移動にともない定量室の内容物が外部空間に矢印Cの経路で噴射される。なお、押しボタン4の押圧状態では、ボタン側基部5の弁作用部5dがステム側基部3の出力部分を閉じているので、定量室Aに内容物がステム側から流入することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮ガスを用いるタイプのエアゾール式製品の定量噴射機構に関する。
特にエアゾール容器のステム側部材と、これに対して移動する操作側部材との間に内容物噴射用の定量室を形成し、当該定量室の画定要素であるピストンを容器内部の圧縮ガスの作用で駆動してその容積(定量室容積)を小さくすることにより、(前回の定量噴射終了段階で)定量室に収納済みの内容物が外部空間に噴射されるようにした定量噴射機構に関する。
【0002】
すなわち、ステム出力部と操作部との間に定量室を形成し、かつ、圧縮ガス使用のエアゾール式製品を対象とし、操作部を作動モード設定のときと同じように例えば押下げるときに定量室の内容物が外部空間に噴射される態様の定量噴射機構である。
【0003】
また、ピストンがその最終位置(例えば最上位置)まで移動して内容物の本来の連続噴射を終えた段階で定量室領域と噴射口側の内容物通路域との間をシールし、このシール作用によりアフタードロー防止機能を備えた定量噴射機構も対象にしている。
【背景技術】
【0004】
本件出願人はすでにステム出力部と操作部との間に定量室を形成するタイプの定量噴射機構を提案している(特許文献1参照)。なお、以下の記載での[ ]付きの数字は当該特許文献1における参照番号を示している。
【0005】
この定量噴射機構は、
1. ステム[3]
2. 当該ステムに取り付けられた弁座部[10]
3. 当該ステムおよび当該弁座部の一体化部材に対して上下動可能な態様で設定された噴射ボタン本体[20]
4. 当該弁座部と当該噴射ボタン本体との間に設けられてこのボタン本体を上方向に付勢するコイルスプリング[15]
などの構成部材からなる。
【0006】
そして、弁座部[10]の環状弁座[17]と噴射ボタン本体[20]の環状弁体[27]とで定量空間域の出力弁を構成している。
【0007】
噴射ボタン本体[20]を押下げていない静止モードの場合、コイルスプリング[15]の弾性力により出力弁が開いている。このときステム[3]のいわゆる流入弁(=内容物通過用のステム周面孔部とこれを開閉するステムガスケットとからなる弁)が周知のコイルスプリングの作用により閉じている、ことは勿論である。
【0008】
噴射ボタン本体[20]をその静止モードの位置から押下げると、先ず当該ボタン本体のみがコイルスプリング[15]の弾性力に抗しながら下動して出力弁が閉じる。
【0009】
出力弁が閉じた後は、ステム[3],弁座部[10]および噴射ボタン本体[20]が一体となって、すなわち出力弁が閉じたまま下動してステム流入弁が開き、内容物が定量空間域に入り込む。
【0010】
次に、利用者が噴射ボタンの押下げ操作を止めると、ステム[3]が(ステム用の)コイルスプリングの弾性作用により上動して流入弁は閉じ、かつ、噴射ボタン本体[20]がコイルスプリング[15]の弾性作用により(弁座部[10]に対して)上動して定量空間域の出力弁は開く。そのため、定量空間域の内容物のみが外部空間に噴射される。
【特許文献1】特開2003−29991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の定量噴射機構は、噴射ボタンの押下げ操作時にステム流入弁と操作部との間に定量室を形成して、押下げ操作解除後の当該噴射ボタンの復帰動作時に当該定量室の内容物が外部空間に噴射されるという新しいタイプのものである。
【0012】
ただ定量噴射機構の構造上、この機構の適用対象となりえるのは液化ガス態様のエアゾール式製品であって、圧縮ガスを収納したエアゾール式製品は当該機構の適用対象外となる。
【0013】
そこで本発明では、ステムと操作部との間にピストンで画定される定量室を形成しておき、操作部を例えば押圧操作してステムの弁部分(流入弁)が開き、容器本体の圧縮ガスの作用で当該弁部分から流出する内容物を当該ピストンにいわば押し当てることにより当該ピストンを移動させ、このときの定量室の容積縮小にともないその中の(前回の定量噴射動作の終了段階に収納済みの)内容物が外部空間に噴射されるようにして、圧縮ガス態様のエアゾール式製品での確実な定量噴射動作を担保して技術の豊富化を図ることを目的とする。
【0014】
さらには、定量噴射動作の終り段階で定量室のいわば出力側をシールしてアフタードローを防止する、すなわち本来の内容物連続噴射後のまだステムの弁作用部が完全に閉じていない状態で噴射口側の通路域に残留している内容物が、容器内部の噴射用ガスの作用に基づく(定量室内容物に対するいわば噴射駆動源としての)ピストンの変形による定量室内の圧力増加にともなって、噴射口から垂れるのを防止し、これによりエアゾール式製品使用時における一層の利便化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)圧縮ガスを用いるタイプのエアゾール容器のステム側部材(例えば後述のステム2,ステム側基部3,11,天板状部材12)と、これに対して移動する操作側部材(例えば後述の押しボタン4,ボタン側基部5,13)との間に内容物噴射用の定量室(例えば後述の定量室A,A’)を形成した定量噴射機構において、
前記定量室は、容器内部の圧縮ガスから受ける圧力および当該圧力とは逆方向への弾性体(例えば後述のコイル状のバネ7)の付勢力に基づいて移動するピストン(例えば後述のピストン6,14)によって画定され、
前記ステム側部材は少なくとも、ステム本体部(例えば後述のステム2)と、当該ステム本体部の下流側で前記操作側部材への内容物通路域を形成して外周面が前記ピストンに対してのシール作用を呈する上流側筒状部(例えば後述の内側上筒状部3b,11b)と、当該ステム本体部の下流側で前記ピストンとの間に加圧室(例えば後述の加圧室B,B’)を形成する環状部(例えば後述の内側下筒状部3a,11a,連結部分3d,外側筒状部11d)と、当該加圧室への内容物の流入口(例えば後述の孔部3c,11c)とを備え、
前記操作側部材は少なくとも、操作本体部(例えば後述の押しボタン4)と、前記上流側筒状部の出力部分に対する弁作用部(例えば後述の弁作用部5d,13c)と、当該弁作用部の下流側で内容物通路域を形成する下流側筒状部(例えば後述の小径筒状部5a,上側筒状部13a)と、前記定量室から当該内容物通路域への連通部(例えば後述の内側溝状部5c,孔部13b)とを備え、
静止モードから定量噴射モードに前記操作本体部が操作されたとき、
先ず前記弁作用部が前記上流側筒状部の出力部分をそれまでの開状態から閉状態へと移行させ、続いて前記ステム側部材を駆動して前記ステム本体部の弁部分(例えば後述の横孔部2b)が開き、
その結果、容器本体の内容物が前記流入口から前記加圧室に流入し、前記圧縮ガスの作用で前記ピストンを移動させて前記定量室の容積を小さくすることにより、その中の既収納内容物が前記連通部および前記下流側筒状部を経て外部空間に噴射される、
ものに設定する。
(2)上記(1)において、
少なくとも前記上流側筒状部,前記環状部および前記流入口からなるステム側基部(例えば後述のステム側基部3,11)が前記ステム本体部と嵌合する態様で設けられ、
少なくとも前記弁作用部,前記連通部および前記下流側筒状部からなる操作側基部(例えば後述のボタン側基部5,)が前記操作本体部と嵌合する態様で設けられている、
ものに設定する。
(3)上記(1)または(2)において、
前記圧縮ガスの作用で前記ピストンが定量噴射モードの終り位置まで移動したときに前記定量室と前記連通部との連続性を遮断する機能を持つシール作用部(例えば後述の弁部材15)が設けられた、
ものに設定する。
(4)上記(3)において、
前記ステム側部材は、
前記下流側筒状部を囲む形で前記環状部と一体化されて前記弾性体を受け、かつ、前記ピストンとの間に前記定量室を形成する天板状部(例えば後述の天板状部材12)を備えたものであり、
前記シール作用部は、
前記定量室の形成用部材としても作用する態様で前記下流側筒状部と前記天板状部との間の空間域に設けられた弁部材(例えば後述の弁部材15)および、前記ピストンの一部で当該弁部材に当接する部分(例えば後述のシール作用筒状部14e)からなる、
ものに設定する。
【0016】
このような構成からなる定量噴射機構および、当該定量噴射機構を備えた圧縮ガス使用のエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明はこのように、操作部本体を例えば押圧操作してステムの弁部分(流入弁)を開き、このときの容器本体の圧縮ガスの作用で内容物が定量室画定用のピストンへの加圧室に流入して当該ピストンを定量室容積の縮小方向に移動させ、この移動にともない、前回の定量噴射動作の終了段階に定量室に収納済みの内容物が外部空間に噴射されるようにしているので、圧縮ガスを収納したエアゾール式製品における定量噴射動作の具体化,確実化を図ることができる。
【0018】
また、ステム側部材の構成要素をステム本体部とこれに嵌合するステム側基部としているので、既存のステムをそのままステム本体部に用いることができる。
【0019】
また、定量噴射動作の終り段階で定量室のいわば出力側をシールする、すなわち定量室とその下流側で噴射口にいたる通路域との連続性を遮断することによりアフタードローを防止できるようにしているので、エアゾール式製品使用時における一層の利便化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1乃至図7を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0021】
ここで、
図1は、本発明の定量噴射機構(その1)の静止モード(押しボタンが押圧操作されていなくて、ステム側の上流弁は閉じ、押しボタン側の下流弁は開いた状態)を示し、
図2は、図1の押しボタンが押圧操作されて静止モードから定量噴射モードへ移行するときの初期段階(押しボタンのみが少し下動してステム側と一体化した状態)を示し、
図3は、図2に続く定量噴射モード(押しボタンおよびステムはそれぞれ下死点まで移動して上流弁が開き、容器内部の圧縮ガスの作用で容器内容物が加圧室に流入して定量室用ピストンを上動させることにより、前回の静止モード復帰時に定量室に流入済みの内容物(図5参照)が噴射口の方に移動する状態)を示し、
図4は、図3の内容物定量噴射終了後に押しボタンの押圧操作が解除されて図3の定量噴射モードから図2の段階まで復帰した状態(押しボタン側およびステム側が一体のままステムの上死点まで復帰して、上流弁は閉じた状態)を示し、
図5は、図4の押しボタンがその上死点までさらに上動し、かつ、定量室用ピストンがバネの作用で下動して図1の静止モード直前の位置まで復帰した状態(加圧室の内容物や噴射口への通路部分の残留内容物が定量室に流入している状態)を示し、
図6は、本発明の定量噴射機構(その2:アフタードロー防止用の弁部材15を設けたタイプ)の静止モード(押しボタンが押圧操作されていなくて、ステム側の上流弁は閉じ、押しボタン側の下流弁は開いた状態)を示し、
図7は、図6の場合の定量噴射モードの最終段階(押しボタンの押圧操作は継続されて上流弁が開いたままで、かつ、定量室用ピストンがその最上位置に移動してアフタードロー防止用の弁部材15と密接することにより定量室とその下流側の内容物通路域とがいわば遮断されたシール状態)を示している。
【0022】
図1〜図7で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば通路域2a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えばステム2)の一部であることを示している。
【0023】
図1〜図5において、
Aは下流弁の先(直下流域)の押しボタン側に形成された定量室(図1参照),
Bは定量室用ピストンに上方向の力を付与するための加圧室,
Cは定量室から外部空間への内容物放出状況(図3参照),
Dは容器本体から加圧室への内容物流入状況(図3参照),
Eは静止モード復帰時の定量室への内容物流入状況(図5参照),
1は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の容器本体(図示省略)の開口端部側に取り付けられたマウンティングキャップ,
2はその下側部分が(マウンティングキャップ1の中央部分に取り付けられた)周知のハウジング(図示省略)の内部に配設され、かつ、周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性作用で図示上方向に付勢されて周知のステムガスケット(図示省略)とともに弁作用を呈するステム,
2aは内容物の通路域,
2bは加圧室Bへと通じる上流弁を構成する横孔部,
3はステム2の流出側外周面と強く嵌合した状態で図示上下方向に連動して後述のボタン側基部とともに弁作用(定量室Aへの流入弁作用)を呈するステム側基部,
3aはステム2と嵌合する内側下筒状部,
3bは内外径ともに内側下筒状部3aより小さくて内容物の通路域を構成する内側上筒状部,
3cは内側下筒状部3aと内側上筒状部3bとの環状接続部分の周方向に飛び飛びに形成された内容物通過用の孔部,
3dは内側下筒状部3aの外周面から外方に続く環状の連結部分,
3eは連結部分3dの上面側に形成されてその上端部分が後述のボタン側基部5(大径鞘状部5b)の内周面に密接する逆スカート部,
3fは連結部分3dの逆スカート部3eよりも外側の周方向に複数形成されて後述のボタン側基部5(脚部5f)を案内・保持する孔部,
3gは孔部3fの外側下面部分からなり後述の押しボタン4の(当該ステム側基部に対する)最上位置を規定して後述のボタン側基部5が当該ステム側基部から抜けるのを防止するための上段部分,
3hは後述の押しボタン4を案内する外側筒状部,
3jは連結部分3dの上面に間歇的環状の態様で複数個(例えば4個)形成されて後述のピストン6をその最下位置に保持する起立受け部,
4は上下動タイプの押しボタン,
4aは当該押しボタンの天井面の略中央に形成された筒状の垂下部,
4bは垂下部4aの中の(内容物)通路域,
5は押しボタン4の垂下部4aの下側内周面と強く嵌合した状態で図示上下方向に連動してステム側基部3とともに弁作用を呈する筒状のボタン側基部,
5aは垂下部4aと嵌合する上側の小径筒状部,
5bは小径筒状部5aの下端側から続く大径鞘状部,
5cは大径鞘状部5bの天井中央側の台地状部分に複数形成されて小径筒状部5aの内部空間域に通じる径方向の内側溝状部,
5dは大径鞘状部5bの天井中央側の台地状部分に形成されて内側上筒状部3bの上開口部とともに下流弁を構成する(テーパ状外周面を持った)弁作用部,
5eは大径鞘状部5bの天井縁側に沿って飛び飛びに形成された凸状部,
5fは大径鞘状部5bの下端から下方向に複数形成された脚部,
5gは脚部5fそれぞれの外面に形成されてステム側基部3の上段部分3gに対応した下段部分,
5hは後述のコイル状のバネ7を受ける天井面部分,
6はステム側基部3(内側上筒状部3b)の外周面およびボタン側基部5(大径鞘状部5b)の内周面に密接しながら上下動し、また、定量室Aおよび加圧室Bそれぞれの構成要素でもある環状のピストン(定量室用ピストン),
6aは下端部分が内側上筒状部3bの外周面に密接する擂鉢周面状部,
6bは下端部分が大径鞘状部5bの内周面に密接するスカート部,
7は大径鞘状部5bの天井中央側の台地状部分および天井縁側の凸状部5eの間の環状凹状部と、ピストン6の上面側の環状凹状部との間に設けられて、上記コイルスプリングの上方向へのステム付勢力や、定量噴射モードで加圧室Bを介して容器内部の圧縮ガスが当該ピストンに与える上方向への付勢力よりも十分に弱い弾性力を有し、ボタン側基部5に対して当該ピストンを下方向に付勢するコイル状のバネ
8は押しボタン4の流出側に取り付けられた筒状の噴射用ピース,
8aは内容物の通路域,
8bは内容物の噴射口,
をそれぞれ示している。
【0024】
ここで定量室Aは、内側上筒状部3b(ステム側基部)の上側外周面,大径鞘状部5b(ボタン側基部)の天井面,上側内周面や、ピストン6の上面などによって画定される空間域であり、ステム側からの内容物流入口(内側上筒状部3bの上開口部)や押しボタン側への内容物流出口(内側溝状部5c)を備えている。
【0025】
加圧室Bは、内側上筒状部3b(ステム側基部)の下側外周面,連結部分3d(ステム側基部)の上面,逆スカート部3e(ステム側基部),大径鞘状部5b(ボタン側基部)の下側内周面や、ピストン6の下面などによって画定される空間域であり、内容物の流入口・流出口(孔部3c)を備えている。
【0026】
また、ステム2,ステム側基部3,押しボタン4,ボタン側基部5,ピストン6および噴射用ピース8などはポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。また、ステム側基部3の上段部分3gやボタン側基部5(脚部5f)の下段部分5gは外力を受けることにより変形し、当該外力を受けなくなると元の状態に復帰しようとする。
【0027】
図1の静止モードでは、通常のエアゾール式製品と同様にステム2がコイルスプリング(図示省略)の弾性力に基づいて上動し、ステムの横孔部2bは周知のステムガスケット(図示省略)で閉塞されている。なお、この静止モードについての説明内容が図6の場合にも同様に妥当するのは勿論である。
【0028】
押しボタン4およびこれと嵌合したボタン側基部5はそれぞれバネ7の付勢力により上死点まで移動して、当該ボタン側基部の下段部分5gがステム側基部3の上段部分3gに係止され、また、当該ボタン側基部の弁作用部5dが当該ステム側基部の内側上筒状部3bの上開口部分から離間した状態になっている。
【0029】
すなわち、横孔部2bおよびステムガスケットからなる上流弁は「閉」状態で、弁作用部5dおよび内側上筒状部3bの上開口部分からなる下流弁は「開」状態である。
【0030】
また、定量室Aには前回の定量噴射モードから静止モードへの復帰時に内容物が流入している(図5参照)。ピストン6は、バネ7の下方向への付勢力によりその最下位置に移動した状態で、起立受け部3jに保持されている。
【0031】
図1の静止モードの押しボタン4を押圧操作すると、
(11)先ず、押しボタン4のみがバネ7の弱い弾性力に抗しながら下動してボタン側基部5の弁作用部5dがステム側基部3の内側上筒状部3bの上開口部分を閉じた状態、すなわち下流弁が閉じた状態となり(図2参照)、
(12)その後、当該下流弁の閉状態により押しボタン4といわば一体化した形のステム側基部3およびステム2が周知の上記コイルスプリングの強い弾性力に抗しながら下動して、横孔部2bおよびステムガスケットからなる上流弁が開き(図3参照)、
(13)その結果、容器本体の内容物が圧縮ガスの作用により加圧室Bへと流入してピストン6を押し上げ、定量室Aに入っていた内容物を噴射孔8bから外部空間に噴射する(図3参照)。
【0032】
そして、押しボタン4の押圧操作を解除すると、
(21)先ず、強い弾性力を持つ上記コイルスプリングの作用により、下流弁が閉じたままのステム2,ステム側基部3,ボタン側基部5および押しボタン4からなる一体化物が図2の状態に復帰して上流弁は「閉」となり、一方、ピストン6は略その最上位置に移動したままの状態が続き(図4参照)、
(22)その後、弱い弾性力を持つバネ7の作用により、ボタン側基部5および押しボタン4のみがさらに上動して(ステム2およびステム側基部3は上動せずに)下流弁が開くとともにピストン6が下動し(図5参照)、
(23)その結果、ピストン6で押し出される形となる加圧室側の内容物が定量室Aに流入するとともに、ボタン側基部5の上動などにともなう当該定量室の容積増加によって生じるバックサクション作用で小径筒状部5aから先の(噴射口8bにいたる)通路域の残留内容物が当該定量室にいわば逆流する。
【0033】
図2の(静止モードから)定量噴射モードへの移行初期では、ボタン側基部5が図1の静止モード位置から下がった分だけ定量室Aの容積が減少しており、この減少分相当の定量室内容物がボタン側基部天井面の複数の内側溝状部5cを経て押しボタン4の通路域4bの方に流出する。
【0034】
図3の定量噴射モードでは、上流弁が開いて容器内部(図示省略)と加圧室Bとが連通し、容器本体に収納された周知の圧縮ガスの作用で容器本体内容物が「横孔部2b−通路域2a−孔部3c」を経て加圧室Bに流入する(矢印D参照)。なお、このときの下流弁は閉じている。
【0035】
この流入(圧縮ガスの作用)により定量室Aと加圧室Bとのいわば境界部分であるピストン6が押し上げられ、これにともなって定量室Aに収納済みの内容物が「内側溝状部5c−小径筒状部5a−通路域4b−通路域8a−噴射口8b」を経て外部空間に噴射される。なお、上方に移動するピストン6は、その上面部分が大径鞘状部5bの天井中央側の(内側溝状部5cを構成する)径方向凸状部分や天井縁側の凸状部5eに当接した状態で停止する。
【0036】
図4の静止モードへの復帰開始段階では、下流弁が閉じてステム2と押しボタン4とがいわば一体化したままステム付勢用の上記コイルスプリングの作用で当該ステムの静止モード位置まで復帰している。すなわち、上流弁を構成する横孔部2bがそれまでの「開」から「閉」に移行した状態である。なお、このときの加圧室Bには定量噴射モードで容器本体から流入した内容物が収納されている。
【0037】
横孔部2bが閉じることにより容器内部の圧縮ガスからのピストン6に対する上方向駆動力もなくなるので、ボタン側基部5およびピストン6はそれぞれバネ7の弾性力で離間する方向に移動する。すなわちステム側基部3に対して、ボタン側基部5は上方向に移動し、ピストン6は下方向に移動する。
【0038】
図5の静止モードへの復帰直前段階では、このボタン側基部5の上方向への移動により下流弁の弁作用部5dがステム側基部3の流出口(=定量室Aへの流入口)である内側上筒状部3bから離間し、かつ、このピストン6の下方向の移動にともなって定量室Aの容積が漸次増加している。
【0039】
そのため図4において、加圧室Bや内側上筒状部3bの通路域などに入っている内容物は主にピストン6に押されることにより、また、図4のボタン側基部5の小径筒状部5aから噴射口8bにいたる通路域の残留内容物は定量室Aの容積増加にともなうバックサクション作用によりそれぞれ定量室内部に流入する。
【0040】
図示の定量噴射機構を組み立てるには、例えば、
(31)ステム側基部3の内側上筒状部3bに環状のピストン6を装着し、
(32)この装着後のピストン6の凹状部にコイル状のバネ7をセットし、
(33)このセット後のステム側基部3の孔部3fにその上方からボタン側基部5の脚部5fおよび下段部分5gを差し込んでステム側基部3とボタン側基部5とを一体化し、
(34)この一体化後のボタン側基部5の小径筒状部5aに(噴射用ピース8を組み込み済みの)押しボタン4の筒状の垂下部4aを嵌合させてステム側基部3から押しボタン4までの操作ユニットを形成し、
(35)この操作ユニットをステム2に取り付ける、
といった作業手順をとればよい。
【0041】
以上のステム2およびステム側基部3の一体化物や、押しボタン4およびボタン側基部5の一体化物をそれぞれ1部材の形にしてもよい。
【0042】
図6および図7は定量噴射モードの最終段階での噴射口8bからのアフタードロー(液垂れ)を防止するための弁部材15を設けたタイプの定量噴射機構に関するものである。なお、図6は静止モードを示し、図7は定量噴射モードの最終段階を示している。
【0043】
ここで新たに用いる参照番号は以下の通りであり、その他のマウンティングキャップ1,ステム2,押しボタン4,コイル状のバネ7および噴射用のピース8、ならびにこれらのアルファベット付き参照番号は図1〜図5のそれと同じものを用いる。
【0044】
図6および図7において、
A’は下流弁の先(直下流域)に形成された定量室,
B’は定量室用ピストンに上方向の力を付与するための加圧室,
D’は容器本体から加圧室への内容物流入状況,
11はステム2の流出側外周面と強く嵌合した状態で図示上下方向に連動して後述のボタン側基部13とともに弁作用(定量室Aへの流入弁作用)を呈するステム側基部,
11aはステム2と嵌合する内側下筒状部,
11bは内外径ともに内側下筒状部11aより小さくて内容物の通路域を構成する内側上筒状部,
11cは内側下筒状部11aと内側上筒状部11bとの環状接続部分の周方向に飛び飛びに形成された内容物通過用の孔部,
11dは内側下筒状部11aから外方に続く外側筒状部,
12はステム側基部11(外側筒状部11d)の上端部分に取り付けられて定量室A’を形成する筒状の天板状部材,
12aは定量室A’の天井面外側に相当する周方向部分に複数形成されて定量噴射モードの最終段階における後述のピストン14と当接してその最上位置を規定する外側凸状部,
12bは定量室の天井面内側に相当する周方向部分に飛び飛びに形成されて定量噴射モードの最終段階における後述のピストン14と当接する内側凸状部,
12cは当該天板状部材の上面中央部分に後述のボタン側基部13を囲む形で設けられてその内周面に後述の弁部材15のスカート部15aが密接する天板中央筒状部,
12dは静止モードの後述の弁部材15を受けるため当該天板中央筒状部の内周面に形成された環状の段部,
12eはバネ7の上側端部を受ける環状の溝状部,
13は押しボタン4の垂下部4aの下側内周面と強く嵌合した状態で図示上下方向に連動してステム側基部11とともに弁作用を呈する鞘状のボタン側基部,
13aは垂下部4aと嵌合する上側筒状部,
13bは当該ボタン側基部の下側周面部分に複数形成されて(当該ボタン側基部の)内部空間域と定量室A’とを連通させるための孔部,
13cは当該ボタン側基部の下端周面部分に形成されて内側上筒状部11bの上開口部とともに下流弁を構成する(テーパ状外周面を持った)弁作用部,
13dは孔部13bの直下方の周面部分に形成されて静止モードで後述の弁部材15の擂鉢周面状部15bが密接する環状の下方段部,
13eは孔部13bの直上方の周面部分に形成されて定量噴射モードで擂鉢周面状部15bが密接する環状のテーパ面,
13fは孔部13bより上方の周面部分に形成されて定量噴射モードで後述の弁部材15の逆擂鉢周面状部15cが密接する環状の上方下側段部,
13gは孔部13bより上方の周面部分に形成されて定量噴射モードで後述の弁部材15の外側上端部15dが当接する環状の上方上側段部,
14はステム側基部11の周面(内側上筒状部11bの外周面および外側筒状部11dの内周面)に密接しながら上下動し、また、定量室A’および加圧室B’それぞれの構成要素でもある環状のピストン(定量室用ピストン),
14aは下端部分が内側上筒状部11bの外周面に密接する擂鉢周面状部,
14bは下端部分が外側筒状部11dの内周面に密接するスカート部,
14cは上端部分が外側筒状部11dの内周面に密接し、かつ、上面部分が定量噴射モードの最終段階において天板状部材12の天井面と当接する逆スカート部,
14dは定量噴射モードの最終段階において天板状部材12の内側凸状部12bと当接する環状の段部,
14eは上端内縁部分が定量噴射モードの最終段階において後述の弁部材15の擂鉢周面状部15bと密接するシール作用筒状部,
14fは当該ピストンの下面部分の周方向に飛び飛びに例えば四個形成されて静止モードのステム側基部11の上底面部分と当接して保持されるリブ状部,
15は定量室A’を形成するとともに上下動できる態様で天板状部材12の外側筒状部12cとボタン側基部13との間の空間域に設けられたアフタードロー防止用の弁部材,
15aは下端部分が外側筒状部12cの内周面と密接するスカート部,
15bは静止モードではボタン側基部13の下方段部13dと密接し、定量噴射モードでは当該ボタン側基部のテーパ面13eと密接する擂鉢周面状部,
15cは静止モードではボタン側基部13の(テーパ面13eと上方下側段部13fとの間の)外周面と密接し、定量噴射モードでは当該ボタン側基部の上方下側段部13fと密接する逆擂鉢周面状部,
15dは静止モードでは天板状部材12の段部12dと当接し、定量噴射モードではボタン側基部13の上方上側段部13gと当接する外側上端部,
16は押しボタン4の天井面部分と天板状部材12の上面部分との間に設けられて、上記コイルスプリングの上方向へのステム付勢力よりも十分に弱い弾性力を有し、当該天板状部材に対して当該押しボタンを上方向に付勢するコイル状のバネ,
をそれぞれ示している。
【0045】
ここで定量室A’は、内側上筒状部11b(ステム側基部)の上側外周面,ピストン14の上面,外側筒状部11d(ステム側基部)の上側内周面,天板状部材12の天井面,弁部材15の下面や、ボタン側基部13の下側外面などによって画定される空間域であり、ステム側からの内容物流入口(内側上筒状部11bの上開口部)や押しボタン側への内容物流出口(孔部13b)を備えている。
【0046】
加圧室B’は、内側上筒状部11b(ステム側基部)の下側外周面,外側筒状部11d(ステム側基部)の内底面および下側内周面や、ピストン14の下面(スカート部14bおよび擂鉢周面状部14aを含む)などによって画定される空間域であり、内容物の流入口・流出口(孔部11c)を備えている。
【0047】
また、ステム側基部11,天板状部材12,ボタン側基部13,ピストン14および弁部材15などはポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0048】
図6の静止モードでは、
(41)ステム2,ステム側基部11および天板状部材12からなるステム側部材がマウンティングキャップ1(容器本体)に対する所定位置に保持され、
(42)操作側部材(押しボタン4およびボタン側基部13)がバネ16の作用で最上位置に、すなわちボタン側基部13が弁部材15を介して天板状部材12に係止された状態の位置に保持され、
(43)ピストン1がバネ7の作用でリブ状部14fを介してステム側基部11に係止された状態に保持されている。
【0049】
また、上述したように、静止モードにおける定量室A’には前回の噴射操作にともなって内容物が流入済みである。
【0050】
このときボタン側基部13の孔部13bは弁部材15で定量室A’からいわばシールされているので、定量室A’の内容物が孔部13b,通路域4bや噴射口8bなどを経て外部空間に漏れることはない。
【0051】
図6および図7の定量噴射機構の静止モードから定量噴射モードへの移行動作および定量噴射操作後の静止モードへの復帰動作は、図1〜図5のそれと同様である。
【0052】
すなわち、図6の静止モードの押しボタン4を押圧操作すると、
(51)先ず、押しボタン4およびボタン側基部13がバネ16の弱い弾性力に抗しながら下動してボタン側基部13の弁作用部13cがステム側基部11の内側上筒状部11bの上開口部分を閉じた状態、すなわち下流弁が閉じた状態となり(図2に相当)、
(52)その後、当該下流弁の閉状態により押しボタン4(およびボタン側基部13)といわば一体化した形のステム側基部11,ステム2および天板状部材12がステム付勢用の周知のコイルスプリングの強い弾性力に抗しながら下動して、横孔部2bおよびステムガスケットからなる上流弁が開き(図3に相当)、
(53)その結果、容器本体の内容物が圧縮ガスの作用により加圧室B’へと流入してピストン14をバネ7の弾性力に抗する形で押し上げ、定量室A’に入っていた内容物を噴射孔8bから外部空間に噴射する(図3に相当)。
【0053】
そして、押しボタン4の押圧操作を解除すると、
(61)先ず、強い弾性力を持つステム付勢用のコイルスプリングの作用により、下流弁が閉じたままのステム側部材(ステム2,ステム側基部11および天板状部材12)と操作側部材(押しボタン4およびボタン側基部13)からなる一体化物が図示上方向に復帰して上流弁は「閉」となり、一方、ピストン12は加圧室B’の内容物の作用により略その最上位置に移動したままに保持され(図4に相当)、
(62)その後、バネ16の作用で、ボタン側基部13および押しボタン4の一体物がさらに上動して(ステム2およびステム側基部11は上動せずに)下流弁が開くとともに、ピストン14がバネ7の作用で下動し(図5に相当)、
(63)その結果、ピストン14で押し出される形となる加圧室側の内容物が定量室A’に流入するとともに、ボタン側基部13の上動などにともなう当該定量室の容積増加によって生じるバックサクション作用で孔部13bから先の(噴射口8bにいたる)下流側通路域の残留内容物が当該定量室にいわば逆流する。
【0054】
図6および図7の定量噴射機構が図1〜図5のそれと基本的に相違している点はアフタードロー防止用の弁部材15を設けたことである。
【0055】
弁部材15は、図7に示すようにピストン14が加圧室B’の内容物圧力により上方向に移動しきった定量噴射モードの最終段階において、その擂鉢周面部分15bが当該ピストンのシール作用筒状部14eの上端内縁部分と密接する。なお、最終段階とは必ずしもピストン14がその最上位置まで移動したときに限定されるものではない。最上位置近くまで移動したときをこの最終段階としてもよい。
【0056】
この密接作用により、天板状部材12および弁部材15とピストン14との間の定量室空間域がボタン側基部13の連通用の孔部13bからいわば遮断されて、すなわち定量室A’と、当該連通用孔部およびその下流側の噴射口8bにいたる内容物通路域との連続性が断たれて、当該定量室区間域はシールされることになる。
【0057】
このシール作用の結果、当該ピストンがステム側基部11からの上方向の内容物圧力を受けて変形しようとしても、すなわち当該定量室区間域の容積が減少する方向に変形しようとしても、その影響が(シール作用筒状部14eと擂鉢周面部分15bとの間の)上記密接部分から噴射孔部8bまでの下流側通路域に入っている内容物に影響を及ぼすことはない。
【0058】
そのため、ピストン14の(図7の)最上位置までの移動にともなう内容物の連続噴射の後で、上記下流側通路域の内容物が噴射孔部8bから垂れるといったアフタードローを防止することができる。
【0059】
本発明は、以上述べた押しボタンタイプの操作部に限定されるのではなく、チルトタイプやレバータイプなどの各種操作部にも適用可能である。
【0060】
なお、図6および図7の定量噴射機構で用いるコイル状のバネ7の弾性力と上述のステム付勢力との大小関係は任意である。
【0061】
また、アフタードロー防止用のシール作用部は、図示のピストン14(シール作用筒状部4e)および弁部材15の態様に限定されるものではない。
【0062】
例えば、天板状部材12やピストン14などにアフタードロー防止用のシール作用部を、ピストン14がその最上位置まで移動したときには(当該シール作用部以外の)他の部材(ピストン14,天板状部材12やボタン側基部13など)に密接して、それまでの定量室A’と、連通用孔部13bおよびその下流側の噴射口8bにいたる内容物通路域との連続性が遮断される態様で、設けてもよい。
【0063】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、消臭剤,洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0064】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0065】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0066】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0067】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0068】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0069】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0070】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0071】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0072】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の定量噴射機構(その1)の静止モード(押しボタンが押圧操作されていなくて、ステム側の上流弁は閉じ、押しボタン側の下流弁は開いた状態)を示す説明図である。
【図2】図1の押しボタンが押圧操作されて静止モードから定量噴射モードへ移行するときの初期段階(押しボタンのみが少し下動してステム側と一体化した状態)を示す説明図である。
【図3】図2に続く定量噴射モード(押しボタンおよびステムはそれぞれ下死点まで移動して上流弁が開き、容器内部の圧縮ガスの作用で容器内容物が加圧室に流入して定量室用ピストンを上動させることにより、前回の静止モード復帰時に定量室に流入済みの内容物(図5参照)が噴射口の方に移動する状態)を示す説明図である。
【図4】図3の内容物定量噴射終了後に押しボタンの押圧操作が解除されて図3の定量噴射モードから図2の段階まで復帰した状態(押しボタン側およびステム側が一体のままステムの上死点まで復帰して、上流弁は閉じた状態)を示す説明図である。
【図5】図4の押しボタンがその上死点までさらに上動し、かつ、定量室用ピストンがバネの作用で下動して図1の静止モード直前の位置まで復帰した状態(加圧室の内容物や噴射口への通路部分の残留内容物が定量室に流入している状態)を示す説明図である。
【図6】本発明の定量噴射機構(その2:アフタードロー防止用の弁部材15を設けたタイプ)の静止モード(押しボタンが押圧操作されていなくて、ステム側の上流弁は閉じ、押しボタン側の下流弁は開いた状態)を示す説明図である。
【図7】図6の場合の定量噴射モードの最終段階(押しボタンの押圧操作は継続されて上流弁が開いたままで、かつ、定量室用ピストンがその最上位置に移動してアフタードロー防止用の弁部材15と密接することにより定量室とその下流側の内容物通路域とがいわば遮断されたシール状態)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
A:定量室
B:加圧室,
C:定量室から外部空間への内容物放出状況(図3参照)
D:容器本体から加圧室への内容物流入状況(図3参照)
E:静止モード復帰時の定量室への内容物流入状況(図5参照)
1:マウンティングキャップ
2:ステム
2a:内容物の通路域
2b:上流弁を構成する横孔部
3:ステム側基部
3a:内側下筒状部
3b:内側上筒状部
3c:内容物通過用の孔部
3d:環状の連結部分
3e:逆スカート部
3f:ボタン側基部5(脚部5f)を案内・保持する孔部
3g:ボタン側基部5が抜けるのを防止するための上段部分
3h:外側筒状部
3j:起立受け部
4:押しボタン
4a:垂下部
4b:内容物の通路域
5:ボタン側基部
5a:小径筒状部
5b:大径鞘状部
5c:径方向の内側溝状部
5d:下流弁を構成する弁作用部
5e:凸状部
5f:脚部
5g:下段部分
5h:天井面部分
6:環状のピストン(定量室用ピストン)
6a:擂鉢周面状部
6b:スカート部
7:コイル状のバネ
8:噴射用ピース
8a:内容物の通路域
8b:噴射口
【0075】
(以下は図6および図7のみで使用)
A’:定量室
B’:加圧室
D’:容器本体から加圧室への内容物流入状況
11:ステム側基部
11a:内側下筒状部
11b:内側上筒状部
11c:内容物通過用の孔部
11d:外側筒状部
12:筒状の天板状部材
12a:外側凸状部
12b:内側凸状部
12c:天板中央筒状部
12d:環状の段部
12e:環状の溝状部
13:鞘状のボタン側基部,
13a:上側筒状部
13b:内容物通過用の孔部
13c:テーパ状外周面を持った弁作用部
13d:環状の下方段部
13e:環状のテーパ面
13f:環状の上方下側段部
13g:環状の上方上側段部
14:環状のピストン(定量室用ピストン)
14a:擂鉢周面状部
14b:スカート部
14c:逆スカート部
14d:環状の段部
14e:シール作用筒状部
14f:リブ状部
15:アフタードロー防止用の弁部材
15a:スカート部
15b:擂鉢周面状部
15c:逆擂鉢周面状部
15d:外側上端部
16:コイル状のバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスを用いるタイプのエアゾール容器のステム側部材と、これに対して移動する操作側部材との間に内容物噴射用の定量室を形成した定量噴射機構において、
前記定量室は、容器内部の圧縮ガスから受ける圧力および当該圧力とは逆方向への弾性体の付勢力に基づいて移動するピストンによって画定され、
前記ステム側部材は少なくとも、ステム本体部と、当該ステム本体部の下流側で前記操作側部材への内容物通路域を形成して外周面が前記ピストンに対してのシール作用を呈する上流側筒状部と、当該ステム本体部の下流側で前記ピストンとの間に加圧室を形成する環状部と、当該加圧室への内容物の流入口とを備え、
前記操作側部材は少なくとも、操作本体部と、前記上流側筒状部の出力部分に対する弁作用部と、当該弁作用部の下流側で内容物通路域を形成する下流側筒状部と、前記定量室から当該内容物通路域への連通部とを備え、
静止モードから定量噴射モードに前記操作本体部が操作されたとき、
先ず前記弁作用部が前記上流側筒状部の出力部分をそれまでの開状態から閉状態へと移行させ、続いて前記ステム側部材を駆動して前記ステム本体部の弁部分が開き、
その結果、容器本体の内容物が前記流入口から前記加圧室に流入し、前記圧縮ガスの作用で前記ピストンを移動させて前記定量室の容積を小さくすることにより、その中の既収納内容物が前記連通部および前記下流側筒状部を経て外部空間に噴射される、
ことを特徴とする定量噴射機構。
【請求項2】
少なくとも前記上流側筒状部,前記環状部および前記流入口からなるステム側基部が前記ステム本体部と嵌合する態様で設けられ、
少なくとも前記弁作用部,前記連通部および前記下流側筒状部からなる操作側基部が前記操作本体部と嵌合する態様で設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の定量噴射機構。
【請求項3】
前記圧縮ガスの作用で前記ピストンが定量噴射モードの終り位置まで移動したときに前記定量室と前記連通部との連続性を遮断する機能を持つシール作用部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の定量噴射機構。
【請求項4】
前記ステム側部材は、
前記下流側筒状部を囲む形で前記環状部と一体化されて前記弾性体を受け、かつ、前記ピストンとの間に前記定量室を形成する天板状部を備えたものであり、
前記シール作用部は、
前記定量室の形成用部材としても作用する態様で前記下流側筒状部と前記天板状部との間の空間域に設けられた弁部材および、前記ピストンの一部で当該弁部材に当接する部分からなるものである、
ことを特徴とする請求項3記載の定量噴射機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の定量噴射機構を備え、かつ、噴射用圧縮ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−326647(P2007−326647A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125868(P2007−125868)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】