説明

定量式ポンプ

【課題】吐出内容物に空気が混じって定量不能が判明した後は無駄な吐出動作を不要にすることが可能で、かつ容器体が倒れても空気導入孔から内容物がこぼれ出ることがない定量式ポンプを提供する。
【解決手段】 シリンダ部材10へピストン部材80を摺動自在に嵌合した定量式ポンプであって、前記シリンダ部材の底壁12に吸込孔13を形成し、該吸込孔13へ吸込弁61を介して容器体内へ垂下する吸上げパイプ60を連結し、前記シリンダ底壁12に吐出口18を形成し、該吐出口を介してシリンダ部材へ連通する、吐出弁付き吐出路と容器体内へ通じる逃し路とを設け、該逃し路を開閉可能な開閉弁16、23と、該開閉弁を操作可能な操作部材40とを設け、前記容器体内容物の残量が減少した時点で、前記操作部材により前記開閉弁を開位置へ位置させることで前記逃し路を容器体内へ連通可能にして、容器体内容物の吐出およびシリンダ部材内への吸込みを不能に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定量吐出可能な定量式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体の口頸部へポンプ本体を装着すると共に、容器体内へ垂下する吸上げパイプをポンプ本体へ連結し、さらにポンプ本体から吐出弁を介してノズルを突設すると共に、容器本体に空気導入孔を設けた定量式ポンプが従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−101119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、容器体内容物の残量が減少すると、空気がポンプ本体内へ吸込まれるため、計量分が確実に吐出されなくなる。そうした場合には使用を中止することになるが、ポンプに内容物が残った状態で放置すると、容器体が倒れたりした場合等に内容物がポンプから漏洩したり、あるいは誤ってポンプを押下げたりする等して作動させた場合に、内容物で周囲を汚すことになる。そこで、ポンプ内に残った内容物をすべて吐出することが必要となるが、ポンプを作動させると、空気が混じった内容物がホンプ内へ吸込まれるため、ポンプで内容物を吸込むことができなくなるまで吐出動作を繰り返さなければならないという課題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、吐出内容物に空気が混じって定量不能が判明した後は無駄な吐出動作を不要にすることが可能で、かつ容器体が倒れても空気導入孔から内容物がこぼれ出ることがない定量式ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、シリンダ部材10へピストン部材80を摺動自在に嵌合した定量式ポンプであって、
前記シリンダ部材の底壁12に吸込孔13を形成し、該吸込孔13へ吸込弁61を介して容器体内へ垂下する吸上げパイプ60を連結し、
前記シリンダ底壁12に吐出口18を形成し、該吐出口を介してシリンダ部材へ連通する、吐出弁付き吐出路と容器体内へ通じる逃し路とを設け、
該逃し路を開閉可能な開閉弁31と該開閉弁を操作可能な操作部材40とを設け、
前記容器体内容物の残量が減少した時点で、前記操作部材により前記開閉弁31を開位置へ位置させることで前記逃し路を容器体内へ連通可能にして、容器体内容物の吐出およびシリンダ部材内への吸込みを不能に設けたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、シリンダ部材へピストン部材を摺動自在に嵌合した定量式ポンプであって、
前記シリンダ部材の底壁12に吸込孔13を形成し、該吸込孔へ吸込弁61を介して容器体内へ垂下する吸上げパイプ60を連結すると共に、シリンダ部材底壁から前記吸上げパイプを囲繞する垂下筒15を垂下して、該垂下筒前部周面に第1弁孔16を設け、
前記垂下筒15から支承筒17を前方突設して、該支承筒内へノズル嵌合筒20を摺動自在に嵌合させ、該ノズル嵌合筒の後端面を閉塞する後壁22から弁筒23を後方突設して前記第1弁孔16内へ嵌合させると共に、ノズル嵌合筒20の後部に第2弁孔24を形成し、該第2弁孔を開閉自在な弁体30を前記ノズル嵌合筒20内に設け、
前記支承筒17外面へ操作部材40を嵌合させて、該操作部材で前記ノズル嵌合筒20を前後方向へ移動可能に設け、
さらに前記シリンダ底壁12前部に吐出口18を設けて、該吐出口を、前記第2弁孔24へ連通させると共に前記第1弁孔16へ連通可能に設け、
前記ピストン部材の圧縮行程で、シリンダ部材内の内容物が前記吐出口18および第2弁孔24を通って前記弁体32を開いて吐出可能に設け、
前記容器体内容物の残量が減少した時点で、前記操作部材40により前記ノズル嵌合筒20を前方移動させて前記弁筒23を前記第1弁孔16から離間させ、前記ピストン部材の圧縮行程により吐出口18を介してシリンダ部材内から吐出する内容物を前記容器体内へ還流可能に設けたことを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明は、前記定量式ポンプの吐出弁を構成する弁体30に前記容器体内へ連通する空気導入孔33を形成すると共に、該空気導入孔に先端部を閉塞部材で閉塞可能な空気導入用パイプ50の基端部を連結して、該空気導入用パイプの先端面を、前記定量式ポンプの操作部材40先端面とほぼ一致させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、容器体内容物の残量が減少した時点で、シリンダ部材内の内容物を容器体内へ還流可能に設けたので、以後のポンプの吐出動作を不要にすることができる。
【0009】
また、本発明は、先端部を閉塞可能な空気導入用パイプを設け、これによって容器体内へ空気を導入するようにしたので、従来のように容器体に空気導入孔を設けた場合のように、容器体が倒れることがあっても内容物がこぼれ出ることがない。
【0010】
さらに、本発明は、空気導入パイプの先端面を操作部材(ノズル部材)先端面とほぼ一致させたので、操作部材内に貯留した内容物が空気導入パイプ内へ吸込まれることなく、したがって、これに起因して異音が発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る定量式ポンプの通常の使用状態を示す断面図である。
【図2】図1の容器体内容物が減少した場合における使用状態を示す断面図である。
【図3】他の実施形態を示す図1相当図である。
【図4】図3に示す他の実施形態における図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1において、1は容器体で、肩部を介して口頸部2を起立する。3は装着筒で、口頸部2上端へ載置した外向きフランジ内周へ周壁4を貫設させている。
【0014】
10はシリンダ部材で、周壁11下面を閉塞する底壁12の中央部に吸込孔13を形成すると共に、吸込孔13周縁から吸上げパイプ嵌合筒14を垂設し、かつ該吸上げパイプ嵌合筒の上端部を大外径部に形成している。またシリンダ部材底壁12から垂下筒15を垂設して装着筒3上端部外面へ嵌合させると共に、垂下筒15下端に形成した鍔を装着筒3の外向きフランジへ載置させている。
【0015】
垂下筒15の周面前部に筒状の第1弁孔16を設けると共に、垂下筒15から支承筒17を前方突設して、支承筒17上部とシリンダ部材底壁12前部との重合部分を切除して吐出口18に形成する。
【0016】
20はノズル嵌合筒で、支承筒17内へ前後動自在に嵌合させた周壁21前端にフランジを付設して該フランジを支承筒17前端へ当接させると共に、周壁21後端面を閉塞する後壁22中央部に形成した透孔内周から弁筒23を後方へ突設して第1弁孔16内へ嵌合させ、さらに周壁21後端部と後壁22との角部に第2弁孔24を周方向に所定の間隔をおいて複数形成する。
【0017】
30は第2弁孔24を開閉自在な弁体で、弁筒23前部内へ凹凸の係合手段を介して抜出し不能に嵌合させた弁頭31前面からパイプ嵌合筒32を前方突設すると共に、弁頭31の前端縁から円錐状に外方へ拡開する弁部32の外周縁部を第2弁孔24より前方のノズル嵌合筒周壁21部分内面へ弾性接触させ、さらに弁頭31にパイプ嵌合筒32へ連通する空気導入孔33を形成している。
【0018】
40は操作部材を構成するノズル部材で、前部を斜め下方へ屈曲した管状部41の後端部を内外二重筒42に形成して、該内外二重筒内へノズル嵌合筒20と支承筒17とを嵌合させ、かつ外筒と支承筒17とを螺合させ、さらに管状部41の後端部に複数の操作板43を突設する。
【0019】
50はノズル部材40内へ挿入された空気導入用パイプで、後端部をパイプ嵌合筒32内へ嵌合させると共に、前部を斜め下方へ屈曲させてノズル部材40の前部上面へ接触させ、さらに先端面をノズル部材40の先端面へほぼ一致させている。
【0020】
60は吸上げパイプで、上端部を吸上げパイプ嵌合筒14内へ嵌合させて容器体内へ垂下されていて、吸上げられた容器体内容物は大外径部内に設けられた吸込弁61を介してシリンダ部材内へ吸上げ可能になっている。
【0021】
70は連結筒で、容器体口頸部の上部外面へ嵌合させた周壁71の上端部を斜め下内方へ屈曲して形成したフック部72を垂下筒15下端に形成した鍔へ係合させることで垂下筒15を強固に容器体口頸部へ固定している。
【0022】
80はピストン部材で、シリンダ部材10の上端部外面へ嵌合された外筒81上端から内向きフランジを介して垂下する内筒82下端から内向きフランジを介して案内筒83を起立する基部84と、外筒81外面へ上下動自在に嵌合された周壁85の頂壁中央部から嵌合筒86を垂下する押下げ部87と、シリンダ部材内へ上下動自在に嵌合された筒状摺動部88の底板89中央部から嵌合筒86の下部内へ連結筒90を嵌合させた筒状ピストン部91と、内筒82下部に形成された上向き段部92と周壁85頂壁との間に設けられて押下げ部87を上方付勢するコイルスプリング93とから構成されている。なお、基部84と押下げ部87と筒状ピストン部91とコイルスプリング93とは分解可能であり、したがって洗浄が容易である。
【0023】
次に作用について説明する。
ノズル部材40から容器体内容物を定量吐出するには、図1に示す状態からピストン部材80の押下げ部87をシリンダ部材の底壁に当接するまで押下げればよく、するとシリンダ部材内の内容物が吐出口18および第2弁孔24を介してノズル嵌合筒20内へ流入し、弁部32を開いてノズル部材40から定量吐出する。すなわち、吐出口18、第2弁孔24およびノズル嵌合筒20内部が吐出弁付き吐出路を構成する。
【0024】
吐出後、押下げ部87がコイルバネの付勢力で上昇すると、容器体内容物が吸上げパイプ60および吸込弁61を介してシリンダ部材10内へ吸上げられる。この吸上げにより容器体内が負圧化するため、これを解消すべく容器体内へ空気を導入する必要がある。この空気導入の役割を果たすのが空気導入用パイプ50である。
【0025】
すなわち、空気導入用パイプ50から吸引された空気は空気導入孔33、第1弁孔16および装着筒3内部を介して容器体内へ導入される。その際、空気導入用パイプ50の先端面はノズル部材40の先端面へほぼ一致しているため、ノズル部材40内に滞留した内容物が空気導入用パイプ50内へ吸込まれることがなく、したがって、内容物吸込みに起因する異音の発生が防止される。仮に、空気導入用パイプ50の先端面がノズル部材40の内部に位置すると、内容物が空気導入用パイプ50内へ吸込まれることとなって異音の発生を防止し得ない。
【0026】
容器体内容物の残量が減少すると、内容物に空気が混じるため、定量吐出が不可能になる。そうした現象が生じた場合には、次のようにすることでシリンダ部材内に残った内容物を速やかに排出させることができ、無用な吐出動作を省くことができる。
【0027】
すなわち、図2に示すように、操作板43を把持して回動させることでノズル部材40を前方へ移動させればよく、すると弁筒23が第1弁孔16から離脱して吐出口18と第1弁孔16とを介してシリンダ部材内と容器体内とが連通することになる。この状態でピストン部材の押下げ部87を押下げると、吐出口18から流出した内容物は第1弁孔16から吸上げパイプ60外面と装着筒3内面との間隙を通って容器体内へ還流することで容器体内へ回収される。
【0028】
一方、ピストン部材の押下げ部87が上昇してもシリンダ部材10内と容器体1内とは吐出口18、第1弁孔16および吸上げパイプ60外面と装着筒3内面との間隙を介して連通しているため、容器体内容物がシリンダ部材内へ吸上げられることがない。したがって、シリンダ部材内に残った内容物は速やかに容器体内へ回収される。すなわち吐出口18、第1弁孔16および吸上げパイプ外面と装着筒内面との間隙は逃し路を構成する。
【0029】
図3および図4は第2の実施形態を示す。
100は支承筒で、垂下筒15から前方突設され、かつ前部に上下一対の前後方向への割溝が形成されている。
【0030】
200はノズル嵌合筒で、支承筒100内へ前後動自在に嵌合させた周壁前部外面に上下一対の前後方向への突条201を形成して、該突条を支承筒100の割溝へ嵌合させると共に、周壁後端面を閉塞する後壁202中央部に形成した透孔から弁筒203を後方へ突設して第1弁孔16内へ嵌合させている。
【0031】
300は操作部材を構成するノズル部材で、支承筒外面へ螺合させた筒体301の前端に内向きフランジを付設して、該内向きフランジをノズル嵌合筒200前面へ摺接させており、さらに筒体301の上部から操作板302を突設している。303は管状部で、後端部をノズル嵌合筒200内面へ回動不能に嵌合させている。容器体内容物の残量が減少した場合には、操作板302を把持して回動させればよく、するとノズル嵌合筒200が前方へ移動して弁筒202が第1弁孔16から離脱する。その他の構成は第1実施形態と同一であるから説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、定量式ポンプを備えた吐出容器の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 容器体
2 口頸部
10 シリンダ部材
11 周壁
12 底壁
13 吸込孔
14 吸上げパイプ嵌合筒
15 垂下筒
16 第1弁孔
17 支承筒
18 吐出口
20 ノズル嵌合筒
22 後壁
24 第2弁孔
30 弁体
40 ノズル部材
50 空気導入用パイプ
60 吸上げパイプ
80 ピストン部材
87 押下げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ部材10へピストン部材80を摺動自在に嵌合した定量式ポンプであって、
前記シリンダ部材の底壁12に吸込孔13を形成し、該吸込孔13へ吸込弁61を介して容器体内へ垂下する吸上げパイプ60を連結し、
前記シリンダ底壁12に吐出口18を形成し、該吐出口を介してシリンダ部材へ連通する、吐出弁付き吐出路と容器体内へ通じる逃し路とを設け、
該逃し路を開閉可能な開閉弁16、23と、該開閉弁を操作可能な操作部材40とを設け、
前記容器体内容物の残量が減少した時点で、前記操作部材により前記開閉弁を開位置へ位置させることで前記逃し路を容器体内へ連通可能にして、容器体内容物の吐出およびシリンダ部材内への吸込みを不能に設けた
ことを特徴とする定量式ポンプ。
【請求項2】
シリンダ部材へピストン部材を摺動自在に嵌合した定量式ポンプであって、
前記シリンダ部材の底壁12に吸込孔13を形成し、該吸込孔へ吸込弁61を介して容器体内へ垂下する吸上げパイプ60を連結すると共に、シリンダ部材底壁から前記吸上げパイプを囲繞する垂下筒15を垂下して、該垂下筒前部周面に第1弁孔16を設け、
前記垂下筒15から支承筒17を前方突設して、該支承筒内へノズル嵌合筒20を摺動自在に嵌合させ、該ノズル嵌合筒の後端面を閉塞する後壁22から弁筒23を後方突設して前記第1弁孔16内へ嵌合させると共に、ノズル嵌合筒20の後部に第2弁孔24を形成し、該第2弁孔を開閉自在な弁体30を前記ノズル嵌合筒20内に設け、
前記支承筒17外面へ操作部材40を嵌合させて、該操作部材で前記ノズル嵌合筒20を前後方向へ移動可能に設け、
さらに前記シリンダ底壁12前部に吐出口18を設けて、該吐出口を、前記第2弁孔24へ連通させると共に前記第1弁孔16へ連通可能に設け、
前記ピストン部材の圧縮行程で、シリンダ部材内の内容物が前記吐出口18および第2弁孔24を通って前記弁体32を開いて吐出可能に設け、
前記容器体内容物の残量が減少した時点で、前記操作部材40により前記ノズル嵌合筒20を前方移動させて前記弁筒23を前記第1弁孔16から離間させ、前記ピストン部材の圧縮行程により吐出口18を介してシリンダ部材内から吐出する内容物を前記容器体内へ還流可能に設けた
ことを特徴とする定量式ポンプ。
【請求項3】
前記請求項1記載の定量式ポンプの吐出弁を構成する弁体30又は請求項2記載の定量式ポンプの弁体30に前記容器体内へ連通する空気導入孔33を形成すると共に、該空気導入孔に先端部を閉塞部材で閉塞可能な空気導入用パイプ50の基端部を連結して、該空気導入用パイプの先端面を、請求項1又は2記載の定量式ポンプの操作部材40先端面とほぼ一致させたことを特徴とする請求項1又は2記載の定量式ポンプ。


































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274994(P2010−274994A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131548(P2009−131548)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】